・スレタイで丸わかりな気もするけど鷲尾の内容を含みます
・ゆゆゆ本編終了後を想定
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~☆
銀「久しぶりだね、園子」
銀「かれこれ二年ぶり以上だけど、元気してた……とは言えなさそうか」
園子「ミノ、さん」
銀「何さ」
園子「…………あなた本当に、ミノさんなの?」
銀「だからそう言ってるじゃんか」
園子「でも、ミノさんは確かに死んじゃったはずだよ」
園子「お別れ、したもん。棺の中で横たわるミノさんに」
銀「だーかーらー。ゾンビになって、帰って来たんだよ」
銀「神樹様の御力でさー、ちょちょいのちょいってね」
園子「そんな……。いくら神樹様だからといって、死んだ人を――」
銀「二年前、本当はさ」
銀「アタシの身体の生命活動が停止する直前に」
銀「神樹様に意識だけ回収されてたらしいのよ」
銀「必死で戦ってる途中に、突然白い光にポワワーンって包まれて、フワ―ってなって」
銀「その後の記憶はろくにないんだけどね」
銀「で、つい最近神樹様に身体を作ってもらったから、アタシはそこにスポン、って入った」
銀「これでナットクした?」
園子「きゅ、急に納得って言われてもこまるよ~」
銀「そっか」
銀「でも、困ったな」
銀「これ以上どうやって、アタシがアタシだぞって、園子に言ったらいいのかわかんないし……」
園子「……えっと、あなたがミノさんだったとして、なんで今になって帰って来られることになったの?」
銀「ん? あー、それはね、今の神樹様、すっごくたくさんパワーに満ち溢れてて、
アタシのために存分に使えるパワーと時間があったからみたいよ」
銀「なんでもバーテックスから最近いっぱい神様パワー回収できたらしくて、
これからの結界の完璧な防御に回すぶんを確保しても」
銀「勇者に十分な施しができるくらいいっぱいあるんだって」
銀「結界を一度完璧に安定させたら、しばらくは他のことに手が回せるようになる」
園子「神樹様が、そう言ってたの?」
銀「いや。神樹様が直接そういうこと、アタシに言ってたわけではないんだよねー、これが」
銀「神樹様の中にいたとき、こういうことなんだなーって感じたというかなんというか」
銀「うーん……」
園子「そこはいまいちはっきりしないんだね~」
銀「いやはやメンボクない」
銀「まあ、アタシのことはこのまま話し続けてもキリがなさそうだし、
これくらいでひとまず脇に置くとしてさ」
銀「須美の方はどうなってんのよ?」
園子「……」
銀「いやー、頑張って戦うぞーっていざはりきって目を覚ましてみたら、
戦いがもう一段落してるとは思わなかったわ」
銀「結界が完全に安定したなら、それって当然なんだけど、うっかりそこまで頭が回ってなかった」
銀「しかもいつの間にか二年も過ぎてるし」
銀「もうホントビビったビビった」
銀「アタシもう知らない内に中学生じゃんかー、って」
銀「でさ、起きてすぐ、そういうようなこと大赦の人に聞かされてから、
じゃあ、園子と須美はどうなってんの? って訊いてみたんだけど」
銀「超歯切れが悪いんだよね」
銀「それでも、数日かかって検査色々受けたりしてる間に少しずつ、
園子の状況といる場所だけはどうにか大雑把に聞かせてもらったんだけど」
銀「須美についてはずっとバツが悪そうにしてて、頑として口を割ってくれねーの」
銀「これ以上訊いてもしょうがなさそうだから、
今日、園子のところに来てみたんだけど……園子?」
園子「わっしーなら、ここに結構頻繁に来てくれるよ」
銀「おー。じゃあ須美もちゃんと無事なのか」
園子「だけど、今のわっしーはわっしーって名前じゃないんだ」
銀「え?」
園子「東郷美森。それが彼女の今の名前」
銀「東郷、美森……?」
園子「そしてね、私とミノさんと過ごした記憶のことを、わっしーは忘れちゃってるんだ」
銀「忘れちゃってる……。 それってどれくらい?」
園子「えっとね、ほとんど全部」
銀「……大マジ?」
園子「マジだよ~」
銀「マ、マジなのかよぉー」ガックリ
園子「これでもだいぶマシになったんだよ~?」
園子「最初は何もかも忘れてたところに、ようやくぼんやりとだけど昔の印象、
少しずつ思い出せるようになってきたんだから」
銀「マシになった、って言われても……なぁ」
園子「…………」
園子「ミノ、さんは、『満開』って知ってる?」
銀「満開? 花が思い切り咲くことでしょ?」
園子「ううん。そっちじゃなくてね、ミノさんが死んじゃってから、
勇者システムが強力にアップデートされて、追加された『満開』って機能があるの」
園子「『満開』をすると一時的にワーって強くなれるんだけど、それには代償があってね」
園子「その力を神樹様からバーテックスを倒すため借り受ける代わりに、
『満開』するたび供物として自分の一部を捧げなくちゃいけなかったんだ」
銀「供物……」ゴクッ
園子「わっしーはその満開で、私たちと過ごした日々の記憶と一緒に、
約二年分の記憶を失くしてしまったの」
銀「……園子のその身体も、満開したからってことかよ」
園子「うん、そうだよ。これも、わっしーの記憶と同じで、だいぶ良くなってきてるんだけどね」
園子「前まではこういうの身体に付けても、まったく動かせなかったし」グイッ
園子「もう少し良くなったら、義手と義足で自力の日常生活をおくれそうなんだ」
銀「『満開』するたび、ってことは、園子は何回も『満開』をしたわけ?」
園子「うん」
銀「そっか……」
銀「本当に大変だったんだ」
園子「二人だったからね。ミノさんのぶんも頑張んなきゃいけなくてさ。
それで限界まで頑張ったらこうなっちゃった」
銀「……ごめん」
園子「ごめん? どうして?」
銀「だって、アタシが二人のこと置いて行っちゃったから、こんなことになったんだ」
銀「だから、ごめん」
園子「ううん、謝らないで。そんなことを言われたら、私だって、
あのときミノさんと一緒に戦えなくてごめんって謝らなきゃだよ~」
銀「園子……」
園子「誰も悪くない。みんな頑張った。それで良いと、私は思うな~」
銀「そう、かな?」
園子「そうだよ~」
銀「そっか」
銀「……わっしーはさ」
園子「うん?」
銀「今、どこの中学校に進学したの?」
銀「会いに行ってみようと思うんだけど」
銀「わっしーの記憶がなくなったからって、それでただくよくよしててもしょうがないじゃん?」
園子「えっとね、讃州中学に通ってる、って言ってたよ」
銀「讃州中学……。場所はわかる?」
園子「場所はね――」
今日はここまで
ゆゆゆ最終回見て真っ先に浮かんだ感想「銀は死んでるけどな」だったので、
そのもやもやをSSにしようと思いました(銀に公式で復活されてもそれはそれで反応に困るけど)
とはいえ、夏凜治ってよかったね、風先輩、日常帰ってきてよかったね
とは思うので、あのラスト自体に不満があるというわけではないですしこれもその路線で行きます
>>12 うっかりミス修正
一行目
×銀「……わっしーはさ」
○銀「……須美はさ」
五行目
×銀「わっしーの記憶がなくなったからって、それでただくよくよしててもしょうがないじゃん?」
○銀「須美の記憶がなくなったからって、それでただくよくよしててもしょうがないじゃん?」
~☆
東郷「友奈ちゃん、最近学校の勉強、ちゃんとわかってる?」
友奈「…………ちょ、ちょーとだけ、厳しい、かな?」
東郷「そう」
東郷「なら、そろそろ勉強会をしなきゃだね」
友奈「うっ。勉強会は、やだなぁ。絶対大変だもん」
樹「い、今、やらなかったら、きっと、もっと大変になっちゃいますよ」
友奈「それは……そうだろうけど、さ」
夏凜「頑張れー、友奈。根性よ、根性」
友奈「……夏凜ちゃん、他人事だと思ってなんて薄情なセリフを!」クワッ
友奈「この! この!」コチョコチョ
夏凜「ちょ、ちょっと、あはははははは、やめなさいよっ!」ジタバタ
風「ねえねえ、今日どこ行く? かめや?」
樹「それでいいんじゃないかなぁ」
東郷「大丈夫よ、安心して、友奈ちゃん」
東郷「友奈ちゃんを待っている間、
私が散々被った心労のぶんだけ、しっかり教育してあげるから」ニコォ
友奈「ひえっ」
東郷「どうせなら、夏凜ちゃんも一緒に――」
夏凜「待って東郷、それ私、完全にとばっちりだわ」
銀「…………」
勇者部「」ワイワイガヤガヤ テクテク
銀「……はぁ」
銀(ダメだ。こっちをこれっぽちも意識しやしねえ)
銀(ナハハ、須美がアタシを忘れてるってのはガチのガチみたいだな)
銀(ちゃんと須美の視界にアタシが入る立ち位置で、立ってたのに)
銀(目がこっちを見なかったどころか、目がこっちを一度見て、そのまま素通りしていきやがった)
銀(わかっちゃいたけど、キッツいねぇ、まったく……)
銀(ムチャ楽しそうにしちゃってさ)
銀(アタシがあの頃のアタシとちょっとばかり違った可能性もあるけど、
こっちは須美のこと一目でわかっただけになー)
銀(東郷美森、だったけか)
銀「……しゃーない。東郷家の美森さんは後回しにするか。ちょいと面倒そうだ」
銀(まず家に一度帰ってみよう。連絡は、大赦からしてもらったらしいもんな)
銀(あいつは、ちゃんとアタシのこと、覚えてるかな?)
銀(舎弟として将来コキつかってやる予定なんだから、覚えてないと、困るんだけどな)
~☆
園子「昨日はどうだった~?」
銀「あー、ダメダメ。須美のこと見つけたは見つけたんだけどさ」
銀「ダチいっぱい引き連れて楽しそうに帰ってたから、どうにも話しかけ辛くて機会逃しちゃったよ」
銀「いわゆるエンリョってやつ?」
園子「ふ~ん。ミノさんも遠慮したりするんだ~」
銀「そりゃするよ。アンタはアタシをなんだと思ってるんだっての」
園子「桃から産まれた桃太郎みたいなやつかな~」
銀「なにそれ」
園子「昨日、ミノさんが帰ってからね、新しくミノさんが神樹様から産み落とされる映像を、
大赦の人にビデオで見せてもらってね~」
銀「は?」
園子「あ~、これは桃太郎だな~って」
銀「……何ソレ、じゃあ園子は、アタシの裸まじまじと見ちゃったってこと?」
園子「そこは、未成年の情緒に配慮して、ちゃんとモザイクが入ってたから安心だよ~」
銀「へー。随分手回し良いんだな」
園子「そうだね。おかげで助かった」
園子「映像で見たから、私もようやくミノさんが、
神樹様から返していただけたミノさんなんだって実感が持てたの」
銀「…………」
園子「だから――」
銀「だから?」
園子「お互いの両手を、ギュってしよう」
銀「両手? なんで?」
園子「友達は久しぶりに再会したら両手をギュっとするのが基本だって、
記憶を喪ったあとのわっしーが最近言ってたよ~」
銀「ふーん」
銀「でも、なんかまどろっこしいな。ハグでよくない?」
銀「――こんな得体の知れないゾンビボディで抱きしめてなんて言えない!」
銀「とかそういうこだわり、アタシ特にないし」
園子「何それ~。お芝居のセリフ?」
銀「いや、別にそういうわけじゃないけど……。なんとなく、ね」
園子「……まあ、いいや~」
園子「さあ、それならドンと私の胸に飛び込んで来なさ~い」
園子「さあ、さあ!」ポワワーン
銀(なんでこいつはこう、緊張しそうな場面でも、一々雰囲気で脱力させに来るんだ……?)
銀(まあ、いっか)
銀「園子、ただいま」ギュッ
園子「おかえり、ミノさん」ギュッ
園子「……あ~、いいね~。ハグって」
園子「ミノさん、昨日、家族の人たちともこうやってハグしてみた?」
銀「うん、やったよ。父ちゃんと母ちゃん、弟全員にね」
園子「どうだった?」
銀「やっぱり落ち着くねー、我が家は」
銀「幸い弟もアタシの顔見ただけで超ニッコリしたし、どうやら忘れられてはいなかったみたい」
銀「我が弟ながら、あの時期に二年逢わなくても覚えてるだなんて、
ひょっとしてあいつ天才なんじゃないかって思うわ」
園子「ミノさんの弟なんだから、実際そうかもしれないね~」
銀「アハハ、なーにソレ、間接的にアタシ褒めてんの? 褒めても何も出ないよ?」
園子「もう……」
園子「せっかくギュってしていい気分なんだから、もう少しそれに浸らせてほしいな~」
銀「あ、ゴメンゴメン」
銀 園子「…………」ギュー
銀「なあ、園子」
園子「なに?」
銀「アタシたちさ、学校戻ることになったら、勉強どうしよっか……?」
園子「私は、時間はたくさんあったから、
大赦の人たちからあれやらこれやらちゃんと教えてもらってるよ?」
銀「……え?」
~☆
パサッ…
東郷「あら?」
友奈「どうしたの? 東郷さん」
東郷「私の下駄箱に、何やらお手紙が入ってたみたいなの」
友奈「お手紙?」
東郷「どうしよう、友奈ちゃん」
友奈「どうしようって、東郷さんが開けてみるしかないんじゃないかな」
東郷「でも、きっとこれは、不幸の手紙よ……」
友奈「不幸の手紙?」
東郷「ええ」
東郷「西暦の時代に一時期流行したという、
五人に同じ物を送らないと、不幸が降りかかるという呪われた――」
友奈「……よ、よくわからないけど、多分違うんじゃないかな?」
風「東郷ー! 友奈ー! どうかしたのー?」テクテク
友奈「あっ、風先輩」
友奈「あの、東郷さんの下駄箱にお手紙が入ってたみたいで」
風「てがみぃ?」
樹「どうか、したの?」テクテク
風「東郷の下駄箱に、手紙が入ってたんだって」
樹「……?」
夏凜「ねえ、みんなどうしたの? 早く行こう」テクテク
風「東郷、手紙」
夏凜「は?」
東郷「……これです」
夏凜「なに、これ?」
風「何って、下駄箱に入ってると言えば、ラブレターでしょ」
東郷 夏凜「「ラブレター?」」
友奈(東郷さんはラブレターなんて貰って、凄いなぁ)
樹「とにもかくにも、東郷先輩、皆に見えないところで、一度中身を開けてみたらどうですか?」
風「それは確かにそうね」
東郷「……わかりました」テクテク
東郷「…………」サッ
風s「…………」ゴクリ
東郷「――え、えーっと」
友奈(頭を抱えた)
東郷「うーん……」
友奈(で、懐にしまった)
風「ねえ、ラブレターの中身、どうだった?」
東郷「ラブレターじゃありませんでした」
樹 友奈「「え?」」
夏凜(なんかいまいち私、事情把握できてないんだけど、
東郷が誰かから手紙もらったってことでいいの?)
風「……じゃあ、本当に不幸の手紙だったわけ?」
東郷「不幸の手紙でも、ありませんでした」
東郷「これ、果たし状です」
友奈 夏凜 風 樹「「「「果たし状……?」」」」
今日はここまで
果たし状を書くなんて、このご時世いったい誰がそんなことを……(棒)
~☆
東郷「あなたが、これを私に寄越した人ですね?」
銀「おうともさ」
夏凜「今どき果たし状なんて書く人間がいるなんてびっくりね」ボソボソ
友奈「あの人、誰なんだろう?」ボソボソ
樹「雰囲気は、ちょっと夏凜さんに似てる気がします」ボソボソ
夏凜「そう?」ボソボソ
風「でも彼女、ツンデレっぽくはないわよね」ボソボソ
夏凜「なによ風、それじゃまるで私がツンデレみたいじゃない」
風「しー! 声が大きい!」ボソッ!
東郷「あなたはいったい誰なんですか? どうして、私に果たし状を寄越すなんてことを?」
銀「……誰、ねぇ」
銀「どうして、なら答えるのまだ簡単だから、そっちから先に答えていい?」
東郷「ええ、構いません」
銀「そっか」
銀「ラブレターだとさ、来ないかもしれないじゃん?」
銀「でも、果たし状なら誰だって呼び出された場所に様子見に来るだろうと思ったから」
銀「それで果たし状ってことにしたわけ」
風「果たし状なら来る。謎の理屈ね」ボソボソ
友奈「そうかな? 結構わかる気がする」ボソボソ
風「ええ?」ボソボソ
夏凜「友奈の言う通りよ」ボソボソ
夏凜「私たちみたいな仲間を念のため数人後ろで待機させておきながら、
自分の敵がどういう奴なのかまず確かめておくのって、結構重要だと思うわ」ボソボソ
友奈「わ、私が言いたかったのは別にそういうことじゃないんだけど……」ボソボソ
東郷「……」
東郷「つまり、私と争ったりするつもりはないということかしら?」
銀「うん。東郷美森さんとは、ね」
銀「ただし、勇者部に対しては、その限りではないけど」
東郷「っ!」
友奈 夏凜 風 樹「……?」
銀「そんなところでこそこそ隠れてないで、さっさと出てきたらどうだ」
銀「全部わかってるんだよ、こっちにはさあ」
テクテク
友奈「バレてましたね」
樹「なかなか鋭いです」
夏凜「いったいいつバレたのかしら?」
風「さっき、夏凜がちょっと大きい声出したときじゃない?」
ガヤガヤ
銀(四人もいるし、気配で最初からわかってたんだけど……)
風「……エー、ゴホン」
風「では、この私、勇者部部長が改めて訊かせてもらうわ」
風「あなたはどうして東郷を呼び出したりしたの?」
風「果たし状が口実だったにせよ、何か目的はあるわけでしょ?」
風「それも、勇者部と衝突することになるかもしれないような何かが」
銀「……それを言っちゃうと、アタシの素性も自然と明らかになっちゃうんだけどねー」
銀「まっ、いいや。先延ばしにしたところでいつかは言わなきゃいけないもんな」
銀「アタシはね、東郷美森さんを、勇者部からスティールしに来たんだよ」
友奈「すてぃーる?」
夏凜「盗むってことよ」
友奈「あっ、バスケとかのあれだね」
東郷「……それで、なぜ私なの? 私とあなた、どこかで会ったことあったりする?」
銀「言っとくけど、アタシが盗りに来たのは東郷美森としての、アンタじゃないよ」
銀「わっしーとしてのアンタが欲しいんだ」
友奈「わっしー……?」
風 樹 夏凜「?」
東郷「…………」
東郷「それじゃあ、あなたはもしかして――」
銀「三ノ輪銀」
銀「昔、園子と一緒に、アンタと勇者やってたお仲間だよ」
友奈 風 樹 夏凜「っ!」
銀「まあ、実際のところはそこまで昔ってほどでもないんだけどね」
銀「小六の頃だし」
東郷「三ノ輪、銀……さん」
友奈「あ、あの」
銀「ん?」
友奈「じゃあ、あなたは乃木園子さんと――」
銀「おおともよ! アタシたち三人が、アンタらの前任勇者だったのさ」
銀「須美……の説明はいいか」
銀「園子は、黒や紫といった暗めの色をベースにしたコスチュームで、長槍を使う」
銀「アタシは、ドドドっと燃えるような赤い赤いコスチュームで、両手に斧を――」
夏凜「待って」
夏凜「赤い? 斧? 前任の勇者?」
夏凜「じゃあ、もしかして、私の端末の元の持ち主って――」
銀「お? なに? アンタとアタシに、なんか繋がりあったりするの?」
夏凜「私はね、先代の勇者からの端末を、改造のうえ引き継いで使ってたのよ」
夏凜「最初は両手に斧を持つ予定だったけど、機動力重視で双剣になって」
夏凜「それってようするに、あなたのものだったってことじゃない?」
銀「まあそうでしょ、多分」
銀「へー」
銀「アタシが死んでから、アタシの端末って再利用されてたんだ」
樹「し、死ん……?」
銀「うん。バーッテクスとの戦いでやられちゃってさ。お葬式もちゃんとしてもらってたみたい」
銀「とはいえ、最近神樹様の力で新しい身体を得て、無事にこの世に甦ったんだけど」
友奈「さ、さらっと言ってるけど、無茶苦茶どエライことのような……」
風「とりあえず、話ぶりが事態の重さに対してむっちゃ軽いわよね」
銀「あはは、こういうのは深く考えない方が良い、って相場が決まってるってもんヨ」
東郷「…………」
東郷「――三ノ輪銀さん」
銀「なに?」
東郷「私は、東郷美森です」
銀「うん。で?」
銀「だから、わっしーとして、勇者部からスティールされるわけにはいきません」
銀「んなの当然わーってるよ」
銀「でも。こっちも退くつもりはない」
銀「言っただろ? アタシは、アンタをスティールしに来たんだ」
東郷「…………」
風「ううーん」
風「どうやら話し合いでの交渉は、決裂してしまったようね」
銀「そうだねー、残念ながら」
銀「じゃ、しゃーなしだ。これから勇者部vsアタシの勝負としゃれこもうか?」
樹「勝負……」
夏凜(まさかこの人数差相手にまともに喧嘩売るとは思えないけど、いったいどうするつもりなんだろう、私の先輩さんは)
友奈「三ノ輪さんは、具体的に、どんな勝負を勇者部とするつもりなんですか?」
銀「どんな? はは、決まってるじゃん」
銀「大好きな人を手中に収めるのは、その人のことが一番好きな人であるべき、って古今東西お約束になってる」
銀「と、いうわけでっ、勝負の内容はこれよっ!」
銀「――愛を試せッ! 東郷美森は、いったいどんな子なんだ!? クイズぅーッ!」ババーン
友奈s(え、えぇぇええぇええ……?)
今日はここまで
30日?の『その後の園子』が公式から出るまでに終わらせたいんだけど、書き切る時間今月中にとれなさそうなのよなぁ
夏凜お姉ちゃん(仮)に膝枕される銀とか、やりたいことは去年からいっぱいあったのにまだ全然書けてないし
銀の口調「神樹様が敵にデストロイされちゃったら」やら難しいのとCVがないせいで
一回~じゃんよとかSSの台詞の語尾書いたら、スペースダンディで脳内されたことがあって大変だった 直したけど
とりあえずニヒヒとちゃーを銀のセリフのどこかで使いたい
修正
>>42 八行目
× 銀「うん。バーッテクスとの戦いでやられちゃってさ。お葬式もちゃんとしてもらってたみたい」
○ 銀「うん。バーテックスとの戦いでやられちゃってさ。お葬式もちゃんとしてもらってたみたい」
>>42 十二行目
× 銀「あはは、こういうのは深く考えない方が良い、って相場が決まってるってもんヨ」
○ 銀「あはは、こういうのは深く考えない方が良い、って相場が決まってるもんヨ」
>>43 六行目
× 銀「だから、わっしーとして、勇者部からスティールされるわけにはいきません」
○ 東郷「だから、わっしーとして、勇者部からスティールされるわけにはいきません」
~☆
風「えー、それでは第一問です」
風「『東郷美森さんことわっしーが、好きなのはど~ちだ?』」
風「『A 和食』」
風「『B 洋食』」
風「それぞれのパネルに回答を書いたあと、書き直し防止のために、樹にお渡しください」
友奈「……」カキカキ
銀「……」カキカキ
友奈「はい、樹ちゃん」
樹「はい、受け取ります」
銀「ん」
樹「ど、どーもです……」アワアワ
夏凜「……樹って、初めて会った人とやり取りするのあまり得意じゃないし、
あの役は私がやった方が良かったんじゃないの?」
風「ふふん、何事も経験よ、経験。甘やかすことだけが優しさじゃないわ」
夏凜「でも風って、いつもはこれ以上ないくらい樹のこと甘やかしてばかりでしょ」
風「なにをー! 我が家の教育方針に――」
樹「あの、お姉ちゃん、回答のオープンを……」
風「あっ、そうだったわね」ハッ!
風「では、二人の回答を見てみましょう」
風「オープンっ!」
友奈『A』 銀『A』
風「おっと、両者回答が一致したようです」
風「両者正解か、それとも不正解か? 正解を発表します!」
風(まあ、Aよね)
樹(A)
夏凜(A)
友奈(A)
銀(A)
風「答えはっ……」ドゥルドゥルドゥル…
風「『A』っ!」ババーン
友奈「簡単だったね! 三ノ輪さん!」
銀「だねー」
銀「でも、一問目だし、こんなもんでしょ」
東郷「…………ねえ、みんな」
風「なに? 東郷」
東郷「クイズの間、この箱の中に私が入ってる必要は特に無いと思うの」
風「いやいや、東郷はクイズの景品なんだから、箱に入ってなきゃダメでしょ」
夏凜「似合ってるわよー、東郷ー」
東郷(……ああ、ダメだ)
東郷(夏凜ちゃんは他人事だと思って適当だし、
風先輩は楽しんでるから、助けてくれそうにない)
東郷「ゆ、友奈ちゃ~ん」
友奈「大丈夫だよ、東郷さん。箱に入ってる東郷さんも、可愛いから」
東郷「いや、そういう話じゃなくてね――」テレテレ
樹(東郷先輩、縛られてるわけじゃないんだから、出たいなら自分で出ちゃえばいいのに、
真面目というかどこか抜けてるというか……)
風「第二問、行きまーす!」
風「『東郷美森さんことわっしーの誕生日は、い~つだ』!」
風「○月○日の形で、パネルにどうぞ!」
銀「……」カキカキ
友奈「……」カキカキ
風「樹、パネルをこっちに」
樹「うん」
風「よし」
風「回答を、オープン!」
友奈『4月8日』 銀『4月8日』
風「今度も両者回答が一致しました」
風「では、正解を発表します」
風「『4月8日』」
風「はーい、二問目も共にせいかーい」
銀「ニヒヒ、楽勝楽勝」
銀「結城さんの方はどう?」
友奈「ふふーんだ、私のスマホのパスコード、東郷さんの誕生日だから、この問題間違えようがないもんね」
銀「えっ、ウソっ。須美の誕生日?」
友奈「東郷さんのスマホも、私の誕生日がパスコードで御揃いなんだ」
銀「……お二人さんって、どっちも女の子ではあるけど、お互いに対してホの字の関係だったり?」
友奈「ホの字?」キョトン
東郷「ホ、ホの字……///」
風(ホの字かどうかはともかく、無茶苦茶仲良いのは確かよね、この二人)
銀「……」
銀(須美とここまで熱烈に絡んでると、園子が喜びそうかなぁ、小説の題材として)
銀(実はもうこの二人を題材に書いてたりして)
風「えー、三問目です」
風「『東郷美森さんことわっしーが、勇者として使用していた武器はなんでしょ~か?』」
銀「……」カキカキ
友奈「……」カキカキ
風「回答、オープン!」
友奈「『銃』」 銀「『弓』」
夏凜「あれ……?」
樹「?」
風「おっと、ここではじめて両者の回答が割れました!」
風「正解ははたしてどちらなのか? 正解発表です!」
風「『最初は弓を使っていたが、威力不足を痛感して銃器に変更』」
風「……ということで、両者回答不十分で、共に不正解です!」
東郷(私って、最初は弓を使ってたんだ……)
銀「銃を構えてる須美か……。うん、アリだな」
友奈「東郷さんって、弓を使ってたこともあったんだ」
銀「ふふん。日頃アタシと園子と一緒に、必死の戦闘特訓してたんだからな?」
銀「かつての須美はアタシと園子が育てたようなもの、ってことさね」
銀「逆にアタシと園子もまた、須美に育てられた、と言えるかな」
夏凜「三ノ輪さんは、勇者として日頃訓練することについて、どう思ってた?」
銀「……そうだなぁ」
銀「休日にも訓練あったのは、正直メンドウだなーって思うことあったけど、今となってはいい思い出だよ」
銀「何よりみんなを守るんだ、って燃える目的あったしな。ああいうの、嫌いじゃなかった」
樹「東郷先輩が、あんなに狙撃が上手だったのは、地道な努力の賜だったんですね」
銀「アー、勇者部のみなさんは、勇者の訓練どんな感じだったの?」
銀「やっぱりメンドウだなーって、たまに思っちゃたりした?」
友奈「う、うーん……」
夏凜「特に日頃訓練してなかったわね、勇者部は」
銀「え?」
風「ゆ、勇者部としての社会奉仕活動に、私たちって忙しくて……ハハハ」
夏凜「勇者システムの改良のおかげで、トーシロでも才能があったら戦えるようになってたのよ」
夏凜「それでも、訓練が戦闘に良い影響を与えるだろうって、アタシは一人でも訓練してたけど、
勇者部に入ってからのメニューなんて、入る前と比べたらまるでお遊びもいいところ」
銀「……ようするに、放課後イネスに行こうと思えば、みんなで行く時間いっぱい作れたってこと?」
夏凜(なんでイネス……?)
夏凜「ええ、そういうことになるわ」
夏凜「たくさん社会奉仕活動してたのも事実だけど、なんだかんだ色々遊んでた」
夏凜「バーテックスの襲来の間に訪れる小康にはね」
銀「ちゃー。そこんところは素直にすっごく羨ましいネー」
銀(園子から、『満開』の存在聞かされてるから、なんでもかんでも良かったのにとは思えないけど)
風(いやー、こうして見ると、部に入ったときと比べて、夏凜って明らかに性格が丸くなったわ)
風(普段の態度が、ずっと自然になったというか、場に馴染んだというか)
風「そろそろ、第四問、最終問題いきまーす」
樹「もう終わり?」
風「乃木さんが事前に用意してくれた、って三ノ輪さんが渡してくれた問題は次で終わりよ」
銀(クイズ長々続けても、付き合い長い結城さんが有利になるだけだからなー)
風「『東郷美森さんことわっしーが、一番作ることの得意なお菓子はな~に?』」
銀「……?」
銀(須美って、お菓子作れるんだ)
友奈「……」カキカキ
銀「………………」カキカキ
風「回答オープン!」
友奈「『ぼたもち』」 銀「『ところてん』」
銀「ああー、ぼたもちかー。なるほど須美っぽいな」
友奈「東郷さんのぼたもちは、ほっぺたが落ちちゃいそうなくらい美味しいんだよー」
風「……もう今のやりとりで、勝敗ははっきりしちゃった気もしますが、正解発表でーす」
風「『ぼたもち』」
風「と、いうわけで、友奈が正解数三、三ノ輪さんが正解数二ってことで、私たちの勝利ね」
夏凜(最終問題、不正解だったってことは、本当に不正はなかったのね)
夏凜(相手が事前に用意してた問題を使うって聞いて、
あっちは問題の答え最初から知ってるんじゃないか、って疑ってたけど)
夏凜(まったくの杞憂だったみたい)
東郷「風先輩」
風「なに?」
東郷「この場合私は、友奈ちゃんにプレゼントされるってことでいいんですか?」
風「ん? ……うーん、そう言えば、私たちが勝ったらを決めてなかったわね」
樹「それを言ったら、三ノ輪さんが勝ったらどうなるのかも、特に決まってなかったような」
風「確かに。そう言えばそうね」
風「それなら、友奈は、勇者部代表ってことでクイズに臨んだんだから、
東郷は勇者部みんなのものになるってことかしら」
友奈「ねえ、みんな」
友奈「クイズの景品は、三ノ輪さんが勇者部に入る、じゃダメかな?」
銀「え?」
友奈「東郷さんをスティールしに来たって言ってたから、その勝負に負けた今、
三ノ輪さんは勇者部に取り込まれるのが自然かなって」
友奈「これだと東郷さんは私たちのものだって景品と違って、
ちゃんと私たちに勝負に勝ったメリットがあるでしょ」
東郷「それ、いいね、友奈ちゃん」
風「そうねえ……」
風「三ノ輪さんは、どこの中学に通ってるの? 部活は?」
銀「え、えーっと――」
~☆
銀「ヤッホー」
園子「今日は、どうだった~?」
銀「普通に負けちゃった。最終問題で間違えちゃってさ」
園子「そっか」
銀「園子は、須美のぼたもち、どんな味か知ってるの?」
園子「うん。前にわっしー持ってきてくれたことあるから~」
園子「美味しかった~。ほっぺたが落ちちゃいそうになるくらいなの~」
銀「はは、結城さんも味の評価、同じこと言ってたよ」
園子「わっしー。PCも扱えるらしいよ~」
園子「凄いな~。私もわっしーに負けないよう、何か頑張らなくっちゃね~」
銀「……そうなんだ」
園子「ミノさん?」
銀「須美、ムッチャ楽しそうだった。あいつらといて、心が通じ合ってるっつうか」
園子「良いことだね~」
銀「そりゃ、良いことなのはアタシにもわかるけど……」
園子「けど?」
銀「須美すんごく変わっちゃったな、って。アタシが知ってる頃より、ノリがずっと軽い」
園子「あー、かれこれ二年以上だから、そこら辺はもうどうしようもないかな~」
銀「それもそうなんだけどーー」
園子「でも、どのみちミノさんは、その変化を自分の目で確認するために、今日行ったわけでしょ?」
銀「……何、ソレ」
園子「わっしーを勇者部から引っ張るなんて、最初から本気じゃなかった」
園子「ただ、わっしーがどう輪に溶け込んでいるのか、
それと、勇者部の人たちがどれだけわっしーのことを好きか、知りたかっただけ」
園子「違う?」
銀「……こういうときの園子って、びっくりするくらい鋭いよな」
銀「だけどね、須美についてのクイズで負けたくない、って思ったのもホントなんだ」
園子「…………」
銀「アタシ今日さ、クイズに負けたあと、勇者部入らないかって誘われた」
園子「それで?」
銀「で、なんやかんや話しあって、仮入部することになった」
園子「……仮入部?」
園子「ミノさん、これから讃州中学に入るんだよね? なのになんで仮入部なの?」
銀「だって、園子が讃州中学行けるようになるまで、まだまだかかりそうじゃん?」
園子「え?」
銀「アタシ、園子を置いて先に中学入る、なんて嫌なんだ」
銀「アタシは、アンタたち二人を、あの戦いの中で置いていった」
銀「その埋め合わせ、とまではいかないにしても、園子の身体が落ち着いて、
学校にまた通えるようになるまでは、ここに毎日通って、いれるだけずっと一緒にいたい」
銀「だから、アタシが勇者部に本入部するときは、絶対に園子と一緒だ」
園子「ミノさん……」
銀「大赦に頼んだら、園子が学校に通えるようになるまで、待ってもらえるよう手配するって」
銀「この先普通の生活を送れるようになりたいなら、
今の内から勉強死にもの狂いで頑張らないとダメなんだぞ、って釘を刺されたけどね」
園子「……それじゃあ、学校に行かないぶん、ここにいる間、私が手とり足とり教えてあげるね」
園子「教えるからには、ミノさんの予想よりも、多分随分とスパルタでいくから覚悟しておいた方が良いよ~」
銀「ほ、ほどほどに頼むね……? アタシまだ、病み上がりだよ……?」
園子「私は病み上がりどころか療養中だよ~」
~☆
銀「今日美森から、勇者部が文化祭でやった劇の映像が届いたよ」
園子「あっ、やっと届いたんだ~」
銀「さっそく見る?」
園子「見る見る~」
銀「よーし、じゃあ、再生開始するからちょっと待って」
銀「……」
銀「ポチっとな」
<ワー ワー
銀「よし、オッケー」
園子「……どうやら勇者のお話、みたいだね~」
<ワー ワー
銀 園子「…………」
<ワー ワー
銀(うーん、演技するの楽しそうだなー)
銀(この脚本を作ったの、部長さんだっけ)
銀(……園子脚本の劇も、いつか見てみたいかも)
銀(今園子が何か書いたら、アタシと美森がセットになるのかな)
銀(それとも友奈と美森になるのかな)
<ワー ワー
銀 園子「…………」
<ワー ワー
友奈『――自分だけではどうにもならないこともたくさんある』
友奈『だけど、大好きな人がいれば、挫けるわけがない。諦めるわけがない』
友奈『大好きな人がいるのだから、何度でも立ち上がる』
友奈『だから……勇者は絶対、負けないんだ!』
園子「…………ッ」ポロポロ
銀(……園子)
銀(こういう時は自然に接してやるべきだよな、多分)
園子「……」ギュッ
銀「おいおい、急に手なんて握ってどうしたのさ?」ギュッ
園子「ミノさん……っ」グスッ
園子「帰ってきてくれて、ありがとね……」ズズッ
銀「…………うん、ただいま。園子」
今日はここまで
割ける時間的に30日前に終わらせられるかは微妙だけど
先の展開は脳内でできてるのよね
一応今のところ話を畳み始めてるというか、
次回、園子と銀勇者部入部、歓迎会、そして、で完結の予定
~☆
東郷「そのっち、銀、勇者部入部おめでとうー」パーン!
パチパチ パチパチ
銀「やー、どもども」
園子「これで私も、やっとみんなの仲間入りだよ~」
風「まっ、まずは座って座って」
園子(……綺麗にみもっしーの両隣が空いてるな~)
銀「園子、どっち座る?」
園子「ん~、そうだね~。じゃあ、私は友奈ちゃんの隣の方で」ストン
銀「アタシはこっちか」ストン
風「……さあ、みなさん、それでは目の前のジュースを手に取ってください」スッ
風「えー、私たちの手元にあるのはただのジュースでありますが、
今回は二人の新入部員の歓迎会である気分を出すため、乾杯を行います」
風「では、ごく簡単な乾杯の音頭を、東郷美森さん、どぞ」
東郷「はい」
東郷「ご指名を受けました、東郷美森です」
東郷「このたび新しい部員を迎えた勇者部に、
今後更なる楽しき日々が訪れることを、神樹様に祈願するつもりで……」
東郷「かんぱぁーいっ!」
友奈s「「「「「かんぱーいっ!」」」」」
銀「……」モグモグ
銀「ウマーっ!」
友奈「ねえねえ、ミノさん、園子ちゃん」
銀「ん?」
友奈「今日はね、お料理何にするかと飾り付け、全部東郷さんが企画したんだよ!」
銀「ア、そうなんだ」
銀「ならこれ、美森の手料理ってことか」
銀「美森って、マジで料理ウマいんだなー!」
東郷「で、でも、友奈ちゃんに両方、飾りつけ専門に樹ちゃんと夏凜ちゃん、
料理専門に風先輩って感じで、みんなの手を借りたし――」テレテレ
園子「お祝い本当に嬉しいよ~」
園子「こんなに豪勢で愛を感じられる歓迎会ありがとう~、みもっしー」
銀「こんなに料理がウマくて、可愛いくて、しかも気立てもいいんだから、こりゃ嫁として引く手あまただわー」
東郷「/////」
樹「……みもっしー?」
園子「うん~。以前の呼び方と混ぜて、そう呼ぶことにしたんだ~」
東郷「園子はニックネームで友だちを呼ぶのが好きなのよ」
樹「へー。そうなんですか」
樹「みもっしー。なんだかゆるキャラみたいで、可愛いですね」
風「ねえねえ、にぼっしー。にぼっしーとみもっしーって似てるわね」
夏凜「ちょ、それ新入部員にいきなり教えるのはなしでしょ!?」
園子「にぼっしーちゃんか~」
夏凜「ほらっ、もうなんか定着しちゃいそうじゃない!」
銀「にぼっしー?」
風「うん、この子にぼしが大好きだから、にぼっしー」
園子「そうなんだ~。よろしくね~、夏凜さん」
夏凜「……あれ? にぼっしーは?」
園子「流石にニックネームで呼ばれるのを嫌がる人を、無理やりニックネームで呼んだりしないよ~」
夏凜「そ、そっか。そうなんだ」
風(本当は別にそんな嫌じゃないのに、凄いイヤな雰囲気出しちゃったけど、悪いことしちゃってないかな)
風(どうしよう……)
風(って、角が完全にとれて丸くなったツンデレの顔してるわね、夏凜)
東郷「銀とそのっち」
園子 銀「?」
東郷「ふと思ったんだけど、これから何かやりたいこと、ないかな?」
銀「やりたいこと?」
東郷「今日やることでなくてもいいわ」
東郷……いや、むしろ今日じゃできないくらい手間がかかる方がいいかも」
東郷「ただ、二人が勇者部に入って、新しくやってみたいこと、あったらいいなって」
園子「やりたいことか~」
東郷「一人や二人、三人じゃなくて、私たち全員が一緒になってやれるような何か」
東郷「それを、日常の学内活動以外での、次の勇者部の活動目標にしたら、凄く良い気がする」
東郷「どうですか? 風先輩?」
風「そんなの良いに決まってるじゃない。最高のアイデアだと思うわ」
園子「……う~ん、やりたいことか~。うう~、今は特に思いつかないな~」
銀「いくらなんでも、質問がちょっといきなりだしねー」
東郷「そっか……」
風「んー。お二人さん、今のことじゃなくても、夢とかそういうのないの?」
園子「夢?」
風「そっ」
風「今、夢そのものは叶えることができないとしても、
そこから今やってみたくなるような話題に、何か繋げられるかもなって」
園子「夢……。私は、大赦で巫女としての役目を果たしながら、小説を書くくらいかな~」
風「小説、書いてるの?」
園子「うん、そうなの~。でもこれ、勇者部に助けてもらう夢じゃない気がするような~」
風「そうねー」
園子「ミノさんは、確か将来の夢、お嫁さんだったよね~」
銀「え?」
銀「……そう言えば、そんなことも言ったっけなー」
東郷「でも、お嫁さんの夢は、私たちじゃどうやったって叶えようがないわ」
風「男の子を紹介するとかは、なんか違うわねー」
友奈「――ウェディングドレス、どうかな?」
東郷「友奈ちゃん?」
友奈「お嫁さんって言ったら、真っ先に思い浮かぶのは、多分結婚式とウェディングドレスでしょ?」
友奈「そういうのなら、難しいごにょごにょを挟まず、それっぽくできるんじゃないかな?」
風「結婚式かぁー。銀ちゃんは、そういうの今やってみたかったりする?」
銀「……ウ、ウェディングドレスを一度着てみたいってのは、確かに思わなくもなくなくないかなーって?」
夏凜「どっちよ」
風「じゃあ決まりね。勇者部の次の活動、けってーい!」
樹「ねえ、お姉ちゃん。やるのって、ウェディングドレスを着るだけ?」
風「と、いうと?」
樹「本当に結婚式を再現するなら、タキシードを来た新郎役も必要な気がするよ」
風「なるほど、確かにそれはそうね」
風「候補者は……東郷以外かな」
風「東郷はその、新郎役としては、身体の一部が発達し過ぎてますからなー」ジロジロ
東郷「っ!」
風「むむむ、実にけしからん」
銀「んふふふふふ」ニヤニヤ
東郷「銀、その顔やめて」
友奈「私と、樹ちゃんと、園子ちゃんと、夏凜ちゃんかー」
風「樹はダメ。お嫁にもお婿にも出しません」
夏凜「何よ、ただの結婚式の予行練習みたいなものじゃないの。しかも女の子相手の」
風「それでもダメ。絶対ダメ。断固拒否」
樹「お姉ちゃん……」
園子「けど実際、樹ちゃんよりは、夏凜さんと友奈ちゃんのどっちかの方が、
新郎さん役似合いそうな気がするね~」
風「でしょでしょ? 流石乃木さん、話がわかるわー」
夏凜「新郎役ねぇ……」
友奈「私はやってもいい、けど、結局はミノさんがどう思うかだよね」
銀「アタシ?」
友奈「だって、いくら本当の結婚式とは違うといっても、
自分の隣を歩く相手は、自分で選んだ方が良いと思うな」
友奈「ウェディングドレスを着たせっかくの晴れ舞台なんだから」
風「確かに」
風「ミノさん、あなたは友奈と夏凜、どっちに新郎役やってもらいたい?」
風「それとも東郷や乃木さんが良かったり?」
銀「……うーん、じゃあ、夏凜にお願いしよう、かな」
夏凜「私、か」
東郷「風先輩、ウェディングドレスの手配は具体的にどうやって?」
東郷「レンタルですか? まさか自作は……」
風「可能なら、大赦の手を借りて作るか作ってもらう、って裏技使いたいわね」
風「子供が着れて、レンタルできる良いドレスってあるのかどうか、よくわからないもの」
園子「必要だったら、大赦へのコネと乃木家の財力で、お役に立つよ~」
友奈「おお、心強い」
東郷「だったら、式をやる場所も、結婚式場を大赦の手を借りて確保して、私たちは式の招待客って感じに?」
風「うんうん、そんな感じでやれたらい~んじゃないかしら?」
銀(……なんだか、新しくやってみたいこと、から話がどんどん大ごとになっていくなぁー)
~☆
銀「おやおや、夏凜、似合ってるじゃんか、その格好」
夏凜「どーも。あんたこそ、似合ってるわよ、その白いドレス」
銀「そう?」
銀「こ、こういう女の子全開の格好、自分じゃあんまり似合わないと思うんだけど」テレテレ
夏凜「……」
夏凜「ねえ。どうして銀は、私をタキシード着せる相手に選んだの?」
銀「……どうして、ってそうだなぁ、うーん」
銀「夏凜とは、一度顔を突き合わせて、じっくりお話してみたかったってやつかな」
銀「夏凜って、アタシのスマホを引き継いだ後輩なんでしょ? 前からイロイロ興味あったんだよね」
銀「だからこれを機会に、今後仲良くヨロシクね。ほい、握手」スッ
夏凜「よ、よろしく」スッ
銀「…………話したかったってのは、ホントにイロイロあってさ」
銀「アタシのスマホを受け継いで戦ったっていう、夏凜のこと、知りたいと思ってたのもそうなんだけど」
銀「ちょっと、聞いてもらいたいことがあるんだよね」
銀「勇者部の、先輩として」
夏凜「なに? 相談ってこと?」
銀「そう」
銀「もう式始まるまでそんなに時間ないから、今日は夏凜のこと聞くより、こっち優先しちゃっていい?」
夏凜「ええ、もちろん」
夏凜「勇者部について、私にわかる範囲でなら教えてあげるわ」
銀「あんがと。じゃ、話すけどさ」
銀「……アタシね、晴れてゾンビになって甦ってから、園子が学校行けるようになるまで待って、
それから勇者部に入って、活動に参加して、って今日まで過ごしてきたけど」
銀「全然、勇者部に馴染める気がしないんだ」
銀「生きることに、二年以上ブランクがあるからかな?」
銀「なんかクラスや勇者部のみんな、風先輩以外、同じ年の女の子ばかりなはずなのに、
全員大人びて感じるっていうか、笑いのツボ? テンションの違い? いわゆる空気ってやつ」
銀「まーそういうのが、アタシとはだいぶズレてるんじゃないかって思うこと、度々あるんだ」
銀「多分、考えすぎなんだろね」
銀「でも、アタシの知らない美森……須美が現にいて、園子も、じっくり話してみたら、あの頃とは結構違って」
銀「コワイんだ、アタシ……」
銀「元から大の苦手だった勉強、私なりにだいぶ頑張ったつもりだけど、それでもまだ全然できないんだ」
銀「小学生程度のだって全然ガバガバ。だから授業、教室にいても大抵パッパラパー」
銀「しかも、園子がどんどん勇者部に馴染んでくのを傍で見てるから、毎日が歯がゆくて、歯がゆくて……」
銀「このままだとアタシ、二人に置いて行かれるんじゃないか、って、
アタシの知ってたあの居場所は、もうどこにもなくなっちゃうんじゃないかって――」
夏凜「……」
夏凜「多分、大丈夫なんじゃない?」
夏凜「勉強は銀の根性次第だし、私がどうこう言えることじゃないだろうけど」
夏凜「少なくとも勇者部になら馴染めるはずだとは、はっきり言えると思う。」
夏凜「自分でも気が付かない内にいつの間にか、ね」
銀「なしてそんな軽く、大丈夫なんて言えちゃうの? 教えてくれよ」
銀「アタシ、誰かと仲良くなろう、溶け込もうってとき、こんなに躓くの初めてなんだ」
銀「だから――」
夏凜「勇者部五箇条ひとーつ!」
銀「?」
夏凜「挨拶はー、きちんと」
銀「……う、うん」
銀「で、一体何を――」
夏凜「勇者部五箇条ひとーつ!」
夏凜「なるべく諦めなーい」
銀「!」
銀「……」
夏凜「勇者部五箇条ひとーつ!」
夏凜「よく寝て、よく食べる」
銀「……」
夏凜「勇者部五箇条ひとーつ!」
夏凜「悩んだら相談!」
銀「……」
夏凜「勇者部五箇条ひとーつ!」
夏凜「なせば大抵ー、なんとかなーる」
銀「……」
夏凜「……ふぅ」
夏凜「この五か条、私、いつ覚えたのかまったく記憶にないのよ」
銀「え?」
夏凜「銀。あんたがなんでこんなこと、私に相談したかって言ったら、わかってたんでしょ?」
夏凜「私が、勇者部にとっては元々よそ者で、後から入った奴なんだって」
夏凜「あと、自分と何かが似てるなって、シンパシー感じた。違う?」
銀「…………うん」
夏凜「私も、初めて会った時からあんたにシンパシー感じてた」
夏凜「性格が似てる――とはまたちょっと違くて、なんて言うのかな」
銀「根っこの部分が、似てるっぽい、とか?」
夏凜「そう、それ」
夏凜「えーっとね……」
夏凜「銀と状況全然違ったけど、勇者部に入部したばかりの頃、私もあの輪の中に全然溶け込めなかったわ」
夏凜「ついてけないと感じてる銀とはまったく逆で、
こいつらは、なんて勇者の自覚がないチャラチャラした奴らなんだろう、って見下してね」
夏凜「私は今でも、あのときの判断にはそれなりの理由があったと思ってるけど、まあ、それはそれとして」
夏凜「私が言いたいのは、あなたと根っこの似ている私が、最初は全然溶け込めなかったのに、
いつの間にか勇者部の輪の中に完全に溶け込んでたんだってことよ」
夏凜「フフフ……。あの頃の私は、みんなへの苦手意識どころじゃなくて、
表だって挑発するみたいなことも平気でやってたんだから……」
銀「だから、アタシも、夏凜と同じことができるはずってこと?」
夏凜「ううん、銀が、じゃないわ。みんなで一丸となってやるの」
夏凜「だって、あんたはもう勇者部の一員なんだから」
夏凜「生憎だけど、勇者部は度量が広い人間ばかりだから、ちょっとやそっとじゃ放り出されたりしないわ」
夏凜「そこだけは、私の見てきた感じてきた経験から、絶対に保証できる」
夏凜「勉強が苦手でも、みんなに助けてもらいつつ、根性でぶち当たればいいのよ」
夏凜「東郷や園子のことがわからないなら、これから知っていけばいいだけ」
夏凜「繰り返すようだけど、なるべく諦めない、悩んだら相談、なせば大抵なんとかなる、よ」
夏凜「……なんか今更だけど、説教臭くなっちゃったわ。ごめんね」
銀「ううん、説教だなんて、そんな」
銀「これなら美森に大目玉食らったときの方がよほど堪えるし、お話もずっと長いよ」
夏凜「ああ、わかるわ、それ」
夏凜 銀「くくっ……」クスクス
夏凜「……私は、あなたに勉強を教えられる自信はないけど、勇者部の先輩として、
日々の愚痴くらいなら聞いてあげられるわ」
夏凜「東郷と園子の二人に、あまり自分の弱いとこを見られたくない中で、
そういうの吐き出す相手には結構適任でしょ、私」
銀「んやー、そういうの知られたくないって、わかっちゃう?」
夏凜「当然でしょ」
夏凜「なんなら辛いときには、私がちょっとのあいだ、
あんたのお姉ちゃんになって、胸を貸してあげるかわよ」ボソッ
銀「お姉ちゃん?」
夏凜「…………」
銀「お姉ちゃん……。夏凜お姉ちゃん」
夏凜「……////」
銀「くく、くっ……」クスクス
夏凜「わ、笑うなぁっ!」クワッ!
銀「いや、だって、夏凜にお姉ちゃんは、なんか雰囲気似合わないっしょ」
銀「なんか、ねえ……?」
銀「くく……うははははは」ケラケラ
夏凜「だ、だから笑うなってのっ!」ペチペチ
~☆
樹「ここがイネスにあるお店の中で、ミノさん特にオススメのお店なんですねー」
銀「そだよー。アタシが勇者やってた頃は、園子と美森とよく来たもんさ」
銀「美森もおいしいと認めた、美森三ツ星のお店なんだ」
風「へー、だったらかなり期待できそうだわ。全部の味制覇してみようかしら」ワクワク
樹「お姉ちゃん、食べ過ぎでまた、お腹壊さないよう気を付けてね」
風「……はい、気をつけます」シュン…
友奈「みんなは何を頼んだの?」
園子「私はメロン味のジェラートだよ~」
東郷「私は――」
銀「あれ? それ、しょうゆ味じゃん」
風「しょうゆっ!?」
樹「す、すごいね……」ゴクリ
銀「美森って、宇治金時味とかそういうのが好きなんじゃなかった?」
東郷「ええ、そうね」
東郷「でも、これ、もしかすると今ならおいしく食べられるようになったかな、って」
東郷「銀が好きだったの、これだった……わよね?」
銀 園子「っ!」
銀「……まさか、思い出したの?」
東郷「最近、少し」
東郷「これも、銀はこれが好きだったはず、とか、
具体的な記憶は特に浮かんでこない程度の思い出し方だけどね」
銀「それでも、大きな一歩だよォっ! よくやった美森! 偉いぞッ!」
東郷「わ、私は思い出すのに別に努力何もしてないけど……」
園子「とりあえずはやく食べようよ~」
銀「はっ! そうだった」
夏凜「しょうゆ味のジェラート、食べたくなってきたから、銀、あとで一口ちょうだい」
銀「うん、いいよ」
風「私も食べてみたいわね……」
風「東郷、あとで一口」
東郷「ええ、いいですよ」
樹「東郷先輩、気を付けてくださいね。一口でお姉ちゃんにガブリとほとんど盗られないように」
東郷「大丈夫、わかってるわ、樹ちゃん」
風「……うう。私、そんな食い意地張ってないもん」イジイジ
友奈「え、えー」
友奈「それでは、銀ちゃんの追試無事通過を喜ぶ、祝賀会を開催しまーす」
パチパチ パチパチ
銀「追試を喜ぶって、締まらないなぁ……この会」ナハハ
東郷「銀、贅沢を言ってはダメよ。確かに時間は予想以上にかかったけれど、千里の道も一歩より。
こういう進歩の積み重ねがいずれ銀の学徒精神を健やかに涵養し――」
銀「うわー! 追試終わってすぐのこんなときまで、美森のお説教いらないってのーっ!」
終わり
『その後の園子』発売日までにぎりぎり間に合った……
もっと銀を勇者部の中で丁寧にダラダラさせる過程やりたい気持ちなくはないですが
『その後の園子』までにひとまず妄想したかったことは、一通り一連の流れとして妄想できた気がする
『その後の園子』読んだら、地の文一人称園子小説とか書いてみたかったり
それ以外でも四つくらい台本形式今既にやりたいのあるので、二月はポツポツSS連続して書いてると思う
あと、前にTwitterで見かけた銀花嫁絵、本当に最高だと思ったんですけど、ここでそのtweetのURL貼るのってどうなんでしょうね
あれ知らない人が探せるものなのかな SS後半花嫁の方向性にしようって決めたの、あれ見たからなんですけど
兎にも角にもHTML化依頼出してきます
このSSまとめへのコメント
銀は喜多村英梨さん、やる事が決まったのかw
続き楽しみにしてます。