ミカサ「私の箱庭」 (77)

※ネタバレ注意
※死ネタ・捏造多数有
※エレミカ推し

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ミカサ「……エレン、元気を出して」

エレン「………」

ミカサ「…アルミンは、使命を全うした」

エレン「…約束、守ってやれなかった」

ミカサ「彼の作戦であなたは生き延びた。巨人はどんどん数を減らしている」

エレン「一緒に…外の世界を、って…」

ミカサ「人類に明るい未来をもたらした彼の功績を、私たちが…親友が認めてあげないと、報われない」

エレン「したんだ、約束……、っう、ぁあ…っ」

ミカサ「エレン…、エレン…」

ジャン「よぉ、ミカサ」

ミカサ「…ジャン。班の仕事はいいの?」

ジャン「ああ、こっちはもう討滅完了だ。……エレンの奴の、あー、調子はどうだ?」

ミカサ「……任務中は問題ない。今も、兵長について混戦中の部隊の援護に行った」

ジャン「珍しいな、お前がエレンと離れるなんて」

ミカサ「…私といると、あの作戦を思い出すみたいだから」

ジャン「……すまん」

ミカサ「気にしないで。ジャンらしくない」

ジャン「…それもそうだな、っははは。エレンの奴、ミカサはこんなに気丈にしてるってのに何ウジウジしてやがんだ、情けねぇ奴!」

ミカサ「……ありがとう」

ミカサ(アルミンは戦死した。エレンを、私を庇う形の作戦を立て、殉死した。

けれど彼の日々の研究資料のおかげで、巨人は確実に絶滅へと向かっている。

…エレンだけが、まだ…アルミンの死に、向き合えていない)



ジャン「お、あれリヴァイ班じゃないか?」

ミカサ「……!」

ジャン「…じゃ、オレは戻るわ。エレンが嫌になったらいつでも憲兵団に来いよ、ミカサ」

ミカサ「…ありがとう、ジャン」

ミカサ「……エレン!」タッ

エレン「!…ミカサ」ビクッ

ミカサ「ぁ…」

エレン「……わ、悪い、報告がまだなんだ。また後でな」タタタッ

ミカサ「……ええ」


ミカサ(アルミンは、エレンの親友だった。私は所詮、エレン繋がりであったのは否めない。

彼の戦士はショックではあるが…誇らしい最期だったと思えるようになるのに、時間はかからなかった。

けれど、エレンは違う。子供の頃から勇敢で頭の回るが故に周囲から浮いていたエレン、突出して頭の良かった故に弾かれていたアルミン。

私と出会うよりもずっと前から二人はお互いが唯一無二の友人で、男同士という事もあって…私が二人が話すのを見て疎外感を覚えたことは少なくなかった。

私のアルミンへの信頼も、エレンの親友だからという下地があったという事実を、…彼の戦死後のエレンの落ち込みぶりを見ていて、気付いてしまった。

それでも…私は、前に進みたい)

エレン「…の討伐数は0、討伐補佐は3…以上です!」バッ

エルヴィン「ご苦労だった。…エレン、君には明日から三日間の謹慎を命じる」

エレン「え!?…あ、あの、心当たりがないんですけど…」

エルヴィン「謹慎は方便だ、君は働き過ぎている。

現状は人類の優勢だが、いつまた君の巨人化の力が必要になるとも分からない。

その時に君が使い物にならないのでは話にならんだろう、休暇も立派な職務の内だ、聞き分けろ」

エレン「…分かりました」

エルヴィン「無論、あまり自由にしてもらっても困るからな。監視としてアッカーマンにも同じ通達をしてある」

エレン「え!?ミカサと一緒ですか!?」

エルヴィン「実力からいって、万が一に君を制圧できるのは彼女かリヴァイだけだろう。

まぁ、今の君に監視の必要がない事は分かっているが…上が勝手に怯えてしまうのでね。

アッカーマンとは家族だろう?気心が知れている方が休息になる。リヴァイと二人で休暇を過ごしたいというのなら別だが」

エレン「…い、いえ、いいです。…きちんと休みます」

エルヴィン「そうしてくれ。今日はこのまま解散していい」

エレン「…はい!失礼します!」バッ

ミカサ「…エレン」

エレン「うわ!ビックリした!…なんだよ、待ってたのか?」

ミカサ「うん。私も働き過ぎているから、一緒に休めと言われた」

エレン「…俺の監視なんだし、一緒にいないとまずいよな」

ミカサ「……ごめんなさい。私がいると、気が休まらないかもしれないけれど…」

エレン「…そんなことねーよ」


ミカサ(…エレンと話しても、目が合わない。それがとても、寂しい)

エレン「あー、でもどうすっかなぁ。街に出る気分でもねーし…」

ミカサ「…なら、私の家に来ない?」

エレン「え!?お前、家なんて買ったのか?殆ど帰れないから、結婚した兵士か一般人しか買わないのに…」

ミカサ「…兵団の給金、使い道なかったから。何となく」


ミカサ(本当は、違う。帰れる家が欲しかった。それに…エレンの家に、私たちの家に少し似ていたから)

ミカサ「ここ。入って」

エレン「おー、立派なの買ったんだな。…ウチに似てるな、なんか」

ミカサ「…うん。エレン、今夜は肉を買ったから」

エレン「マジか!?お前、金使い過ぎだろ!」

ミカサ「平気。土地の奪還で、肉がずいぶん安くなったから」

エレン「…そうだったな」

ミカサ「あ……」


ミカサ(エレンの表情が曇ってしまった。…アルミンを思い出させてしまったみたい)

エレン「…悪ぃ、ちょっと寝るわ」

ミカサ「じゃあ、部屋の用意をする。少し待っていて」

エレン「サンキュ」


ミカサ(エレンは寝てしまって、食事の支度も済んだ。お風呂も準備した。

…何をしよう。名目上は監視だから、エレンを置いて出て行く事も出来ないし…)


ミカサ「…刺繍、久々にしてみようか」ゴソゴソ

エレン「ふぁ〜…やべぇ、結構疲れてたんだな俺…もう外暗いじゃねーか。

ミカサー、悪い、熟睡した」トントントン

ミカサ「エレン、おはよう。待ってて、すぐにお風呂を沸かす」

エレン「ん…それくらい俺がやるよ。どこ?」

ミカサ「でも…」

エレン「いーって、おんぶに抱っこじゃ落ち着かねーよ」

ミカサ「…分かった。こっち」

エレン「ミカサー、沸いたから入っちまえよ」

ミカサ「私は後でいい。エレンこそ…頬に煤がついてる」フキフキ

エレン「ふ、拭くなよ!分かった分かった、でもすぐ上がるからお前も入れよ!」

ミカサ「だめ。ゆっくり浸かって、休暇も職務の内」

エレン「う…分かったよ」

ミカサ「着替え、出しておくから」

エレン「そんなのまで準備してたのか?すげーな、何から何まで」

エレン「いい湯だったー…すげーさっぱりした。壁外調査に出ると入れないしなー。ミカサも入って来いよ」

ミカサ「だめ、食事が出来てる。食べないと」

エレン「あ!?クソ、ずりーぞ!入れっつったのに」

ミカサ「了承してない。エレン、肉が冷めてしまう」

エレン「くっそー…すげーうまそう。食ったら絶対入れよ!」

ミカサ「うん、わかった」クス

ミカサ「……ふぅ」チャプチャプ


ミカサ(…エレンとこんなに話したのは、随分久し振りだ。とても楽しい。

でも…アルミンの話題には、触れるのが怖い。また、空気が凍ってしまいそうで。

私はあまり、口で何かを言うのが得意ではない。彼の死と向き合って欲しいけれど、下手をするとエレンが離れてしまいそうで…それがとても怖い。

こんな私が知られたら、軽蔑されてしまうかもしれない…)


ミカサ「……はぁ。…?」

ミカサ(ぬるくなってきていたお湯が、あたたかく…)チャプ

エレン「うまかった…何の肉だったんだ?」

ミカサ「鹿の肉。生で売ってるのは珍しかったから、ちょっと贅沢だった」

エレン「肉って生のを焼くとこんなに柔らかいんだな。加工してる保存用のなんてもう食えねー」

ミカサ「今後はどんどん増えるって。家畜に適した、牛とか豚とか鶏が見付かったらしい」

エレン「すげーな、ホント。…よし、風呂入ってこい」

ミカサ「片付けがあるから…」

エレン「皿洗いくらい俺にやらせろっての!早くしないと冷めちまうし。今入らないと、夜に抜け出すぞ?」

ミカサ「…分かった。ありがとう、エレン」







ミカサ「……ふぅ」チャプチャプ


ミカサ(…エレンとこんなに話したのは、随分久し振りだ。とても楽しい。

でも…アルミンの話題には、触れるのが怖い。また、空気が凍ってしまいそうで。

私はあまり、口で何かを言うのが得意ではない。彼の死と向き合って欲しいけれど、下手をするとエレンが離れてしまいそうで…それがとても怖い。

こんな私が知られたら、軽蔑されてしまうかもしれない…)


ミカサ「……はぁ。…?」

ミカサ(ぬるくなってきていたお湯が、あたたかく…)チャプ

エレン「ミカサー、湯加減どうだー?」

ミカサ「!?エ、エレン!?」ザバァ

エレン「? とりあえず薪足しといたから、のぼせないよになー」

ミカサ「…あ、りがと、ぅ…」チャプン

ミカサ(…ビックリした)ドキドキ

エレン「お、出てきたか。ほら、水」

ミカサ「ありがとう。…ふぅ」

エレン「そういえば、お前のベッドも支度しといてやろうと思ったんだけど、他に無かったぞ?」

ミカサ「あ…忘れていた」

エレン「じゃ、ベッド一つか。狭くなりそうだけど仕方ねーな」

ミカサ「!?エ、エレン、それは…」

エレン「今日くらい我慢してくれよ、明日ベッド買いに行こうぜ。駄目なら俺、床で寝るけど」

ミカサ「そ、それはだめ!…分かった。エレンがいいなら、今日は一緒に寝よう」

ミカサ(…眠れない。心臓の音がうるさい。昔は、よく一緒に寝たのに…)

エレン「ァ……ン、…ぅう…」

ミカサ「…?エレン?起きてるの…?」

エレン「…ルミン、アルミン…駄目だ、行くな…」

ミカサ「………」

エレン「アルミン…どうして……」

ミカサ(……おばさんの時のように、暴れたり…無茶を言って周囲につっかかったり、目標に打ち込んだりしてくれたら、まだいい。

私たちは大人になった。大人になって、強さを手に入れ多分、弱さも手に入れてしまったのかもしれない。

こんな時になんて声をかけたらいいのか…それすらわからない私は、大人にすらなれていないのかもしれない。

涙をこっそり拭うしかできない。他にどうすればいいのか相談する相手は、もうここにいない)


エレン「アルミン…」

ミカサ「…エレン、あなたのせいじゃない…」ナデナデ


ミカサ(明け方まで、エレンはうなされ続けていた。寝息が落ち着くのを聞いて、私は眠りについた)

エレン「ミカサ、そろそろ起きろよ」ユサユサ

ミカサ「…ん……エレン…?」

エレン「お前が寝坊なんて珍しいな。もう昼だぞ」

ミカサ「…ごめんなさい、私も疲れていたみたい。すぐに食事の支度を…」

エレン「オレはもう自分で食った。昼はどうせだから、ベッド買うついでに外出て食おうぜ。昨日の肉のお礼に奢ってやる」

ミカサ「…分かった。すぐに支度をする」

エレン「うわ、すげぇ人混みだな…!」

ミカサ「行き来が盛んになった分、商売も盛んになって賑わっているから」

エレン「お、あの屋台肉挟んだパン売ってるぜ!あれにするか」

ミカサ「…うん、とても美味しそう。…っあ、」

エレン「おっと!…あー、躓いても支えいらないよなぁ、お前なら」

ミカサ「…そんなことない」ギュウ

エレン「…んじゃ、行くか」ギュッ

ミカサ(エレンが咄嗟に差し出してくれた腕。飛び込まずに堪えてしまって、少し残念。

けれど、勿体なくてこちらに向けられた手を握りしめたら、エレンは払わずに握り返してくれた。

二人で人混みを、手を繋いで歩く休日。外の世界は巨人の脅威が縮小して、平和が目に見える速度で浸透している。待ちゆく人々は、みんな笑顔だ。

…エレンにも、早く前を向いて欲しい)


エレン「繋いだままじゃ食べにくいだろ…」

ミカサ「なら、どこかに座ろう。あっちに花壇が…」

エレン「…あ」タッタッタッ

ミカサ「エレン?」

ショタ「ぐすん…おかあさん、どこ…?」

エレン「おい坊主、どうした?男が泣いてるとみっともないぞ」

ショタ「……ぼく、おかあさんとおかいもの、きて…おかあさん、まいごになっちゃった」

エレン「っぷ、ははは。そっか、困った母ちゃんだなー。ほら、これ持ってろ」

ショタ「? う、うん…うわ!!」

エレン「大事な昼飯だから落とすなよ、っと。ほら、肩車なら良く見えるだろ。母ちゃんいるか?」

ショタ「わかんない…」

エレン「よし、じゃあ呼んでみるか。オーイ!迷子の母ちゃんいるかー!ほら、お前も呼べ!」

ショタ「う、うん…。おかあさーん!どこー!」


「アルミン!!」

エレン「っ!?」ビクンッ

ショタ「あ!おかあさんだ!おじちゃん、おかあさんあそこ!!」

エレン「………」

ショタ「おじちゃん?どうしたの?」

ミカサ「……ぼく、私につかまって。降りないと」

ショタ「う、うん…」

母親「アルミン!ああ、良かった…どこへ行ってたの!離れちゃいけないって言ったろう!」

ショタ「ご、ごめんなさい…」

母親「お二人とも、ありがとうございました!ほらアルミン、お礼を言いなさい!」

ショタ「おじちゃん、おねーちゃん、ありがとー!」

ミカサ「…お子さんの名前、素敵ですね」

母親「え?ああ、英雄のアルミン・アルレルト様からお借りしたんです。

私の両親が…シガンシナで、巨人にやられまして。その敵を取る作戦を考え殉死した、英雄ですから。

頭のいい子になって欲しいと思ったんですけど、どうにもやんちゃで…あれ、アルミン、その手に持ってるのは?」

ショタ「あ!!おじちゃん、ぼくおとさなかったよ!!はい、かえすね」

ミカサ「…アルミン、私が持っておくからこちらに」

エレン「いい、ミカサ。…坊主、それやるよ。母ちゃんと半分こして食べな」

ショタ「いいの?やったー!」

母親「ええ!?そんな、肉の挟んだパンなんて高価なの、おいそれともらえやしませんよ…!」

エレン「いや、いいんです。坊主、しっかり食べて大きくなるんだぞ。あと、俺はまだおじちゃんじゃない」

ショタ「ありがとー、おじちゃん!」

母親「もう、この子ったら…本当にすみません、ありがとうございます」

ミカサ(母子を見送るエレンは、笑顔で手を振っていた。

何度も頭を下げる母親に、半分にしたパンを差し出す少年の姿が人混みに消えて…

同時にエレンの笑顔も、消えてしまった)


ミカサ「…エレン」

エレン「……英雄だってさ。アルミンの奴」

ミカサ「…うん」

エレン「…アイツが死んで、…その名前をもらった子が、あんなに大きくなるまで、時間が経ってたんだな」

ミカサ「……エレン」

エレン「そりゃあ、俺もおじちゃんになっちゃうか…」

ミカサ(エレンは、涙を流していた。刺繍したハンカチを差し出して、そっと道の陰に彼を隠した。

もう一度手を繋いで、しっかりと握りしめる。逞しく成長したエレンの手に、手が痛んだ)

エレン「っ、……」グゥウウウ

ミカサ「…エレン、見栄っ張り。凄い腹の虫」

エレン「う、うるせーな!しかたねーだろ、アルミンなんだぞ!」

ミカサ「そうだね。…はい、これ食べて」

エレン「…半分にしろ。食べたら、ベッド見に行くぞ」

ミカサ「分かった」クスクス

エレン「にしてもあの坊主、お前はおねーちゃんなのに俺はおじちゃんだと!」モグモグ

ミカサ「それは仕方ない。その髭、あまり似合ってない上に老けて見える」

エレン「な…なんだよ、父さんだって伸ばしてたのに」

ミカサ「エレンには似合ってない。剃った方がいい」

エレン「ちっくしょー!」ガツガツ

エレン「あれ、同じ部屋に置くのか?」

ミカサ「? だめなら、諦める…」

エレン「あー、いや、そういう意味じゃねーよ。でも同じ部屋で寝るなら、別に要らなかったと思ってさ」

ミカサ「…そ、それは…私が困る、寝不足になってしまう」

エレン「はぁ?あ、俺寝相そんなに悪いのか?」

ミカサ「…もういい」ハァ

エレン「何だよ、悪かったって。じゃあちょっと離して…うん、こんなもんか」

ミカサ「これで、いつでもエレンが泊まりに来られる。いっそここを自宅にしても構わない」

エレン「別にいいけど、調査兵団は今殆ど遠征だし。あんま戻る機会ねーじゃん」

ミカサ「それでもいい。二人の家にしよう」

エレン「じゃ、遠征が落ち着いたらな」


ミカサ(夕飯を食べる間、ずっとアルミンの話をした。子供の頃のこと、私が来る前の話、訓練兵時代の思い出、最後の作戦の時の雄姿。

今日出会った小さなアルミンの話もして、ベッドに入ってもなかなか話は途切れなかった)

エレン「あー…でもさ、ここに住むなら俺も家の金払わないと。貯金残ってたかな…」

ミカサ「そんなのは別にいい。家族なんだから」

エレン「俺がやだよ、払わせろって」

ミカサ「絶対に貰わない」

エレン「払うって!」

ミカサ「……お金は、貰ってもあまり使わない。だから、別のものがいい」

エレン「んー…まぁ、それでもいいか。いいよ、俺が出来る事なら何でも言え」

ミカサ「…エレンの一日を、明日だけ、私に預けて欲しい」

エレン「明日一日、何でも言う事聞けって事か?」


ミカサ「…明日一日だけでいい、夫婦になって欲しい」

エレン「はぁ?それでいいのか?」

ミカサ「……うん、それでいい。それがいい」

エレン「うーん…まぁ、お前がいいならいいけどさ。ごっこ遊びなんて子供の頃でもやったことねーぞ、俺」

ミカサ「とにかく、約束した。エレンは明日一日は私と夫婦」

エレン「はいはい。んじゃ、おやすみ」

ミカサ「おやすみなさい、エレン」


ミカサ(エレンはその夜、うなされなかった。安らかな寝顔を眺めながら、私もぐっすりと眠ることが出来た)

ミカサ(…朝焼けが見える。早起きし過ぎてしまった…)

ミカサ「…今日こそ、朝食を…」コソコソ トントントン



エレン「ふぁ…悪いミカサ、寝坊した…」

ミカサ「まだ午前中。昨日の私よりも早起きだから、問題ない」

エレン「そんなもんか?…よし、顔洗ってくる」

ミカサ「髭も剃って来るといい」クス

エレン「うるせー!」

ミカサ「…エレン、やっぱり髭はない方がいい。カッコイイ、素敵」

エレン「な、なんだよ、髭のあるなしでそこまで違うか?って…うわ、朝からすげーな」

ミカサ「髭で五歳は老けていたから。シチューは鶏肉、朝でもさっぱりしてるはず。パンはふかふか」

エレン「何だよ、張り切ってるな。何かあったのか?」

ミカサ「…夫婦なら、夫のために毎朝おいしいご飯を作る」

エレン「…あー、そっか、昨日決めたっけ。忘れてた、悪い」

ミカサ「鶏肉のシチュー、母さんがずっと前に作っていたのを見様見真似だけど、美味しいはず。…でも、食べる前に」

エレン「ん?何だ、」


ミカサ(エレンの唇は、ちょっと荒れていた。かさついた感触が残る。でも、とても暖かい)

エレン「な、何だよいきなり…」

ミカサ「…夫婦だから、朝の挨拶」

エレン「うちの父さんと母さんはしてなかったぞ」

ミカサ「う、うちはしていた!」

エレン「…お前、嘘下手すぎ」

ミカサ「…エレンが嫌なら、もうしない…」

エレン「んー、まぁ、今日は一日俺はお前のモンなんだろ?なら、別にいーよ」

ミカサ「…うれしい。でも、少しは照れて欲しい…」ボソ

エレン「ん?ほら、飯食おうぜ。シチュー冷めるぞ」

ミカサ「…うん」ハァ

ミカサ「今日は、薪拾いのついでにピクニックがしたい」

エレン「薪くらい買ってきてやるぞ?」

ミカサ「…訂正する。ピクニックのついでに、薪拾いをする」

エレン「ん?何か違うのか?」

ミカサ「…別にすることは変わらない」

エレン「じゃ、支度しようぜ。あの屋台の肉挟んだ奴、真似して俺が作ってやるよ」

ミカサ「ピクニックのお弁当は、妻の務め。譲れない」

エレン「なら、お前は俺の作って、俺はお前の作ればいいだろ」

ミカサ「!!エレンは天才。素晴らしい、そうしよう」

エレン「…はしゃいでるなぁ、お前」グシャグシャ

ミカサ「…たまには、私だってはしゃぐ時がある」

エレン「結構遠かったなー。子供が薪拾いに来るの、大変になってそうだ」

ミカサ「この街は栄えてきたから、仕方ない。その代わり、薪が安価になってきている」

エレン「…お前、色々詳しいな」

ミカサ「エレンが知らないだけ。…アルミンが変えてくれた、アルミンの広げてくれた世界だから」

エレン「……それなのに、見ないようにしてたんだな、俺」

ミカサ「…きっと、アルミンは呆れてる。エレンらしくないって」

エレン「…そうだな。なぁ、ミカサ」

ミカサ「何?」

エレン「アルミンの墓、俺たちで立ててやろう」

ミカサ「でも…英霊の墓は、兵団の敷地に…」

エレン「個人の墓を立ててやりたいんだ。出来れば、ここみたいな…綺麗な、花が咲いてるところにさ。見晴らしがいい場所がいい。

アイツが変えた、広げた世界を見てもらえるようにさ」

ミカサ「…うん。次の休暇に、二人で場所を探そう」

エレン「…よし、弁当食おうぜ!」

ミカサ(エレンが作ってくれたパンは、調味料の味しかしなかったけど、とても美味しかった。

エレンは私の作ったパンを美味しい美味しいと食べてくれた。

薪をたくさん拾って、手を繋いで帰った。お風呂はまたエレンが沸かしてくれた。

夕飯には、今流行っているというひき肉を焼いた料理を出した。とても喜んでくれた)


エレン「あー、うまかった…。ミカサ、今日はお前が先に入って来いよ」

ミカサ「ううん、今日は一緒に入る」

エレン「はぁ!?流石に嫌だぞ!!」

ミカサ「夫婦だから。夫婦は一緒に入るもの」

エレン「ぜってー嘘だ!!いいから入れよ!!」

ミカサ「逃がさない」ガシッ

エレン「っく!こ、この、離せ馬鹿力…!」ズリズリ

ミカサ「妻の我がままを許容するのも夫の務め」ウキウキ

ミカサ「エレン、痛くない?」ゴシゴシ

エレン「ん、丁度いい。…あー、ちょい右」

ミカサ「ここ?」ゴシゴシ

エレン「ああ、そこそこ。…後でお前の背中も洗ってやる」

ミカサ「わ、私はいい」ゴシゴシ ザパー

エレン「遠慮するなよ、ほら。背中流されるの気持ちいいぞー。ほら、向こう向け」

ミカサ「…う、うん」ドキドキ

エレン「よし。…痛くないか?」ゴシゴシ

ミカサ「平気。…確かに、心地いい」

エレン「…子供の頃、父さんにしてやったなー。なんか懐かしいや」ゴシゴシ

ミカサ「私も、両親の背中を洗った。上手くできると、湯上りに少しだけ果汁を垂らした水をもらえた」

エレン「うちは無報酬だったぞ。よし、俺も子供には何かご褒美やってやらせよう」ゴシゴシ

ミカサ「!?」バッ

エレン「うわっ!!なんだよこっち向くなよ!!見えちゃうだろ!!」

ミカサ「……」チャプン

エレン「…なんだよ、さっきから黙って睨むなよ」チャプン

ミカサ「…エレンは、子供が欲しいの?」

エレン「まぁ…絶対欲しいってわけじゃないけどさ。それに兵団の仕事も忙しいし、いつかは外の世界を探検するから、気安くは家庭作れないし」

ミカサ「…なら、一緒に外を回れるくらい強い女性を妻にしたらいい」ジー

エレン「兵士同士ってことか?まぁ確かにそうかもしれないけど、子供が出来たら結局置いてかないといけなくなるしなぁ」

ミカサ「…エレン、空気を読んでほしい」ムスー

エレン「はぁ?」

ミカサ「先に上がる」ザパー

エレン「だから少しは隠そうとしろよ!!」

ミカサ「………」

エレン「…ランプ消すぞ」フッ

ミカサ「…エレン、そっちで寝てもいい?」

エレン「え?嫌だよ狭いし。やっぱ一人の方が広くていいや」

ミカサ「…家主は私。私に権利がある」スタスタ ゴソゴソ

エレン「ベッドは俺が買ったんだから俺の領地だぞ!」

ミカサ「まだ一日は終わっていない。夫婦は一緒に寝るもの」ヌクヌク

エレン「…はぁ。分かったよ、ったく」グシャグシャ

ミカサ「…寝る前にも、キスは必要」

エレン「……したいならいいぞ」

ミカサ「エレンからして」

エレン「う…お、俺はしたいわけじゃないから、したい方がしろ」

ミカサ「嫌だ。して」クイッ

エレン「……あーっ、くそ!!」グイッ、ガチッ

ミカサ「っ、ん、い、いたい…」

エレン「うるさい!もう寝るぞ!」

ミカサ「…おやすみ、エレン」

ミカサ(背中を向けたエレンの耳が、真っ赤になっていた。嘘をついたからじゃなくて、照れたから。

背中に寄り添って目を閉じた。私の鼓動と並ぶくらいに脈打つエレンの心臓を感じた)


エレン「…ごっこは、今日だけだぞ」

ミカサ「……わかっている。ありがとう、エレン」

エレン「……ったく。色々順番飛ばし過ぎだろお前。…恋人から始めないと駄目だって、アルミンがいつだか、何かの時に言ってた」

ミカサ「っ、え、あ…」

エレン「だから…その。明日から、な」

ミカサ「…うん、うん…!」

エレン「明日からまた遠征の準備だ。早く寝るぞ」

ミカサ「…うん…、おやすみなさい、エレン。…エレンが、大好き」

エレン「……!」グルンッ、グイッ

ミカサ「っ、」

エレン「おやすみ!」

ミカサ(抱き寄せられて、お互い居心地が悪いような、でもずっとこうしていたいような…そんな雰囲気に、胸が躍った。

抱き合っていると眠るのは困難だったけど、睡眠不足なんて吹っ飛ぶほどに幸せだった。

愛しいエレン。十代を超えて、身長も伸びてすっかり逞しくなった胸に頬を寄せながら、暖かな家庭の夢を見ていた)




















エレン「ミカサッ、しっかりしろ!!ミカサァアアアアアアアアアアアア!!!!」



ミカサ(エレンが呼んでいる…?)

兵士1「ふざけるな、こんな、こんなに固まって残っていやがるなんて…!」

兵士2「うわぁああ!うわあああああ!!!」

エレン「逃げ出すな!!戦え!!背中を向けると逆に食われるぞ!!」

ミカサ(エレンが…エレンが私を担いでいる。エレンの背中、あたたかい…)

エレン「おいミカサ、起きてくれ!!頼む、このままじゃ俺達纏めてあの世行きだ!!」

ミカサ(…起きなきゃ……)ググ

エレン「!! ミカサ!!」

兵士3「エレン隊長!!撤退命令です!!」

エレン「よし!!馬がある奴は平地を行け!!残りは森の中央部で本隊と合流だ、交戦は避けろ!!」

ミカサ「え、れん…、もう、平気。自力で行ける…」

エレン「ああ…ミカサ、森に入るぞ。お前が前衛で俺が殿だ、行けるか?」

ミカサ「…当然」チャキ

エレン「…無理はするな。行くぞ!!」

ミカサ(作戦中に気絶なんて…新兵みたいなミスをしてしまった。挽回しないと…)

兵士4「!! ミカサ隊長!!」

巨人1「ウウー」

巨人2「アアー」

ミカサ「問題、ない…っ」ザシュザシュッ

兵士5「すごい…さすがはアルミン作戦の生き残りだ」

兵士6「合流するまで気を抜くな!」

ミカサ(私は、死なない)

ミカサ「前方に5メートル級三体!一体は任せる!」

兵士達「了解!!」

ミカサ(私は、明日を生きる!!)

ミカサ(もうすぐ本隊の待機場所…)

ミカサ「あなたたちは先に!!この距離ならもう近づく奴は本隊が消していると思うけど、油断はしないで!!」

兵士1「た、隊長!?」

ミカサ「エレンは負傷している、補佐に回る!」ダッ

兵士2「そんな…!」

兵士6「隊長の悪い癖が出たな…でも、本隊には兵長がいる。なるべく地上から20メートル以上を保って行くぞ!」

ミカサ(エレン…!)

エレン「! ミカサ、お前また…!」

ミカサ「エレン!後で謝る、でも…」

エレン「ったく…!いい加減隊長外されるって何度…も…」

ミカサ「……ぁ、あ…!!」

大型巨人「ウウアー」


ミカサ(さっき、私が殴られた巨人。15メートル級よりも大きく、醜悪な笑顔を張り付けた…腕がまるで城の塔のような太さの、アンバランスな姿。

顔を横に横断するような奇怪な口を大きく広げ、不気味な足取りで本隊の方へと走っていく)

エレン「!!ミカサ、仕留めるぞ!!」

ミカサ「行かせない…!!」ギリッ

エレン「俺が囮になる、その隙に行け!!」ダッ

ミカサ「エレン、だめ!!」

エレン「実力差を考えろ!!その代わり、一撃で頼むぞ!!」

ミカサ(…絶対に、しくじれない…!!)

エレン「来い、この害虫がぁ…!!」

大型巨人「ウアアアー」


ミカサ(失敗すれば、エレンは確実に捕まる。あの巨人は異様に筋肉の盛り上がった両腕を機敏に動かす。

気配を消して、背後から一撃…まるで、初めてアルミンの作戦で補給基地を奪還した、あの時のようだ。

その緊迫感を思い出す。私は出来る。私は…)


ミカサ「私は、強い!!」ザシュッ

大型巨人「ォアッ オ ァアアアア…」ズゥウウン...

ミカサ「っは、はぁっ、はぁ…!!エレン、エレン!?」

エレン「…ミ、カサ……悪い…」

ミカサ「エレン!エレ…ン…」



ミカサ(エレンが、はんぶんしかない)

ミカサ「エレン、エレン…!!」

エレン「は、はは…アイツ、強いな…ここで仕留められて、良かった…」

ミカサ「エレン、巨人化して!!そうすれば治る、早く、エレン…!」

エレン「…ミカサ、ごめん…」

ミカサ「エレン!!謝るより、早く!!」

エレン「…俺、もう…結構前から、巨人になれなく、なってたんだ…」

ミカサ「嘘…、うそ、いや、そんな、エレン、こんな時に、冗談は…」

エレン「今は、再生能力が、人よりあるくらい、でさ…こんなんなっても、まだ喋ってら…ははは…」

ミカサ(エレンが、弱弱しくなっていく)

エレン「…ミカサ、アルミンの墓、立てる約束…守れなくて…」

ミカサ「そ、んなの、守らなくて、いい…っ!生きて、いや、行かないで…っ」

エレン「…頼む、代わりに…俺の、墓も、隣に……」

ミカサ「エレン、いやだ、いやだ…!!」

エレン「…ミカ、サ」

ミカサ(エレンからのキス。縋り付く私を宥めるように、優しい。でも、血の味が現実しか見せてくれない)

エレン「…愛してる。先に、行ってる…。お前は、生きて…」

ミカサ「いや…いやぁああああああああああ!!!!!」


ミカサ(エレンが、いってしまった。私を置いて。

私の慟哭を聞いたのか、地響きが近付いてくる。四方から、徐々に)


ミカサ「…エレン」


ミカサ(そっと地面に横たえる。蒸発した大型巨人の口から…残りの半分を取り、もう戻らない傷口を合わせて、上着を掛けて隠す。

頬を撫でて、開いたまま光を失った目をじっと見つめる)




ミカサ「いってらっしゃい、エレン」


ミカサ(先に行った彼を見送る。瞼を閉じて、最期のキスをした。刃を装填して、空を睨む)


ミカサ「………ぅあああああああああああああああああああああああああ!!!!!」


ミカサ(力の限りの咆哮を上げて、飛び上がる。

私は、生きる。戦って生きる。エレンとアルミンのお墓を見晴らしのいい場所に建てる。

代わりに外の世界を見て回る。生き延びる)



ミカサ「…生きる!!!!」





おわり

ホントはエレンが鈍すぎてミカサのプロポーズ蹴って「このエレンじゃなかった」って言ってエレンぶっ刺して「いってらっしゃい」にしようと思ったんだけどなんか書いてるうちに変わった
エレミカ(ヤンデレ)とループ説的なのが書きたかった
前にアルミンが主人公で次書くって書いちゃったからどうにか出そうとしたら英雄になった、アルミンごめんなさい次こそちんちんぶらぶらさせてあげるね
っていうかこれもう進撃でやらなくてもよかったよねって思うけどエレミカが好きだから仕方ない

あとレスありがとう
このまま仕事行ってきます

うわコピペミス見つけちゃった恥ずかしい戻ってきちゃった

>>46-47の間が抜けてた、風呂イチャは削れない↓




エレン「………服が破けた」ムスッ

ミカサ「…ごめんなさい」

エレン「もういい、さっさと入ってさっさと上がる」

ミカサ「それはだめ、ちゃんと身体を洗わないと。背中を流そう、前に座って」

エレン「…分かった、ってうわぁああ!少しは隠せよ!!」

ミカサ「…エレンが照れてる」

エレン「何で嬉しそうなんだよ!!」

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