玲音「風邪を引いてしまったようだ…」 (44)
医者「ただの風邪ですが…、とりあえず安静にしておいてください」
玲音「はい…、わかりました」コホッ…
医者「薬は後ほど届けさせますので、来たら飲んでおいてください」
玲音「はい」
医者「後…、宜しければサインを…」ボソボソ
玲音「え?」
医者「いえ、なんでもないです…、お大事に」
玲音「お忙しい中わざわざどうもありがとうございました」
バタン
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玲音「…はぁ、このアタシが風邪なんか引くなんて…」
玲音「体調管理はしていたはずなのに、何がいけなかったんだろう…ゴフッ!」
玲音「新曲に張り切りすぎたせいなのかな?」
玲音「とりあえず暖房をつけておいて…、布団と毛布をたくさんかけよう」ピッ
ゴオオオオオオオオオオ!
玲音「さてと、今は寝ようかな…早く直さないと」
玲音「………………」
ピシッ!
玲音「くっ…! ううっ、骨が…痛い!」
玲音「熱を出すとこんなに骨が痛くなるなんて…」
玲音「これじゃあまともに眠ることができないじゃないか!」
玲音「くそっ! こんな…ウッ!」
玲音「ゴホッ、ガハッ! コホコホ…ゴフッ!!」
玲音「ううっ…、辛い…」
玲音「そういえば今体温いくつだったかな…?」
玲音「さっき調べた時より下がってれば良いけど…」ピッ
玲音「はぁ…、それにしてもとても退屈だ…」
玲音「テレビでも見ようかな…ゴホッ」
ピッ
『髪切った?』『あ、わかりました?』
ピッ
『今日のわんこは千葉県に住むポメラニアン…』
ピッ
『皆の魂を犠牲にして生まれた魔物など…生かしておくかァァァァ!』
玲音「時間が時間のせいでいい番組がない…」
ピピピピピ
玲音「計り終わったようだね」
玲音「えっと、あんまり下がってない…38度7分か…」
玲音「…ううっ、なんかまた頭が痛くなってきた…」
玲音「でも寝たいのに骨が痛くて眠れない…」ハァ…ハァ…
玲音「体も汗のせいでびしょ濡れだ…、パジャマが濡れて気持ち悪い…」ハァ…ハァ…
玲音「なんで風邪ってこんなに苦しいんだ…、拘束されているような気分だ」ハァ…ハァ…
玲音「こんなに苦しいなんて…誰でも良いから助けて欲しいよ…」ハァ…
「いいか、孤独こそが人を強くするんだ」
「絆など下らんものに頼るな!」
玲音「おやおや…、高熱のせいなのか変な記憶がフラッシュバックしちゃったよ」ハァ…ハァ…
玲音「すぐにやめたけど、彼どうしているかな…」ハァ…
玲音「しかし孤独って返って人を不安にさせるものだね…」
玲音「このままじゃどうにかなりそうだ…」
玲音「今にも死んでしまいそうだよ…」
玲音「そうだ! 暇つぶしに彼でも呼んでこの孤独から抜け出そう…」ポパピプペ
玲音「ついでに看病もしてもらおうか」プルルルルルル
『ただいま、留守にしております』
『ご用件がある方は…ピーとという効果音を鳴らしますので、お名前とご用件をお願いします』
玲音「…ちぇっ」
玲音「もしもし、アタシ玲音」
玲音「実は風邪引いちゃってさ、これを聞いたら見舞いに来て欲しいんだ」
玲音「フロントで『玲音から頼まれた者です』と言ってくれたらホテルのルームキーをくれるように伝えるから」
玲音「それじゃあよろしくね、あとメロン持ってきて」ピッ
玲音「これでよし、彼がいたらある程度暇を潰せるからね」
玲音「さて、フロントに電話して伝えておこう」
玲音「…というわけでお願いします」
『かしこまりました、それではお大事に』
玲音「ありがとうございます、それじゃ」ピッ
玲音「…さて、それまで何をしてればいいんだろうね」
玲音「ゴホッ! ゴホッ、ゲフッ! もうやだ…、真面目に辛すぎる…」
玲音「ああもう! 何が全身の骨が痛いだよ! 何が頭痛がするだよ!」
玲音「もう自棄だ! 意地でも眠る!」バサッ!
玲音「……………」
玲音「……………」
玲音「………ケホッ」
玲音「つい熱くなってしまった…アタシらしくない…」
玲音「辛いよ…、痛いよ…、寂しいよォ……」グスン
玲音「うっ…!」
玲音「ううっ…あっ………っ!」ウップ!
玲音「うっ…んん!」ウウッ…
玲音「んぐぅ!」ゴクン!
玲音「ハァハァ…もう…このままじゃ…」オエッ
玲音「もう嫌だ…疲れた…」ハァハァ
玲音「痛みもひどくなってくるし…、頭ボーッとするし…」ハァハァ
玲音「アタシ…、このまま死ぬのかな…ハハッ」ハァハァ
玲音「せめてメロンの一口は食べたかったよ…」ハァハァ
玲音「生まれ変わったら、またアイドルをやってみたいな…」ハァ…ハァ…
玲音「みんな…、さようなら…」ハァ……ハァ……
玲音「最後に…みんなに会えなかったアタシを許して…欲し……い…………」ハァ………
玲音「」ガクッ
ガチャガチャ
ピーッ!
ガチャッ
冬馬「お~い、来てやったぜ、時期外れだがメロンもあるぞ 大丈夫か?」
玲音「」
冬馬「…えっ? うそ…だろ…」
冬馬「おい、しっかりしろ! 大丈夫か! おい!」ダッ!
玲音「ZZz………」
冬馬「…なんだ、寝ていただけなのか…驚かせやがって…」
冬馬「それにしても辛そうな顔してるな…、このまま寝かせようかな…」
冬馬「あ、そうだ せっかくだからこれを………」
ゴオオオオオオオオオオ!!!
玲音(ううっ……熱い…、ここが灼熱地獄というところか…)
玲音(こんな熱いところがあるなんて…、このままじゃ焼き玲音になってしまうよ…)
ピトッ
玲音(ん? なんだか冷たいな…、こんなに燃え盛る炎で炙られているのにどうして?)
玲音(でもこの冷たさ、落ち着くな…痛みが和らいできたよ…)
玲音(もう少しこのままでいたい…)ニコッ
玲音「フフッ」
冬馬「悪夢は見終わったようだな、冷えピタ持ってきてよかった」
冬馬「しかし布団が変なことになってるな…、寝ている途中でグチャグチャになったのか?」
冬馬「ちゃんと首までかけないとダメじゃねぇか、悪化するだけだぜ」ファサッ…
冬馬「これでよしっと…、さて、これ冷めちまったから暖めねぇとな…」
玲音「…ん……んん?」パチッ
冬馬「よお、起きたか」
玲音「やっと、来てくれたんだね」
玲音「ずっと待ってたよ、待ち焦がれていた」
冬馬「すまなかったな…、用事があって携帯の電源を切っていたんだ」
冬馬「ほら、詫びと見舞いのメロンだぜ」
玲音「ありがとう、正直もう苦しくて辛くて嫌だったんだ」
玲音「でもこれで楽しみができたよ!」
冬馬「そうか、だが楽しむ前にこれを飲め」
玲音「これは?」
冬馬「俺がさっき作っておいた生姜湯だ」
冬馬「これを飲んで安静にしたら風邪なんて吹き飛ぶぜ」
玲音「…おいしいの?」
冬馬「いや、辛い」
玲音「………」
冬馬「そんな嫌な顔するなよ…」
冬馬「それじゃあ黒糖と蜂蜜入れるから…、これでいいか?」
玲音「まあそれならなんとか…」
玲音「……いくよ」
冬馬「ああ」
玲音「…んぐ!」グヒッ!
ゴク…ゴク…
玲音「ん…んぐぐ…」ガクガク
冬馬「我慢して全部飲むんだ! 治らないぞ!」
玲音「んん…んぐっ!」ゴックン!
冬馬「よし、辛かっただろうに頑張ったな!」
玲音「うっ…ううっ…う…」ウップ…
冬馬「…ど、どうした? 顔が信号のように赤から青に変わったぞ…」
ギュッ
冬馬「…え、な…なんだよ…」
玲音「うっ…うっぷ!」ウグッ!
冬馬「ま、まさか…」
冬馬「待て! 今ここでやるな! つーか放せ!」
玲音「オェ…」
ギャアアアアアアアアアアアアアアア!!!
玲音「ごめん…」
冬馬(バスローブ)「…せっかく着替えなおしたというのに…」
冬馬「また反吐まみれかよ…、ハハハ……」
冬馬「ハハッ…ハハハハハ…ァハ……ハァ…」
玲音「本当にゴメン、後でもう一度飲み直すから」
冬馬「頼むぜ…、次は飲む時シンクで飲めよな」
玲音「わかったよ」
冬馬「それじゃあメロン切ってくる」
冬馬「ほら、メロンだぜ 時期外れだから味は保障しないが…」
玲音「ありがとう、好物なんだ…、これでメロンソーダもあれば…」
冬馬「だめだ、飲んだら逆に悪化するぜ」
冬馬「風邪の時は胃に優しいものをとらねぇとただでさえ壊れかけの体がもっと壊れるぞ」
玲音「君はお母さんみたいだね…」
冬馬「よく言われてるよ、親父と一緒に暮らしていたときは家事も洗濯も料理も俺がやっていたからな」
冬馬「オカン属性が自然に身についたのも当然かもな」
冬馬「ほら、早めに食っちまおうぜ」
玲音「それじゃあいただくよ」
パクッ
玲音「………」モグモグ
冬馬「どうだ?」
玲音「…なんか、スイカの皮みたいな味がする…」
玲音「あんまりおいしくない…」
冬馬「そうか?」パクッ
冬馬「…う~ん、普通のメロンの味だが…」モグモグ
冬馬「風邪のせいで味覚が変になったのか?」
玲音「ほんと、風邪って嫌なことばっかりだね」
玲音「ごちそうさま…」
冬馬「元気出せって! 治ったらたらふくメロンを食えばいいじゃねぇか!」
玲音「…それもそうだね…コホッ」
玲音「ごめん、少しネガティブになってたよ、アタシらしくないね…」
玲音「早く治してたくさんメロンを食べようか」
冬馬「そうしようぜ」
玲音「ところで頼みがあるんだ」
冬馬「何だ?」
玲音「実は熱がでてそれ以降、パジャマを着替えてないんだ」
冬馬「ああ」
玲音「だけど熱と汗のせいでパジャマが濡れてしまってね」
冬馬「そういえばぐっしょり濡れてたな」
玲音「だからアタシのために代えのパジャマを持ってきて欲しいんだ?」
冬馬「ああ、いいぜ」
玲音「あと、体全体も汗で濡れているから…」
玲音「拭いてくれないかな? ちょっと動く体力がなくて…」
冬馬「ああ、いいぜ」
玲音「ヴェッ!?」
冬馬「どうかしたか? そんなびっくりした顔して…」
玲音「いや、今あたしが言ったことになんの疑問を持たないのかい?」
冬馬「ああ…、さっきもやったから別に…」
玲音「さっき!?」
冬馬「ここに来る前に同じことをしていたんだ、場所が場所だったから携帯の電源を切ってたんだがな」
冬馬「だがその話はまた後でするよ、えーと、ローブとタオルはたしか…」
玲音「待って! やっぱなしだ、拭かなくていい!」
冬馬「え?」
玲音「まだアタシ体力残っているから、ローブを持ってきてくれるだけでいいよ…」
冬馬「あ、ああ…わかった、今もって来るから待ってろ」
玲音「よろしく」
バタン
玲音「…驚いた、からかおうと思って言ったのに…」フゥ…
玲音「彼は一体何をしていたんだろう…、同じことって女性の体を拭いたってことなのか?」
玲音「だとしたら彼は変態ということになる…」
玲音「…謎だ」
冬馬「はい、ローブとタオル」
玲音「ありがとう」
冬馬「それじゃあ俺は別の部屋で時間潰すから」
冬馬「拭き終わったらよんでくれ」
玲音「わかったよ」
冬馬「しかし毎日スイートルームに泊まれるなんて羨ましいぜ」
冬馬「それじゃあ後でな」バタン
玲音「………」
玲音「バカヤロー………」ヌギヌギ
玲音(彼はもっと女性に初心だったはずだけど…どうなってるんだろう)フキフキ
玲音(まあ後で聞けばいい話だね)フキフキ
玲音(しかし凄い汗だ、タオルがもうびしょ濡れだ…)フキフキ
玲音(二枚もって来てくれたからこっちも使って…)
フキフキフキフキフキフキフキフキフキフキフキフキフキフキ
玲音(これでよしっと…後はローブを着て…)
玲音「もういいよ」
ガチャ
冬馬「お疲れさん」
―――――――――
――――――
―――
―
冬馬「ほらできたぞ、おかゆだぜ」
玲音「ありがとう、アタシのために」
冬馬「仲間だから当然だぜ」
玲音「ところでさっき言ってたことなんだけど…」
冬馬「…ああ、話せば長くなるが、お見舞いしに行ってたんだ」
玲音「お見舞い?」
冬馬「そう、身寄りがなく施設に預けられていて、病気で入院していた俺の大ファンがいてな」
冬馬「院長は少しでも元気になるようにその子のために俺をよんだんだ」
冬馬「初めは一緒に話したりした程度なんだが、いつしか世話する羽目になっちまったんだ」
玲音「それじゃあここに来る前はその子のお見舞いに?」
冬馬「そういうことだ、なんかこことほぼ同じ状況だったからちょっとびっくりしたぜ」
冬馬「偶然にしても面白いよな、ハハッ!」
玲音「全く…、昔から変わらないね、そういうお人好しのところは…」
冬馬「ところでなんか元気になってないか?」
玲音「そういえば…、痛みとかあまり感じなくなったよ」
冬馬「ちょっと熱を計るか」
玲音「うん」
ピンポーン
冬馬「なんだ?」
玲音「薬が届いたようだね、代わりに出てほしいんだけど」
冬馬「ああ、わかった」
冬馬「薬貰ったぜ」
玲音「熱も計り終ったよ、37度まで下がったんだ」
冬馬「おお、よかったじゃねぇか」
冬馬「俺の必死の看病のおかげだな!」
玲音「本当に礼を言うよ、ありがとう!」ニコッ
冬馬「いい笑顔だ、見れてよかったぜ」
冬馬「その調子で早く治せよな、俺のためにも、あのこのためにもな!」
玲音「ああ!」
玲音「後のことはもう一人でできるよ」
冬馬「本当に大丈夫か?」
玲音「うん、だから安心してほしい」
玲音「治ったら君が言ってた子にアタシの新曲を聞かせてあげるよ」
冬馬「新曲か…おれも聞いてみたいぜ」
玲音「なら一緒に聞かせるよ、見て聞いて、そして驚いて楽しんでくれ!」
冬馬「それじゃあ期待させてもらうぜ、進化した貴女の歌をな」
玲音「ああ、君も新曲を用意するんだよ」
冬馬「…できるかぎりのことはする」
冬馬「それじゃあな」
玲音「また会おう」
冬馬「ああ」
バタン
玲音「…ふふっ、結構可愛いところも変わらないね」
玲音「変わって言ったのはアタシの方か」
玲音「…さて、おかゆ食べて寝よう」
冬馬「ふぅ…、今日は二倍疲れたな…ウッ!」
冬馬「ゴホッ! ゴフゴフッ…ガハッ!」
冬馬「ウウッ…のどが痛ぇ…、帰って休もうかな…」
冬馬「それじゃあな」
玲音「また会おう」
冬馬「ああ」
バタン
玲音「…ふふっ、結構可愛いところも変わらないね」
玲音「変わっていったのはアタシの方か」
玲音「…さて、おかゆ食べて寝よう」
冬馬「ふぅ…、今日は二倍疲れたな…ウッ!」
冬馬「ゴホッ! ゴフゴフッ…ガハッ!」ガクッ
冬馬「ウウッ…のどが痛ぇ…、帰って休もうかな…」
翌日
北斗「39度5分…、こんな高熱初めてみた」
冬馬「ウォゴァハッ…アッ…アガ…グゥファァァ…」ゼェハァ…
翔太「全く、風邪引くなんて体調管理なってないよ、ほら、冷たいタオルだよ」ピトッ
冬馬「ウアアア…アグ…ゴフォッ…!」ゼェハァ…
北斗「冬馬、リンゴだ…、食えるか?」
冬馬「ウウウ…クッ……アアッ…アアアアアア…」ポロポロ
翔太「早く治って一緒に踊ろうね」
冬馬「ウウウウウウウウウ…」シクシク
玲音「う、う~ん…、熱も下がったようだね」
玲音「体も痛くない!」
玲音「これならもう大丈夫かな」
玲音「さて、さっそく新曲の調整をしよう」
玲音「この曲でどれくらい前のような調子に戻れるかわからないけど…」
玲音「やるだけやってみよう、そしてトップギアの玲音に戻るために頑張ろう!」
終わり
風邪引いてるときに書くと頭痛いね
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