エヴァ漫画版(貞本エヴァ)単行本vol.9 stage62 「distance」からの分岐再構成
基本漫画版準拠ですがその他の要素も都合よく挟まります
細部は漫画版参照
初出は某総合スレ
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1416844213
==== ネルフ本部 シャワールーム ====
ザーーー…
カヲル「――好きじゃない?」
シンジ「……ああ。悪いけど僕は君のこと、好きになれそうにないよ」
カヲル「……」
シンジ「ここ、使っていいよ。僕はもうあがるから」
ギー…バタン
カヲル「……」
ザーーー…
==== 更衣室 ====
シンジ(まったく…なに考えてるんだ、あいつ)ゴソゴソ
==== 通路 ====
シンジ(出会ってから振り回されっぱなしで、すごく疲れる……)トボトボ
シンジ(あっ……)
レイ「……」スタスタ…
シンジ「綾波!」
レイ「……碇くん?」
==== エスカレーター ====
グーーーーーーーン……
シンジ「――綾波は、家に帰るの?」
レイ「ええ」
シンジ「……」チラ
レイ「……」
《シンジ回想》
レイ『もう一度、触れてもいい?……碇くんの、手……』
シンジ『……いいよ』
レイ『……』
シンジ『……』
……ニギッ……
------
----
--
シンジ「……」
シンジ(僕と綾波の距離は……出会った頃に比べたら確実に縮まっている……けど)
レイ「……」
シンジ(この距離感はこの先、これ以上縮まることがあるのかな……)
「碇くんは――」
シンジ「えっ……」
レイ「……」ジー…
シンジ「な……なに?」
レイ「碇くんは、また惣流さんのところに寄るの?」
シンジ「……うん……一応ね。僕が行っても何もならないのは分かってるけど」
レイ「……そう……」
シンジ「なんか……綾波と話すの、久しぶりな気がするな」
レイ「そう?」
シンジ「……」
レイ「そうね。彼女があんなことになって、私たちだけ平和に仲良くおしゃべりなんて、出来る感じじゃないわね」
シンジ(……え?)
レイ「……」
シンジ「……それは……そうだけど……」
レイ「……」
シンジ(な、何だよ……そんな言い方しなくたって……)
:
:
==== アスカの病室 ====
ピッ……ピッ……ピッ……
シンジ「――それでさ、トウジ、あさって退院だって。まだ当分車いすだけど――」
アスカ「……」
シンジ「義足の訓練、思ったより早く始められそうだって。委員長も喜んでた」
アスカ「……」
ピッ……ピッ……ピッ……
シンジ(僕は……なんでこんなことやってんだろ)
シンジ(こんなことしたって、何にもならないのに……)
==== 病室の外 戸口の壁際 ====
シンジ『そうだ、きょう、渚くんのシンクロテストがあったんだけど――』
レイ「……」
レイ(また、来てしまった……)
レイ(私はなぜ、ここにいるの? ……何のために? 誰のために?)
レイ(こんなことをしても、何にもならないのに……)
==== アスカの病室 ====
ピッ……ピッ……ピッ……
シンジ「渚くんは、弐号機だったんだけど……」
アスカ「……」ピクッ
シンジ(……あれ?)
アスカ「……」
シンジ(?……気のせいかな……)
シンジ「……何考えてるかわかんない奴でさ。振り回されっぱなしですごく疲れるんだ」
アスカ「……」
シンジ「なんか最近、みんな様子がちょっとずつ変っていうか……」
アスカ「……」
シンジ「そう、変って言えば、綾波もちょっと変だし」
==== 病室の外 ====
レイ(……え?)
支援
漫画版だとトウジ死んでなかったか?間違ってたらごめん。
==== アスカの病室 ====
シンジ「きょうもここへ寄るって言ったらさ、私たちだけおしゃべりしてる場合じゃないわね、なんて言われて――」
アスカ「……」
==== 病室の外 ====
レイ「……」
==== アスカの病室 ====
シンジ「久しぶりに話せたと思ったのに……何でそんなこと言うんだろ……」
アスカ「……」ピクッ
シンジ(……あれ?)
シンジ(いま、動いたような――)オソルオソル
アスカ「……ぁ……」
シンジ「!」
アスカ「……ぁ……ぁ……」
シンジ「あの……アス……カ?」
アスカ「あああああああああああああああああああああああ!!」
シンジ「えっ!?」ビクッ
==== 病室の外 ====
レイ(……なに!?)
==== アスカの病室 ====
アスカ「あああああああああああああああああああああああ!!」ガバッ
シンジ「うわっ!!」
アスカ「あああああああああああああああああああああああ!!」ガシッ
シンジ「くっ!」
アスカ「あああああああああああああああああああああああ!!」ギリギリギリ
シンジ「アス…カ……襟……くるし……」
バンッ
レイ「碇くん!!」ダッ
シンジ「あ……綾波!?」
アスカ「あああああああああああああああああああああああ!!」ギリギリギリ
レイ「セカンド!……手を――」ガシッ
アスカ「あああああああああああああああああああああああ!!」ギリギリギリ
レイ「だめ……ナースコールを――」
シンジ「うっ……うう!」
アスカ「あああああああああああああああああああああああんた、バカァ!?」
シンジ、レイ「えっ!?」
:
:
==== アスカの病室 ====
アスカ「……」ハァ…ハァ…
シンジ「綾波、そっちもって」
レイ「ええ」
シンジ「よっこいしょ……っと」ドサッ
アスカ「……」ハァ…ハァ…
シンジ「だ……大丈夫? アスカ」
アスカ「やっと……声……出せた……」ハァ…ハァ…
シンジ「え?」
アスカ「まったく……病み上がりに無茶させるんじゃないわよ」ハァ…ハァ…
レイ「……」
シンジ「病み上がりって……病んでる真っ最中じゃないか」
アスカ「……」ジロッ
シンジ「な……なに?」
アスカ「だいたいアンタのせいよ」ハァ…ハァ…
シンジ「えっ?」
アスカ「ファーストの様子が変?」
シンジ「ちょ、ちょっと!」チラ
レイ「……」
アスカ「あんた……あんたがここへ寄るたびに、なんでファーストが部屋の外であんたの様子をうかがってんのか、考えたことあるの?」
シンジ「……え?」
レイ「!」
シンジ「あ……綾波……そっ……そうなの?」
アスカ「……あんたまさか、気づいてなかったんじゃないでしょうね!?」
シンジ「い、いや、だって――」
アスカ「あんたって、ほんと、つくづく……ウルトラバカね……」
シンジ「ば……バカって……」
アスカ「うっ……」
シンジ「アスカ?……大丈夫、アスカ!?」
アスカ「おなか……すいた……」
シンジ「へっ?」
レイ「……」
シンジ「……そ、そうだ! 看護師さん、まだ?」
レイ「ええ」
アスカ「……」ハァ…ハァ…
シンジ「ぼ、僕、ナースステーションまで行ってくるよ!」ダッ
レイ「あ……」
バタバタバタ……
アスカ「……」ハァ…ハァ…
レイ「……」
アスカ「……ファースト」
レイ「なに」
アスカ「あんた、あのバカのこと、どう思ってんの」
レイ「バカ?」
アスカ「バカって言ったらバカシンジでしょ」
レイ「碇くん?」
アスカ「どうなの?」
レイ「……よく、わからない」
アスカ「アンタにマトモな答えを期待したあたしがバカだったわ。……聞き方を変えるわよ」
レイ「……」
アスカ「あいつが毎日ここへ来るのを見て、あんた、どう思った?」
レイ「!」ハッ…
アスカ「イヤだと思わなかった?……アタシのこと、憎らしいと思わなかった?」
レイ「……」
アスカ「自分だけを見てほしいと思ったでしょ? 寂しいから、アイツにいつもそばにいてほしいと思っ
たでしょ?」
レイ「……それは……」
アスカ「ヤキモチ」
レイ「……え?」
アスカ「ヤキモチっていうのよ、そういうのを」
レイ「……」
アスカ「それって、好きってことじゃん」ハァ……
レイ「……『好き』?」
ガタン……
アスカ・レイ「!」
シンジ「……あ……あの……」
バタバタバタ…
看護師「――ごめんなさい、急患が入ってしまって」
アスカ「……」
レイ「……」
シンジ「……」
:
:
==== アスカの病室 ====
看護師「――これでよし、と」カチャカチャ
アスカ「……」ハァ…ハァ…
看護師「何にしても、意識がもどってよかったわね。食欲の件は、先生にも言っておくから」
シンジ「あ、ありがとうございました」
バタバタバタ……
シンジ「……」チラ
レイ「……」
アスカ「……あんたたち、リニアの時間はいいの?」
シンジ「え……あっ!」
アスカ「ほら、早く行きなさいよ……仲良くおててつないで」
シンジ「お……おててって――」
アスカ「なによ」
シンジ「な、なんで――」
アスカ「噴水」
シンジ「えっ?」
アスカ「有名な話でしょうが。ネルフの人間で知らない奴がいると思ってんの?」
シンジ「そっ……そうなの!?」
アスカ「知らないのはあんたたちだけでしょ」
シンジ「……」パクパク
レイ「……」
アスカ「まったく――」ハァ…ハァ…
レイ「惣流さん……」
アスカ「うっ……」ブルッ
レイ「なに?」
アスカ「あんた、あたしに『綾波さん』って呼ばせる気!?」
レイ「……」
アスカ「特別にアスカでいいわよ。あたしも『レイ』って呼ぶから」
シンジ「えっ?」
レイ「……」
アスカ「ほら、ほんとに行かないと遅れるわよ」
シンジ「そっ……そうだね……行こう、綾波」ガタン
レイ「……ええ」
シンジ「じゃ、じゃあ、アスカ。また――」
アスカ「はいはい……」ハァ…ハァ…
スタスタスタ……
アスカ「……」ハァ…ハァ…
アスカ「……」フッ…
アスカ(そっか……あたし、まだ笑えるんだ)
:
:
==== ネルフ本部 エスカレーター ====
グーーーーーーーン……
シンジ「……」チラ
レイ「……」
シンジ(なんか……気まずいな……)
シンジ(綾波が……そんなふうに思ってたなんて……)
レイ「――くん」
シンジ(でも……どうしたらいいん――)
レイ「碇くん」
シンジ「……えっ……な、なに!?」
レイ「……手」
シンジ「え?」
レイ「また、触れてもいい?」
シンジ「えっ……」
レイ「……」ジー
シンジ(そ、そうだよな……)
シンジ「……」ニコ
レイ「!」
シンジ「いいよ」
レイ「……」ニギッ…
シンジ「……」
レイ「……」ニコ
シンジ「!」
レイ「……なに?」
シンジ「いっいや! あの……」
グーーーーーーーン……
シンジ「あの……綾波?」
レイ「なに?」
シンジ「……ま……」
レイ「……」
シンジ「また、ときどき触れてもいいかな……」
レイ「……え?」
シンジ「綾波の……手」
レイ「……」
シンジ「……」ドキドキ
レイ「構わないわ」
シンジ「そ、そう!」
レイ「……」
シンジ「そう……よかった……」ニコ
レイ「……」ニコ
ビーーーーーーーーッ
女性オペ『総員、第一種戦闘配置――』
シンジ、レイ「!!」
女性オペ『――繰り返す。総員、第一種戦闘配置』
シンジ「い、行かなきゃ!」
レイ「ええ」
女性オペ『エヴァンゲリオン零号機ならびに弐号機パイロットは直ちに搭乗――』
シンジ「……え?」
==== アスカの病室 ====
アスカ(弐号機パイロットって……あの変態が出るっていうの……)ハァ…ハァ…
==== ネルフ本部 エスカレーター前 ====
女性オペ『――初号機パイロットは別命あるまで発令所にて待機。繰り返す――』
シンジ「また!? 本番で出られないんじゃシンクロテストなんかしたって――」
レイ「……碇くん」
シンジ「……」
レイ「私、行くから」
シンジ「でも!」
レイ「……」ニギッ
シンジ「綾波……」
レイ「だいじょうぶ」
シンジ「……気を付けてね」ニギッ
レイ「ええ」
シンジ「……行ってらっしゃい」
レイ「……行ってきます」パッ…
バタバタバタ……
シンジ「……」
:
:
==== ネルフ本部 発令所 ====
リツコ「――答えを導くにはデータ不足と言うことね」
シンジ(また僕だけ、こんなところで手をこまねいているだけなのか…)
リツコ「ただ、あの形が固定形でないことは確かだわ」
シンジ「……」ニギッ…
シンジ(綾波……)
シンジ(もし綾波に何かあったら、僕は……)
ミサト「先に手は出せない、か……。レイ、しばらく様子を見るわよ」
レイ『いえ……来るわ!!』
シンジ「!」
:
:
==== アスカの病室 ====
アスカ「……」ハァ…ハァ…
アスカ「うんしょ……っと……」カチッ
ザザ……
ミサト『レイ! よけて!』
ザザ……
カヲル『零号機が捕まった!』
アスカ「!」
カヲル『ライフルは効かないってんのに!!』
アスカ(何やってんのよ、レイ!)チッ
カヲル『まずい! 侵食型か!』
アスカ(シンジは……初号機はなんで待機なのよ!?)ハァ…ハァ…
カチャカチャ…
看護師「惣流さん、食事よ」
アスカ「……」ハァ…ハァ…
看護師「絶食が長かったから、流動食から徐々に――」
アスカ「んっ……」ガバッ…ムンズ
看護師「きゃっ!」
アスカ「……」ゴクゴクゴクゴクゴク
看護師「そ……そんなに急に飲んだら――」
ブハッ
アスカ「ごちそうさま! あと、よろしくっ!」ダッ
看護師「あ、ちょっと――」
ペタペタペタペタ…
看護師「……」ボーゼン
:
:
==== 発令所 ====
レイ『あっ……ああっ!!』
マヤ「危険です! 零号機の生体部品が侵されています。すでに5%以上が融合されています!」
シンジ「父さん!」クルッ
シンジ「僕を出して! 今すぐ、僕を出してよ!」
ゲンドウ「……」
==== 初号機ケージ ====
ペタペタペタペタ…
アスカ「あるじゃないの! なんで出さないのよ!」
整備員「――あれ? アスカちゃん! もう起きていいの?」
アスカ「バカシンジはどこっ!?」
整備員「え……だって、初号機は司令の指示で凍結中――」
アスカ「凍結中って何よ! あんたたち、レイをあたしの二の舞にする気!?」
整備員「い、いや、そんなつもりは――」
アスカ「ほらっ、どきなさいよっ!」ドンッ
整備員「わっ! ちょ、ちょっと!」
==== 発令所 ====
シンジ「父さん!」
ゲンドウ「……」
ミサト「司令……」
プルル…プルル…ガチャッ
リツコ「はい。……えっ」
ミサト「どうしたの」
リツコ「大変。初号機に、アスカが――」
ミサト「えっ!?」
==== 初号機プラグ内 ====
男性オペ『無茶だ!アスカちゃん――』
アスカ「うっさいわね! 人を下がらせて! どかないと怪我する――」
ブヒュウウウウウウゥン…
アスカ「――なっ!」
男性オペ『パルス消失……やっぱり無理だって!』
アスカ「くっ……あんたもそうなの!?」
初号機「……」
アスカ「何よ! 人形のくせに! 黙って動きなさいよっ!!」
初号機「……」
アスカ「レイがどうにかなったら……そのせいでバカシンジがどうにかなったら……」ポタポタポタ…
初号機「……」
アスカ「ぜんぶ、アンタのせいだからねっ!!」ボロボロボロ
……フワッ……
アスカ「……えっ……」
フオーーーーーーーー…
アスカ(な……なに?……どこ? ここ……)
「……」
アスカ「……あ……あんた……だれ?」
「……」ニコ
アスカ(なに?……この感じ……優しい……あったかい……)
アスカ(……ママ!?……違う……少し違う気がする……でも……)
--------
----
-
――ブウウウウウウウゥン
男性オペ『しっ……シンクロ再開!』
アスカ「……え?」
男性オペ『アスカちゃん、初号機、起動した! ハーモニクス、正常!』
アスカ「えっ!?」
シュオーーーーン…シュオーーーーン…ピキーーーーーン
ヴォーーーーーー…
アスカ(あれが……エヴァの……心? あのヘンタイが言ってた――)
初号機「……」
アスカ「そう……ずっと、そこにいたの……」
初号機「……」
:
:
==== 零号機プラグ内 ====
レイ「あなた……誰?」ハァ…ハァ…
「……」ニヤリ
レイ「使徒……私たちが使徒と呼んでいるヒト?」
使徒「……私とひとつにならない?」
レイ「いいえ……私は私。あなたじゃないわ」
使徒「そう……でもダメ。もう遅いわ。……私の心をわけてあげる」
レイ「!」ビキビキビキ
使徒「ほら……痛いでしょ? 心が痛いでしょ?」
レイ「痛い……いいえ違うわ。コワイ……そう、怖いのね」
使徒「コワイ?わからないわ……でもね、それはあなたの心よ」
レイ「……わたしの?」
使徒「手……」
レイ「えっ……」
使徒「あなたの手。碇くんは、また触れてもいいかと、言ってくれた」
レイ「……」
使徒「でも……本当のことを……あなたの、本当のことを知っても、そうしてくれるかしら」ニヤリ
レイ「!!」
使徒「自分だけを見ていて欲しい……いつもそばにいてほしい」
レイ「嫌……」
使徒「そのために碇くんをだまして……でも碇くんに嫌われたくもない」
レイ「嫌……」
使徒「欲望と恐怖と、矛盾に満ち満ちている、あなた自身の心よ」
ポタポタポタッ…
レイ「涙……これが涙……泣いているのは私? 私なの?」
==== 地上 ====
ブワッ……
==== 発令所 ====
マコト「あれは!」
リツコ「零号機の背中から……使徒!?」
シンジ「綾波っ!」
ミサト「エントリープラグを強制射出!」
マヤ「ダメです! 反応しません!」
ミサト「何ですって……」
ゲンドウ「初号機の凍結を、現時刻をもって解除」
ミサト「えっ」
ゲンドウ「出撃だ」
ミサト「はい! ……で、でも初号機にはアスカが――」
シンジ「あっ……」
ゲンドウ「初号機の状況は」
マヤ「はっ…はい! ハーモニクス正常、シンクロ率……41.3パーセント!」
ミサト「えっ!?」
ゲンドウ「十分だ。出撃させろ」
ミサト「は、はい!」
==== 初号機プラグ内 ====
ミサト『いい?アスカ。話はあとで聞くわ。出すわよ!』
アスカ「うっさいわね! さっさと出しなさいよ!」
ミサト『頼んだわよ! ――初号機、発進!』
==== 地上 ====
ガラガラガラ……ガシャーーーン
初号機「……」グウウウゥン
==== 初号機プラグ内 ====
ミサト『A.T.フィールド全開、目標と接触しないように注意して!』
ミサト『とにかく、力ずくでエントリープラグごとレイを救出するのよ!』
アスカ「わかってるっちゅうの!」
ヴォーーーー
アスカ(あのヘンタイ! あたしの弐号機に、なんてことしてくれるのよ!!)
==== 零号機プラグ内 ====
レイ「……」ハッ…
レイ(初号機……碇くん!?)
==== 地上 ====
使徒「……」ビュッ!
==== 零号機プラグ内 ====
レイ「!」
レイ(使徒の先端が……私の姿に……)
レイ(あれは……私の心?……碇くんと一緒になりたい、私の心……)
==== 弐号機プラグ内 ====
カヲル(何だ?……何かが流れ込んでくる…)
ポタポタポタッ
カヲル(何だ……これは……)
==== 地上 ====
使徒「……」シュルシュルシュル…
初号機「……」ジャキイイィン
==== 発令所 ====
マコト「初号機、プログレッシヴ・ナイフを装備!」
==== 地上 ====
初号機「……」ブンッ……ブシューーーーーー
使徒「……」キャアアアアアアアアア!!
==== 零号機プラグ内 ====
レイ「……碇……くん?」
アスカ『こんのおおおおおおおおお!!』
レイ「アスカ!?」
==== 初号機プラグ内 ====
アスカ「このっ! このっ!」ブンッ ブンッ
使徒「……」キャアアアアアアアアァ
アスカ「こいつ! 全身がコアか!?」
使徒「……」シュルッ… ガシッ
アスカ「なっ!」
ビキビキビキビキ ……
==== 発令所 ====
マヤ「初号機、頸部に侵食発生!」
ミサト「アスカ!」
==== 零号機プラグ内 ====
レイ「……ダメ!」
==== 地上 ====
シュルッ……
使徒「……」キャアアアアアアアアア……
アスカ「えっ!?」
==== 発令所 ====
マヤ「零号機、A.T.フィールド反転! 一気に浸食されます!」
ミサト「使徒を抑え込むつもり!?」
==== 零号機プラグ内 ====
ミサト『レイ! 何してるの! 機体を捨てて、早く逃げるのよ!』
レイ「ダメ……私がここからいなくなったら、A.T.フィールドが消えてしまう」
ピッピッピッ…
レイ「だから、ダメ」
ガシュン!
==== 発令所 ====
マヤ「ぜ……零号機、モードD起動!」
ミサト「レイ……あなた、死ぬ気!?」
シンジ「そんな……綾波っ!!」
==== 地上 ====
アスカ(初号機)「レイ!」ズシンズシンズシン…
==== 発令所 ====
ミサト「アスカ! 何を――」
マヤ「零号機、コアが潰れます! 臨界突破!」
==== 地上 ====
アスカ「でえええええいっ!!」ガキイイイィン!!
バシュッ
レイ「えっ――」
カッ……
:
:
ドオオオオオオオオオオォ
==== 発令所 ====
一同「……」ボーゼン
シンジ「綾……波……アスカ……」
シゲル「目標、消失」
マヤ「……」
ピッ…ピッ…ピッ……
マヤ「あっ……」
ミサト「どうしたの?」
マヤ「信号を確認! エヴァ初号機……弐号機……それからこれは……」
一同「……」
マヤ「零号機!……零号機プラグの救難信号です!」
ミサト「えっ!?」
マヤ「テレメトリ確認。各パイロットとも、呼吸、脈拍は正常……無事です!」
マコト「映像、回復します!!」
(主モニターの中、半ば水没したクレーターの中央付近にうずくまっている初号機)
(爆心に背中を向け、何かを抱えこんでいる)
(少し離れたところに横たわっている、片足の先がない弐号機)
ミサト「現時刻をもって、作戦を終了します。第一種警戒態勢へ移行」
ワッ!!
シゲル「了解! 状況イエローへ速やかに移行!」
ミサト「エヴァ各パイロットの救出、急いで」
マコト「了解!」
ミサト「シンジくん」
シンジ「ミサトさん……」
ミサト「よかったわね」グスッ
シンジ「はい……」グスッ
ゲンドウ「……」
:
:
==== 初号機ケージ ====
(固定され冷却されている初号機 装甲が焼けただれている)
(アンビリカルブリッジに横たえられている零号機のエントリープラグ)
(ハッチが開かれている)
シンジ「――じゃあ、アスカ――」
(ストレッチャーに横たわっているアスカ)
アスカ「いいから、行ってやんなさい」
シンジ「う、うん。ほんとにありがとう」
ガラガラガラ……
(レイのストレッチャーに付き添って歩いていくシンジ)
アスカ「……ミサト」
ミサト「なに?アスカ」
アスカ「…‥あそこにいるヘンタイ呼んで」
ミサト「えっ?……渚くんのこと?」
アスカ「他にどんなヘンタイがいるのよ」
ミサト「ハァ……渚くん! ちょっと!」
スタスタスタ…
カヲル「……何ですか」
ミサト「アスカが用があるみたいよ」
カヲル「僕に?」
リツコ「――ミサト!」
ミサト「わかってるわよ!……ごめん、アスカ。私行かなきゃ」
アスカ「……いいわよ」
カツカツカツ…
カヲル「なに? 用事って」
アスカ「……エヴァの心」
カヲル「えっ?」
アスカ「心……初号機の」
カヲル「……」
アスカ「うまく言えないけど……ママ……みたいな感じだった」
カヲル「……」
アスカ「弐号機も……そうなのかしら……」
カヲル「……」
アスカ「前にアンタに言われたこと、少しだけわかったような気がする」
カヲル「……ふーん……」
カヲル(それでか……)
アスカ「……って、その『ふーん』が最高にムカつくんだけど!!」
カヲル「えっ?」
アスカ「よくもアタシの弐号機、キズモノにしてくれたわね」ジロッ
カヲル「えーと……あ、すみませーん」
救護員「ん?……ああ、すまない」スタスタ
アスカ「えっ?」
救護員「――待たせて悪かったね。行こうか、アスカちゃん」ガラガラガラ……
アスカ「ちょっ……ちょっと!」
ガラガラガラ……
カヲル「……」
アスカ「卑怯よ! 人の話を聞きなさいよ!」
カヲル「大人しく寝てないと落っこちるよー?」
アスカ「動けるようになったら、ただじゃおかないんだから!!」
ガラガラガラ……
カヲル(やれやれ……ややこしいことしてくれたな……)
:
:
==== レイの病室 ====
レイ「――碇くん」
シンジ「なに?」
レイ「手……」
シンジ「うん」
レイ「……」ニギッ……
シンジ「……」
レイ「つめたい……」
シンジ「え?」
レイ「つめたくて、気持ちいい」
シンジ「……そっか」ニコ
レイ「……」
シンジ「……綾波?」
レイ「なに」
シンジ「綾波が……無事でよかった」
レイ「……」
シンジ「あの時、約束したろ?……一緒に生きようって」
レイ「……」
シンジ「僕は……君を失いたくない」ニギッ……
レイ「……」ポロッ
シンジ「……綾波?」
レイ「……碇くん」ポロポロ
シンジ「ど……どうしたの?」
レイ「私……碇くんに……話さなければならないことが……」ポロポロポロ
シンジ「……え?」
:
:
==== 闇の中 ====
ヴォン…
モノリス01「――機は熟した。行くがよい、タブリス」
カヲル「……」
モノリス01「どうしたタブリス」
カヲル「……僕は降りるよ」
モノリス01「……」
カヲル「あれじゃあ弐号機はもうダメだよ。動くことは動くだろうけど……少しでも怪しいことしようとしたら、とたんに言うこと聞かなくなるだろうな」
モノリス01「……」
カヲル「かといって僕一人じゃ初号機を足止めできそうもないし」
モノリス01「……我々に背くつもりか、タブリス」
カヲル「知らないよ。そんなの僕の勝手だろ」
モノリス01「これは通過儀礼なのだ。閉塞した人類が 再生する為の」
カヲル「……」
モノリス01「滅びの宿命は新生の喜びでもある。神も人も、全ての生命が死をもって、やがてひとつとなるために」
カヲル「死は何も生みゃしないよ。少なくともリリンにとってはね」
モノリス01「死は、お前に与えよう」
カヲル「どうぞご勝手に……」クルッ……スタスタスタ…
モノリス01「……」
:
:
==== 司令執務室 ====
(何重にも手錠をされているアスカ)
ゲンドウ「君には失望した」
アスカ「……」
ゲンドウ「初号機の私的占有、戦闘下において独断により機体を喪失の危険に晒した行動」
アスカ「……」
ゲンドウ「これらは全て犯罪行為だ」
アスカ(くっ……)
アスカ(アタシの時は何もしなかったくせに!)
ゲンドウ「この件についての処分を伝える。……惣流・アスカ・ラングレー」
アスカ「……」
ゲンドウ「当分の間、弐号機以外の機体への搭乗を禁ずる」
アスカ「……」
アスカ(……えっ?)
ゲンドウ「以上だ」
アスカ「……あ……」
冬月「話は終わりだ」
アスカ「あ、あの――」
冬月「下がりたまえ。……少佐」
アスカ「――えっ?」
黒服「……」カシャン……ジャラッ……
冬月「……ユーロ空軍からの辞令伝達はまだかね」
アスカ「えっ……あっ……はい……」サスサス
==== 執務室前 ====
プシュー…
アスカ「……」
アスカ(どうなってんのよ、いったい……)
:
:
==== ジオフロント 噴水のある庭園 ====
レイ「……」チャプ……
「……綾波」
レイ「!」ビクッ
シンジ「あの……」
レイ「……」
シンジ「……ごめん」
レイ「なぜ、謝るの」
シンジ「だってあの時……あれを見て僕は……怖くなって……」
レイ「!」
シンジ「……」
レイ「……」ワナワナ…
シンジ「怖かった。いまに綾波が、遠くに行っちゃうんじゃないかと思ったから」
レイ「……え?」
シンジ「……綾波」
レイ「……」
シンジ「綾波はいつか、僕から離れていっちゃうのかもしれない」
レイ「……」
シンジ「僕の手の届かないところに行っちゃうのかもしれない……それでも、それまでは――」
レイ「……」
シンジ「それまでは、僕は……君と……手をつないでいたいんだよ」
レイ「……あ……」
シンジ「……」
レイ「……」
シンジ「……」スッ
レイ「!」
シンジ「……」
レイ「……」ニギッ……
シンジ「……」ニコ…
レイ「私……よかった。碇くんと出逢えたこと」ウルッ
シンジ「……」
レイ「何者でもなく、空っぽだった私が、今は碇くんに教えられたもので満たされている」ポロ…
シンジ「……」
レイ「とても、うれしい」ポロポロポロ
シンジ「……」
レイ「こういうときの顔、これであってる?」ニコ…
シンジ「綾波……」ニギッ…
レイ「……」ポロポロ
:
:
==== 庭園のそばの渡り廊下 ====
(柱にもたれて腕組みをしてシンジたちの様子を見ているアスカ)
アスカ「……」
カヲル「――あっ、いたいた……」スタスタスタ……
アスカ「っ!……ちょっと!」グイッ
カヲル「な、なんだよ」
アスカ「あんた、どこ行く気!?」
カヲル「どこって、サードのとこだよ」
アスカ「や、やめなさいよ!!」
カヲル「なんだよ」
アスカ「……いいから!」
カヲル「なんなんだよ、いったい」ブツブツ
アスカ「……で、バカシンジに何の用?」
カヲル「聞いてみようと思って」
アスカ「何を」
カヲル「……こないだ、あの使徒と闘った時……ファーストの思念が僕に流れ込んできた」
アスカ「思念?」
カヲル「なま暖かでドロっとしてて気持ち悪くて……ゆっくり胸を締め付けてくるような……」
アスカ「……」
カヲル「あれが『好き』ってこと?」
アスカ「えっ……」
カヲル「あんなのを自分に向けられたらどんな感じなのかな?」
アスカ「……」
カヲル「それを聞いてみようと思って」
アスカ「……そりゃ当人たちじゃなきゃわからないわ」ハァ…
カヲル「そっか、それじゃあ――」スッ…
アスカ「でも、今はやめときなさいよ」グイッ
カヲル「どうしてさ」
アスカ「どうしてもよ」
カヲル「……じゃあ、君が教えてくれよ」
アスカ「えっ?」
カヲル「サードに聞きに行くなって言うんだったらさ」
アスカ「なっ……」
カヲル「人を好きになるって、どんな感じ?」
アスカ「……」
カヲル「触れ合いたいとか、唇を重ねたいとか、失いたくないとか――どんな感じのものなの?」
アスカ「しっ……知るか! 何言ってんのよアンタは!!」クルッ……スタスタスタ…
カヲル「教えてってば」スタスタスタ…
アスカ「ついてくるな! このヘンタイ!」スタスタスタ…
:
:
==== ターミナルドクマ ====
レイたち「……」コポコポ…
ゲンドウ「……」
冬月「――それで?」
ゲンドウ「ゼーレの老人たちが動き出す気配はない。音信不通のままだ」
冬月「ただ事ではないぞ、碇。『補完計画』は――」
ゲンドウ「老人たちのシナリオなど、知ったことか」
冬月「いいのか? シナリオはもう修復できないかも知れん」
ゲンドウ「……」
冬月「レイがあれではな……それに――」
ゲンドウ「……」
冬月「これはどうするつもりだ」
レイたち「……」コポ…
ゲンドウ「それも、私の知ったことではない」
冬月「……」
ゲンドウ「レイが……あの二人が決めればいいことだ」クルッ……
カツカツカツ……
冬月「……」
プシュー
冬月「ふん……」
冬月(まったく嫌な役だ……)
レイたち「……」コポ…コポ…
冬月(ユイくん……これでいいんだな?)
:
:
==== 実験場 管制室 ====
(窓の向こう 半ばL.C.Lに浸かっている3本のテストプラグ)
(モニタの中、目をつぶっているレイ、アスカ、カヲル)
ミサト「――レイのデータに間違いはない?」
マヤ「はい。全ての計測システムは、正常に動作しています」
ミサト「驚いたわね……」
リツコ「エヴァとの接続に使われるA10神経は、報酬系と呼ばれる神経系よ。これは種々の欲求、特に高次の欲求が満たされることで活性化する性質があるわ」
ミサト「高次な欲求?」
リツコ「例えば……愛……とかね」
ミサト「えっ?」
リツコ「……」カチャカチャ…
ミサト「……ふーん」チラ
リツコ「……」チラ
シンジ「なっ……なんですか?」
ミサト「べっつにぃ~」フフ…
:
:
《エピローグ》
ミサト(語り)『その後も、使徒の襲来が絶えることは無かった』
==== 発令所 ====
マコト「分析結果、出ました。パターン青! 間違いありません、使徒です!」
マヤ「特性は第5使徒タイプと判明」
ミサト「了解。ただちに電力各社に支援要請」
シゲル「了解!」
ミサト「弐号機はG型装備に換装、初号機にはリフレクティブシールドを装備して、両機、第四狙撃地点へ」
マコト「了解!」
ミサト『使徒は依然として人類の脅威ではあったけれど、前よりはましな備えができるようになってきていて――』
==== 初号機ケージ ====
シンジ「行ってくるね」
レイ「気をつけて」
ニギッ…
==== 弐号機ケージ ====
アスカ、カヲル「じゃーんけーん!!――」
ミサト『こらぁ! 何やってんの! 早く搭乗しなさい!!』
:
:
ミサト『それでも、最も危険な局面を子供たちに託さなければならない状況は少しも変わらないから――』
==== エヴァシリーズケージ ====
ケンスケ「――やだよ! 趣味悪いよ、この量産型ってやつ。初号機とか弐号機みたいなのだと思ったの
に……」
トウジ「しゃーないやろ。お前、ずっと乗りたがってたやないか。ゼイタク言うなや」
ヒカリ「……ねえ、なんかこのプラグスーツっていうの、すごく恥ずかしいんだけど……」
アスカ「慣れよ、慣れ」
レイ「……」
:
:
ミサト『せめて私は――私たちは、全力を尽くす。あの子たちを闘いに送り出さなくて済むようになる、その時までは――』
==== 地上 クレーター湖畔 ====
ミサト「……」
ミサト「加持くん……あたし、これで良かったわよね……」
「ああ、そうだな」
ミサト「えっ……」
加持「……」カチッカチッ…
ミサト「……」
加地「お前にしちゃ、上出来だと思うよ?」
ミサト「あっ……あんた……」
加持「……」スパー……
ミサト「……なにやってんのよ、こんなとこで!!」ワナワナワナ
加持「敵を欺くには、まず味方からってな。……おっと」ヒョイ
ミサト「よっ……よけるんじゃないわ……よ!?」
加持「……」ズイッ
ミサト「なっ……なによ……」
加持「言ったろ? もし、もう一度会えることがあったら、8年前に言えなかった言葉を言う……ってな」
ミサト「あ……」
加持「……葛城……お前……」ジッ
ミサト「……加持……くん……」カアアアァ
加持「……」
ミサト「……」ドキドキドキ
加持「酒癖……なおしたほうがいいぞ」
ミサト「……っ……」
加持「当分、あの子らの保護者役するってんなら、なおさら――痛っ!」
ミサト「ああああアンタって人はあああああああぁっ!!」ダッ
加持「冗談だよ! 今のはほんの――」バタバタバタ…
:
:
カヲル「……」スタスタ…
バタバタバタ…
加持「よう、渚くん」
カヲル「……なんです?」
加持「いや……委員会の情報、大いに役に立ったよ」
カヲル「……何のことです?」
加持「おっと……すまない。今のは聞かなかったことにしてくれ」
カヲル「……」
加持「じゃあ、またな」ダッ…
ミサト「待ちなさああああいっ!!」バタバタバタ…
:
:
どうにもまとまりがつかないけど、とりあえずおしまい
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もしもヱヴァ「破」のあと「来い!」がクセになっていたら
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