ベルトルト「秘密の」ユミル「共有」(549)

ラストどころか甘くないベルユミ。書いてみるよ投下してみるよ
キャラ崩壊とエロとその他色々あるので、甘いのがお好みの方は他の人の作品を読もう
過去作品と書き出しや裏設定が被ってても気にしてはいけない。そして牛歩更新である


…訓練兵3年目、夜。宿舎から少し離れた森の中。


ユミル「あー、やっちまった」


クリスタ『ユミルのバカ! もう知らない!!』


ユミル(ちょっと調子に乗りすぎちまったかな。しかしどこいったんだよあいつ……)

ユミル(宿舎からそう遠くには行ってないと思うが。人に心配はかけたくねぇだろうし)

ユミル(何かあってからじゃ遅いし、危険な場所から探してみてるが)

ユミル(ここまでは来ないか。……ん?)


「――、―――」

「―――、……――」


ユミル(人の声? どっからだ?)

ユミル(ん……あんなとこに小屋なんてあったかね)


「―――、――」

「―――――」


ユミル(聞き取れねぇが、男と女の2人組か。情事にふけってるわけじゃなさそうだし、口論してる感じでもねぇな)

ユミル(おっと出てきそうだ。隠れるか)


「その……」

「なに」

「いや…気を、つけて」

「……」


ユミル(…………マジかよ)

ユミル(なんでこんなところで。あいつら、どんな関係なんだ)

ユミル(無口同士で気があうってのかねぇ)

「………! 誰か、いるの」


ユミル(チッ、気づかれたか)

ユミル「よぅ、ベルトルさん」

ベルトルト「……ユミル」

ユミル「こんな夜更けに逢引とは、お前も隅におけねぇな」

ベルトルト「……見てたの」

ユミル「2人が出てくるとこだけな。中でナニしてたかまでは知らねぇよ」


ベルトルト「……」

ユミル「……」

ユミル(先にアニを帰したってことは、2人の関係は他に秘密ってことだろうが)

ユミル(暗くてよく見えねぇけど、焦ってるのバレバレだぜ、ベルトルさんよ)


ユミル「他の奴らに話してもいいんだがなぁ」

ベルトルト「……少し話をしていただけだ」

ユミル「就寝前に? 小屋に2人きりで? 十分なネタだと思うが」

ベルトルト「……」


ユミル「さって、どうしたもんかね」

ベルトルト「……何を、すればいいの」

ユミル「そうだなぁ」

ユミル(普段から何考えてるかわかんねぇし、あまり深く関わると危険な気もするが)

ユミル(成績上位者の弱みを握っておくのは悪くねぇ。ちとからかってみるか)


ユミル「実はさ、最近欲求不満なんだわ」

ベルトルト「は?」

ユミル「訓練兵になる前は生きるために抱かれもしたが、いざなくなってみると退屈でさ」

ベルトルト「……」

ユミル「クリスタ相手に欲情しても、ないもんはないしな」ニヤッ


ユミル(さーてどう出る、優等生。男どもの会話が本当なら、ご立派なモノをお持ちみたいだが)

ユミル(こいつに興味のある女の話は聞くが、誰かと付き合ってるとは聞いたことがねぇ)

ユミル(ま、マヌケ面拝んだら冗談だと笑って―――)

ベルトルト「……満足させればいいの」

ユミル「あ?」

ベルトルト「君を」

ユミル「…………へ?」


ユミル(……まて。まてまてまてまてまてーー!!)

ユミル(今なんつった? 私を満足させる?)

ベルトルト「……」

ユミル(へぇ……意外にも経験者だったわけだ)


ユミル(抱くくらいで黙っててもらえるなら仕方ないってか。苦虫噛み潰したような面しやがって…)

ユミル(他の女にもしてるのかねぇ。まさかアニも、か?)

ユミル(どっちにしろ、気にくわねぇ)

ユミル「ああ。できんのかよ」

ベルトルト「…今、するの」

ユミル「いつでも。そこの小屋でも――」

ベルトルト「ここだと君みたいな人がまた来かねない。奥に古井戸があって水も使えるから」


ユミル(2人だけの秘密の場所に立ち入るなってことか。ずいぶんと親しい仲のようで)

ユミル「いいぜ、どこででも。ただしイかせられなきゃ皆に言ってやる」

ベルトルト「……」

ユミル(チッ、いけ好かねぇ男だ)


…古井戸近く。

ユミル「しかし意外だね。人は見かけによらないってか」

ベルトルト「……」

ユミル「さっさと済ませたいのかもしれねぇけどよ。少しは話でもしなきゃ雰囲気すら出ねぇだろ」

ベルトルト「何を話そうっていうのさ」

ユミル「お前の童貞奪った相手のこととか」


ベルトルト「……よくある話だよ」

ユミル「へぇ」

ベルトルト「開拓地で食べるものに困っていたら、憲兵団の人に」

ユミル「女?」

ベルトルト「女」


ユミル「なるほどね。それで食い物にありつけてそのタッパってわけだ。ま、私も似たようなもんだが――って、まてまて」

ベルトルト「……なに」

ユミル「話してる時に首なめる奴がいるかよ」

ベルトルト「時間もそんなにないし」

ユミル「はぁ……まぁ今日は危険日じゃねぇからいいけどよ」


ベルトルト「……」

ユミル「怖気づいたか?」

ベルトルト「いや……手だけでするつもりだったから」

ユミル「は? 手だけ?」


ベルトルト「責任を負いたくない」

ユミル「……言うじゃねぇか。お手並み拝見してやるよ」

ベルトルト「……キスは」

ユミル「下手だったら舌噛み切ってやる」

ベルトルト「ん……」

ユミル「……ッ」


ユミル(な……んだよ、コイツ……)

ユミル(頭抱えるからがっついてくるかと思いきや…)

ユミル(丁寧に、唇、吸って……舐め、て……)

ユミル(あ…舌、うすい、けど……けっこう、好き、かも……って、うあ)


ユミル「ま、て……って」

ベルトルト「……時間」

ユミル「なくても、そんな、急に……ひぁっ」

ベルトルト「…だいぶ感じてるみたいだけど」

ユミル「は……イかせられなきゃ、意味ねぇ、し……ッ!」


ベルトルト「弱いとこ、多いね」

ユミル「ちがっ………く、あっ……」

ベルトルト「…意外と、可愛い声出すんだ」

ユミル「んっ、ぅ……ひ、ぁ……」


ユミル(や、ばい……こいつの舌、気持ちいい……)

ユミル(しかも指、なが、く、て……)

ユミル「んっ、んんっっ……!」


ユミル(そこ、やめ……だ、め……)

ユミル(し、た……なめられ……あ、だめだ、あ、あっ……あぁっ)

ユミル「んっ、ふぁっ、あ、ああっ!」


―――――
―――


ベルトルト「……先に帰るけど」

ユミル「……」

ベルトルト「……」

ユミル「……言わねぇよ、誰にも」


ユミル「考えりゃ、憲兵のお姉さま方満足させてたんだよな。敵いっこねぇ」

ベルトルト「その……ごめん」

ユミル「はぁ……ちくしょう」

ベルトルト「……」

ユミル「とっとと帰れよ」

ベルトルト「あ、ああ……」


ユミル「…………」

ユミル「………」

ユミル「……」

ユミル「気をつけて、はナシか」

ユミル「はぁ……」


ユミル「あーーーー!!」

ユミル「くっそ……まだ体がだりぃ」

ユミル(にしても、ホントに手だけかよ。慣れてるってレベルじゃねぇぞ、アレ)

ユミル(てか起ってなかったよな。あいつにしちゃ事務処理ってわけか)


ユミル(……どんだけお姉さま方に遊ばれたんだか。最後は逆に手ごまにしたんだろうが)

ユミル(あいつの保護者は知ってんのかねぇ。それにアニは何なんだよ)

ユミル(さっきの感じだと、ベルトルさんは気にしてたみたいだが)


ユミル「……」

ユミル「………ははは」

ユミル「負けっぱなしなのは気にくわねぇ。今の私の人生は楽しむためにあるんだからな」

ユミル「…っと、肝心なことを忘れてた。愛しのクリスタを探してたんだよ」


…女子寮。


クリスタ「ユミル! どこ行ってたの、こんな遅くまで!」

ユミル「あ? お前を探しにいってたに決まってるだろ」

クリスタ「あ……ごめんなさい」

ユミル「いや……私もやりすぎた。悪い」


クリスタ「? ユミル、汗かいてる?」

ユミル「あ……ああ、探すのに走ったからな」

クリスタ「だめだよ、そのままじゃ風邪引いちゃう。これで拭いて?」

ユミル「……クリスタ」

クリスタ「?」

ユミル「クリスタぁ、やっぱ私はお前が好きだよ」ギュッ

クリスタ「ちょ、ユミルぅー!?」

…ツヅク。
例によって擬音系ほとんど使わないので勝手に妄想しる。


…数日後。


ユミル「あー、かったりぃ……」

サシャ「どうしましょうねぇ……」

クリスタ「うーん……」

ユミル「ここんとこなんかチェックしてるなとは思ってたが」

サシャ「まさか仲良さチェックだったなんて……」


クリスタ「でも教官のおっしゃることも一理あるよ? いつも同じ人とばかり組んでたら癖もついちゃうし」

ユミル「そりゃそうだが3ヶ月だぞ、3ヶ月。その間クリスタとは組むなって教官は悪魔だ。巨人のがよっぽどマシだ」

サシャ「ですねぇ……誰と組んだものやらです」

ユミル「つーか対象者多すぎねぇ?」

サシャ「ユミルはまだ少ないんですよ? 私なんか男子もリストに入ってましたし」

ユミル「コニーにジャンにマルコに、後は誰だ」

サシャ「エレンとライナーもです。あ、ベルトルトも」


ユミル「……成績上位者多いな」

サシャ「言われてみればそうですね」

ユミル「女子は?」

サシャ「えっと……クリスタ、ユミル、ミカサ、アニ、ですかね」

ユミル「ははーん」

クリスタ「どうかしたの?」


ユミル「これは成績上位者が下の者に教えろってことだろ」

クリスタ「そうなの?」

ユミル「サシャよ、お前アニと組んだことあるか?」

サシャ「うーん、正直あまりありませんねぇ」

ユミル「仲の良い奴らと組むなってのは訓練としてわからんでもない。けど組んだことのない奴とも組むなってことは意図があるってことさ」


サシャ「ほぇー」

ユミル「となると、上位者はお互い組むことができないってことだな。私らみたいなあぶれ者と違って」

クリスタ「……ユミルは本気出してないでしょ」

ユミル「んなこたーない。私はいつも本気だぞ、お前に」

クリスタ「そうやっていつもごまかしてるけど、わかってるんだからね?」


ユミル「へいへい。ま、そういうことだからお前は上位者と組む権利があるってことだ。いい機会だしたくさん教えてもらえよ」

クリスタ「……ユミルも」

ユミル「んー、私はその辺の適当な奴と組むさ」

クリスタ「ダメ。ユミルも本気出して訓練できる相手と組まなきゃ、今後一切一緒に訓練しないからね」

ユミル「はぁ!?」

クリスタ「ふーっ」ドヤッ


ユミル「……くっそ。誰と組めばいいんだよ」

サシャ「ミカサはダメなんでしたっけ」

ユミル「こないだ組んだからな……残ってる女子はアニか……アニ……いや、待てよ」

クリスタ「?」

ユミル「……いいこと思いついた。クリスタ、お前はライナーと組め」


クリスタ「ライナーと? どうして?」

ユミル「私はベルトルトと組む」

サシャ「あ、なるほど」

ユミル「そういうことだ。善は急げ、人気者の確保は競争だぞ!」


~現在公開できる設定~
・ユミルとクリスタの順位は20~50位。
・ユミルは人前ではまだ「ベルトルト」呼びで本人に対してだけ「ベルトルさん」である。
・2人の口調が知らずになんとなく親しくなっていくあら不思議な物語。


「ねぇ、あなたから頼んでみてよ」

「もう既に決まってるんじゃないかな…」

「え、あいつらと組んでいいのか? 俺聞いてみようかな」


ユミル「やっべぇ……おーい! ライナー!」

クリスタ「ちょ、ちょっとユミル」


ライナー「ユミルか。どうした?」

ユミル「お前さん相手決まってんのかなーって」

ライナー「いや、これから探すとこだが」

ユミル「ならクリスタと組んでやってくれよ。いやー良かった良かった、クリスタが教わってみたいって前から言ってたんでなぁ」

クリスタ「え?」

ユミル「お前言ってたじゃねえか。ライナーは一見怖いけど優しい奴だって」

ライナー「……俺で良ければいつでも教えるが」


ユミル「ライナーがまだってことは、お前さんもまだなんだろ?」

ベルトルト「……まだだけど」

ユミル「クリスタがさぁ、私も上の奴らに教わらなきゃ口きいてくれないって言うんだ。ついでだし組んでくれね?」

ベルトルト「あ、ああ…」


ユミル「……ところで、組む人さえ違ってりゃ別にそばにいても構わないはずだ。なぁ、ライナーさん?」

ライナー「……だろうな」

ユミル「よし! これで私はクリスタのそばにいられるってわけだ」

クリスタ「えっと……確かに問題はないけど、訓練だからね?」

ユミル「おう。ちゃんと教えて貰えよ。私は手は出さねぇから」


ライナー「手は、な」

ユミル「そう、手はな」

クリスタ「あれ、サシャは?」

ユミル「サムエルに声かけてみるとか言ってたぞ」

クリスタ「そう……」


ユミル「つーわけでよろしく頼むぜ、ベルトルさん」

ベルトルト「……よろしく」

ユミル「確か午前は対人格闘からだったな。お前身長あるしやりにくそうだが、まぁ訓練にはなるか」

ユミル「あ、別に固定組むってわけじゃねえからな。安心しろよお前ら!」


「じゃあ今度、私とも組んでくれる?」

ライナー「もちろんだ」

「明日は俺と組んでくれよ、ライナー!」

「ずるいぞお前、なら次は俺と組んでくれよ」

「あの……ベルトルト、よければ、今度……」


ユミル「明日からの予約は後で頼むわ。今日は私らが押さえたんだからな」

「ユミルずるーい」

ユミル「こういうのは動いたもん勝ちなんだよ。ちなみに明日以降2人組で私らと組んでくれる人も募集してるぜ」

「マジかよ、クリスタと組めるチャンスじゃん」

「でもどうせユミルが隣で見張ってるぜ」

「それでも行くのが男ってもんだ!」


ユミル「ま、後でな。そろそろ訓練に行かなきゃ遅れちまう。お前らもいい加減相手見つけろよ」

「やべっ、もう今日はお前でいいや」

「しゃーねぇな、よろしく頼むわ」


ユミル「……」

ライナー「……やるな」

ユミル「何がだ」

ライナー「お前がけしかけたことで、普段話さん奴と組む抵抗が全体的に薄れている」

ユミル「別にそれが目的じゃねえよ。私はクリスタと一緒にいたいんだよ」


ユミル「こうしときゃ相手を探す手間も省けるしな。お前の知名度を利用しただけだ」

ライナー「まぁいい。今日はよろしく頼む、クリスタ」

クリスタ「こ、こちらこそよろしくね」

ユミル「変なことしてみろ、訓練後に槍が降っても知らねぇぜ」

ライナー「しっかり訓練しろよ、ベルトルト」

ベルトルト「え……あ、うん」

ユミル「とにかく行くぞ。遅刻で減点なんかされたくねぇ」


…対人格闘訓練。


ユミル「さて。向こうもはじめたことだし、こっちもやるかい」

ベルトルト「ならず者役は」

ユミル「お前が先で。ほらよ、短刀」

ベルトルト「僕から?」

ユミル「手加減はなしでいいぜ」


ベルトルト「え……」

ユミル「まさか私を女扱いする気か? こないだとはえらい違いだな」

ベルトルト「……」

ユミル「今日組むのは別にジャンとマルコでも良かったんだよ。理由は察してもらえると助かるが」

ベルトルト「……不満、だったの」


ユミル「されっぱなしは性に合わなくてね」

ベルトルト「……」

ユミル「ゲームだよゲーム。お前と一勝負してみたくなっただけさ」

ベルトルト「そう」

ユミル「かかってきな。もう一度言うが手加減はいらない」


・・・・・

「おい、あれ……」

「気合入ってんなぁ」

「ユミルすげぇな、こりゃうかつにクリスタに手ぇだせねえぞ」

ライナー「おいおい……」

クリスタ「すごい、ユミル……」


ユミル「ハッ、ハァ……」

ユミル(くそっ、手足が長いせいで間合いが遠い)

ユミル(懐に入りこめばこっちのもんだが、自分の弱点も理解してるせいかなかなか隙ができねぇ)

ベルトルト「……」

ユミル(息が上がってるのはこっちだけか。長期戦は不利だな……)

ユミル(だがなんとなく掴めてきたぜ。次で決めてやるよ、ベルトルさん)


ベルトルト「……はっ」

ユミル(きたッ、短刀での薙ぎ払い! かわさずに左腕で受け止めて…!)

ベルトルト「ッ!?」

ユミル(いってぇぇ! けど、このまま、懐に……!)

ユミル「お、りゃぁぁ!」

ベルトルト「ぐっ」


「おおっ」

「ベルトルトを土につけたぞ!」

「おっかねぇ……」


ユミル「ハッ、ハァッ、どう、よ、ってて……」

ベルトルト「……腕」


ユミル「肉を切らせて、ってやつ、だ……ハァ」

ベルトルト「模造刀とはいえ、危険すぎる」

ユミル「実践じゃどんな方法であれ、勝てた奴が上なんだよ」

ベルトルト「……」


クリスタ「ユミル!」

ユミル「おークリスタ。見たか? ちゃんと本気で訓練したぞ」

クリスタ「! 血が……!」

ユミル「あー、やっぱ少し切ったか。擦り傷になってやがるな」

クリスタ「何を呑気に言ってるの。すぐ医務室に……!」


ユミル「たかが擦り傷で慌てすぎだ。舐めときゃなおる、ってお前が舐めてくれるか?」

クリスタ「馬鹿言わないで。ほら、医務室行かなきゃ」

キース「……怪我をしたのか」

ユミル「あ……はい、大したことでは」


キース「ならフーバーが付き添え。怪我を負わせたのは貴様なのだろう」

ベルトルト「はっ」

クリスタ「ユミル……」

ユミル「お前はライナーと訓練してろ。くれぐれも、下手な真似すんなよ?」

ライナー「あ、ああ……」


…医務室。


ユミル「……」

ベルトルト「……きつくない?」

ユミル「ああ」

ベルトルト「……」


ユミル「……」

ベルトルト「……はい、終わり」

ユミル「どーも。優等生は包帯巻くのも丁寧なことで」

ベルトルト「……」

ユミル「悔しいか?」

ベルトルト「……別に」


ユミル「ちぇ。怪我のし甲斐がねぇな」

ベルトルト「そこまでして、どうして……」

ユミル「言ったろ。お前に勝ちたかっただけだ」

ベルトルト「……」

ユミル「自分から売った喧嘩で負けたことがなくてね」

ベルトルト「……そう」


ユミル「あー、つまんねぇ。やっぱ同じ土俵で勝たなきゃ意味ねぇかな」

ベルトルト「……」

ユミル「どうだ? 医務官も不在だし他に誰もいねぇし、あっちで勝負ってのは」

ベルトルト「棄権する」

ユミル「……つまんねぇやつ」


ベルトルト「……ひょっとして、これからも付きまとうつもり?」

ユミル「どうしようかね。一度でいいからお前の悔し顔か泣き顔拝みたくなってきたが」

ベルトルト「……」

ユミル「んー……アニに聞いてみるか」

ベルトルト「彼女を、巻き込もうっての」

ユミル「……っ」ゾクッ


ベルトルト「……」

ユミル(なんつぅ目だ。普段はおとなしそうなくせして、中に獰猛な蛇を飼ってやがる)

ユミル「さぁ、な……見られたのが運のツキと思えよ」

ベルトルト「……そっちが、その気なら」

ユミル「ん?」

ベルトルト「僕にだって考えがある」


ユミル「へぇ……」

ベルトルト「クリスタの身に何が起きても……」

ユミル「!? お前……!」

ベルトルト「困るなら、変なことは考えないで。僕も、事を大きくしたくない」

ユミル「はは……憲兵を目指す奴が、そんなリスクを負うのか」


ベルトルト「どんな方法であれ勝てればいいんだろ」

ユミル「……」

ベルトルト「……」

ユミル「……いいね。悪くない条件だ」

ベルトルト「……そう」


ユミル「喧嘩は買ってくれるわけだ?」

ベルトルト「……今日はしない。君は怪我人だ」

ユミル「お優しいことで」

ベルトルト「……訓練、戻るよ」

ユミル「あー」


ベルトルト「……なに」

ユミル「クリスタをライナーに教えさせるのは認めろよ。あいつの順位を上げてやりてぇんだ」

ベルトルト「……」

ユミル「私たちの勝負に関係なくな」

ベルトルト「……好きにすれば」

ユミル「どーも。んじゃ訓練戻るかね、そろそろ終わる頃だと思うが」


…パタン。

ユミル「……」チラッ

ベルトルト「……」

ユミル(少々首を突っ込みすぎたかね)

ユミル(腹の虫が治まらなくて煽ってみたが……)

ユミル(意外と面白い奴だ。つまらん訓練の刺激にはなりそうだが)

ユミル(クリスタには危害を加えさせない。お互い境界線を超えないようにしねぇとな)

ユミル(やれやれ。楽しい3年目になりそうだぜ)

>>69 でエロイこと想像した奴はID腹筋でもしてなさい。
勝負といいつつ、この話のエロは2割程度の予定である。


…1ヶ月後、男子寮。


コニー「あー、疲れた」

マルコ「3年目ともなると訓練内容もだいぶ変わってきたね」

ジャン「実戦的になってきたよな。立体機動も正確さや斬撃の加点比率が高くなってるらしいぜ」

マルコ「やっぱりそうなんだ」


コニー「でもよ、この3ヶ月の訓練ってどうなんだ? 別に誰と組んでもいいけどよ」

マルコ「……たぶんだけど」

コニー「おう」

マルコ「成績上位者の、対応能力を育てることも兼ねられてる」

ジャン「対応能力?」


マルコ「上位者に与えられる権利と言えば?」

ジャン「もちろん憲兵団に行けることだが……ああ、そうか」

コニー「んん?」

マルコ「上に立つってことは、人に教える機会が増えるんだよ」


コニー「そんなもんか?」

マルコ「憲兵になれば人とのトラブルを解決することもあるし、協調性もなければいけないだろうね」

ジャン「面倒くせぇな」

マルコ「君も憲兵団を目指すなら、もっと優しく教えてあげなよ」

ジャン「わーってるよ……」


コニー「人に教えるねぇ……感じろとしかオレは言えねぇ」

マルコ「はは、教え方は人それぞれでいいんだよ」

コニー「その点お前は楽そうだよな」

ベルトルト「僕?」

コニー「たまにユミルに誘われてるけどよ、ありゃ教えなくてもいいだろ」

ベルトルト「まぁ……」


ジャン「ユミルのやつ、ありゃ普段手を抜いてやがるぜ。お前とやる時だけ本気出してるっぽいが」

マルコ「だね。今日の立体機動訓練でも、教え合うというより競い合ってたよね」

ベルトルト「なんか……僕に勝ちたいんだって」

ジャン「へぇ。いつの間に仲良くなったんだ?」

ベルトルト「……一方的に挑戦されてるだけだよ」

ジャン「一方的にねぇ」ニヤッ


ベルトルト「ライナーにクリスタを教えてもらうついでに、暇つぶしに僕に勝負を挑んでるだけだって」

コニー「そりゃとんだ災難だな」

ベルトルト「……本当にね」

マルコ「ん? どこかでかけるの?」


ベルトルト「変に疲れて寝付けそうにないから、外の空気吸ってくる」

マルコ「明日も訓練だよ?」

ベルトルト「うん。就寝時間には戻るよ」

マルコ「暗いし、気をつけてね」


…パタン。


ジャン「たまに1人で外に出てるが、寝付けねぇからってことは」

マルコ「……ジャン」

ジャン「そういうこったろ」

コニー「明日の寝相でも予想すっか」

ジャン「スッキリかましたのが影響するかどうかだな」

マルコ「……2人とも」


コニー「ライナーの腹に足蹴りか」

ジャン「壁際にはりつくように、かもな」

コニー「なら明日は晴れか?」

ジャン「所によりにわか雨」

マルコ「……ハァ。夜は星空が綺麗に…じゃない、君たちいい加減にしないか!」


…古井戸近く。


ユミル「おっせーぞ」

ベルトルト「無理言うなよ、いきなり呼んでおいて」

ユミル「昼の訓練で言ったろ。早めに飯食うなりしとけよ」


ベルトルト「……ライナー待ってたんだよ」

ユミル「女子かてめぇは」

ベルトルト「今日中に話しておきたいことがあったんだ」

ユミル「ったく。……で、来たってことはナニすっかわかってんだろ?」

ベルトルト「……」

ユミル「…なんだよ」


ベルトルト「どうしてもしなきゃいけないのか?」

ユミル「はぁ? 勝負に乗るって言ったのお前だろ?」

ベルトルト「それは……承諾しなきゃ、訓練に戻れそうになかったから」

ユミル「…………ハァ」


ユミル「どんだけ真面目なんだよ、お前」

ベルトルト「……」

ユミル「お前が気を使わないように、体調ばっちり整えてきてやったっていうのに」

ベルトルト「……」

ユミル「据え膳食わぬは男の恥だろ」

ベルトルト「……」


ユミル「そうか、私に魅力がなさすぎるか。そりゃそうだよな、こんな男女じゃ――」

ベルトルト「はぁ……言いたくなかったけど」

ユミル「……けど?」

ベルトルト「女性を抱くのが好きじゃないんだ」

ユミル「…………ホモ?」

ベルトルト「違う、……よ」


ユミル「な、なんだ今の間は」

ベルトルト「ち、違う!」

ユミル「何が、違うってんだ? ああ?」

ベルトルト「待って、違う、そうじゃない」

ユミル「いや、近寄るな、こっち来るな!」

ベルトルト「……うう」


ユミル「……」

ベルトルト「違うんだ、ほんとに……」

ユミル「……トラウマになってんのか」

ベルトルト「……たぶん」


ユミル「あー……お前、今15だっけ」

ベルトルト「うん……」

ユミル「で、2年から3年前ってことは、12、で、か……?」

ベルトルト「……」

ユミル「……なんか、すまん」

ベルトルト「いや……」


ユミル「とりあえず座れ、お前でかすぎるんだ」

ベルトルト「……」ストン

ユミル「……」

ベルトルト「……」

ユミル「……」


ベルトルト「……部屋で」

ユミル「お、おう」

ベルトルト「そういう話になっても、興味がわかないんだ」

ユミル「それで……自分がそっちかもって考えたりしたのか」

ベルトルト「……うん」

ユミル「でも女は嫌いじゃないんだろ?」


ベルトルト「……わからない」

ユミル「誰かさんとか」

ベルトルト「彼女は、違う……」

ユミル「本当にか」

ベルトルト「……違う。それに、僕は……」


ユミル「……ハァ」

ベルトルト「……」

ユミル「私もクリスタのこと好きだけどよ。少しくらい考えたことあるさ」

ベルトルト「……それで」

ユミル「抱きたいとは思わない。守りたいとは思うけどな」


ユミル「あとな、なんつうか……男を知ってると、たまに抱かれたいと思うことがある」

ベルトルト「……」

ユミル「だから……私は女なんだろうよ」

ベルトルト「……そう」

ユミル「……」

ベルトルト「……」


ユミル「あー……もういいや」

ベルトルト「…勝負?」

ユミル「ああ。不戦勝だ不戦勝、お前の勝ちでいい」

ベルトルト「……」


ユミル「ったく……そうならそうと先に言えよな。期待させやがって」

ベルトルト「……期待、してたの」

ユミル「…そういうわけじゃない。勝負事が好きだから、な」

ベルトルト「…君、抱かれてもいいと思って僕を呼んだんだろ」

ユミル「あ? なんでそうなる」


ベルトルト「さっき言ってたじゃないか。たまに抱かれたいって」

ユミル「訂正する。私は男だ」

ベルトルト「へぇ。ついてないのに?」

ユミル「…………お前」

ベルトルト「……」


ユミル「いい性格してるじゃねぇか」

ベルトルト「ありがと。君に言われると嫌味にしか聞こえないけど」

ユミル「勝負内容を修正しよう。お前が私を抱いたら私の勝ちだ」

ベルトルト「不戦勝じゃなかったの……」

ユミル「やめだやめ。こうなったら私がいかにいい女か教えてやる」


ベルトルト「はぁ……だったらせめて、抱く気になったら、に変えてよ」

ユミル「なんでだ?」

ベルトルト「責任取るつもりはない。だから抱くことはない」

ユミル「……このクソ真面目野郎が」

ベルトルト「なんとでも言えばいいさ」


ユミル「さて……どう料理してやろうか」

ベルトルト「まさか……今日から、なの」

ユミル「当たり前だ。しかしこりゃ難題だな、女の体は嫌ってほど見てきたんだろ」

ベルトルト「……」


ユミル「世の男が聞いたら羨ましがるだろうにな」

ベルトルト「だろうね……」

ユミル「どうすっかなぁ」

ベルトルト「……あのさ」

ユミル「ん?」


ベルトルト「したい時に、呼ぶんだろ……?」

ユミル「んー、まぁそうなるだろうな」

ベルトルト「君は、それで、いいの」

ユミル「お前がその気にならなかったらか? ……ま、仕方ないっていうか」


ベルトルト「そ、そっか」

ユミル「なんだ?」

ベルトルト「いや、こないだみたくした方が良かったのかなって」

ユミル「……」

ベルトルト「期待させてたのに何もしないのも、悪いかなって……」


ユミル「…………お、お前」

ベルトルト「ごめんっ、なんか、その……」

ユミル「奉仕精神身につけすぎだ……」

ベルトルト「う……」


ユミル「でも待てよ……それもありか」

ベルトルト「え……」

ユミル「私が攻勢に出て、お前が屈すれば」

ベルトルト「え、え……」


ユミル「勝てなくても満足、勝てたら大満足、っと」

ベルトルト「いや、その」

ユミル「さてと。はじめようか、ベルトルさんよ」

ベルトルト「……嘘、だろ」


・・・・・


…翌朝。


ジャン「……今日は夕方から大雨だな」

コニー「間違いねぇ」

ジャン「柵がなけりゃ落ちてるぞ、これ」

コニー「落ちたら雷が訓練所に落ちるな」

ジャン「なら雷の心配はしなくていいな」


ベルトルト「ぅぅ……」

ジャン「どんな夢見てるんだか」

コニー「教官に追いかけられてるとか」

ジャン「それはお前だろ」

マルコ「馬鹿言ってないで起こしてあげようよ……ベルトルト、時間だよ。起きて起きて」


ベルトルト「……マルコ?」

マルコ「おはよう。大丈夫?」

コニー「相変わらずすげぇ寝相だな、お前」

ジャン「ったく……飯行くぞ、飯」

マルコ「先行くから……顔洗っておいで」

ベルトルト「うん……」


ライナー「大丈夫か?」

ベルトルト「平気……後で行くから、先行ってて」

ライナー「……席は取っとくぞ」

ベルトルト「うん……ありがとう」


ベルトルト「……」

ベルトルト(……いつまでしなきゃいけないのかな)

ベルトルト(飽きるまで待つしかないのか)

ベルトルト(僕には意思がない。その前に、人を好きになることも、快楽の為に人を抱くことも)

ベルトルト(……してはいけない。何故なら僕は――)


…女子寮。


クリスタ「ユミル、起きなよ、朝だよ?」

ユミル「……あと、ごふん」

クリスタ「もうっ。夜更かしなんかするから」

ユミル「いいだろ……いい散歩道見つけたんだから……」


クリスタ「だったら私も連れていってよ」

ユミル「もう少し、危ないとこないか、見てからな……」

クリスタ「はやく行かないと、サシャにご飯取られちゃうよ?」

ユミル「取ったら昼飯取り返すし」


クリスタ「ほら、行くよ!」バサッ

ユミル「わっ、返せ、私の布団!」

クリスタ「先に行って席取ってるから、その寝癖整えてくるんだよ?」

ユミル「……へいへい」


ユミル「……」

ユミル(畜生……全く反応しやがらねぇし)

ユミル(こっちは2度イかされたってのに)

ユミル(……ま、気長に攻略していくか)

ageる気がなくてもメール欄消える時ってあるよね…
墓穴掘る男、ベルトルトであった。


…さらに1ヶ月後、古井戸傍。


ユミル「んっ…ぁ、っく」

ベルトルト「……いい加減諦めてよ」

ユミル「わたしに、敗北の二文字は、ねぇんだよ……」

ベルトルト「……」グリッ

ユミル「ああっ!」


ユミル(くっそ……耳も首もだめ、太もも撫でてもだめ)

ユミル(開発されてねぇかと乳首やケツ触っても反応なし……)

ユミル(あぁ、さすがに直接あそこ撫でた時は一瞬体がこわばったか)

ユミル(完全に不能ってわけじゃなさそうだが……触ろうとしたら攻めに回られて、力入らなくさせられるし……)

ユミル(……だめだ、今日はもう体力がもたねぇ)


ユミル「く、っそ……」

ベルトルト「……無駄だよ」

ユミル「は……でも、少しは反応したんじゃねぇの」

ベルトルト「そりゃ、直接は……」

ユミル「煩悩解放しちまえよ。楽になるぞ」


ベルトルト「……同じだね」

ユミル「なんだよ」

ベルトルト「そうやって、君たちは快楽に身を任せて」

ユミル「……」

ベルトルト「何が楽しいのか、僕にはわからない」


ユミル「私が、憲兵の奴らと同じだってのか」

ベルトルト「ああ。勝負がしたい? ……違う、自分が愉しみたいだけだろ」

ユミル「……」

ベルトルト「人を縛り付けておいて、楽になれ? 馬鹿に、しないでくれ」


ユミル「縛り付ける……?」

ベルトルト「……」

ユミル「生きるために体を売ったんじゃねぇのかよ」

ベルトルト「……」スッ

ユミル「おいっ!」


ユミル「……」

ユミル(なんなんだよ、いったい……)

ユミル(縛り付ける? そんな気はなかったが……向こうからしたら、そうなるのか)

ユミル(アニとの関係を大っぴらにされたくないから……)

ユミル(似たようなことが、開拓地でもあったのか?)


ユミル(開拓地で憲兵の力は絶対だ。ただもてあそばれただけじゃないな)

ユミル(そうせざるを得ない状況に追い込まれたってことか)

ユミル(縄で物理的に縛られたわけじゃない。もっと陰湿な)

ユミル(いや、そんなことあいつが許すわけ――!)


ユミル(……庇った、のか。憲兵に脅されて)

ユミル(だからあいつは何も知らない。知ってたらさせるわけないよな……)

ユミル「……そりゃ、反応しねぇはずだわ」

ユミル「はぁ……ややこしい奴の多いこった」


…数日後、女子寮。


サシャ「うう、クリスタ、ここの計算式教えてください」

クリスタ「これ? えっと……どうだったかな。ね、ユミル? ……ユミル?」

ユミル「……」

クリスタ「どうしたの?」

ユミル「え? あ……なんか言ったか?」


クリスタ「今日1日なんか変だよ? 何かあったの?」

ユミル「いや……なんもねぇよ」

クリスタ「でも……」

ユミル「なんでもねぇ。今日はもう寝るわ」

クリスタ「……」


サシャ「えっと、どうすればいいんです?」

クリスタ「……ごめん。ミカサにでも聞いて」

サシャ「ほぇっ!? うう、仕方ありません……ミカサぁ、ちょっと教えてくださいよ」

クリスタ「……」

クリスタ(ほんとは、こないだ散歩から帰ってきた時からおかしい。何があったの、ユミル……)


…翌日。


ユミル「あー、だりぃ……」

クリスタ「体調悪いなら休めばいいのに……」

ユミル「そうはいくかよ。配点の高い立体機動訓練は出なきゃ」

クリスタ「ねぇ……今日は、ライナーたちじゃない方がいいんじゃないの」

ユミル「あ?」


クリスタ「もしくは、私がベルトルトと組む。ユミルってば、彼とは本気でやろうとするじゃない」

ユミル「そうか?」

クリスタ「そうだよ。いつもムキになって勝負してるじゃない」

ユミル「なんだろなぁ……あいつの負けて悔しがる姿見てみたくならねぇか?」

クリスタ「ベルトルトの?」

ユミル「ベルトルトの」


クリスタ「……ならないよ」

ユミル「104期生イチ背が高く、男の中じゃ2番手に成績もいい。そんな奴を跪かせてやりたくならねぇ?」

クリスタ「ならない」

ユミル「つまんねぇ」


クリスタ「今更だけど、ユミルって趣味悪いよね」

ユミル「そんな私を見捨てないお前が大好きだよ、クリスタ」

クリスタ「もう。でも……ベルトルトと組むと無理しちゃうでしょ? だから私が」

ユミル「私の楽しみ奪うなよぉ……」

クリスタ「だったら、今日は無理しない、張り合わないって約束して」

ユミル「……しゃーねぇな」


クリスタ「約束だからね?」

ユミル「はいはい、女神様に誓って」

クリスタ「本当に?」

ユミル「本当に」


クリスタ「そうだ、ベルトルトに言っておこうかな。ユミルに無理させないでって」

ユミル「言わなくても無理しねぇって……」

クリスタ「でも……」

ユミル「ダメだと思ったら私から言うさ」

クリスタ「……」

ユミル「な、だから心配するな」

クリスタ「……うん」


…立体機動訓練。


ユミル(とは、言ってみたものの)

ベルトルト「……」ザシュッ

ユミル「負けられっか、よ!」ザシュッ


ユミル「うっ……」

ユミル(目が回る……ちと、この木にぶら下がって)

ユミル「ちょい待ち、ベルトルさん」

ベルトルト「なに」

ユミル「装置の調子がおかしい。確認するから、お前先に行け」


ベルトルト「……」

ユミル「……なんだよ」

ベルトルト「どこか悪いの」

ユミル「あ?」

ベルトルト「いつもより大人しいけど」


ユミル「……んなことねぇよ」

ベルトルト「生理」

ユミル「は?」

ベルトルト「……とか」


ユミル「……女子にそんなこと聞くか、普通」

ベルトルト「違うの」

ユミル「ああそうだよ、悪いな、だから先行けよ」

ベルトルト「貧血気味で眩暈がするとか」

ユミル「……ほんとに女子じゃねぇの、お前」


ベルトルト「少し考えれば思い当たるだけだ」

ユミル「なんで」

ベルトルト「女性がしたくなるのは、生理前が多い」

ユミル「……」

ベルトルト「加えて、君は体調を整えてと言った。しても子供が出来にくい日を選んでるはずだ。そこから数日だから」


ユミル「そこまで知ってると気持ち悪さを超えて感心するよ」

ベルトルト「自己防衛だよ。で、どうするの」

ユミル「どうするって……」

ベルトルト「装置は故障してないんだろ」


ユミル「……」

ベルトルト「君を抱えて飛ぶくらいはできるけど」

ユミル「遠慮する、と言いたいが」

ベルトルト「……」

ユミル「眩暈が洒落にならねぇ。くそっ……」

ベルトルト「無理しないで。君を残して行くと減点されてこっちも困る」

ユミル「あーそうかい。じゃぁ背中借りますよ」


ユミル「……」

ユミル(普段口数は少ないし、2人きりになると憎まれ口も叩くが)

ユミル(……悪い奴じゃねぇんだよな)

ユミル(ちっ……本当に面倒な奴だ)

>>131 の「敗北の二文字」って、あの世界じゃ「四文字」だよね、間違えたね
適当に脳内変換しておいてください


・・・・・

クリスタ「ユミル!」

ユミル「なんだ、お前らのが早かったのか。下ろしてくれ、ベルトルさん」

クリスタ「やっぱり……大丈夫じゃなかったんじゃない」

ライナー「なんだ、具合悪かったのか?」

ユミル「立体機動だからって無理するもんじゃないね。すまなかったな」

ベルトルト「いや……」


キース「どうした」

クリスタ「教官……ユミルが、具合悪いみたいで」

キース「……」

ユミル「平気です。目眩がしただけで」

キース「……レンズ、医務室に付き添え」

クリスタ「は、はいっ!」


ライナー「珍しいこともあるもんだな」

ベルトルト「……そういうこともあるよ」

ライナー「風邪か? うつされてないだろうな」

ベルトルト「平気。なんともない」

ライナー「ならいいが…。ま、クリスタが付き添うなら問題ないだろ」


ベルトルト「……」

ライナー「ん?」

ベルトルト「なんか、楽しそうだね」

ライナー「そうか?」


ベルトルト「クリスタとの訓練が、そんなに」

ライナー「おい」

ベルトルト「……ごめん。でも、彼女も心配してる」

ライナー「言いたいことはわかる。だがお前は少し考えすぎだ」

ベルトルト「……」

ライナー「もう少し肩の力を抜け。逆に怪しまれるぞ」

ベルトルト「……うん」


「あれ、クリスタはどうしたんだ?」

ライナー「ユミルが風邪引いてたみたいでな、付き添いで医務室だ」

「ユミルが? 鬼の霍乱だな」

ライナー「はは、そうだな」

ベルトルト「……」


…医務室。


医務官「念のため今日はここに泊まった方が良いな」

クリスタ「大丈夫……?」

ユミル「軽い貧血だ。どうってことない」

クリスタ「でも……」

医務官「私は少し席を外す。安静にしていなさい」


ユミル「お前もそろそろ行けよ。サシャに夕飯取られちまうぞ」

クリスタ「……」

ユミル「大丈夫だ。久々に重いだけだから」

クリスタ「……ねぇ」

ユミル「ん?」


クリスタ「最近、悩んでることない?」

ユミル「私がか? いや、特にないが……」

クリスタ「最近ね、ユミル……心ここにあらずって感じだもの」

ユミル「……」

クリスタ「何か悩んでて、それで今回重いなんてことない?」


ユミル「……クリスタ」

クリスタ「うん」

ユミル「お前はっ! ほんっとうに可愛い奴だな!」ワシャワシャ

クリスタ「ちょ、ユミル??」

ユミル「そうだな……ちょいと昔のことを思い出してたかもな」

クリスタ「昔の?」

ユミル「ああ」


クリスタ「……」

ユミル「あまり……いい思い出じゃないんだが」

クリスタ「ユミル……」

ユミル「……」

クリスタ「いつか、話してくれる?」

ユミル「……機会があればな」

クリスタ「…うん!」


ユミル「ほら、飯食ってこい。力出ねぇぞ」

クリスタ「ユミルは?」

ユミル「今は寝てぇかな。どうせ医務官が適当に用意してくれんだろ」

クリスタ「ん、わかった。ゆっくり休んでね」

ユミル「おう。……あ、2人によろしくしといてくれ」

クリスタ「そうだね。心配かけちゃっただろうし」

ユミル「頼んだぜ」

クリスタ「じゃあ……おやすみ」

ユミル「おやすみ」


ユミル「……」ゴロン

ユミル「……ハァ」

ユミル(心配、かけちまったな)

ユミル(人の顔色読むのが得意な子だ。出さないようにしてても、バレちまうか)

ユミル(ケリつけねぇと。……ん?)


パタン。


ユミル(誰だ。他に病人はいなかったはずだが)

「……起きてるんでしょ」

ユミル「……何か用か」

「とぼけないで。仮病のくせに」

ユミル「……あ?」


「風邪だか何だか知らないけど、具合悪いなら訓練休めばいいのよ」

ユミル「えーっと……」

「なんなの? ちょっと仲いいからって、おぶってもらって」

ユミル「……」

「彼もなんであなたなんか……」


ユミル(うっっっっぜぇぇぇぇぇぇええ!!!)

ユミル(えーっと、こいつ名前なんだったっけ。どうでもいいか、確か200位前後の馬鹿女だ)

ユミル(そういやあいつ陰で人気あったな。陰で。無口で暗いから陰の人気者だったわ)

「いつも人のこと馬鹿にしてるくせに」

ユミル(高身長、高成績、憲兵狙いの有望株。モテないわけないか)

「こないだも私のこと階段で見下してたし」

ユミル(でもなー、暗いんだよな。暗くなるのもわからんでもないが)


「知ってるのよ、あばずれ女。あなたが夜な夜な男を誘ってるって」

ユミル(巨人に故郷を追われて、開拓地に行かされて)

「彼のことも狙ってるんでしょ。やめてくれない?」

ユミル(あげく憲兵様に色々教えこまれちまって。あー、かわいそうに)

「彼は優しい人だから。仕方なく運んでくれたのよ。勘違いしないで」


ユミル(……そうだよな。あいつも、色々あったんだろうよ)

「ちょっと、聞いてるの!?」

ユミル「聞いてる聞いてる。好きなら声かけりゃいいだろ」

「なっ……違うわよ、忠告してるだけ」

ユミル「言っとくが、私とベルトルトはなーんの関係もないぞ。ただの訓練仲間だ」

「そ、そうよ。だからちょっと優しくされたからって調子に乗らないで」


ユミル「ちなみに今日は風邪じゃなくて、生理痛。お前も女ならわかるだろ」

「せ……そんなことのために、彼におぶらせたの。呆れる」

ユミル「はいはい、もう二度と具合の悪い時に組まねぇよ」

「当たり前よ。彼の優しさにつけこまないで」

ユミル「つかせっかくの機会なんだから、お前も組んでもらえばいいのに」

「そ、それは、その……」


ユミル「なんだったら私からクチ聞いてやってもいいぜ?」

「え……ほん、と?」

ユミル「ほんとほんと」

「……じゃぁ、来週、どこかで」

ユミル「ほいほい、聞いとくから。んで眠いんだけど?」

「あっ、ごめんなさい……その、」

ユミル「わーったから寝かせてくれ……」

「う、うん。お大事にねっ」


…パタン。

ユミル「…………」

ユミル「………」

ユミル「……」

ユミル(うっっっっぜぇぇぇぇぇぇええ!!!)

ユミル(めんどくせぇぇぇぇぇぇえええ!!!)

ユミル(……寝よ、もう)


…数日後の夜、古井戸傍。


ユミル「今日は早いのな」

ベルトルト「……体は」

ユミル「おかげさまで。ま、座れや」


ベルトルト「……」

ユミル「……悪かったな」

ベルトルト「?」

ユミル「嫌なこと、色々思い出させちまっただろ」

ベルトルト「……」


ユミル「昔さ。金欲しさに教会から宝石とかくすねてたことあってな」

ベルトルト「……してそうだね」

ユミル「まぁな。で、ある日ヘマをして憲兵の世話になったんだ」

ベルトルト「……」

ユミル「孤児の私に人権なんてもんなくてな。助かるために体を売ったんだ」


ユミル「4年前、せっかく拾った命なんだ。何が何でも生き残りたくて」

ユミル「初めてだろうが、構わずに媚びて助かろうとした」

ユミル「そりゃあ酷い扱いされたさ。殴られもしたし、髪を引っこ抜かれたりもした」

ユミル「……自業自得だけどよ」

ベルトルト「……」


ユミル「お前の事情なんて知ったこっちゃない。でも……あいつらと同じにはなりたくなくてな」

ユミル「……すまなかった」

ベルトルト「僕も……ごめん、言いすぎた」

ユミル「おう……」


ユミル「……だからよ。終わりにしようぜ」

ベルトルト「え……」

ユミル「もういい、私の負けで。躍起になりすぎた」

ユミル「お前らのことは言わねぇよ。すまなかったな、トラウマ思い起こして」


ユミル「噂の一物には興味あったけど。諦めるとするさ」

ベルトルト「噂って……」

ユミル「超大型巨人ならぬ巨根。男子の中じゃ有名だぜ。風呂場とかで見られたんじゃねぇの」

ベルトルト「……はぁ。なんでそれを君が知ってるかは聞かないでおくよ」

ユミル「クククッ。人の噂ってやつは聞いてる分には楽しいからな」


ベルトルト「……なんていうか」

ユミル「ん?」

ベルトルト「生きるの、楽しそうだね」

ユミル「おう。楽しくて仕方ねぇな」

ベルトルト「正直……羨ましいよ」


ユミル「ベルトルさんは堅苦しく考えすぎなんだよ」

ベルトルト「……」

ユミル「大変だったのかもしれねぇけど。忘れるったのも手だぞ」

ベルトルト「それは、出来ない」

ユミル「あ?」

ベルトルト「出来るわけ、ない……」


ユミル「……」

ベルトルト「……」

ユミル「……お前、意思がないんじゃねぇよ」

ベルトルト「……」

ユミル「ただ臆病で、頑固なだけだ」


ユミル「少しは肩の力を抜け。じゃないと押しつぶされるぞ」

ベルトルト「……大丈夫だよ」

ユミル「そこまででかい体小さくしてんのにか?」

ベルトルト「僕は、大丈夫……大丈夫、だから」ギュゥ


ユミル「……」

ユミル(自分の体抱きしめて、何が大丈夫ってんだか)

ユミル(追い込まれて、限界まで虚勢はりやがって。まだ人に笑顔振りまいて隠すよりましかもしれんが)

ユミル(いや……それすらもう出来ないのかもな。何があったか知らねぇが、よっぽど嫌なことがあったか)

ユミル(……でもお前まで背負うわけにはいかねぇんだ、悪いが)


ユミル「……ああ」

ベルトルト「……」

ユミル「次の座学試験。見てろよ、勝ってやるから」

ベルトルト「……勝手にしてよ」

ユミル「予告してお前に勝つのが楽しいんだよ」

ベルトルト「はぁ……」


ユミル「よっし、先に帰るわ。襲われんよう"気をつけて"な」

ベルトルト「……なにそれ」

ユミル「女々しい男は狙われやすいんだよ。忠告は受け取れ」

ベルトルト「……どうも」

ユミル「じゃあな。早めに帰れよ」


・・・・・

>>189
×ユミル「大変だったのかもしれねぇけど。忘れるったのも手だぞ」
○ユミル「大変だったのかもしれねぇけど。忘れるってのも手だぞ」

なんで、たが出た…


…1週間後。


ユミル「フ、フ、フ……」ピラピラ

ベルトルト「……」

ユミル「フフフフフ……」ピラピラ

ベルトルト「……」


ユミル「どーーーーーーよ」

ベルトルト「はぁ……」

ユミル「っしゃぁぁぁぁ!」

ジャン「うっせぇ!!」


ユミル「どーだ、勝ったぞ。対人格闘に続いて2勝目だな」

ジャン「あ? お前ベルトルトに点数勝ったのか?」

ユミル「おう、見るか?」

ジャン「……マジだ」


ユミル「はっはっはー! 見たか、ユミル様の実力を!」

ベルトルト「……」

ユミル「悔しかろう、悔しかろう?」

ベルトルト「……別に」

ユミル「クククククッ」


ベルトルト「対人格闘で勝ったって言ってるけど、怪我していいなら負けないよ」

ユミル「ほほぉ? 負け惜しみは醜いぞ?」

ベルトルト「……どっちが」

マルコ「まぁまぁ。でもすごいな、ベルトルトに勝てるなんて」

ユミル「だろ? だろ??」


クリスタ「毎日遅くまで勉強してたもんね」

ユミル「……」

クリスタ「ミカサにも協力してもらって」

ユミル「……」

クリスタ「おかげで私も寝不足だよ」

ユミル「クリスタ、ちょっとお口チャックしようか?」

クリスタ「ムー!ムムー!」


ベルトルト「……」クスッ

ユミル「……!」

ユミル(笑った、のか……? 一瞬だったが)

「おーい、総合成績貼り出されたぞー!」

「おっ、順位上がったかな!?」


クリスタ「ぷはぁ! ね、私たちも見に行こうよ!」

ユミル「四半期に1度の成績発表なぁ……あんま興味ねぇが」

クリスタ「ほら、早く早く」

ユミル「引っ張るなって。『服が破けちゃうだろうが!』」

クリスタ「『服なんてどうでもいいだろ!』……ほらほら」

ジャン「……」

マルコ「仲良きことは美しきかな。さ、僕らも行こうか」

ジャン「おうよ……」


ベルトルト「……」

ジャン「これでもう決定でいいじゃねえか、なぁ?」

マルコ「まだまだわからないよ。今回は変動あったじゃないか」

ユミル「……」

マルコ「おめでとう、7位」

ユミル「……おう」


クリスタ「すごいよユミル! おめでとう!」

ユミル「ありがとよ。お前は……21位か」

クリスタ「うん。前回よりは上がったかな」

ユミル「よーくやった。褒めてやる」


マルコ「ユミルは……順位、落とさないようにしないとね」

ジャン「……そうだな」

ユミル「あ? 私は憲兵にあんまし興味ないんだが」

マルコ「うん。ちょっと、後で時間もらってもいいかな」

ユミル「? かまわねぇが」

マルコ「よければクリスタも一緒に」

クリスタ「?」


ジャン「にしても、9位にエレンって何だよ。教官も頭おかしいんじゃねぇの」

マルコ「エレンも最近頑張ってるよ。ま、彼にはミカサとアルミンがついてるから心配いらないかな」

ジャン「けっ」

ユミル「心配?」


マルコ「それも後で。ベルトルトはどうする?」

ベルトルト「僕は……」

マルコ「することあるならそっち優先してね」

ベルトルト「うん……ごめん」


ユミル「逃げんのかよ」

ベルトルト「そういうわけじゃ」

ユミル「ま、次は立体機動で勝ってやるさ」

ベルトルト「できるものならね」

ユミル「言ってくれるね。聞いたな?お前ら」

マルコ「ははは……これは僕もうかうかしてられないな」


ジャン「行くなら行こうぜ。ここも混んできた」

マルコ「そうだね。天気もいいし中庭にでも行こうか」

ベルトルト「……じゃあ」

マルコ「うん、後で」

ユミル「つきあいわりぃやつ」


ベルトルト「勝負ならいつでも受けるよ」

ユミル「当たり前だ。逃げんなよ」

ベルトルト「……」クスッ

ユミル「……馬鹿にしやがって」



アニ「…………」


…中庭。


ユミル「で、話ってなんだ?」

マルコ「……」

ユミル「おい」

マルコ「誰もいないね」

ジャン「ああ」

ユミル「……なんだよ」


マルコ「実は……ここ最近、上位陣を狙った妨害行為があるんだ」

クリスタ「え……嘘、でしょう?」

マルコ「実際、僕たちもやられたんだ。幸いなことにジャンが気づいてくれたから何事もなかったんだけど。……立体機動装置に細工が」

ジャン「ちょっとネジを緩められてる程度だがよ。訓練中に外れるか外れないかってレベルでな」

マルコ「事故にみせかけて、ってことなんだと思う」


ユミル「はぁ……面倒くさい連中もいたもんだな」

マルコ「あまり疑いたくないけど、犯人は同じ訓練兵だろうね」

ユミル「実力で奪えばいいものを」

マルコ「それだけ必死なんだろう。もう1年切ってるんだ」


ユミル「……ライナーやベルトルさんもか」

マルコ「うん。でも彼らは実力があるからね。装置が少し壊れた程度じゃ影響はないみたい」

ユミル「だろうな」

マルコ「だから彼らは被害もあまりないんだ。逆に……」

ユミル「5位以下に狙いを集中させてる、と」


マルコ「特に君のようにいきなり上位に上がったりするような人は、標的にされやすい」

ユミル「忠告感謝するよ。……確かに、エレンは大丈夫だな。ミカサがついてる」

マルコ「そういうこと。で、本題なんだけど」

ユミル「手を組もうってか?」

マルコ「話がはやくて助かるよ。といっても、特にすることはないんだけどね」


ジャン「席を外した時に、お互いの装置や荷物を見張っておくだけだ。簡単だろ」

ユミル「ようやく合点がいったぜ。だからお前ら上位同士つるむこと多いのか」

ジャン「犯人もなかなか尻尾見せなくてな」

マルコ「放っておくとすぐエレンと喧嘩しちゃうしね」

ユミル「保護者だからな」

マルコ「そうそう」

ジャン「……誰も頼んじゃいねぇよ」


クリスタ「でも……怖いね。教官には?」

マルコ「もちろん伝えてあるよ。最近巡回が厳しいのもそのせいさ」

ジャン「なんせ証拠がないからな」

ユミル「芋女が最近食糧庫が遠いって言ってたが、そういうことか」

マルコ「まぁ……色々気を付けた方がいい」


ユミル「これを話しているのは?」

マルコ「ミカサ、ライナー、ベルトルトに……サシャとコニーも。アニは断られちゃったけど」

ジャン「手を組む気はないってよ。何考えてんだか」

ユミル「……怪しいとは思わないのか」

マルコ「最初は思ったよ。でも上位陣を蹴落とす理由がないし、ライナーも違うだろうって」

ユミル「ライナーか……」


ユミル(ベルトルさんがライナーにそう進言したにしても、あいつらが下位を蹴落とす理由はねぇよな)

ユミル「で、私はなんで信用されたんだ」

マルコ「ライナーとベルトルトが、2人は違うだろうって。僕もそう思ってる」

ジャン「お前にゃ疑いかかってたんだがな。最近の成績見りゃ必要ねぇってことくらいわかるさ」

クリスタ「酷い。ユミルを疑ってたの」

ジャン「仕方ねぇだろ。口も態度もわりぃ女なんだからよ」


ユミル「そこは否定しねぇよ。思ったより評価もされてるみたいで何よりだ」

ユミル「けどもう少し人を疑い深く見た方がいいぜ。私の指示で動いてるかもしれねぇだろ」

クリスタ「ユミルは、そんなことしない」

ユミル「人間裏で何やってるかわかったもんじゃねぇんだ」

クリスタ「……」


ユミル「まあいい。そんなことする奴らに心当たりがないわけでもないしな」

マルコ「本当?」

ユミル「お前らも目星はつけてるんだろ」

マルコ「……一応ね」

ユミル「なら私が囮になる」

クリスタ「ユミル!!」


マルコ「それは危険すぎる。いくら君が自分の腕に自信があっても、状況次第じゃ命を落としかねない!」

クリスタ「そうだよ! そんな危険なことはやめて!」

ユミル「お前さっきも言ったろ。多少の故障じゃなんともない連中とタメ張れる実力の持ち主だぜ?」

マルコ「しかし」

ユミル「なにより気に食わねえ」

マルコ「え」


ユミル「こそこそと陰で動いてる連中がな。勝負師の血が騒ぐねぇ」

マルコ「……」

ユミル「私に喧嘩を売った時が終末の時ってことを思い知らせてやる」

マルコ「……はは」

ユミル「なぁに、1週間もあれば解決するさ」


マルコ「頼もしい発言だけど、1人で行動はさせないよ」

ユミル「ったく……信用ねぇな」

マルコ「この件は僕から皆に伝えておく。誰かが必ず君の傍にいるようにするから」

ユミル「必要ねーっての」


マルコ「君1人だけの問題じゃないんだ。協力するのは当たり前だろ?」

ユミル「言うねぇ。じゃ、お言葉に甘えてバレない程度に監視でもしといてくれよ」

クリスタ「私もユミルのこと、守るから」

ユミル「おう。期待してるぜ、私の女神さんよ」


…数日後。


ユミル「……」

ユミル(教官の巡回とやらはあてにならんな)

ユミル(キースはああ見えて人をよく見てるが、他はのんびりとした奴も多いし仕方ないか)

ユミル(使わない時、倉庫には鍵がかかっている。鍵当番とその周辺を監視しても何もしていないとマルコは言ったが)


ユミル(あんな鍵、ちょっと知識があれば針金で開けることくらいできる)

ユミル(優等生には考えつかんだろうがね)

ユミル(……で、ネジが緩められているわけだが。馬鹿の一つ覚えか)

ユミル(しかし今日は視線が熱いねぇ)


クリスタ「……ユミル」

ユミル「ああ、問題ねぇ。ところでクリスタ、ちょっと耳かせ」

クリスタ「な、なに?」

ユミル「……驚くな、目線は下に。私の言う通りに動いてくれ」ヒソヒソ

クリスタ「え……」


ユミル「私の右斜め後ろの奴。そいつのことを後でマルコに報告しろ」ヒソヒソ

クリスタ「!……うん」

ユミル「な、そう思わね?」

クリスタ「えっと……」


ユミル「やっぱ揉むとでかくなるんかねぇ。そうだ、いっちょお前のも」モミモミ

クリスタ「!!!!?!?」

ユミル「うーん、こりゃ発育させるのも大変かもなぁ」

クリスタ「っっっっ!! ユミルの、馬鹿ッ!!!」ガタッ

ユミル「お、おお?」


クリスタ「知らないっ! もう知らないっ!」

マルコ「ど、どうしたの、クリスタ」

クリスタ「! マルコ……」

マルコ「いや……何かあったの?」

クリスタ「……」


クリスタ(……私を怒らせて、マルコに何かあったんじゃないかと思わせて声をかけさせたの)

クリスタ(でもいくらなんでも、酷いよユミル)グスッ

マルコ「クリスタ……?」

クリスタ「……ユミルなんて知らない。もう今日は一緒にいてあげないんだから」

マルコ「……」


クリスタ「……」ジッ

マルコ(……なるほどね)

マルコ「なら、今日は僕と組むかい?」

クリスタ「いいの?」

マルコ「もちろん」


ユミル「……ちっ、マルコの奴」

ユミル「くっそ……そーだ、こういう時はあれだな。おーい、ベルトルさーん」

ベルトルト「……?」

ユミル「とぼけたツラしてんじゃねぇよ。勝負、受けてくれるんだろ?」


ベルトルト「……いいよ。でもクリスタは?」

ユミル「マルコに取られちまった」

ベルトルト「なにか怒ってたみたいだけど……」

ユミル「痴話喧嘩だ。お前に話すことじゃねぇよ」

ベルトルト「そ。でもどうせ君が何かしたんだろ」


ユミル「あいつが小せぇのが悪いんだよ」

ベルトルト「小さくてもいいじゃないか」

ユミル「そうか? 大きい方がいいんじゃねぇの」

ベルトルト「大きすぎると困ることのが多いよ……」

ユミル「ま、そうだな。肩凝りそうだし」


ベルトルト「確かに……下向いてばかりだと凝るね」

ユミル「だよなぁ。腰にもきそうだ」

ベルトルト「だから大きすぎてもいいことないよ」

ユミル「そっか、ベルトルさんは小さい方が好きなのか」


ベルトルト「……別に、小さい方が好きってわけじゃ」

ユミル「うーん、ちっぱいか好きか」

ベルトルト「……ん?」

ユミル「夢の詰まった方じゃなくって」

ベルトルト「……待って、身長の話じゃ」

ユミル「あ? 胸のでかさに決まってんだろ」

ベルトルト「…………」


ユミル「人に夢を与えてしまったが故に小さくなってしまうんだ」

ベルトルト「…………」

ユミル「あいつも苦労してんだぜ。ん? どうした?」

ベルトルト「……何でもない。今日は絶対勝つから」

ユミル「クククッ。今から言い訳考えておけよ」



「…………」

風邪をひくとくだらない話を書きたくなる。ちっぱい万歳


…立体機動訓練用の森。


ユミル「今日は瞬発力と機動力を見るだけで、巨人模型は設置されてないそうだ」

ベルトルト「……あまり得意じゃないな」

ユミル「運も実力のうち、と言いたいが、謙遜はよくねぇな。お前に勝てる奴は数えるほどしかいねぇよ」

ベルトルト「君はその中の1人に当てはまりそうだけど」

ユミル「ククッ、言い訳が見つかって良かったじゃねぇか。……ところで、勝てたら頼みがあるんだが」

ベルトルト「……嫌な予感しかしない」

ユミル「耳かせ、耳」


ユミル「装置に細工がされていた。合図とともに最高速度で飛び出すぞ」ヒソヒソ

ベルトルト「!……」

ユミル「終盤超えたあたりでネジがふっ飛ぶ。確認するために向こうも後ろから来てるはずだ。話をあわせろ」ヒソヒソ

ベルトルト「……別の頼みはないの」

ユミル「ねぇよ。お前だから頼むんだろ」


ベルトルト「はぁ……君に関わるとろくなことがない」

ユミル「そういうなって。結構いいコンビだと思うがなぁ?」

ベルトルト「全く思わない」

ユミル「つれねぇやつだな」

ユミル(……ちらちら見やがって。だがそれも今日で終わりだよ)



「…………」


教官「本日のコース・条件はさっき言った通りだ!」

教官「では……はじめ!」

ユミル「お先っ!」バシュッ

ベルトルト「……」バシュッ

ジャン「なっ、フライングじゃねぇの」

クリスタ「……」

マルコ「大丈夫、ベルトルトがついてる」

クリスタ「……うん」


・・・・・

ユミル「ひゃっほー! ベルトルさーん、差が開いてきてんじゃねぇのー?」

ベルトルト「……はぁ」

ユミル(いい感じに後続とは距離がついた。先を行ったのはミカサと、それを追ってジャンか)

ギチギチギチギチ…

ユミル(……そろそろか。高度落としてっと)


キィンッ!!

ユミル「うおっ」シュー!!

ベルトルト「!」

ユミル「……」カチッカチッ

ユミル(こえぇぇぇ、ガスの調整ができねぇってこうなんのかよ)

ユミル(緩められたのは弁の部分だったが……)


ユミル(少々吹かし気味に飛んでなきゃ残りのガスが一気に噴射して、最高速のまま木にぶつかるしかなかったが)

ユミル(これなら、まだいけるな)

ユミル「食らえ、ユミル様渾身の飛び蹴り……!」


バシーン!!


ユミル「いっっっって! この木、丈夫すぎだろ!!」

ベルトルト「ユミル!」スタッ


ユミル「着地成功っと」

ベルトルト「……緩めたまま飛ぶなんて、無茶苦茶だ」

ユミル「この程度の罠じゃどうってことないし、いい餌になる」

ユミル「今の音と衝撃で鳥が一斉に飛んだ。直にここに確認しに来るだろうさ」

ベルトルト「……」

ユミル「じゃ、私は寝る。お前の演技に期待しとくぜ」


ユミル(頭抱えて……こんな感じでいっかな)ゴロン

ユミル(さぁて、誰が来るかねぇ)

パシュッ、シュルルルル…

ユミル(おいでなすったか。頼んだぜ、ベルトルさん)


「……」

ユミル(……ん?)

「……今の」

ユミル(…………んん?)

ベルトルト「……大丈夫。気を失ってるだけだ」

アニ「……そう」

ユミル(…………は?)


パシュッ、シュルルルル…

「おいアニ! 置いてくなよ!」

アニ「緊急事態だから確かめようって言ったのはあんただろ」

「そうだけど……って、ベルトルトに、ユミル? え、どうしたんだ」

ユミル(…………はぁ、ビビった。本命が来てくれたか)


ベルトルト「……装置が故障、したみたい。受け身は取れてたからか、骨折までは」

アニ「……」

「なっ、故障?」

ベルトルト「脳震盪、起こして……気を失ってるだけだと思う」


「おいおい、なんでそんな冷静なんだよ」

アニ「こんな状況だからこそだろ。あんたこそ落ち着いたら」

「お、俺は落ち着いてる。てか、教官に報告だろ」

アニ「……」

「アニ、お前俺より早いだろ、行ってくれよ」

アニ「面倒だ。あんたが行けばいいだろ」

「俺はベルトルトとユミルを運ぶから……」


アニ「……」

ベルトルト「……アニ、お願い」

アニ「……後で」

ベルトルト「……」


パシュッ、シュルルルル…


ベルトルト「……」

「……よし。でも脳震盪なら動かさない方がいいのか?」

ベルトルト「なるべく動かさないように運べばいい。ここからなら終着まで歩いても10分程度だから」スッ

「お? おお……やる、な」

ユミル(…………おい)


「でもそれだと装置が邪魔だろ。俺が預かっておいてやる」

ベルトルト「……お願い」

ユミル(おい、まて、ちょっと)

カンカンカン

「……ガス管、空だな」

ユミル(おまっ、なにしやがるっ!)

ベルトルト「……ネジでも外れたんだろ」

「そっか……災難だな」


ユミル(…………)

ユミル(………)

ユミル(……)

ユミル(なんっっっで! そこで! お姫様抱っこになるんだよおおおお!!!)


…終着地点。


キース「……今、担架を運ばせるところであったが」

ベルトルト「はっ。距離も近く問題ないと判断致しました」

キース「……」スッ

ユミル(こ、こぇぇ)


キース「レオンハートの報告では、受け身を取れていたそうだが。貴様が実際の目撃者だな」

ベルトルト「はい」

キース「……軽い脳震盪か。よかろう、馬車を用意する。先に戻って医務室に運べ」

ベルトルト「ハッ」

キース「故障した装置は私が預かる」

「は、はい」


クリスタ「……ユミル!?」

マルコ「そんな、どうして……」

ベルトルト「大丈夫。気を失ってるだけだ」

クリスタ「……あなたのこと、信じていたのに」キッ

ベルトルト「よく見て」ヒソッ


ユミル(クーリースータぁぁぁ!! 助けてくれぇぇぇ!)ニッ

クリスタ「…………」

マルコ「…………」

ベルトルト「先に戻ってるから、後はお願い」

マルコ「……任せて」

クリスタ「……何かあったら承知しないから」


ユミル(おい、まて、一緒に来てくれるんじゃないのか?)

ベルトルト「……じゃあ」

マルコ「うん。"大人しく"運んであげてね」

ユミル(おぃぃいいいい!!)


…馬車内(先に帰されたため車内は2人きり)


ユミル「……」ブスー

ベルトルト「……いい加減機嫌なおしたら」

ユミル「あんな醜態晒させておきながらよくそんなこと言えるな」

ベルトルト「言っとくけど、マルコの指示だから」

ユミル「は?」


ベルトルト「君が何か無茶したら手段を問わず無力化させること。僕とライナー、ミカサにだけ言ってるらしいけど」

ユミル「……あんにゃろう」

ベルトルト「本当は訓練前に止めても良かったんだ。けどそうしたら君、怒るだろ」

ユミル「当たり前だ。そんなことしようもんなら金玉潰して不能にしてやる」

ベルトルト「だからここまでにして。まぁ……今頃、皆で犯人を問い詰めてるだろうけど」


ユミル「被害者の私に尋問させないつもりか」

ベルトルト「君がすると、どこまでするかわからないから。それに被害者は君だけじゃない」

ユミル「けっ、優等生どもが」

ベルトルト「……足は」

ユミル「なんだよ」

ベルトルト「痛めたんじゃないのか。さっきので」

ユミル「あー……まぁ歩けんことないだろ」


ベルトルト「見せて」

ユミル「は? やだよ」

ベルトルト「車内に応急処置箱が用意されてた。たぶん、キース教官は気づいてる」

ユミル「……あのハゲ」

ベルトルト「諦めなよ。勝ちの決まった勝負で深追いして傷を負うのは愚蒙だ」

ユミル「……説教か」

ベルトルト「……別に」


ユミル「勝利をより確固たるものにすることも重要だろ」

ベルトルト「……でも、今回は君より適任者がいるよ」

ユミル「誰が」

ベルトルト「アルミン」


ユミル「……」

ベルトルト「……マルコが、相談してた」

ユミル「そーいうことは先に言えよ。ったく……」

ベルトルト「……ごめん」

ユミル「やけにお前らの手際がいいと思ったら、そういうことか」


ユミル「箱ん中から薬と包帯よこせ。自分でやる」

ベルトルト「……」

ユミル「手を負傷したわけじゃない。自分でできる」

ベルトルト「……」スッ


ユミル「……」

ベルトルト「……」

ユミル「……なあ」

ベルトルト「……」

ユミル「勝ちにこだわるのは、悪いことか」


ベルトルト「……正しく答えられる適任者は他にいるよ」

ユミル「お前に聞いてんだよ」

ベルトルト「……はぁ」

ベルトルト「まぁ……誰も、負け戦は、したくないんじゃないかな」

ユミル「したこと、あんのか」

ベルトルト「……」


ユミル「悪い。聞きすぎたな」

ベルトルト「……でも」

ベルトルト「それでも、ほんの少しでも勝機があるのなら。戦わなきゃいけないことも、ある……と、思う」

ユミル「……そうか」

ベルトルト「彼らは、手に入れたかった。それを僕らから……奪いたかっただけ」

ユミル「お前……」

ベルトルト「絶対に……何としてでも」


…一方、その頃。


「うまくいったの」

「いや……気を失っただけだった」

「……」

「くそっ」


「ねぇ……もう止めにしようよ」

「なんでだよ」

「無理だよ、もう。敵いっこないよ」

「だから危ない橋渡ってんだろ」

「でも、私……」

「……だめだ。俺たちはどうしても内地に行くんだ」


「……」

「内地のお医者様に、診てもらうんだ。この辺の医者はやぶ医者だからな」

「でも、母さんだって、こんなこと」

「だからって黙って見てるってのか? 憲兵になれば金も手に入る、いいお医者様にも診てもらえるってのに」

「……」

「次はしくじらない。必ず、必ず……」


ミカサ「何を必ず、なの」

「!?」

ミカサ「いた。マルコ、こっち」

マルコ「……本当に、君たちが」


「はは……何のことだよ、怖い顔して」

「……」

ミカサ「ユミルの装置に細工をしたのはあなた。違わない?」

「おいおい、何で俺がそんなことしなきゃならねぇんだ。だいたいユミルのは故障だろ」

ジャン「過去に俺らの装置にも細工がしてあった。先に気づいたから事故にならなかっただけだ」

「……へぇ。そんなこと考える怖い奴もいるんだな」

ジャン「点検の段階で、ユミルはクリスタに後ろに隠れてる奴を見張れって言ったんだよ」


「……」

クリスタ「ねぇ、どうして……どうして、こんなこと」

「……ユミルが何でこいつを見張れって言ったんだ?」

クリスタ「そ、それは」

「本当はユミルが細工してて、今回俺たちに罪を擦り付けようとしたんじゃねぇの」

クリスタ「そんなこと! ユミルはしない!」


「あいつならやりかねないじゃないか。そうだ、きっとそうだよ」

クリスタ「違う……」

「な、お前もそう思わないか? ジャン」

ジャン「……可能性は、ゼロじゃねぇな」

クリスタ「ジャン!」


ジャン「でもユミルはそんなことせずに上位に上がれるんだよ。あえてリスクを背負う必要がねぇ」

マルコ「ああ。彼女は、本来なら僕らより上にいてもおかしくない」

ジャン「普通に考えて、こんなことするのは個人的に恨みがあるか」

「上位陣を妬んでの犯行、だね」

「……アルミン」


アルミン「個人的な恨みというなら、何も上位陣全員に細工をしなくてもいい」

アルミン「いや、あえて行うことで誰を狙っているのかわからないようにする目的は達成できる」

アルミン「でも何故、途中で5位以下に狙いを絞ったのか」

アルミン「何故、浮上したばかりの人は狙われやすいのか」


アルミン「効果が見られないから対象から外した、とはマルコの意見だったけれど」

アルミン「最初は、ミカサたちを狙っていたんだ。気づいた時の日時と回数を聞いて回ったら、その事実は明らかだった」

アルミン「細工に気づかずに訓練をして、後から気づいたこともあったらしい」

アルミン「それを横から監視していた。確かに効果が見られなくて対象から外したのではあるけど、仕方なくだ」


アルミン「頑張れば追い越せる。そう思っていたんだろうね」

アルミン「ミカサたちは2年目の半ば過ぎたあたりからだったから。マルコたちが気づいた終わりごろとは、少し時期がずれる」

アルミン「3年目に入って、成績を伸ばす人が増えはじめた。犯人は焦りを覚えたはずだよ」

「……それと俺たちが、どう関係すんだよ」

アルミン「僕みたいに最下位争いをしている人間は、自分の順位なんて正直どうでもいい」

アルミン「でも君は違う。届きそうで届かない、あと数席の空きが出れば内地への道が切り拓ける」

「……」


アルミン「動機は、こんなところじゃないかな」

「……確かに、お前ら上位陣と呼ばれる10位内の人間が羨ましいよ。でもだからって、俺がやったという証拠はない」

「ユミルもなんでこいつを……。いい迷惑だよ」

アルミン「……」

「そろそろ行っていいか。休みたいんだ」

「疲れてるところ悪いが、もう少しつきあってもらおうか」

「……お前もか、ライナー」


ライナー「本当は出てきたくなかったんだがな」

キース「……」

「きょ、教官」

アルミン「……倉庫のカギは、1週間前に新しいものに交換されていたんだ。合鍵の疑いもあったから」

アルミン「でも新しい鍵でも犯行は行われてしまった。訓練前に全員出ていってから鍵を調べたんだけど」

アルミン「傷が、ついていた。普通の鍵ではつかないような傷がね」


アルミン「新しく交換された鍵は、ちょっとやそっと齧った程度の知識じゃ開けるのが難しいものだった」

アルミン「そもそも犯罪を助長しかねない本は検閲の対象だ。普通の人が鍵開けの技術を修得することは、難しい」

ライナー「……確かお前らの実家は、鍵屋だったな」

「……」


「……もう止めようよ、兄さん」

「お前ッ!」

「止めよう。私たちの負けだよ」

キース「……認めるのか」

「……はい」

「……くそっ」

キース「2人は後で教官室に来るように。そして貴様らは――」


…その夜、女子寮。


クリスタ「……ということで、私たちは他の人に何も言ってはいけないの」

ユミル「そうだろうよ。装置に細工されるなんて知ったら、訓練所内が不穏な空気に包まれちまう」

ユミル「ったく……だから私が一発殴って白状させたかったんだ。アルミンめ、勝手な真似しやがって」

クリスタ「そんなことしたら、ユミルまで罰を受けることになるじゃない」

ユミル「知るかよ。あー、怪我のし甲斐がねぇ」


クリスタ「でも……あんなに、仲のいい兄妹だったのに」

ユミル「……」

クリスタ「なんで、こんなこと……」

ユミル「……さぁな」


…数日後。


「なぁ、ほんとに帰っちまうのか?」

「お前なら憲兵狙えたんじゃねぇの」

「……母さんが病気でさ。こないだ、また倒れたみたい、で」

「あー、だから教官室呼ばれたのか。で、大丈夫なのか?」

「……教官が、いいお医者様紹介してくれる、って」

「おー、良かったな」

「うん……」


クリスタ「……」

マルコ「母親が……病気だったのか」

ジャン「だからって、やっていいことと悪いことがあるだろ」

ユミル「……」スタスタ

クリスタ「ユミル……?」


ユミル「よぅ、帰るんだってな」

「ユミル……その、」

ユミル「お前んち鍵屋なんだろ」

「ああ……」

ユミル「今度鍵の開け方教えろよ。今の私の技術じゃ開けられない鍵があってよ」


「なっ、お前開け方知ってんのかよ」

ユミル「私に出来ないことはねぇんだよ」

「でも開けられない鍵あるんだろ?」

ユミル「うっせぇな。開けられないなら壊せばいいんだよ」

「うへぇ、怖ぇ女だぜ」


「……」

ユミル「お前も鍵屋なら、私が壊せねぇもんでも作ってみるんだな」

「……ああ」

ユミル「じゃぁな」クルッ


「……ユミル!」

ユミル「……」

「………ありがとう」

ユミル「ケッ」


マルコ「……ははは」

クリスタ「素直じゃないよね、ユミルって」

マルコ「だね。あ、でもベルトルトに運ばれてる間は大人しかったな」

クリスタ「そういえば。ひょっとしたら息が合ってるのかも。よく勝負してるし」


マルコ「んー……あれ、でも」

クリスタ「?」

マルコ「いや……ま、今後ユミルが暴走しそうになったら彼に頼もうか」

ユミル「誰に頼むって?」

マルコ「ベルトルト」

ユミル「やめろ、その名前は聞きたくねぇ」


クリスタ「どうして?」

ユミル「どうしてもだ。あんな性悪男」

マルコ「君を運んでくれたのに……」

ユミル「やめろ、思い出すな、忘れろ」

マルコ「ふふ、これは効果覿面だね」

クリスタ「だね」

ユミル「……くっそ。怪我が治ったら今度こそけちょんけちょんにしてやる」


…数日後。


ユミル「よし。今日から訓練復帰だ!」

クリスタ「ふふ、嬉しそうだね」

ユミル「医務官も心配性すぎるんだ。たかが捻挫くらいで」

クリスタ「ユミルが無茶する性格だってわかっちゃったしね」

ユミル「知るかよ。あー、訓練は面倒くせぇのにしなきゃ体がなまるってなんだかなぁ」


クリスタ「そういえば組む人の制限解除されてるけど、どうしよっか?」

ユミル「あ、そうだったのか?」

クリスタ「ユミルってば……ベルトルトとの勝負が楽しすぎて気づいてなかったの?」

ユミル「……んなことねぇ」

クリスタ「ふふ。聞きにいってみようよ」


・・・・・

クリスタ「ベルトルト―!」

ベルトルト「……クリスタ?」

ユミル「よぅ。こないだの決着つけようぜ」

ベルトルト「……ごめん、今日は」

「あっ、ユミル! ちょっとこっち!」

ユミル「お前は……」


「この前、ユミルのおかげで初めて組めたけど……ふふっ、彼ってば、本当に優しいの」

「教え方もだけど、声も、話し方も、仕草も。私、ますます好きになっちゃった」

「それで……頑張ってみようかな、って」

ユミル「……頑張る?」

「うん。積極的に! 声かけてみようかなって」

ユミル「……そうか」


「ありがと、ユミル。私、あなたのおかげで変わることができそう」

ユミル「……良かったな」

「それと……あまり、言いにくいんだけど」

ユミル「……」

「彼、ユミルからの勝負、あまり受けたくないんだって……」

ユミル「……は?」


「ユミルに怪我させちゃうから」

ユミル「ベルトルさんが、そんなことを?」

「うん。ユミル楽しみにしてたから、私からも一度くらいはって言ってみとくね」

ユミル「……」

「あ、そろそろ時間だね。じゃあ」

ユミル「……ああ」


ユミル「……」

クリスタ「……ユミル」

ユミル「行こうぜ、クリスタ」

クリスタ「う、うん」

ユミル「……」

クリスタ(ベルトルト……どうして?)


…夜。


クリスタ(……眠れない)

・・・・・

ベルトルト『……話って』

クリスタ『ユミルのこと。勝負してくれないの? ユミル、あんなに楽しみにしてたのに』

ベルトルト『……』


クリスタ『ユミルの怪我を心配してるって聞いたわ。でも怪我なんて恐れてたら訓練なんて……』

ベルトルト『今回は……たまたま、運が良かっただけだ』

クリスタ『え……』

ベルトルト『対人格闘を思い出してごらんよ。勝つためには怪我することを惜しまない』

クリスタ『……』


ベルトルト『立体機動でそんなことしちゃ、最悪命を落としかねない。……違うかな』

クリスタ『それは、そうだけど……』

ベルトルト『……ごめん。もう行かなきゃ』

・・・・・

クリスタ(何も、言い返せなかった)


クリスタ(確かにユミルは、勝つことにこだわってる。でも大きな怪我はしないようにしてるし…)


ユミル『負けるの恐れて怪我を理由にする奴なんか糞だ。そんな奴に勝ってもつまんねぇよ』


クリスタ(って言ってたけど、どこか悲しそうだった。私には、わかる)

クリスタ(私にできること……何かないのかな。……そうだ!)


・・・・・

ライナー「ベルトルト、ちょっといいか」

ベルトルト「? どうしたの」

ライナー「いや……ユミルのことなんだが」

ベルトルト「……クリスタに頼まれでもしたの」

ライナー「うむ……」

ベルトルト「……」


ライナー「……適当に組んで負けてやったらどうだ」

ベルトルト「そんなことしたら余計怒ると思うけど」

ライナー「しかしなぁ……」

ベルトルト「……少し、関わりすぎた」

ライナー「ん?」

ベルトルト「……」


ライナー「何かあったのか」

ベルトルト「……何も」

ライナー「関わりすぎつっても、お前は関わらなさすぎだと思うが」

ベルトルト「……ねえ」

ライナー「?」


ベルトルト「君は、大丈夫なの」

ライナー「何がだ?」

ベルトルト「何が、って……」

ライナー「……」

ベルトルト「……」


ライナー「……大丈夫だ」

ベルトルト「……そう」

「ライナー! ちょっと来てくれよ!」

ライナー「ああ、今行く」

ベルトルト「……」

ライナー「クリスタには俺から話しておく」

ベルトルト「……うん」


…3ヶ月後(卒団まであと半年)。


ユミル(どうやらクリスタがライナー経由でベルトルさんを説得させようとしていたみたいだが)

ユミル(『代わりに俺が相手してやろうか』と来たもんだ。願い下げだがね)

ユミル(……避けられてるな、こりゃ)


ユミル(踏み込みすぎたかねぇ……。ったく、面倒な男だぜ)

ユミル(そんなに嫌なら話さねぇよ)

ユミル(しかし参ったな。私に遠慮してか、クリスタの奴……ライナーとの接触を避けてやがる)

ユミル(あいつだって、努力すれば上位に滑り込む実力はある。うまくサポートしてくれる奴がいれば……)


「あー終わったー」

「座学が訓練で一番疲れるわ……」

「飯行こうぜ、飯」

「ユミル、どうする?」

ユミル「クリスタ戻ってくるかもしれねぇし、ちょい待つわ」


「そっか。でもサシャが腹痛なんて珍しいなぁ」

ユミル「どうせ拾い食いでもしたんじゃねぇの」

「ふふ。じゃ、先行くね」

ユミル「おう」

ユミル「……医務室の付き添い、私も行ってサボりたかったなぁ、やれやれ」


ユミル「…………」

ユミル「………」

ユミル「……」

ユミル(戻ってこえねぇ)

ユミル(教室にも人が少なくなってきたが、今日のカギ閉め当番は……アニか)ハァ


「ヤダ、マジ?」

「ほんとほんと。最近、夜に宿舎裏で女性の喘ぎ声が聞こえるんだって」

「うっそ、信じらんなーい」

「よく1人で外に行ってるけど、まさかねー?」

「あんな女に手を出す男も、よっぽど飢えてんじゃないの」

「意外とテク持ってるのかもよ」

「えー、ヤダー」


ユミル「……うぜぇな。そんなでけぇ声で猥談なんかすんなよ」

「……なによ、ユミル。もしかしてあなたなの」

ユミル「ちげぇよ。そんなの興味あんなら男捕まえてヤりゃいいだろ」

ユミル「なんならどうすりゃ男が悦ぶか教えてやろうか?」

「……やだ、なにこいつ」

「いこいこ」


アニ「……どうも」

ユミル「別に」

アニ「……」

ユミル「……なぁ」

アニ「……」

ユミル「いっつもどこ行ってんの」

アニ「……」

ユミル「……無視かよ」


アニ「答える必要がない」

ユミル「そうかい。まぁお前のことだから、宿舎裏なんてすぐに見つかる場所でするわけねぇよな」

アニ「……なにが言いたいの」

ユミル「別に。ヒニンはしとけよ」

アニ「大きなお世話だ」


ユミル「…………ぷっ」

アニ「なに笑ってんのさ」

ユミル「あー、もう。お前らそっくりだよ」

アニ「……」

ユミル「言うつもりなかったんだけどな。人に隠すつもりなら、もっと工夫しな」

アニ「……なんのこと」


ユミル「付き合ってんだろ。ベルトルさんと」

アニ「……は?」

ユミル「見たんだよ。お前らが森の小屋から出てくるところ」

アニ「……」

ユミル「返事の仕方も、間の取り方も。一緒にいると似るとはいうけど、そっくりだ」


アニ「……」

ユミル「言わないかわりに勝負を受けてもらってたんだよ。最近は断られてるが」

アニ「……そう。そういう、ことか」

ユミル「聞いてなかったのか?」

アニ「……」


ユミル「誤解を与えてたなら悪い。しかしお前も意外と嫉妬深かったんだな」

アニ「……悪いけど。あんたの想像してる関係じゃない」

ユミル「あ?」

アニ「私らは……ただの同郷だ」

ユミル「あ? どう、きょう?」

アニ「……」


ユミル「え……なん、で」

アニ「同郷だからって……誰もが、仲いいってわけじゃないんだよ」

ユミル「……でも、2人きりで会う間柄なんだろ」

アニ「相談されてたんだよ。あいつ、友達少ないから」

ユミル「それはお前もだろ」


アニ「私には必要ない」

ユミル「ふぅん。で、なんでまた一緒に行動しないんだ」

アニ「さっきも言ったろ。誰もがそうってわけじゃない」

ユミル「エレンたちとは違う、か」

アニ「……」


ユミル「あの日……何かあったのか」

アニ「答える必要はないよね」

ユミル「まぁな。しっかし……同郷、か。同郷……」

アニ「もういい? 部屋閉めたいんだけど」

ユミル「んー、クリスタ戻ってくると思うんだが」

アニ「だったらあんたが閉めといてよ」

ユミル「やだよ。付き合えよ、鍵当番さんよ」

アニ「……はぁ。ほんと疲れる奴だ」


ユミル「そういやお前、あの時なんで協力しなかったんだ」

アニ「あの時?」

ユミル「立体機動装置の細工事件」

アニ「……」

ユミル「お前も狙われてたんだろ?」

アニ「……ああ」


ユミル「……いや、あの日、あいつと組んでたんだよな」

アニ「……」

ユミル「まさかとは思うが……偶然、だよな?」

アニ「さぁ」

ユミル「……お前」

アニ「……」


ユミル「知ってた、のか」

アニ「……どうかな。私は倉庫近くで挙動不審だったあいつに声をかけただけだ。半年前にね」

ユミル「半年前って……」

アニ「なにをしてるか知らないけど、"私に"迷惑かけるようなら、妹がどうなっても知らないと言っただけ」

ユミル「おい」


アニ「証拠がないんだ。仕方ないだろ」

ユミル「ハッ……立派な共犯じゃねぇか」

アニ「人聞きの悪いこと言わないでくれる。私は自分の身を守るのに必死なだけさ」

ユミル「"か弱い乙女"とでも言いたいのか? ふざけんなよ」

ユミル「お前がその時他に言っとけば、長引くことも……あいつらが退団することもなかったかもしれねぇのに」


アニ「……いずれ、あの子らはここを去っただろうよ」

ユミル「なんだって?」

アニ「上位はもはや決定したもんだ。あの子らの入る猶予なんて、どこにもない」

ユミル「……」

アニ「同情……しちまったのかもしれないね。あんたたちには悪いけど」


ユミル「……そこまでして、憲兵になりたいのか」

アニ「……」

ユミル「憲兵の何がいいってんだよ……!」

アニ「……」

ユミル「気に食わねぇ。ああ、イライラする」


アニ「……教官に報告するのかい」

ユミル「そうだな。お前なんかが憲兵になっちゃ、この国は腐っちまう」

アニ「今更だと思うけど」

ユミル「……」

アニ「行動には気をつけた方がいい。友達が大切、ならね」

ユミル「! お前は……!」


アニ「……」

ユミル「ああ……そっくりだよ、どこまでも」

アニ「そう。あいつも、言ったんだ」

ユミル「反吐が出る。お前ら、何が目的でここにいる? 何をしに内地へ行こうとしてる?」

アニ「……」

ユミル「答えろ、アニ!」


クリスタ「ただいま、ユミル……ユミ、ル?」

ユミル「……」

クリスタ「どうしたの、そんな怖い顔、して……」

ユミル「……行くぞ。こんな奴と一緒にいたくねぇ」

クリスタ「えっ……また、喧嘩でも、」

ユミル「行くって言ってんだろ!」

クリスタ「……」ビクッ


アニ「……気になるなら、聞いてみればいい。私より答えは的確だと思うよ」

ユミル「ああそうかい、そうするよ」

クリスタ「えっと……アニ、またね?」

アニ「ああ」


ユミル(くそっ! くそっ!!)

クリスタ「ユミル……」

ユミル(なんで気づかなかった。なんで聞いてしまった)

クリスタ「ねぇ、どうしたの?」


ユミル「なんでもない。ただ、アニには近づくな」

クリスタ「え、どうし、」

ユミル「近づくなよ」

クリスタ「……」

ユミル(くそっ、深入りしすぎた! どうすりゃ……どうすりゃこいつを守れる?)

ユミル(考えろ。まずは落ち着いて情報を集めるんだ。私にもまだ勝機は、ある)

ツヅク。ちな>>331はフラハン。

>>333>>334の間に入れ忘れたぁぁぁ!大事な、やり取り、なのに。

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ユミル「はっ、少しは恥ずかしがるかと思ったが」

アニ「呆れた……そんなに人に喧嘩売って楽しいの」

ユミル「ああ楽しいね。喧嘩は私の生きがいの1つさ」

アニ「……そう」

ちげぇ>>334の後でした……チクショウ、チクショウ

>>346
×猶予
○余地
モウダメダ


…夜、古井戸傍。


ユミル「遅い!」

ベルトルト「急に呼ばれても困るって言っただろ……」

ユミル「……」

ベルトルト「話って、なにさ」

ユミル「……」

ベルトルト「ユミル……?」


ユミル「知ってたんだろ」

ベルトルト「え……」

ユミル「あいつらのこと! あいつらがやったってこと!!」

ベルトルト「……」


ユミル「アニから聞いた。お前たちの関係も」

ベルトルト「なん、で……」

ユミル「そんなことは後で聞けばいい。質問に答えろ。お前は、知ってたのか」

ベルトルト「……ああ」

ユミル「……くそっ!」


ユミル「最っ低だぜ……お前ら」

ベルトルト「……言い訳はしないよ」

ユミル「当たり前だ!!」

ベルトルト「……」


ユミル「怪我を心配? 笑わせてくれるぜ」

ユミル「死ぬかもしれない罠をお前らは黙ってくれてたってわけだ」

ユミル「ああ……なんてこった、すっかり騙されてたよ」

ユミル「なぁ、お前ら……なんでこんなことした?」

ベルトルト「……君も言ったはずだ。勝利をより確固たるものにするために」


ユミル「そうかい、そうかよ……」

ユミル「だが深追いしすぎたんじゃねぇの。私にバレちまった」

ベルトルト「……」

ユミル「あいつらに同情したってアニは言ってた。お前は、お前も……いや、もうどうだっていい」

ユミル「何のためにこんなことをする? お前らは何を狙ってやがる」

ベルトルト「……」

ユミル「答えろ、ベルトルト」


ベルトルト「……やらなきゃいけないことがある」

ユミル「……」

ベルトルト「そのために、内地に行く権利が必要だ」

ユミル「……憲兵への復讐か?」

ベルトルト「……言えない」

ユミル「答えろ」

ベルトルト「これ以上、踏み込まないでくれ!」

ユミル「っ……」


ベルトルト「……お願いだ。彼女が、大切なら」

ユミル「……ハッ、そう来ると思ったよ」

ユミル「でもそれを実行したら、お前らも後がないぞ」

ベルトルト「条件があるなら、呑む。出来る範囲でなら」

ユミル「……」

ベルトルト「……」


ユミル「……選択肢を増やしてやりたい」

ベルトルト「……」

ユミル「クリスタのな。あいつだけでいい、何としてでも」

ベルトルト「……そう」

ユミル「あいつが憲兵を選んだとしても、お前らとは行動させない」

ユミル「けど……あいつには、自由に生きて欲しいんだ」




―――

―――――


『あなた、苗字ないんだってね。捨て子なの?』

『どうせ内地の地下で産まれた娼婦の子なんでしょ』

『きったない。近寄らないで、病気がうつる』

バシャァ

『これで少しは綺麗になった?』

『いや汚いよ。見なよ、このソバカス』

『ほんと。なんであなたみたいなのと一緒に訓練しなきゃなんないの』


ユミル『だったら……放っておけばいいだろ』

『一緒の空気を吸うのも嫌だって言ってるの』

『とっとと開拓地に帰ってくれない? でもあなたが作った野菜食べたくないな』

『いっそ事故で死んでくれればいいのよ』

『あはは、それいいかも』

ユミル『……』


『ねぇ、死んでくれないかな。この見張り台から飛び降りればすぐに死ねるらしいよ』

『訓練に疲れた子が、何人もここで命を絶ってるって聞いたことあるね』

『あなたみたいな子、生きてても誰も喜びなんかしないよ』

ユミル『……るさい』

『なに? 聞こえない』

『聞かなくていいって。こんな汚物の言葉なんか』


ユミル『うるさい……私は、私だ。誰が、なんと言おうとも』

『きゃはは、聞いた? 馬鹿みたい』

『死ねっつってんだよ。ああ、家畜に人間様の言葉はわからないか』

『ほらほら、皆のためにそっから飛び降りろって』

『せーの、で楽になれるよー?』

キャハハハハ…

クリスタ『何してるの!? そんなところで!』


『……誰だっけ、あいつ』

『ああ……クリスタって子だよ、確か』

『あのお節介か』

『見りゃわかるだろー? あんたも手を貸してくれよー』

クリスタ『あなたたち……自分が、何をしてるかわかってるの!?』

『うっは、面倒なのきたわ』

『うっざいなぁ、あいつも一緒に飛ばしちまおうよ。開拓地の子でしょ』


ユミル『やめろ……』

『ほらほら、上がってきてー』

ユミル『やめろ!!』

『うわっ、何すんだよこいつ!!』

『やめてっ、痛いっ!』

『くっ、足場が悪い。逃げるよ!!』


ユミル『はぁっ、はぁ……』

クリスタ『大丈夫!?』

ユミル『……なんで、来た』

クリスタ『もうすぐ点呼なのに、見つからないから……』

ユミル『お前も殺されるところだったんだぞ』

クリスタ『でも、あなた無事だったじゃない』


ユミル『……』

クリスタ『服、濡れちゃってる。あまり意味ないかもしれないけど、これで……』

ゴシゴシ…

ユミル『……やめろ。汚れる』

クリスタ『洗えば平気だよ。それより風邪引くよ』

ユミル『……』

クリスタ『うーん……ひとまず、戻ろうか。着替えようよ』


ユミル『……イイコト、するなよ』

クリスタ『この前も言ってたけど』

ユミル『……』

クリスタ『私、あまり頭良くないから。あなたの言ってる意味がわからない』

ユミル『………ふはは』

クリスタ『?』


ユミル『お前は、この先も目の前で困ってる奴がいたら助けるつもりか?』

クリスタ『……ダメなの?』

ユミル『助けを必要としてる奴らなんかごまんといるぞ。いくら手があっても足りない』

クリスタ『それでも、私は……』

ユミル『女神にでもなるつもりか? 人々を救うっていう』

クリスタ『そんなつもりじゃ……』


ユミル『いいだろう。手を貸してやるよ』

クリスタ『ユミル……?』

ユミル『この先、お前が助けたい奴がいたら助けてやれ。でも私はお前を死なせない』

クリスタ『……』

ユミル『イイコトするんだろ? たくさんの』

ユミル『だったらどこまでもやりつくせ。それに見合った報酬を得るまでな』

ユミル『それまで守ってやるよ、私の女神様』

―――――

―――


ユミル「私には……私にも、譲れないものがある」

ユミル「あいつを、好きなように生かせてやりたいんだ」

ユミル「そのために、選択肢が欲しい」

ベルトルト「……」

ユミル「……これが、条件だ」

ベルトルト「……わかった。呑もう」


ユミル「……」

ベルトルト「……」

ユミル「……変なことになっちまったよ。お前に出会ってから」

ベルトルト「……ごめん」

ユミル「謝るな。お前みたいな糞野郎になんか」

ベルトルト「……そう、だよね。最初から、僕は……」


ユミル「……」

ベルトルト「……」

ユミル「……謝罪は受け入れない。そんなことするくらいなら」

ベルトルト「……」

ユミル「勝負、しようぜ」

ベルトルト「しょう、ぶ……?」


ユミル「ああ。怪我はしない範囲でな」

ベルトルト「……」

ユミル「私が一度でも勝てば、お前は憲兵を諦めろ」

ベルトルト「……勝負は受ける。でも僕は負けない」

ユミル「もう逃げんなよ。逃げたらどこまででも追いかけて、不能にしてやる」

ベルトルト「しつこいんだよ、君は」


ユミル「……ふはは」

ベルトルト「……ふふ」

ユミル「絶対に勝ってやる。勝って、クリスタだけを憲兵団に行かせてやるからな」

ベルトルト「僕は負けない。負けるわけにはいかないんだ」

ユミル「商談成立だな。契約書は必要か?」

ベルトルト「いらないよ、何も」

ユミル「じゃあ、こうしよう。耳かせ」

ベルトルト「? ……っ!?」


ユミル「……」

ベルトルト「……」

ユミル「……やっぱな。お前と私、相性いいと思うぜ」

ベルトルト「……そんな相性、僕はいらない」

ユミル「ハッ。お遊びは憲兵の嗜みだぜ」

ベルトルト「必要ない」

ユミル「お前言ってることとやってること、矛盾してるぞ」

ベルトルト「別に。僕には、必要ないだけだ」


ユミル「あっそ。まぁ……あっちは、よろしく頼む」

ベルトルト「ああ……何とかする」

ユミル「けど人を傷つけるのはなしだからな」

ベルトルト「……わかってる」

ユミル「いい子だ。じゃぁ私は戻る」

ベルトルト「……うん」


ユミル「やれやれ。気のきいた言葉くらいかけろよ」

ベルトルト「君には必要ないだろ」

ユミル「ケッ。おやすみ!」

ベルトルト「……おやすみ」

ツヅク。明日の分も投下シタッタ


…空き教室。


ユミル「……」

クリスタ「……どう、かな」

ユミル「よし、この科目は完璧だな」

クリスタ「ほっ……」

ベルトルト「次こっちね。まずはここなんだけど──」


クリスタ「ま、待って! 2人もそろそろ疲れたでしょ?」

ユミル「んなことないぞ、こっちは交互だしな」

クリスタ「わ、私は?」

ユミル「お前はまだこんだけやらなきゃなんねぇんだ」ドサッ

クリスタ「……」


ジャン「……なんだあれ」

マルコ「えっと……どっちがクリスタにうまく教えられるか、だって」

ジャン「クリスタもたいへんだな。でも解決したのか、あの2人」

マルコ「怪我をしないことを条件に勝負だって。ユミルが怪我をしたらユミルの負け、ユミルが1勝でもしたらユミルの勝ち」

ジャン「ふぅん」


コニー「でもよ、あれヤバくねえか?」

ジャン「クリスタが上位に入るかもな」

マルコ「なんせ2人がかりだしね」

コニー「そんな呑気なこと言ってる場合かよ!」

マルコ「うん。だから僕らもこうして勉強してるんだよ」

コニー「お、おお……そうだったな」


クリスタ「その……私にはどっちが、とか決められないんだけど……」

ユミル「いーや決められる。とにかく勉強しろ勉強」

クリスタ「ライナー……」

ユミル「あ?」ギロッ

ベルトルト「……」チラッ

ライナー「……すまん」

クリスタ「ううっ」


…立体機動訓練。


ユミル「いいか、手を抜いたら私の勝ちだし、私が勝っても私の勝ちだ」

ベルトルト「君が無理をして怪我をしたら君の負け、だからな」

クリスタ「……なんか、ユミルの方が条件良くない?」

ユミル「いいんだよ。一度逃げた罰だ」


ユミル「んじゃライナーさんよ、クリスタのことは頼んだぜ」

ライナー「ああ、任せろ」

ユミル「さって……行くかっ!」バシュッ

ベルトルト「……」バシュッ


ライナー「俺たちも行くか」

クリスタ「うん!」

ライナー「ゆっくりでいいんだからな」

クリスタ「ふふ、ライナーは優しいね」

ライナー「……行くぞ」バシュッ


・・・・・

クリスタ(うう、やっぱりみんな速いなぁ……)

クリスタ(どうやったらあんな風に飛べるんだろ)

ライナー「見えた、模型だ! まだ誰も手をつけてない!」

クリスタ「うん! ……あ」

ライナー「ぬ……」

アニ「……」シュッ


クリスタ(アニ……)


ユミル『アニには近づくな』


クリスタ(何があったの、ユミル……)

アニ「……」フッ

クリスタ「!?」

アニ「……」パシュッ、シュルルルル…


ライナー「……見逃したのか。珍しいこともあるもんだ」

クリスタ「……」

ライナー「よし、やるぞ」

クリスタ「う、うん……」

クリスタ(譲って、くれたの……?)


…夜、女子寮廊下。


クリスタ(いるかな、いるかな…………いた!)

クリスタ「ア、アニ」

アニ「……誰かと思ったらあんたか。私に近づいていいの」

クリスタ「えっと……それは、ユミルには内緒で」

アニ「……」


クリスタ「昼の訓練で……その、譲ってくれたでしょ?」

アニ「さぁ。覚えはないけど」

クリスタ「むぅ」

アニ「部屋に帰んな。ユミルが待ってるだろ」

クリスタ「ちょっと用事があるって、出ていっちゃったから……」

アニ「……そう」


クリスタ「えっと……その」

アニ「……」

クリスタ「あ、あのね! もし、迷惑じゃなければ、なんだけど」

アニ「……なに」

クリスタ「私に……立体機動術、教えて欲しいの……」


アニ「……」

クリスタ「め、迷惑だったらいいの! 勝手なお願いだから!」

アニ「……どうして、私に」

クリスタ「……小さい、から」

アニ「?」

クリスタ「身長、小さい、から……私と、一緒で」


アニ「ああ……そうだね」

クリスタ「そのっ、ユミルも、ベルトルトも、ライナーも、ミカサも、みんな大きいでしょ?」

アニ「……コニーは小さいよ」

クリスタ「あ」

アニ「候補に上がらないのもわからなくもないけど」フッ

クリスタ「えっと……うん」


アニ「で、小さい私に教わりたいって?」

クリスタ「う、うん!」

アニ「無理だろ。ユミルが許可するわけない」

クリスタ「1日だけでいいの! アニのこと、知りたいんだ」

アニ「……」

クリスタ「だめ、かな……」


アニ「……いいよ。でも場はそっちが用意しな」

クリスタ「! うん! ありがとう、アニ!」

アニ「行きなよ。一緒にいるところを見られると面倒だ」

クリスタ「ふふ。おやすみ、アニ」

アニ「……ああ」



アニ「…………」


…立体機動訓練。


クリスタ「だから! 今日は1人でやるの!」

ユミル「どうしたんだよいきなり」

クリスタ「いつもみんなに甘えてばかりだもの。私だって、1人でもやってみたいの」

ユミル「……」

クリスタ「お願い、ユミル」


ユミル「……しゃぁねぇな」

クリスタ「ユミル! ありがとう!」ダキッ

ユミル「おいおいおいおい、みんな見てるぜ?」

クリスタ「私負けないよ? ユミルに追いついてみせるんだから」

ユミル「……いい心がけだ。じゃあ私は――」

クリスタ「ユミルは、ベルトルトと勝負でしょ?」


ユミル「むぅ」

クリスタ「ついてこないで。1人でやってみたいの」

ユミル「……わーったよ、ついていかない」

クリスタ「今日こそいい報告が聞きたいなぁ」

ユミル「お、おう、任せろ」

クリスタ「ふふ、頑張ってね」


クリスタ(さて、と……)チラッ

アニ「……」

クリスタ(気づいて、くれてる、よね……?)

アニ「……」フッ

クリスタ(! よ、よし……今日は、頑張るぞ)


・・・・・

パシュッ、シュルルルル…

クリスタ(確かこっちの方向に……いた!)

クリスタ「アニ!」

アニ「あいつを騙すなんて、あんた詐欺師の素質でもあるんじゃない」

クリスタ「ユミルに追いつきたいのは本心だよ。嘘ついたのは1人でってことだけ」

アニ「……へぇ。まぁいい、ちょうどあそこに模型あるから、やってみせてよ」

クリスタ「うん。…………やっ!」ザンッ


アニ「……」

クリスタ「……どう、かな」

アニ「なるほど。これは教育者が悪い」

クリスタ「どういうこと?」

アニ「あんた、なんて教わってる?」


クリスタ「えっと……斬撃の時は脇を締めて」

クリスタ「お腹に力を入れて、腰を軸に回転しながら……」

クリスタ「あ、足は巨人にぶつからないように、少し折り曲げて」

アニ「はぁ……もういいよ」

クリスタ「だめ、なの……?」

アニ「確かに基本はそう。でもそれはあくまで基本。私らみたいな小さいもんには適応されない」


クリスタ「……」

アニ「私はあいつらみたいに力も体格もない。でもやり合うことができるのは、体の使い方が根本的に違うからさ」

クリスタ「どう違うの……?」

アニ「全身を使う。頭の先から、足の指先まで。精神を研ぎ澄ませてね」

アニ「力の流れを覚えな。どの角度がどう影響を及ぼすか」

クリスタ「えっと……」


アニ「……他の奴と比較しながら、ちゃんと見てな」パシュッ……ザンッ

クリスタ「……」

アニ「……」

クリスタ「……ほんとだ、何か違う。うまく言えないけど」

アニ「全身をばねのように使うんだ。何も斬撃だけが全てじゃない」

アニ「そうだね……斬撃に移る直前、むしろ体を反らして」

クリスタ「こ、こう?」


アニ「そう。脇は締めずに少し余裕を持たせて……そう」

アニ「そこから腰、足、腹、脇、全てを瞬間的に絞る」

クリスタ「一気に?」

アニ「ああ。斬撃の瞬間に合わせてね」

クリスタ「……」

アニ「ものは試しだ。まだ斬るところはある。やってみな」

クリスタ「………やあっ!」ザンッ


アニ「……」

クリスタ「うわっ、っとと……」

アニ「……」クイッ

クリスタ「……いつもより、深いかも。でも全身に感覚を研ぎ澄ませる、んだよね」

アニ「ああ」

クリスタ「うーん……」


アニ「あんた、馬術得意だったよね」

クリスタ「得意……かな?」

アニ「馬を扱う時は、馬と心を一つにしろって言うだろ」

クリスタ「! 立体機動も……?」

アニ「そう。装置は生きていないけど、ワイヤーの伸びる先も自分の体の一部って考えな」

クリスタ「うーん……わかったような、わからないような」


アニ「後は何度もやって体で覚えるしかない」

クリスタ「うん……」

アニ「体が小さくて軽い分、移動は他より楽なんだ。ガスも少なくてすむ。そこは評価もされる点だよ」

クリスタ「……ありがとう、アニ。やっぱりあなたに聞いてよかった」

アニ「……そろそろ出てきたらどうなんだい」

クリスタ「え……」

ミカサ「……」

クリスタ「ミカ、サ……?」


アニ「どうせユミルに頼まれでもしたんだろ」

ミカサ「ええ。でも驚いた、あなたが人に教えるだなんて」

アニ「そうかい? いつもエレンに教えてるじゃないか」

ミカサ「……」

アニ「で、ユミルに報告はするの」

クリスタ「! ミカサ、お願い……このことは」


ミカサ「……私は、あなたが人に教えることもあると学んだだけ」

クリスタ「ミカサ……」

アニ「そう。だったらもういいね、後はそいつに教えてもらいな」

クリスタ「え、アニ?」

アニ「そいつも全身を使った動きをするよ。だてにいつも首席じゃない」

クリスタ「そう、なの……?」


ミカサ「……」

アニ「私はもう行く。ついてこない方がいい」


バシュッ、シュルルルル…


ミカサ「……」

クリスタ「いっちゃった……」

ミカサ「……クリスタ」

クリスタ「ふぁいっ!?」


ミカサ「アニの言うことは、間違ってない」

クリスタ「……」

ミカサ「私は……人に、言葉で教えるのが苦手。だから、アニ以上のことは教えられない」

クリスタ「……うん」

ミカサ「だから、帰ってから私のやり方を教える。たぶん、とても効果的」


クリスタ「ミカサ……ありがとう」

ミカサ「では、最終地点まで飛ぼう」

クリスタ「うん! えっと……全身に感覚を研ぎ澄ませて、ワイヤー先は自分の手で……」ブツブツ

ミカサ「…………」


…夜、女子寮。


クリスタ「……」

クリスタ(ワイヤーを、伸ばす、木に当たって、掴む、少しの衝撃、巻き取る、引っ張られる)

クリスタ(空気、ぶつかる、体を横に、ぶつからない、腰だけ角度取る、ワイヤー伸ばす、木に当たる、少しの衝撃……)


ユミル「……なんだありゃ」

ミカサ「頭の中で訓練している。邪魔をしてはいけない」

ユミル「イメージトレーニングってやつか」


ミカサ「そう。実際に行うより、集中することができる。一度だけではなく、何度も、どこででも」

ユミル「お前が教えてくれたのか?」

ミカサ「……そう。あれのやり方は」

ユミル「ありがとな」

ミカサ「どういたしまして」


クリスタ(ワイヤーをうなじに、力は入れない、近づく、体を反らす、全身を、瞬間的に……)


・・・・・


卒団まで、あと1ヶ月。
…立体機動訓練。


ベルトルト「……」

ユミル「……」スタッ

ベルトルト「……13秒」

ユミル「言わなくてもわかってるっつうの」


ベルトルト「以前より距離が開いてる」

ユミル「そうかいそうかい。お前がバケモンなだけだ」

ベルトルト「……勝つんじゃなかったの」

ユミル「勝ちてぇ。勝ちてぇけど手抜きは許さねぇぞ」

ベルトルト「……」


ユミル「お、クリスタも来たな。おーい!」

クリスタ「ユミル! ……今日もだめだったの?」

ユミル「あいつ前は手抜きしてやがったんだよ」

クリスタ「そ、そうなの?」

ベルトルト「いや……」


ユミル「それよりお前、最近調子いいな。こないだの発表も12位だったし、ひょっとして上位行けるんじゃねえの」

クリスタ「ユミルには負けるよ。でも……調子悪いの? この前も9位だったけど……」

ユミル「私は本気だよ。いつでもな」

クリスタ「でも……」

ユミル「だったら教えてくれよ、お前の調子いいコツをよ」


クリスタ「うーん、体全体動かすこと? 感覚研ぎ澄ませて……」

ユミル「なんだそりゃ」

クリスタ「『感じろとしか言えん』」ドヤッ

ユミル「くっそムカつくぞ、それ」

クリスタ「ふふふ」


ユミル「誰かに教えてもらったのか?」

クリスタ「えっと……ミ、ミカサ?」

ユミル「あいつが? 人にうまく教えられるとは思えんが」

クリスタ「そ、そんなことないよ!」

ユミル「……」

クリスタ「……ごめんなさい。アニに教えてもらったの」

ユミル「お前、あれほど近づくなって!」


クリスタ「でも! 優しかったよ、アニは!」

ユミル「……」

クリスタ「体の小さい者同士、何かわかるかなと思って……」

ユミル「……」

クリスタ「アニじゃなきゃ、きっと私ここまでわからなかった」

ユミル「……そうかい」


ベルトルト「……アニは、なんて」

クリスタ「えと、立体機動装置を馬と同じように、自分の体の一部に思えって」

ユミル「……」

クリスタ「その上で体の力の流れを掴んで、全身を使うの。じゃないと私たち小さい者は、戦えないって」

ベルトルト「……」

クリスタ「たった1日、ほんの数分だったけれど……私には、貴重な時間だったよ」

ベルトルト「……そう」フッ


ユミル「……」

クリスタ「でも、これを2人も覚えちゃったら、ますます差が出ちゃうなぁ」

ベルトルト「それは……ないかな」

クリスタ「どうして?」

ベルトルト「……やろうと、したんだ。彼女のフォーム、綺麗、だから」

クリスタ「う、うん」


ベルトルト「でも僕の体型じゃ……」

クリスタ「体型じゃ……?」

ベルトルト「……腰を痛めそうに」

クリスタ「ぷっ」

ベルトルト「それからは自分のやり方を試行錯誤したんだけど。そうか……ごめん、君に合わせたやり方を教えるべきだった」

クリスタ「ベルトルトは悪くないよ。体格差が出ちゃうのは仕方ないもの」

ベルトルト「うん……ありがとう」


クリスタ「あの、ユミル」

ユミル「……」

クリスタ「黙ってたのはごめんなさい。心配かけさせたくなくて」

ユミル「……ふん。私から礼は言わないからな」

クリスタ「う、うん!」

ユミル「ちっ、どいつもこいつも。あーあー、帰って飯にしようぜ、疲れちまった」

クリスタ「あっ、待ってよユミル!」


…夜。


ユミル(ったく、なんで来ねぇんだよ。聞きたいことあったのに)


グスッ、グスッ…


ユミル(ん? あいつは……)

ユミル「……どうした」

「ユミル……」

ユミル「なんかあったのか」

「はは……振られ、ちゃった……」


ユミル「え……」

「さっきね、ベルトルトに。もうすぐ最終試験始まっちゃうでしょ」

「一緒に訓練するのも、後少しだし。こんな時期に、迷惑だろうなって思ったんだけど」

「一緒に……いたかった、んだ。ほら、彼って、どこか寂しそうな時あるじゃない」

ユミル「……」

「私が、傍にいて……いいのなら、って、思った、んだ、けど」ヒック


「『……僕は、君が思ってるような優しい人間なんかじゃない』」

「『ごめん。君の気持ちには、応えられない』」

「……これまでの彼には、想像できないくらい、冷たい声だった」

「どうしてって、理由聞く気にもなれないくらい」

「私……彼の、何を知ってたんだろう」


ユミル「……」

「ごめんね、愚痴っちゃって。でもユミルには感謝してるんだ。変わるきっかけを、くれたから」

ユミル「……そう、か」

「うん……」

ユミル「月並みだけどよ。あんな奴よりいい男なんて腐るほどいるさ」

「はは……」

ユミル「お前なら……きっと、見つかるよ」


「ありがと。でも……ユミルは、頑張ってね」

ユミル「ん?」

「ベルトルトのこと。たぶん……一緒にいられるのは、あなただけだよ」

ユミル「何言って……」

「彼、あなたといる時は安らいで見えるから」

ユミル「そんなわけ……それに、私はあいつなんか」


「ふふ。応援してるから」

ユミル「……ねぇよ、そんなこと」

「あー、泣いたなぁ。顔腫れちゃった。私、もう少しここで涼んでから帰るね」

ユミル「……ああ」

「おやすみ、ユミル」

ユミル「……おやすみ」


ユミル(そんなわけない。あいつには、大切なもんが他にあるんだよ)

ユミル(私にも……クリスタがいる。そのクリスタに害をなそうとする奴とは、相容れない)

ユミル(……害、か。結局何もしてこなかったが)

ユミル(これからもしないというわけじゃない。だから、私は……)







・・・・・




.


…古井戸傍。


ユミル「……来たか。まぁ隣座れよ」

ベルトルト「……」…ストン

ユミル「……みんな、まだ寝てる。ようやく3年間の訓練、終わったんだしな。今日くらい寝坊は許されるだろ」


ユミル「結局、お前には勝てなかった。理由はわかってる」

ユミル「お前の負けられない気持ちに、私が勝てなかった。それだけだ」

ユミル(勝負を挑んで最初の一戦で思い知った。お前の、気持ちの強さをな)

ユミル(そこまでの気持ちが、私にはなかった)

ユミル(最悪この力があれば、あいつを守ることができる。どこかで、そう思ってたんだろうな)


ユミル「結果が出るのは数日先だが……あいつは、上位に入れたはずだ。感謝してる」

ユミル「もう邪魔はしない。好きに生きろよ」

ユミル「ただあいつには手を出すな。その時は、怪我なんか惜しまずお前と戦う」

ベルトルト「……うん」

ユミル「……なぁ」

ベルトルト「……」


ユミル「聞かせて、くれないか。どうして、憲兵を目指してるのか」

ベルトルト「……」

ユミル「あの日……お前に何があったのか」

ベルトルト「……」

ユミル「5年前。そこで、お前の歯車は狂っちまったんだろ」


ベルトルト「どう、して……そう思うの」

ユミル「私もだからだ。ただ私は……あの日があったから、今を生きていられてる」

ベルトルト「……」

ユミル「聞かせてくれないか。お前の、その強さの理由」


ベルトルト「……」

ユミル「……」

ベルトルト「……僕は、あの日」

ユミル「……」

ベルトルト「…………人を、殺したんだ」


ユミル「……そうか」

ベルトルト「驚かない、んだ」

ユミル「薄々、そんな気はしてた」

ベルトルト「……」

ユミル「マリア出身者は、大なり小なり心に傷を抱えてる奴がほとんどだ」

ユミル「それに、私もあの日、人を殺している」


ベルトルト「君、も……?」

ユミル「ああ。どこの誰だかわからないが、確かに殺した」

ベルトルト「……そう」

ユミル「……」

ベルトルト「……僕は、たくさん、殺したよ」


ユミル「たく、さん……?」

ベルトルト「あの時、食われたのが、僕だったら……僕、だったら、殺さずに、すんだ、のに……!」

ベルトルト「今でも、夢に見る。助けて、助けて、って……小さな子供、も、赤子を抱いた女性、も」

ベルトルト「人、殺し……って、ック、でも、そうしなきゃ、僕らが、死んで、」

ベルトルト「……でも、こんなことなら! あの時、死んでいたら、でも、僕は、僕は……!」


ギュッ…


ユミル「……落ち着け」

ベルトルト「ック、……ウゥ」

ユミル「……内地には」

ベルトルト「……言え、ない」

ユミル「あの日起こったのは、内地の連中の仕業。そう……考えたのか」

ベルトルト「……」


ユミル「お前らだけで、何ができるってんだよ……」

ベルトルト「誰かが……誰かが、やらなきゃいけないんだ」

ユミル「……」

ベルトルト「また人を殺すことになっても。それでも、僕は、僕らは……」

ユミル「……そうか」


ユミル「ったく。ろくに人質すら取れねぇ奴らが何してんだか」

ユミル「……今のうちに泣いておけ。内地に行けば、こんな場所なんてそうそうない」

ベルトルト「……」

ユミル「胸なら貸してやる。みんなが起きてくるまでならな」

ベルトルト「……ッ、ック、……ヒック」

ユミル「……こんな大きな子供を持った覚えはないんだがねぇ」

ツヅク。次回R-18指定。投下は数日後。


・・・・・


ユミル「……」

ベルトルト「……」ウトウト

ユミル「……そろそろ起きろよ」

ベルトルト「ん……」スリッ

ユミル「…………」


ユミル(……やべぇ、これは、やべぇ)

ベルトルト「……」ウトウト

ユミル「起きろ、ベルトルさん」

ベルトルト「んぅ……」スリッ

ユミル「…………っっっ」


ユミル(無自覚か! 無自覚なんだろうな! ああそうだろうよ!!)

ユミル「起きろ! 襲うぞ!?」

ベルトルト「……へ」

ユミル「気を許してくれたのはありがてぇがな、その、アレだ」

ベルトルト「アレ……?」

ユミル「そう、アレだ。生理前だ」


ベルトルト「……」

ユミル「さっきからお前の寝息がこそばい。ついでに擦り付けられるとさらにこそばい」

ベルトルト「いや……そういう、つもりじゃ」

ユミル「ああ、お前は悪くない。私が勝手に盛ってるだけだ」

ユミル「だからな、ちょっとだけ離れろ」

ベルトルト「う、うん……って、待、って」


ユミル「ん……」

ベルトルト「いや……」

ユミル「…………!」

ユミル(抱きしめるために、密着、してた、が……)

ユミル「……勃って、る、のか」

ベルトルト「…………」

ユミル「その、太ももに当たる質量がだな」


ベルトルト「……泣き疲れと、眠気」

ユミル「お、おう、そうだよな。あれだな、座学で居眠りこいた男子が立ち上がれない、あれだな、うん」

ベルトルト「……そう」

ユミル「……」

ベルトルト「ごめん……離れ――っ」

ユミル「……」

ベルトルト「なに、を」


ユミル「……こんなことお前に頼むのは癪だが」

ベルトルト「……」

ユミル「して、くれないか。このままじゃ、治まりがつきそうにねぇ」

ベルトルト「……君、男に産まれるべきだったんじゃない」

ユミル「ああ、心底そう思うよ。私が男ならクリスタとも釣り合うしな」


ユミル「お前にされて以来、自分でしてもちっとも良くねぇんだよ……」

ベルトルト「……自分で、してたの」

ユミル「わりぃかよ。男だってするだろ」

ベルトルト「まぁ……」

ユミル「嫌なら手だけでいい。手っ取り早く終わらせてくれれば」


ベルトルト「……キスは」

ユミル「してくれる、か」

ベルトルト「ん……」スッ

ユミル「っ……」ゾクッ


ユミル「ん……ん、ぅ」

ユミル(くそっ……やっぱ、こいつのキス、気持ちいい)

ユミル(でも、な……されっぱなし、は、趣味じゃねぇ、んだ)グリッ

ベルトルト「ッ……ちょ、っと」

ユミル「なんだよ」

ベルトルト「大人しく、してて」


ユミル「へぇ……堪える、か?」グリッ

ベルトルト「………っ」

ユミル「はは……息、上がって、きてる、ぜ」

ベルトルト「うる、さい」

ユミル「ぁっ……こ、のやろ」

ベルトルト「つっ……やめ、」


ユミル「ハ、ハァ……あ?」

ベルトルト「くる、し、から……」

ユミル「あ? ああ……下、か」

ベルトルト「……」

ユミル「はは、ズボン、ぱんぱんじゃねぇか」


ベルトルト「……はぁ」

ユミル「泣いて緊張の糸切れちまったんじゃねぇの」

ベルトルト「知る、かよ……」

ユミル「まぁ……とりあえず、緩めろよ。見てるこっちも辛いぞ、それ」

ベルトルト「……君も脱げば。どうせ濡れてるんだろ」

ユミル「うっせーな。ああ脱ぎますよ脱ぎますよ」


カチャカチャ…


ベルトルト「……」

ユミル「お……お、お」

ベルトルト「そこまで、見る?」

ユミル「いや、噂に違わぬご立派な……って、それ完勃ちじゃねぇよな」

ベルトルト「……」


ユミル「……」ツン

ベルトルト「……なに」

ユミル「いや……なんていうか」ツンツン

ベルトルト「……はぁ」

ユミル「お、おお……」ツンツンツン


ベルトルト「遊ばないで、くれる?」

ユミル「自分にないもんに興味示して何が悪い」

ベルトルト「下半身丸出しでするようなこと?」

ユミル「いいだろ、誰も来やしねぇよこんなとこ」


ベルトルト「だからって……っ」

ユミル「あ……は、ぁ……んっ、んぅ」

ベルトルト「くっ……」

ユミル「は……先っぽから、我慢汁、出てる、ぜ」

ベルトルト「君、も……だろ」

ユミル「んあっ! あっ、ぁぁ……っ」


ユミル(だめ、だ……今、イっちゃ)

ユミル「な、ぁ……」

ベルトルト「……」

ユミル「くれ、よ……お前、の」

ベルトルト「……」


ユミル「お前、が……したいんじゃない、私が、欲しい、んだ」

ユミル「大丈夫……今日は、ホントに」

ベルトルト「……」

ユミル「匂い、とか、で……わかんだろ」

ベルトルト「……でも」

ユミル「たの、む。どうせ、お前とこうすんの、最後なんだから、よ」


ベルトルト「……この、まま?」

ユミル「私がしたいんだ。騎乗位で、いい」

ベルトルト「……」

ユミル「んっ……あ、あっ!」


ユミル(あ、入って……あ、ああ、や、だ、)

ユミル「あっ、あ、んぅっっ」ビクッ

ベルトルト「……っ、入れた、だけ、だろ」

ユミル「だっ、て……ハァ………あっ」

ベルトルト「……」

ユミル「や、だ……こし、うごいちゃ……あ」

ベルトルト「……」

ユミル「あっ、ぁぁ、いやっ、きも、ち」

ベルトルト「………くそっ」

ユミル「え、う、わっ」



ドサッ


ユミル「……」

ベルトルト「……」

ユミル(なんで、そんな苦しそうな顔してんだよ)スッ

ベルトルト「……ユミ、ル?」

ユミル(ああ……そう、か)

ユミル「私が……許してやるよ。今だけな」

ベルトルト「ユミル……」

ユミル「ん………っ、あっ、あ、やっ!」


ベルトルト「……ハ、ァ」

ユミル「やぁっ、あんっ、あ、あっ、」

ユミル(きも、ちい……こんな、の、はじめて、だ)

ユミル「ベル、トル、さ……」

ベルトルト「……」

ユミル「んっ、んんっ」


ユミル(上も、下も、繋がって……)

ユミル(頭が、おかしく、なっちまう)

ユミル(だめだ、こんなはず、じゃ……だめだ、だめ……)

ユミル「ンッ、ンンンッ、ハッ……ああっ」

ベルトルト「ユミ、ル……」

ユミル「きも、ちい、きもち……」

ベルトルト「ん……」

ユミル「あ……」


ユミル(微笑っ、て……るのか、わたし、に)

ユミル(やめろよ、そんなツラ……わたし、なんかに)

ベルトルト「なに……わらって」

ユミル「はっ……おまえも、だろ」

ベルトルト「……うん」

ユミル「ん………く、はぁ」


ベルトルト「ユミル……」

ユミル「あっ、や、だ……き、ちゃ」

ベルトルト「はっ、ユミ、ル」

ユミル「だ、め……きちゃ、や、だ……きもち、きもちぃ、や、ぁ」

ユミル「ベルト、ル、さ……ぁ、あ……もっ、と」

ベルトルト「ん、クッ……」

ユミル「あっ、あんっ、ああっっ!!」

ベルトルト「くぅ……! は、ぁ……」

ユミル「ぁっ、ぁ……ん……」


―――――

―――


ユミル「……」

ベルトルト「……」

ユミル「……」

ベルトルト「……大丈、夫?」

ユミル「……おう」

ベルトルト「……」

ユミル「もうちょっと、肩貸せ」

ベルトルト「……ん」


ユミル「…………ハァ」

ユミル「私の勝ち、だな」ククッ

ベルトルト「あ」

ユミル「嘘だよ。お前も好きに生きろ」

ベルトルト「……」


ユミル「憲兵になるも、内地で何をするも、私は知ったこっちゃねぇ。やりたきゃやれよ」

ベルトルト「……うん」

ユミル「けどライナーは? 調査兵団行くって言ってなかったか」

ベルトルト「……調査兵団でも、することはある、よ」

ユミル「……そうか」


ユミル「あいつ、どこ選択するんだろうな」

ベルトルト「憲兵を選んだら、君はどうするんだ?」

ユミル「んー、どんな手を使ってでも内地に行くさ。例えば……お前についてくとか」

ベルトルト「やめてくれ。本当に、それだけは」

ユミル「ちぇ、つれねぇやつ」

ベルトルト「……」


ユミル「でもさ……もし、あいつらが攻めてきたら」

ベルトルト「……」

ユミル「お前らの考えてる計画も、無駄になるんじゃ」

ベルトルト「どう、かな……でも、」

ユミル「……」


ベルトルト「そうなったら、君はクリスタと逃げて」

ユミル「あ?」

ベルトルト「決して戦おうとしないで」

ユミル「ああ……もちろん、だが」

ベルトルト「……」

ユミル「……平和なんて、どこにあるんだろうな」


ベルトルト「……」スッ

ユミル「……行くのか」

ベルトルト「うん……」

ユミル「お別れだな、これで」

ベルトルト「……うん」

ユミル「じゃぁな」

ベルトルト「……じゃぁ」


ユミル「…………」

ユミル「………」

ユミル「……気をつけて、はなしか。ま、いいけどよ」






・・・・・




.


クリスタ「ユミル!」

ユミル「おう、10位おめでとさん」

クリスタ「どうして私だけ!? ユミルが、入ってないなんて!」

ユミル「最近調子悪かったからなぁ」

クリスタ「ユミル!!」

ユミル「運が悪かったんだよ、ったく……」


「オレには夢がある……」

「巨人を駆逐して、この狭い壁内の世界を出たら……外の世界を、探検するんだ」

ユミル「……へぇ。駆逐野郎に夢ねぇ」

クリスタ「ユミル、聞いてるの!?」

ユミル「おっ、始まったぞ! いいぞいいぞー!」






・・・・・




.


…トロスト区。


ユミル「あー、だりぃ……」

クリスタ「今日は無理しちゃだめだからね」

ユミル「わーってるよ。ったく、男に産まれたかったなぁ」

クリスタ「もう、そればっかり」

ユミル「男ならお前と結婚できるんだぜ?」

クリスタ「はいはい、補給物資届に行く――」



ドォン!! ビリビリビリ…


ユミル「!?」

クリスタ「え……な、なに?」

ユミル「固定砲……誰か、間違って打ったか? いや……それにしちゃ、振動が」

「うわぁぁああああ!!」

ユミル「……なんだ」

「きょ、巨人、だ……巨人が、攻めてきやがった!」

ユミル「な、んだって」


「トロスト区の壁がやられた! 超大型巨人だ!!」

「嘘だろ……こんな日に!?」

ユミル「……くそっ」

クリスタ「ユミル! どこ行くの!?」

ユミル「情報を集める! こういう時必要なのは正確な情報だ!」

クリスタ「待って! ユミル待って!」


ユミル(くそっ、本当に攻めてくるとはよ)

ユミル(ああ……大混乱だな。こんな時こそ落ち着いて行動しろってどんだけ習ってきたんだよ)

ユミル(仕方ねぇ、こいつらは戦場の経験がねぇんだからな)

ユミル(でも……あいつなら。目的のために、何としてでも生きてやるってもがいてるはずだ)

ユミル(どこだ、どこに――ー!?)


アニ「―――、―――」

ベルトルト「―――、……―ー」


なぜ、そんなに落ち着いていられる?


ベルトルト「―――、――」

アニ「―――――」


なにを、話しているんだ?


ベルトルト「――、気をつけて」

アニ「……ああ」


その、頬の筋は――


クリスタ「いた、ユミル!」


『人を、殺したんだ』

ああ…

『たくさん』

そうか…

『そうしなきゃ、僕らが、死んで』

そういう、ことか…

『絶対に……何としてでも』

だから、お前は…


クリスタ「ユミル!? ユミル!!」

ユミル「……」

クリスタ「ユミル! どうしたの!?」

ユミル「……行こう」

クリスタ「ユミ、ル?」


だからお前は、そんなに辛そうなツラしていやがったんだ。


ユミル「行こう。集合場所に」

クリスタ「う、うん……」


私が……私が、お前の背中を、押しちまったんだな。

調子に乗って書けた。ベルユミじゃなくユミベルだったかもしれん。今度こそ数日後にツヅク。


・・・・・


クリスタ「あれは……アルミン!?」

ユミル「……」

コニー「アルミン! アルミン! 目を覚ませ……!!」

アルミン「!? コニー……」


私が、私が……


コニー「ケガはねぇのか? オイ!? お前の班は!?」

アルミン「班……?」


もう少し早く気づいていれば……


コニー「オイオイしっかりしろよ! 何で1人だけなんだ!?」

コニー「なんかお前の体ぬめってるしよぉ……! いったい何があったんだよ!?」


あの時誰かに話していれば……


アルミン「…………あ……」


アルミン「うぁぁぁあああ!!」

コニー「アルミン……!」

アルミン「この…! 役立たず!! 死んじまえ!!」

コニー「オイ……落ち着けっアルミン! みんなは……」


……私が、殺したようなもんだ。


ユミル「もういいだろコニー! 全滅したんだよ、コイツ以外は」

コニー「うるせぇな! アルミンは何も言ってねぇだろ!!」

ユミル「周りを見りゃわかるよバカ! これ以上そいつに構ってる時間はねぇんだ!」

コニー「なんでアルミンだけ無事なんだよ!?」

ユミル「さぁな。死体だと思ったんじゃねぇの?」


ユミル「複数の巨人に遭遇したのは気の毒だが……劣等生のコイツだけ助かるとは……エレンたちも報われないな……」

アルミン「……」

コニー「……なぁクソ女……二度と喋れねぇようにしてやろうか!?」

クリスタ「やめて2人とも!!」


クリスタ「みんな気が動転してるんだよ! 急にたくさん友達が死んでいくんだもん……仕方ないよ」

ユミル「さすが私のクリスタ! この作戦が終わったら結婚してくれ」

コニー「確かに……いつも以上にふざけてやがる……」

コニー「とにかくこのままじゃいけねぇ。立てるか、アルミン?」

アルミン「……ごめん。迷惑かけた。後衛と合流する」

コニー「アルミン!」


「コニー行くぞ。俺たちは前進の命令だ……」

ユミル「……」フラッ

クリスタ「ユミル! 大丈夫?」

ユミル「ああ……ちょっと眩暈がしただけだ」

コニー「んだよ、こんな時に」

クリスタ「朝から体調良くなかったの。……コニー、ごめん。私ユミルを安全なところに連れてから向かう」

コニー「……おぅ。じゃぁ後でな」

クリスタ「うん……」


・・・・・

…ウォール・ローゼ内門付近。


クリスタ「行かなきゃ……みんなが待ってる、補給が止まってるって、知らせなきゃ……!」

ユミル「……」ガシッ

クリスタ「……ユミル?」

ユミル「……ここにいてくれ」


『君はクリスタと逃げて』


クリスタ「どうしたの……」


『決して戦おうとしないで』


ユミル「……頼む。1人にしないでくれ」

クリスタ「……」

ユミル(直にここも危険になるだろう。が、中よりはまだマシなはず)

ユミル(お前だけは……誰になんと言われようとも、私が守る。だから……)


・・・・・


コニー「――それで何とかガスが手に入ったんだ……」

クリスタ「そんなことが……」

クリスタ「ごめんなさい……何度もみんなの補給の救援を志願したんだけど……」

ユミル「せっかく私たちはガスを確保できたのにな。みんなに知らせる!つって飛び出したのはコイツだ」

クリスタ「じゃ……じゃあ、今ここにいない人たちは全員……」

ユミル「……」

コニー「……ああ」


ユミル「……本当か? あのミカサもか?」

コニー「ん? イヤ……ミカサはジャンたちと一緒に遅れて来たと思ったんだが」

コニー「ジャン……まさかミカサは負傷でもしたのか?」

ユミル「……」

ユミル(……ジャンもお三方も、えらく思いつめたツラしてやがるが)

ユミル(ローゼ内門を破らないってことは、何かあったのか……?)


ジャン「……オレたちには守秘義務が課せられた……言えない。もっともどれ程の効果があるのかわからんが……」

コニー「守秘命令?」

ユミル「なんだそりゃ?」

ジャン「隠し通せるような話じゃねぇ。すぐに人類全体に知れ渡るだろう……」

ジャン「……それまでに人類があればな」


ユミル(……守秘義務? 中で何があった?)

ユミル(補給所からの脱出に遅れて出た面子……ミカサとアルミンがいないのは、事情聴取中ってわけか)

ユミル(超大型の正体に関することなら、この3人も連れられていってるはず。となると別の事象が――)


ドォォォン!!


「砲声!?」

「なぜ一発だけ?」

「オイ! 壁の中だ!!」


「水門が突破されたのか!?」

「一番頑丈な箇所だありえない……榴弾を落としただけだろう」

「にしても……あの煙の量はなんだ!? まさか、巨人の蒸気!?」

ライナー「……!」バシュッ、ダンッ!!

「ライナー!?」

ジャン「……」バシュッ

アニ「……」バシュッ

ベルトルト「……」バシュッ

「オイ、お前ら!!」

ユミル(……巨人が壁の中に? どうなってんだ、いったい)


・・・・・


ピクシス「ちゅうもおおおおおおおおく!!」

ピクシス「これよりトロスト区奪還作戦について説明する!!」

ピクシス「この作戦の成功目標は、破壊された扉の穴を塞ぐ!ことである!!」

「え……塞ぐって」

「どうやって……?」

ピクシス「穴を塞ぐ手段じゃが、まず彼から紹介しよう! 訓練兵所属、エレン・イェーガーじゃ!」


コニー「え!? エレン!?」

ジャン「!!」

ピクシス「彼は我々が極秘に研究してきた巨人化生体実験の成功者である!」

ピクシス「彼は巨人の体を精製し意のままに操ることが可能である!」

コニー「……んん!?」

コニー「なぁ、今司令がなに言ってんのかわかんなかったが……それはオレがバカだからじゃねぇよな!?」

ユミル「ちょっと黙っていてくれ、バカ」


ピクシス「巨人と化した彼は前門付近にある例の大岩を持ち上げ、破壊された扉まで運び穴を塞ぐ!」

ピクシス「諸君らの任務は、彼が岩を運ぶまでの間、彼を他の巨人から守ることである!!」

ユミル「……ハハ」

クリスタ「ユミル……?」


ユミル(なんてこった……エレンが、知性巨人だった?)

ユミル(これまでの発言からすると、自分がそうだとは知らなかっただろうが……)

ユミル(アルミンの様子からしたら、エレンは死んだんじゃなかったのか。生きて……いたのか)

ユミル(エレンが巨人に食いちぎられたところでアルミンは気を失った。エレンはその傷が原因で巨人化、したのか)

ユミル(補給所から何故か遅れ出た3人と、ミカサ、アルミン、ジャンは……たまたま、巨人体からエレンが出てくるのを目撃した)


ユミル「……」チラッ

ベルトルト「……」

ユミル(どうりで内門が破かれないわけだ。エレンの件はこいつらにも予想外、か)

ユミル(さらなる予想外の出来事が起きる確率もゼロじゃねぇ。様子を見るためにも内門は諦めたか)

ユミル(夕方になれば調査兵団も帰ってくるが、作戦には駐屯兵団の精鋭部隊も加わるはずだ)

ユミル(となれば、今一番安全なのはむしろ……)


クリスタ「奪還作戦……私たちは、何をすれば……」

ユミル「さぁな。お偉いさま方がまともな作戦練ってくれることを祈るしかねぇよ」

クリスタ「……」

ユミル「な? ベルトルさん」

ベルトルト「えっ」


ユミル「んだよ、反応わりぃな」

ベルトルト「ごめん……少し、考えごとを」

ユミル「お前も参加すんだろ?」

ベルトルト「うん……」

ユミル「死ぬなよ。やり残したことあんだろ」

ベルトルト「……うん」


ユミル「よし、覚悟も決まったことだ。死ぬ時は皆同じ、そうだろ?」

ベルトルト「……」

ユミル「怖気づくなよ、なんなら私が守ってやろうか? ん?」

ベルトルト「……いい、大丈夫」

ユミル「遠慮するなって。クリスタ、お前も一緒に守ってやるからなー?」

クリスタ「もう……」






・・・・・




.


…シガンシナ区。


ユミル「……眠れないのか」

ベルトルト「……ん」

ユミル「ライナーのいびきうるせぇしな」

ベルトルト「……うん」


ユミル「後悔、してんのか」

ベルトルト「したところで……もう、どうにもならないだろ」

ユミル「まぁな。するくらいならトロスト区、壊してなんかないよな」

ベルトルト「……」

ユミル「……知ってたんだ」

ベルトルト「え……」

ユミル「お前が、超大型巨人、だってこと」


ベルトルト「いつ……」

ユミル「トロスト区ん時から。扉破壊された直後、頬にうっすら筋が残ってたよ、お前」

ベルトルト「そう……なん、だ。でも、どうして」

ユミル「どうして黙ってたか、か……」

ユミル「気づいて、やれなかった。お前が何を抱え込んでいたのか」

ユミル「お前の仲間を食ったことに関しては謝罪しない。でも、本当は」


ユミル「止めて、欲しかったんじゃないのか。誰かに、気づいて欲しかった。そうじゃないのか」

ベルトルト「……」

ユミル「誰かがやらなきゃいけない、そう自分に言い聞かせて」

ユミル「そうでもしなきゃ、罪の意識に押しつぶされそうで」

ユミル「私は……お前に気づくどころか、背中を押してしまったんだ」


ベルトルト「そんな、こと……」

ユミル「ああ。気づいていたら、私は殺されていたかもしれない。そしたら私は、巨人化してクリスタをさらって逃げたかもな」

ユミル「少なくとも、あそこでトロスト区を破る計画はなくなっただろう」

ベルトルト「……」

ユミル「ま、責任を感じてたんだよ」

ベルトルト「君が、そんなこと感じる必要なんて」

ユミル「ないよな」


ユミル「どっちにしろ、壁内は地獄だ。お前らがやらなくても、猿の野郎がやっただろ」

ユミル「私は、ただ……」

ユミル「ただ、お前に、生きて欲しかったんだ」

ベルトルト「ユミル……」

ユミル「勘違いするな。クリスタが一番だからな」

ユミル「でもエレンのあの力があれば、ひとまず安心だろ?」


ベルトルト「……どうかな」

ユミル「そこは『そうだね』って言っとけよ」

ベルトルト「所詮、彼らは悪魔の末裔だ。エレンの力に気づいたら、どう狙ってくるか」

ユミル「……まぁな」

ベルトルト「それなのに、君は僕を助けた」

ユミル「……」

ベルトルト「僕は……君に、何をかえせばいい」


ユミル「なーんも。強いて言うなら」

ベルトルト「……」

ユミル「お前の力で、守ってくれればいい」

ユミル「たかが子供の発言で、私の死が覆るとは思えんが」

ユミル「ああ……とりあえず今出来ることはあるぞ」


ベルトルト「なに……」

ユミル「お前に抱いてもらうとか」

ベルトルト「……えっと」

ユミル「ほら、寒いし」

ベルトルト「いや……その」

ユミル「ほらほら」

ベルトルト「隣……」


ユミル「……クククッ」

ベルトルト「……からかったの」

ユミル「残念ながら生理前じゃねぇよ」

ベルトルト「……」

ユミル「純情なお友達に悪影響だろ? そんくらい私にだって――うおっ」


ベルトルト「……」

ユミル「……おい」

ベルトルト「少しは……温かいだろ」

ユミル「まぁ……」

ベルトルト「どうせ知ってるんだろうし」

ユミル「なにがだ」

ベルトルト「僕の寝相のせいってことにしておけばいい」

ユミル「あー、聞いたことあるわ」


ベルトルト「君の情報網には心底感心するよ……」

ユミル「で、起きたらどっちに向かうんだ」

ベルトルト「うん?」

ユミル「北と南。個人的には北と言いたいところだが」

ベルトルト「それは……ライナーに聞かないと」

ユミル「お前の意思はねぇのかよ……」

ベルトルト「どちらに向かうにせよ、ライナーがいなきゃ……」


ユミル「まぁそうだが……」

ベルトルト「……ありがとう」

ユミル「……なんだよ」

ベルトルト「僕らのこと……黙っててくれて」

ユミル「……別に。私にも、言えないことはたくさんあったんだ」

ベルトルト「はは……違い、ないね」


ユミル「でも他には言えねぇな」

ベルトルト「ん……」

ユミル「私とお前の秘密事」

ベルトルト「うん……」

ユミル「バレりゃクリスタに恨まれるだろうなぁ」

ベルトルト「そう……だね……」


ユミル「……ベッドから落ちたことは?」

ベルトルト「かろうじ、で」

ユミル「ならここも大丈夫か」

ベルトルト「……たぶん」


ユミル「そこは『大丈夫』って言えよ……」

ベルトルト「柵、ないし……自信、ないな……」

ユミル「……おい」

ベルトルト「だから……君が……」

ユミル「…………おい」

ベルトルト「……」

ユミル「……だから、こんな子供いらねぇっての」


…翌朝。


ライナー「……」

ベルトルト「……」スゥスゥ

ユミル「……」スヤスヤ

ライナー「…………は?」




オワリ。


放り投げただけであえて回収しなかった伏線ぽいもの。

「立体機動装置細工の件」

ベルトルトはアニに聞いて知っていた、のは本文の通り。
>>279「彼ら」と聞いて、ユミルはベルトルトが犯人を実は知っていることに気づいているが、言葉を飲み込んでいる。
そんなわけない、信じたくないという気持ちから。
ユミルが指示したのは兄妹の妹の方であり、その後ベルトルトと行動していたのでベルトルトはマルコたちと話をしていない。
のに複数人、かつ「彼ら」と言っている。

>>257でベルトルトはアニに「気を失っているだけ」と伝えている。アニは表で他と協力をしていないからだが、
アニは嘘に気づいている。「そう……」ではなく「……そう」、前者は心配などから素直に声が出る「そう」であり、
後者は何らか考えながらの「そう」なのである。
昔から書き分けているつもりだけど、たまに間違ったまま投下してしまうこともあるので全文を調べてはいけない…。
細工対象がユミルとわかっていたから一緒にいるベルトルトのことが少々心配になり、本気を出して犯人と距離が出てしまっている。
なお犯人と一緒に行動していたのは偶然ではなく、アニはアニなりに心配していた模様。ベルトルトはその優しさに気づいている。

冒頭のベルトルトとアニの密談は、犯人のことと対象が5位以下になっていることを話していたのであった。
「私以外にも、ミカサ"たち"もそろそろ気づくだろうね」などと言っていたのである。
とはいえまだ安心できないし、色んな意味を込めての「気をつけて」であった。いつか殺してしまう対象のユミルに言うはずはない。
もちろん他のことも話しているが、ベルトルトはこの時から知っている。よって>>209で後ろめたさから会話に参加していない。
そしてこの事件において、アニはもちろんだがベルトルトも実は協力していないのである。


伏線なんて全て回収しなくてもいいと思うんだな、雰囲気だけ読者に伝わればいい。


なおこの話は、2013年冬時点で考えられていた。正直甘いベルユミがあの頃多すぎて
投下する勇気がなくお蔵入りさせてしまった。これをベースにやんわり書いたのが秘密の約束の方である。
>>528から、調査兵団入団後、壁外調査巨大樹の森、マリア巨大樹の森、で話す内容も考えたけど
正直面倒になってシガンシナまでひとっ跳び。ユミルが色んなこと考えながらベルトルトのことを探ってたんでしょう。
なくても問題ないし、もう書かないよ!

で、これにておしまい。ベルユミファンの方々、すみませんでした。
今回のベルトルトのアニへの気持ちは、初恋の人とか憧れとかじゃないっすかね。
…どうでもいいが、>>178、原作ユミルの「せ――」がこれだったら絶対嫌だ、と思いながら書いたのは秘密。
本編で「せ――」のやり取り後に立体機動でベルトルトにおぶられているけど、か、かぶせてなんかない。


では、次の作品で。




…ベルアニ、誰か書いてくれてもいいんですよ(チラッ

乙!! よかったよ
最後のライナーが笑えた

投下してくれてありがとう
終わってしまって さびしい

>>548 どうもどうも…

書き忘れた。ベルトルトのユミルへの返事が「ああ」から「うん」になってたりする
かなり適当に書いてるけど、微妙に微妙に変化してたりします、はい
超どうでもいいです。気づかなくてもいいです。雰囲気程度に味わっててもらえれば

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