俺「サンタが彼女連れてきた」 (62)

それは12月25日のこと。

男「……朝か」

女「あら、起きました?」

男「……誰?」

女「彼女です!」

女「クリスマスプレゼントの、彼女です!」

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男(……不審者、だよな)

男(通報する気にもならん)

男(寝ぼけてるのか)

男(目元にほくろ、整った顔立ち)

男(初恋の女の子によく似ている)

男「」目ごしごし

彼女「?」

男「あー、ガチか」

男「確か昨日」

12月24日

俺(サンタを信じなくなったのはいつからだろう)

俺(確か4歳のころ)

    俺「ねえマッマ、うちえんとつないけどサンタさんくるん?」

    母「サンタさんはね、うん。換気扇から来るのよ」

俺(……どんな妖怪だよ)

近所の家「メリークリスマース!」

俺「サンタさんなんていねえんだよくそがき」ぼそっ

俺(自分に持っていないものを)

俺(持ってる人が妬ましい)

俺(そんな俺が一番心が貧しいんだろうな)

俺(サンタさんが胡散臭く思えてから)

俺(他人っていう存在もなんだか胡散臭く感じてきて)

俺(当然彼女なんてできるはずもなく)

俺(大学生になって独り暮らしをすれども)

俺(孤独は埋まらない)

アパート

俺「ああもう! 世の中糞だ!」

ドン!

俺「ひっ! リアル壁ドンきた!」

俺(あーもう、ふろでも入るか)

俺(いや、洗濯物を先に取り込むか)

がらっ

俺(雪か)

俺(サンタさん……もしいるんなら)

俺「サンタさん、彼女をください」

12月25日

俺「え、ガチで彼女!?」

彼女「はい! 彼女です!」

俺「彼女ってことは、つまり、恋人?」

彼女「はい、恋人です」にこっ
 
俺「……悪い冗談はよしてくれ」

俺「早く出て行って……」
 
俺(ん? なんだか懐かしい匂いが)

彼女「みそ汁はお嫌いですか?」

俺「……」

俺「嫌いじゃないです」


「味噌汁は、お嫌いですか?」

彼女「召し上がれ」
 
納豆を混ぜ、タレとカラシを投入し、ごはんにかける。

炊きたてのごはんと、懐かしい味の味噌汁が、胃袋を満たす。
 
十分も経たずに、茶碗とお椀は空になってしまった。

俺「ありがとう、うまかったよ」

彼女「いえいえ、彼女ですから」

俺(台所で食器を洗う音が聞こえるなんて)

俺(なんてすばらしい朝だ)

俺「いいのか? ここまでしてくれて」

彼女「彼女ですから」
 
彼女は明るい声でそれしか言わない。

「俺さん、今日のご予定はなにか?」
 
俺(さりげなく下の名前で)

俺(顔が熱い)

俺「いや、とくにないけど……えーっと」
 
俺(なんで俺、今の状況を異常に感じてないんだろう)

俺(いや、それよりも)

俺「君の、名前は?」

彼女「彼女です!」

俺「いや、それ名前じゃないし」

彼女「そう言われましても……」

俺「なにか、君に合う名前をつけよう」

彼女「そんな、かまいませんよ」
 
俺「そんなこと言ったってなあ」

俺(整った黒髪ロングヘアー)

俺(サンタのコスプレ)

俺(スラっとした足に、綺麗に切られた足の爪が左右十枚ずつ)

俺(美人だ)

俺(故に特徴がない)

俺「彼女、彼女なあ」

俺(彼女、英語では?)

俺「よし」

俺「君は今日からシーちゃんだ」

シーちゃん「はい!」

一日目

シーちゃん「今日はクリスマスです」

俺「お、そうだな」

シーちゃん「デートをしましょう!」

シーちゃん「クリスマスと言えばデートです!」

俺「なるほど、いい案だけど」

俺「その格好は恥ずかしくないか?」

シーちゃん「え? 似あってません?」

俺「いや、そういう問題じゃない」

俺「さすがにサンタコスでデートはちょっと」

シーちゃん「なるほど」

くるり

シーちゃん「どうでしょう」

俺「おお! ただの赤いダッフルコートと緑のスカートに!」

ショッピングモール

俺「とりあえずきたはいいけど」

シーちゃん「あ! 俺さん! このマフラー俺さんに似あうと思います!」

俺「あ、ほんとだ。いいね」

俺(女の子と歩くのは初めてだけど)

俺(なんとなく、リラックスできてるよな、俺)

俺(不思議だ)

俺「マフラー困ってたし、あー、でも、」

俺「いいわ、持ち合わせあんまりねえし」

シーちゃん「そうですか」

俺「お昼はあのカフェにするか?」

シーちゃん「いいですね! あ! オムライスが一押しみたいですよ!」

店内

俺「美味しいな」

シーちゃん「はい! とても」もぐもぐ

俺(子供みたいに笑うし、食べるな)

再びショッピングモール

俺「どしたの?」

シーちゃん「あ、このペンダント、かわいいなあって」

俺「ふーん」

俺(今日は、特別な日)

俺「買ってやるよ」

シーちゃん「え! いいんですか!」

俺「特別な日だしな」

シーちゃん「あの、実はこれ、サプライズのつもりだったんですけど」ごそごそ

俺「あ、それ」

シーちゃん「マフラー、買っておきました」

俺「ほんとに? いいの?」

シーちゃん「特別な日、ですから」にこ

俺(天使や)

俺(夢だとしたら、さめるまで、楽しんでやろう)

二日目。十二月二六日。
 
彼女と手をつないでみた。

シーちゃん「冷たくないですか?」

俺「正直、冷たい」
 
俺(雪みたいに白い。そして冷たい。死んでるみたいだ)

俺「でも、気持ちいい」
 
彼女と手の指と指を絡めた。

俺(心の中のどんよりとした何かが)

俺(溶けていくみたいだ)

三日目。十二月二十七日。
 
彼女と昔の話をした。
 

シーちゃん「俺さん」

俺「どうした?」
 
シーちゃんの作る朝食を食べることにもだんだん慣れてきた時だった

シーちゃん「あなたは、今までに恋人がいたことは、ないのですか?」
 
俺(嫌味のつもりか? 胃が痛い)

俺「……ないな」
 
シーちゃん「好きな人がいたことは?」

俺「……」

俺「気になるのか?」

シーちゃん「はい、とても」

俺「どうしてもか?」

シーちゃん「はい!」
 
俺(浮世離れしているところもあるけど、どこか子供だなあ)。

俺「……いつかな」

シーちゃん「えー、なんでですかー! 気になります!」
 
俺(最近打ち解けてきているのか、押しの性格が強くなってきてるぞ)

俺(サンタさんもなんてものを派遣してくれるんだ)

俺「今日はどこ行きたい?」

シーちゃん「誤魔化さないでください!」
 
そのまま俺は、彼女の尋問に丸一日耐えることとなった。


四日目。十二月二十七日。
 
俺(夢を見ていた)
 
俺(昔の夢だ)

俺(初恋の女の子が出てきた)
 
俺(しばらく見ない間に、顔も髪型も声も随分忘れてたんだな)

俺(そうだ、こんな顔だったなと納得する)
 
俺(初恋の子は、いつものように道路の上で横たわっていたのだ)
 
俺(なぜ、彼女は横たわっていたんだっけ)

俺「そんな夢を見たんだ」

シーちゃん「不思議な夢ですね」

俺「まあ、その子が俺の初恋の子なんだけどな」

シーちゃん「なるほどですね、私なんか妬けちゃいます」
 
俺(本心から言っているのだろうか)

俺(そもそもこの子は人間なのか)

俺(もしかしたら、とんでもないオカルト展開に巻き込まれているんじゃ)

シーちゃん「あっ紅茶こぼしちゃいました!」
 
俺(……取り越し苦労か)

俺「はい、布巾」



五日目。十二月二十八日。

親戚の居酒屋の従業員がバックれ、手が足りなくなったと昼過ぎに連絡があった。

伯父「すまねえ、きてくれねえか」

俺「あー、はいはい、了解」

シーちゃん「お出かけですか?」
 
俺「ああ、ちょっとバイトすることになった」

シーちゃん「晩御飯はどうします?」

俺「ああ、そうだな作っといてくれ」



居酒屋

俺「ちーっす」
 
?「いらっしゃーい」
 
俺(どこかで聞いたような……)

女「あ、俺君?」
 
カウンターの内側にいたのは、大学の同じ学科の女の子だった。

女「へー、ここ親戚だったのね」
 
俺「そうだな、ばあちゃんの兄ちゃんがやってて」
 
俺(とりあえず九時までがんばってくれとのことだ)

俺「まあ、高校時代にも何度か手伝いには来ていたし、仕事自体は慣れてるよ」

女「私も今週から働き始めたの」
 
俺「なんでここ?」

女「雰囲気が好きなのよ」

俺「確かに落ち着きやすいな」

俺「居酒屋というより、料亭みたいだし」

女「熱帯魚が泳いでてさ、びっくりした」

女「絵とか壺も飾られててきれいだし」

女「それに、時給もよかったし」

俺「そこかよ」

女「ねえ、ところでさ」
 
女「今晩、一緒にご飯食べてから帰る?」

俺「……」

俺「行こうか」

バイト終了

俺「ここのラーメン?」

女「そう! ここすっごいおいしいの!」

俺(……なんか、忘れてるような)

女「食べ歩きとかたまに一人でしたりするんだあ」

俺「来たことないな、近かったのに」

女「五本の指が入るわ」

俺「五本の指に入るだろ」

女「あはは、なんか意外」

俺「何が?」

女「ツッコミとかいれてきたし」

俺「普通だよ」

女「だってさ、俺君、あんまり人とかかわろうとしないというか」

女「一匹オオカミというか」

俺「なにちょっといい言い方してるんだよ」
 
俺(でも確かに、自分の中の何かが明るく開けてきている気がする)

俺(なんでだろ)

五日目。十二月二十八日。

俺「……あれ、いつの間に寝てたんだろ」ごしごし

俺(? ソファ? しかも俺の部屋のじゃない)

俺(嗅いだ事のない部屋のにおい)

俺(白を基調とした小奇麗な家具)

俺「どこだここ」

女「うーん、おはよ」
 
 そうだ、女さんの家だ。

俺(机の上には、何本か空けたチューハイやビールの缶)

女「いやー、昨日は飲んだね~」
 
俺「あー、そっか」
 
俺(ラーメンを食べた後、コンビニで酒を買って)

俺(女さん家で宅飲みをして、そのまま寝たのか)

俺「やべ、連絡してね」

俺(心配してるかなあ、あいつ)

女「連絡? 男君ってさ」
 
連絡帳から自宅の家電に電話をかける。コール音が鳴り続けた。

女「一人暮らしじゃないの?」

俺「あ」

俺「……ん?」

俺「えーっと、あ」

俺「そういえば、そっか」

俺(俺、誰に電話してたんだろ)

 八日目 十二月三十一日

俺(何から八日目なんだろう)

俺(俺は何から日付を数えているんだ?)

テレビ「デデーン! 田中、アウト」
 
年末ということで、彼女と俺はガキ使をこたつで見ていた。

俺「年越しそば食いたいな」

「あー、そろそろ食べる?」
 
彼女は立ち上がり、鍋のお湯を沸かし始めた。

俺「ありがとう」
 
俺はお湯を沸かす彼女の後姿をニヤニヤしながら見た。

俺「女さん」

女「いえいえ」
 
そう、名前を呼んだ。
 
もう少しで今年も終わりだ。

>>10
>足の爪が左右十枚ずつ

あかん

 九日目 一月一日。

 女さんと近くの神社まで初詣に来た。

俺「よかったな、バイトなくて」

女「ほんと、年末年始は休みだよやっぱり」

女「俺くんそのマフラー似あってるね」

俺「そうか? ありがと」

俺(これ、いつ買ったんだっけ)

女「俺君は、今まで彼女がいたことはないの? こういうところに来るさ」

俺「いや、そんなことは」

俺(……なんだろ、この大事なことを忘れている感じは)

俺(彼女なんて、できたことないだろ)

俺「ないな」

女「ふーん」

>>34 ミス、許せ

俺「女さんは?」
 
女「えー……うーん、ないことも、なかったかな」

俺「ほう」
 
俺(まあ、女さん美人だし)

女「というかさ、俺君って女の子苦手じゃなかったっけ」

俺「あ、入学当時言ったな、そう言えば」

俺(あれ? なんで平気で話せるようになったんだろう)

俺「うーん、よくわからん」

 十一日目 一月三日。

目が覚める。

カーテンの隙間から光が漏れている。

いつもどおりみそ汁の香りが部屋に満ちている。

机の上に並ぶのは納豆のパックに、ご飯に、みそ汁だ。

うん、今日もいい朝だ。

俺「おはよう」
 
誰もいないのに、なんで毎日言っているんだろう
 
今日は女さんと映画に行く約束をしている。

急いで準備をしなくては。

 十四日目 一月六日。

俺(また今日から大学)

俺(憂鬱だ)

俺(休み明けってのはだいたい憂鬱なもんだけど)

女「おはよ! 俺くん!」

俺(そうだ、俺には)

俺(佐藤さんがいるじゃねえか)

>>38 ミス 佐藤→女

 十六日目 一月八日。

「つまりだよ」

「お前と女さんが釣り合わないってことを俺は言いたいわけさ」

「一応俺も女さんとは高校は同じで、彼女と同じ大学に入るために、必死で勉強もしたんだぜ」

「知ったこっちゃないだろうな」

「でもよ、高校時代女さんと一番仲が良かったのは俺なんだぜ?」

「なあわかるだろ?」

俺(昼休み、ずっとこんな話が続いてる)

男「なあ、冬休みになにがあったか知らねえけどよ、女とあんまべたべたすんなよ」

俺「別に付き合ってるわけじゃないんだろ」

男「昔付き合ってたさ」

俺「昔の話だろ?」

男「いや、あれは受験に集中するから別れたんだ」
 
俺(まあ、よくある理由だけど)

俺(どっちにしろ、かなり気持ち悪いなこいつ)

俺(それに、俺には彼女がいるry)
 
俺(あれ……いや、いないだろ、できたことすら)

男「どうしたんだよ、ボーっとしてよ」

俺「いや、別に」

男「とにかくだ、俺は今日彼女に告白する」

男「彼女の返事は決まっているだろう」

男「だからお前は金輪際、あいつにかかわるな」
 


俺は、何も考えることもなく、無感情に口を開いた。

俺「ああ、わかったよ」

俺(気持ち悪いやつだ)

俺(今日の晩飯はさんまの塩焼きだ)

俺(こんがりときれいな焼き色がついたさんまの横に、大根おろしが盛られている)
 
俺(ご飯もみそ汁もばっちりだ)

俺「俺は、別に女さんと付き合っているわけじゃない」
 
誰にいうわけでもなく、口を動かす。

俺「別にあいつと女さんが付き合おうと、俺にとってはどうでもいい」
 
さんまに箸で亀裂を入れ、身をつまみ口に運ぶ。うまい。

俺「そうだろ?」

シーちゃん「さあ、どうなんでしょう」


声が聞こえた。

どこからだ? 

目の前だ。

目の前の椅子を凝視する。
 

そこには、彼女が、シーちゃんがいた。

最初から、ずっとそこにいた。

消えていたものが出現したようでもなく、当たり前のようにそこにいた。

俺「シーちゃん」

シーちゃん「はい」

俺「君は、なんなの」

シーちゃん「彼女です」

俺「君さ、確かにずっといたんだよ」

シーちゃん「はい、ずっといましたよ」

俺「俺は、俺は」
 
自分の状況が分からない。

この間まで、ずっと料理が机の上に並べられていた。

それを彼女が作っている姿もきちんと見ていた。

だけど、それを認めていなかった。

時計の秒針のように、当たり前のものとして見ていた。

シーちゃん「そんな顔しないで下さいよ」

俺「ごめん」

シーちゃん「悲しいじゃないですか」
 
彼女は椅子から立ち上がり、俺の頭をそっとなでた。

氷の塊が、頭の上を滑っているようだった。

俺「昔、好きな子がいたんだ」

シーちゃん「はい」

俺「その子は放課後毎日、道路に寝そべっていたんだ」

シーちゃん「変わった子ですね」

俺「そうだ、変わった子だったんだ」

俺「暑い日も、寒い日も、その子は寝転がり続けたんだ」

俺「なんでってある日聞いたんだ」

俺「そいつさ、自分が車に轢かれるの待ってるって言うんだぜ?」

俺「おかしいだろ?」

女「おかしいですね」
 
シーちゃんは相槌を打つだけだ。俺は続ける。

俺「あの時、俺は何も言えなかった。何もしなかった」

シーちゃん「はい」

俺「その子は、それからどうなったのかは知らない。転校したとしか聞いてないんだ」

シーちゃん「はい」

俺「俺が何かしたら、変わったか?」

シーちゃん「そんなこと、私にきかれても困りますよ」
 
彼女の声色はあくまで明るい。

だけれど、その言葉はあまりに冷たく、重たく俺にのしかかる。

シーちゃん「忘れられたんですか?」

俺「何をだ?」

シーちゃん「あなたの願いですよ」
 
俺「彼女をください、か?」

シーちゃん「そういうことですね」
 
シーちゃん「では、あなたがほしかったものはなんですか?」

俺「だから、彼女だって」
シーちゃん「そういうことですね

シーちゃん「では、クリスマスプレゼントといえども、あなたはもう大人です」

俺「そうなのかな」

シーちゃん「ええ、ですから」
 
シーちゃんは、頭から帽子をとり、机の上に置いた。

シーちゃん「クリスマスプレゼントくらい、自分で取りに行ってください」
 
その言葉を最後にシーちゃんの姿は見えなくなった。

俺(プレゼントを、自分で?)

俺(シーちゃんは、クリスマスプレゼントではなかった)

俺(でも、シーちゃんは俺の彼女だった)
 
俺(シーちゃんと過ごして、俺は変わった)

俺(誰かといることの楽しさを覚えた)

俺(人と話すことの喜びを覚えた)

俺(人とふれあうことの幸福を知った)
 
俺(それがなかったら、俺は女さんと、ラーメンに行くという選択肢は)

俺(出なかったんじゃないのか?)
 
俺(そのまま女さんと同じ部屋で寝るということも)

俺(なかったんじゃないか?

俺「なるほど」

俺「そういうことね」

俺はソファに放りこんだコートを羽織り、マフラーを巻いた。

俺(やっぱりかっこいいじゃん)

俺「行ってきます」
 
誰もいない部屋に、そう告げた。
 
サンタさんは、いい子のところにしか来ないらしい。
 
ならば、俺は今からいい子になろう。
 
自分に正直な、いい子になろう。
 
昔と今は、違うんだ。
 
俺は靴をはき、扉を開けた。

外には雪が降っている。

こんなものに負けてはいられない。

いこう。

サンタさんの贈り物がなんなのか、わかったから

 三百六十四日目

その日も雪が降っていた。

空気は張り詰めていて、皮膚がむき出しになっている顔は、ただれてしまいそうなほど冷たかった。

後輩「先輩寒いっすねー」
 
俺「そうだな」

後輩「先輩はいいっすねー、クリスマスにいちゃいちゃできる彼女がいて」

後輩「俺も彼女ほしいですね」

俺「あ、別れたのか」

後輩「はい、ちょっといろいろあって」

俺「好きだったのか?」

後輩「うーん、どうでしょう」

俺「好きな人がいなくなってつらいのか」

俺「恋人がいなくなったことが空しいのか、どっちかだな」

後輩「うーん」

後輩「後者、ですかね」

俺「そうかい」

俺「サンタさんにでもお願いしとけ」

後輩「先輩でも冗談言うんですね」

俺「冗談じゃねえよ、本気だ」
 
俺(名前も忘れてしまったけれど)

俺(確かにサンタさんは、俺に贈り物をしてくれた)
 
俺(たしか、目元には小さなほくろがあったな)
 

俺(昔俺が好きだった女の子にもたしか)

俺(目元にほくろがあった)

俺(ま、たまたまか)
 
俺(あの子は、今元気なのだろうか)

俺「いい子にしてたら、サンタさんは来てくれるさ」
 
俺は、首に巻いた青色のマフラーにかかった白い雪を、そっと払った。

後輩「先輩」

俺「ん?」

後輩「そのマフラー、似あってますね」

俺「ありがとよ」

おわり

自作小説のSSアレンジでした

またどこかで

読んでくれた方々、ありがとうございました

(`・ω・)ノシ

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