死神「…只今50%off、充実のアフターサービス付き」

男「…………」

死神「…ダメですか？」

男「…………」

死神「…ポイントカードもお作りしますよ？」

男「…………」

死神「…むぅ」

死神「…偉い人は言いました、会話は言葉のキャスティングボートだと」

男「…………」

死神「…突っ込んでくださいよ」

男「…………」

死神「…ほら、キャッチボールだとか、お前バカだなとか」

男「…………」

死神「…もう二時間も説明してるんですよ？」

男「…………」

死神「…何か言ってくださいよ」

男「…………」

死神「…泣いちゃいますよ？」

死神「…せめて反応ぐらいして下さいよぉ」ｸﾞｽｯ

男「…………」

死神「…」ﾋｯｸﾋｯｸ

男「…………」ｽｯ

死神「…あ、ハンカチありがとうございます」

男「…………」

死神「」ｽﾞﾋﾞｯ…

男「…………」

死神「…洗ってお返ししますね」ｴﾍﾍ

男「…………」

死神「…………」

男「…………」

死神「…………」

男「…………」

死神「…………」

男「…………」

死神「…………」

男「…………」

死神「…無口な方ですね」

男「…………」

死神「もういいです。私もノルマ有りますので」ｽｯ

ｻﾞｸﾘ…
…ｸﾞｼｬｸﾞｼｬ…

死神「…うわ、ミンチよりひどい」

男「…？」

死神「…あ、死んだんです」ｸﾞﾁｬｸﾞﾁｬ

男「…え？」

死神「…ちょっと待ってて下さい、偽装工作してますので」ｸﾞｼｬﾘ

男「ぎ、偽装工作？」

死神「…本来押し売りを禁止されてますが、ノルマ優先です」

男「せ、世知辛いですね？」

死神「…これも仕事ですし…」ｸﾞｼｬｸﾞｼｬ


死神「？ 喋れるんですか？」

男「…あ、はい。一応」

死神「…最初から言ってくださいよ。私、緊急対応が必要な方かと」

男「緊急対応？」

死神「…ほら、生まれつき喋れない人とか、言葉の通じない人とか」

男「あー、なるほど」

死神「…どうして無視したんです？」ｼﾞﾄｰ

男「あはは、申し訳ない。必死で説明する姿が可愛くて、つい…」

死神「…勘弁して下さい。年末年始は急がしんです」

ｶﾞﾁｬｯ

火車「ども�・！遺体引き取りに来ました�・！」

男「うおっ！」

死神「…いつもご苦労様です」ﾍﾟｺﾘ

火車「いえいえ！」

…ｶﾁｬｶﾁｬ…

男「…………」

死神「…どうかしましたか？」

男「…ええと、誰？」

死神「？ …特殊清掃業の火車さんですよ？」

火車「あはは、自分等マイナーっすから！」

男「火車…火車…」ｶﾁｶﾁ

死神「…ああ、罪人をあの世に運ぶ妖怪さんです」

火車「まいど！最近は清掃業界にも進出してるっす！」

死神「…脱衣婆さん、引退しましたし」

火車「あの婆さんも歳っすから！今は楽隠居っす！」ｶﾗｶﾗ

死神「…渡し守さんはお元気ですか？」

火車「そっちも代替わりっす！この間息子さんが帰ってきたんで！」

死神「…そうでしたか」

男「あの？」

火車「すんません、すぐ片しますんで！」ｶﾁｬｶﾁｬ

男「…………」

死神「…あ、出来るだけ自殺風にお願いします。今回は緊急対応だったので」

火車「はいはい、平気っす。ただ遺体の損壊が激しんで少々お時間を頂くっすよ？」

死神「…ええ、どうぞ」

男「…………」

死神「…さて、こちらもお仕事に取り掛かりますね」

男「…………」

死神「…では改めまして、男さんですね？」

男「…はい、男です」

死神「…32歳、無職、家族友人恋人無し。ご経歴にお間違いはありませんか？」

男「あ、素人童貞です」

死神「？ …お聞きしていませんよ？」

男「…………」

死神「…ええと、御宗教は仏教とありますが新旧どちらでしょう？」

男「え、新旧？」ｴｰﾄ ?

死神「…明治期以前の神道と合わさった仏教か、純粋な仏教かの違いです」

男「…多分ちゃんぽんではないかと…」

死神「…一人クリスマスとかもやってましたしね」ｶｷｶｷ

男「…………」

死神「…あ、ポイントカードはどうされますか？」

男「？」

死神「…ええと、転生ポイントが一定数貯まりますと、様々な特典が付きます」ﾋｮｲｯ

男「…白装束引き換えサービス、転生先優先券…」

死神「…人間死百回で『輪廻転生からの離脱』です」

男「…………」

死神「…男さんはバクテリア続きでしたから、今回ご新規さんですね」ｴﾍﾍ

男「…人間死って？」

死神「？ …人間状態での死亡回数ですよ？結構レアです」

男「…あっけらかんと言うない」ｶﾞｯｸｼ

死神「？」

男「あの、アフターサービスってのは？ 」

死神「…百々のつまり、就職案内です」

男「？ あの世でも働く必要があるのか？」

死神「…ええと、ほら日本人の方って『働くのが生き甲斐』って人が多いので」

男「具体的には？」

死神「…私みたいな死神職や、管理職などが…」

火車「俺らは家業なんで、あまり募集してないっすが」

死神「…一部例外もありますが、基本的には誰でもウェルカムな職場です」

男「給料は？」

死神「…『合法的に現世に留まれること』です」

男「…………」

死神「…さて、以上で私の死人案内は終わりです。何かご質問はありますか？」

男「否、特に無いな。丁寧にありがとう」

死神「…どう致しまして」ﾍﾟｺﾘ

火車「ういっす！こっちも終わりっす！」

死神「…では火車さん、黄泉路案内を宜しくお願いします」

火車「任されたっす！ついてくるっす！」

男「ああ、お手柔らかに」

ﾄﾞﾀﾄﾞﾀ…
…ﾊﾞﾀﾊﾞﾀ…


死神「…あ、ハンカチどうしましょう」

―ヨモツヒラサカ近辺―


ﾌﾞﾛﾛﾛﾛ…………

男 「…普通に自動車なんすね」

火車「そっす！この世界も時代に合わせて進歩してるっす！」

男 「あ、シャッター街」

火車「ヨモツシコメの茶店とかっす！盆の時期には行列が出来るっす！」

男 「期間限定なら海の家みたいな具合で？」

火車「そんな感じっす！」

男「…………」

火車「しかし男さんも人が悪いっす！まさか死神に殺される為にわざと黙りっすか！」

男「以前、自殺が地獄行きだと柄の悪い天使に諭されまして」ﾊｧ…

火車「宗教ちゃんぽんも案外面倒っすね！」

男「……」ｺｸﾘ

火車「んで、行き先決まったすか？そろそろ分かれ道なんす」

男「…ん、悩んどります」

火車「時間は無限なんすが次の仕事が詰まってるっす！」

男「急かすない」

火車「イラチな性格っすから！」

男「お薦めとかあるか？」

火車「無いっす！勘で決めるっす！」

男「…………」