商人「え?僕が勇者ですか?」国王「うむ」(14)

ちょっと息抜き。

商人「いや、確かに僕の父は勇者でしたけど」

商人「僕は今、商人として頑張っているんですけど…」

国王「お前も、魔王の復活の噂は聞いたことがあるだろう」

商人「はい」

国王「各地で、再び冒険者たちが動き始めている」

国王「お前の父のおかげでこの20年平和だったが」

国王「この国も、誰も送らぬ、という訳にはいかないのだ」

国王「この国には、屈強な猛者はいない」

国王「勇者の息子であるお前にしか頼めぬのだ」

商人「形だけでも示さないといけないってことですね?」

国王「できる限りの支援はしよう」

国王「遠くの国から、冒険者として腕の立つ者を呼び寄せた」

国王「酒場で仲間にしていくといい」

商人「…分かりました」

商人「僕も、この国が好きですから」

国王「…すまない」

商人「それでは、行ってまいります」

国王「城の宝箱を開けていくといい」

国王「少ないが、旅の資金にしてくれ」

商人「はい、ありがとうごさいます」

~商人の家~

商人「ただいまー」

女商人「おかえりなさい」

女商人「王様の用事ってなんだったの?」

商人「うん」

商人「勇者として旅に出ろってさ」

女商人「ええっ!?」

女商人「ど、どうするの?」

商人「…行かないといけないみたいだ」

女商人「そんな…」

商人「あのさ」

商人「最近、この辺りの商売も衰退気味だろ?」

商人「魔王復活の噂のせいで、遠くの交易品も入らないしさ」

女商人「うん、仕方ないんだけどね」

商人「だからさ、ちょうどいいし、行商と思って一緒に行かない?」

女商人「連れて行ってくれるの?」

商人「もちろん!自分の奥さんと離れ離れなんて、僕が耐えられないよ」

商人「危ないかもしれないけど、ついて来てくれないか?」

女商人「もちろんついて行く!」

女商人「良かったぁ、置いて行かれるのかと思っちゃった…」

商人「まだ子供もいないから、ここを引き払うだけだし」

商人「残りの荷物は、売っていけばいいでしょ」

女商人「二人旅?」

商人「いや、仲間候補の人が酒場に居るって」

女商人「そっか、それなら早めに準備しないとね」

女商人「仕入れ前で助かったわ」

商人「家も殆ど物が無いからねぇ」

商人「じゃ、準備しようか」

女商人「うんっ!」

~酒場~

商人「ここにいるのかな」

女商人「やっぱり、少し荷物多いね」

商人「ふふ、いつもの行商と変わらないくらいだよ」

女戦士「お、あんたが勇者さん…か?」

女戦士「商人みたいな見た目だけど」

商人「商人みたい、じゃなくて商人だよ」

女商人「妻の女商人です!」

商人「諸事情あって、僕が勇者として旅に出ることになったんだ」

女戦士「おいおい、大丈夫かよ…」

商人「報酬は払えると思いますよ」

女戦士「いや、それは別にいいんだけどさ」

僧侶「なんだ、騒々しい」

商人「あ、貴方も冒険者の方ですか?」

僧侶「ああ」

僧侶「どうやら、貧乏くじを引いたようだがな」

女商人「むっ、うちの人を馬鹿にしないで下さい!」

商人「いやいや、いいんだよ女ちゃん」

僧侶「…全く」

女戦士「メンバーは揃ったみたいだけど」

商人「早速行きましょう、善は急げっていいますから」

女戦士「これから死ぬかもしれない旅に出るのに、元気だな」

商人「だって、今から沈んでもしょうがないでしょう?」

僧侶「…肝は座っているらしいな」

~道中~

モンスター「ぴきゅい!」

商人「あ、モンスターだ」

女戦士「早速戦闘だな」

商人「はい、よいしょっと」ジャラッ

女戦士「…おい、それは何だよ」

商人「え?算盤ですよ?」

女戦士「どこの世界に算盤を棒にくっつけて戦う勇者がいるんだよ!」

商人「大丈夫ですよ、強化してありますし」

商人「女戦士さんの武器にもしましょうか?」

女戦士「出来るのか?」

商人「はい、ちょっと待ってて下さい」ホワアアァ

ぴっかぁ!

女戦士「お、おい!それ魔法だろ?」

商人「え?あ、はい」

女戦士「なんで商人なのに使えるんだ?」

商人「一応勇者の息子ですから」

商人「手解きを受けたことがあります」

僧侶「…不思議な商人だ」

女商人「ふふん!凄いでしょう!」

僧侶「…なぜ貴女が自慢気なんだ」

モンスター「ぴきゅきっきゅ!」テッテッテッ

女戦士「くるぞ!」

商人「ていっ」ベシッ

モンスター「きゅっきゅう」ダダッ

女戦士「てりゃっ!」ゲシッ

モンスター「きゅうっ」

モンスターは逃げ出した

商人「ははっ、逃げられちゃいましたね」

女戦士「追いかけないのか?」

商人「わざわざ倒すこともないですよ」

商人「この辺りのモンスターは、比較的穏やかな子が多いですし」

~街~

僧侶「…結局、一体も倒さなかったな」

女戦士「おい勇者、やる気あるのか?」

商人「僕は商人ですって」

商人「それに、現れたのは珍しい人間が通ったからって興味を持ったやつばかりでしょ?」

商人「悪いことをして居ないのに殺すのは、酷いと思います」

女商人「さ、そんなことより、早く宿をとりましょう?」

女戦士「そんな甘ちゃんで大丈夫かよ…」

僧侶「…」

女戦士「なあ、あんたもそう思うだろ?」

僧侶「…少し、飲みにいってくる」

女戦士「あ、おい!」

商人「…女ちゃん、僕も行って来るね」

女商人「うん、頑張って」

商人「ありがとう」

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