男「もう嫌だ、こんな家…」 (26)
ドンドン! ドンドンドン!
父「おい、男! 出て来い!」
男『...うるせぇなあ! 何だよ親父!』
父「お前! また学校に行かなかったらしいな!」
男『...それが何だっていうんだよ!』
父「何だじゃないだろ! 2年になってから殆ど引き篭もりっぱなしで! パパは泣いちゃったぞ!」
男『るせえ! 俺が引き篭もってるそもそもの原因は親父達だろうが!』
父「俺達だと!? 俺の、パパの何が不満なんだ!? 言ってみろ!」
男『それだよ! 今自分で答えを言っただろうが!』
父「何だ!? どういう事だ!?」
男『どういう事も何も...!』
タン,タン,タン...
??「お父さん、男は...」
父「ああ、大丈夫だよ、何とか呼び掛けには答えてくれている...」
父「このまま正面からぶつかっていけば、きっと応えてくれるさ。...パパ」
パパ「...うん。そうだね、お父さん...」キュッ
男『何で俺の両親はホモなんだよおぉぉぉぉぉ!!!』
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父「何だ? 両親である俺達が男なのが、そんなに嫌なのか?」
パパ「そんな、そんな事言う子になっちゃったなんて…」ヨヨヨ...
男『嫌だよ! 俺が、学校で何て呼ばれてるか知ってるか? 〝ホモ・サラブレッド〟だぞ!? ホモに育てられたってだけで、俺までホモ扱いだよ! おかげで、中学に上がってから2年間、ろくに友達も出来ない上に、いじめられる毎日だ!』
パパ「今のこのご時勢に、未だにそんな事言う子がいるなんて…!」
父「誰だ! そんな事言う奴は! 俺が直接出向いて…!」
男『やーめーろーよー! 絶対根本的な解決にはならないからそんな事しても!』
父「じゃあお前はこのままずっとこうして引き篭もっているのか? それでいいのかお前は!?」
パパ「男…」
シ--ン...
ガチャ
男「...分かってる。このままじゃダメだって」
父「…男」ホッ
パパ「…男、お腹空いたよね? 夕飯を食べて、ちゃんと話し合いましょ」
男「…ああ、分かった」
ーリビング・食後ー
父「…さて。それで、男。いじめられていると言っていたな。具体的には、どんな事をされたんだ?」
男「…学校の中で、ホモ野郎とか、キモいから近寄るなとか、言われた…」
パパ「……」
男「それから、単純に友達が出来ないんだ。だから、相談する相手もいない」
父「先生方は?」
男「自分の生徒の両親がホモで、それが理由で虐められているとか特殊事例過ぎるだろ。流石に先生まで俺を虐めたりはしないし、むしろ周りの奴らを注意してくれてるけど、これ以上は難しいだろ」
パパ「…男。やっぱり、お父さんとパパ、両親が男なのは嫌?」
男「正直かなり嫌だ」
パパ「…っ!」ガ-ン
父「男!」
男「いや、だって嫌かどうか訊かれたからつい…」
父「それにしても、言い方ってものが…!」
パパ「いい、いいのお父さん…」
父「パパ…」
男「その、悪い…。でも、やっばり嫌なものは嫌なんだ」
父「…これが、反抗期ってやつか」
男「いや、反抗期とは違うだろ」
父「…男。そんなに俺達が男同士で愛し合っているのが気に入らないのか?」
男「気に入る気に入らないの問題じゃ…。いや、そういうものなのかな。うん、俺は気に入らない」
パパ「そんな…」
男「…俺、2人には感謝してるんだ」
父「感謝…?」
男「元々孤児院で育てられていた俺を、2人は快く受け入れてくれて、ここまで育ててくれた」
パパ「男…」
男「今まで、本当の息子のように育ててくれて、俺も、2人を本当の親だと思ってる」
父「…」
男「だけど、だけどさっ…!」
ギュウ...!
男「…やっぱり、世間の目は厳しいよ。俺、〝ホモ・サラブレッド〟は嫌だよ…」
父「おと、こ…」
パパ「男、ごめんね、ごめんね…」シクシク
男「俺、小さい頃に訊いたよな。『何でウチはママがいなくて、パパが2人いるの?』、って」
父「…ああ。お前を引き取った直後。3歳位の時だったな」
男「そしたら、親父はなんて言ったか覚えてるか…?」
父「ああ、勿論だ…」
父「…ママがいて、パパが2人いないお家の方がおかしいんだ」
男「最低だよ!」バンッ!
パパ「うっ、うぅ…」シクシク
男「小さい子供に何をおかしな事吹き込んでるんだよ! おかげで、幼稚園の先生に、『みんなのお家はパパが一人しかいないんだってー。おかしいねー』って言って、形容し難い表情されたんだぞ!」
父「だが、俺達の常識では、あくまで俺達が普通。他の家庭がおかしいんだ」
男「そんな持論聞きたくねえよ!」
パパ「男、落ち着いて…」グスッ
男「父さんも父さんだよ!」
パパ「えっ!?」ビクッ
男「昔っから、授業参観の時とか、保護者会の時とか、いつも来てくれた。来てくれたのはいいんだけどさ!」
パパ「う、うん…」
男「他のお母さん方と、普通に『ママさんトーク』するの止めてくれよ!」
パパ「ど、どうして?」
男「他の家はみんなお母さんが来ている中、ウチだけ男親ってだけでも目立つのに、〝ウチも旦那が〟、とか…」ワナワナ...
父「お、おい、男?」
男「男なのに〝旦那が〟とか言うなよおぉぉぉ!」バンッ!
パパ「ひっ!」ビクッ!
男「お陰で、中学に上がる頃には、既に〝あの子とは友達になっちゃいけません指令〟が保護者からクラスメート中に発令されてたんだぞ…!」
男「おかげで、今までろくに友達すら出来てないんだ…」ガクッ...
パパ「ごめんね、ごめんね男…」オロオロ
父「…男。お前が辛い想いをしていたのはよく分かった。今まで、すまなかったな。今後は、表立った行動は控えよう」
男「…いや、分かってくれたならいいんだ。学校での問題は、自分で何とかする。どうしても駄目になったら、親父達にちゃんと相談するよ」
父「…ああ。頑張れよ」
パパ「男、パパ、応援するからね!」
男「ああ、ありがとう。だけど、まだ言っておきたい事がある」
父「何だ? この際だ、思う存分腹を割って話して来い」
パパ「そうだよ、何でも言って。パパ達は、家族なんだから」
男「それじゃあ言うけどさ…。人の部屋を勝手に掃除するな、とかは言わないよ。俺じゃあ中々やらないだろうし、掃除してくれて助かってる。でも、でもさ…」
男「人のエロ本とかAVを、勝手にゲイ物に替えないでくれ…!」
父「何っ!? ゲイ物は嫌なのか!?」
男「当たり前だあぁぁぁぁ!!」
パパ「そ、そうなの男?」
男「逆に何で俺がゲイ物のエロ本やAVが好きだと思ったの!?」
父「そりゃ、俺達の息子だし…」
パパ「そうだよねぇ…」
男「やかましい! 分かるか!? 俺の大好きだったAV、『ドキッ! 女だらけの水上騎馬戦!-ポロリもあるよっ-』が、パッケージはそのままで、『ムキッ! 漢だらけの汗だく騎馬戦!-ボロリもあるぜっ-』に替えられてて、気付かずに観てしまったあの時の恐怖!」
パパ「そんな、ゲイ物が嫌いだなんて…」
父「俺達は、どこで教育を間違えたんだ…」
男「今だよね。今現在進行形で間違えまくってるよね」
男「…あのな。2人が男同士なのはもう仕方無いからいいよ。でも、俺は普通に女の子が好きなの! 男の裸なんか見たってなんとも…」
父「こンの馬っ鹿野郎!」カッ!
男「な、何だよ!」
父「女が好きだあ…? 俺はお前をそんなノンケに育てた覚えはねえぞ!!」ドンッ!
男「頼むからそこは普通にノンケに育てて欲しかった!」
パパ「小さい頃から、『あの男の子かっこいいねえ、カワイイねえ。男の子が一番だねえ』、って育ててたのに…」
男「その幼い頃からの洗脳に、どこか違和感を覚えてノンケに育った自分が今、誇らしくてたまらないんだ! ありがとう自分!」
父「この馬鹿息子が…! よりによって女が好きだと!? 中学に上がったってのに、好きな男の話の一つも聞かねえと思ったら…!」
パパ「お父さん、落ち着いて…!」
父「…男、ちょっと来い。パパはリビングにいてくれ」ガタッ スタスタ
男「な、何だよ…」
父「いいから来い! 俺達の部屋だ」タン,タン,タン...
男「何なんだよ一体…」ガタン スタスタ...
パパ「…お父さん。やるのね、あの禁断の教育を…」フルフル...
パパ「〝Last of Ass〟を……」グスッ
アッ-------------------!!!!!!!!
父「ハァ、ハァ…。男、いいな…」ギシッ...
男「………」ピクピク
父「俺達ホモこそが、正しいんだ。女なんかいらない。目を覚ませよ…」スタスタ...
男「……」
男「………」
男「もう嫌だ、こんな家…」
完
これで、おしまいで御座ります。パッと思い付いたのをパッと書いただけなので、雑文となってしまったで御座ります。
読んでくださった方、レスくださった方、有難う御座いました。
次はもっと普通なSSを考察中ですので、そちらで会えたら喜ばしいで御座ります。
では、これにて御免
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