【艦これ】過去と現在とこれから【非安価】 (17)


一通の手紙に目を通す。宛名は無いがそれが誰が書いたのか位は私でも想像がついていた。

「叢雲か大井か…着任したての時の話を引っ張り出している辺り叢雲かな。大井はミスをしない」

分厚い手紙には日頃の不満や感謝の言葉などが綴られていた。

らしくない…いや、本来はこうなるべきだったのかもしれない。

私は椅子に持たれかかり、壁に飾られた数々の勲章とそれを支えてくれた仲間達の写真を見る。

「…あれからもう大分と経つのだな」

口にすれば軽く聞こえてしまうが実際は本当に修羅場だった。最初はまだ良かった。男1に対して2人だったから。だが遠征の効率や負担の軽減の為に加速度的に艦娘を増やしてから私は気がついたのだ。

この鎮守府には男が私だけしか居ない事に。

艦娘達が悪いわけではない。彼女達は私の指揮や無茶な指示によく耐えてくれている。今だに遠征のルーチンなどは昔のままだがそろそろ見直してもいいかもしれない。

高速修復剤の保有限界を超えている。その数は4000には届かなかったが二日程度なら全ての鎮守府のカバーができる量だった気はする。

初めはこのバケツを被れば服が直る事に驚いたがそれ以前に彼女達が何故私たちを信頼してくれているのかが解らなかった。

意思のある兵器が今までであった事もない男に尽くしてくれる…言葉にするとさっき程の数百倍の重さと謎がそこにはある。

着任したて時から少し振り返るとしよう。横須賀鎮守府に着任して、大井と叢雲に初めて会ったあの日から

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自慢では無いが私は海軍学校をトップで卒業した。深海棲艦と呼ばれる謎の敵から祖国を護りたい…などと殊勝な心掛けなどあるはずもなく将来は幕僚からの天下りでウハウハする予定だった。

卒業式のあの日、配属先を見るまではその予定の為に努力を惜しまなかった。

『上記の者を横須賀鎮守府初代提督に任命する』

その一文を見て私が抱いた感想は実に若く短絡的であり、止められるのなら止めたかもしれない。

(いきなり鎮守府の提督!しかも横須賀って赤レンガの…首席卒業はやっぱり待遇が違うのか)

卒業の喜びと天下りの為の一歩を踏み出せたと思っていた私は深く考えなかった。

そもそもこの時点で鎮守府は存在せず、全て基地と呼ばれており軍艦など深海棲艦を相手には的にしかならない事は常識ですらあった。

鎮守府の提督。過去から現在までの私の職業であり、祖国を護る中心に居るのが私達だ。

無知な私は何も知らずにこの時は喜び、未来は天下りでウハウハなのだと信じていた。

なのに今はどうか…いや、やめておこう。これは後で話せばいい。

若かった私に言えるのは一つだけ。

「そもそも海軍出身者が天下りでウハウハすると極刑」

今にして想う。世界とは本当に残酷だ


鎮守府に着任した時に私を出迎えたのは大井だった。

「初めまして球磨型四番艦軽巡洋艦の大井です。貴方が私の提督かしら?」

男臭い海軍学校で生きてきた私にとって女子高生みたいな格好をした大井は目に毒だった。それ以前に球磨型四番艦の意味がわからない。かつての船の名前に大井とは確かにあったが彼女が名乗る理由はなんだ?

様々な事が頭を巡ったが反射的に私は自身の事を名乗っていた。中尉と言った時に本当に軍人になったのだと感じたのは今でも良く覚えている。

そしてそれを見透かしていたのか大井は鎮守府の中を案内すると言い、歩き始めた。

私はその後ろを歩きながら職場を案内されそこで知る事になる。

日本一ブラックな仕事の頂点に立ち、定年を迎えても働かなければならない立場になり、艦娘達の生命を指先一つでどうにでもできる

『化物』


に私はなってしまったのだ。

NEWソートスレを見てたら自身の艦これの歴史はどうなのかと思いながらSSを書く事にした。今日はここまで。提督に港湾のおっぱいぶるんぶるんを言わせるまで書いていく。

>>1のケッコン数が知りたい?今回の秋艦娘とまるゆ、明石以外全員だ。つまりこのSSはそういうSSになる


「つまり君は兵器なのか?」

執務室で私は大井から知りたくもなかった事実を伝えられていた。

艦娘

深海棲艦の脅威から人類を救う生命兵器。見た目は私よりも年下だが過去の大戦で祖国を護ってきた軍艦。

「胸糞悪い話だな。いつから日本は故人を…英霊達を使い潰す国に変わった」

「お言葉ですが私達は自分達の意思で」

「黙れ、小娘。お前が艦娘だろうがなんだろうがかつてこの国の為に死んだ英霊を乗せていた軍艦なら理解しろ」

「私はお前に死ねと命じなければならない立場にいる。しかも人ではないから使い潰しても構わない。一瞬でここまで考えた私自身に吐き気を催し、当たり前みたいな顔をしているお前も気持ち悪い」

何にぶつければいいのかわからない感情が込み上げて、それが口から溢れ出る。気持ち悪い。これが今の海軍なのか?私が幕僚を目指した海軍とはここまで腐っていたのか。

「私はあくまでも兵器です。最適に運用されるなら死すらも…」

「なら今すぐに死ね」

私の言葉に大井が思わず聞き返してくる。

「死ねと言ったのだ。自害してみせろ。」

大井の顔から血の気がひけ、真っ青になる。

私はどんな顔をしているのだろうか?きっと腐りきった顔をしてるに違いない。

「ほら、最適な運用だろ。思考能力を有しながら提督の命令があれば死ぬ、ふざけた兵器などいらん。私もすぐに大本営を焼き払ってから後を追ってやる」

「だから死んでみせろ大井」


「そこまでにしてくれないか、中尉」

声のする方を向くと猫を持った少女がいた。

「総帥閣下…」

日本海軍及び陸軍を統べる絶対的な存在。
着任して数十年は経つ中で姿、形が一切変わらず日本を導いて来たのが彼女だった。

別名、妖怪猫吊るし

彼女がこんな鎮守府に現れる理由など私には到底思い付かず、大井も一層に顔を青くした。

「そう固まるな。何もとって食おうとしているわけではない。ただ、中尉と話をしにきただけだ」

怒っていたはずが目の前の少女を見てから絶望が私を取り巻いていた。

冷静になれば深海棲艦に対する平気に対して己の感情のみで自害を命じたのだ…極刑は間逃れない

「中尉」

彼女が無表情でこちらを見る。自害かそれとも極刑か…

「許してくれ。中尉の怒りもよくわかる。だがこれしかないのだ」

「人類が深海棲艦に勝つには、艦娘達の協力が必須。たのむ、彼女達を導いてはくれないか?」

「も、もちろんです」

土下座した妖怪に私がnoと言えるはずがなかった

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