徳川家康「りくじょうじえいたい?」 (596)
戦国自衛隊の新しい漫画を書店で目撃したので描きたくなりました
その名の通り自衛隊が戦国時代にタイムスリップします
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1415625854
陸上自衛隊・とある駐屯地内
伊庭義明(1等陸尉)「今日は空気が澄んでいて夜空が綺麗に見えるな」
県(3等陸尉)「…………!」
伊庭「どうした?」
県「金星の位置が…………昨日と全く違います!」
伊庭「金星?人工衛星か何かと間違えているんじゃないのか?」
県「いえ……。そんなはずは」
ビーッ ビーッ ビーッ!
伊庭 県「!?」
『勢力不明の武装集団が美浜原発を襲撃した模様。これより各部隊の隊員は指揮官の指示に従い迅速に召集されたし。これは演習では無い。繰り返す』
伊庭「なんだと…………」
深夜の国道8号線を自衛隊の車両が走る
<96式装輪装甲車内>
伊庭「福井県の美浜原発が武装集団に囲まれてから数時間。民間人に被害が出たとの事で陸上自衛隊に防衛出動が命じられたわけだが…………」
県「国会がごたごたしたこともあって我々の出動はかなり遅れています。もう原発は敵の手におちたと考えても……」
伊庭「そうだな。敵の犯行声明はまだ発表されていない。だが小銃や対戦車ロケットまで所持していることが確認されていることからテロとみて間違いは無さそうだ」
県「対戦車用の兵器まで持っている………んですか。初の実戦……になってしまいそうですね」
伊庭「自衛隊は実戦経験が無いというのが誇りだったんだがな。その誇りをついに失うときが来てしまったようだ」
県「敵勢力はどのくらいなんです?」
伊庭「衛星からの映像によれば1個小隊程度のようだ」
県「1個小隊規模で対戦車用兵器まで装備……。しかも原発を………。この作戦に10式戦車をはじめとする戦闘車両が投入されるのも納得ですね」
出動したのは習志野の空挺部隊と機甲科部隊、それに普通科と航空科の混成部隊だ
伊庭1尉率いる1個小隊は作戦に投入される戦車の護衛任務についており、現在はテロリストに占拠された美浜原発へと向かう最中であった
矢野(2等陸尉)「上空で飛んでいるヘリは空挺部隊を輸送してるみたいだな。もうだいぶ時間が経過しているのに対応が遅すぎんだよ。何やってるんだか」
伊庭「こんなケースは初めてなんだ。政府も混乱しているのだろう」
矢野「はぁ……。米軍も動かねえし、自衛隊だけで対処できんのかね」
県「対処するしか無いんですよ。万が一、原子炉を爆破でもされたら大変なことになります。何とかして我々で敵を倒さなくては」
矢野「そうは言ってもなぁ。俺たちが輸送している10式だって投入されるのはたったの3両。正直なところ頼りないな」
伊庭「仕方あるまい。様々な制約があったのだから。戦車が投入されただけでもありがたいというものだぞ」
戦車は一般道を走行出来ないためトレーラーで運ばれる
そのトレーラーの前後に普通科隊員たちが乗る装甲車や輸送車両が続く
今回はひとつの戦車につき1つの小隊が護衛につくような形で部隊は移動していた
つまり戦車1両を含む1個小隊が3つ、それぞれ一定の間隔を空けて移動しているのである
矢野「しっかし、後続の小隊たちはどうなっているんだ?」
県「霧が濃くなってきましたからね。後続の小隊は我々の小隊を見失ってしまったのでしょうか?」
伊庭「この国道は一本道だからはぐれるなんてことは無いだろう。まあしかし念のために後続の小隊の位置を確認しておくか。木村曹長、無線連絡」
木村(陸曹長)「了解。こちら01、02送れ」
県「…………あれ?」
伊庭「どうした?」
県「いえ……。先程までは霧は濃くても国道沿いに日本海が見えていたんですが………」
伊庭「こんなに霧が濃くなったのか!?」
県「濃くなっただけなら良いのですが、濃すぎませんか?なんだか雲の中に入ったみたいですよこれ」
伊庭「確かに……。おい!車長!視界は大丈夫なのか?」
装甲車の車長である三田村が顔を出す
三田村(1曹)「一応、前を走っている車両のランプは見えていますから大丈夫です。ですが先頭車両はおそらく何も見えていないでしょうね」
伊庭「危険だな。道路のすぐ脇は崖で、その下は日本海だ。落ちたら洒落にならんぞ」
ザザザ ザザザ
木村「こちら01、こちら01、03送れ…………」
木村「なんでだ?第2小隊も第3小隊も応答が無い」
矢野「あ?そんなに離れているわけでも無いだろ。無線機が壊れてるんじゃねーのか?」
木村「そんなはずは………」
矢野「通信障害……。まさか敵から? いやそんなわけ………」
ガッコン ガコン ガコン
ガタガタガタガタ
伊庭「どうした!」
三田村「運転手! 加納!どうなってるんだ?」
加納(2曹・96式装輪装甲車運転手)「速力低下。何かに足をとられているような」
三田村「脱輪したのか?」
加納「これは……スタックしたみたいです」
三田村「スタック?ここはアスファルトの道路だぞ」
加納「がけ崩れでもして土砂が道路に溜まっていたのでしょうか?前方の車両も停止してしまったみたいです」
矢野「木村。前方の車両とは連絡出来るか?」
木村「可能です。どうも我々の小隊の内部のみでの通信は可能なようで…………」
伊庭「とにかく一端外に出よう。周囲の状況を確かめる必要がある。それと、テロリストの協力者か何かが攻撃を仕掛けてきた可能性も無いとは言えない、警戒を怠るな」
>>10
運転手じゃなくて操縦手な
伊庭たちの乗る装甲車よりも後方の73式小型トラック内
この小型トラックには現在トレーラーで輸送中の戦車の乗員が乗っていた
ちなみに伊庭の率いる小隊の隊列の最後尾である
島田(陸曹長・10式戦車の車長)「菊池。お前、今日なんか駆け落ちするとか言ってなかったか?」
菊池(3曹 戦車の砲手)「な……なんで知ってるんですか!?」
島田「風の噂で聞いた。でもまあ……なんというか、残念なことになったな」
菊池「今は駆け落ちよりも市民の命のほうが大切ですから」
丸岡(2曹 戦車の運転手)「けっ。女が居るやつはいいねぇ。こっちは家に帰っても犬しか出迎えてくれないってのに」
島田「にしても。俺らの戦車が使う様な状況にはなって欲しくねーんだけどなぁ。そういえばさっきから霧が濃くなってきたけど大丈夫なのか?運転手?」
関(3曹 73式小型トラック運転手)「視界が悪くなって……。前の車両以外は何も見えない状況です」
島田「まじかよ!って本当だ。雲の中みてーじゃねえか!」
ガッタン
島田「うおっと。おいおい脱輪か?」
関「どうもぬかるみにタイヤがはまったみたいで…………。前の車も止まっています」
島田「ぬかるみって……。ここ国道だぞ」
関「とにかく、無線で伊庭小隊長に指示を請います」
島田「そんなことしなくたってほら見ろよ。向こうから誰か来てくれたみたいだぜ?」
小型トラックの左前方から深い霧に紛れて黒い人影が複数出てくる
ザッザッザッザッ
関「よく見えませんが小隊長達ですかね?ちょっと行って来ます」
バタン
島田「………なあ、あの人影さ」
丸岡「はい?」
島田「何か変じゃないか?」
丸岡「変?といいますと?」
島田「なんつーか。身長が低すぎるし、ずんぐりむっくりしてるし」
丸岡「霧で歪んでそう見えてるんじゃないですか?」
島田「でもさぁ。雰囲気が俺たちとは違うというか………」
ギャアアアぁああああああぁあああああああああああああああああああああああああああああ
島田「!?」
>>11
そうでした
ご指摘ありがとうございます
島田「何だ!この悲鳴……。関の悲鳴だぞ」
丸岡「車長!あれ、関3曹が…………」
島田「!血を噴きだして………倒れた………だと?」
菊池「え?何ですか?あれ。え?え?」
人影の方に歩いて行った関3曹が血を噴き出して倒れていた
そして、その関3曹が接触しようとしていた人影達は刀のようなものを持っている
島田「おい。まさか、あいつらがやったのか?関を……」
丸岡「………車長」
島田「何だ?」
丸岡「あの人影…………。我々の部隊の人間じゃないです……」
島田「何!?」
霧が少し晴れて今までシルエットだった人影の姿がくっきりと現れる
その姿はまるで…………
島田「鎧武者……じゃねえか」
菊池「何ですかあいつら!鎧着てますよ?コスプレですか?!」
丸岡「バカ!あれ見ろ。あいつらが持ってる刀。関の血がついてる。本物だぞ」
菊池「ど……どうするんですか?はやく関3曹助けないと………」
丸岡「分かってる。とりあえず警察に連絡だ。あと救急車も」
菊池「ちょ!我々は自衛官ですよ!警察よりも装備は…………」
丸岡「俺らに逮捕権なんて無いだろうが!それに発砲許可すら出てないんだぞ」
菊池「でも……。ってあいつらこっち見てる!」
霧の中から現れた鎧武者の集団は5名ほど
だがよく見ると彼らの後ろの霧の中にはもっと大勢いるようにも見える
倒れている関3曹の横に立つ鎧武者の持つ刀は血で赤く染められていた
そして彼らは島田たちの乗る小型トラックを睨んでいた
島田「丸岡。この車に小銃は乗せてあるか?」
丸岡「えっと……。関3曹の89式小銃がそこに」
島田「これか。弾薬は……ここか」
丸岡「車長……。なにやるんすか」
島田「関の救出だ」
ガチャリと島田は小銃にマガジンを差込み、給弾する
安全装置を解除してセレクトレバーを3点制限射撃モードにセットし彼は車から出た
丸岡「ちょちょちょっと車長!命令も無しに!発砲許可も無しに!問題になりますよ?ってかひとりじゃ危険すぎますって。…………んんんん。俺も行きますから待ってください!」
菊池「え?き…危険ですよ。ぁ……丸岡さんも行くんですか!?俺も行きます。確か後ろに他にも銃が」
今日はここまでです
先に言っておくと時代は戦国時代の中でも割と後半です
続き
島田たちが謎の鎧武者と接触する少し前
96式装輪装甲車 車外
伊庭「何だ?この地面は」
県「土砂崩れというよりも元々コンクリートで固められた地面ではなく、湿地だったようですね。この草なんて地面に直接生えてます」
伊庭「舗装された道路から沼地に外れてしまったのか?」
県「つい先程までは舗装された道路を走っていたはずなのに旧に沼地なんかに突っ込みますかね?見てください車両の走ってきた方の地面を」
伊庭「…………奇妙だ」
県「我々の装甲車がぬかるみに突入してから停止するまでは5メートル程度しか装甲していません。ですが装甲車の後方は5メートル以上も湿地になっています。まるで今まで我々が走ってきた国道が突然消えてしまったみたいです………」
伊庭「本当だ。霧でよく見えないが後続の車両も湿地に足をとられている…………。我々の隊列がいきなりこの湿地に移動させられたみたいな…………」
矢野「瞬間移動でもしたのか?」
伊庭「とにかく周囲の様子をもっと見てみよう」
県「そうですね。霧のせいで見えないだけで少し離れたところには我々の走っていた国道があるかもしれません」
伊庭「そうだな。それに他の車両の隊員に状況を知らせなくてはならない」
矢野「その必要はありません。後ろの車両の連中も出て来たみたいですから」
装甲車の後ろに続いていた車両群から続々と隊員達が出てくる
霧のせいで視認可能なのは装甲車の後ろ2両程度の車両のみだが、その後方の霧の中からも何名かの隊員が出てくるのが見えた
後続の車両もやはり湿地に足をとられたのだろう
伊庭「我々の小隊の車両はいくつあった?」
県「我々の装甲車を含めて16両です」
伊庭「そうか。なら全車両の安否を確認しに行くぞ。それと周囲の状況確認だ。県は今出てきた他の車両の隊員達に状況を説明しに行ってくれ」
県「了解」
96式装輪装甲車の10メートル後方 軽装甲機動車前
伊庭「根元3曹。無事か?」
根元(3曹 軽装甲機動車操縦手)「は!無事であります。しかし、地面に車が………」
伊庭「他の車両も同じだ」
根元「小隊長。このままでは作戦が…………。本部には何と言えば………」
伊庭「残念ながら現在、本部はおろか他の小隊とも連絡が取れていないんだ」
根元「そんな………」
伊庭「とりあえず俺は今から最後尾と車両まで1台ずつ隊員の安否と車両の状況を確認していく。お前は一端、LAV(軽装甲機動車)の中で待機していてくれ。他の隊員も全員車両の中で待機させる」
根元「了解。自分の車の仲の隊員も待機させておきます」
伊庭「よし。矢野。次の車両だ」
矢野「了解」
ギャアアアア
矢野「?」
伊庭「どうした?」
矢野「今後ろの方で悲鳴が聞こえたような?」
伊庭「後ろか………。と言っても最後尾のほうなんて全く見えん」
矢野「自分が見てきましょうか?」
伊庭「そうだな……そうして……………」
タタタン タタタン タタタン
伊庭「!?」
矢野「発砲音じゃねーか! しかもこの音は89式の3点制限射撃だ。誰だ撃ってるのは!」
伊庭「まさかテロリストの協力者か何かからの敵襲か!?」
霧の中から聞こえてきた銃声で他の車両に乗っていた隊員達もざわつく
根元3曹が乗っていたLAVのさらに後方の高機動車からは小銃を抱えた隊員が何人か不安そうに出てくるのも確認できる
伊庭「出てくるな! 車両で待機していろ。何が起こったのか不明なうちは無闇に外に出るな!」
ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン
伊庭「?」
矢野「何だ?この空を裂くような音は?」
ヒュンヒュンヒュンヒュン
伊庭「! 総員伏せろおおおおおおお!」
他隊員「「 !? 」」
カンカンカンカンカンカンカンカンカン
矢野「なんだこれは…………。弓矢…………!?」
霧の彼方から飛来した無数の矢が車両に当たり金属音を響かせる
伊庭「車両に退避!総員車両に退避しろ!」
伊庭をはじめとする隊員のほとんどは装甲車等の車両の陰に隠れて矢から身を守ったが
グアッ ギャア 痛ええええええ!
逃げ遅れたのであろう隊員達の悲鳴が聞こえてくる
矢野「くそっ!映画の撮影じゃねーよなこれ!」
伊庭「負傷した者はいるか!?」
隊員「し……小隊長。堀3曹と……戸賀士長が…………矢で」
伊庭「何!?」
矢野「くそ!あそこで倒れている隊員か!」
見れば2名の隊員が背中に無数の矢が刺さったまま伊庭たちのいる場所から少し離れたところで倒れている
伊庭「そんな………!」
矢野「小隊長!霧が晴れて………あれは!」
伊庭「!?」
先程まで視界を奪っていた霧が何故か驚くほどのスピードで晴れていく
そして、その霧の晴れた向こう、無数の矢の飛んできた方向には広大な湿地が広がっており
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
数え切れないほどの鎧武者が大地を埋め尽くしていた
伊庭「なんだあいつらは」
周囲の車両の陰に隠れた隊員達もその光景に騒然としている
矢野「小隊長!交戦許可を。頭のおかしいコスプレ集団だか、テロリストの仲間かは知らねえが、この程度の武器しか持っていないならこっちの装備で一蹴出来る」
伊庭(実弾の使用許可も、相手勢力の確認も出来ていないのに交戦するわけにはいかない。我々は命令が無くては攻撃することすら出来ない組織なのだから…………。しかし)
倒れている2名の隊員の周囲の地面は赤く染められている
伊庭(このままではもっと多くの隊員が彼らのようになってしまう………)
伊庭(俺の役目は……俺の部下の生命を守ることだ!)
伊庭「実弾の使用を許可する。ただし、敵の殺傷は最小限に留めろ。最優先とするのは隊員にこれ以上の犠牲者を出さずに、この場から離脱することだ!」
矢野「了解!」
大地を埋め尽くしていた鎧武者や雑兵たちは歓声を上げて自衛隊車両群に突撃してくる
その数は千を軽く越える
伊庭「APC(装甲車)とLAV(軽装甲機動車)の車載機関銃で威嚇射撃を行ってあの連中の足を止める!その間に他の隊員は各車両を何とかして走行可能な状態にしろ!」
「「 はい! 」」
隊員達は各車両に向かって走っていく
伊庭「木村曹長!APCの機関銃の射撃を許可する!ただし威嚇に留めろ!敵の殺傷はなるべく避けろ!」
木村「了解!」
APCの上部のハッチから顔を出していた木村曹長は装甲車に取り付けてあった12.7ミリ重機関銃に給弾をする
伊庭「根元3曹!LAVの機関銃の発砲も許可する!」
根元「了解!」
LAVの上部ハッチから根元は上半身を乗り出し、車両に取り付けてある5.56ミリ機関銃MINIMIをガチャリとリロードした
伊庭「撃ち方はじめええええええ!」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
タタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ
2丁の機関銃から放たれた銃弾はだいぶ薄くなった霧を裂いて迫ってくる武者たちの足元へ着弾する
いきなりの銃撃に驚いたのか敵の集団は足を止めた
ざわついている様子から相当驚いたようだ
伊庭「LAVの後続の車両も車載されている火器の使用を許可する!敵の足を止めるんだ!」
タタタタタタタタタ
タタタタタタタタタタタタ
タタタタタタタタタタタタタタタタン
白い霧の中で幾つかのマズルフラッシュが確認される
伊庭「この隙に車両を動かすぞ!矢野!倒れている隊員を救出………回収してこい」
矢野「了解!」
県「小隊長おおおおおおおおおおお!」
他の隊員に現状を知らせに行っていた県が伊庭の方へ走ってくる
どうやら彼も無事だったようだ
伊庭「県か!車載の機関銃で威嚇している間に車両を動かすぞ。その旨を最後尾の方の車両の隊員にも伝えて…………」
県「それどころでは………ありません!」
伊庭「? どうした?」
県「あっちの……弓矢を放ってきた連中とは別の武装勢力が反対側から我々に向かってきています!武装は……長槍が主かと」
伊庭「なんだと!」
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
伊庭「!」
見れば弓矢を放ってきた勢力とは自衛隊車両群を挟んで逆の方向からこれまた無数の鎧に身を包んだ人間が突撃してくる
まるで伊庭達自衛隊の車両を挟んでそれぞれが戦をしているかのようだ
伊庭「なんだこれは……。挟み撃ちで逃げ場が無くなる…………」
根元「小隊長!どちらを撃てばよろしいですか!?」
木村「くっそ!連中、こっちが殺す気が無いと分かったのかまた突撃してきやがった!」
矢野「ちっ。装甲車やLAVは何とか湿地から抜け出せそうだが、弾薬満載のトラックはなかなか動かないぞ。もっと時間稼ぎをしてくれ!」
県「そうこうしてる間にどっちの勢力もどんどん近づいてくるぞ!」
新たに出現した勢力も矢を放ってきた勢力もどんどん迫ってきている
その距離は両者とも自衛隊と500メートル程まで近くなってきていた
伊庭「威嚇射撃を続行!装甲車より前の車両は車両の進行方向からして右の勢力を後ろの車両は左の勢力を!」
木村「しかし……。あいつらもう、ひるみもしません!」
車両を湿地から出して動かす作業をしていた隊員達も、威嚇射撃を行っていた隊員達も迫ってくる鎧武者たちに恐怖した表情を浮かべている
武者達がもつ槍や刀がぎらぎらと光るのをみて悲鳴を上げている者もいた
伊庭「作業急げ! 作業を行っていない者は全員小火器を携行。射撃を許可する!」
県「あああ!左の勢力が後方の車両に到達…………」
伊庭「なに!」
霧が晴れてきたとはいえ伊庭達の居る先頭からはまだ最後尾の方は見えない
が、視認できる中で最も後ろの車両である大型トラックや中型トラック群に槍を持った者たちが突撃しているのが見えた
トラックの乗員や周囲の隊員たちは威嚇射撃は行うものの、敵はそれに驚きはしても恐れることはせず、槍を隊員へと突き立てる
元々は輸送任務に就いていた隊員達はボディアーマーを装備していない
そのため槍は容赦なく隊員達の身体を貫いた
ギャアアアアアアアア!
ゥアアアアあああああああああああああああ!
伊庭「くそ! 敵の殺傷を許可する!それと湿地から抜け出せない車両は放棄!動ける車両に乗って退避するぞ!」
県「り……了解」
矢野「そいはいってもみんな急に射殺なんて出来っこねえぞ」
敵勢力は伊庭達のいる場所にも到達しそうだった
後方のトラックの周辺に居た隊員達は小銃で敵の身体を蜂の巣にして反撃を開始していたが、それでもやはり生身の身体に銃弾を浴びせるのには躊躇いがあるようだ
木村「こっちも殺傷しても構いませんね?」
伊庭「ああ。重機関銃での敵の殺傷も許可する!」
木村「了解!」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドド
伊庭「こうなるなら最初から許可をしていれば…………」
県「悩まんでください。そんなことよりも今は……………」
ドオオオオオオオオオオオオオオン
伊庭「!? 爆発音?」
県「あれは!」
伊庭「!」
県「トラックが爆発した…………のか」
鎧武者の集団が中型トラックに群がって、そしてそのトラックを押し倒したのだろう
横転したトラックはその弾みでどこかから燃料が漏れ、そして引火したようだ
満載していた弾薬や燃料と周囲に居た隊員をも巻き込んでその車は大爆発を起こしていた
今日はここまでです!
あ、コメントとかありがとうございます!
トラック爆発より少し前・最後尾の島田たち
島田「関いいいいいいい!お前ら何やってるんだ!」
鎧武者たち「!?」
丸岡「関3曹!…………だめだ。首筋を切られて…………」
菊池「そんな…………」
島田「何者かは知らねえが、これは殺人だぞ!お前ら分かってんのか!コスプレ野郎!」
鎧武者「なんじゃ?こやつら。奇妙な格好に喋り方も変じゃ」
島田「ああ?」
鎧武者「中村か有馬の軍勢かと思ったが刀も槍も持っていないとは…………」
別の鎧武者「見ろ。あれは火縄の類じゃなかろうか?」
鎧武者「?」
鎧武者たちは自衛官の持つ89式小銃をまじまじと見てくる
丸岡「何だこいつら……。ラリってんじゃないのか?」
「おーい。何があった!?」
「小隊長たちが先頭の方で状況の説明を開始したから来るようにと…………」
「関!関3曹!どうしたんだ!」
島田たちの乗っていた小型トラックの前の車両に乗っていた隊員達も異変に気付いて駆け寄ってくる
鎧武者「なんじゃ新手か?」
鎧武者「あの鉄で出来た馬は東の隠し玉か?」
鎧武者「ええい!何者かは知らないが味方でもなさそうじゃ!斬りおとせ!」
鎧武者たちは一斉に刀を抜いてくる
丸岡「おい!どうなってんだよ?東って何だよ!こいつら車も知らないのか?」
菊池「ふ……ふざけてるようには思えませんよ……。あの刀本物ですし」
他隊員「は?なんだこいつらは」
見れば敵の鎧武者の数は先程よりも増えている
おそらく霧で隠れて見えていなかったのだろう
その武者たちが一斉に刀を抜いて襲い掛かってくる
鎧武者「かかれええええええええ!」
「「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」
タタタン タタタン タタタン
鎧武者「なんじゃ!この音は!」
鎧武者「あれ。火縄が連続で…………!?」
島田「訳はよく分からんが、それ以上近づいたら容赦なく貴様らを撃ちぬくぞ!」
島田は89式小銃を構えて鎧武者たちの足元に3点制限射撃で発砲していた
鎧武者たちは突如として火を吹き、連続で弾丸を発射した小銃に動揺しているようだ
鎧武者「火縄が………連発!?」
鎧武者「東の軍はこんなものを…………!」
鎧武者「何が起こってるんじゃ!?」
鎧武者「鬼じゃ!あやつら鬼に違いない!」
島田「今のうちだ!丸岡と菊池、関3曹を車両に運べ!他の隊員は伊庭1尉に報告をしてきてくれ!」
他隊員「り……了解しました」
島田「痛い思いをしたくなかったらその刀を捨てろ!」
鎧武者「くっ………おのれええ」
鎧武者「殿の命によって中村一栄隊の前で苅田をしろと言われて来てみれば…………。鬼の衆に遭うとは……」
島田「何をごちゃごちゃ言ってるんだ!はやく武装解除を…………」
ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン
島田「何だこの音は…………」
鎧武者「!戦が始まってしもうたか!」
島田「い………くさ?」
丸岡「! あれは!」
菊池「車長!逃げてください!」
丸岡「菊池!お前も車の陰に早く隠れろ!」
ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン
カンカンカンカンカン
ぐあああ!
ぎゃああああ!
飛来した矢が先程の鎧武者たちと、先頭のほうに居るであろう伊庭に状況を報告にしに行こうとしていた隊員達を貫く
島田「うおっ!なんだこれ!」
島田は幸運なことに矢に当たらず生存していた
丸岡「車長!はやくこっちに!他のみんなも車の陰に隠れろおおお!」
菊池「あっ!見てください!矢の飛んできた方向とは逆の方向!」
丸岡「? 何!」
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
菊池「新手です!」
丸岡「霧が少し晴れて辺りの光景が見えるようになったのは良いが……」
霧が晴れて辺りの様子が徐々にわかるようになる
隊員達がそこで目にしたものは
島田「左も右も敵ばっかじゃねえか!」
おおおおおおおおおおおおおおおお!
丸岡「車長!どっちの敵も我々のほうに突撃してきます!」
菊池「俺たちを挟んでこいつら戦ってるのか?」
矢を放ってきた敵と新手の敵では格好が若干違うように見える
どうやら両者は自衛隊の車両群を挟んで対峙していたようであった
丸岡「おいおいどうすんだよこれ!このままじゃ俺たち巻き込まれるぞ」
菊池「け……警察に連絡して何とかしてもらえば」
丸岡「連絡してる間にあいつらに押しつぶされるぞ俺たち!それに見ろ、俺の携帯」
菊池「圏外…………」
丸岡「小型トラックに無線がついてただろ。あれでこの小隊の小隊長に指示を請うぞ。それと車を何とか動ける状態にする」
菊池「はい」
丸岡「車長!車をぬかるみから出して動けるようにしましょう!」
島田「わかった手伝う!」
菊池は既に息をしていない関3曹を彼らの乗ってきた73式小型トラック(パジェロ)後部座席に乗せた後、車載されていた通信機で小隊長である伊庭の乗っているであろう装甲車へと応答を呼びかけ始めた
丸岡と島田はぬかるみにはまっているパジェロを何とかしてぬかるみから出す作業に入った
島田「おーい!前の車両の隊員!聞こえてるか?」
作業をしながら島田は前の車両の周辺で矢に倒れた隊員を回収している最中の隊員に声をかける
隊員「はい!」
島田「見ての通り敵が攻めてきやがった!何人かで機関銃か小銃を使って奴らをけん制してくれ!その間に車を何とかして動かせるようにする。動かせるようになったら退避するぞ」
隊員「り……了解」
前の隊員たちも何人かは車両をぬかるみから出す作業に、何人かは車載の機関銃か小銃で敵勢力への威嚇を開始し始めた
そして良く聞けば彼らだけでなく、もっと前のほう(まだ残る霧に隠れて良くは見えないが)の隊員達も威嚇射撃を開始したようだ
タタタタタタタタタタタタタ
タタタ タタタ タタタ
隊員「くそっ!止まれ!止まりやがれ!本当に殺さなくてはならなくなるぞ!」
隊員「やつら、目が本気で俺たちを殺そうとしてる目だ!射撃に驚いても止まらないぞ!」
隊員「敵の距離……残り500メートルもありません!」
隊員「あ……新手のほうの敵が前方のトラックに到達します!」
長槍を持った新手の敵数十人が威嚇射撃を恐れずに突撃し、ついに自衛隊の車両群の一角に到達したのが見えた
トラックの乗員や周囲の隊員はそれぞれが持つ小銃で敵の足や腕を撃ち、何とか追い払おうとするが、次から次へと押し寄せる雑兵たちになすすべも無く倒れていった
ある隊員はついに弾切れをおこし、絶望した表情のまま槍で突かれて絶命した
ある隊員は車両の中に逃げようとしている途中を刀で斬られた
島田「くそ!丸岡!いそぐぞ!」
丸岡「はい!…………うわっ!」
遂に島田たちの車両のまわりにも敵が到達した
しかも、左と右の勢力両方が到達したようで、自衛隊に攻撃をするだけでなく、鎧武者同士での戦いも始まっている
その武者の何人かが島田たちの車両に長槍を突き立ててきた
菊池「ぎゃああ!」
武者「なんじゃこの鉄の馬は!成敗してくれるわ!」
菊池「ちょっ。やめてください!」
パジェロの側面に突いた長槍はカンッという音と共に弾き返されたが、幌に突きたてられた槍は幌を破って車内へと進入した
島田「菊池!小銃持って車から出ろ!車両は放棄だ!」
丸岡「放棄って………これからどうするんですか?……おわっ!くっそ」
タタタタタタタン
丸岡に長槍を突き立てようとした兵に島田が小銃の弾丸を撃ち込む
周囲は既に乱戦状態であった
そして乱戦の中で隊員達は次々と巻き込まれて犠牲になっていく
島田「トレーラーに積んである10式まで退避するぞ!あそこの中なら槍でも弓矢でも回避できる」
丸岡「ほ……他の隊員は?」
島田「10式を動かしてここにいる敵を蹴散らして全員助ける」
菊池「でもトレーラーの戦車にはまだ燃料を積んでませんよ」
島田「トレーラーの前後で走行してた車両は燃料を積んだ大型トラックだったろ。戦車の重機関銃で敵をひるませ、その隙に燃料を補給する」
丸岡・菊池「了解」
島田「よし。ついて来い。うらあああああああ!どけどけどけ!」
タタタタタタ タタタタタ
島田はこちらへ攻撃してこようとする長槍や刀を持った兵を銃撃でなぎ倒し(ただし足を狙っていた)、道を作りながら前進する
菊池と丸岡もそれに習った
この間、島田たちの乗っていたパジェロをはじめとする中型トラックなどの幾つかの車両は押し寄せる敵に倒され、燃料が漏れ、引火し、爆発していた
そして、その周囲に居た隊員や車両内に居た隊員はそれに巻き込まれてしまった
かろうじで爆発から逃げ切った隊員も無数に現れる敵の槍や刀に襲われて倒れた
同時刻・先頭車両群 伊庭たち
伊庭「負傷者を救出し装甲車に運べ!それと炎上した車両から離れろ!」
木村「くそ!きりがねえ!」
ドドドドドドドド ドドドドドドドド ドドドドドドドドドドドン
ぎゃああ! ぐあっ
木村曹長は車載の重機関銃で押し寄せてくる雑兵を片っ端から倒している
無論足を狙っているのだが12.7ミリの銃弾は片足を丸ごと吹き飛ばす威力を持っていた
ドドドドドド ドドドドドドドドド ドドドドド カチッ カチッ
木村「弾が切れた!12.7ミリの弾持ってきてくれっ」
県「みんな今は手がふさがってる!装甲車内に予備の弾倉があるから自分でとってくれ!くっ」
タタタン タタタン
車両の周りに展開している隊員達は自分たちに向かってくる敵の相手をするので精一杯だ
1人倒したらまた次がやってくる
手を休めた瞬間に槍で突かれるか刀で斬られるか、どちらかになってしまう
矢野「装甲車は走行可能になったぞ!負傷者を優先して入れろ!あと誰かモルヒネ持って来い!」
根元「LAVもぬかるみから脱出!後ろの高機動車や輸送車両もおそらく走行可能です」
伊庭「分かった。無線で全車両にAPC(装甲車)に続くように命じろ」
ドルルッ ドルルルルルル
負傷者や既に息の無い隊員を収容し終わった車両が動き始める
県「負傷者と……犠牲者は収容し終わりました。炎上した車両や散らばった空薬莢の回収は?」
伊庭「全て放棄しろ。早いところこの場を離脱して負傷者の手当てをしなくてはならない」
県「行き先は?現在地が不明な以上どこに向かえば良いかが分かりません」
伊庭「GPSで現在地を確認しろ」
県「先程、木村曹長が確認しましたがGPSが機能していません。無線もいまだに本隊や他小隊とは繋がらず………」
伊庭「……………。仕方が無い。この場を離脱することだけを優先に闇雲に走るしかなさそうだ」
県「はい」
伊庭「おいっ。車長!三田村!APCを先頭にしてこの場を離脱する」
三田村「了解。加納。発進準備だ」
加納「了解」
装甲車の車長が装甲車の上部ハッチから身を乗り出して返答する
矢野「こっちも弾が切れそうだ。早いところ車両にのって戦線離脱するぞ」
伊庭「ああ。急いでAPCに乗れ。っと、くそ」
タタタン タタタン カチッカチッ
弾倉が空になったところで伊庭たちも装甲車に乗る
木村「小隊長を収容。発進しろ!」
加納「了解!」
伊庭「前進ではなく後方に進んでくれ。収容できていない負傷者が居るかも知れん。特に最後尾の車両群の状況はあまり掴めていない」
加納「わかりました」
木村「全車両に告ぐ。APCに続いて走行開始。離脱する」
「ううっ………」
「いてぇ…………」
「ぐあああ!」
矢野「早くモルヒネを投与しろ!それと床の血を拭け」
県「まるで地獄絵図ですね」
伊庭「ああ。はやいところ野戦病院の類に運ばないと助からん」
県「木村曹長。後続の車両の様子は?」
木村「走行可能な車両は全てついてきています。この装甲車と2両のLAVの機関銃で武装を持たない車両に近づく敵を排除しながらですが……」
ドドドドドドド ドドドドドド
車載の重機関銃を撃ちながら木村は言う
伊庭「取り残された者が居ないか直接確かめる。上部の扉を一つ開くぞ」
木村「了解」
ガタッ
96式装輪装甲車の上部は車長と銃手用のハッチとは別に兵員が顔を出す扉も備えられている
伊庭「これが夢だと信じたいな」
木村「はい」
走行中の装甲車の周りの光景は見渡す限り武者たちで多い尽くされていた
伊庭「まるで戦国時代の合戦じゃないか」
木村「小隊長。弓矢が飛んでくる可能性もあります気をつけてください」
伊庭「ああ。そういえば先程から車両に対しての攻撃が少なくなったような気がする」
木村「機関銃の掃射と“我々の乗る自動車の存在”を警戒しているのでしょう。近寄ったら銃撃されるということをやつらは学習したみたいです。まあ例外はありますけどっ!」
ドドドドドド ドドドン
伊庭(それではまるで、奴らが自動車の存在を知らないみたいではないか)
木村「見てください」
伊庭「……………」
木村が指差すところには爆発・炎上し、無惨な姿となった自衛隊車両があった
木村「無線では炎上した車両から死傷者の回収は終了しているとのことです。ただ一連の出来事で車載無線機が損傷した車両もあり、隊員の点呼と正確な人数把握が出来ていないのですが」
伊庭「そうか。もしかしたら逃げ遅れた者が居るかもしれない。よく見るんだ」
木村「はい。それにしてもこの臭い…………。人肉の焼けるような臭いです」
伊庭「……………」
県「小隊長!」
伊庭「どうした?」
県「少し分かったことg………」
三田村「10式だ!」
伊庭「何?」
三田村「10式がトレーラーに乗せられたままです」
伊庭「!」
三田村「我々の任務は10式戦車を運ぶことです。どうしますか?このままだと任務放棄に……」
伊庭「……………」
ザザッ ザザッ ザザッ コチラ ヒトマルシキ キコエテイルカ ザザッ
加納「車載無線に入電」
三田村「回線を開け」
加納「はっ」
蘭「…」
コナン「ストーカー女の毛利蘭死ね!」
蘭「…」
コナン「付き合ってもないくせに彼女気取りのブサイク毛利蘭死ね!」
蘭「…」
コナン「頭にツノドリルつけてる空手ゴリラの毛利蘭死ね!」
蘭「…」
コナン「毛利蘭死ね キモい毛利蘭死ね ブサイク毛利蘭死ね ゴリラ毛利蘭死ね 彼女気取り毛利 蘭死ね 毛利蘭死ね 」
歩美「毛利蘭臭い 毛利 蘭キモイ 毛利蘭ゴリラ 毛利 蘭死ね 蘭死ね」
阿笠「毛利蘭死ね キモい毛利蘭死ね ブサイク毛利蘭死ね ゴリラ毛利蘭死ね 彼女気取り毛利 蘭死ね 毛利蘭死ね」
ルパン「毛利蘭とかいう彼女気取りのブサイク死ね」
次元「毛利蘭さん(17)射殺され死亡」
ドラえもん「毛利蘭死ね キモい毛利蘭死ね ブサイク毛利蘭死ね ゴリラ毛利蘭死ね 彼女気取り毛利 蘭死ね 毛利蘭死ね毛利蘭死ね キモい毛利蘭死ね ブサイク毛利蘭死ね ゴリラ毛利蘭死ね 彼女気取り毛利 蘭死ね 毛利蘭死ね」
のび太「毛利蘭死ね キモい毛利蘭死ね ブサイク毛利蘭死ね ゴリラ毛利蘭死ね 彼女気取り毛利 蘭死ね 毛利蘭死ね毛利蘭死ね キモい毛利蘭死ね ブサイク毛利蘭死ね ゴリラ毛利蘭死ね 彼女気取り毛利 蘭死ね 毛利蘭死ね」
無線『こちら10式戦車車内。自分は通信士の西沢です。この通信は自分の持っていた携帯通信機から送っています」
伊庭「西沢1士!?どうして戦車内に!」
西沢『はっ。自分の乗っていた車両が倒され、敵に囲まれているところを戦車の乗員に助けられまして……』
伊庭「ということは戦車の乗員もそこに!?」
西沢『はい。今代わります」
島田『こちら10式戦車車長の島田です。そこにおられるのは戦車護衛小隊の小隊長殿でよろしいですか?』
伊庭「そうだ。小隊長の伊庭だ」
島田『とりあえず現状を説明すると、今戦車の中には西沢1士と我々戦車の搭乗員の計4名が居ます。全員無傷』
伊庭「そうか。それなら今すぐ戦車をトレーラーから出して退避を…………」
島田『残念ながら今現在、戦車には燃料が入っておりません。本当は燃料を入れようと思ったのですが、燃料を積んでいたトラックが爆発しまして』
伊庭「戦車は走行不能か。なら今すぐ戦車を降りて我々の車両に…………」
島田『それも出来ません』
伊庭「なぜだ!」
島田『我々はこの戦車を作戦終了後、駐屯地へ必ず走行可能な状態で戻すという使命があります。ですからここで戦車を放棄は出来ません。それに」
伊庭「それに?」
島田『戦車の周りは敵でいっぱいです。我々が退避する為に他の隊員が危険に晒される可能性も」
確かに走行中の自衛隊車両に近寄ってくる人間は少なくなったが、停止したままの戦車と戦車を載せたトレーラーには雑兵が蟻のように群がっている
伊庭「我々が何とかする。それに燃料を積んだトラックもまだ幾つか残っている。少し時間をくれれば戦車に補給を……」
島田『そんなことをしている時間がありますか?」
伊庭「何?」
島田『先程の戦闘で何人もの死傷者が出ている。今すぐにでも治療しないといけない状態の隊員がたくさんいますよね?』
装甲車内
「ううっ」
「いてぇ……・」
「はぁ……はぁ………」
伊庭「…………」
島田『APCやLAVはともかく、ソフトスキン(非装甲)の車両は槍や矢を通してしまう。ここで停止したらこれ以上犠牲が出てしまいます!とにかくここは一端自分たちを置いて退避してください』
伊庭「………………分かった。絶対に救出しに来る。それまで待っていろ!」
島田『了解!」
伊庭「全車両、前進」
毎回思うが投下終わったら今日はここまでとか言ってよ
マナーね
そういえばコンビニに装丁がちゃんとした漫画があったな。
コンビニコミックじゃないやつが。
古いやつ(信長に仕えた時)と、関ヶ原に
飛んで、徳川方に着いた米軍と戦うの(続・戦国自衛隊)
は読んだことある
続戦国自衛隊読んでいる方が自分以外にも居てうれしいです
10式戦車から離れて数十分後
三田村「さっきまで近寄ってこなかった敵がまた攻撃を仕掛けてきました!」
木村「くそっ。こっちの銃撃に慣れてきたのか?それとも頭のネジが吹っ飛んだか?」
加納「ああっ。進行方向を敵が塞いで………。これでは進めませんっ。周囲も完全に囲まれています」
伊庭「構わん。礫殺しろ」
加納「しかし…………」
ドーンッ ドーンッ
伊庭「何だこの音は!?味方の火砲か?」
県「いえ。我々の火砲の音ではありません」
木村「!敵の砲撃です!おそらく単純構造の砲でしょう。後続の車両の何台かに着弾を確認!」
伊庭「弓矢と刀だけでなく大砲まで持っているのか敵は」
県「大………筒……?」
空から飛来する球状の砲弾は中に火薬を含んでいないため、車両に着弾してもその車両を走行不能にするには至らなかった
しかし、次々に降ってくる砲弾は隊員に更なる恐怖をもたらす
伊庭「敵はどこから攻撃してきている?」
木村「だれか双眼鏡を持ってきてくれ」
三田村「ここにあります」
木村「おう。……………………!2次の方向!発砲煙の様なものを確認!砲の形状はかなり古いものです」
伊庭「機関銃で黙らせろ」
木村「……………敵の大砲の射程は300メートルってところか。十分に射程範囲内だ……………!?」
伊庭「!?」
バババババババババババババババババババババ
県「ヘリのローター音!」
木村「敵の大砲陣地後方よりヘリの機影確認。あれは我々の仲間です。UH-60JAです!」
伊庭「UH-60JAだと!」
UH-60JAは米軍のUH-60ブラックホークを日本用に改良したヘリである
特徴は両脇につく巨大な増槽で最大速度は265km/h。航続距離は1295km。乗員はパイロット含め15名だ
県「空挺隊員を乗せていたヘリか!」
木村「ヘリの出現に驚いたのか、敵は大砲の射撃を中断。車両に近づく敵も停止しています」
三田村「ヘリのパイロットと思われる隊員から通信が入っています」
ヘリのパイロット『こちら上空ヘリの清水2等陸尉。副操縦士と空挺隊員5名を乗せて飛行中』
伊庭「こちら第12旅団、戦車護衛任務に就いていた普通科小隊の伊庭だ。状況は把握出来ているか?」
清水『は。夢であって欲しいのですが、眼下は刀や槍で武装した兵士に覆われています。また、そちらの小隊は砲撃を受けていますが上空から見る限り損害は軽微。攻撃していた敵の兵も現在は動きを止めていますね』
伊庭「現在、我々のGPSは正常に機能しない。隊外への通信も不能だ。我々の退避のための道案内と、我々に攻撃をしてくる敵、並びに、敵の砲陣地へのけん制攻撃をお願いしたい」
清水『けん制………。了解。車両の誘導と敵陣地への攻撃を行います』
敵の砲陣地の上空でホバリングしているヘリのサイドドアが開き、空挺団所属と思われる隊員がヘリに搭載されている重機関銃構える
ヘリのローターによる風圧で周囲の敵兵はヘリに攻撃しようとしても出来ない状況だ
清水『無線とGPSに関しては我々も使用不能です。他の機器は正常に動いているので電子戦の恐れは無さそうですが…………。現在、副操縦士がジャイロコンパスで現在地を確認中です』
伊庭「そうか。頼んだ」
三田村「加納。ヘリの誘導に従って進め」
加納「了解」
伊庭「全車両に告ぐ。ヘリの後に続け」
ドドドドドドドド ドドドドドドドドド
ヘリに搭載された12.7ミリ機関銃が火を吹き、敵と敵の砲を木っ端微塵に粉砕する
その光景に驚愕した周辺の兵たちもたちまち逃げてしまう
こうして伊庭達の小隊は戦場から離脱することに成功した
午前中はここまでです
夜にまた来ます
最近の自衛隊マンガといえば
「ゲート 自衛隊かの地にてかく戦えり」
が有名やな
自衛隊VSファンタジー軍団のやつ
元自衛官が書いてるので参考にどうぞ
暇になったのでちょっと書きます
>>55
ゲートは小説も漫画も全部持ってますよ
面白いですよね
慶長5年9月14日
西暦にすると1600年10月20日
日本は東と西の二つの勢力によって2分されていた
東は徳川家康
西は毛利輝元(もっとも、実質のところは石田光成であったが)
両陣営共に数万から10万の軍勢を抱えて今まさに日本史上稀に見る壮大な戦いが幕を開けようとしていた
東軍の総大将である徳川家康が美濃の赤坂に到着したことにより西軍には動揺が走った
中には逃げ出す西軍の兵士もおり、西軍・石田光成の家老である島左近勝猛は戦勝によって自軍の士気を高めようと東軍に奇襲を仕掛けることにした
この戦いこそ後の世に知れる関が原の戦い前の局地戦、杭瀬川の戦いである
史実によればこの戦いは島左近勝猛の策によって西軍が大勝利を収めることとなっていた
が、しかし
現在のところ西軍が勝利することもなく、また、東軍の軍勢である中村・有馬隊が勝利するにも至っていない
なぜなら突如としてこの杭瀬川の地に謎の集団が現れたからである
その集団は地を走る鉄の馬に乗り、空を飛ぶ鉄の鳥を操り、南蛮人のような格好をし、背が高く、一瞬で何十もの兵をなぎ倒す火縄銃を持っていたという
彼らを間近で目撃した足軽たちはこう口々に叫んだそうだ
「鬼じゃ!鬼が襲ってきおった」と
突如出現した異形の集団は島左近が用意しておいた伏兵と接触、殺害してしまった
これによって東軍への奇襲が失敗し、普通に戦が起こってしまったのである
つまり歴史が変わったのだ
異形の集団は既に杭瀬川を去ってどこかへ行ってしまったが、彼らが居たであろう場所には鉄の馬がいくつか残されていた
400年後の世に生きる人間はその鉄の馬を戦車(せんしゃ)と呼んだが、1600年に生きる人間はそれを戦車(いくさぐるま)と呼ぶに至った
そして、その戦車は今のところ東軍の軍勢が支配している
本多佐渡守正信「一栄。これがおぬしらの言っておった“いくさぐるま”か」
中村一栄「そうじゃ。ここにある戦車(いくさぐるま)は未だに動く気配すら無いのじゃが、わしはこれと似たような鉄の馬が馬よりも速く地を駆けるのをこの目で見た。わしだけではないぞ。ここにおる兵士全員じゃ」
戦車と戦車を載せたトレーラー、炎上しボロボロになったトラックなどの周りには戦を生き残った兵士が多く居る
皆、戦車を恐れるようにして見ていた
一栄「これは鬼かそれとも南蛮人の仕業に違いない。わしらが見た連中は南蛮人のような格好をしておった」
正信「豊氏。おぬしもか?」
有馬豊氏「見たとも。鉄の車の上から奴らは火縄を連発で放ってきおった。しかも、その威力は火縄のそれとは比べものにならん。西の隠し玉であった大筒とやらを易々と壊しておったわ」
正信「西に攻撃をしたということは東の味方か!?」
一栄「それはなかろう。我が方も多くの犠牲を出している。何と言うか、奴らはどちらの味方でもなく、ただ戦に巻き込まれたように思えるのう」
正信「…………。どちらの味方でも無いのならば、我が方へ導くべし」
一栄「それは家康殿の御言葉か?」
正信「いや。殿なら必ずそうするであろう。西を確実に叩くのであれば鉄の車も鉄の鳥も必要じゃて」
豊氏「この禍々しい形。あの先に付いているのは鉄砲の類か?」
トレーラーの上で固定されている10式戦車の砲身を指差しながら有馬豊氏は言う
正信「それにしては大きい。こんなものが馬より速く走れるのか?」
一栄「…………ふむ。生きてはおらんと思うが」
コンッ コンッ
豊氏「あまり叩く出ない。もしこれが生き物で寝ているだけだったらどうするのだ!」
一栄「ふむ。おっ。ここは硝子で出来ておるのか。っと中々厚いのお。鉄もよく変形している。どこの鍛冶職人でも鉄をこのようには出来ん」
正信「何か描いてあるの。これは桜じゃろうか」
本多正信は戦車に記されている自衛隊の旗である桜の印を見て言う
正信「文字も書いてある。おっ。ここからなら入れそうだが………。うむ、入れん」
一栄「下の車輪のようなもので動くのか。しかし、これを引く馬はおらんかったし、やはり生き物か?飯でも持ってくれば動くかの?」
正信「…………。中に人が入ってそうじゃの」
豊氏「家康殿には報告したのか?」
正信「使いを走らせた。もうじき来るじゃろう。それにその異形の輩を見つけ出さねばならん」
豊氏「そうか。彼らを御味方にしたいのは西とて同じことじゃろう。おそらく島の左近はまたこの戦車を奪いに来るぞ」
正信「そうじゃのう。関が原での決戦の前にここで決着がついてしまうかも…………」
それではまた夜に
10式戦車内
丸岡「戦車は完全に敵に囲まれたみたいですね」
操縦席から外の様子を伺う丸岡
島田「攻撃してくる様子は?」
丸岡「ありませんね。恐れて近寄ってきません」
島田「そうか。しかし、こうして車内でずっと待機してるのも暇だな。西沢。どうだ?戦車の中は」
西沢「狭いですね。いつもこの中に居る戦車隊員は素直に尊敬します」
丸岡「おいおい。俺にとっちゃここは天国なんだぜ?狭いのは否定しないが、こいつ(戦車)を転がすときほど幸せな時間は無いってもんよ。なあ菊池」
菊池「………………」
丸岡「どうした?」
島田「駆け落ちを約束した彼女のことでも考えてたんだろ。そっとしておいてやれ」
丸岡「そっか…………。ああー。にしても携帯にはいまだに電波が入らない。今ソシャゲのイベント中なんですよ?くっそー」
島田「気を抜くな。この戦車が刀や槍、矢、それに火とかにやられることは無いだろうが、万が一の時は車外に出て戦車を守るために戦わなくてはならない」
丸岡「そうっすね。一応、主砲同軸の機関銃で内部からいつでも攻撃できるようにはしてますが」
島田「はやいところ救援に来てもらわないと色々困るな。食料とか」
西沢「伊庭小隊長は必ず救援に来ます。小隊長は言ったことは必ず実現する人です」
島田「だと………いいな」
西沢「小隊長が救援に来る時はおそらく無線で連絡があります。それまで待ちましょう」
菊池「…………………」
丸岡「…………菊池。お前本当に大丈夫か?」
菊池「丸岡さん…………」
丸岡「ん?」
菊池「腹……壊してしまって。そろそろ限界で…………」
丸岡「おい!ここですんなよ!ただでさえ対生物兵器用で密閉された空間なんだからな!臭いで車内が大変なことに!」
島田「俺の戦車の中で糞漏らしたら腕立て1000回やってもらうぞ!どうしてもしたいなら外に出てあの連中にぶっかけてこい!」
菊池「まだ漏らすなんて言ってませんよね!っ!うああああああ!」
同時刻
杭瀬川から十数キロ離れた森の中に伊庭たちは居た
森の中のちょうど木々が生えていない広場になっているような場所
無秩序に停められた車両群とヘリは草をかぶせてカモフラージュさせ、それらの装備から少し離れた場所で焚き火を囲みながら生存した隊員達が集合している
伊庭「夜空が綺麗だな。こんな夜空は“現代の日本”では見ることが出来ん」
県「小隊長。各種装備のカモフラージュと点検。残存している戦力の確認と“殉職者”の埋葬、センサーの設置を完了しました」
伊庭「そうか。歩哨を一応つけておけ。殉職者の正式な葬儀は戦車の隊員を救出してからにしよう。で?残存戦力は?」
県「はい。残存隊員は10式戦車に取り残されている4名を除いて26名。これにヘリの操縦士、副操縦士、空挺隊員の計7名が加わりました。殉職者は14名。全員の死亡をこの目で確認してきました。負傷者は7名ですが命の危険はないそうです」
伊庭「14名……か」
伊庭の頭に殉職した隊員達の顔が思い浮かぶ
伊庭「………………」
県「装備は96式装輪装甲車が1両、軽装甲機動車が2両、高機動車が2両、73式小型トラックが3両、大型トラックが2両、中型トラックが1両、それとUH-60JAです。先程の戦闘で我々は5両の車両を失ったこととなります」
伊庭「戦闘………か。県。あれが戦闘に思えるか?」
県「は?」
伊庭「我々は一方的に攻撃され、そして殺された。そして、その後我々は一方的な虐殺を行った。先程の戦いはどちらかが一方的な攻撃をしているだけだった」
県「……………。小隊長は……もう状況が分かっているのではないですか?」
伊庭「…………」
県「自分は………その歴史とか好きで。本当は防衛大に進むんじゃなくて普通の大学で歴史を学ぼうと思っていたんですけど。それで…………気になったことが」
伊庭「あの鎧武者たちのことか」
県「はい。あの鎧武者たちの持っていた旗が気になりまして。正確に言うと旗印なのですが」
伊庭「続けろ」
県「自分が見た旗印は3つほどあったのですが、その内のひとつは確実に知っていました。丸に三つ柏。島左近勝猛です」
伊庭「島……左近。俺は理系だったから良く知らないんだが」
県「三成に過ぎたるものふたつあり、島の左近に佐和山の城。石田三成の家臣のひとりです」
伊庭「石田……三成だと。あの関が原の?」
県「はい」
伊庭「この期に及んであの光景が何かの祭りだとは考えられんし………。だとすれば我々に起こった出来事の仮定は2つか」
県「………………」
伊庭「連中。あの鎧武者たちは我々よりも骨格が小さいようにも見えた…………。はぁ。本当に夢であって欲しい」
県「何はともあれ、まずは戦車の奪還です。その作戦の為に全員召集させたんですよね」
伊庭「ああ。全員揃ったみたいだな」
焚き火の前に集まった隊員の点呼が矢野によって終了したらしく、全員伊庭のほうを不安そうに見ている
伊庭「県、我々に起こったであろう事はまた後で隊員に知らせる。今それを知らせてさらに彼らを不安にさせてはならん」
県「了解」
ちょいと離脱
飯作ってきます
戦国自衛隊は映画しか見てないけどおもしろい!
期待
伊庭「全員集まったようだな」
一同「「……………」」
伊庭「皆も分かっている通り現在我々は常軌を逸した状況にある。そして、先程の出来事で14名の隊員が死亡した」
隊員「し……小隊長!あいつらは一体!テロリストですか!?」
矢野「おい高嶋。お前テロリストが槍や刀で武装してると思うのか?」
隊員「では!過激派組織とか」
矢野「連中は数千人を越えてた。日本にそんな過激派組織があるとは思えん」
伊庭「連中については俺も分からん。現在、我々が置かれている状況もな。無線は隊外とは繋がらず、GPSは使用不能だ。清水2尉。ジャイロコンパスで現在位置は特定できたか?」
清水「ヘリのジャイロによれば現在位置は岐阜県大垣市付近です」
矢野「………。俺たちが走っていたのは新潟と富山の県境、糸魚川河口付近だったはずだ。瞬間移動したとしか考えられんぞ。ジャイロは正しいのか?」
清水「はい。ただ上空から見た限り、周囲に建物や高圧電線は見当たらず………」
オイオイマジカヨ
ドウナッテルンダ ソレヨリオレタチハコレカラドウスレバ
アイツラマタコウゲキシテクルカモ
ワイワイガヤガヤ
伊庭「落ち着け。まず我々は状況確認の為の偵察が必要だ。本隊と何とか連絡もとらなくてはならない。そして、何よりも戦車に取り残された隊員の救出だ」
矢野「そうだ救出だ。それに戦車の奪還だ!我々の任務は戦車を原発まで無事届けることだった。戦車は必ず奪還する!」
隊員「そ……そうだ。我々は任務を全うするべきだ。殉職した彼らの為にも」
隊員「でも……また殺さなきゃいけないのか?」
隊員「我々が殺される危険性も」
隊員「くっそ!何がなんだか!」
伊庭「最優先は隊員の救出と戦車の奪還。第二に本隊との連絡。我々の持っている無線だけが壊れているのかもしれない。近くの駐屯地……、民間人でも良い。我々以外の“まともな人間”を発見して、何としても本隊と連絡をとる。でないと原発がテロリストに…………」
県「……………」
伊庭「そして付近の偵察だ。作戦内容と作戦参加隊員の発表は後に知らせる。それまではこの場を無闇に離れるな。この決定に異議のある者は?」
隊員「あ……あのぅ」
伊庭「須賀?言ってみろ」
須賀(士長)「あの……。またあいつらが攻撃してきたら………。我々は殺さなくては……?」
伊庭「敵の殺傷は最小限に抑える。ただし、自分の命を最優先にしろ。自分が殺されそうになったら構わず引き金を引くことを許可する」
県「小隊長…………」
矢野「…………」
伊庭「我々は自衛官だ。専守防衛は絶対とする。それに…………」
矢野「それに?」
伊庭「敵も一応“日本人”だ。なるべく戦闘は避けたい」
県「………………」
伊庭「では後ほど作戦内容を伝える。では解散」
隊員「「 はっ 」」
本日はここまでです
>>67
ありがとうございます!
感想はとても嬉しいです!
あ……>>70ちょっと変でした
伊庭「では後ほど作戦内容を伝える。解散」 に訂正
20:00 杭瀬川上空
UH-60JA内
島和武(2等陸尉・空挺隊員の指揮官)「こちら島。フタマルマルマル時、予定通り目的地上空到達。降下準備完了。送れ」
伊庭『こちら地上部隊の伊庭。フタマルヒトマルに作戦決行』
島「了解」
島はヘッドセット越しに無線で地上部隊の伊庭と連絡を取る
昼間の戦闘で敵がヘリに対して異常なほどに恐れを抱いていたのを目撃していた為、今回の戦車奪還及び隊員救出作戦にはヘリをフルで活用することが決定された
まず、ヘリによって戦車を取り囲む敵兵を混乱させ、指揮系統(が敵に存在するかは不明であるが)を乱した後、空から弓矢や大砲などの飛び道具をなるべく殺傷を避けて黙らせる
飛び道具を黙らせた後にヘリに乗った空挺隊員が戦車を載せたトレーラーの周囲を確保
それと同時に装甲車両が突入する
これが今回の作戦の大まかな流れである
事前にリコン(偵察)班を出動させ、敵がどのような布陣となっているかは確認済みで、戦車を中心に取り囲むようにして槍や刀で武装した兵士が整列していた
島「望月、穴山、三好、降下準備。大賀はキャリバー50の射撃用意」
「「 了解 」」
大賀(空挺隊員・1等陸曹・狙撃手)「機関銃射撃は趣味じゃないんですがねぇ」
ヘリ搭載のドアガンである12.7ミリ機関銃を構えながら大賀は言う
島「今回の作戦は敵を殺すことが目的では無い。お前の腕が発揮されるような状況になってはならないんだ」
大賀「そうっすねぇ」
島「清水2尉。下の様子は?」
清水「敵の兵は1000を越えてる。全員ヘリにビビッてるな。暗視スコープ越しにも良く分かる。へっ。俺の操縦テクニックに濡れてるんじゃないか?」
山田(3等陸尉・ヘリ副操縦士)「清水さん。ふざけてる場合ではありませんよ?」
清水「こういうときこそ笑いが必要なんだ。黙ってたら余計なこと考えちまうしな」
見ればパイロットの清水の手は震えている
島「作戦開始まで残り5分か」」
ヘリの空挺隊員が降下準備に入っているのと同じ時刻
96式装輪装甲車内
伊庭「よし。ヘリは目的地上空に到達したようだ。我々も突入準備にかかる」
ヘリの空挺隊員が戦車周辺を確保すると同時に敵陣へと突入する装甲車は現在、敵陣からほど遠くない林の中に潜んでいた
装甲車の他には軽装甲機動車2両が潜んでいる
相手が飛び道具を持っている以上、パジェロやトラックなどの非装甲車両での突入は危険との判断により。今回は装甲車両のみが作戦に投入された
作戦に参加する隊員は指揮官の伊庭と副官の矢野を含めてわずかに10名
作戦に参加できない負傷者と彼らの治療にあたる衛生科の隊員、参加しない車両や燃料弾薬を護衛する隊員と、伊庭の不在の間に残った隊員を指揮する県3尉を除いたため作戦に参加できる人数は10名が限界だったのだ
昼間と違い、車両に乗っている隊員は全員ボディアーマーを着用し、暗視スコープを頭につけている
予備弾倉も十分に持ち、分隊支援機関銃を持つ者も居る
完全武装、すなわち彼らの本気の姿というわけだ
伊庭「全員装備の最終確認を行え。三田村。戦車内と通信を」
三田村「了解」
そういうと装甲車車長の三田村は戦車内の隊員に呼びかけはじめる
三田村「こちらWAPC三田村。送れ」
無線『こちら10式内の西沢です。どうぞ』
三田村「先程連絡した通り、作戦はフタマルヒトマル時に予定通り決行。そちらも準備にかかれ」
西沢『了解。戦車の乗員、特に菊池さんは待ってましたと言わんばかりに喜んでいます』
三田村「?」
矢野「我々が突入した後は戦車に燃料を速やかに補給する。トレーラーは放棄する。戦車の乗員にはいつでも戦車を動かせるようにしとけと言っておけ」
西沢『了解』
伊庭「作戦開始まで残り5分。全車両発進準備だ」
昼飯を作るので一端離脱します
そういえば近所の図書館に続戦国自衛隊が全巻ありました
ジパングや沈黙の艦隊もあって自分にとっては天国です
正信「わしは生まれてこの方こんなに奇怪なものに出会ったことは無い」
バババババババババババババババババ
ホバリングしているヘリを見ながら本多正信は言う
一栄「物の怪なのか…………?わしらを食いに?」
正信「……………」
雑兵「終わりじゃ。この世の終わりじゃ!こやつは鬼の使いに違いない!」
雑兵「くわばら、くわばら」
雑兵「なんまいだ~なんまいだ~」
正信「皆のもの!矢を放つ出ないぞ!」
豊氏「…………!あ…あれは!森の方、やつらがまたやってきたぞ」
正信「森の方?何じゃあれは………。巨大な獣の目?」
豊氏の指差す闇に包まれていた森の中に幾つかの眩い光が見える
車のライト等知る由も無い彼らにとってそれらの光は闇に潜む巨大な獣の目に見えた
そして、その“獣”は低くうなりながら物凄い勢いで近づいてくる
雑兵「うわああああああああ!物の怪じゃあ!」
雑兵「食われるぞ!逃げるんじゃアアアア!」
雑兵「この戦車(いくさぐるま)はやはり生き物で仲間を呼んだんじゃ!」
雑兵「南無三。もはやこれまで…………」
グオオオオオ グオオ
ババババババババババババ
正信「もはや人知を超えた現象じゃ」
上空ヘリ
島「敵の隊列が崩れた。戦車の周辺が手薄になるぞ。総員降下始め!大賀、援護頼んだ」
大賀「おまかせあれ!」
島「降下!」
UH-60JAヘリから4名の空挺隊員が地上へと降下を開始する
それを見つけたのか地上に居た弓兵や鉄砲隊が各々の武器を構える
大賀「武器を向けるなああああああ!」
ドドドドドドドドドドドドドド
弓兵「うわああ!鉄の鳥が火を噴いたぞ!」
弓兵「放つな!逃げろおおお!」
ドドドドドドドドドド
大賀「くそっ。敵に当てるよりも外す方が難しいんだっての!」
地上・戦車を積んだトレーラー周辺
島「全員無事か!?」
空挺隊員「望月、穴山、三好。全員無事に展開完了」
島「よし。戦車を確保するぞ。伊庭1尉たちが到着するまで戦車と戦車内の隊員を死守せよ!」
空挺隊員「了解!」
全員の無事を確認すると島はトレーラーに固定されている戦車によじ登り上部のハッチを叩く
他の空挺隊員たちは戦車の周りに戦車を守るように展開し、襲い掛かってくる敵兵の迎撃体制に入る
ただ、敵兵のほとんどはヘリと機関銃の掃射に怖気づいて近づいてこなかった
島「戦車の救援に来た!ハッチを開けてくれ」
カパッ
島田「おっ。ようやく到着ですな」
島「燃料は伊庭1尉が装甲車に積んで持ってくる。すぐに戦車に燃料が補給出来るように準備してくれ。それと車載機関銃にも一応、給弾を」
島田「了解。おい丸岡、菊池。戦車をトレーラーに固定している固定具を外すぞ。西沢1士。キャリバーに給弾を頼んで良いか?弾は後ろに積んである」
西沢「分かりました!」
菊池「便所に生きたいっす車長…………」
島田「ここを脱出したらいくらでも出して良いから今は戦車を出す準備だ!」
丸岡「固定してるロープは銃剣か銃で切っちまおう。燃料入れたらバックでトレーラーから戦車を下ろします」
島田「戦車をひっくり返さないように気をつけろよ丸岡」
丸岡「俺の腕を舐めないでください。やれって言われれば戦車(こいつ)でつり橋だって渡ってやります」
島田「…………。ふっ。お前の操縦も中々の物だが、俺の方が上手く操縦出来るぜ」
丸岡「自衛隊のミハエル・ヴィットマンって呼ばれてる車長には敵いませんや」
島田「作業急ぐぞ」
丸岡「はい!」
96式装輪装甲車内・伊庭たち
加納「どけどけどけどけ!轢かれても保険は下りねえぞ!」
装甲車は混乱して逃げ惑っている雑兵の中を凄まじいスピードで進んでいた
そして、操縦する加納は人格が変わっていた
三田村「どっかで聞いたことがある台詞だな。敵はなるべく轢くなよ。殺傷を避けるという意味もあるが、血糊で車輪がスリップする可能性もある」
伊庭「戦車は見えるか?」
加納「真正面に見えています!ヘリの空挺隊員は降下している模様!ヘリにビビッて近寄れないでやんの!」
伊庭「戦車を積んだトレーラーの横で停止しろ。停止と共に木村と矢野、大西と小野は燃料を下ろせ。他の隊員は空挺隊員と共に現場を確保せよ。後続のLAVの隊員も聞こえているな?」
無線『こちらLAV。聞こえております!』
伊庭「よし。加納!いっきに突っ込め!」
加納「了解!振り落とされんなよおおおおおおおお!」
グオオオオオオオオオオ
三田村「あと数十秒で到着します。到着と共に後部扉を開放しますので準備をお願いします」
伊庭「わかった」
加納「うおおおおおお!」
グオオオオオオオオ
オオン
キキーッ
加納「到着!」
三田村「扉開放します!」
伊庭「行くぞっ!遅れるな!」
伊庭を含む小銃を構えた隊員が装甲車から出た後、矢野たち4名の隊員がドラム缶を転がしながら出てくる
装甲車の外は敵が行っていた焚き火と持っていた松明で割と明るかった
嫌な臭いが一瞬したが、それは昼間の戦闘で燃えた車両と、それに巻き込まれた敵兵の死体の臭いだろう
矢野「もたもたするな。燃料入れてすぐに離脱だ」
木村「はい!」
島田「おお!餌が来たか!」
戦車の固定を外す作業をしていた島田が燃料を運んできた矢野たちに近寄ってくる
矢野「遅れてすまない。燃料を入れてすぐにここを離脱したい。なるべく急いで補給をお願いしたい」
島田「任せてください!我々が燃料を補給する間、戦車の護衛を頼みます」
矢野「補給を我々も手伝うが?」
島田「戦車(こいつ)の餌やりは俺たちの仕事です。ここからは我々に任せちゃってください。あ、それと救援感謝します」
矢野「わかった。木村!我々も小隊長と共に護衛に回るぞ」
木村「了解」
今日はここまでです
映画の矢野とは全然キャラが違う………
映画見たけどあんま覚えてないなぁ
もう初見って感じで見てます
乙です
>>85
読んで下さってありがとうございます!
登場人物の名前は映画から取ってますけど内容は全く別物です
戦車への燃料補給は迅速に行われた
島田「満タンとまでは行かないがこれくらい食わせりゃ、そこそこの距離走れるだろ。丸岡、発進準備」
丸岡「待ってました!菊池、発進するから車内に入れ。西沢はどうする?」
西沢「自分は小隊長たちと共に撤退します。短い間ですが世話になりました」
丸岡「俺の華麗な操縦を体験させてやろうと思ったんだが。まあいいや。今なら敵の攻撃も無い。早く装甲車に逃げろ」
西沢「はい」
島田「菊池!戦車の護衛をしてくれている隊員に戦車の発進準備が出来たと車内の無線で他の車両に知らせろ」
菊池「分かりました!ようやく便所に行けますね」
島田「おう。護衛中の隊員の方に知らせます!戦車は燃料補給が完了!発進準備に入ります」
戦車によじ登りながら島田は戦車を積んだトレーラーの周りで戦車の護衛中だった隊員に報告する
伊庭「おうっ。燃料補給が完了したか。よし!護衛中の隊員は全員車両に乗れ!空挺隊員の方はLAVに余裕があるからそっちに乗ってくれるか?」
島「了解。望月、穴山、三好。LAVに乗車しろ」
空挺隊員達「「 了解 」」
隊員達は次々に戦車から離れて装甲車や軽装甲機動車に乗る
矢野「乗車急げ!また敵が弓矢で攻撃してくるかも知れんぞ!」
伊庭「遅れた隊員は居ないか?」
木村「各車両から戦車の乗員以外全員収容したとの報告がありました」
伊庭「わかった」
矢野「よし。発進させろ!」
伊庭と矢野が装甲車に入ると同時に後部の扉が閉まる
さらにそれと同時に装甲車が動き始めた
伊庭「この車両を先頭にして、先程のように敵中を突破する。一番敵兵が少ないところへ突っ込め」
三田村「了解。2時方向が最も手薄そうなのでそこへ突っ込みます」
伊庭「よし。木村、戦車に2時方向へ突っ込むと連絡しろ」
木村「わかりました」
伊庭「ここまで敵味方共に犠牲なし。このまま死者0で全て終わってくれよ…………」
10式戦車内・島田たち
島田「丸岡、発進だ」
丸岡「了解。発進します」
グオオオオオオオオ
戦車のエンジンが動き出し車内が小刻みに揺れ始める
島田「周囲に敵兵無し。よし一気にバックしてトレーラーから戦車を出せ」
丸岡「はいっ」
グオオ キュラキュラキュラ
動き出した戦車はトレーラーの上をバックで走り始める
島田「菊池。伊庭1尉は何と言ってる?」
菊池「2時方向にAPCを先頭にして突撃するそうです」
島田「そうか。おい丸岡!トレーラーから降りたらAPCに続いて2時方向に突撃だ」
丸岡「わかりましたっと」
丸岡の見事な操縦テクニックで戦車は無事にトレーラーから地面に降りることが出来た
その後、戦車は回転し、その進行方向を装甲車の走る方向へと向ける
丸岡「よっしゃ!10式の本気を見せてやる!」
島田「おう!見せ付けてやれ!」
丸岡「行きます!」
ウオオオオオオオン キュラキュラキュラアア
2009年に制式化された10式戦車は日本の最新鋭の戦車である
主砲の120ミリ滑腔砲と主砲同軸の7.62ミリ機関銃、車体上部の12.7ミリ機関銃を主な兵装とし、自動装填装置によって装填手を不要とする
車体を小型軽量化したことで重量は90式戦車よりも軽い約44トンとなった
詳しくはhttp://ja.wikipedia.org/wiki/10%E5%BC%8F%E6%88%A6%E8%BB%8A
44トンで最高時速70キロの戦車が突撃してくるのを見て、ただでさえ混乱して逃げ惑っていた鎧武者たちはさらに逃げ惑う
雑兵「うわあああああ!あの戦車(いくさぐるま)も動き始めたぞ!」
雑兵「潰されるぞ!逃げるんじゃあああ!」
島田「救急車に乗ってる気分だな。相手のほうから道を空けてくれる」
カンッ
島田「うおっ」
上部のハッチから顔を出していた島田の横に槍が飛んでくる
動き始めた戦車に恐れを抱きながらもしてくる兵士も少なくなかった
自衛官は知る由も無かったが、この場に居る武者たちは寄せ集めではなく殿に忠誠を誓っている正統な武家の家系の武士が多かった
寄せ集めで集められた兵士は多くが昼間の戦闘で犠牲となっている
正統な武士の家系の武士たちは忠誠心もあるが、個人の精神力と信念も中々のもので、戦車を相手にしても立ち向かっていく
最初こそ恐れていたものの、戦車や装甲車があまり攻撃してこないことを悟ってからは槍を投げつけ、刀を振りかざし攻撃してきた
島田「くそっ。攻撃を再開してきやがった!」
菊池「伊庭1尉に指示を請います」
島田「ああ頼んだ」
菊池「こちら戦車。指示を請います」
無線『こちら伊庭。こちらは速度で相手を上回っている。敵の中には馬に乗っている奴も数多く存在するが、我々の車両ばら振り切れるだろう。やつらの武器は車両の装甲を貫くことも出来んみたいだ。余程のことが無い限り攻撃は避けよ。ただし、自分たちの命に関わると思った時は迷わず交戦して良い』
菊池「了解しました」
島田「命に関わる場合か…………」
おおおおおおおおおお!
丸岡「……………!?車長!」
島田「どうした丸岡」
丸岡「11時の方向!新手です!」
島田「11時の方向だと!?」
自衛隊車両の進行方向からして11時の方向から新手と思われる騎馬隊が向かってくるのが見えた
島田「くそ!また敵が増えるのかよ!距離的にこのままだと鉢合わせしちまうぞ」
丸岡「車長…………」
島田「今度はどうした?」
丸岡「あの騎馬隊の掲げている旗………。見覚えありませんか?」
島田「旗?どれ………・」
突っ込んでくる騎馬隊の人数はおよそ500といったところだろう
その騎馬隊の兵士が背中に掲げている旗には三つ葉葵が描かれていた
島田「何だっけあれ?歴史なんて知らないがどっかで見たような……?」
丸岡「あれって………。徳川家の印じゃないっすか?」
島田「と…く…が…わ?」
今日はここまでっす
96式装輪装甲車(APC) http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%99%B8%E4%B8%8A%E8%87%AA%E8%A1%9B%E9%9A%8A%E3%81%AE%E8%A3%85%E5%82%99%E5%93%81%E4%B8%80%E8%A6%A7#mediaviewer/File:JGSDF_APC_Type_96_20120108-03.jpg
軽装甲機動車(LAV) http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%99%B8%E4%B8%8A%E8%87%AA%E8%A1%9B%E9%9A%8A%E3%81%AE%E8%A3%85%E5%82%99%E5%93%81%E4%B8%80%E8%A6%A7#mediaviewer/File:JGSDF_Light_Armored_vehicle_20120429-01.JPG
UH-60JA http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%99%B8%E4%B8%8A%E8%87%AA%E8%A1%9B%E9%9A%8A%E3%81%AE%E8%A3%85%E5%82%99%E5%93%81%E4%B8%80%E8%A6%A7#mediaviewer/File:JGSDF_UH-60JA_20090822-02.JPG
参考までにウィキペディアの画像
URLミスりました
全て同じページにしか飛びません
すみません
ついに徳川軍と遭遇&その認識か
乙です
タイムスリップものは西軍についてばっかりだけどたまには東軍でいいと思うの。
最新鋭の戦車と聞いて、キューマルから10式になったところに時代を感じるwww
>>95
読んで下さってありがとうございます!
>>96
自分は74式が一番好きなので、これから74式が退役してしまうことを考えるとちょっと寂しいです
今回、自衛隊がどのような形で関が原に関わっていくのかはお楽しみということで
96式装輪装甲車内・伊庭たち
伊庭「新手の騎馬隊が突撃してきているだと!?」
三田村「このままだと数十秒後に騎馬隊と接触してしまいます!」
伊庭「回避しろ」
三田村「しかし、騎馬隊を回避するには元々居た敵兵の隊列に突っ込まなくてはなりません。その場合、相手方に相当数の死者が出る可能性もあります。こちらも無傷では済まされません」
伊庭「……………」
加納「騎馬のスピードは40キロ程あります。いくら装甲されている我々の車両でも…………」
伊庭「…………緊急停止だ。後続の車両にも停止すると伝えろ」
三田村「了解。全車両停止せよ!」
騎馬との距離が200メートル程になったところで自衛隊車両は急ブレーキで停止する
キキッー
ガタンッ
矢野「うおっと」
伊庭「今の停止で負傷したものは居ないか?」
木村「全員無事です」
伊庭「車長。騎馬隊と敵兵の様子はどうなってる?」
三田村「騎馬隊はこっちと同じく停止。敵兵は攻撃を仕掛けてこなくなりました」
伊庭「攻撃を止めただと?」
三田村「はい。騎馬隊が停止すると共に攻撃を止めました。何ででしょうね?」
伊庭「騎馬隊………。馬に乗っている連中もやはり鎧武者か?」
三田村「はい。ですが、我々の周りに居る兵士よりも鎧や兜が立派です。特に先頭に居る奴」
伊庭「相手のボスかもしれん」
三田村「う~ん。あの旗って………」
伊庭「旗?」
三田村「騎馬隊が持ってる旗です。どっかで見覚えが」
加納「車長。あれですよ。水戸黄門のOPでデデーンって出で来る印。あれじゃないっすか?」
三田村「そうそう。それそれ」
操縦席の窓から騎馬隊の持つ三つ葉葵の旗印を見て加納は言う
伊庭「徳川家の旗印か。そうか………。やはりそういうことだったか」
三田村「そういうこととは?」
伊庭「後で説明する」
矢野「………………」
加納「!? 騎馬隊の先頭の何人かが近寄ってきます」
伊庭「攻撃の再開か!」
加納「いえ。何というか攻撃してくる気配はありません」
伊庭「この目でその騎馬を確認したい」
三田村「ちょっ!小隊長!?」
伊庭は近づいてくる騎馬隊を確認する為に装甲車の上部ハッチを開いて外に顔を出す
ガタッ
伊庭「あれか」
外では先程まで車両群に攻撃をしていた槍や刀を持った兵士が何故か直立不動の姿で攻撃をやめていた
騎馬隊のほとんどは300メートル程先で佇んでいたが、10ほどの騎馬だけが自衛隊車両に近づいてきている
木村「どうします?機関銃で威嚇射撃をしますか?」
伊庭「いや。やめておけ」
木村「しかし…………」
騎馬はさらに近づき、装甲車の目と鼻の先まで迫っていた
辺りはかなりの数の兵士が居るにもかかわらず、不気味なほど静まり返っている
松明や焚き火の炎がパチパチと音を立てているのがかすかに聞こえるだけだ
伊庭「初めての相手からのアプローチか」
騎馬隊の一人「それがしは徳川家康である!」
伊庭「!?」
自衛隊に近づいてきた騎馬隊のひとりである男が言う
男は50から60くらいの年齢に見え、その姿からは異様な雰囲気に包まれていた
家康「正信から話は聞いた。鉄の馬に鉄の鳥。連発銃。どれもこれも本当だったようじゃな」
伊庭「…………………」
家康「そこの鉄の馬の上にいるのが、おぬしらの大将か?見たところ、奇妙な格好ではあるが人に違いない。名を名乗れ」
自分のことを徳川家康と名乗った男は装甲車の上にいる伊庭を見ながら言う
木村「家康…………。ただのコスプレには見えない。あの雰囲気………。数々の死線を潜り抜けてきたのが分かる雰囲気だ。小隊長、どうするんです?」
伊庭「名乗れといってきたんだ。俺も名乗るのが道理というものだろう」
そう言うと伊庭は装甲車の上から降りて家康に近づく
その後に小銃を持った木村も続いた
伊庭「陸上自衛隊、第12旅団の伊庭義明1等陸尉です!」
家康「りくじょうじえいたい?」
スレタイキター
木村「自衛隊を知らない……のか」
家康「伊庭……義明。おぬしは何の目的でこの地に参って、戦に干渉した?」
伊庭「事故だったのです」
家康「事故?」
伊庭「我々は戦闘に参加するつもりはありませんでした。ただ、道に迷っていただけなのです。しかし、攻撃を受けたために反撃をしました。そのことで我々とあなた方に犠牲が出てしまったのは大変残念に思います」
家康「道に迷った………とな。とすれば、おぬしらは西の軍勢では無いと?」
伊庭「西の軍勢というのは良く知りませんが。あなた方の敵ではありません」
家康「ふむ………。道に迷っていたと言っておったが、どこから来たのじゃ?言葉もほとんど通じるから南蛮の者では無いと見たが………。このような鎧や武器をわしは見たことが無い」
伊庭「……………。我々の出身は………お答えできません」
家康「何と?」
伊庭「しかし、我々にあなた方を攻撃する意思は無い。我々はただ、通りがかっただけなのです!」
家康「攻撃の意思が無いと言う割には、武器は揃っておるようじゃが?」
見れば装甲車や軽装甲機動車から伊庭を守ろうと続々と隊員が出てくる
戦車もその砲身を家康に向けていた
伊庭「全員、攻撃するんじゃないぞ!」
家康「持っているのは鉄砲のようじゃが。火縄は必要としないのか?」
伊庭「我々の武器についても詳しくはお答えできません」
家康「…………………」
木村「小隊長。周りの敵が殺気立ってます。まずいです」
伊庭(完全武装の格好に、昼間の戦闘。敵では無いと信じてもらう方が難しいか………)
家康「…………。のう、伊庭よ」
伊庭「!」
家康「この家康にその凄まじき力を貸す気は無いか?」
伊庭「何っ!?」
今日はここまでです
>>102
ようやくスレタイの回収が出来ました!
嬉しいです
乙です!
こういう遭遇したときの対応とかがやっぱ面白いですよね!
なかなか面白い
家康「今一度問う。その凄まじき力をこの家康に貸す気は無いか?」
伊庭「なっ…………」
ザワザワ
雑兵「確かにあの者たちの力があれば東軍は無敵………。三成など恐るるに足らん存在となるぞ」
雑兵「しかし、あの鉄の馬に鉄の鳥…………。本当に人間の言うことを聞くのか?」
雑兵「あの奇妙な格好の連中は飼いならしておるぞ」
伊庭「………………」
伊庭(俺はもう我々がどのような状況に陥ったかを理解している。SF映画のような信じられない事が起こったのだと既に確信している。そう、タイムスリップだ)
家康「………………」
木村「小隊長……………」
矢野「………………」ガチャ
家康も他の兵士も、自衛官たちも伊庭の返事を待っている
伊庭(もし仮に我々が徳川家康の存在した時代にタイムスリップしたとするのなら…………。家康の問いに対する答えはNOだ。この時代の人間では無い我々が、この時代の人間に干渉して良いはずが無い。何よりも昼間のような戦闘にこれ以上関われば我々はもっと多くの人間を殺さなくてはならない。それに、我々にも犠牲が………)
伊庭「家康殿。残念ですが、そのお誘いは断らせていただきます」
家康「何と!この家康が頭を下げているというのに断るのか!?」
矢野「下げてねーじゃん。馬の上だし」
伊庭「馬鹿!矢野黙ってろ!」
矢野「いけね。口が滑っちまった」
家康の傍らの武士「無礼者が!」
家康「……………もう一度問うが………」
伊庭「何度言われても我々はあなたに力を貸すつもりは無い。無論、あなたの敵にもだ!」
伊庭(くそ………。返答次第ではやはり皆殺しだったか?だとすれば俺はここの部下を全員守らなければ………)
家康「何故、我々の軍のみならず三成の軍にも力を貸せないのじゃ?そんなに凄い武器を持っておりながら戦に参加しないというのはどういったことか?」
伊庭「我々の武器は確かに弓矢や刀よりも強力でしょう。しかし、これらの武器は全て自衛の為のものに過ぎません」
家康「じえい?」
伊庭「己を守るためのみに使用するという意味です」
家康「つまり、おぬしらは相手から攻撃を受けなければ戦わぬと?」
伊庭「そうです」
家康「………………。ハッ!腰抜けどもが!」
伊庭「……………」
矢野「……………チッ」
家康「攻撃されぬと戦もまともに出来ない者たちとは………。おぬしらの武器は宝の持ち腐れじゃ」
伊庭「確かに。我々は攻撃されないと戦をすることが出来ません。ですが、家康殿。あなた方の軍勢は既に我々に攻撃を仕掛けている。このことが何を意味するか理解できますか?」
家康「!?」
伊庭「我々は人数こそ少ないが強力な武器を持っている。あなた方が持つ武器よりも遥かに優れた武器を」
家康「…………ふん。その武器で徳川10万の兵を全滅させることが出来るのか?」
伊庭「不可能でしょう。しかし、戦とは敵の大将を倒せばよいという簡単なものです。そして、我々の持つヘリ……鉄の鳥や鉄の馬を使えば敵の大将など糸も容易く倒すことが出来るのですよ?」
家康「……………。やはり、おぬしは敵か!」
伊庭「いえ。先程申し上げた通り、あなた方が我々に攻撃してこない限り、我々はあなた方とは戦いません。それが自衛隊です」
家康「………………」
伊庭「ただし、家康殿。あなた方が自分の部下に傷一つでも付けてみろ。そのときは全力であなたを殺す!」
木村「…………小隊長」
矢野「……………頼もしいじゃねえか」
家康「……………なるほど」
伊庭「理解していただけたか?」
家康「おぬしが部下を大切にしておるということは良く伝わった。わしも大勢の部下を持つ者として理解できる」
伊庭「家康殿………」
家康「しかし、ふたつ気になることがある」
伊庭「何です?」
家康「わしらが武器を持つ理由は戦で勝つためでもあるが、何よりも国の民を守るためじゃ。じえいたいは己の命を守るためのみに武器を持っておるのか?」
伊庭「我々も守るべき民がいるのです」
家康「そうか。ではもうひとつ問おう」
伊庭「何でしょう?」
家康「今よりもずっと後の世。誰もが平和に暮らせる太平の世は来ると思うか?」
伊庭「!?」
伊庭(まさか、家康は………。我々が何処から来たのか気付いて!?)
伊庭「来ます。必ず来ます。いえ、あなたが是非とも太平の世を作って下さい」
家康「ふっ。成る程。それを聞けてよかった。任せよ。必ず太平の世を作ろう」
家康の言葉に自衛官たちはもう戦闘が起こることは無いと安堵する
それは伊庭も同じであった
もう家康の目から敵意は消えている
家康「正信!正信はおるか?」
正信「ここにおります」
集まっていた兵士の中から馬に乗った本多正信が出てくる
家康「これより予定通り関が原へ向かう。そこで三成と決着をつけるぞ」
正信「はっ。して、あの者たちは?」
家康「放っておくが良い。わしらが関わるべき存在では無い。それより、各武将へ家康が関が原へ向かうと伝えよ」
正信「かしこまって候」
家康「それと小早川の件じゃ。わかっておるか?」
正信「勿論です」
家康「よし。では向かうぞ。伊庭義明!さらばじゃ」
伊庭「はい。家康殿もどうかご無事で」
家康「ご無事で………か。まるでわしの味方みたいじゃな。ははははははは!」
伊庭「はは………」
そう言って家康は自衛隊車両から離れていく
本多正信も、騎馬隊も、元々居た兵士たちもそれに続く
木村「徳川……家康ですか。とにかく俺たちは助かったってことだよな?」
矢野「いや。一難去ったようだが、課題は多く残ってるぞ。夢だと思い込みたいが、どうもこれは夢では無いみたいだしな」
伊庭「ああ。どうやって元の時代に………………」
ザザッ ザザザッ
伊庭「?」
木村の担いでいた携帯無線に突如、通信が入る
無線『伊庭1尉!こちらヘリの清水です!緊急事態です!』
伊庭「どうした?」
清水『また新手が現れました!旗や格好から察するに、今居る軍勢とは敵対関係にある軍勢かと思われます!』
伊庭「何!?」
清水『どうも森の向こう側に潜んでいたようで…………。今居る軍勢に奇襲を仕掛けるつもりのようです』
伊庭「距離は?」
清水『あと数分でここに達する距離です。木々のせいで地上に居る1尉たちからは死角になっていますが』
おおおおおおおおおお!
森の向こう側から歓声のような音が聞こえてくる
伊庭「木村!家康は!?」
木村「既に馬で向こうへ行ってしまいました。えっと………。あそこです2時の方向」
2時の方向、数百メートル先に家康の姿が見える
伊庭「木村。装甲車を出せ!家康の命を救うぞ!」
木村「え?あっ。はい」
伊庭「くそっ!清水!敵は今何処に?」
清水『もうじき伊庭1尉の位置からでも目視できる位置に到達します!』
伊庭「はやい!このままでは…………」
矢野「小隊長!装甲車に拡声器がありました!これで敵襲を家康たちに伝えましょう」
伊庭「頼んだ!」
矢野は装甲車の上に仁王立ちになり拡声器で、もうかなり遠くへ行ってしまった家康に呼びかける
矢野「いえやすうううううううううう!敵だあああああああああ!敵襲だああああ!森の向こうだ!」
矢野の声に家康とその周りに居た兵士たちがこちらを向く
清水『…………!?。新手の軍勢が止まった?これは!』
伊庭「どうした!?」
清水『新手の軍勢が弓矢による攻撃を行おうとしています!』
伊庭「!?」
清水『放ちました!矢が飛んできます!』
ヒュンヒュンヒュンヒュン
聞きなれてしまった空を裂く音が伊庭達の耳にも届く
月と松明の光に照らされて、飛来してくる無数の矢が目に入る
伊庭「総員!車両に退避!矢野も中に入れっ。それと同時に装甲車を発進させて家康を救出だ!」
伊庭達自衛官が車両に入ると共に矢が地上に到達する
カンカンカンカンッ
車両に矢が当たり、金属音が響き渡る
無論、小銃弾くらいなら弾くことのできる装甲車や戦車は無傷だった
しかし、
雑兵「ぎゃあああ」
雑兵「いてえええええ!」
雑兵「奇襲とは卑怯なああああ!」
外の武者たちは平気なわけも無かった
そして、それは家康とて例外では無い
矢野「小隊長…………。あれって」
伊庭「どうした!?」
矢野「家康が………」
伊庭「!?」
装甲車の側面に付いた窓(無論、防弾ガラス)から伊庭は外の様子を見る
飛来した矢によって多くの兵が倒れる中、伊庭は家康の姿を発見した
伊庭「なんてことだ…………」
家康「ぐっ……がはっ」
正信「殿!?」
家康の首を一本の矢が貫いていた
今日はここまでです
!!?
なんてこったい
伊庭「家康が………」
矢野「くそっ………。どうします?」
伊庭「家康を助けるぞ。今ならまだ助かるかもしれん…………」
木村「無理です。見てください」
伊庭「……………」
木村「喉を矢が貫通しています。ここからでも見て分かりますが、既に息をしていないかと………」
伊庭「まだ………可能性は」
おおおおおおおおおおおおおおお!
伊庭「!?」
三田村「新たに出現した軍勢が家康の軍勢と衝突。戦闘が開始されました」
見れば新たに出現した軍勢(旗印から、県の言うとおりなら島左近の軍勢と思われる)が家康の騎馬隊や元々居た正信たちの軍勢と戦いを始めている
槍で突かれ、刀で切られ、次々に兵士が倒れていった
伊庭「家康は!?」
木村「一気に兵がなだれ込んできて目視が不可能になりました!」
伊庭「突入せよ」
矢野「正気ですか!?小隊長!今ここで突入したら我々はまた人を殺すことになる。それどころか我々にも犠牲が出る!昼間の戦闘みたいに。俺たちはこれ以上関わってはいけないんだ!この戦に」
伊庭「だが、家康は………」
矢野「目を覚ませ!伊庭1尉!」
伊庭「!?」
矢野「家康はもう死んだんだ!仮にまだ息があったとしても、喉を矢が貫通してるんだぞ。最新の医療を持ってしても、助けることは困難だ。まして我々の小隊が持っている医療器具や医薬なんて注射器とモルヒネが精一杯だ。あの乱戦の中に突入して、虫の息の家康を救い出してどうするつもりなんだあなたは!」
伊庭「……………」
カツンッ カツンッ
コノバケモノメー
新手の兵は自衛隊車両にも群がってきて、槍や刀で車両を攻撃する
矢野「外を見てみろ。どこから矢が飛んでくるかも分からない状況だぞ。そんな中に突入したらどうなるかなんて分かってる。俺はこれ以上、部下の死ぬのを見たくはねえんだ!頼む小隊長。これ以上、戦に関わろうとしないでくれ!」
伊庭「矢野………」
矢野「…………頼みます。小隊長」
他の隊員も不安そうな顔をしながら伊庭を見ている
みんな仲間が目の前で血を噴き出して死んでいったのを目撃しているのだ
伊庭「分かった。これより戦線を離脱する。加納、全速力でこの場を離れろ。ベースに敵兵を導くわけにはいかない。騎馬だろうが何だろうが絶対に振り切れ。いいな?」
加納「了解!」
伊庭「木村。戦車に無線連絡」
木村「はっ」
慣れた手つきで木村は無線を弄り、戦車と通信を開始する
木村「つなげました」
伊庭「こちら伊庭だ。聞こえているか?」
無線『こちら戦車の島田。何でしょう?』
伊庭「これより戦線を離脱する。が、敵兵に周りを囲まれていて思うように動けん。戦車の主砲で威嚇射撃を1回行い、敵兵を怯ませる。怯んだところで全速力で離脱したい。やってくれるか?」
島田『は。命令とあれば………』
無線越しの島田の声は少々困惑していたように思える
伊庭「では主砲、射撃用意」
10式戦車の主砲は120mm滑腔砲という
滑腔砲とはライフリングの無い砲のことだ
その主砲の威力は発射薬などを最適化した10式120mm装弾筒付翼安定徹甲弾を用いた場合に548mm貫通可能とされている
戦車砲は発射の衝撃や音なども小銃をは桁違いの大きさであり、火縄銃程度の火器しか知らない“戦国時代の兵士”にとって、戦車砲の射撃はかなりの恐怖をもたらすものとなるだろう
伊庭「人にはあてるな。人気の無い森を狙え」
島田『了解』
10式戦車の砲塔が回転し、その主砲の先を少し離れた森へと向ける
10式戦車によじ登って槍で戦車を攻撃していた兵はこれによって振り落とされてしまった
また、周りの雑兵も突如回転した戦車に驚きを隠せないでいる
島田『主砲、給弾完了。発射準備よし』
伊庭「主砲、撃ち方始めっ!てえええええええ!」
ドオオオオオオオオオオオオオオン
伊庭の合図と共に主砲から火が噴き出し、轟音が辺りに響き渡る
衝撃はで主砲周囲に居た人間が何人か吹き飛んでしまった
なるべく殺傷を避けたかった伊庭だが、この衝撃波と発砲煙で何人かは犠牲となってしまっただろう
雑兵「ぎゃああああああ!」
雑兵「雷か!?地震か!?」
雑兵「ちがう!あの鉄の馬が火を噴いたんじゃ!」
家康側の軍勢も、新手の軍勢もあまりの音に耳を塞ぎ、恐怖から多くの者がしゃがみこんでしまっていた
雑兵「ひいいいいい」
戦車から発射された弾は見事に森に命中し、何本かの木を吹き飛ばし、少しばかり草を燃やした
伊庭「兵たちが怯んで道が開けた。今だ!全車両発進!」
加納「了解!」
兵たちが怯んで指揮系統も乱れ、混乱している中、自衛隊車両は全速力で離脱を開始した
グオオオオオ グオオ キュラキュラ
雑兵「鉄の馬がどこかへ去るぞ!」
ババババババババババ
ヘリも車両に続いて離脱を開始する
雑兵「鉄の鳥もじゃ。何だったんだ一体………。あやつらは何者でどこへいくのじゃ?」
こうして自衛隊は本日2度目の戦線離脱をした
自衛隊が戦線離脱をする少し前、東軍の軍勢のひとりである中村一栄の家老である野一色助義が西軍の軍勢によって討ち取られていた
西軍は自衛隊が戦車奪還を開始するよりも前に、戦車と東軍の中村・有馬隊が居る場所を見つけ出し、奇襲を企てていたのだ
自衛隊が現れたことで杭瀬川の戦いの昼間の部は引き分けという史実と異なる結果となってしまっていたのである
しかし、歴史には修復力があった
西軍は島左近に加え、宇喜多家の明石全登が西軍部隊に合流し、増強された部隊での奇襲を決行
そして奇襲は成功し、史実とは少々異なった形ではあるが、杭瀬川の戦いを西軍は勝利した
杭瀬川の戦いで西軍が勝利するのも、野一色助義が討ち取られるのも史実通りである
つまり、歴史による修復力が正常に作動したのだ
ただ、ここで再びイレギュラーが発生する
自衛隊の2度目の介入だ
自衛隊の介入によって昼間同様に再び、歴史が狂ってしまったのである
その結果が………
正信「殿おおおおおおおおおお!」
家康「」
家康の死亡であった
家康の死亡は本田正信の尽力によって西軍に知られることは無かったが、味方の武将には噂としてではあるが知られることとなった
あくまで噂として広がったのではあるが、家康の軍が何やら慌しく、ただならぬ気配を察した武将たちはその噂が本当なのでは無いかと疑った
そして、西軍と東軍どちらにも属さない小早川秀秋をはじめとする何名かの武将にもこれが伝わり(家康の策略でこれらの武将と東軍は少なからず繋がっていたため)、彼らは西軍側に付く決心を固めつつある
これらのゴタゴタで関が原の戦いは9月15日に開戦のはずが、延期する可能性もあった
バタフライ効果というものがある
初期のわずかな変化が思いがけない方向へ発展してゆくことで、アメリカで蝶が羽ばたきによって起こした微弱な風が、太平洋で台風になる可能性もあるといったものだ
歴史においても同様のことが起きる
自衛隊の一個小隊という小さな存在によって、歴史は徐々に徐々に史実と変わり始めていたのだ
少しずつ少しずつ
しかし確実に………
おつでっせ
自衛隊・宿営地
戦線を離脱した伊庭達は木々に覆われたベースへと戻ってきていた
現在は幹部による会議が天幕の一つで行われている
小隊長である伊庭と副官の矢野を中心に県3尉、空挺隊員の島2尉と同じく空挺隊員の望月3尉、ヘリの操縦士である清水2尉と副操縦士の山田3尉といった幹部の面々に加えて、戦車の車長である島田と先任曹長の木村が会議に参加していた
航空部隊と空挺隊員、それに戦車の乗員は伊庭の直接の部下では無いが、現状では伊庭が最も階級が上の人間である為に全隊員の指揮官と一時的にではあるが、なっている
この会議に参加していない隊員には現在、装備の点検・整備および残弾確認などをさせていた
伊庭「もうここに居る隊員は分かっていると思うが、我々は平成では無い別の時代へとタイムスリップした」
一同「………………」
伊庭「昼間の戦闘で俺は我々が別の時代へタイムスリップしたか、あるいは、あの鎧武者たちが我々の時代にタイムスリップしたかのどちらかの現象が起こったと考えていた。しかし、本隊への通信不能やGPSの使用不能、周囲に近代的な建物が全く無い事等から、前者が正しいと判断した」
清水「ヘリから見た限りでも周りには高圧電線の1本すらない」
木村「先程、何名か偵察を派遣しましたが、あるのは原始的な集落のみです。自分も我々がタイムスリップしたとしか思えません…………」
伊庭「14名の犠牲者が出て、そして我々も殺傷をした。夢であって欲しいが、これも全て現実だ」
矢野「部下たちもタイムスリップしたことに気付いてるだろ。今は与えられた仕事をして気を紛らわしているが、その内、発狂しだす奴も出てくるかもしれない。どうにかして部下を安心させないといけない」
伊庭「ああ。その通りだ。その為にも、“例の件”は部下には秘密にしておくべきだと俺は思う」
県「家康が………殺された件ですか?」
伊庭「そうだ。家康が殺されたことを部下に話したところで余計に彼らを混乱させるだけだ。今は話すべきでは無い」
県「そうですね」
島「もし仮に家康が死んだとしたら歴史はどうなるんだ?というか家康が居たってことは今は戦国時代なのか?」
県「はい。正確に言えば今は1600年9月14日ということになります」
島「日付まで分かるのか?」
県「昼間の戦闘は杭瀬川の戦いという戦で、1600年9月14日に行われた戦なんです。もっとも、9月14日という日付は旧暦なのですが。ヘリのジャイロで判明した現在位置と鎧武者の持っていた旗印から杭瀬川の戦いで間違いないと思われます」
矢野「その戦いは西軍の勝利だよな?」
県「そうです。杭瀬川の戦いは関が原の戦いの前哨戦で、島左近率いる西軍部隊が東軍に勝利する戦でした」
矢野「だけど、その戦で家康が死ぬことは無かった。つまり歴史が変わったということか。俺たちのせいで」
県「そもそも杭瀬川には家康も本多正信も参加していません我々があの場所に現れたことで全ての歯車が狂い始めてしまったのでしょう」
伊庭「県。関が原の戦いは何月の何日に始まるんだ?」
県「史実通りなら9月15日。あと数時間で始まると思われますが、こうなってしまうと史実通りに始まるかは分かりません」
伊庭「東軍は家康不在のまま戦うことになるのか」
県「あるいは家康の影武者をたてるか…………」
島田「あー少しいいか?俺は歴史にあんま詳しくないんでね。関が原の戦いは知っているが、東軍とか西軍とかはわからないんだ。少し詳しく教えてもらってもいいですか?」
伊庭「そうだな。俺も関が原に詳しくは無い。県、詳しく説明してくれないか?」
県「関が原の戦いというのは~以下略~というものです」
島田「つまり、秀吉が死んだあと家康と石田三成が天下を取り合って戦ったって訳か。んで東軍が家康、西軍が三成。合戦は最初は西軍優勢だったが、小早川秀秋をはじめとする何人かの裏切りによって東軍が勝ったと………」
県の説明で島田をはじめとする何人かの隊員が納得したようにうなずく
どうも歴史に詳しくない隊員が多かったらしい
伊庭「我々が置かれている現状が分かったところで、我々のこれからの行動を決めたい」
一同「………………」
伊庭「まず、我々が最優先とすべきことは現代へと帰ること、そして、その帰る日まで隊員に犠牲者を出さないことだ」
島「帰るといっても帰れる日がいつ来るのかは不明で、しかも帰れる日が来るとも限りませんが………」
伊庭「確かにそうだ。もし、タイムスリップが地震のようなもので、揺り戻しが起こって帰れる日が仮に来たとしても、それが今なのか1年後なのかは分からない。ただ、その帰れる日が来るのを待つくらいしか今の我々に出来ることは無いんだ」
木村「一応、我々がタイムスリップした“あの場所”は定期的に監視出来るようにカメラをセットしておきました。再びあの濃い霧が発生したのならすぐにでも現場に向かえます」
県「再びタイムスリップが起きる、つまり揺り戻しが起きるようにするには我々が少し狂ってしまった歴史を修復する等、歴史に干渉してみてはどうでしょう?」
矢野「却下だ」
県「しかし…………」
矢野「歴史に干渉等すべきでは無い。タイムパラドックスの原因になる」
島田「たいむぱらどっくす?」
矢野「例えばこの時代で俺の先祖となる人間を殺したら、俺は未来で生まれなくなるだろ?そうすると、在るべきだった未来が変わってしまうんだ」
島田「へえ」
矢野「俺たちは昼間の戦闘で多くの人間を殺した。おそらく彼らの中には平成で生きている人間の先祖も含まれて居ただろう。ということは俺たちが居た未来の世界も大きく変わってしまった可能性がある」
島「変わるとどうなる?」
矢野「未来が変わるということは、平成で生きていたはずの人間が居なくなるということだ。最悪、未来が変わって、俺や俺の家族が生まれなくなる……ということだってある。この時代の人間を殺すということは俺たちの居た時代の人間を殺すことにもなってしまうかもしれないんだ」
島「…………なるほど」
矢野「だからこの時代の人間は無闇に殺すことは出来ないし、干渉することも出来ない。我々がこの時代に干渉すれば未来が変わってしまうかもしれないんだ」
伊庭「矢野の言うように我々はこの時代の人間とは一切関わらない」
県「しかし、関わらないとは言っても……無理があります」
矢野「なに?」
県「我々の物資の中でも食料は特に少なく、生き残るためにはこの時代の食料を確保するしかありません。その場合、この時代の人間と関わらなくてはならなくなります」
伊庭「それももっともな意見だ。食料に関しては近くの集落から調達することも考えているが、その場合はこの時代の人間に扮した格好でないといけないな」
木村「ハンバーグもカレーも当分食えないのか…………」
望月「やめろ……絶望的な気分になってくる」
伊庭「それと我々の装備もなるべく使用は避けたい」
島「昼間みたいに攻撃された時もですか?」
伊庭「いや。隊員の命は最優先だ。襲撃があった場合は銃器の使用を許可する。しかし、火砲や車両の類はなるべく使用を避けたい。燃料弾薬の補給が無く、節約することが必要なのもそうだが、この時代の武将が我々の武器を見たら絶対に欲しがるはずだ。そうなるとまた事態がややこしくなってしまう」
矢野「我々の武器欲しさに近寄ってきて、最悪、奪おうとして攻撃してくるかもしれないからな」
伊庭「そういうことだ。良いか?我々の部隊の任務は今でも国民の生命を守ることだ。つまり、この時代の人間を殺傷して、未来の我々の守るべきだった国民の存在を消すようなことがあってはならないのだ」
その言葉にその場にいた全員が頷いた
その後、会議で話された内容は家康の死亡以外は全て全隊員に伝えられた
ベースの周りにはセンサーとカメラを設置し、さらに歩哨をつけることで襲撃への備えも万全とした
伊庭たちが会議をしている間に確認が終わった残弾と燃料の数は以下の通りである
燃料… ヘリ、車両が1週間行動できる程度
弾薬… 小銃用5.56ミリが1万5000発、12.7ミリが1200発、迫撃砲弾が80発、携帯型対戦車弾が23、対戦車誘導弾が12、その他9ミリ弾や7.62ミリ弾、指向性散弾や手榴弾が若干
食料は3日程度しか無く、医薬もほとんどを昼間の戦闘で使い切ってしまっていた
また夜に来ます
弾薬少なっ
こりゃだめだな
どうなるやら
1600年9月15日 早朝
伊庭の命令によって根元3曹をはじめとする3名が軽装甲機動車に乗って関が原へと偵察へ来ていた
目的は関が原の戦いが史実通り9月15日に行われるか調べる為である
ヘリを使用すれば偵察も速やかに終わったのだろうが、燃料の節約と、昼間からヘリを飛ばすのはあまりにも目立ちすぎるということから車両による偵察が行われた
現在、偵察隊員は関が原の戦いでは家康が布陣する桃配山付近に居る
根元「こちら偵察の根元。現在位置は地図上で見る限りだと岐阜県不破郡関ケ原町と思われます」
無線『こちらベースの伊庭だ。付近に軍勢が居る様子はあるか?』
軽装甲機動車車載の無線で偵察隊はベースに居る伊庭と連絡を取っている
根元「いえ。これといって人の気配はありません。自分たちは結構な高さで見晴らしも良い岡の上に居るんですが、全く戦の気配が感じられませんね。閑散としています」
伊庭『桃配山には家康の陣も無いか?』
根元「今から桃配山に登りますが、今のところ陣が置いてある気配はありません」
伊庭『了解。万が一、敵襲の恐れもあるから気を付けてくれ。危なくなったらすぐに逃げろ。良いな?』
根元「了解」
そう言ってから根元は無線を一端置いた
根元「平井、今から桃配山に登るぞ。須賀は車に残って車の警備をしろ。何かあったらすぐに無線で………」
須賀「ちょちょっと、ままま待って下さい。こんなどこから敵が出てくるかも分からないところに自分ひとり置いて行くんですか!?」
須賀士長が慌てて車から飛び出してくる
彼は元々気の弱い性格でもあり、先日の戦闘でも車両の中でずっと脅えていた
伊庭は彼を偵察に出すことを少々悩んだのだが、人手不足から仕方なく偵察隊員に彼を選ばざるを得なかった
根元「おいおい。LAVは一応カモフラージュしてあるし、装甲車両だ。万が一見つかってもこの時代の武器じゃ傷一つ付けられやしないって」
現在、軽装甲機動車は草や枝でカモフラージュをしており、遠目から見たらソレが車両であることすら分からないだろう
ちなみに根元も須賀も昨晩、ここが戦国時代であるということを伊庭から伝えられている
その際、家康が死んだことは伏せられたが、自衛隊の戦への介入によって多少歴史が変わってしまったとだけは伝えられていた
須賀「ですが!こんな……森の中に一人で居たらどうにかなってしまいそうで………。ただでさえ、こんな状況になって気が狂いそうなのに…………余計に」
根元「分かった分かった。平井、頼めるか?」
平井(3曹)「おうよ。気をつけて行って来いよ?」
根元「おう。須賀、偵察に行くならちゃんと小銃は持って来い」
須賀「はいっ!」
こうして根元と平井が桃配山に登ることとなった
無論、二人ともボディアーマーを付け、全身擬装してである
~十数分後~
根元「この辺りが山頂か。あそこなんかは空き地になっていて陣地が築けそうだな」
須賀「は……はい」
桃配山の山頂
根元と須賀は敵に遭遇することも無く、無事に目的地までたどり着いていた
根元「周りは至って普通の森。空き地には足袋?の跡があるな。やっぱここに家康の陣があったってことか」
須賀「根元さん………。なんかヤバイ雰囲気ですよ。場所も確認できたことですし帰りましょうよ…………」
根元「っつってもなあ。陣地を離れた場所に移したって可能性もあるからちょっと離れたところまで調べておくぞ」
須賀「そんなぁ」
今日は昨日とは打って変わって晴天である
秋晴れの空の下、山の中の探索をするのは気持ちが良いものだ
登山を趣味としていた根元は少し機嫌が良かった
彼は元々の性格から戦国時代に来ても不安や恐怖も感じることは無く、むしろ楽しんでいるようにも見える
タイムスリップしたこの一件も、元の時代に帰ってから酒のネタにしようと考えている最中だった
そんな彼を彼の上官はこう評価する
“緊急事態の時も一切テンパることが無く、訓練通りに事をこなす凄い奴だ。だが、その能天気な性格が命取りとなることもある”
そう
彼は今、任務の真っ最中であるということを少しばかり忘れていたのだ
ガサッ
須賀「!?」
根元「ふんふんふ~ん」
須賀「根元さん。今、草むらから音が………」
根元「お前はいちいち気にし過ぎだって。山の中じゃ蛇もタヌキもリスも珍しくはないぜ?一々気にしてたらキリがない」
須賀「しかし…………」
根元「そんなことより見ろ!青い空!白い雲!そして木漏れ日!う~ん。気持ちが良い」
ガサッ
須賀「!!!」
根元「♪」
ヒュンッ
カーンッ
根元「うおっ!」
須賀「うわあああ!」
のんきに山登りを楽しんでいた根元の背中に森の中から手裏剣が飛んでくる
根元はボディアーマーをつけていたために手裏剣は弾き返された
根元「敵襲か!それにこれは手裏剣じゃねーか!」
須賀「ど…どこから!?」
のんきだった根元が一瞬にして真剣な顔になる
須賀も持っていた89式小銃を森に向ける
根元「出て来い!そこに居るのは分かってるんだ!」
須賀「…………ゴクリ」
ガサッ ガサッ ガサッ
根元「!?」
???「手裏剣を弾き返す鎧に、その手に持っておるのは噂に聞く連発銃か?」
森の中からひとりの男が出てくる
その格好は足軽や鎧武者とは異なっていた
根元「俺たちのことを知っているのか?」
???「存じておるとも。今、内府はおぬしらの話でいっぱいよう」
根元「その格好……。忍者か?」
???「ほう。よくぞ分かったの」
須賀「戦国時代の忍者って………。服部半蔵とか?」
???「おお!わしのことを知っておるのか!」
根元「何?」
服部半蔵「わしこそ伊賀の服部半蔵よ!」
乙乙
おつー
根元「ハットリ君かよ!でもアニメと違って何かただのおっさんってかんじだな」
須賀「どうします?忍者ってレンジャー部隊くらい強そうなんですけど」
半蔵「関が原に鉄の車が走っているのをわしの仲間の忍びが見つけてな。もしやと思い、布陣予定だったここへ来てみればおぬしらが居たんじゃ」
根元(何だこいつ。全く隙が無い。それに明らかに強そうなオーラが出てる)
半蔵は森の中から根元たちの居る空き地に出てきたのだが、動きひとつひとつに全く無駄が無い
根元と半蔵の距離は10メートルも無い
この距離なら確実に銃弾を命中させることも出来る
しかし、何故か今の根元は近づいてくる半蔵に銃弾を命中させることが出来ないように思えていた
半蔵「殿が布陣する予定だったこの場所を何故おぬしらは知っておる?おぬしら東の味方でも西の味方でも無いと申したようじゃが、それなら関が原で戦が行われることすら知らなかったのではないか?」
根元「いやぁ………。道に迷っただけっすよ。ははは。偶然だなぁ」
半蔵「わしは随分前からおぬしらの後をつけておったが、おぬしらの会話の中に殿の名前が何度も出てきていたぞ?」
根元「マジかよ!って。ストーカーじゃん」
須賀「ストーカーなんてこの時代の人が分かるわけ無いですよ………」
半蔵「もしも、おぬしらが西軍の者なのであれば、わしはここでおぬしらを始末せねばならん」
そう言いながら服部半蔵は刀を抜く
根元「俺たちは西軍の手先じゃねえ。その刀で俺たちに攻撃して来ようものなら、俺の持ってるこの銃でお前を撃ちぬく」
根元は銃口を半蔵の心臓の辺りにしっかり向ける
根元「須賀。こいつがひとりで来たとは考え難い。他にも敵が潜んでいるかもしれない。周囲を警戒しろ」
須賀「は…はい」
半蔵「ふむ…………。おかしなものよ」
根元「何が?」
半蔵「おぬし。本当に武人か?」
根元「ぶじん?」
半蔵「何と言うかのぅ。おぬしは人を殺すことに慣れていないと思うのじゃ。目が人を殺める事を恐れている」
根元「……………」
半蔵の言っていることは正解だった
根元は人を殺すことはおろか、銃口を向けることにも恐れを抱いている
それは根元だけではなく全自衛官に同じことが言えるだろう
根元にとっての実戦は昨日の戦闘だけだ
その戦闘で彼は多くの人間に銃弾を浴びせたのだが、その時の光景が一瞬にしてフラッシュバックする
機関銃の弾を受けて倒れる兵士………
爆発に巻き込まれて炎に巻かれる人間………
絶叫と血と人肉の焼ける臭い………
タイムスリップという非現実的な現象を楽しんでいた根元だが、その楽しむという考えは昨日の生々しい戦闘を一時的に忘れるためのものであったと知る
根元「…………!」
根元の銃を握る手は震えていた
半蔵「心配せんでも、わしは今一人で来ている」
根元「そう簡単には信じられないんだが?」
半蔵「そもそもわしはおぬしらを殺しに来たのでは無いんじゃ」
根元「じゃあ一体何故、俺たちに接触してきた?」
半蔵「佐渡殿(本多正信)の命でな。おぬしら“りくじょうじえいたい”とやらの居場所を見つけよ、とのことだった」
根元「俺たちを探していたってことか。一体何のため?」
半蔵「殿が昨日、命を落としたことは知っておるだろう。殿の死は家老と一部の武将のみに伝えられて極秘にされたのじゃが、どこからともなく殿が死んだという噂が流れ始めてな。それで東軍は今、大混乱というわけよ」
根元「それに俺たち自衛隊が関係するのか?」
半蔵「この戦いでは小早川をはじめとして脇坂や赤座など、どちらの軍に就くか決断しておらん勢力が多々存在する。それらの軍がどちらに就くかによって勝敗が変わると言っても決して間違いでは無いのじゃ。そこで殿はそれらの軍勢に働きかけをしておったのじゃが…………」
根元「家康が死んだという噂によって、彼らは西軍に就く決断をしてしまったと…………」
半蔵「そうじゃ。彼らでけでは無い。以前から殿に忠義を尽くしておった武将も心変わりしておる。義……とは何だったのかのぅ………。義、というものに関しては東よりも西のほうが強いのかもしれん」
根元「……………」
半蔵「このままでは東軍は内部から崩壊してしまう。敗戦は目に見えているのじゃ。しかし、そこでおぬしらの存在を思い出したのよ。おぬしらの凄まじい力は東だけでなく西でも噂になっておる。現に目撃した武将もおることじゃし」
根元「我々の力を貸して欲しいのか?」
半蔵「おぬしらが戦に関わりたくない事は佐渡殿からも聞いておる。おぬしの様子を見れば分かるが、臆病というよりも、戦そのものが嫌いみたいじゃしな」
根元「ああ。我々は戦争を好まない。戦争が起きない為に我々が抑止力として存在しているのだからな」
半蔵「抑止力。そう。それよ。別におぬしらに戦に参加せよとは言わん。ただ、東軍の見方をした……という事実のみが欲しいのじゃ。“じえいたい”が味方につけば東軍は心強い。西軍に鞍替えしようとしていた者達も、“じえいたい”が御味方になるのならば足を踏み留めるであろう」
根元「………。俺たちの存在そのもので士気を高めるのか………」
ちょいと離脱
うわっ
誤字ってる
見方→味方 です
半蔵「そうじゃ。一瞬にして多くの兵を倒す鉄砲、大地を吹き飛ばす大きな鉄砲、空飛ぶ鉄の鳥に地を駆ける鉄の馬。それらが味方についているという事実だけでも兵の士気は上がるのじゃ」
根元「なるほど。言いたいことは良く分かった。だけど、俺は部隊の指揮官……えっと、あんたたちの言うところの殿では無いから、俺の判断だけで東軍の味方をするという決断は出来ないんだ」
半蔵「ではおぬしらの大将のところにわしを連れて行って欲しい」
根元「……………」
隊の方針としてはベースキャンプに現地人(戦国時代の人間のことを自衛隊はそう呼ぶことにしていた)を連れ込むことは禁止となっていた
歴史に必要以上に関わらないためである
近隣の村に食料を調達しに行く場合も現地人に跡をつけられたりしない様に細心の注意を払えとのことだった
根元「無理だ。あんたを仲間のところには連れて行けない。それが大将からの命令でね」
半蔵「まあ良い。こっちが勝手におぬしらの跡をついていけば良いだけであるしな」
根元「なっ!」
半蔵「何か問題でもあるのか?」
服部半蔵はニヤっとして言った
元々、根元たちの跡をつけるつもりだったのだろう
根元「…………しょうがねぇな。須賀、スタングレネード持って来てるだろ。あれ使ってこいつを撒くぞ」
須賀「で…ですが、閃光発音筒は数が少なく貴重な為に使用は緊急時のみだと小隊長が………」
根元「今が緊急時だ。自衛隊を甘く見てるこいつに現代流の忍法ってのを見せてやれ」
須賀「了解」
須賀の言った閃光発音筒というのはハイジャック等の事件の際に警察の特殊部隊が使用しているスタングレネードのことである
殺傷を目的とした手榴弾と違ってこの武器は爆発時の爆音と閃光により、付近の人間の視覚と聴覚を一時的に奪うことを目的としている
要は大きい音と凄まじい光を出す爆弾と言うところだ
半蔵「?」
須賀は持ってきていた閃光発音筒を取り出す
半蔵は須賀が手に持ったその特殊な手榴弾をもの珍しそうに見ていた
須賀「いきますよ。根元さん用意は良いですか?」
根元「おう」
閃光発音筒(スタングレネード)はそれを使用する者にも効果が及ぶ為に耳栓をしたり目を光から守らなくてはならない
須賀「くっ………」
須賀は安全装置のピンを引っ張って抜き閃光発音筒を半蔵へと投げる
それと同時に須賀も根元も目を閉じて耳栓をしながら半蔵とは反対の登ってきた道へと走り出した
カッ
半蔵「ぐああああああああ!」
爆音と閃光が半蔵の目と耳を襲い、彼はのた打ち回る
殺傷兵器では無いものの、その爆音と閃光は心臓病患者をショック死させる程度の威力がある
蛍光灯やLEDの光すらも知らないこの時代の人間にとって、その威力は計り知れないものがあった
根元「走れ走れ!LAVまで全力疾走だ!」
須賀「耳がキーンってなってます。やっぱあんなの使いたくなかったです!」
根元と須賀は全力で軽装甲機動車が隠してある桃配山の麓まで走る
もともと桃配山は標高が104メートルしかない
全力で走ればあっというまに麓まで到達できる
根元「見えた。あそこだ。カモフラージュしたLAVが見える。おーい!平井いいいいい!」
須賀「助かったぁ………」
ゼィハァと息を切らしながら駆け寄ってくる根元たちに軽装甲機動車内で待機していた平井は驚いて話しかけてくる
平井「どうした?敵襲か!?」
根元「近いけど違う。とりあえず話はこの場を離れてからする。早いところこの場を離れるぞ」
平井「お……おう」
根元は車の中に入るとエンジンをかけ始める
この軽装甲機動車の操縦手は根元であった
クイッ クイッ クイッイイイイ
根元「エンジンがかからない。おい!こんなときに!?」
須賀「あっ!根元さんあれ!」
根元「ん?………おい。あいつやっぱり仲間連れてきてたんじゃねーか!次からは赤外線探知機持って来ないとなっ!」
平井「なんだよあいつら。忍者みたいな格好してるじゃん。ハットリ君みたいな」
根元「正解だよ、こんちくしょう。本人はむっさいおっさんだったけどさ!」
平井「??」
根元たちが降りてきた桃配山の山頂に続く獣道から忍者の格好をした人間が次々と駆け下りてくる
中には木から木へと飛び移りながら向かってくる者もいた
まさに忍者である
ゴンッ
須賀「ひいっ」
車両の上から鈍い音が聞こえる
どうやら忍者の何人かが軽装甲機動車の上に木の上から飛び降りてきたようだ
平井「おいおいマジかよ。忍者は20人くらい居るぞ。うわっ。囲まれてるじゃん」
須賀「は…はは服部半蔵は……いいい居ませんね………。せせ閃光発音筒で倒れてるんで……ししししょうか?」
根元「平井!窓から小銃で威嚇してくれないか!エンジンがかかったとしても、こう囲まれていたら突破出来ない」
平井「わかった。須賀、そこの小銃よこせ」
須賀「はいっ」
平井は須賀から受け取った小銃を構え、軽装甲機動車のドアについている小窓から威嚇射撃を行う
タタタタタタタタタタタン
単発か3点制限射撃で威嚇を行おうと思ったが、火縄銃しか知らない相手ならば連射での威嚇が最も相手を恐れさせることが出来ると平井は考えた
その考えは見事に当たったようだ
忍者たちは突然の連続射撃音に驚き、恐れ、車から距離を置いた
クイッ ブロッロロロロロン
それとほぼ同時にエンジンもかかる
車のエンジン音にも忍者たちは驚いたようで、さらに距離を置いた
忍者「鉄の馬が鳴いておるぞ」
忍者「あれは火縄では無いのか!?」
根元「発進する。一気に関が原を突破するぞ!」
平井「おう。にしても本物の忍者が見れるとは…………」
須賀「しかも服部半蔵ですよ」
3人の自衛官を乗せた軽装甲機動車は物凄い速さ(軽装甲機動車の最大速度は100キロ)で閑散とした関が原を突破していった
そして、残された忍者たちの下へとフラフラとした足取りの服部半蔵が山から下りて来る
忍者「ご無事ですか!?」
半蔵「おうよ。しっかし、たまげた。あれほどの忍術が使えるとは。わしは“じえいたい”を甘く見ておったわい」
忍者「じえいたい……というのはあの者たちの名前ですか?」
半蔵「どうもそうらしいのう」
忍者「あの速さ………。馬でも追いつけません。どうします?」
半蔵「心配せんでも良い。見よ。地面を」
忍者「これは………」
地面には軽装甲機動車のタイヤの跡が残っていた
半蔵「この鉄の馬の足跡を追うのじゃ。やつらの陣のおおよその位置はわかるじゃろう」
忍者「はっ!」
半蔵「じえいたい………。不思議な者達じゃ……………」
~場所は変わって関が原より少々離れた場所~
家康の遺体は回収され、人目につかない場所に安置されていた
家康の死を知る者は戦の場に居た者と家康の家老、前田利家や伊達政宗をはじめとする一部の武将のみである
しかし、家康の死の噂は東軍全体に流れてしまい、いまや東軍は内部から崩壊しかけている状態だった
特に下の兵士への影響は大きく、寄せ集めの兵士たちの逃亡は跡を絶たない
総大将の家康が不在の為に軍議も行われず、東軍の西軍への勝ち目は無いといっても良かった
今のところ、家康の不在は家康が病に倒れたからだと各武将には伝えられている
前田利家「内応しておった吉川広家は完全に東軍を見限った。小早川秀秋や脇坂安治は完全に西軍に就いて戦うようだ。赤座、小川らもだ。中立を宣言していた木下家定らも危ういぞ」
伊達政宗「内府に忠誠を誓っていた武将の何人かも寝返ろうとしておる。どうする佐渡。家康殿の無き今、東軍をまとめるのは誰じゃ?」
福島正則「待て。家康殿の居なくなった今、わしらが西軍と戦う必要はあるのか?」
本多正信「……………」
福島正則「わしらは家康殿に天下を取って欲しかったからこそ東軍に参加した。だが、その家康殿が居ないとなれば………」
ドンッ
伊達政宗「おぬし!よもや西軍に寝返ろうと思ってはおらんだろうな?」
福島正則「おらぬ!しかしだ!家康殿以外に誰が天下を取るにふさわしい?三成にはふさわしくないのは当たり前として、正宗、おぬしでも駄目じゃ。無論、わしにも佐渡にも利家にもな」
前田利家「だが、わしらはそう思っていても、家康殿に代わって天下を狙っている武将もおるぞ。このままでは内部で争いが起きる」
福島正則「家康殿が居ない今。わしらは何の為に戦うのかをはっきりとせねばならんのじゃ。でないと兵の士気も上がらん」
本多正信「そのことじゃ。わしに意見がある」
伊達政宗「何じゃ?佐渡。言うてみい」
本多正信「わしは長きに渡って殿の側におった。そして、わしは日ごろから殿の理想を聞かされていたのよ」
前田利家「理想………とな?」
本多正信「そうじゃ。殿の理想とは“太平の世”を築き上げることじゃった」
伊達政宗「太平の………世?」
本多正信「そうじゃ。戦も無く、そして庶民が明るく平和に暮らしていける世のことじゃ」
福島正則「確かに理想の世ではあるが、少々理想過ぎではなかろうか?具体的にどう世を動かすかが分からん」
本多正信「それも殿から聞いておる。この関が原が終わった後、どう各地の武将を束ねるのかも全て聞いておる」
正信以外の武将「……………………」
本多正信「わしは殿の理想の世の中を実現させたい。誰もが望んだ“太平の世”を誕生させるのじゃ。その為に、わしは……わしは、西軍を…………うっ」
感情が高ぶったのか正信は涙していた
伊達政宗「佐渡………。そうか。太平の世か」
前田利家「誰もが望む世」
福島正則「なるほど。家康殿は死んでもなお………ここに生き続けておるのだな」
本多正信「………………」
伊達政宗「わしは家康殿の理想としていた世が見たい。佐渡。我が力、おぬしに授けよう」
本多正信「!正宗殿!」
福島正則「この福島正則。尽力致す」
本多正信「正則殿!」
前田利家「わしもじゃ。必ず、その理想を実現させようぞ」
本多正信「利家殿!」
利家まだ死んでなかったのか
政宗は東北どうした?
伊達政宗「家康の命は消えようとも、その理想は消えず。理想が消えないのならば家康殿はまだ生きておるのと同じ」
前田利家「東軍総大将はいまだ健在ということじゃ」
福島正則「戦う理由は十分であろう」
ガチャガチャガチャ
一同「!?」
加藤清正「おう!皆揃っておったか。わしの他にも何人か武将が訪ねてきておるぞ。家康殿への忠義を誓った者ばかりじゃ」
伊達政宗「おお!そうか。今、わしらも忠義を再確認したところじゃった」
加藤清正「そうか。して、件の“りくじょうじえいたい”はどうなっておる?味方になるのか?」
本多正信「まだ分からぬ。が、彼らを我が軍の後ろ盾とすれば兵の士気が上がるどころか、三成の奴は腰を抜かすじゃろう。無論、彼らが味方しなくとも、わしら忠義を誓った者達は負けが目に見えていようとも戦うがの」
加藤清正「そうか。あの連中が居れば東軍は勝ったも同然か!」
伊達政宗「何としてでも彼らを味方に付けるのじゃ。家康殿の理想を実現させる為にも!」
東軍のトップたちは他の武将や兵とは逆に士気を高めていた
正信はそんな正宗や利家たちの姿を見て、静かに涙を流していた
正信「殿………。何としてでも殿の望んだ世を作りますゆえ…………」
正信は空を見上げて一人呟く
家康の望んだ太平の世
それを実現させる為に正信は踏み出し始めた
家康は今もこの場に居て、静かに笑っている
正信にはそう思えて仕方が無かった
あ…やっべ
前田利家って1599年に死んでましたね
伊達政宗も関が原に居なかったし…………
自衛隊のせいで歴史が変わったんです!
全部自衛隊のせいなんです!
後々、これらの間違いは物語の中で修正します!
とりあえず本日はここまで
>>138 >>139
コメントありがとうございます
>>153 >>154
自分は歴史に疎いので間違いがあったらどんどん指摘してくれると助かります
高校時代も地理選択で日本史全くやっていなかったので………
今回の間違いは後々、物語上で修正していくのでご勘弁をっ
ちなみに自分は真田幸村が好きです
このSSでもちらっとは出したいです
乙乙
自衛隊のせいなら仕方ないな
おつです!
ちらっと?自衛隊のなんやかんやで真田家はみんな東に着いて、関ヶ原へ来るのか?それとも自衛隊と絡まないのか?…どうあれ、自衛隊のせいならせむかたなしってやつです。
根元たちはベースに帰還した後、全てを伊庭に報告した
伊庭「なるほど。東軍は我々自衛隊を後ろ盾にしたいわけだ」
根元「それよりも小隊長。家康が死んだとはどういったことですか?」
家康の死亡は一部の隊員しか知らされていなかったため、根元は服部半蔵との会話ではじめて家康の死を知ったこととなる
伊庭「昨日の戦車奪還の際にな。家康が西軍の矢によって命を落としたんだ。あの場は兵でごった返していて、その瞬間を見たのは俺と矢野をはじめとした何人かだけだった。部下たちに余計な心配をさせないように秘密にしていたんだが………」
県「深刻ですね。家康の死によって歴史が変わるのも。我々自衛隊が戦に巻き込まれそうになるのも」
伊庭「東軍は何としてでも自衛隊を味方に着けようとしてくるはずだ。予定していた付近の集落での食料調達はひとまず延期しよう。それとベース周辺の警戒を強化する」
根元「忍者が総動員で俺たちを探しているとなると………。見つかるのも時間の限界では」
伊庭「俺が仮にこの時代の武将なら同じ事を考える。自衛隊を味方に着けよう………とな。我々が近代兵器を持っている間は、完全に戦と縁を切るのは難しいのかもしれないな……………」
県「……………」
木村「小隊長!大変です!」
伊庭達の居る天幕の向こう側から木村曹長が走ってくる
伊庭「どうした?」
木村「報告します。先程、定時の点呼を行ったところ1名が行方不明となっているのが分かりました」
伊庭「何!?誰だ?」
木村「高嶋士長です」
伊庭「高嶋が!?」
高嶋陸士長は部隊内でも幼さで有名だった
最年少というわけでは無いが、顔や行動に幼さが残っていたのだ
木村はそんな高嶋を可愛がっていた節がある
木村「高嶋を最後に見たという隊員はあいつがどうも思いつめたような表情をしていた………と。くそ。俺がちゃんと見ていれば」
伊庭「誰だってこんな状況になったら不安になる。木村。お前に責任は無い。それよりも、早く高嶋を見つけないといけない。我々を探している東軍に見つかったら大変だ。それに野武士が森の中に居る可能性だってある」
木村「はい。捜索隊を出しましょう。ヘリは……目立つので出せませんね。パジェロと高機動車をフルで出します」
伊庭「ああ。捜索隊の編成はお前に一任する。俺も残ってる仕事が終わったら…………」
シャチョウハナシテクダサイ! オレハカノジョノトコロニ
バカヤロウ ナニネボケタコトイッテンダ ココハセンゴクジダイダゾ
県「何だ?喧嘩か?」
伊庭「あれは戦車の…………」
見れば戦車等の車両停留所で戦車の砲手である菊池が車長の島田と操縦手の丸岡に羽交い絞めにされている
菊池「タイムスリップしたのは関が原周辺だけなのかもしれない!もしかしたら……そこらの山を超えたら俺たちの時代の風景画見えたりするかも」
島田「ああ?あー。お前は一部の地域だけが過去の時代と入れ替わったって言いたいんだな。アホか!なら無線に本隊から連絡が来るはずだろうが!GPSも使えるはずだろうが!」
丸岡「菊池落ち着け。絶対に元の時代に戻れるから。彼女はお前のことを待っててくれてるだろうさ」
菊池「でも!俺はもう耐え切れない!」
こんな調子で戦車の乗員たちは揉めていた
彼らだけでは無い
タイムスリップしてからまだ1日しか経っていないのに隊員同士のいざこざは二桁に達する勢いで増えていた
それらは矢野や木村によって静められていたが、この調子だともっと増えるだろう
元々は皆、真面目で仲も良く、雰囲気の良い小隊だったのだが、突然の出来事によって隊員達はストレスや不安を抱え、それを他人にぶつけてしまっていた
伊庭「このままでは隊が崩壊する」
県「まるで今の東軍のようですね。でも、そんな隊をまとめるのが小隊長、あなたです」
伊庭「ああ。そうだな。俺がしっかりしなくてはならない」
県「せめて………。何か目的があれば隊員達も……………」
太陽が沈み始め、タイムスリップシテから2回目の夜が訪れようとしていた
高嶋士長の捜索は動ける隊員を総動員して行われたが、月明かりくらいしか頼るものが無い闇の中の捜索は困難を極め、ついに高嶋を見つけることは出来なかった
伊庭は一旦のところ捜索を切り上げ、翌日の朝、明るくなったら再び捜索を開始することを決断する
本名幸村じゃないよ
いや、正式に名前を呼ばれる場面ならともかくその他の場面なら便宜上分かりやすいし幸村で良いと思うんだけど…
>>165
続戦国自衛隊のノベル版で穴山1士が幸村が本名じゃないって言ってたのを思い出しました
信繁ですよね
>>166
話の中で登場させるときは信繁で行こうと思います
それ以外では幸村でいきます
歴史に関する指摘はどんどんしちゃって下さい
結構、勉強になったりして面白いです
~自衛隊ベースから少々離れた森の中~
1600年9月16日早朝
隊を抜け出した高嶋は森の中をさまよい続けていた
何か目的があって隊を抜け出したのではない
ただただ不安で、逃げ出したくなっただけなのだ
高嶋「腹減ったなぁ」
何の考えも無しに逃げ出した為に食料はおろかコンパスすら持ち出していなかった高嶋は足に力が入らなくなり、ついに倒れこんでしまった
持ち出してきたのは自分の小銃と予備マガジンのみだ
高嶋「俺……ここで死ぬのかなぁ」
そう呟きながら仰向けと成り、森の木々を見上げる
高嶋「隊の人達は今頃俺の捜索をしてんのかな………。ああ。迷惑かけちまったな」
ガサッ
ガサガサッ
高嶋「んん?」
ふと草が揺れる音がして高嶋は上半身を起こす
そして音のしていた茂みの方を見る
バッ
高嶋「!?」
音のしていた茂みから昨日見た鎧武者と比べれば遥かにみすぼらしい姿をした武者が10人ほど迫ってきていた
高嶋は知る由もなかったが、自衛隊が宿営地とした場所から少しはなれたこの森は落ち武者たちの縄張りとなっていた
また、落ち武者たちはここで戦に破れて逃げてきた武士たちを狩り、迷い込んだ村人を狩っていたりもする
ターン ターン ターン
高嶋は迫ってくる落ち武者から逃げながら威嚇射撃を単発で行っていた
高嶋「聞いてねえよ!何だこいつら」
落ち武者「きええええええ!」
落ち武者「逃がすなああああああ!」
高嶋「くそっ!」
タタタタン
小銃のセレクトレバーを単発から連射に切り替えて、近くの割と太い木の枝に銃弾を撃ち込む
ビシビシビシ
バキッバキッ
小銃から発射された銃弾は木の枝を見事に折った
高嶋「お前ら!この木の枝みたいにされたくなければ近寄るんじゃねえ!」
落ち武者「何じゃこいつ。奇妙な格好に奇妙な火縄銃」
落ち武者「こっちは10人。多勢に無勢じゃ」
落ち武者「あの火縄銃。売れば高く売れるかも知れんぞ。何せ連発銃じゃ!」
高嶋「おいおい。全然びびってねえぞ!昨日の連中は機関銃の射撃にびびってたのに………。ラリってんのか!?」
落ち武者「鉄砲以外にも何か持っているかもしれんぞ!こいつは“当たり”じゃ!」
落ち武者「きえええええええええええ!」
高嶋「うああああああああ!」
タタタタタタン タタタタタ
落ち武者「うぎゃああああ!」
高嶋は思わず落ち武者たちに向けて発砲してしまう
ただ、手元が震えていた為か狙いが正確ではなく、命中したのは3名だけだった
落ち武者「おのれえええ!斬れ!」
落ち武者「きえええええ!」
高嶋「嘘だろ!?普通びびって突撃なんてしてこないだろうが!」
再び逃げながら高嶋は叫ぶ
ガッ
高嶋「うおっ!うわ」
ドサッ
高嶋「いてて………」
逃げている途中、高嶋は何かに足をとられて転んでしまう
高嶋「くそっ。こんな時に!木の幹に躓いたか…………。ぎゃあああ!」
高嶋は自分が足を引っ掛けた物体を見て絶叫する
それは木の幹などではなかった
おそらく落ち武者に殺された人間の半分白骨化した遺体である
見れば同じような遺体がいくつも転がっていた
落ち武者「生きては返さんぞおおおおおお!」
落ち武者「きええええええええええええええええ!」
高嶋「うわああああ!」
タタタタン タタタ カチッ カチッ
高嶋「うあああ!弾が」
小銃が弾切れを起こす
高嶋は急いでマガジンポーチからマガジンを取り出した
高嶋「やべえ………。予備マガジンはひとつしか持ってきてなかった………」
落ち武者「今じゃかかれええええ!」
高嶋「うおわっ」
カキーンッ
マガジンを交換しないうちに落ち武者が高嶋を斬りつける
とっさに小銃でそれを防いだ高嶋は、斬りかかってきた落ち武者を蹴り飛ばす
蹴り飛ばされた落ち武者は後ろに居た他の落ち武者とともに倒れこむ
おそらく最近まともに飯を食べていなかったのだろう
落ち武者は異様に軽く感じた
高嶋「今のうちだ。マガジンを交換…………」
震える手でマガジンを交換する
落ち武者「おのれええ!5人も殺しおてええ」
高嶋「てめえらから攻撃してきたんだろうが!残弾は30発。30発あれば残り5人なんて楽勝…………」
アソコダ イタゾ
キエエエエエエエエ
高嶋「な………うそだろ。ふざけんなよ」
さらに10人以上の落ち武者が出現した
今日はここまでです
タンッ
落ち武者「ぐおあっ」
ドサッ
タンッ
落ち武者「ぐあっ」
ドサッ
タンッ
落ち武者「ぐへっ」
ドサッ
ハア……ハア……ハア
高嶋「く………そ。きりが……無い」
落ち武者「あそこじゃあああああ!あの木の陰じゃあああ!」
高嶋「来るな!」
タンッ
落ち武者「ぎゃっ」
落ち武者の集団から木と木の間を縫うようにして逃げている高嶋の体力は限界に近かった
しかし、足を止めた瞬間に落ち武者に追いつかれて白兵戦となってしまう
高嶋は敵との距離をとりつつ、一人一人確実に倒していた
高嶋「残弾にも限りがある。はやいところこいつら撒かないと…………」
ザザザザザザザザ
きえええええええええ!
高嶋「うっ………。何なんだよ!何なんだよお前らあああああああああああ!」
タイムスリップという突然の現象
理不尽な仲間の死
そして、今置かれている自分の状況
全てに憤りを感じて高嶋は発狂する
落ち武者1「こやつ立ち止まったぞ!はっ。戦う気を失ったか」
落ち武者2「好都合じゃ一気に叩き潰せ」
タンッ
落ち武者2「ぐっ………は」
高嶋「クソが…………。何が戦国時代だ……。何がタイムスリップだ………」
落ち武者1「狂ったのか?こやつ」
高嶋「殺してやる。お前ら全員…………。殺してやるよおおおおおおおおお!」
ガシャ
高嶋は銃に銃剣をつけて白兵戦の準備をする
彼の頭は己に起こった理不尽に対する怒りでいっぱいになっていた
そして、その怒りの矛先を目の前の敵に全てぶつけようとしていた
高嶋「うおああああああ!」
ブンッ
ガッ
落ち武者1「ごはっ」
高嶋の振った銃が襲い掛かってきた落ち武者の一人の顔面を強打する
89式小銃の重さは本体だけで3.5キロもある
それが顔面を直撃すれば無事では済まされない
高嶋「おらあああああ!かかってこいよ!小汚い侍どもがあああ!」
落ち武者3「こやつ!切り刻んでくれる!」
タンッ
落ち武者3「ぐおはっ」
タンッ
落ち武者4「ぎゃっ」
高嶋「残り………10人ってところか。残弾は………7発」
落ち武者5「複数で囲めばこやつの鉄砲も怖くは無いぞ!」
落ち武者6「同時に攻撃じゃああああ!」
落ち武者7「覚悟おおおお!」
タンッ
タンッ
カキーン
襲い掛かってきた落ち武者2名を銃弾で撃ち抜き、残りの1名の振りかざしてきた刀を銃本体で受け止める
高嶋「ぐおおおおお!」
落ち武者7「きええええ!」
落ち武者8「今じゃ!かかれええええええ!」
うおおおおお!
銃で刀を受け止めている以上、高嶋は現在、無防備な姿勢となっている
横から攻撃されれば防ぐ手立ては無かった
そして、彼はボディアーマーをつけていない
落ち武者8「りゃああああ!」
ブシュッ
高嶋「が…………」
刀が高嶋の身体を切裂き、周囲の草木を赤く染める
斬られたことで高嶋は銃を握る手に力が入らなくなる
落ち武者7「りゃりゃりゃああ!」
落ち武者はどんどんと駆けつけて来て、高嶋を攻撃する
無数の刃が彼の身体を切り刻む
高嶋「ぐ………。何で………俺が」
「高嶋あああああああああああああああああ!」
高嶋「し……小隊…長?」
薄れ行く意識の中で高嶋は伊庭の声を聞いたような気がした
脱走した高嶋の捜索は早朝から再開されていた
ベースに衛生科の隊員や負傷者をはじめとした若干名を残し、生存したほとんどの隊員が捜索に駆り出された
車両が通れそうな場所は十分にカモフラージュをした車両を走らせ、通れそうに無い場所は完全武装の隊員を歩かせている
小隊長の伊庭も指揮車代わりとしている73式小型トラックに乗って、各車両、各隊員と連絡をしながら高嶋隊員を探していた
そんな捜索の中、伊庭は森から小銃の射撃音響いているのを聞き、音の鳴る方へと向かったのだ
そして、たどり着いた先で見た光景は………
伊庭「高嶋あああああああああ!」
既に息をしていない部下に次々と刀が振り下ろされている光景だった
木村「おい………嘘だろ。てめえら!うちの隊員に何してくれてんだっ!」
伊庭といっしょに73式小型トラック(パジェロ)に乗り込んでいた木村曹長が叫ぶ
今、この車両は幌が外されており、後部座席には5.56ミリ機関銃が新たに取り付けられている
県「そんな…………」
木村「小隊長…………。交戦許可を」
県「待て、木村曹長。現地人との戦闘はなるべく避けるべきだ」
木村「部下が殺されたんですよ!こちらが攻撃をされたんだ!正当防衛として我々が攻撃しても何ら問題は無いです」
県「でも…………」
伊庭「高嶋…………」
落ち武者「なんじゃあいつら。変な荷車に乗っておる。お?こやつと同じ格好じゃぞ」
落ち武者「なら、あやつらも鉄砲を持っているに違いない。殺して奪うぞ」
落ち武者たちは突如現れた73式小型トラックと伊庭達を見て口々に言う
伊庭「………………」
落ち武者「残った者全員でかかれえええ!あっちはたかが3人じゃ。こっちでわしらが倒した奴と同様、大勢でかかれば糸も容易く倒せるはずじゃ!」
うおおおおおおお!
生き残った落ち武者たちが一斉に伊庭達へと襲い掛かってくる
木村「小隊長!」
伊庭「木村………。MINIMI(5.56ミリ機関銃)の射撃を許可する。敵を殲滅しろ」
県「小隊長!歴史への介入は駄目です!」
伊庭「……………相手はどうせ落ち武者だ。殺したところで歴史が大幅に変わるとは考え難い」
県「しかし…………!?」
県が見た伊庭の顔は今まで伊庭が見せたことの無いような顔だった
県の知る限り、伊庭は自衛官の手本となるような誠実で真面目で部下思いの隊員で、他の人間に怒りを露とするようなことは無かった
そんな伊庭の今の表情は憎悪で歪んでいる
そして県はその表情が“この時代の武人に似てしまっている”と一瞬思ってしまった
県(部下思いだからこそ、部下を殺した人間にこんな表情を…………。でも、それならこの先もっと…………)
落ち武者「かかれえええええええ!」
木村「指示を!」
伊庭「…………撃ち方はじめ」
タタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ
タタタタタタタタタタタタタタタタタ
落ち武者はあっけなく消えた
今日はここまでです
先に言っておきます
このSSはフィクションです
登場する人物は架空の人物であり、現実の人間とは一切関係ありません
登場人物は映画版の戦国自衛隊などから取ってきています
落ち武者の死体が散乱する中、伊庭達は地面に落ちている空薬莢を拾い集めていた
空薬莢は伊庭達の時代のものであり、この時代の人間に発見されることを恐れたのと、空薬莢から伊庭達の居場所がばれるのを避けるためだ
ただ、伊庭はこの空薬莢を拾って歴史に干渉しまいという行動が、先程の落ち武者を殺したことに矛盾していることに気付いている
木村「高嶋………。くそ」
高嶋隊員の遺体も回収され、小型トラックの後部座席に乗せられている
県「他の隊員たちには先にベースに戻っているように連絡をしておきました。我々も早いところ戻りましょう。こういった落ち武者連中がまだ他にもいる可能性があります」
伊庭「そうだな。木村。車を出せ」
木村「…………はい」
クイッ ブロロロン
木村が車のエンジンをかける
県「この時代で……我々は生き残れますかね?」
伊庭「少なくとも俺が生きている間にはこれ以上の犠牲者は出させやしない。絶対にだ」
県「……………」
発進した73式小型トラックは木と木の間を器用に走る
オオン オオオオン
木村「!」
ザザッ ザザッ
そんな中、車載の無線が鳴る
無線『こちらベース。矢野です』
伊庭「こちら伊庭。どうした?」
矢野『敵襲です。ベース周辺に設置しておいたセンサーが敵を感知。カメラでもその姿を確認しました』
伊庭「何!?敵勢力はどのくらいの規模だ?」
矢野『騎馬を先頭に槍や弓で武装した兵士が………300ほど』
伊庭「ベースと敵の距離は?」
矢野『森を挟んで500メートル。一応、林の中に狙撃手を配置させ、指向性散弾のセットもしてありますが、どうします?』
伊庭「相手が攻撃を仕掛けてくる素振りをしてきたら構わず実弾を使用して良い。ただし、なるべく殺傷は控えろ。それと、交戦することよりも退避することを優先するんだ」
矢野『了解』
伊庭「俺たちもあと少しでベースに到着する。それまで頼んだぞ。矢野」
木村「ベースが敵襲………」
県「何故、我々の居場所が分かったんだ?」
伊庭「木村。なるべく急いで向かってくれ」
木村「了解!」
ブオオオオオン
~同時刻・ベース~
根元「矢野2尉。狙撃手の三村と空挺隊員の大賀1曹は配置につきました。敵の大将らしき人物をいつでも狙撃可能とのことです」
矢野「大賀ってのは空挺の狙撃手のことか。その二人に命令があるまで射撃は控えるように伝えろ」
根元「了解。指向性散弾の方は?」
矢野「そっちもだ」
センサーとカメラで確認した敵兵(敵と呼ぶのはまだ早いかもしれないが)の現在位置はベースを囲う森の入り口付近であった
その兵士たちを待ち受けるような形で2人の狙撃手と指向性散弾をセッティングした隊員が森の中で待機していた
指向性散弾というのは指向性の対車両地雷である
設置後はワイヤーを介し発火具で手動で起爆させ、複数の金属球を前方へ飛散させる兵器だ
矢野「根元。燃料弾薬、天幕、通信機を車両に積み込んで退避の準備もしろ。最悪の場合、ここから逃げる」
根元「了解!」
矢野「小隊長が帰ってくるまで………俺がここの隊員の命を守らなくてはならない」
ちょっと短いですけど今日はここまでです
あ、いつもコメントありがとうござます
乙です
とてもおもしろいです
いつも楽しみにしてますよ!
乙です!
乙乙
無線『ザザッ 矢野1尉。こちら狙撃手の三村です。敵の先頭集団が間もなく指向性散弾の射線に入ります』
矢野「……………」
今、敵の大将を倒せば敵部隊は総崩れし、自衛隊のベースの襲撃どころではなくなるだろう
部下の命を最優先として考えるのならば、今のうちに大将を殺すべきである
しかし
大将という歴史上での重要人物を亡き者としてしまった場合、歴史は相当では済まされない程に狂ってしまうだろう
ならば…………
矢野「狙撃手2名と指向性散弾を設置した隊員は速やかにベースへ帰還しろ。戦闘をせずに穏便に事を済ませる」
三村『は……はい。了解しました。狙撃手両2名、帰還します』
矢野「敵に発見されないよう気をつけろ」
三村『はっ!』
根元「矢野1尉!報告します」
矢野が無線連絡を終えたところに根元がやって来る
根元「物資の車両への搬入を完了しました。車両並びにヘリ、発進準備完了です。いつでも退避できます。センサーやカメラの回収はまだですが」
矢野「良くやってくれた」
根元「相手の兵はどうするんですか?」
矢野「俺が何とかする」
根元「矢野1尉がですか?」
矢野「ああ。戦闘を行わずに敵を退ける」
根元「!?戦闘を行わずに?どうやって?」
矢野「言葉という武器を使うのさ」
根元「言葉………」
矢野「根元。迫撃砲の発射準備を行ってくれ。それと拡声器を持って来い。弾は通常弾ではなく発煙弾を装填」
根元「発煙弾?実弾ではなく?」
矢野「言っただろ。戦闘は避ける。それに我々の弾薬は決して多くはねぇんだ。これからは弾薬の節約の為にも通常の攻撃より、精神的な攻撃が必要となってくる」
根元「精神的攻撃………ですか」
矢野「おう」
~同時刻・自衛官の隠れる森の中に入り始めた騎馬隊と足軽たち~
正信「ここか?半蔵」
半蔵「はっ。鉄の車の足跡を辿ってきたところ。どうもこの中に“じえいたい”は居るようです」
政宗「そうか。わしは鉄の馬とやらを見たことが無いから少々楽しみじゃ」
森に入ろうとしている部隊は本多正信と伊達政宗の混成部隊であった
目的はもちろん、自衛隊を東軍の味方につけることである
本来は本多正信のみで行くつもりであったのだが、伊達政宗が自衛隊を一目見たいといって参加してきたのだった
正信「どこから“じえいたい”の鉄砲の弾が飛んでくるかわからん。気をつけよ」
政宗「“じえいたい”とやらの格好は緑の斑の服だったのだろう?こんな森の中に隠れれば分からんじゃろう」
正信「あの緑の斑の模様………。森の中に隠れるにはうってつけじゃった。あの者達は森の中で戦うことを得意としておるのかの?」
ザッ ザッ ザッ ザッ
本多正信たちはどんどん森を進む
半蔵「!?」
正信「?どうした?」
半蔵「声が聞こえた…………」
忍びである服部半蔵の聴覚は大変優れている
森の奥からかすかに聞こえてきた声を彼は正確に聞き取った
“ハツエンダンハンシャ テー”
何を意味する言葉なのかは分からなかったが、その声が聞こえた直後に森の中からかなり大きな音がした
ドシュッ
ドシュッという音は迫撃砲を発射した時の音なのだが、戦国時代に生きる人間がそれを知るはずも無い
平成に生きる人間でも迫撃砲発射音を聞いたことがある人間は少ないのではあるが
だが、正信らはその音が自衛隊の行った攻撃であることを察した
雑兵「なんじゃ!攻撃してきたぞ!」
雑兵「この間のようなドーンという音じゃ!鉄の馬がまた火を噴いたに違いない」
兵士たちの中には10式戦車の発砲を見た者も居る
そして、彼らは戦車砲の威力も知っていた
正信「うろたえるでない!相手からわしらは見えておらん。狙いを定めることなど…………」
ボンッ
正信の言葉が終わらないうちに迫撃砲から発射された発煙弾が正信ら騎馬隊の居る場所の目の前に着弾した
ひとまず離脱
自衛隊の火砲命中率は異常。
政宗「なんじゃこの煙は!ごほっごほっ」
自衛隊が撃った弾は発煙弾である
その名の通り弾着と共に発煙する弾だ
発煙弾の煙で本多正信らの居る場所の周辺は真白な煙に包まれる
半蔵「煙玉のようなものかと思ったが………。こんなにも広範囲に煙が及ぶとは!恐るべき弾じゃ」
正信「何も見えぬ。今攻撃されたらひとたまりも無い!」
『あー。森に侵入した武士たちに告ぐ。我々は日本国陸上自衛隊だ』
政宗「なんじゃ!この大声は!」
矢野が拡声器で森の奥から喋っているのだが、拡声器など知らない伊達政宗は驚きを隠せないで居た
正信「近くにおるのか?」
半蔵「いえ。近くに“じえいたい”は居ません」
正信「ではこれは一体?」
『驚いたか?だが、驚いている暇など無いぞ?』
正信「?」
『我々が今発射したのは“NBC兵器”というものだ。辺りに白煙が漂っているだろう。その煙自体が武器なんだ』
正信「この煙が………武器だと?」
『毒ガス兵器って言ってもわからねぇよな。その煙には毒がある。一定時間その煙を吸ったり触れていたりすると、吸ったり触れた人間は死ぬ』
無論、嘘であった
発射されたのはただの発煙弾である
しかし、発煙弾を始めて目にする正信ら戦国時代の人間はそれを信じてしまう
正信「なっ!?」
政宗「吸っただけで死ぬじゃと!?」
『今逃げればまだ助かる。だが、これ以上その場に居続ければ確実にお前たちは全滅するぞ?部下が大切なら今すぐここから立ち去れ』
雑兵「大変じゃ!逃げろ!」
雑兵「うわああああああ」
矢野のはったりに兵たちはパニックに陥る
急いで森から逃げ出すものも多かった
『我々はお前たちの敵では無いが、味方でも無い。我々は戦には関わらない。これが基本姿勢だ。いいか?我々に関わるな』
正信「一旦、退くぞ!」
政宗「………………」
『繰り返す!我々に関わろうとするな。もし関わろうとするなら次はもっと強力な兵器を使用する』
正信「政宗殿!退くぞ!」
政宗「……………ふっ。そうか」
正信「どうした!はやく退かなくては!」
政宗「この先に“じえいたい”が居るのは間違いない!“じえいたい”も馬鹿ではなかろう。自分たちの陣に毒を撒いたりはせぬ。ならば、“じえいたい”の陣まで駆け抜ければ良い。毒からも逃れることが出来、さらに奴らとも会える!」
正信「正気か!?」
政宗「皆、我に続けえええええええ!」
おおおおおおおおおおお!
伊達政宗は煙の中を馬で進んでいく
それに他の逃げていなかった兵が続く
伊達政宗は後ろに逃げるのではなく前に逃げることで、煙から逃げることが出来ると共に自衛隊のベースにもたどり着けると考えたのだ
普通に考えれば簡単に思いつくことだが、パニックに陥っていると後ろに逃げることしか思いつかない
その点、政宗は冷静だった
~自衛隊ベース~
根元「発煙弾を恐れず、奴ら突っ込んできます!」
矢野「さすがは戦国武将、といったところか」
根元「どうしますか!?あいつらもうじきベースに到達しますよ!」
隊員「おいおいやばくねーか?」
隊員「はやく逃げよう」
隊員「でも小隊長がまだ」
矢野「おちつけっ! 総員、車両に乗って待機。いつでもここから離脱できるようにしてろ!」
隊員達「「はいっ!」」
矢野の一喝で隊員達は車両に乗り込む
狙撃手と指向性散弾を設置していた隊員達も戻ってきていて、彼らもまた車両に乗り込む
ブロロロロ
各車両にエンジンがかかり低い音が森に響く
ヘリコプターも始動しキュイイイインという音が聞こえる
そして
パカラッパカラッ
馬の走ってくる音も聞こえ始めていた
矢野「そろそろ敵の大将のお出ましか」
根元「逃げましょう。矢野2尉!はやく車へ」
矢野「今、逃げてもあいつらは再び俺たちを追ってくる。ならここで1回釘を刺しとかないとな」
根元「矢野2尉!」
矢野「お前は他の隊員と一緒に車にもどれ」
根元「ですが!」
矢野「これは命令だ。上官の命令に逆らったら許さんぞ?あ?」
根元「………分かりました。ただ、もしもの場合は車両から援護をします」
矢野「ああ。頼んだ」
そう言って矢野は騎馬隊が到着するであろう方向へ歩き始めた
彼が部下を全員車両に乗せたのは隊員達がすぐ逃げることが出来るようにする為であった
と同時に“ある作戦”を思いついていたからでもある
パカラッ パカラッ
矢野が歩き始めてすぐに騎馬隊と足軽たちがベースに到着した
今日はここまでです
>>189 >>190 >>191
コメントありがとうございます!
面白いと言っていただけて凄く嬉しいです!
楽しみにしてくださってる方が居るだけで自分は幸せです
>>197
凄いですよね
富士総合火力演習で榴弾砲の射撃を見たことがあるんですが、見事な精度でした
ちなみに本日はとある試験の合格発表がありまして
自分は無事、合格していました
乙ー
そういや本州から戦車が消えて全部装輪になるんだそうな
乙です!
奇遇ですね!自分もとある試験の一次審査の発表があって合格してました!
合格おめでとうございます!
乙乙
正信「おぬしらは“じえいたい”で間違いないか?」
自衛隊のベースに到着した本多正信はひとりで騎馬隊へ近づいてくる矢野に問いかける
矢野「去れ」
正信「何と?」
矢野「ここから立ち去れ!俺たちに関わろうとするんじゃない!」
政宗「はははっ。威勢だけは良いようじゃな」
矢野「警告はこれで2度目だ。次は容赦しないと言ったはずだが」
正信「“じえいたい”よ。わしらは戦をしに来たのでは無い。おぬしらが戦を嫌うのは半蔵から聞いておる」
半蔵「……………」
矢野「そうだ。お前たちと関われば戦に巻き込まれるのは分かりきったことだ。だからもう俺たちに接触しようとするな」
政宗「強情じゃのう」
正信「戦に関わる必要はないのじゃ。せめて…………」
矢野「信じられるかっ!」
正信「!」
矢野「我々はお前たちの武器よりも遥かに強力な武器を持っている。“この時代のどの軍勢”も必ずと言っていいほど我々の力を手に入れたいはずだ。力ずくでな。そうなった場合、傷つくのは俺の部下たちだ。裏切りばかりの戦国の世で他人を信じることがどれだけ愚かしいことかは俺だって知ってるんだよ!」
正信「私欲で近づいてくる者は信じることが出来ない………と申すのか」
矢野「そうだ。戦に勝つことばかり考えて、毎日殺戮を繰り返してるような連中を信用は出来ないし、そんな奴らに力を貸すつもりは毛頭無い」
正信「戦ばかり………か」
政宗「…………くくく」
矢野「何がおかしい?」
突然笑い出した伊達政宗に矢野が怪訝そうな顔をする
政宗「おぬしら。それ程の武器を持っておるのに自分たちの命を守ることしか考えていないんじゃな」
矢野「だったらどうした?」
政宗「武士とは主君の為に命をかける者。その主君は城下の民を守るために戦う者じゃ。無論、全員とは限らんが。わしらには“守るべきもの”が少なからずあるのじゃ。しかし、おぬしらは命惜しさで戦から逃げ、近づいてきた者に卑怯な武器で脅しをかけるだけ。腰抜けじゃ」
正信「政宗殿!」
政宗「おぬしらは武人では無い。この戦国の世でおぬしらは生き残れ…………」
矢野「黙れ!」
政宗が話している最中にも関わらず矢野は大声を出す
彼の顔は憎悪に満ちていた
矢野「お前たちに何が分かる! 突然、守るべき家族も……国民も居なくなってしまった俺たちの気持ちが分かるわけ無いだろうな! この戦国の世に俺たちの守るべきものは無い! 帰る場所も無い! 腰抜け?ああ。そうだ俺は腰抜けかもしれない」
正信「……………」
政宗「……………」
矢野「だけどな!俺は腰抜け呼ばわりされても構わない。お前たちのような糞ったれな武人になどなりたくもない!」
政宗「こやつっ!」
矢野「お前らは部下の人間の命のことを考えたことがあるか? 部下を家で待っている家族のことを考えたことがあるか? 戦ばかりして、部下を大量に殺して、自分も殺して…………」
政宗「部下が大事……と。おぬし、まるで配下の兵のためなら命を捨てることも出来るとでも言いたいようじゃの。まあ、そんなことは出来ないであろうが」
矢野「出来る」
政宗「戯言を!」
矢野「何故、俺の部下が俺から離れた位置に居るか分かるか?」
政宗「?」
矢野以外の隊員は既に車両に乗り込み、退避の準備を終えている
矢野と車両群の距離は100メートルはあった
矢野「俺が俺の周囲をお前たちごと吹き飛ばしても大丈夫なように部下たちは俺と距離を取っているんだ」
政宗「吹き飛ばす?わしらごと?そんなことが出来るはずが無い。おぬしの手元には火も油もないでは無いか」
矢野「これだ」
そういって矢野は持ってきていた鞄をひっくり返して中身を出す
鞄から出てきたのは粘土状の物体と起爆装置であった
正信「土……?」
政宗「はははっ!粘土ごときで何が出来るのじゃ?」
矢野「C-4。プラスチック爆弾。3.5kgあれば200mmの鉄製H鋼を切断できる爆薬だ。っつってもあんたらには理解できないか」
矢野が取り出したのはC-4であった
粘土状の爆薬であり、起爆装置を差し込んで爆発させる
無論、根元をはじめとする自衛隊員は矢野が自爆覚悟でC-4を持って騎馬隊に向かったことを知らなかった
正信「政宗殿。わしも“じえいたい”の武器の恐ろしさは見ておる。この者の言うことも嘘では無いかも知れぬ」
政宗「…………。目を見れば分かる。こやつ、本気じゃ」
矢野「お前たちが諦めずに俺たちに関わろうとするなら、俺はこれを起爆させる。逃げるなら今のうちだぞ?」
ブブーッ! ブブーッ!
矢野がC-4で本多正信らに撤退を促している最中、車のクラクションが鳴り響いた
伊庭「矢野おおおお!やめろおおお!」
見れば伊庭を乗せた73式小型トラックがクラクションを鳴らしながら迫ってきていた
高嶋の遺体を回収した伊庭たちの帰還である
73式小型トラックは矢野と正信らの横に停止した
矢野「小隊長」
伊庭「矢野! 俺は俺の部下が勝手に死のうとすることを許しはしない。それはお前も例外では無いぞ矢野」
矢野「………………。俺は……任務を果たそうと」
伊庭「いいか?俺はもう自分の部下が死ぬところを見たくないんだ」
矢野「………………」
正信「もしや、伊庭義明殿か?」
伊庭「はい。自分がこの小隊の隊長である伊庭義明1等陸尉です」
今日はここまでです
>>203
えっ!?
寂しいです。戦車が無くなるなんて………。もう駐屯地祭で戦車に乗れなくなっちゃうんですかね………
>>204
おめでとうございます!
>>205
コメントありがとうございます!
見てくれている人が居てうれしいです
乙ー
どうやら戦車隊は九州・北海道に集中配備されるみたいですぞ
乙です
乙乙
確かに日本が戦争になるとしたら九州か北海道が主戦場だわな。
沖縄とか正直守れんだろ。
正信「伊庭殿…………。その者は」
本多正信は伊庭達が乗っていた73式小型トラックの後部座席で横たわっている高嶋を指差す
伊庭「………。自分の部下です。先程、落ち武者と交戦した際に命を落としました」
政宗「優しさは時に命取りになるぞ。おぬしたちの弱点は仲間の命を大切にし過ぎるところにある」
伊庭「あなたにとっては弱点に見えるかもしれませんが、我々にとって仲間の命を大切にする精神は誇りであります」
政宗「…………。おぬしらは戦国の世で生きるべきでは無いのかもしれんのう」
伊庭「それで、我々に何の用ですか?」
正信「わしらがおぬしら“じえいたい”を訪ねたのは、おぬしらに東軍の御味方をするよう説得するためじゃ」
矢野「やはり………そうだったか」
伊庭「先日申し上げた通り、我々は戦には参加しません。故に東軍にも西軍にも加勢しないのです」
正信「おぬしらが戦に参加したくないというのは承知しておる。だから無理に戦えとは言わぬ」
伊庭「戦わなくても良い………?それは一体どういう意味でしょう?」
正信「おぬしらが東軍の御味方をしたという“事実”があればそれでよいのじゃ。もちろん、タダでとは言わん。それ相応の褒美は与えるし、欲しいものも用意しよう」
伊庭「我々が戦に参加せず、味方するだけという事にあなた方は何のメリット………利益があるのでしょう?」
正信「殿の死は隠されているが噂でそれが各地の武将に伝わってしもうての。東軍の武将は次々と西軍に寝返っておる。中立の武将も西軍につき、末端の兵たちの士気は落ちておる。このままでは東軍は負けてしまう。だが、おぬしら“じえいたい”が味方になったと知れば彼らの考えも変わるであろう」
伊庭は少し迷った
現在、歴史は家康の死をはじめとして狂い始めている
正信の話によれば本来は東軍に参加するはずだった武将が西軍に寝返っている状況らしい
つまり、このままだと伊庭たちの知っている日本史とは異なる西軍が関が原で勝利してしまうという日本史が誕生してしまうのだ
そうなれば未来は大きく変わってしまう
そもそも、歴史が変わってしまった原因のひとつは自衛隊の存在である
伊庭はそのことに少々、責任を感じていた
伊庭「つまり、我々自衛隊が東軍の味方になったという事実を見せ付けることで、兵の士気を上げ、西軍に寝返ろうとしている武将を思いとどまらせようというのですね?」
正信「そうじゃ。おぬしらは西の味方にも東の味方にもならぬと言っておるが、どうか東軍の御味方となってはくれぬか? 城も米も地位も与える用意がこちらにはある。戦にも参加し無くて良い。まさに得しかないと思うのじゃが」
伊庭達が最優先とするのは自分たちが生き残ることだ
そのためには食料が必要である
東軍の(形だけではあるが)味方をすれば食料は安定して手に入る
それに、いつまでも野外で宿営を続けるのも無理があった
戦国時代の野外は決して安全では無い
高嶋を襲ったような野武士が数え切れないほど居るだろう
ならば、いっそのこと正信の保護下に行き、安全を確保するのも部下の命を守る手のひとつであろう
伊庭「……………」
県「我々の生存を優先とするなら良い選択肢かもしれません」
矢野「だが、関が原以降はどうするんだ?無理やり、戦に参加させられるかもしれん」
73式小型トラックから降りてきた県と矢野が言い合う
今回の関が原では戦に参加しなくても良いかもしれないが、関が原が終わった後もその約束が保証されるとは限らない
それに自衛隊が交渉の際に優位に立てるのは装備品があるからだ
燃料弾薬が底を突けば、自衛隊は正信をはじめとする東軍の武将たちから切り捨てられる可能性もある
やはり東軍に味方をするのはリスクのあることかもしれない
それに、自衛隊が有名になることで、さらに歴史が変わってしまうかもしれない
伊庭「…………。今ここでは決断できません。自分だけでなく、部下の意見も聞いて結論を出します。それでも構いませんか?」
伊庭が出した答えは保留だった
正信「承知した。また後日、答えを聞きに来る。それまでに結論を出しておいて欲しい」
伊庭「了解しました」
政宗「返答を楽しみにしておるぞ」
正信は回れ右をしてベースから去る
政宗もそれに続こうとしていた
県「あっ!ちょっと待って下さい」
政宗「何じゃ?」
県「その眼帯………。ひょっとして伊達政宗さんでしょうか?」
政宗「おお。わしを知っておるのか。そうじゃ。わしは伊達政宗じゃ」
県「………………」
矢野「県、どうかしたのか?」
県「いえ………」
政宗「ではさらばじゃ」
そう言って伊達政宗も去っていく
雑兵たちもそのあとに続き、やがて誰も居なくなった
>>211
なるほど
となると本州で戦車が見られるのは富士だけになってしまうかもしれませんね
>>212 >>213
コメントありがとうございます
>>214
出来れば本土決戦は避けたいものです
自衛隊の戦車は実戦経験0のまま退役して欲しいかも………
乙乙
ほほう
1600年9月16日 午後8時 自衛隊ベース
伊庭は全隊員を1箇所に集めた
15名の隊員が殉職し、現在自衛隊員は35名である
その35名の隊員がベースの中央に集まった
彼らの表情は暗く、その顔を焚き火の炎が照らしている
伊庭「全員集まったようだな」
伊庭は隊員達の前に立ち、話しはじめる
伊庭「まず、最初に俺は皆に謝っておかないといけない。何故なら俺は大切なことを皆に伝えていなかったからだ」
隊員達「「 …………… 」」
伊庭「2日前の9月14日。戦車奪還作戦の際、徳川家康が死んだ」
隊員「えっ………」
隊員「どういうことだ?」
伊庭「皆には既に伝えているが、現在、我々が居る時代は1600年。つまり戦国時代だ。そして、関が原の戦いが起きた時期である」
隊員「……………」
伊庭「関が原の戦いは9月15日に史実通りなら始まるはずだった。だが、16日になった今でも関が原は始まっていない。なぜなら東軍総大将である徳川家康が死んだからだ」
伊庭は話を続ける
伊庭「家康が死んだことで歴史が変わってしまい、本来ならとっくに始まるはずだった関が原が行われないのだ」
隊員「歴史が変わってしまったら何が起きるのでしょう?」
伊庭「俺にも何が起きるかは分からん。だが、例えば、この時代に居る俺の先祖を殺したとしよう。そうしたら未来で生まれるはずだった俺は当然生まれなくなる」
隊員「…………つまり?」
伊庭「歴史が変われば未来が変わる。平成で生まれるはずだった人間は生まれない。俺やお前たちやお前たちの家族も、おそらく消滅してしまうだろう。俺たちが知る平成の世は存在しなくなってしまう」
隊員「そんな………馬鹿な」
隊員「でも!東軍が勝てば歴史は元通りなんじゃ!?」
伊庭「史実通りなら関が原では東軍が勝つ。だが、今の状況ではそれが難しいんだ」
隊員「なぜです?」
伊庭「家康の死を受けて東軍の武将が西軍に次々に寝返っているからだ。このままでは東軍は確実に負け、そして歴史は完全に変わる」
島「伊庭1尉」
伊庭「何だ?島2尉」
島「もし仮に歴史が完全に狂ってしまったのならば、未来で我々は生まれない。存在しなくなるんですよね?」
伊庭「ああ。そう考えている」
島「ですが、我々はまだこの世に存在しています。消えていません。とういことは歴史はまだ完全に狂ってしまったという訳では無いのでしょうか?」
矢野「なるほど………。確かに一理あるようにも思える」
伊庭「歴史には我々が想像もできない“修復力”というものが存在しているのかもしれない。歴史の歯車が少しずれても自動で修正するような…………。だが、その修復力も限界があるだろう」
島「というと?」
伊庭「15名の犠牲者の存在だ」
島「どういうことですか?」
県「あの15名の隊員達は歴史が変わってしまった為に、未来で生まれなくなってしまった人間だ………ということですか?だからこの世から消えた…………?」
矢野「馬鹿馬鹿しい。あいつらは歴史の狂いによって殺されたんじゃない。この時代の人間の手によって殺されたんだ」
伊庭「これはあくまでも推論に過ぎない。だが、東軍が仮に負けてしまったら修正できないほどに歴史が変わってしまうだろう。そうなった時、我々が………我々の未来がどうなってしまうのかは分からない」
矢野「未来に生きる人間が消滅する可能性も………あるってわけか」
伊庭「そこで本題だ。我々はこの状況下で何をするべきか!」
隊員「「 !? 」」
矢野「歴史に関わるつもりですか!?」
伊庭「……………。そうだな。結論から言おう。俺は歴史に関わるべきだと思う」
隊員「どういうことだよ!」
隊員「俺たちは歴史に関わっちゃいけないんじゃなかったのか?」
隊員「また戦わないといけないのかよ!」
木村「静まれ!とにかく小隊長の話を最後まで聞け!」
隊員「「 …………… 」」
伊庭「何故、歴史が狂ってしまったか。その原因は間違いなく俺たち自衛隊の存在だ。我々がこの時代に現れたことによって歴史は変わってしまった。無論、我々も被害者だ。タイムスリップは我々の意図したことでは無い。だが、それでも原因は我々にある」
隊員「…………」
伊庭「いや。全責任は指揮官の俺にあるな。歴史が狂ってしまったことに対する責任は俺にある」
県「小隊長の責任ではありません。これは事故なんですから」
矢野「俺は少なからずこの時代の人間を殺傷した。責任なら俺にも多くあるはずです」
伊庭「ありがとう。だが、責任は指揮官がとるべきだ。そこで、俺は責任を持って歴史の修復をしようと思う」
隊員「「 !? 」」
伊庭「正しい歴史を知っているのは未来から来た人間だけだ。歴史の修復が出来るのはその正しい歴史を知っている人間だけ、とも言える。それに、俺は自衛官だ。自衛官の任務は国民の生活と安全を守ること。このまま歴史が完全に狂ってしまえば俺が守るはずだった未来に生きる国民が脅かされる。それを避けるためにも俺は歴史の修復をしなくてはならない」
県「小隊長…………」
矢野「未来に生きる国民を守る……か」
伊庭「これは俺が決めたことだからお前たちを巻き込もうとはしない。修復は俺だけの手で行……………」
島田「俺は手伝うぜ!」
伊庭が喋っている途中で島田が大声で言う
伊庭「島田…………」
島田「歴史がどうのこうのってインテリっぽいことは何ひとつ分からないが、あんた一人に責任押し付けるのは俺の何かが許さねえ。それに、この戦国時代じゃ戦車があったほうが心強いんじゃないですか?」
伊庭「いや………。だが、お前たちを危険にさらすことは出来んし………。それに戦車隊員は俺の直轄の部下では………」
島田「島田をはじめとする戦車隊員3名。伊庭1尉の指揮下に入ります!」
丸岡「異議なしかな」
菊池「え?ちょっと自分はまだ何も」
島田「ああ?」ギロッ
菊池「異議なしです」
伊庭「しかし………」
県「小隊長。歴史について何も知らないくせに修復とは笑わせます」
伊庭「県………」
県「自分も協力しますよ。歴史オタクとしては歴史に関われるなんて夢見たいですからね」
矢野「県。お前やっぱり歴史に関わりたかったのかよ」
県「はい」
矢野「歴史に関わるのは反対だったが…………。でも、未来の家族のためなら仕方ないな」
そう言って矢野は伊庭に敬礼する
県もそれに倣った
木村「自分も小隊長についていきます」
島「自分も伊庭1尉の指揮下に入ります。えっと、俺の部下は………」
島も島田と同じく伊庭の直轄の部下ではなかった
望月「島2尉がそうするなら自分も伊庭1尉の指揮下に入ります」
大賀「面白そうだから俺もそうするわ」
三好「じゃあ、俺もだ」
穴山「自分も」
島以外の空挺隊員も伊庭の指揮下に入ることを表明した
空挺隊員が敬礼をする中、伊庭の小隊の面々も次々と伊庭のもとへ駆け寄ってくる
根元「自分も小隊長の力になります!」
平井「同じく」
須賀「えっと………。不安ですけど………自分も何か力になれればと」
三田村「自分も!」
加納「装甲車の操縦が出来れば何でもいいですよ」
西沢「自分も行きます!」
清水「清水、山田の両名。ヘリと共についていきます!」
山田「はい!」
見れば全隊員が伊庭の周りに集まっていた
伊庭は目に熱いものが込み上げてくるのを感じる
伊庭「歴史に関わるんだ。今まで以上に危険な状況になるかもしれないぞ? 狂った歴史の修復をするんだ。困難な道となるかもしれないんだぞ?」
矢野「しつこいっすよ小隊長。我々はあなたについていくことにしたんだ」
県「そうです。皆、守りたいものがあるんです」
他の隊員が県の言葉に頷く
伊庭「お前ら………」
島田「そうそう!それに戦国武将に協力すれば可愛い姫様とお近づきになれるかもしれないじゃねーか」
丸岡「車長………。結局それですか。車長には無理ですって。そんな怖い顔してるんだから女どころか男すら寄ってきませんよ。この間の合コンで懲りたでしょ?」
島田「うるせえ!お前は俺を怒らせた罰として後で戦車の洗車を全部ひとりでやってもらうからな!」
隊員たち「「 ははははは 」」
島田と丸岡の会話に自衛隊員達は笑う
タイムスリップシテから初めて、隊全体に明るい雰囲気が流れた
ちょっと離脱
~大垣城~
現在、大垣城には石田三成をはじめとした西軍の武将が集まっていた
家康死亡の噂によって混乱しているのは東軍だけでは無い
西軍も寝返ってくる武将への対応等で慌しくなっていた
石田三成「家康の死が本当だとすれば豊臣の天下は確実なものとなる。東軍の今の様子を見る限りわしらの勝利は目に見えているぞ」
大谷吉継「三成! 戦を甘く見るでない。噂は噂に過ぎぬ。わしの得た情報によれば家康は病に倒れただけとの事じゃ」
石田三成「分かっておる。しかし、東軍が乱れておる今、この機会を逃す手はない」
宇喜多秀家「小早川秀秋も東軍を完全に見限ったと聞く。我が方の兵力が相手を上回った今こそ総攻撃を仕掛ける時ではなかろうか」
石田三成「おお。そうじゃ!今こそ亡き太閤殿下への忠義を示す時!関が原にて東軍と総力戦じゃ」
島津義弘「三成。我が方の戦力が東軍を上回っているとは言え、寄せ集めの兵が多いのは事実。真っ向から戦うのは危ういところがある」
石田三成「ふむ」
島津義弘「家康の兵はいまだに全て揃ってはいないと聞いた。ならば夜襲を仕掛け、一気に叩いた方が得策ではなかろうか」
宇喜多秀家「なるほど。今が夜襲の好機であるのは間違いない。確実に勝利をするのならその案も良いと思う」
石田三成「ならん!」
島津義弘「何故じゃ!」
石田三成「この戦は“義”の戦い。夜襲などという卑怯な戦い方は義に背いた戦い方じゃ」
島津義弘「おぬし!わしが卑怯だとでも言いたいのか!?」
石田三成「そうじゃ。敵の背後からいきなり襲うような戦いは義の戦いとは呼べぬ」
大谷吉継「三成!」
島津義弘「石頭めが」
そういい残して島津義弘は退室してしまう
石田三成「わしは卑怯なやり方での勝利はいらん」
大谷吉継「じゃが、あやつ。もしかしたら戦に参加せんかもしれぬぞ」
石田三成「その時はその時じゃ」
小西行長「義弘が腹を立てていたのは自分の案が却下されたからだけではあるまい」
石田三成「と言うと?」
小西行長「おぬしの異形の輩に対する策に関することよ」
石田三成「そうか。確かに、わしもあやつらには疑念を持っておる。しかし、仮に左近の言う鉄の馬や鉄の鳥が東軍についたとしたら、人数では上回っておる西軍も敵わん」
島左近「あの鉄の鳥や鉄の馬、連発銃は矢も刀も弾き返し、一度に幾多もの兵をなぎ倒します故。鉄の馬等が東軍に味方をした場合は、義弘殿が反対しておりました策を使わねばなりません」
石田三成「そうじゃの。わしも義弘が反対するのは良く分かる。じゃが、左近の言う鉄の馬や鉄の鳥を何とかしなくては、我が方に勝利は無い」
乙乙
乙!
ババババババババババババババババババババババババ
キュイイイイイイン
グオオオオオオオオオ
キュラキュラキュラ
だだっ広い草原を自衛隊車両が走る
10式戦車を先頭にしてその後ろを装甲車や軽装甲機動車、パジェロやトラックなどが爆走する
車両が走っている上空ではUH-60JAヘリがホバリング飛行を行っていた
伊達政宗「おおおお!これは凄い!馬よりも速く走る鉄の馬!鉄の鳥!」
正信「この間はあまり鉄の馬が走るところを見ることが出来なかったが、これほどまでの速さとは…………」
ナンジャコレハ
ドウモ“ジエイタイ”トヤラガウゴカシテイルラシイゾ
コレデトウグンノショウリハカクテイジャ
正信の周りに居る武将たちはあまりの驚きに目を見開きヘリや戦車を凝視する
そして誰しも、東軍の勝利を確信した
正信「皆の者!この鉄の馬と鉄の鳥を動かすことの出来る“じえいたい”が我ら東軍の味方となった!“殿は病で倒れているが”この“じえいたい”が居る限り、東軍は負けん!」
おおおおおおおおお!
正信「西軍に寝返ろうと思っておった奴はこれで目が覚めただろう!それに、配下の兵の士気も上がるじゃろう!」
おおおおおおおおお!
草原に集まっていた東軍の各武将と配下の兵は歓声を上げる
その様子を伊庭は装甲車の上から見ていた
伊庭「すごい数の兵だ。徳川10万の兵ってのは本当だったんだな」
県「東軍の武将がほとんど集まっていますね。でも、伊達に前田は………確か」
伊庭「どうかしたのか?」
県「いえ。何でも…………」
矢野「しっかし、こりゃ大変なことになりましたよ?数万人のこの時代の人に戦車やヘリを見られたんですからね。歴史の教科書に“東軍には鉄の鳥が味方をしていた”とか書かれる様になっちまうかも」
伊庭「本多正信には我々自衛隊の事は記録に残すなと伝えておいたが…………。果たしてちゃんと残さずにしてくれるか」
県「まあ日本昔話みたいな伝説にはなってしまうかもしれませんね」
伊庭「ははは。まあ、我々の仕事は今行ってる“観閲行進”で終わりだからな。伝説で終わってしまう可能性の方が高い」
矢野「ですね」
自衛隊が現在行っているのは東軍の武将たちと配下の兵に向けた観閲行進である
自衛隊の装備の凄まじさを彼らに見せ付け、さらに、その凄まじい力が東軍の味方についたということを知らせて、士気を高める
西軍に寝返ろうとしていた武将は“自衛隊が味方についている東軍のほうが勝算がある”と思い、思いとどまる
配下の兵たちもやる気を出すだろう
伊庭「これで東軍が崩壊するのは防げただろう。西軍に寝返ろうとしていた武将も東軍につくことを表明してきてるみたいだ」
県「少し歴史が修復出来ましたね」
伊庭「ああ。これで史実通りに東軍が西軍に勝ってくれれば良い」
自衛隊の役目は崩壊寸前だった東軍を立て直すこと
それ以上でも以下でもない
“自衛隊は東軍の味方をするだけ。戦には参加しない”
これが自衛隊の提示した条件であった
伊庭「形だけではあるが味方になる。戦には参加しない。正信には自衛隊の食料を補給させる。これが歴史にあまり干渉せずに我々が生き残る最善の策だ」
矢野「何とかして元の時代に帰るまで、あの本多正信って奴の味方をしてればいいってことか。割と簡単なことだな」
伊庭「だが、この時代の武将を完全に信頼するのは危険だ。いつ我々も裏切られるか分からないからな。常に周囲を警戒しておくのを忘れないようにしておかないと」
矢野「はい」
木村「そろそろ火砲の演習に入ります」
装甲車の車内から木村が言う
戦車の走行やヘリの飛行のみならず火砲の射撃も武将に見せる予定であった
これはこの時代の人間に自衛隊の恐ろしさを示すのを目的としている
“もし自衛隊に攻撃をしようものなら返り討ちにあわせるぞ”というメッセージを伝える為の射撃演習と言うと分かりやすいだろうか
伊庭「10式戦車、聞こえているか?」
島田『こちら戦車。聞こえています』
伊庭「主砲射撃用意だ」
島田『了解。菊池、主砲射撃用意。目標2時方向の丘。弾種徹甲』
伊庭「射撃用意。てええええええええ!」
島田『てええええ』
ズドオオオオオオオオオオオン
装甲車の前を走行中だった10式戦車の主砲が火を吹き、大地を震わせる
武将「うおっ!なんじゃこれは!」
武将「耳が裂ける」
武将「大地が火を吹いたぞ!」
発射された弾は少々離れた場所にある丘に命中する
弾の命中した丘は跡形も無く吹き飛ぶ
伊庭「次だ。迫撃砲射撃用意!」
隊員『迫撃砲発射準備よし。半装填よし!』
伊庭「目標マルフタマルマル。てええええ!」
隊員『てえええええ!』
装甲車のかなり後ろで隊員数名が予め81ミリ迫撃砲L16をセットしていた
セットしていた迫撃砲が発射される
ボシュッ
ヒュッルルルル
ズドオオオオン
この時代のどんな火砲よりも射程の長い兵器にこれまた武将たちはたまげる
矢野「戦車砲も迫撃砲もこの時代の兵士からすれば化け物みたいな兵器だなよな」
県「そうですね。皆、驚愕しています」
県は双眼鏡で武将たちの表情を見ている
伊庭「これで西軍に寝返ろうと思う武将は居なくなっただろう。この行進は成功だな!」
数分間行なわれた自衛隊の行進は武将たちに衝撃を与えることに成功した
燃料弾薬の節約から短時間のみの行進であったが、それでも400年後の武器は戦国時代の兵士を大いに恐怖させたのである
島田「うめえええ!久々にまともな飯食ってる気がするぜ」
丸岡「この時代に来てから糧食ばっかでしたもんね」
行進を終えた自衛官たちは正信が用意した飯を食べていた
東軍の武将たちは自衛隊の行進を見た後に皆、一旦、自分の陣へと戻っている
自衛官たちが居るのは本多正信の陣であった
木村「酒まで用意してくれるとは気が利くじゃないか」
根元「でも俺はやっぱり牛肉が食いたいっすよ。この時代って肉料理とか無いんですか?」
県「あったとしても猪とかの肉だろうな」
根元「うへえ」
県「というかお前ら。何の躊躇も無く飯にがっついてるけど、少しは警戒しろよ?」
島田「何で警戒するんです?」
県「毒が盛られてたらどうするんだ?」
島田「伊庭1尉は毒見役が居るから大丈夫と言ってましたけど」
県「お前らなぁ………」
ため息をつきながら県も飯を食べ始める
正信の陣の横に設営された自衛隊の宿営地は柵で覆ってあった
なるべくこの時代の人間と関わらないようにするためである
平井「でも俺たちの任務は昼間の行進で全て終了ですよね。戦には関わらなくても良いんですから」
県「そういうことになっている。一応、万が一の為に我々も関が原に布陣はするが…………」
平井「じゃあもうすることありませんね。これで安心して寝れる」
隊員達はタイムスリップシテから安心して睡眠を取れたことが無かった
ガチャガチャ
県「?三田村か?なんだそれ」
焚き火を囲うようにして飯を食べている隊員達のもとに武士たちが使っているような刀や兜を持った装甲車の車長である三田村がやってくる
三田村「いやぁ。この時代の刀とか兜って元の時代に戻ったときに売ったら、結構高値で売れそうで」
根元「まじか!俺ももらってこよっと」
県「三田村。お前どっから刀を盗んできたんだよ」
三田村「盗んでません。物々交換ですよ」
県「何と交換したんだ?」
三田村「腕時計です」
県「ハァ………。この時代の人間とは関わるなって言ったのに…………」
島田「俺はちょっくら姫様ナンパしてくるわ」
丸岡「ここ一応戦場ですよ?それに車長の顔じゃ無理ですって!」
ボカッ
丸岡「いてっ」
島田「うるせえ」
丸岡「殴らなくてもいいじゃないですか」
島田「ったく。そういえば伊庭1尉たちは何処行ったんですか?」
県「小隊長たちは東軍首脳と会議してる。そろそろ終わる時間だと思うが」
~本多正信の陣~
東軍首脳による会議は無事終了していた
会議の内容は西軍の動向の報告や関が原での布陣、小早川等の武将に対する対応、そして自衛隊の立場についてであった
約束通り自衛隊は戦には参加しなくても良いということが決定されたが、万が一、東軍が負けそうになった場合は自衛隊が戦闘に加わることにもなっていた
戦闘とは、小早川秀秋などの武将の陣にヘリや火砲で威嚇射撃をしたり、石田三成の陣をヘリボーン攻撃したりする等である
ただ、現在のところ西軍に寝返ろうとしていた武将も東軍に留まり、史実通りに戦が進行することが予想されていたので伊庭は自衛隊が戦闘に参加することはほとんど無いと思っていた
正信「おぬしら“じえいたい”のおかげで東軍は何とか崩壊を免れた。改めて礼を言いたい」
伊庭「良いんです。我々も食料等を供給してもらっている立場ですから」
会議が終わった後、伊庭と正信は2人で話していた
正信「しかし、鉄の馬や鉄の鳥。あれらは一体何処で手に入れたのじゃ?」
伊庭「お答えすることは出来ません」
正信「そう言うと思っておった。まあ、何となくは想像できるがの」
伊庭「想像できると言いますと?」
正信「最初は南蛮の者かと思いもしたが、おぬしらはわしらと同じ言葉を使っておるのでの。南蛮人では無い。しかし、この国におぬしらのような格好をしたものは居ない」
伊庭「……………」
正信「それに雰囲気がわしらとは違うのじゃ。これはもしや、別の時代の人間なのではないか…………」
伊庭「……………」
正信「はははは!馬鹿なことを考えてしもうたな」
伊庭「正信殿。我々は………」
正信「無理に話さんでもよい。おぬしらはここに存在している。それだけで十分じゃ」
伊庭「はあ」
正信「それと、おぬしらが“ここ”に現れたのは意味のあることじゃとわしは思うぞ」
伊庭「意味のあること…………」
正信「そうじゃ。わしの直感じゃがな」
伊庭「……………」
正信「わしがこの戦いでおぬしらを味方につけてでも勝ちたい理由は話しておらんかったな?」
伊庭「はい」
正信「殿………。亡き家康殿のことじゃ。殿はこの戦いに勝って天下を取った後、太平の世を造るおつもりであった」
伊庭「太平の世……ですか」
正信「そう。武士も農民も商人も平和に暮らせる、戦の無い世のことじゃ。わしは殿からその話を聞いたとき、正直そのような世はあり得ないと思うた。じゃが、殿から太平の世の仕組み等を聞いて確信が持てた。殿なら太平の世が築けるとな」
伊庭「しかし、その家康は………」
正信「そうじゃ。もう殿はここには居ない。じゃが、殿の意思はわしが受け継いでおる。わしが殿の夢をかなえるのじゃ」
伊庭「太平の世か。そうですね。そのうち必ずその世は来ると思いますよ」
正信「……………。そうか」
矢野「小隊長!万が一の為のヘリボーン作戦の案を空挺隊員達と考えました。目を通してみたください」
自衛隊の宿営地のほうから矢野が駆け寄ってくる
伊庭「分かった。では正信殿。これで失礼します」
正信「おう」
伊庭が去り一人残された正信はぽつりと呟く
正信「伊庭殿は………。全て知っておるのだろう?」
乙ですとてもおもしろいです
楽しみです
乙乙
楽しみに待ってるよ
おつかれさんです
1600年9月20日
史実とは少し遅れる形ではあるが、東西両軍の各武将は関が原に布陣した
桃配山には亡き徳川家康の代わりに県3尉をはじめとした自衛官複数人が“家康役”として家康の配下の兵だった者たちと共に布陣した
本来の歴史では本多正信は中納言秀忠に従い上田城で真田昌幸の善戦によって遅参するはずであったのだが、現在は関が原の十九女池の後方に布陣している
桃配山の県3尉ら数名の隊員以外の自衛官と装備は全てこの正信の陣に居て戦況を見守る形となった
関が原における各武将の布陣はおおむね史実通りであったが、前田利家が正信の代わりに上田城を攻めているのと、伊達政宗が関が原に居ること等、史実と異なる事態も起きている
~正信の陣~
伊庭「霧が濃いな。俺たちがこの時代に来た日を思い出す」
関が原は霧に包まれていた
これも史実通りである
矢野「全装備の点検が終了しました。県の言うとおりなら我々の居る陣は史実にはありません。もしかしたら攻撃される可能性もあるために塹壕を掘り、襲撃に備えています」
スコップを片手に矢野が報告する
本多正信の陣は史実には存在しない
よって攻撃される可能性もあったのだ
伊庭「よし。全軍が布陣してから2時間が経過した。そろそろ宇喜多隊と福島隊が戦い始めるはずだ」
矢野「その両軍の戦いが関が原で一番の激戦って県の奴が言ってました。大河ドラマでも見る気分ですよ」
伊庭「ドラマよりももっと酷い戦いだろう。先日の杭瀬川以上の戦いだ。一体何人の人間が死ぬことになるのか………」
矢野「ヘリで三成の陣地を一気に叩いてしまえば戦いを直に終わらせることも出来るのでしょうけど………。それだと史実通りでは無い。何というか、やるせないですよ」
伊庭「だな」
一応、ヘリによって三成の陣を攻撃する作戦も伊庭は考えていた
だが、それは最終手段である
伊庭「杭瀬川での負傷者はどうなっている?」
矢野「衛生の海野2曹が言うには感染症の心配も無く、命には別状は無いようですが、戦闘への参加は無理ですね。陣の一番奥の天幕で通信係をしてもらってます」
初日の戦闘で負傷した隊員は回復してはいたが、足を骨折していたり等、戦闘に参加できる状況では無かったために後方支援に回していた
伊庭「そうか。負傷した隊員に負担はかけたくなかったが、人員不足は深刻だからな………」
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
伊庭「!?」
矢野「!?」
パパパパパパン パパパパパン
伊庭「この射撃音は火縄銃の射撃音か!」
矢野「開戦したか!」
霧に包まれた関が原に銃声と歓声が響く
木村「県3尉から通信が入りました。福島隊の鉄砲隊800名が宇喜多隊に突撃。戦闘が開始されました」
陣の奥の天幕から木村が走ってくる
伊庭「わかった。福島と宇喜多が戦闘を開始したのなら、小西や織田、黒田や細川も戦闘を開始し始めるはずだ。各軍勢の様子を引き続き監視してくれ」
木村「了解」
矢野「史実通りですね。この調子で戦が進んでくれれば………」
~開戦から約1時間後~
正信「石田隊と黒田隊、細川隊が激戦を繰り広げているが黒田と細川が押されているか」
伊庭「石田の陣の防御が強く、攻めるのが困難なようですね」
関が原各地で戦が繰り広げられている
福島と宇喜多の戦いや石田と黒田・細川の戦いなどは特に激戦であり、一進一退の攻防が行われていた
矢野「……………」
木村「酷いものですね」
隊員達はそれらの戦いを見て言葉を失っている
多くの人間が矢や槍や鉄砲によって血を噴き出しながら倒れる
その倒れた人間を踏みつけながら戦は平然と行われているのだ
島田「こんな戦いとっとと終わらせちまえばいいんだ。戦車で石田三成の陣に突っ込んでよ」
伊庭「それは出来ない」
島田「分かってますよ。分かってますけど…………」
おおおおおおおおお!
パパパパパン
カキーン カキーン
ぐあああああ!
土煙の中で今も多くの兵が倒れている
伊庭「県が言うには黒田の狙撃兵が島左近を負傷させて両軍は互角の戦いになるみたいだが」
木村「そのような様子はありませんね。どっちかって言うと黒田が負けそうな気が…………」
石田三成の陣にある大筒や鉄砲などで黒田・細川は苦しめられ、徐々に後退している
正信「大谷吉継も藤堂隊、京極隊を圧倒しておる。さすがと言ったところじゃが…………」
伊庭「西軍の部隊は自軍を守っているだけだったが、徐々に戦線を拡大して東軍を圧倒してきている。中立の軍勢や小早川などの軍勢も西軍につくような動きをしているという報告がある」
矢野「県が言うにはこれは史実通りでは無いみたいです。本来なら西軍の各武将は自陣の防衛に専念しているはずなのですが、“各武将が連携した動きを見せています”」
伊庭「連携…………」
矢野「東軍を包囲するような陣形を取ろうとしているみたいです」
正信「東軍のほうが数の上では優勢じゃったから、各武将で連携して西軍を包囲する予定であったのじゃが、どうも連携が取れなくての」
伊庭「それはやはり家康の死によって東軍が未だにまとまっていないことが原因ですか?」
正信「それもある。じゃが、“じえいたい”の味方した事実によって主力の武将たちは士気を上げておった。伊達、福島などの軍勢は一応のところ連携が取れている。しかし、いくつかの軍勢の動きが鈍いのじゃ」
伊庭「我々の行進によって東軍の武将は全て士気を高めたと思っていたが、現実はそう甘くなかったということか………」
矢野「どうします?県の報告では先程、石田光成が戦に参加していない武将に戦に参加するように呼びかけて、かなりの軍勢が参戦したとのことです。もし仮に西軍が東軍の包囲を完了して攻めてきたら我々の装備で戦況を覆すことも困難になりますが」
伊庭「……………」
石田と黒田・細川の戦い、そして大谷と藤堂の戦い
これらの戦いが史実とは異なって、西軍が圧倒している戦いであった
また、宇喜多・石田・小西・大谷は前進して東軍を包囲しようとしている
この状況下で中立の武将や小早川秀秋が西軍に加勢したとすれば東軍は総崩れになる
伊庭「……………。よし。ヘリの発進準備だ」
矢野「了解!」
伊庭「ヘリを使用して小早川秀秋をはじめとする叛乱するであろう武将に威嚇攻撃を実行。彼らを東軍に寝返らせる。また、西軍の優勢の武将にも攻撃をして東軍の劣勢を優勢に変える。今、戦況を変えなければ東軍は敗れる可能性があると考慮した上での参戦だ」
こうして関が原の戦いに自衛隊が参戦することが決定した
キュイイイイイン
バババババババババババババ
本多正信の陣とは少し離れた場所に駐機してあったヘリが始動する
伊庭「頼んだぞ。島2尉」
島「了解。小早川秀秋、脇坂安治の陣への威嚇射撃。島左近、大谷吉継の狙撃。必ず遂行します」
小早川らの武将が叛乱すれば赤座、小川、朽木も叛乱に加り、中立の立場の軍勢も西軍に加勢することは無いとの県の話から、威嚇射撃を行うのは小早川、脇坂の両軍に限定された
また、史実では合戦中に討ち死にした島左近と大谷が東軍を圧倒している現状を変えるために、その両名の狙撃も決定された
伊庭「すまない。荷が思い任務だと言うのは承知している」
島「この乱戦の中、地上部隊を出動させるのは危険ですからね。ヘリによる作戦の実行が一番現実的でしょう」
清水「ヘリはいつでも発進できます。一番近いのは脇坂の陣ですから、脇坂の陣に真っ先に向かいます。その次に松尾山の小早川」
ヘリのパイロットである清水が言う
清水は正信から小早川らの旗印と陣地を教えられていた
さらに関が原の地形図と教えられた陣地を照らし合わせ、正確な陣の位置を確認している
島「では、空挺隊員5名。状況を開始します」
伊庭「頼んだ」
島と伊庭は敬礼をする
そして、その後、島と清水は既に始動し始めていたヘリに乗り込んだ
バババババババババババババババ
UH-60JAヘリは発進する
伊庭はヘリが見えなくなるまでずっと敬礼をしていた
~UH-60JA内~
清水「脇坂軍の陣の上空に到達するのは5分後になります」
島「了解した。大賀、望月、ドアガンの用意」
大賀「了解」
大賀と望月の空挺隊員がヘリに搭載された12.7ミリ機関銃M2に給弾を開始する
三好「おっ。ヘリの登場でみんな驚いてるぜ」
開放されたヘリのサイドドアから下の様子を見ている三好が興奮したように言う
突如現れたヘリに地上の兵士たちは驚愕している
中には一旦、戦いを止めて空を見上げている者までいた
島「こりゃ歴史の教科書に“関が原には巨大な鉄の鳥が現れた”とか書かれるかもしれないな」
大賀「そんな教科書があったら俺も歴史が好きになってたでしょうね」
島「かもな」
望月「ドアガンの発射準備完了」
島「おう。威嚇射撃だからな。なるべく兵士は殺すな。ただ、威嚇射撃時には低空飛行をするから鉄砲隊や弓兵は場合によっては制圧するぞ」
大賀・望月「了解」
清水「まもなく脇坂軍の陣地の上空だぞ。…………!。あれか!」
ヘリは脇坂軍の陣地の上空に到達した
史実では脇坂は小早川が大谷軍を攻撃した後に寝返る(史実では最初から寝返る事を決定していたのだが、家康の死の噂によって西軍につくことを決めていたと本多正信は伊庭に言っていた)のだが、自衛隊は先に脇坂を攻撃することにしていた
脇坂の陣地はヘリの登場に混乱する
ナンジャアレハ
モシヤ、トウグンニミカタヲシタトイウジエイタイカ
ヤヲハナテ テッポウデウチオトセ
パパパパパパン
ヒュンヒュンヒュン
島「鉄砲隊と弓兵の攻撃を確認。2時の方向だ。機関銃で一掃する。清水2尉。ヘリの側面を鉄砲隊の方向に向けてくれ」
清水「了解した」
バオオオオオオオオ
UH-60JAはドアガンの設置されている側面を鉄砲隊の方向に向ける
島「大賀。鉄砲隊と弓兵を叩け」
大賀「了解」
ドドドドドド ドドドドドドドン ドドドドドドドド
ドドドドド
ぎゃあああ!ぐあっ!
発射された12・7ミリの弾が鉄砲隊と弓隊の身体を木っ端微塵に吹き飛ばす
望月「……………くっ」
大賀「慣れませんね………。やっぱ」
吹き飛ばされた兵士を見て大賀は言う
鉄砲隊と弓兵は機関銃の掃射によって壊滅していた
その様子を見て脇坂の陣地は混乱していた
島「脇坂安治はあそこか。陣地の中央に降下する。清水2尉、武将と思われる奴がいる場所の上空でホバリングしてくれ」
清水「了解」
島「大賀はヘリ上から援護を頼んだ」
大賀「了解しました」
島「総員降下!」
脇坂軍の陣地の中央でホバリングしたヘリから島をはじめとした空挺隊員4名が降下する
地上に降下した隊員達は陣の中央に居る武将・脇坂安治に近づく
雑兵「なんじゃ!おぬしら!」
雑兵「殿の命はわしらが守る!ここは通さんぞ!」
島「我々は脇坂安治の命を奪いに来たのではない」
雑兵「なんじゃと?」
島「脇坂殿はあなたでよろしいか?」
島は雑兵に守られる形で立っている一人の武士に話しかける
脇坂安治「そうじゃ。わしが脇坂じゃ。おぬしらは東軍に味方したという奇妙な輩じゃな?」
島「さすがに我々のことは知っていたか」
脇坂「わしも半信半疑であった。鉄の鳥に連発銃。して、おぬしらはわしに何の用じゃ?………まあ、分かってはおるが」
島「西軍への加勢を止め、東軍に味方をしてほしい。そうすれば我々はあなたに攻撃をしない。ヘリ………鉄の鳥が東軍にある以上、西軍は必ず負ける。それなら東軍に味方をしたほうが有益では無いか?」
脇坂「…………そうじゃな。わしも配下の兵をここで皆殺しにされるわけにはいかぬ」
島「では!」
脇坂「今より!わしらは西軍へ攻撃を開始する!皆の者、わしに続け!」
おおおおおおおおおおおおおおおおおお!
脇坂「これで良いのか?」
島「はい。ありがとうございます」
脇坂「おぬしの名は?」
島「陸上自衛隊、第一空挺団所属、島和武2等陸尉です」
脇坂「ふむ。島とやら、おぬしらは自分たちの力に相当な自信があるようじゃな」
島「は?」
脇坂「じゃがな。油断するでは無いぞ」
島「………………?」
望月「島2尉。時間は限られています。東軍が完全に包囲される前に任務を遂行しないと」
島「ああ。総員、ヘリに乗れ!小早川の陣へ行くぞ」
乙乙
こっちは体重をどう落とすか悩んでるのにww
バババババババババババババババ
脇坂の陣を飛び立ったUH-60JAは小早川秀秋の陣の上空へとやってきた
清水「旗印からして小早川の陣に間違いない」
島「よし脇坂の時と同様の作戦で行く。鉄砲隊と弓兵の存在は確認できるか?」
清水「さっきよりも多い。陣の中央………。小早川秀秋の居ると思われる場所の横に鉄砲隊。それに10時方向に弓兵が居る」
島「攻撃は?」
清水「まだ無い。だが、鉄砲隊は火縄に火が付けられている。いつ攻撃されるかは分からないぞ」
島「分かった。大賀、機関銃で鉄砲隊と弓兵を蹴散らせ」
大賀「了解」
先程と同じように大賀はヘリのドアガンである12.7ミリ機関銃を鉄砲隊に向ける
清水「鉄砲隊の方向に側面を向ける。振り落とされるなよ」
バオオオオオオオオ
大賀「射撃準備完了」
島「撃ち方はじめ!」
ドドドドドド ドドドドドドドドド
ドドドドドドドドドドドドド
ドドドドドドドドド
ぎゃあああ!うがあ!
山田「弓兵、矢を放ってきました。低空飛行ですので矢がヘリに接触します」
カンカンカンカンカン
清水「機体に損傷は無いか?」
山田「メインローター、テールローター共に異常なし。損害はありません」
副操縦士の山田が報告する
清水「レフトターン。機関銃を弓兵の方向に向ける」
バオオオオオオオ
ヘリは旋回して弓兵を機関銃の射程に捕らえる
大賀「あそこかっ!」
ドドドドドドドドン ドドドドドドドド
ドドドドドドドドドドドドド
弓兵は吹き飛ばされ、ヘリに対する攻撃は皆無となった
清水「ホバリングに入るぞ」
島「分かった。総員、降下準備」
島の号令と共に4名の隊員がヘリから降下準備を始める
清水「この調子で作戦が上手く遂行されれば良いんだけどな」
山田「はい。今のところは順調ですからね……………」
清水「ああ。……………?」
山田「どうかしましたか?」
清水「いや。あれって小早川秀秋って奴でいいんだよな?」
山田「何か大将っぽい奴ですよね。意外と若そうです」
清水「ああ。そいつの横に居るやつが見えるか?」
山田「え?はい…………。!?」
清水「あれって」
小早川秀秋と思われる武将は陣の中央で座っていた
ヘリに驚いてはいるものの、何故かその姿には“余裕”があった
清水「え?どういうことだ?何であれが?」
山田「し……清水さん。何がどうなって?」
清水「どうするって………!」
バシュッ
シュウウウウウウウ
清水「緊急回避行動。島2尉!振り落とされないように捕まってろ!」
島「え?」
バオオオオオオオオオ
ヘリは急旋回を始める
シュウウウウウウ
ズドオオオオオン
島「何だ?のろしか何かか?」
小早川秀秋の陣から発射された“それ”はヘリの真横を通り過ぎて爆発する
清水「のろしじゃない!あれは対戦車ロケットだ。作戦は一時中止してこの場を離脱する!それと伊庭1尉に無線で報告!」
島「対戦車ロケット?」
大賀「どういうことだ…………」
山田「清水さん!真下です!」
清水「何!?」
ヘリの真下に対戦車榴弾の発射機を抱えた人間が見える
その人数は4名ほど
清水「上昇して回避!」
山田「間に合いません!」
バシュッ
バシュッ
バシュッ
バシュッ
発射された対戦車ロケットはRPG-7
RPG-7の命中精度はあまり良いものではなく、回避行動をとるヘリを撃墜するのはかなり難しかった
しかし、低空飛行でホバリングしていたUH-60JAは格好の的でしかなく、外す方が難しいといえた
シュウウウウウウ
ドンッ
カーンッ
清水「3発は回避!………残りの1発は」
山田「テールローターに着弾。機体のバランスが取れません!」
清水「くそっ!エンジンカット。燃料の流入を防げ」
山田「エンジンカット。オートローテーションに入ります」
機体のバランスを失ったUH-60JAはくるくる回転しながら落下する
清水「島2尉!何とかしてヘリは着陸させる。着陸した後はすぐにヘリから離れてくれ!」
島「分かった!」
ヘリから振り落とされないように空挺隊員達はヘリにしがみついている
パイロットの清水は凄まじい技量で対戦車ロケット4発中、3発をかわしただけでなく、バランスを失ったヘリを着陸させようとしていた
清水「伊庭1尉に無線を!」
山田「はい!」
清水「伊庭1尉!こちらヘリ。現在、小早川陣地にて対戦車ロケットによる砲撃を受けた。ヘリは飛行不能。不時着します。よって任務の続行は…………」
伊庭『何!?』
山田「地面と接触します!」
清水「くそっ!島2尉。着陸するのは小早川の陣のど真ん中だ!周囲は敵だらけ。おまけに対戦車ロケットまで飛んでくる。着陸後はすぐにヘリから降りて戦線離脱をおおおおおお!」
バババババババババババババババ
キュイイイイイイイン
ガガガガガガガガガガ
ズドドドドドドドドド
UH-60JAヘリは地面に回転しながら不時着する
ローターは折れて、ドロップタンクは弾け飛んだ
折れたローターは周囲に居た小早川の配下の兵士を切り刻み、ヘリ本体も兵士を押しつぶす
雑兵「ぎゃあああ!」
雑兵「とのおおおお!」
雑兵「ぐああああああ!」
今日はここまで
何か続戦国自衛隊っぽくなっちゃいましたが、ヘリを墜落させるのと自衛隊を苦戦させるにはやっぱこうしないと無理ですねww
でも自分は戦国武将vs自衛隊が好きなので、敵側の現代の兵士はあんまり出しません
てかほとんど出しません
あと一度やっとかなきゃと思っていた人物紹介です
現在生存者・36名
・伊庭義明(1尉) 小隊長
・矢野(2尉) 副隊長
・県(3尉) 歴史オタ
・木村(曹長) みんな頼れる先任曹長
・三田村(1曹)装甲車車長
・加納(2曹) 装甲車操縦手
・三村(士長) 狙撃手
・根元(3曹) 軽装甲機動車操縦手
・平井(3曹) 最初の偵察に行ったメンバー
・須賀(士長) 最初の偵察に行ったメンバー
・西沢(1士) 通信手
・小野(1曹) 戦車奪還に参加
・海野(2曹) 衛生科 まだ出してないけどWAC
・清水(2尉) ヘリのパイロット
・山田(3尉) ヘリのコパイロット
・島和武(2尉) 空挺隊員の隊長
・望月(3尉) 空挺隊員
・大賀(1曹) 空挺隊員の狙撃手
・三好(2曹) 空挺隊員
・穴山(3曹) 空挺隊員
・島田(曹長) 10式戦車車長
・丸岡(2曹) 戦車操縦手
・菊池(3曹) 戦車砲手
残存戦力
10式戦車
96式装輪装甲車
軽装甲機動車(2両)
高機動車(2両)
73式小型トラック(3両)
73式大型トラック(2両)
73式中型トラック
その他、小火器・重火器などなど
~本多正信の陣地~
伊庭「対戦車ロケットでヘリが墜ちた…………だと」
矢野「どういうことだ!?」
伊庭「木村!双眼鏡で確認できるか?」
木村「小早川の陣に黒煙が視認出来ます。おそらくヘリが墜落したものと思われます」
伊庭「何てことだ………」
矢野「西軍に俺たち以外の自衛隊員が味方していたってことか?」
伊庭「わからん。とにかく、今は島2尉たちの安否の確認と救援だ」
矢野「……………。自衛隊が東軍に味方した事実を知っても尚、小早川たちが西軍に肩入れしていたのはこのためだったってことかよ」
正信「伊庭殿!これは一体どういうことじゃ!?」
伊庭「本多殿」
正信「鉄の鳥が墜ちたとの知らせを聞いたのじゃが…………」
伊庭「はい。ヘリ………鉄の鳥が墜落しました」
正信「なんと!なぜじゃ?」
伊庭「西軍にも我々と同様の力を持った組織が味方していたんです」
正信「“じえいたい”が…………西軍にも?」
ザザッ ザザザッ
木村「県3尉から無線です」
伊庭「代われ」
木村「はい」
無線『ザザッ こちら県。小隊長、応答願います』
伊庭「こちら伊庭。どうした県?」
県『ヘリがロケットにやられたのをこちらでも確認しました。東軍各武将は動揺しているみたいです』
伊庭「それはそうだろうな。俺たちも動揺している」
県『ほとんどの武将は東軍の為に戦っているのですが、何人かの武将は西軍に寝返ろうとしているようです。兵の士気も下がっています。逆に西軍の士気は高まったみたいですが…………』
伊庭「戦況は?」
県『小早川秀秋が完全に西軍に味方して戦い始めています。小早川に続いて、他の中立の立場だった武将も西軍に………。島、大谷の各軍勢は東軍を圧倒しています。宇喜多軍も同様。黒田・細川の軍はほぼ壊滅状態。他の東軍武将たちもかなり苦戦しています。このままでは東軍は西軍に囲まれて一気に負けてしまうでしょう』
伊庭「……………」
県『この勢いだと西軍が桃配山を制圧するのも時間の問題です。小隊長たちの陣も危ないかと…………』
伊庭「戦況を覆す方法は…………。三成を我々が仕留める他に方法は無いか」
県『はい。我々の装備だけで、現在、東軍を圧倒している島、大谷、宇喜多などの軍勢を倒すことは不可能でしょう。敵の大将を叩くしかありません。しかし…………』
伊庭「しかし?」
県『ヘリを失った以上、地上から石田三成の陣地へ行くのは困難です。この乱戦の中を車両で突破するのですから。仮に、車両で石田三成の陣へたどり着いたとしても、それまでに桃配山が陥落してしまう可能性があります。さらに敵には対戦車ロケットで武装した近代兵士も居るので…………』
伊庭「だが、やるしかあるまい。県、お前はそこで“徳川家康の代わり”として東軍の指揮を執れ。ただし危険になったらすぐにでも車両で逃げろ」
県『いえ、それは出来ません。自分は桃配山を死守します。自分は偽者であれど、今現在は東軍の総大将です。大将は戦線離脱出来ませんから』
伊庭「馬鹿なことを言うな。我々が最優先とするのは我々自衛官の命だぞ!」
県『小隊長。自分は信じています。桃配山に西軍は到達しません』
伊庭「何を………言ってるんだ?」
県『小隊長ならこの戦況を覆せるはずです。西軍が桃配山に到達する前に小隊長が三成を倒してくれることを自分は信じています。では、自分は各武将に指示を与えなくてはならないので…………』
ザザッ ピー
伊庭「県!応答しろ!県!」
木村「回線が切れました。むこうから強制的に切断したようです…………」
伊庭「県…………」
ザザザッ ザザザッ
伊庭「!?」
無線『ザザッ こちら………ザザッ 島………』
伊庭「島2尉か!?」
島『現在、墜落したヘリから脱出して…………。タタタタタタタ ザザッ 周囲を小早川の兵に囲まれている状況に………。タタタン タタタン ギャアア 』
伊庭「何!?」
島『空挺隊員は全員無事ですが……………。清水と山田の2名は墜落時に死亡しました………』
伊庭「清水と山田が………。島2尉、貴官たちの場所を教えろ。今すぐに救援に行く」
島『救援は不要です。伊庭1尉。我々の居る場所は乱戦の真っ只中で、救援に来た隊員達も危険な目に遭ってしまう。それに、伊庭1尉には他にやることがあるでしょう?』
伊庭「島……2尉」
島『それともうひとつ報告。ヘリを落とした奴らが分かりました』
伊庭「誰だ!?」
島『我々が元の時代で倒そうとしていたテロリストたちですよ。人数は1個小隊規模。武装はRPGとAK-47です。奴らは西軍というよりも小早川に味方していたみたいです。つまり、我々空挺隊員5名は小早川秀秋の軍とテロリストたちを同時に相手にしているわけです。ハハハハ』
伊庭「笑い事じゃないだろ!たった5名で相手に出来る敵じゃない!やはり救援に行く」
島『元々、あのテロリストは我々空挺隊員が制圧すべき敵でした。だから我々が倒します。伊庭小隊長は石田三成を倒して戦況を覆しt…………ガガガガガガガ ガガガガガガ ドドーン』
射撃音と爆発音を最後に島2尉との連絡が途絶える
矢野「最後に聞こえてきた射撃音は我々の使っている小銃の発砲音じゃないぞ」
木村「テロリストって…………。いくら空挺隊員でも、1個小隊規模で対戦車ロケットも持っている武装集団に小早川秀秋の軍勢全てと戦って勝てるわけないですよ!」
矢野「たかが5名で…………。小隊長!やはり救援に」
伊庭「……………。もう迷っている時間は無い」
矢野「小隊長?」
伊庭「ここに居る隊員全員を集めろ。今から我々は石田三成の首を取りに行く!」
うおおおおおおお
ねおつ
面白い
見入ってしまった
昨日寝落ちしました
ごめんなさいっ!
今から続き書きます
~本多正信の陣~
伊庭「全員揃ったか?」
伊庭の前に正信の陣に居た隊員が全員集合する
空挺隊員5名と桃配山に居る県3尉たち3名を除いた26名が集まっていた
集まった隊員の顔は皆、緊張した顔つきだ
伊庭「先程言ったように、UH-60JAが対戦車ロケットによって落とされた」
ザワッ
伊庭「対戦車ロケットを発射したのは我々が元の時代で制圧しようとしていたテロリストたちだ。テロリストは小早川の陣に居て、現在、島2尉たち空挺隊員と交戦中である」
隊員「島2尉たちが!?」
隊員「じゃあ、すぐにでも救援に!」
隊員「テロリストって!………くそっ」
伊庭「落ち着けみんな。島2尉たちの救援もしたいところだが、それ以外にもやることがたくさんある」
隊員「たくさん……とは?」
伊庭「本来は討ち死にしたはずの武将たちが東軍を圧倒してしまっている。このままでは東軍は完全に包囲されてしまう。家康………、いや、県たちの居る桃配山が制圧されるのも時間の問題だ。桃配山だけじゃなく、この本多正信の陣も制圧されるだろう。そうなったら歴史は完全に変わってしまい、俺たちの居た平成の世は完全に消滅してしまうんだ!」
隊員達「「 ……………… 」」
伊庭「我々は未来の………、平成の世の日本国民を救うために戦わなくてはならない。だが、戦いに参加すれば命の危険もある…………。俺はお前たちを戦いには…………」
矢野「はあ………。しつこいぜ。小隊長」
伊庭「矢野………」
矢野「俺たちは小隊長についていく。この間確認したばっかじゃねーか。なあ、お前ら!」
隊員一同 「「 はいっ! 」」
そう言って隊員達は伊庭に敬礼をする
伊庭「お前ら………。戦いたくない奴は無理に戦わなくても良いんだぞ!?」
しかし、誰一人として動こうとしない
隊員達は全員、伊庭に敬礼したままだ
伊庭「よし!分かった!お前たちの命は俺が預かった!」
矢野「そうこなくっちゃな!」
島田「うっし。戦車の出番だな!腕が鳴るぜ」
伊庭「東軍を包囲して、桃配山を制圧する勢いがある武将は石田三成配下の島左近、宇喜多、小西、大谷だ。これらの武将が現在、桃配山を包囲する陣形を取ろうとしている。我々はこの状況を打破する為に、各武将を倒しに行く」
木村「島2尉たちの救援は………?」
伊庭「それに関してだが、史実通りなら大谷軍は小早川隊に倒されるはずだ。そこで島田!」
島田「はい?」
伊庭「島田は戦車を使用して小早川の陣に突入、島2尉たちの救援とテロリストの制圧、さらに小早川を説得して大谷吉継を攻撃するように仕向けてくれ」
島田「うっひょ~。やることたくさんだな~」
伊庭「すまない………」
島田「いえいえ。10式戦車の力を小早川に見せ付けてやりますぜ!まかしてください!」
矢野「そうすると残りは島、宇喜多、小西か」
伊庭「我々自衛隊の人数にも限界がある。負傷者と正信の陣の護衛を除いた場合、動ける隊員は戦車の乗員を含めて20人程度しか居ない。よって、比較的侵攻スピードの遅い小西の軍は放置する」
木村「となると宇喜多と島を倒しに行く………ということですね?」
伊庭「そうだ。隊を2つに分ける。片方は俺が指揮を執る、もう片方は矢野が指揮を執れ」
矢野「了解」
伊庭「俺の隊は島左近を倒しに行く。島左近は石田三成の先陣でもあるから、島左近を倒すと同時に、石田三成も倒す。矢野の隊は宇喜多秀家を倒しに行ってくれ。負傷者と衛生科の隊員はこの正信の陣にて、戦況の確認と連絡係、並びに陣の護衛を任せる。もし、西軍の隊が攻めてきたら本多正信の命を守るんだ」
海野(2曹 衛生科 女性自衛官)「了解しました」
伊庭「いいか?必ず、全員生きて戻って来い。これは命令だ!」
隊員達「「 了解! 」」
※自衛隊の作戦時の編成
・島左近勝猛、及び石田三成討伐隊(10名)
・指揮官 伊庭1尉(小隊長)
・副官 木村曹長
・その他隊員
三村(士長)狙撃手
根元(3曹)
平井(3曹)
須賀(士長)
車両
軽装甲機動車・高機動車・73式小型トラック(2両)
・宇喜多秀家討伐隊(10名)
・指揮官 矢野2尉
・その他隊員
三田村1曹(装甲車車長)
加納(装甲車操縦手)
小野(1曹)
車両
軽装甲機動車 96式装輪装甲車 高機動車
・本多正信の陣の防衛隊(負傷者含め6名)
海野(2曹 衛生科)
西沢(1士 通信科)
車両(補給車両)
73式大型トラック(2両) 73式中型トラック
・小早川討伐隊・及び空挺隊員救援
10式戦車乗員と10式戦車
・桃配山
県3尉ら3名の隊員
脱出用に73式小型トラック2台が置いてある
※交戦中
島2尉たち5名の空挺隊員
ああそうか・・・自衛隊には女性隊員もいるのか・・・
~小早川の陣・島2尉たち~
墜落したヘリは墜ちる前にエンジンを停止させておいたことによって爆発を免れた
しかし、バランスを失ったヘリは地面に衝突してコックピットはグシャグシャに潰れてしまった
無論、清水2尉と山田3尉は殉職した
かろうじで生き残った島2尉たち5名の空挺隊員は破損を免れたヘリ搭載の無線で伊庭との連絡をとっていたのだが、連絡が全て終わる前に再びRPG-7の攻撃を受けてしまう
島「くそっ!」
シュゴオオオオオオ
ズドンッ
大賀「2時方向だ!対戦車ロケットで攻撃を受けた!」
望月「小早川の兵も押し寄せてきます!くっ」
ヒュンヒュンヒュン
カンカンカンカン
テロリストの対戦車ロケットだけでなく、小早川秀秋の兵が放った矢も襲い掛かってくる
矢だけではなく槍や刀を振りかざした雑兵も島たちがいる墜落したヘリに押し寄せてきた
その数は数百に及ぶ
おおおおおおおおおお!
島「くそっ!今の揺れで無線がぶっ壊れた」
大賀「これ以上ヘリの中に留まるのは危険過ぎる!敵のロケットからすればただの的だぜ!?」
穴山「でも外は矢の雨が降るような状態ですよ?それにテロリストだけじゃなく小早川の雑兵も押し寄せてきて………」
ズガガガガガガガガガ
カカカカカカカカカン
三好「うおっと!こりゃテロリストの自動小銃か!?」
島「テロリストたちはどこに!?」
大賀「あそこだ!マズルフラッシュを確認!」
島「よし!まずはテロリストたちを倒すぞ」
大賀「どうやって!?雑兵はどうするんです!」
島「スタングレネードとLAMで怯ませる。いいか?あのテロリストたちは元々、我々が倒すはずだった敵だ。必ず俺たちの手で倒すぞ」
大賀「了解っ!」
望月「ヘリに積んであったLAM(対戦車榴弾)は5発です。これで押し寄せてくる兵を全員倒せるとは思えませんが………」
島「5発あれば十分だ」
穴山「外は四方八方を敵に囲まれていますけど………」
島「俺たちは自衛隊の精鋭部隊だぞ。刀や槍しか持っていない兵士の数百人くらい軽くあしらってみせろ!」
空挺隊員達 「「 了解! 」」
とりあえず今日はここまでです
>>277 >>278
コメントありがとうございます!
>>279
うわあああ!ありがとうございます!すごい嬉しいです!
>>284
初登場です
正信の陣の防衛で活躍させます!
~宇喜多秀家討伐隊・矢野2尉たち~
本多正信の陣を出発した矢野たち10名の隊員は宇喜多秀家を討ち取るために関が原の乱戦の中を車両で疾走していた
非装甲車両の高機動車を装甲車両である96式装輪装甲車と軽装甲機動車が囲って守るような車列である
指揮官となった矢野は周囲の状況が見やすい高機動車に乗っていた
幌を外してしまっている高機動車の後部座席は無防備で、矢の攻撃があれば乗っている隊員は危険であったが、時速60キロを上回るスピードで爆走する高機動車に矢を当てられる弓兵はなかなか居なかった
それに、高機動車を守るようにして走行している装甲車と軽装甲機動車の機銃攻撃で鉄砲隊や弓隊、襲い掛かってくる西軍兵士はほとんど倒されていた
オオオオオオン オオオオオン
矢野「小野!現在位置を確認しろ!」
小野「はい!現在位置は関の藤川沿い、宇喜多隊の主力部隊と福島正則の主力部隊の戦場の真っ只中です!」
矢野の任された隊で矢野の次に階級の高い小野1曹が答える
矢野「どこもかしこも兵士だらけ。敵も味方も区別がつかないくらいの乱戦だな」
小野「はい。我々の車両に襲い掛かってくる兵士たちは宇喜多隊の人間でしょうけど………」
カンカンカン
小野「うわっ」
飛来した矢が走行中の高機動車に当たる
矢野「11時の方向、宇喜多の弓隊だ。機関銃で黙らせろ」
小野「はい!」
小野は車載の5.56ミリ機関銃で弓隊を掃射する
タタタタタタタタ タタタタタタタタタン
ぎゃああああ!
ぐあっ
矢野「無線で装甲車と軽装甲機動車に敵の飛び道具を掃射するように伝えろ。残弾は気にせずに容赦なく攻撃を加えろ」
小野「はい!」
雑兵「うおりゃああ!化け物めえええ!」
雑兵「覚悟おおおお!」
ガンッ
カキーン
ガンガン
矢野「くそったれが!近寄ってくるんじゃねえええ!」
ドンッ ドンッ ドンッ
雑兵「ぎゃあ」
雑兵「ぐあっ」
雑兵「にぎゃあああ」
高機動車に槍を突き立ててきた雑兵を単射で確実に矢野は倒していった
大抵の雑兵は車両に近づく前に機銃掃射で一掃される
しかし、当然のことだが、宇喜多秀家の陣に近づくにつれて宇喜多軍の兵士は多くなる
宇喜多秀家の陣に乗り込もうとしている自衛隊の周囲は次第に宇喜多軍の兵ばかりとなっていた
そして、そのため、機関銃の掃射だけでは車両に押し寄せてくる敵兵を対処しきれなくなってきていたのである
矢野「くそ!敵兵の車両への襲撃が多くなってきてる」
小野「矢の攻撃も激しくなってきています。宇喜多隊の本陣付近では今よりもっと激しい攻撃にさらされる危険もあります!」
矢野「装甲車とLAV(軽装甲機動車)の攻撃だけじゃ、もうそろそろ限界が来るか…………」
雑兵「うおおおおお!」
矢野「ちっ」
タタタン
雑兵「ぎゃ」
小野「敵兵は……今にも車両に飛び乗りそうな勢いで迫ってきています………。このままでは」
矢野「小野。銃剣を装着しておけ」
小野「はい」
想像以上に敵兵の迫ってくる勢いが激しく、ついに車両に飛び乗ろうとしてくる雑兵も現れた
時速60キロ近くで走ってくる車両に飛び乗る運動神経と度胸はさすが戦国時代の武士といったところだろうか
宇喜多の兵から自衛隊の車両を守ろうとする福島正則の兵も居たが、いかんせん敵兵の数が多すぎた
気付けば自衛隊の車両の周りは敵兵ばかりになっている
矢野「きりが無いぞ!これ!」
タタタン タタタン
小野「うわっ!」
カキーン
雑兵「きええええ!」
車両に飛び乗ってきた兵の振り下ろした刀を小野は銃剣で防ぐ
矢野「小野!」
ドンッ
雑兵「ぎゃあ」
小野「ハアハア………。矢野2尉、感謝します」
小野に襲い掛かった雑兵を矢野は銃で倒す
矢野「気を抜くな。周りはもうほとんど敵しかいないぞ」
小野「はいっ!」
隊員「矢野2尉!敵兵が多くてこれ以上スピードが出せません!」
矢野「無理にでも突っ切れ!」
隊員「敵兵を礫殺すると血糊等でタイヤがスリップしてしまう可能性がありますが!?」
矢野「これ以上スピードを落としたら、この車は敵に乗っ取られるぞ!スピードを上げて一気に突っ切れ!」
隊員「了解」
ブオオオオン
グオオオオオオ
ドンッ
ドンッ
グッシャア
雑兵「ぎゃあjどあhづづうぇ」
雑兵「うぎゃあkjjdぴあs」
ブチブチブチ
小野「うっ」
矢野「……………ちっ」
雑兵を轢きならがら自衛隊の車両は宇喜多秀家の陣に進んでいく
ドンドンドン
タタタタタン タタタタタタン
ズドドドドドン
ドドドドドドド
タタタ タタタ
カンッ カンッ カンッ
キーン
ぎゃああ
ぐあっ
今日はここまで
う~ん
なかなか進まない……
こういうの見てると戦国時代って内戦なんだなあって感覚で理解できるなあ
ナショナリズムは偉大
ドドドドドドドドドドドドン
タタタタン
タタタタタタタン
カチッ カチッ
矢野「ちっ。MINIMIに給弾する。小野、援護射撃!」
小野「はいっ!」
タタタン タタタン タタタン
雑兵「ぎゃあ!」
雑兵「グアッ」
矢野が撃っていた車載の機関銃が弾切れを起こした
すかさず矢野は機関銃に給弾を開始する
その間、小野は矢野を援護する形で89式小銃を撃ちまくっていた
小野「くそっ」
タタタン タタタン タタタン
雑兵「ぐあっ」
雑兵「ぐっ」
タタタン カチッ
小野「あっ!」
矢野「リロードする暇は無いぞ!俺の小銃を使え!」
小野「はい」
小野は弾の切れた自分の小銃に代わって、床に置かれていた矢野の小銃を構える
矢野「やっぱ2人じゃ限界があるな」
矢野の乗る高機動車には現在3名の隊員しか乗っていない
運転手と矢野と小野の3人だ
であるから戦闘に参加しているのは実質2人ということになる
小野「もう周囲に味方の武将の兵士は居ません!敵だらけでっ………わっ」
タタタン タタタン
矢野「おい!宇喜多の陣にはあとどれくらいで到着するんだ?」
隊員「分かりません!こんなにも敵兵でもみくちゃにされたら…………」
矢野「他の車両は!?」
隊員「我々の乗っている車両を守る形で走行していますけど………。敵が多すぎて」
矢野「装甲車とLAVじゃ押し寄せてくる敵兵をカバーしきれないのか。……………。小野!」
小野「はい?」
矢野「この車に残っている弾はあとどれくらいある?」
小野「5.56ミリの弾は当初積んであった量の半分ほどまで減っています。榴弾や火砲の類はほぼ無傷ですが」
矢野「分かった。これ以上の小銃弾の消耗は避けたい…………。スタングレネードを全て投擲する」
小野「し……しかし。スタングレネードの残数は僅かです。ここで全て使ってしまったら」
矢野「いいから用意しろ」
小野「了解」
隊員「無線で他の車両にスタングレネードを投擲する旨を伝えます」
矢野「助かる」
タタタタタタタタタタン タタタタタタタタタン
タタタタタ タタタタタタタタタ
給弾を終了した機関銃で矢野は押し寄せる雑兵を倒していく
~宇喜多秀家討伐隊・別車両 96式装輪装甲車内~
矢野たちが戦っている場所から数メートル離れた場所を96式装輪装甲車は疾走していた
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
ドドドドドドドドドドドドドドドドドド
隊員「敵兵が多すぎます!高機動車の矢野2尉たちを守りきれません」
三田村「残弾を気にするな!どんどん撃てっ!」
隊員「しかし、このままでは…………」
ボボンッ
隊員「ああああああ!」
三田村「あっ!」
隊員の使っていた車載機関銃が暴発する
96式装輪装甲車に搭載されている12.7ミリ機関銃は連続射撃を続けていると暴発する危険性があった
特に自衛隊でライセンス生産されている12.7ミリ機関銃は連続射撃後になかなか銃身が冷え切らないことがあった
押し寄せてくる無数の敵兵に対して連続射撃を続けていた機関銃は銃身の熱を冷ますことが出来ず、暴発してしまったらしい
隊員「そんな」
三田村「大丈夫か!おい、大西。機関銃の代わりになる銃持ってこい」
装甲車の車長である三田村は機関銃座より後方のハッチから身を乗り出して小銃射撃をしていた大西という隊員に命令する
見れば機関銃は銃身がポッキリ折れていた
大西「MINIMIがあります!」
三田村「よし、M2の代わりはこれで何とかするしかない」
隊員「はい」
使用不能になった12.7ミリ機関銃に代わって5.56ミリ機関銃を隊員は構える
雑兵「うりゃああああ!」
三田村「なっ!」
タタタタタン
雑兵「ぎゃあ」
三田村「こいつ………。馬からこの装甲車に飛び乗ってきやがった」
カツーン カツーン
大西「槍で突いてくる兵も多くなってきています。もう対処には限界が」
三田村「いいから撃て。宇喜多の陣まで突破して、敵の大将を倒せば全部終わるんだ!」
大西「はいっ!」
三田村「とは言え、この人数じゃ………。その内、車両ごと敵兵に飲み込まれるぞ」
タタタタタタタン
タタタタタタタン
タタタタタタタタタタタタ
ぎゃあ!
ぐあっ
この化け物めええええええ!
カキーン
加納「車長!矢野2尉の乗る高機動車から連絡です!スタングレネードを投擲するので注意せよ、と」
装甲車の操縦席から操縦手の加納が報告する
三田村「スタングレネード?目くらましをして一気に突破するつもりか!」
加納「スタングレネードを全て投擲して、敵が怯んでいるうちに全車両、全速力で敵中突破だそうです」
三田村「分かった。総員、車内へ退避」
隊員・大西「「 了解 」」
車上で戦闘を行っていた3人の隊員は全員車内へ退避する
三田村「高機動車の様子は?」
加納「小野1曹が機関銃の掃射をしています。矢野2尉がスタングレネードを投擲する模様」
車内に入った三田村は操縦席に来て、矢野たちの乗る高機動車の様子を見る
三田村「ギリギリだな。押し寄せてくる敵に今でも埋まってしまいそうな勢いだぞ」
加納「あっ。矢野2尉が投擲を開始します」
三田村「一瞬だけだ!目をつぶれ!」
加納「はい」
カッ
スタングレネードこと閃光発音筒は、以前、根元3曹が服部半蔵から逃げるときに使用した特殊な榴弾である
凄まじい音と光を発して、相手の視覚と聴覚を一時的に奪う
そんなスタングレネードを矢野は疾走する高機動車の上から敵兵の中へ投げ込んだのだ
カッ
カッ
間髪をいれずに360度全ての敵の視覚と聴覚を奪うようにして投擲する
雑兵「ぎゃああああああ!」
雑兵「目が!目がああああああああ!」
雑兵「何も聞こえない!何が起きたんじゃアアアア」
車両群の周りに居た兵士は突然の光と音に目と耳を奪われ、うずくまってしまう
こうして一時的ではあったが自衛隊に対する攻撃は止んだ
三田村「今だ!敵の攻撃が止んでいるうちに突撃しろ!」
加納「はいっ!振り落とされないでくださいよっと!」
ウオオオオオン オオオオオオオオオ
96式装輪装甲車は速度を上げて、うずくまる兵士たちの中を走り抜ける
三田村「時速を80キロに上げろ!」
加納「こんな場所でそんなに速度を上げられませんよ?」
三田村「じゃねえと、高機動車に追いつけねえぞ」
加納「へ?」
見れば矢野を乗せた高機動車が時速80キロ近く出ているのではないかという速さで突撃していた
加納「あんなにスピードだしたらスリップしちまうぞ」
三田村「俺たちの役目は矢野2尉の援護だ!ほら、早く追いつけ」
加納「了解しました」
オオオオオオオオオオ
三田村「他の隊員は車外で引き続き射撃だ!急げ」
隊員「はい!」
今日はここまで
自分は戦国自衛隊の中でもジープで戦場を駆け抜けるシーンが好きです
装甲車だけで突っ切ればいいじゃんって突っ込みはなしで
>>295
他の国は割と他国と戦ってたりしてる記憶………
高校時代は世界史さぼってたので1600年頃の日本以外の国の状況はあまり知らないですけど(汗)
イギリスだと応仁の乱の頃に薔薇戦争、1640年頃にピューリタン革命で内戦が起きてるな
乙
面白いよ
~島左近・石田三成討伐隊 伊庭たち~
矢野たちが宇喜多秀家の陣に突撃している頃、伊庭たちもまた島左近の部隊へと突撃をしていた
現在は軽装甲機動車と高機動車、それに73式小型トラック2両に隊員10名が乗り込み戦闘を行っている
軽装甲機動車以外の車両はどれも非装甲の上にオープンカーのように車上はむき出しであった為、隊員達は矢や鉄砲の弾といった飛び道具の脅威に晒されることになっていた
パパパパパパパパン
カカカカカカカカン
伊庭「総員伏せろ!」
木村「うおっ」
伊庭達の車両群が突撃してくるのを見て、島左近は矢野たちの車両群に攻撃をしている宇喜多秀家のように闇雲に攻撃するのではなく、咄嗟に防御陣形を取った
車両群に向かって槍や刀で突撃して自衛隊を倒すのではなく、自衛隊車両が島左近の部隊を突破して石田三成の本陣に到達するのを確実に防ごうという考えだ
伊庭「速度を上げろ!ここで止まったら鉄砲や弓矢の格好の的になるぞ!」
木村「くそっ!反撃したいが、敵の飛び道具による攻撃が予想以上に激しい。闇雲に戦うのではなく、確実に我々から本陣を守るために防御を固めてるのか!?」
伊庭「車両に刀や槍で突撃してくる雑兵はほとんど居ない。おそらく兵士のほとんどを本陣の防衛にあててるんだろう」
木村「島左近の軍勢は先程まで東軍を包囲しようとして突撃していた部隊ですよ?今まで突撃をしていた部隊にすぐに防御陣形を取らせるようにすることが出来るんですか?」
伊庭「本多正信によれば島左近は優秀な武将らしい。我々自衛隊の突撃というイレギュラーにも瞬時に対応が出来る優れた武将なんだろう」
ヒュンヒュンヒュンヒュン
カカカカカン
パパパパパパパパパパン
カカカカカカカカカカン
伊庭「くそ!」
ドンッ
ひゅるるるる
ズドオオオオン
木村「何だ!?」
伊庭「大筒っていう大砲だ。石田三成の隠し兵器だ!我々の火砲よりは威力が低いとはいえ、ソフトスキン(非装甲車両)に直撃すればマズイことになる」
木村「おいおい!」
ズドオオオン
爆走している車両に大筒の弾を命中させるのは不可能に近かったが、自衛官を恐怖させるには十分だった
グオオオオオ
オオオ
オオ
伊庭「どうした!?速度が下がってるぞ!」
伊庭と木村の乗る73式小型トラックの速度が著しく低下する
伊庭達の乗る車両だけではなく他の車両も速度が落ちていた
隊員「小隊長!前を見てください!」
島左近の作り出した防御陣形は突撃してくる自衛隊車両の真正面に位置する
その陣の最前列にあるのは丸太によってつくられた防壁であった
重車両なら強引に突破することも出来るかもしれないが、小型トラックなどの軽車両では突破することは困難な防壁である
その防壁が自衛隊車両が石田三成の本陣へ続く道へ前進するのを妨害するように並んでいた
伊庭「車両の進行を妨げるつもりか!」
木村「丸太の防壁で車両を停止させた後に大砲や鉄砲で我々を確実に倒すつもりです」
防壁の向こう側には鉄砲隊や弓隊、大筒が配置されている
停止した自衛隊車両を一斉砲火で叩く魂胆だろう
隊員「このままでは防壁に突っ込んでしまいます!そうしたら車両は走行不能になって、敵兵に取り囲まれてしまいます!」
伊庭「…………くっ。全車両、車両の側面を敵の防御陣地に向けるようにして停車!停車後、迫撃砲とLAM、てき弾などによって大筒と鉄砲隊を叩く」
木村「了解!高機動車に乗ってる隊員に連絡します」
島左近の防御陣地から数百メートルの地点で自衛隊車両は車両の側面を陣地に向けて停止する
車両が停止したと共に鉄砲隊と弓隊は一斉攻撃してきた
パパパパパパパパパン
カカカカカカカカカカン
鉄砲の弾や矢が車両に襲い掛かる
隊員「うわっ!」
木村「くっ」
伊庭「車両から降りろ!矢が上から降ってくるぞ!」
ヒュンヒュンヒュンヒュン
カツーン
隊員「うわっ!」
矢の一本が運転席から車外へ出ようとしている隊員のボディーアーマーとヘルメットに直撃する
伊庭「無事か!?」
隊員「はいっ!自衛隊に入ってから初めて鉄パチに感謝しました」
伊庭「いいから急いで車両の影に隠れろ!」
隊員「はい!」
ヒュンヒュン
グサッ
隊員「がっ」
伊庭「なっ!」
車外に出て、車の陰に隠れようとしていた隊員の首を矢が貫く
バサッ
伊庭「くそったれが!」
ドンッ ドンッ ドンッ
伊庭は鉄砲隊の方角に向かって、車体に身を隠しながら9ミリ拳銃を発砲する
無論、車両から敵陣までの距離的に拳銃弾が鉄砲隊に命中するはずもなかった
隊員「」
伊庭「…………すまない。お前たちの命を預かる、とか偉そうなことを言っておきながら俺は………」
既に息の無い隊員を車の陰に移動させながら伊庭は言う
木村「…………。小隊長。指示を」
伊庭「………ああ。LAMで丸太の防壁と飛び道具の部隊を潰せ。飛び道具による危険が無くなった後に迫撃砲で敵を完全に無力化する」
木村「了解」
そう言うと木村は背負っていた携帯無線で他の車両と通信を始めた
伊庭の指揮する三成討伐隊の車両のうち戦闘を行う車両は4両中3両だった
軽装甲機動車と2両の73式小型トラックである
残った高機動車は補給用の車両として使われていた
その高機動車に迫撃砲やLAM(携帯型対戦車弾パンツァーファウストⅢ)などの重火器が積んである
隊員1「車両に隠れろ。敵の鉄砲の射線に入るな!」
カツーン
カツーン
ズドオオオン
隊員2「くそっ!こっちが停車してるから大砲の着弾が近くなった!なめやがって」
タタタタタタタタタタタタン
タタタン タタタン
高機動車から下車した隊員たちは車体に身を隠しながら対戦車弾パンツァーファウストⅢの発射準備をする
その隊員を守るようにして軽装甲機動車と73式小型トラックに乗っていた隊員達が島左近の陣に援護射撃を開始した
タタタタタン タタタ タタタ
タタタタタタタ
パパパパパパン
隊員1「弾切れだ。装填する」
隊員2「分かった。下がれ」
隊員3「LAMの発射準備よし!LAMの射線に入らないように退避してくれ」
隊員1 2 「分かった!」
隊員3「後方の安全確認よし!発射!」
バシュッ
シュウウウウウウウウウ
ドオオオオオオン
発射された対戦車弾は丸太で出来た防壁の一角に命中して周囲の雑兵諸々共に吹き飛ばす
110mm個人携帯対戦車弾と自衛隊では扱っているこのパンツァーファウストⅢはロケット推進で弾頭を飛ばす使い捨ての対戦車兵器のひとつだ
この兵器は発射機の後方からカウンターマスという重しを飛ばすことによって爆風を最小限に抑えることが出来る
隊員3「次弾発射!」
バシュッ
ドーン
バシュッ
ドオオオオン
雑兵「ぎゃああ!」
雑兵「ぐああああ!」
次々と発射される対戦車弾に防壁や鉄砲隊はことごとく粉砕される
隊員1「どんどん撃ち込め!敵の飛び道具を黙らせろ!」
隊員3「はいっ!」
ドンッ
ひゅるるるるるるるる
隊員3「え?」
隊員1「まずい!退避しろ!大筒の弾が来るぞ!」
隊員3「うわあああああ!」
ズッドオオオオオオン
パンツァーファウストⅢの攻撃に反撃するかのように発射された大筒の弾が高機動車へ飛来する
ガッツーン
大筒の弾は高機動車のボンネットに直撃する
自衛隊の使用する弾と違って爆裂段でも無い大筒の弾は高機動車を爆破、破壊するには至らなかったが、直撃したボンネットからはシューシューと煙が出ている
ひゅるるっ
ひゅるるるるる
ガッツーン
ガンッ
ガンッ
ドオオオン
次々と大筒の弾は飛来する
それらの弾は高機動車の後部に積んである補給物資にも直撃した
ズドオオオオオオオオオン
大筒の弾のひとつが高機動車に積んである補給物資の中の弾薬と燃料に直撃した為に爆発が起きる
隊員1「退避いいいいいいいいい!」
隊員2「わあああ!」
隊員3「迫撃砲が!弾薬が!」
高機動車の周囲に居た隊員達は間一髪のところで退避が出来た
しかし、高機動車に積んであった対戦車弾や迫撃砲、弾薬や燃料は全て吹っ飛んでしまった
これに影響されて朝霞の広報センター(りっくんらんど)に行ってきた。
10式戦車とかデカくてビビったわ。
木村「高機動車が大破!炎上中です!」
伊庭「何っ!?」
大筒の弾によって高機動車が爆発する様子を伊庭は目にする
木村「高機動車の横でLAMを発射していた隊員達は無事です。しかし、高機動車に積んであった物資は………」
伊庭「高機動車以外の車に重火器は積んであるか?」
木村「LAV(軽装甲機動車)の中に2、3発のLAMと中MATが積んであったはずです」
伊庭「分かった。それらで大筒を叩く。これ以上、車両を失うわけにはいかない」
木村「了解。LAVに乗る根元たちに連絡します」
伊庭「頼んだ」
パパパパパパパパパパパン
ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン
カカカカカカカカカカン
伊庭「LAMの攻撃が止んだ隙に一気に攻撃を仕掛けてきたか…………」
自衛隊の発射した数発の対戦車弾で鉄砲隊と弓隊はほぼ壊滅したと思われた
しかし、敵の指揮官は生存した僅かな鉄砲隊と弓兵で再び部隊を編成して、自衛隊へ再度、攻撃を仕掛けてくる
ひゅるるる
ズドオオオオン
また、大筒に至ってはまだ幾つか無傷で残っていた
ひゅるるるるるる
ズドオオオン
パパパパパパパン
隊員「くそっ!舐めやがって!」
タタタタタタタタタ タタタタタタタ
雑兵「ぎゃあ!」
雑兵「ぐあっ!」
自衛隊員たちは大破していない車両に身を隠しながら果敢に反撃していた
火縄銃よりも遥かに威力が高く、連発して射撃可能な小銃の掃射によって徐々にではあるが自衛隊が優勢になっていく
タタタタン タタタタタタン
雑兵「何じゃあの鉄砲は!たかだか数丁でこれほどまでの弾を撃てるとは!」
雑兵「ひるむな!相手は10人足らずの兵じゃぞ!」
パパパパパン
雑兵「大筒で鉄の車ごと叩き潰せ!」
ドンッ
ひゅるるるるる
ズドオオオオン
隊員「ぎゃああああああ!」
隊員「うわああああ!」
炎上中の高機動車から退避し、別の車両の陰に隠れようとしていた隊員たちのすぐ横に大筒の弾が着弾する
パパパパパパパン
カカカカカカカカン
伊庭「くそっ!」
木村「LAVの根元たちから連絡!LAMの発射準備が完了したとのことです!」
伊庭「よし!早く大筒を吹き飛ばせ!」
バシュッ
バシュッ
バシュッ
ズドオオオオオオン
ズドオオオオン
ズドオオオオオオン
雑兵「ぐあああ!」
雑兵「ぎゃああ!」
軽装甲機動車に乗っていた根元3曹たちが発射した110mm個人携帯対戦車弾(LAM)は見事に残存していた大筒に着弾し、周囲の兵士ごと大筒を吹き飛ばす
伊庭「よし。これで敵の飛び道具は僅かな鉄砲と弓だけだ。一気に突破するぞ。全車両に連絡をしろ」
木村「はい」
そう言って木村は通信機で連絡を開始する
木村「全車両に告ぐ。今から突撃を再開する。大破した高機動車は放棄しろ。高機動車に乗っていた隊員は他の車両に分散して乗れ」
無線『了解』
伊庭「木村。運転を頼んだ」
木村「了解しました」
伊庭達の乗っていた73式小型トラックの運転手は既に絶命している
よって代わりに木村が運転をすることになった
また、先程の大筒の砲撃で新たに1名が死亡、1名が負傷をしている
それによって現在、戦闘可能な隊員は負傷者除く7名のみとなってしまった
伊庭「全車両発進準備!」
木村「了解!」
ブロロロロロン
伊庭と木村は死亡した隊員を後部座席に収容した後で小型トラックに乗り込む
他の隊員達も各車両に乗車した
木村「よし。発進しま…………」
伊庭「どうした?早く発進しろ」
木村「小隊長。敵が集結しています」
島左近が気付いた防御陣形は自衛隊の攻撃でほぼ崩れた
丸太の防壁と大筒は吹き飛ばされ、鉄砲隊と弓隊は壊滅状態である
つまり残っている敵の兵士はほとんどが槍や刀で武装した兵士なのだが、その兵士たちが一箇所に集結していた
伊庭「残存している兵士を一箇所に集めているのか」
木村「数えただけでも1000以上は居ますね」
伊庭「…………。総攻撃をかけるつもりか?」
木村「!? あれって敵の大将じゃないですか?」
伊庭「!?」
集結してきている敵兵の中心に馬に乗った一人の男が現れる
丸に三つ柏の旗を掲げ、他の兵士には無い独特のオーラを醸し出している男
伊庭「あの兜………。間違いない。あいつが島左近勝猛だ」
木村「いかにも大将って雰囲気ですね。最前線に自ら躍り出てきて指揮をするとは」
伊庭「チャンスだ。今なら確実に島左近を仕留められる」
>>314
広報センターは自分も行ったことがあります
あそこの戦車のシュミレーションゲームおもしろいですよね
また夜に来ます
りょかーい
ゲートアニメ化だってさ
伊庭「島左近…………。悪く思うなよ?」
ガチャ
タタタタタタタタ
タタタタタタタタ
伊庭は島左近勝猛と思われる武将に小型トラック車載機関銃の掃射を浴びせる
島左近「…………………!」
サッ
バスバスバスバス
雑兵「ぐあっ」
雑兵「ぎゃっ」
伊庭と島左近の距離はかなり離れている為に機関銃の弾はバラけ、島左近の周辺に居た兵士も銃弾を浴びてしまった
ヒヒーンッ
また、島左近の乗っていた馬にも数発の銃弾が命中する
銃弾を浴びた馬はドサッと地面に倒れてしまった
伊庭「やったか!?」
木村「島左近の乗っていた馬への命中は確認できました。島左近の死亡は確認できていません」
伊庭「あの掃射を避けられるとは思えん。ここからだと姿は見えないが、銃弾が命中して落馬したんだろう」
木村「そうであることを願いますが…………」
伊庭「大将が倒れたなら、敵の陣形が崩れるはずだ。その瞬間に全車両で突撃する」
木村「………………!?小隊長!」
伊庭「何だ?」
木村「島左近は死亡していません。無傷です!見てください!」
伊庭「何だと?」
伊庭は再び敵の方向を見る
地面に倒れている馬の影から一人の男がのっそりと立ち上がっているのが見えた
伊庭「どうやって機関銃と射撃を避けたんだ?」
木村「おそらくですが………、こちらの射撃を察知した瞬間に馬に身を隠したのかと思われます」
木村の言うとおり島左近は自衛隊の射撃を察知した瞬間に体全体を傾けて、馬を盾代わりにするような体勢を取っていた
伊庭「さすがは名将と呼ばれるだけはあるな!」
木村「小隊長!島左近が雑兵の中に逃げようとしています」
伊庭「今度は部下の兵士を盾にするつもりか!逃がさん」
タタタタタタタタ タタタタタタタタタ
タタタタタタタタタタタ
木村「駄目です!他の兵が邪魔で島左近を目視出来ません。完全に人ごみの中に隠れてしまった模様」
伊庭「馬を失った今、奴の移動手段は徒歩だ。車両で追うぞ」
木村「はい!」
おおおおおおおおおおおおおおおおおお!
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
木村「うわっ!」
伊庭「総攻撃か」
木村「敵の残存兵が全員、こっちに向かって突撃してきます!」
伊庭「全車両突撃止め!今突撃したら車ごと敵兵に飲み込まれるぞ」
鉄砲隊や弓隊は壊滅したものの、槍や刀で武装した雑兵はまだほとんどが生存していた
その雑兵たちが一斉に自衛隊に攻撃を仕掛けてきたのだ
伊庭「島左近を逃がす為に全兵力で我々を足止めするつもりか!」
木村「どうしますか!?指示を!」
伊庭「小銃および機関銃で迎撃………と言いたいところだが、この人数の敵兵を迎撃するのは不可能だ。一旦、後退………」
向かってくる兵士たちは千を軽く越える
生存している8名の自衛官でそれを全員倒すのは不可能に近い
よってこの場は一時撤退をするべきではあるのだが
伊庭「ここで我々が踏みとどまっている間に東軍の本陣が攻め落とされては元も子もない…………」
木村「機関銃で掃射をして道を空けながら突撃するという手もありますが………」
伊庭「補給用の高機動車を失った今、我々の手元に残っている弾は少ない。ここを突破したところで、石田三成の本陣にたどり着くまでに弾が切れてしまうだろう」
木村「時間はかかりますが、後退した後で迂回して石田三成の本陣へ行きましょう。急がば回れですよ」
伊庭「そうだな。全車両後退」
伊庭の号令で3両の車両が後退をしはじめる
ブロロロロロ
伊庭「……………」
木村「…………仮に東軍の本陣に西軍の軍勢が到達したとしても、県3尉たちが居ますから大丈夫ですよ。きっと東軍を守りきってくれますって」
伊庭「……………そうだな」
自衛隊の車両は速力を上げつつ後退する
自衛隊の車両の速度は徒歩の敵兵よりも遥かに速いため、すぐに逃げ切れるだろう
だが、車両に乗る自衛官たちの顔は険しい
伊庭「迂回したルートだとあとどのくらいで石田三成の陣につく?」
木村「石田三成の陣地は島左近の部隊のすぐ後ろでしたから、本来なら30分もかかりません。しかし、戦場を避けながら進んでいくとなると…………。予定の倍以上の時間がかかります」
伊庭「そうか」
木村「………………!?」
おおおおおおおおおおおおおおお!
木村「前方より新手の軍勢が接近中!」
伊庭「何!?新手だと!挟み撃ちにするつもりだったのか!?」
木村「………いえ。あれは………」
伊庭達の車両が進む方向、つまり、突撃してくる島左近の部隊の反対側から新手の軍勢が突撃してくる
その軍勢の先頭に居る馬に乗った男は眼帯を付けていた
伊庭「あれは………伊達政宗か!」
木村「伊達政宗!?」
眼帯を付けた男ー伊達政宗は伊庭達の乗る小型トラックの前まで来ると、馬の足を止めた
伊達政宗「伊庭殿か!苦戦しておるようじゃな!」
伊庭「伊達殿。どうしてここに?」
伊達政宗「おぬしが石田三成の討伐に行っておるが、苦戦していると聞いてな。助太刀しに参った」
伊庭「しかし、伊達殿は戦の真っ最中だったのでは?」
伊達政宗「わしの本隊は配下の者に任せておる。助太刀しに来たのは全体からすれば僅かな兵だけよ」
僅かな兵と言うが、伊達政宗の後ろには相当な数の兵が居る
伊達政宗「わしらがあの突撃してくる兵を相手する。その間におぬしら“じえいたい”は自慢の鉄の馬で三成の本陣まで突っ走れ」
伊庭「しかし…………。いや。了解しました!」
伊達政宗「おう」
伊庭「御武運を」
伊達政宗「互いにの」
伊庭は伊達政宗に敬礼する
伊達政宗はその後すぐに島左近の兵に突撃していった
伊達政宗「皆!我に続け!」
雑兵たち「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
伊庭「木村!伊達の軍勢に続け。伊達と島左近の軍が戦っている隙に一気に石田三成の陣地に乗り込む」
木村「了解っ!」
伊庭「それと三村を呼んで来てくれ」
木村「はい。三村ですか?」
伊庭「ああ。あいつならこの乱戦の中でも島左近を確実に狙撃できるはずだ」
木村「なるほど。了解しました」
>>322
本当ですか!?
地獄の黙示録を彷彿とさせるあのシーンがついにアニメで見られるとは!
感激です
あ、今日はここまでです
乙ー
>>327
短いけどニコニコにPVあったよ
~本多正信の陣~
現在、本多正信の陣には負傷者を含めた6名の隊員がいた
その6名の隊員の中で最も階級の高い隊員である野中2曹は本多正信の陣の防衛を一任されている
野中「県3尉との連絡は不通。伊庭小隊長と矢野2尉は戦闘中で連絡をする暇すら無い。空挺隊員も同じく戦闘中か」
西沢「もう1時間近く無線連絡がありません。もしかしてやられちゃったりしてるのでは…………」
野中「バカヤロウ!んなことあってたまるか!」
西沢「しかし………」
通信係の西沢はずっと無線機の前で待機しているのだが、伊庭や矢野たちは出撃してから1回も連絡をしてきていなかった
野中「小隊長にも副隊長にも指示を請えない今の状況…………。俺が独断でここの隊員を指揮しなきゃいけないのか」
西沢「小隊長はこの陣の防衛に関しては野中2曹に指揮を任しています。我々はあなたに従いますよ」
野中「う~ん。俺は部隊の指揮なんてやったことないんだがな………」
西沢「大丈夫ですよ。小隊長はこの陣が敵に襲撃される前に石田三成をやっつけて戦を終わらせてくれるでしょうから」
野中「そうだな。そうだといいんだが………」
本多正信「野中殿はおるか?」
西沢と野中が居る通信機の置いてある天幕の中に本多正信が入ってくる
野中「何でしょうか?」
正信「少し良いか?」
野中「はい」
そう言って正信は野中を天幕の外へ連れ出した
正信「伊達殿の軍勢の一部が伊庭殿の隊へ加勢をした」
野中「本当ですか!?よっしゃ」
正信「…………。あまり喜ばしいことでは無いのじゃ」
野中「何故です?」
正信「東軍の本陣である桃配山とこの陣を西軍の武将たちが囲い込もうとしておったのはしっておるじゃろ?」
野中「はい。その武将たちの隊を小隊長や矢野2尉が倒しに行ったんですよね?」
正信「そうじゃ。伊庭殿たちのおかげで宇喜多と島・石田の足は止まっておる。大谷の軍勢は強いが人数の少なさから進行はそれほど速くはない。じゃが、小西の軍勢が思った以上に速く進行してきている」
野中「小西………。小西行長ですか?」
正信「そうじゃ。小西行長は田中吉政と筒井定次、それに伊達政宗の隊と戦っておった。これによって小西の進行は抑えられておったのじゃが、伊達殿の隊の一部が離脱して伊庭殿の隊へ向かった為に再び進行の速度が速まってしまったのじゃ」
野中「伊達政宗の隊が居なくなったことにより小西が優勢になってしまったのか。それで小西は?」
正信「小西は他のいくつかの武将の隊を集め、ひとつの大きな軍勢を作った。そして、その軍を2分にして片方を桃配山、もう片方をこの陣へ向かわせたとのことじゃ」
野中「小西とその他諸々の軍勢がここと桃配山に進行してきてる………と」
正信「我が方の軍勢も果敢に戦っておる。わしの兵もじゃ。じゃから本陣やここへ敵が到達するとしても相当後のことになるとは思うが…………」
野中「…………敵がここへ到達する可能性があるんですね?」
正信「そうじゃ。もし仮にここへ敵の軍勢が到達してしまったら、おぬしら“じえいたい”はあの鉄の車にて逃げるが良い。元はといえばわしらの無理に付き合ってもらっているだけじゃ。それに戦に関わりたくないおぬしらをこれ以上、戦に巻き込むわけにもいかぬ」
野中「…………。ご冗談を」
正信「何と?」
野中「小隊長が戦ってるのに我々だけが逃げるわけには行きません。それに、自分たちはこの陣を守るように言われているんです」
正信「じゃが………」
野中「任せてください。この陣は死守します。我々の得意分野は防衛なんでね」
正信「野中殿…………」
野中「正信さんは危なくなったら逃げてください」
正信「それは出来ぬ。わしも大勢の兵を見捨てて逃げることは出来ぬからな」
野中「でしょうね。では力を合わせて敵を撃退しましょう!」
正信「うむ!」
野中は正信に一礼して再び通信機のある天幕へと入る
西沢「野中さん。本多正信は何と?」
野中「ここに敵部隊が到達する可能性がある。ここだけじゃなくて県3尉の居る桃配山もな」
西沢「マジですか!?どうするんです?」
野中「県3尉は無線を封じてしまっているから連絡の取りようもないしな。あっちはあっちで何とかするだろう。我々は独自の判断でこの陣を守るぞ」
西沢「了解。と言っても負傷者含めた6名じゃ………」
野中「本多正信の兵や東軍の兵士も居る。我々6名だけで戦うんじゃない」
西沢「そうですね」
野中「東軍も頑張っている。当分は襲撃は無いそうだ。だから今のうちに作戦を立て、トラップを設置する。全員集めてくれ。それと本多正信に何人か兵を借りよう」
西沢「兵を借りるんですか?」
野中「ああ。我々は迫撃砲や対戦車榴弾などの優れた兵器を持ってはいるが、6名だけじゃそれらを十分に使えない。だからこの時代の兵士の手を借りる」
西沢「マジすか」
野中「マジだよ」
~10分後~
野中は負傷した隊員を含めた全員を集めて作戦ミーティングを行い、その後で襲撃用のトラップを設置した
6名の隊員のうち負傷者は3名
そのうち1人は戦闘が可能なほどの軽症であり、残る2名も足を骨折しているものの上半身は十分に動かせた
正信の配下の兵は陣より遥か手前で進行して来る小西軍と戦っている為に陣地内に兵は少ない
居るのは鉄砲隊と弓隊、それに数百の兵のみだ
野中は正信の陣の前にいくつかの防衛線を張ることを決めた
まず、第一次防衛線
正信の兵が小西の兵の進行を防ぎきれず、陣から目視可能な距離まで達した場合の防衛線だ
ここでは一番射程の長い81ミリ迫撃砲でこの兵を叩く
そして、第一次防衛線が突破された場合にあるのが二次防衛線だ
既に設置された指向性散弾とC4プラスチック爆弾で第一次防衛線を突破してきた兵を叩く
ちなみに指向性散弾やC4を起爆させるのは正信に借りたこの時代の兵士だ
自衛隊員の人数が絶対的に少ない為にこういったことにこの時代の兵士を投入しなくてはならなかったのである
また、鉄砲隊や弓隊の攻撃はここで仕掛けることになっていた
第二次防衛線が突破されると待っているのが最終防衛線だ
最終防衛線は陣地の目の前に存在した
弧の形に掘られた幾つかの塹壕に機関銃や小銃、槍や刀を持たせた正信の兵を配置させ、さらに自衛官が73式小型トラックで遊撃を行う
ここが突破されれば正信の陣は一気に崩れることとなっていた
野中「負傷した隊員は車両の後部で座りながら射撃。衛生科の海野2曹は補給用のトラックの護衛を何人かの兵といっしょに行ってくれ。敵の襲撃が来るまでに指向性散弾とC4の設置を完了させ、さらに、正信の兵たちに小銃の使い方を最低限覚えさせろ」
隊員たち「「 了解 」」
野中「弾薬の出し惜しみはするな。全て使い切っても良い。確実にこの陣を守りぬけ!」
めちゃくちゃ熱い展開
~小早川秀秋の陣~
島2尉たちはヘリから脱出した後、小早川の陣の後方の林に逃げ込んだ
雑兵「いたぞ!あそこじゃああああ!」
雑兵「うおおおおお!」
雑兵「覚悟おおおおおお!」
タン タン タン
雑兵「うぎゃ」
雑兵「ぐおっ」
雑兵「うぐっ」
島「これで何人目だ?」
大賀「さあ?もう数十人は倒しているはずです」
小早川の陣はもちろん小早川の兵で溢れている
島たちにとっては周囲が敵だらけの状況だった
いくら近代兵器で武装していても周りを数百の兵で囲まれては勝機が無い
しかも、小早川の陣にはテロリストの連中まで潜んでいる
そこで島は小早川の陣のど真ん中で戦うのではなく、あまり大勢の人が一気に入れないような林の中でゲリラ的に戦うことにしたのだ
林の中に隠れ、追ってきた小早川の兵を小銃や手榴弾で個々に撃破する
この戦法で島たち空挺隊員はかなりの数の兵を倒すことに成功していた
島「敵兵は沈黙。一旦迫撃をやめたらしいな」
大賀「ふぅ……。これで一段落できますね」
望月「いつまた敵兵が襲撃してくるかもわからん。気を抜くな」
ヘリを脱出後、徒歩で的中突破した空挺隊員たちの疲労はピークに達している
穴山「でも、いつまでも林の中で待ち伏せ攻撃をしているわけにもいきませんよね?」
島「ああ。このまま待ち伏せ攻撃をしていたところで小早川を東軍に寝返らせることも出来ないし、テロリストを倒すことも出来ない」
穴山「じゃあ、やっぱり小早川の陣に再び突撃しますか?」
島「そうしたいのは山々だが、我々が今持っている装備だけでは無理だ。突撃したところで、小早川秀秋の前に行く前に殺されるのがオチだろう」
ヘリから島たちが持ち出せた装備はそれほど多くない
対戦車弾などの重火器はヘリから脱出する際に全て使い果たしてしまったし、林での待ち伏せ攻撃でもかなりの量の弾薬を消費してしまっている
現在、手元にある装備は小銃と大賀の持つスナイパーライフルのみだ
大賀「しかし、我々は小早川を何とかしなくてはなりません。テロリストも」
島「そうだな」
おおおおおおお!
雑兵「この林の中に逃げ込んだぞ!」
雑兵「何としても倒すんじゃ!」
三好「来ちまった!」
穴山「20人くらい居るな。この調子で行くと弾薬が無くなってしまう」
島「敵の迫撃は継続………。敵は我々が林の中に逃げ込んだのを勿論知っている………」
望月「2尉?」
島「これだ。敵は我々が全員林に逃げ込んだと思っている。それを利用するんだ」
望月「つまりは、林の中で何人かが小早川の兵を引きつけ、その隙に残りの人間が小早川の陣に急襲する……と?」
島「そうだ。望月と三好はここで追ってくる小早川の兵の相手をしてくれ。その隙に俺と穴山と大賀で小早川の陣に急襲し、テロリストを倒す」
望月「危険すぎますが………、それしかないでしょうね」
島「望月、三好、頼んだぞ」
望月・三好「「 了解! 」」
島「大賀、穴山、行くぞ」
大賀・穴山「はいっ!」
タタタタタタ タタタタタ
タン タン タン タン
雑兵「ぎゃあああ」
望月と三好は草木に隠れながら追ってきた雑兵たちを攻撃する
その隙に島たちは小早川の陣へと向かって走り出した
~10式戦車内~
10式戦車に乗った島田たちは島たち空挺隊員の救出とテロリスト殲滅、及び小早川の説得のために小早川の陣へと向かっていた
兵で溢れかえった関が原を爆走する戦車はこの時代の人間からすれば化け物以外の何者でもない
グオオオオオオ
キュラキュラキュラ
雑兵「何じゃあれは!?」
雑兵「怪物が向かってきておるぞ!」
雑兵「逃げるんじゃアアアア!」
馬よりも速い速度で走ってくる戦車を見て雑兵たちは恐怖する
島田「兵はなるべく轢くな」
丸岡「そんな無茶な!周囲は人だらけですよ。轢かないと進めません」
島田「いいから人を避けて進め!それから時速を60まで上げろ」
丸岡「絶対無理です!」
島田「いいからやれ!」
丸岡「くっ………。了解しました!やってやりますよ」
グオオオオ
ひゅるるるるる
ズドオオオオオン
菊池「車長!前方に大砲の弾が着弾。威力からしてこの時代のものと思われます」
島田「場所は?」
菊池「10時の方向に大筒を発見!」
島田「主砲射撃用意。大砲陣地を吹き飛ばせ!」
菊池「り……了解。しかし、行進間射撃ですから命中させるのはきわめて難しいかと。特に人を避けながらジグザグに進行している今は」
島田「お前の腕を信じる。確実に当てろ。残弾も限られている今、弾の無駄遣いは出来んから1回で仕留めろ」
菊池「は……はい」
菊池は戦車に対して攻撃をしてくる大筒の置かれた陣地に主砲を向ける
自動装填装置によって弾が主砲に装填されたのを確認した島田は菊池に発射を命じた
島田「主砲、発射用意…………。てええええええええええええ!」
菊池「…………発射」
ズッドオオオオオオオオオオオオオオン
ドオオオオオオオオオン
雑兵「ぎゃあああ!」
雑兵「化け物が火を噴いた!」
雑兵「大筒陣地が吹き飛んだ………。なんじゃあの怪物は」
菊池「………命中を確認。目標の火砲は完全に沈黙」
島田「よくやった。よし。このまま小早川の陣に突撃する。丸岡、小早川の陣まであとどのくらいだ?」
丸岡「小早川の陣まで残り2キロ程度です。もうじきつきます。陣地内では今よりも激しい攻撃が予想されます」
島田「テロリストも潜伏しているらしいからな。対戦車兵器に注意しろ」
丸岡「はい。っつっても複合装甲をRPGが貫けるとは思いませんけどね」
島田「油断するな。本物の対戦車兵器と戦うのはこいつ(戦車)も初めてだ。何が起きるかは分からん」
丸岡「了解」
~小早川陣地・島2尉たち~
島をはじめとする3名の空挺隊員は潜んでいた茂みから抜けた後、再び小早川秀秋のもとへと向かっていた
小早川秀秋本人の前に行く為には大勢の兵を突破する必要があったし、テロリストという敵も存在する
たったの3名で任務を遂行するのは困難を極めていた
大賀「しかし、どうやって小早川のところに行くんですか?奴のいる本陣の周りは槍とか刀を持った兵で囲まれてますよ」
穴山「飛び道具はヘリに乗っていたときに制圧しましたが、テロリストたちも居ますからね………」
島「ああ。だが、そのテロリストを倒せば小早川秀秋は間違いなく動揺するだろう。テロリストたちさえ居なくなれば西軍に近代兵器の後ろ盾は無くなるんだ。東軍に寝返るように交渉する余地は十分にある」
大賀「ということは……先にテロリストの連中を倒すんですね」
島「ああ。元の時代に居た時に我々が遂行するべきだった任務をまずは遂行する」
穴山「ですが、やつらはどこに居るんでしょう?」
島「ヘリに対して対戦車弾と小銃で攻撃をしてきた時にマズルフラッシュと発砲煙を確認した。あれでだいたいの位置は把握出来ている」
穴山「どこです?」
島「小早川秀秋の居る場所から数十メートル離れた位置だ」
大賀「それじゃあ本陣に突撃するのと変わらないじゃないですか。うへえ」
島「そうだ。だからテロリストたちを誘き出さなくてはならない」
大賀「誘き出すって………。どうやって?」
島「策がある」
大賀「策?」
島「ああ。それは…………」
ズドオオオオオオン
グオオ
穴山「何だこれ!?」
大賀「敵の砲撃じゃない………。これは戦車砲だ!」
穴山「10式戦車が来たんだ!」
島「………応援は必要無いと言ったが。だが………」
大賀「素直に感謝しましょうや」
島「ああ。感謝しなくては。それにこの機は逃せん」
大賀「と、言いますと?」
島「この戦車の来襲でテロリストを誘き出すことが簡単になった」
グオオ キュラキュラ
ナンジャ アノカイブツハ
ニゲロオオオオ
島「10式戦車に兵たちは動揺している。指揮系統も乱れて混乱しているだろう。今この状況で小早川秀秋は何をすると思う?」
大賀「逃げ………。いや、小早川の陣には戦車を倒せる可能性を持った連中が!」
島「そうだ。小早川はテロリストに戦車の破壊を命じるはずだ。命じなくとも連中は戦車を攻撃しに行ったはずだがな。何せ戦車はテロリストたちにとっても脅威だからな」
穴山「なるほど………。戦車を倒す為にヘリを落とした対戦車弾を持ってテロリストたちが小早川の本陣から出てくると……いうことですか?」
島「そういうことだ。我々は本陣から連中が出てきたところを襲撃する」
大賀「了解」
穴山「了解しました」
島「よし。今から本陣近くまで移動する。敵兵に見つからないように気をつけろ」
久々の投稿でした
年末はコミケとかコミケとかで忙しくて………
>>1
待ってた
乙です
更新がうれしすぎて高身長な私が功臣と一緒に行進しながら宇宙人と交信を始めました
10式戦車は速度を上げつつ小早川の本陣に近づいてくる
僅かに生き残っていた小早川の鉄砲隊や弓兵が遠距離から攻撃を仕掛けるが、その攻撃は戦車に全く通用しない
矢や弾を弾き返しながら突っ込んでくる10式戦車の姿に小早川の兵の大半は戦意喪失をすることとなった
兵たちは混乱し、指揮系統は乱れる
そんな混乱に乗じて島たち3人の隊員は小早川の本陣に近づこうとしていた
島「急げ!この混乱の中なら敵兵は俺たちの存在に気付かない」
雑兵「いたぞおおおおお!」
島「そんなことも無かった!?」
雑兵「うりゃああああ」
タンッ
雑兵「ぐあっ」
慌てふためいている兵たちの中に入り込んできた自衛隊員の姿に気付いて攻撃してきた雑兵の一人を小銃弾で倒す
大賀「混乱しているとは言え、我々の姿を見ればこいつら攻撃してきますよ」
穴山「周りは敵だらけです」
ウワアアアア
カイブツジャアアア
ギャアアア
叫びながら右往左往している雑兵
大半の兵は恐怖でパニックになっているために島たちの存在に気付かないが、危険な状況に変わりは無い
島「ああ。敵だらけだ。だが、この中ならテロリストの連中は我々を視認できないだろう」
大賀「そりゃそうですけど!こっちは生きた心地がしませんよっ!」
雑兵「うああああ!」
雑兵「鉄の鳥に乗ってた輩じゃあああ」
タタタン タタタン
雑兵「ぎゃ」
雑兵「ぐへ」
穴山「早いところテロリストの連中を見つけ出さないと………。これじゃすぐに弾が底を尽きます」
島「ああ。確か、あの辺りから対戦車弾の発砲煙が見えたはずなんだが………」
穴山「あのあたり…………」
島がそう言いながら指差すのは小早川秀秋が居るとされる本陣からそう遠くはない場所だった
そこは戦車の乱入というイレギュラーな事態が起きている今でも、他の場所に比べて兵士たちが混乱していないよいに見える
少々の動揺はしているものの、そこに居る兵たちは直立不動で円陣を組んでいる
まるで何かを守るようにしているみたいであった
島「あれだ。あの直立不動の兵士に守られているのがおそらくはテロリストたちだ」
大賀「!? 動き始めやがった?」
今まで直立不動だった兵士たちが徐々に移動を開始する
円陣は組んだままで、少しずつではあるが戦車の向かってくる方向へと移動を開始していた
穴山「どういうつもりでしょうか?」
島「戦車に攻撃をしに行くつもりだ。この時代の兵士に囲まれたままならテロリストだとばれずに戦車に近づくことが出来る。戦車に近づいた後で対戦車砲を撃ち込むつもりなんだろう」
大賀「なるほど。確かにあの方法なら戦車に近づけるかもしれない。10式に乗ってる島田曹長たちはただの雑兵が近づいてきただけだと思って戦車砲で攻撃をしないだろうし」
10式戦車は複合装甲からこの時代の兵器は全く通用しない
また、最高時速70キロという足の速さから雑兵たちは戦車に近づくことも困難だった
近づいて戦車に飛び乗ろうとしたところで礫殺されるのがオチだ
そんな理由から戦車の乗員たちは近づいてくる雑兵たちに脅威は感じていなかった
であるからにして雑兵相手に遠距離から戦車砲をぶっ放そうとは絶対に思わなかったのである
それが災いして戦車はテロリストたちに近づかれることとなる
テロリストたちの姿は彼らを囲うようにして守っている雑兵の姿で見えない
よって戦車の乗員たちは近づいてくるテロリスト(を囲んだ雑兵の集団)に遠距離から攻撃を仕掛けることをせず、接近を許しているのだった
島「連中が戦車に到達してしまう前に我々が攻撃を仕掛けるぞ」
大賀「了解」
穴山「了解」
島「テロリストは周囲の雑兵でまだ我々の存在に気づいては居ない。奇襲するなら今だ。穴山、ライフルグレネードの発射準備」
穴山「はい!」
そう言って穴山は持っていた89式小銃の銃口に筒のようなものを付け始める
“06式小銃てき弾”
小銃の銃口に取り付けるタイプの22ミリてき弾である
自衛隊が独自に持つグレネードランチャーのようなもので、要するに小銃から手榴弾程度の制圧火器を発射するといった装備だ
島「テロリストは円陣の中心に居ると思われる。そこを狙え!発射!」
穴山「はい!」
バシュッ
シュウウウウウウウウ
小銃から発射された06式小銃てき弾は真っ直ぐに雑兵の集団に向かっていく
移動をしていた雑兵のうちの何人かは向かってくる06式小銃てき弾に気付いたが、気づいたときにはもう遅かった
ズドンッ
てき弾は雑兵の集団の中央に命中し、着弾点付近に居た兵士たちの身体を吹き飛ばした
ぎゃあああああああ
ぐあああ!
今日はここまで
もしかしたら夜にもう一回来れるかもです
穴山「命中!」
島「よし。やったか?」
グアア
ウッ イテエ
ナンジャコレハ
大賀「………………!?」
ズドドドドドドドドドドド
ダダダダダダダダダ ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ
ダダダダダダダダ
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ
島「伏せろおおおおおおお!」
大賀「うおっ!」
穴山「うわっ」
ビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシビシ
小銃てき弾の直撃によって倒れた雑兵の山の後方から無数のマズルフラッシュが確認される
大賀「くそっ!やっぱテロリストたちはそこに居やがったか!」
穴山「護衛の雑兵たちが盾になって小銃てき弾の攻撃がテロリストたちに届かなかった………みたいですねっ!」
ダダダダダダダダダ
ビシビシビシビシビシ
島たち3人の隊員は地面に倒れている既に息をしていない雑兵を持ち上げて盾にして、敵の射撃による攻撃を何とか防ぐ
テロリストたちは島たちの居る場所を正確には把握していないようで、射撃は正確ではなかった
それが幸いして、襲い掛かる銃弾の数の割に3人の隊員の被害は少なかった
雑兵「ぎゃっ!」
雑兵「ぐあっ」
大賀「おいおい………。同士討ちかよ」
テロリストの射撃はほぼ無差別な攻撃となってしまっていた
テロリストが味方していたはずである小早川の兵たちに次々に銃弾が当たる
島「我々が倒せれば味方の兵が何人死のうと関係ないと言ってる様なものだぞ。この攻撃は」
大賀「大方、そう思ってるんでしょう。でもどうするんですか?この弾幕………」
ダダダダダダダダダダダ
ビシビシビシ
穴山「うわあっ」
大賀「雑兵の死体を盾にするのも限界がありますっ!」
穴山「くそっ!」
タタタン タタタン
グアッ
ウオッ
穴山「当たった!」
小早川の兵の死体による盾ごしに撃った銃弾がテロリストに当たる
てき弾の爆発で出来た粉塵と敵兵の山のような死体によってテロリストたちの姿自体は目視出来ないが、マズルフラッシュによっておおよその位置は把握できた
~数分後~
小早川の兵たちはテロリストたちの攻撃から既に逃げており、島たちの周囲には雑兵の死体しか存在しなくなっている
島たちは小早川の兵の死体を積み上げるようにしてバリケードを築いてた
島「今この状況で立ち上がったら即、蜂の巣にされる………。かといっていつまでも敵兵の死体を盾にして伏せているわけにもいかない…………」
ダダダダダダダダダダダ
ビシビシビシ バスッ
穴山「ぐあああ!いってえええええ!」
大賀「穴山!?」
穴山「ひ……左腕に!弾がっ」
島「見せろ!止血する。大賀っ!狙撃銃で敵を確実に叩け!」
大賀「了解!」
島は落ちていた小早川の兵が持っていたらしき旗を千切り取り、穴山の左腕に巻きつけて止血する
それと同時に大賀は小銃とは別に背負っていた対人スナイパーライフルを肩から下ろした
大賀は空挺団では狙撃手として活躍していた経歴がある
大賀「こいつで敵を確実に仕留める」
島「頼むぞ大賀」
大賀「任せてください……うおっと」
ダダダダダ
ビシビシビシ
大賀が狙撃銃の射撃準備を行っている間も敵の射撃は止まらない
積み上げられた死体によるバリケードが徐々に敵の銃弾によって吹き飛ばされていくのが分かった
大賀は死体によるバリケードの隙間からスコープと銃口をそっと出して射撃準備をする
大賀「……………居た。目標確認」
スコープを覗き込み、敵を発見する
島「本当か!よし、やれ!」
大賀「………………」
敵を発見したはずなのに、何故か大賀は射撃をせずにスコープをずっと覗き込んでいる
島「どうした?」
大賀「島2尉…………。俺はずっとテロリストは外国人だと思ってました」
島「あ?何を言ってるんだ?」
大賀「……………」
島「おいっ!」
大賀「ありゃあ………。日本人ですよ」
今日はここまでです
おつ
テロリストが日本人だったらどうしたんだよお!やられちゃうぞ!撃て!撃つんだよッ!
島「日本人…………」
大賀「はい」
島「………構わん。撃て」
大賀「…………………了解」
大賀はスコープの照準を敵のテロリストの一人に合わせる
テロリストたちは島たち3人の隊員の反撃が小規模であることに油断して、大した防御策も用意せずに展開していた
その人数は20人程度
ほとんどの人間がAK-47カラシニコフやRPG-7などの共産圏武器を装備している
そして、彼らの顔はどう見ても日本人のソレだった
大賀「……………くっ」
ターアアアアアン
大賀はM24 SWSスナイパーライフルの引き金を引いて無防備に立ちながら島たちへ射撃をしているテロリストの一人に銃弾を放つ
バスッ
テロリスト「ぐはっ」
テロリスト「!?狙撃か!」
テロリスト「撃て撃て!相手は応射からして少数だぞ!」
ダダダダダダダダダダダダ
ダダダダダダダダ
バスッ
キーンッ バスバスバスッ
大賀「くっ。こっちにも小銃があるってのにまともな防御すらせずに射撃している…………。相手はど素人集団っぽいな」
島「素人であってもこれだけの火器があるんだ。俺たちの不利に変わりは無いぞ」
大賀「ちっ。一人一人地道に倒していくしかないか」
タアアアアアン
タアアアアン
テロリスト「ぐっ」
テロリスト「ぎゃっ」
テロリスト「くそっ!伏せろ!雑兵どもの死体を盾にしろ!」
テロリスト「対戦車砲だ!対戦車砲で蹴散らせ!」
テロリストたちはやっとのことで自衛隊の攻撃から身を守る策を出す
大賀「やべっ!やつらまた対戦車ロケット出してきやがった!島2尉、逃げないと!」
島「敵の弾幕の中をどうやって逃げるんだ!大賀、対戦車ロケットを持った敵を狙撃しろ」
大賀「対戦車ロケットを持った敵は視認出来るだけでも4人は居ます。一度に全員倒すのは不可能です!」
穴山「島2尉………自分のことは構わないで………。島2尉も射撃を…………」
島「……………くそっ」
大賀「まずい!第一射来ます!」
バシュッ
ズドオオオオオオオオオオオン
テロリストの発射したRPG-7が島たちの居る場所の数メートル横に着弾する
島「無事か!?」
大賀「はいっ!」
穴山「こっちも…………」
島「このままでは…………我々はここで………」
ドオオオオオオオオン
ドカカカカカカカカカカカ
島「!?」
大賀「敵の第二射か!?」
穴山「い…いえ。あれは」
グオオオオ
キュラキュラキュラキュラ
グオオオオオオオオオオオオオオオ
島「10式………戦車」
テロリスト「戦車が来たぞ!」
テロリスト「RPG-7で吹き飛ばせ!」
バシュッ
バシュッ
シュウウウウウウウウウウウ
ズドオオオン
ズドオオオン
ガキイイイイイイイン
テロリスト「そんな!?直撃したはずだぞ!」
テロリストたちの発射した2発の対戦車ロケットは出現した10式戦車の正面に直撃した
しかし、直撃した弾は戦車の装甲に弾かれてしまう
10式戦車だけでは無いが、戦車は正面からの攻撃に強い
大賀「すげえ………」
穴山「まさに……・・・救世主ですね」
ドオオオン
ズドオオオオオオオオオ
テロリスト「ぐあっ!」
テロリスト「ぎゃああああ」
10式戦車の射撃によってテロリストたちの何人かが吹き飛ばされる
生き残ったテロリストも慌てふためいて逃走していた
下装甲と上装甲が弱いんだっけ?
鉄の棺桶から進化したもんだなあ・・・
おつ
テロリスト達は一体何の集団なんだ…
島2尉たちがテロリストと戦っている頃、西軍の小西行長の軍勢の若干名が桃配山の前にある十九女池後方にまで前進していた
十九女池後方………つまりそこは本多正信の陣があるところである
手薄となった伊達政宗の軍勢を押し、本多忠勝らの防御陣を突破した彼らは遂に本多正信の兵と刃を交わすに至っていた
テロリストの出現によって小早川の陣の攻略が遅れていることや、伊庭たちが石田三成の軍勢に苦戦していること等が原因となっている
野中「小西行長の兵の先遣小隊が正信の兵と交戦を開始したらしい」
西沢「思ったよりも早いですね………。交戦中の正信の兵を突破したら第一次防衛線です」
野中「ああ。迫撃砲の射撃準備に取り掛かれ」
西沢「了解」
野中「小隊長………。頼む、急いでくれ…………」
自衛隊が想定した防衛線の内で一番最初にある第一次防衛線
それは正信の兵が押され、小西行長の兵士が正信の本陣から目視可能となった時に敷かれる防衛線だ
野中「正信さん!」
野中は本多正信を呼ぶ
正信「何じゃ?野中殿」
野中「小西行長の兵は今どれくらい正信さんの兵と交戦していますか?」
正信「伊達殿たちの軍勢も奮闘しておるからまだ200かそこらしか到達はしておらんだろうが…………」
野中「………そうですか」
正信「しかし、これ以上戦が長引けば我々の軍勢は総崩れするじゃろう。ここの陣が突破されれば、県殿がおる桃配山が攻略されてしまう」
野中「敵兵は全てこの陣で倒さなくてはならない………。ここを突破されることは許されない………ということですね」
正信「ああ。そうじゃ」
野中「…………。分かりました。正信さん、敵兵が我々が立っているこの場所から目視可能な所まで到達したら、交戦中の全兵士を後退させて下さい」
正信「何と!?後退じゃと?それは出来ぬ!わしらは命に代えてでも………」
野中「敵兵が200や300しか到達していない今なら我々の迫撃砲や特殊火薬で殲滅できるんです!この本陣に敵が到達する前に遠距離攻撃で叩けば勝機があるかもしれない!正信さんの兵を一旦この本陣まで後退させてから、押し寄せてくる敵兵を迫撃砲で殲滅するんです!」
正信「……………分かった。しかし、その200や300の兵を倒したところで、また数百の敵兵が後ろから押し寄せてくるのじゃぞ?それはどうするのじゃ?」
野中「小隊長たちが石田三成を倒すことなどを信じるしかありません。要はただの時間稼ぎに過ぎませんが、味方の兵の犠牲を最小限に抑えた上で敵兵を大勢倒す方法はこれしかないと…………」
正信「うむ。承知した。一旦、わしの兵を全員後退させ、その兵たちは本陣の守備に回そう」
野中「ありがとうございます!」
10分後
小西行長の軍勢の一部が正信の兵の必死の攻撃を押し切り、ついに野中たち本陣に居る人間から視認出来る場所に到達した
正信の兵はその瞬間、全員が回れ右をして全力で本陣まで逃走を開始した
全力疾走で押し寄せてきた小西行長の兵から逃げる滑稽な姿に小西行長の兵たちは皆が皆、腹を抱えて笑っていたという
彼らは逃走する正信の兵を指差して笑い、罵り、あるものは「武士らしくない姿」に怒る
しかし、彼らのその行動が命取りとなった
正信たちの兵を笑うだけで追いかけもしなかった小西の兵たちは上空から聞こえる“ヒュルルルルル”という空を切る音に気付かなかったのである
ヒュルルルルル
ズドオオオン
ズドオオオオオオン
前触れなしに上空から飛来した迫撃砲の砲弾は彼らの身体を木っ端微塵に吹き飛ばす
初撃を食らったほとんどの兵士は何が起きたのかも分からずに絶命した
雑兵「何じゃ!地面が爆発したぞおおおおお!」
雑兵「ぎゃああああ!」
雑兵「逃げろおおおお!」
雑兵「東軍の攻撃か!?」
雑兵「そんな馬鹿な!敵の陣はまだあんなに離れた場所にあるんじゃぞ!」
ズドオオオオオン
ズドオオオオオオオン
ズドオオオオオン
ぎゃああああ!
野中「どんどん撃ちこむぞ!」
隊員「はいっ!」
野中「射角1100(ヒトヒトマルマル)!」
隊員「半装填よし!」
野中「発射!てえええええええええ!」
ドンッ
ドンッ
この時代の火砲とは比べ物にならない射程を持つ81ミリ迫撃砲L16で次々に敵を粉砕する自衛隊であったが、自衛タイ側にも弱点があった
それは頭数である
正信の陣に居る6名の自衛官がフルで働いて動かせる迫撃砲は2門が限界であった
現在は2門の迫撃砲を交互に撃っているのだが、たった2門では弾幕は張れない
押し寄せてくる敵兵の8割は撃破出来ても残りの2割は迫撃を掻い潜ってきてしまう
西沢「敵兵の2割程度が攻撃をかわして第二次防衛線へ到達します!」
野中「迫撃砲だけじゃ防ぎきれないのは分かってたっつーの!西沢!無線で第二次防衛線で待機している海野2曹にC4と指向性散弾による攻撃を指示してくれ!」
西沢「はい」
そう言って西沢は無線を繋ぐ
西沢「こちら西沢。海野2曹、敵が第二次防衛線に到達しそうです」
海野『知ってる。指向性散弾とC4の攻撃をしろってことでしょ?』
西沢「はい!」
野中「指向性散弾とC4によるトラップを全て使い切ったら、そこに居る兵士を全員連れて後退しろ」
海野『言われるまでもなくそうしますって』
第二次防衛線は第一次防衛線を突破した敵兵を仕掛けたC4や指向性散弾で撃破する防衛線だ
自衛官の人数が絶対的に不足していることから起爆装置は全て正信の兵に持たせている
正信の兵「海野殿!小西の兵の生き残りが“とらっぷぞーん”に突入しましたぞ」
海野「待ってました!」
仕掛けておいた爆薬などから少し離れた場所にある塹壕の中で正信の兵十数名と海野2曹は起爆装置を押す
海野2曹は衛生科のWAC(女性自衛官)であり本来は本陣で負傷者の手当てを行うはずだったのだが、人数が不足していることから前線で第二次防衛線の指揮を執ることになっていた
ズドオオオオオン
ドオオオオン
ドンッ
パパパパパパパパパパパパパ
敵兵「ぐあっ」
敵兵「ぎゃああああ!」
敵兵「ぐおあっ」
C4プラスチック爆弾が爆発し、押し寄せてきた小西の生き残りの兵士を吹き飛ばす
また、指向性散弾も発射される
指向性散弾は爆発すると無数の金属球を敵に浴びせる兵器だ
爆発によって飛び出した多くの金属球は敵兵たちの身体を撃ち抜いていく
これらの攻撃によって瞬く間に小西行長の兵は倒されていった
とりあえず一旦はここまで
>>367
上と下からの攻撃が弱いみたいですね
自衛隊の装甲車は車体下が地雷の爆風を受けやすい構造になってしまっているみたいです
>>368
どういった組織なのかも考えてありますよ
後々分かります
すげーワンサイドゲームだ・・・
~同時刻・宇喜多秀家討伐隊 矢野2尉たち~
矢野「撃て撃て撃て!」
小野「はいっ!」
敵中を突破しようと猛スピードで矢野たちは進行していた
スタングレネードの一斉投下と弾幕で戦況は少々改善されたものの、やはり敵の攻撃は止まない
タタタタタタン タタタタタタタタタタタタタ
タタタタタタ
雑兵「ぎゃああ!」
雑兵「ぐあっ」
タタタタン カチッ カチッ
矢野「装填する!援護しろ!」
小野「MINIMIも装填しないと残弾がありません!」
矢野「くそっ」
雑兵「りゃりゃりゃあああ!」
小野「うわっ!」
矢野「小野!伏せろ!」
ダン ダン ダン
雑兵「ぎゃあ!」
矢野は高機動車に飛び乗ってきた兵士を9ミリ拳銃で倒す
小野「…………これで車に飛び乗られるのは何度目でしょうか?」
矢野「知らん。スタングレネードによる撹乱で一気に敵の本陣に近づいたは良いが、まだこんなにも敵兵が生き残っているとは」
小野「きりが無いです。残弾もこの調子だとすぐに………」
矢野「おい!敵本陣にはあとどれくらいで到達する?」
隊員「地図上ではあと1キロ程度です!」
矢野「よし!一気に突破するぞ。本陣付近は鉄砲や弓による攻撃も想定される。敵兵の数も今より多くなるだろう。気をつけろ」
隊員「はい!」
雑兵「覚悟おおおお!」
矢野「!?」
小野「矢野2尉後ろ!」
雑兵「りゃああああああああああああああ!」
グサッ
矢野「くっ」
小野「うあああああ!」
タタタン タタタン
雑兵「ぐはっ………。おぬ…しら一体…………」
小野「矢野2尉大丈夫ですか?」
矢野「腕に……刺さっただけだ」
高機動車に飛び乗ってきた雑兵の振りかざした刀が矢野の右腕を切裂いていた
矢野の腕からは大量に血が流れている
小野「すぐに手当てを………」
矢野「いい。いらん!それよりも射撃を続けろ!」
小野「しかし………」
矢野「俺のことは心配するな。左手でも充分に戦える」
小野「……………了解」
矢野「へっ。たかが右腕負傷した程度で戦闘不能になったようじゃ………あの人を越すことは出来ないからな」
小野「矢野2尉………」
矢野「いいから射撃を続けろ!それと前方を警戒しろよ?鉄砲隊や弓兵がいるかもしれん」
小野「はい」
タタタタタタタタタタン
タタタタタタタタタタタタタタタタタタタ
隊員「矢野2尉!あのずっと向こうに見える場所。あれって宇喜多秀家の本陣では?」
矢野「あれか!」
隊員「あまり良くは見えませんが、白い布で覆われ、旗が幾つも立っています。兵による防御も厚いです」
矢野「間違いない。小野、他の車両に伝えろ。前方に見える本陣と思われる場所に突っ込むとな!」
小野「はい!」
矢野たちの車両の進行方向の延長線上に宇喜多の本陣と思われる場所は存在した
時代劇などで良く見られる白い幕に覆われた陣とその周囲を固める大勢の兵
遂に矢野たち10名の隊員は見事敵中突破し、宇喜多秀家の本陣へたどり着いたのであった
矢野「良し!全車両俺に続けええええええ!」
小野「矢野2尉!あまり車から身を乗り出さない方が良いと………」
矢野「へっ。指揮官ってのは戦場のど真ん中でも堂々とするもんだぜ?」
小野「あなたって人は………。仮にも負傷者なんですよ?矢野2尉は」
矢野「だから俺は平気だって………………………ちっ。やっぱ簡単には通してくれないか。伏せろ!」
小野「へ?」
ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン
カカカカカカカン
矢野「くそっ」
小野「うわ!」
パパパパパパパパパパパパン
カカカカカ
カアアンッ バリンッ
隊員「ぎゃああああああああ!」
敵陣から放たれた無数の矢と鉄砲の弾が車両を襲う
鉄砲の弾がフロントガラスを貫き、運転していた隊員の眼球を潰す
隊員「ぎゃああああああああああ!」
目を潰された隊員はハンドルを大きく切ってしまい、高機動車はバランスを失った
矢野「くそ!俺がハンドルを持つ!お前はアクセルをずっと踏んでろ!」
隊員「がっ……うぐ、は……はい」
矢野「よし」
目を潰された隊員がアクセルを踏み、矢野がハンドルを持つことで高機動車は再びバランスを取り戻す
小野「第二射来ます!」
矢野「MINIMIで倒せ!」
小野「はいっ!」
タタタタタタタタタタタタタタタタタタタ
機関銃の掃射によって鉄砲隊や弓隊の一部が粉砕される
しかし、一丁の機関銃では全ての兵を倒せなかった
パパパパパパパパパン
カカカカカン バリン バリン
矢野「くっ!」
隊員「ぎゃああああ!ぐあああ!」
矢野「落ち着け!大丈夫だ!」
隊員「が………・・・」
矢野「そんな………」
運転手の隊員は第二射攻撃襲い掛かってきた敵弾が首筋に命中し、絶命した
キキーッ
運転手の足の力が抜けたことによってアクセルを踏む者が居なくなり、高機動車は止まってしまう
矢野「…………。小野、運転しろ。俺が機関銃を撃つ」
小野「…………はい」
矢野「………それとAPC(装甲車)に連絡。LAM、及び誘導弾で敵の飛び道具を蹴散らせ」
小野「はい」
小野は車載無線で高機動車の横を走行していた装甲車に呼びかける
装甲車は停止してしまった矢野たちの乗る高機動車の十数メートル横に停止していた
矢野「………………」
小野「矢野………2尉」
部下を殺された矢野の顔は憎悪に満ちている
小野はそんな矢野の顔を見て少しばかりの恐怖を覚えた
小野(まるで敵を皆殺しにしてやる………とか言いそうな雰囲気だ)
矢野「……………」
無線『こちらAPC。LAM及び誘導弾を使用して敵陣の鉄砲隊を殲滅します。なお、その間、我々の車両に近づいてくる敵兵はLAV(軽装甲機動車)が蹴散らします』
矢野「分かった。すぐに発射準備に取り掛かれ」
無線『はい………。すぐに射撃開始出来るようにします』
矢野「ありったけの弾を撃ち込むぞ。奴らを石器時代に戻してやれ」
>>376
現代兵器の射程なら一方的な戦いが出来るかもしれませんね
ただ、弾薬が充分にあれば……ですけど
今日はここまで
敵は[ピーーー]けど部下が殺されたら怒るよ!って心情としては理解できるけどすごい理論だよなあ・・・
>>383
部下思いの上官なんだな…
まあ、敵味方はっきりさせないと戦争なんてやってられないだろうし…
乙です
続きが楽しみ
バシュッ
バシュッ
バシュッ
96式装輪装甲車の車上から隊員が110ミリ個人携帯型対戦車弾パンツァーファウストⅢ(LAM)を立て続けに発射する
発射された弾頭は真っ直ぐに宇喜多秀家の鉄砲隊や弓隊へ向かっていった
ドーン
ドオオオン
ドオオオオオオオン
雑兵「ぎゃああああ!」
雑兵「ぐおああああ!」
矢野「どんどん撃てえええ!」
無線『矢野2尉。LAMは残弾が残り僅かです』
矢野「出し惜しみするな!徹底的に叩け!でないと殉………戦死者がもっと出るぞ!」
小野「矢野2尉……………」
無線『了解………しました。攻撃を続行します』
バシュッ
バシュッ
ズドオオオオオン
自衛隊の対戦車弾によって宇喜多秀家の防御陣形は完全に崩壊していた
鉄砲隊と弓隊は跡形もなく消え去り、生存した雑兵たちも指揮系統が乱れた為に右往左往するだけだ
小野「矢野2尉。もう敵の飛び道具はありません。このまま宇喜多秀家に降伏するように申し出ては?」
矢野「いや、敵の大将は確実に潰す。小野、車両で本陣に突っ込むぞ」
小野「しかし…………!」
矢野「いいから出せ!」
小野「了…………解」
矢野「APCとLAVも後に続け!大将を討ち取りに行くぞ!」
無線『こちらAPC………。了解…………』
小野「……………」
矢野「発進しろ!」
矢野の号令で小野は高機動車を発進させる
それに倣って装甲車と軽装甲機動車も発進した
矢野「よし!速力上げ!一気に乗り込むぞ!」
小野「しかし………。敵の兵士はまだ本陣の守備についております。突破は…………」
鉄砲隊等の飛び道具を持った兵士はほぼ全滅していたが、本陣の周りにはまだ槍や刀で武装した兵が多数存在する
宇喜多秀家にとって最終防衛ラインとも呼べるその兵たちは向かってくる自衛隊車両に恐怖しながらも、主君を守るために一歩も退かない様子だった
矢野「ちっ!これでも食らえ!」
タタタタタタタタタタタタタタタタタ
雑兵「ぎゃあああ!」
雑兵「ぐあっ!」
矢野「今だ突っ込め!うおおおお!」
小野「くっ…………」
タタタタタタタタタタタタ
グオオオオ
矢野を乗せた高機動車は宇喜多の本陣へと突っ込んでいく
雑兵「くそおおお!おのれえええ!」
雑兵「化け物めええええ!」
雑兵「何としてでもあの怪物を倒すんじゃ!殿の命を守れええええ!」
雑兵「うおおおおおおおおおおお!」
小野「うあああ!来るなああああああ!死にたくなければ来るなああああああ!」
矢野「来るなら来い!全員ぶっ潰してやる!」
タタタタタタタタタン
タタタタタタタタタタタタタタ
小野「うわあああああああ!」
ガッツーン
ガンッ
ガンッ
グチャ
ガンッ ガンッ
雑兵「ぐああああ!」
雑兵「にぎゃああああ」
ブチブチブチッ
雑兵「うおおおおお!」
ガンッ
ガンッ
グオオン グオオン
矢野「くそっ!小野!速力を最大まで上げろおおお!」
小野「うわああああ!」
タタタタタタタタタタタタタン
無線『矢野2尉!矢野2尉!無茶です!相手が多すぎます!こちらが援護します…………』
突っ込んでくる高機動車に雑兵たちは攻撃を仕掛けてきた
時速80キロ近く出ている高機動車に飛びつこうとした雑兵たちは容赦なく車体に吹き飛ばされる
中には車に轢殺される者も居た
だがしかし、主君を守ろうとするこの時代の兵士はそんな高機動車に恐れずに突撃する
バキバキバキッ
大勢の雑兵と正面衝突した高機動車も勿論無事では無い
フロントガラスは割れ、ミラーは折れ、タイヤは死体と血糊でスリップする
矢野「押し切れえええええええ!」
小野「無理ですっ!完全に囲まれて…………!」
矢野「くっそおおおお!」
タタタタタタン タタタタタン
雑兵「ぎゃああああ!」
雑兵「鉄の馬は止まってるぞ!飛び乗れええええ!」
雑兵「うおおおおおお!」
高機動車はタイヤに雑兵の身体が絡まったためにほぼ停止してしまった
その隙を見逃さず、雑兵たちは高機動車に飛び乗り矢野たちに槍を向けてくる
雑兵「うりゃああああ!」
矢野「くそっ!」
タタタタタタタン タタタタタ
雑兵「ぎゃああああ!」
雑兵「怯むなああああ!」
雑兵「うおおおおお!」
小野「うわああああ!」
タタタン タタタン
小野も運転を諦めて小銃による射撃を開始する
が、時すでに遅し
周りは完全に取り囲まれていた
矢野「くそっ!うらっ」
カンッ
ぐさっ
雑兵「ぎゃああ!」
矢野「食らえっ」
ダンッ ダンッ ダンッ
雑兵「ぎゃっ」
矢野は雑兵の手から槍を奪い取り、それを持ち主の雑兵に突き立てる
そして間髪を入れずに背後から攻撃を仕掛けようとしていた別の兵に拳銃弾を撃ち込んだ
雑兵「うりゃああああ!」
グサッ
カツウウウウンッ
雑兵「!?」
矢野「へっ。お前らみたいに俺も鎧を来てたんだよ!」
雑兵の槍はボディーアーマーに弾き返される
タタタタタタン
雑兵「ぎゃあああ!」
負傷によって左手を使えないハンデがあるにも関わらず矢野は敵をどんどん倒していく
かなりの雑兵に取り囲まれている状況下で渡り合う矢野はすでに“この時代の兵士”と化していた
矢野「次はてめえか!」
雑兵「くっ!複数でかかれ!敵は“ひとり”じゃぞ!」
矢野「何人来ようが粉砕して…………!?ひとり…………?」
小野「うぅ…………」
矢野「………………………」
矢野「うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
ハンドルに前かがみにもたれる形で小野は倒れていた
首筋には刀で切りつけられた跡が見える
矢野「殺してやる!てめえら全員!俺が…………!」
タタタタタン
雑兵「ぎゃああ!」
雑兵「ぐおあっ」
タタタタタタタタタタン カチッ
車載機関銃の弾倉が底を尽きる
矢野「ちっ。じゃあこっちだ!」
タタタ タタタ
床に置いていた自分の小銃を拾い再び射撃を再開する
雑兵「ぎゃああ!」
雑兵「くっ!こやつ!鬼か何かか!?」
小野「うっ………………」
矢野「まだ息があるのか!?今からここに居る奴らを全員倒す。そうしたらすぐに脱出して手当てをしてやる」
タタタン タタタン
雑兵「ぎゃっ」
雑兵「ぐあ」
小野「矢野………2尉。ち………違います」
矢野「くそっ!装甲車もこの人ごみじゃ近づけないのか!?」
小野「違います………よ。自分…の、し………知ってる2尉は。こんな…………ひ…とでは」
矢野「しゃべるな小野!出血が酷くなるぞ!」
タタタン タタタン
小野「2尉は………や…さしい人…………でした。敵の………命のこ…とも考える………。軍人としては………甘すぎる…………」
矢野「……………!?」
タタタン タタタン
小野「矢野………2尉。こ……これ以上…………人が死ぬ…のを………見たくは………・・・・・・・・・・・」
矢野「…………………」
タタタン タタタ カチッ
矢野「……………」
雑兵「やつの連発銃の弾が切れおったぞ!」
雑兵「今じゃ!かかれえええ!」
うおおおおおおおおおおおおおおおお!
三田村「矢野2尉!伏せてください!」
タタタタタタタタタタタタタタ
雑兵「ぎゃあああ!」
雑兵「ぐあああ!」
弾を切らした矢野に襲い掛かろうと高機動車によじ登っていた雑兵たちを装甲車の車上から三田村1曹が機銃掃射で一掃する
雑兵の群れに阻まれて思うように進むことが出来なかった96式装輪装甲車がやっとのことで矢野の乗る高機動車の元へ到達する
雑兵「くそおお!さらに大きな鉄の馬じゃああああ!」
雑兵「うおおおお!」
三田村「うわっ!」
タタタタタタン タタタタタタン
雑兵「うっ」
雑兵「ぐはっ」
三田村は暴発して使い物にならなくなった重機関銃の代わりである5.56ミリ機関銃の掃射を続ける
矢野「………………」
三田村「矢野2尉!自分が援護しますから装甲車内へ退避してください!そこは危険です」
矢野「…………………小野」
小野「」
矢野「……………。すまなかったな、小野。全ては俺の責任だ」
三田村「2尉!はやく!こいつら次々に車両に登ってきます!」
矢野「ああ。一刻もはやくこの殺し合いを終わらせよう」
そう言って矢野は既に息をしなくなった小野を持ち上げ、装甲車に飛び乗る
矢野(俺は多くの罪を犯した。償おうとしても償えない。俺に出来るせめてもの行いは、これ以上の死者を出さない為にこの戦を終わらせることだけだ…………)
>>383
自分は敵を殺しまくってるのに敵に仲間が殺されるときれる
端から見ると矛盾してますよね
仲間の死を目の前にして一気に人が変わってしまうのも人間らしいといえば人間らしいのかも
>>384
味方にも部下思いの上官が居て、おそらく敵側にも部下思いの上官が居る……と考えると、なんだか複雑です
戦争は虚しいものですね
>>385
ありがとうございます!
よかったな
自分も嬉しく思います(主に投下頻度について)
おぉ おめでとう
楽しみに待ってます
結構な頻度ってどれくらいでしょうか?
自衛隊が敵国を攻撃するくらいの頻度?
三田村「このまま宇喜多の本陣に突っ込みます!しっかり摑まっててください!加納!出せ!」
加納「了解!くおおお!」
グオオオオオ
矢野を収容し終えた96式装輪装甲車は発進する
雑兵「鉄の馬が動き始めたぞ!」
雑兵「何としてでもここを通すな!本陣に一歩も近づけるんじゃないぞ!」
雑兵「おおおおおおおおおおおお!」
本陣に突っ込もうとしてくる装甲車を宇喜多の兵たちは迎え撃つ
雑兵「りゃりゃりゃあああ!」
雑兵「くおおお!」
カツーンッ
カンカンカン
雑兵「槍も刀も効かない!?」
雑兵「押せ押せ!この人数で押さえ込むんじゃあああ!」
刀や槍は装甲車の装甲に弾かれる
武器が通用しないと分かった兵たちは己の身体で装甲車を受け止めようとしていた
加納「こいつら!生身の身体で装甲車を受け止めようとしてやがる!」
三田村「突破しろ!」
加納「しかしっ!人数が多すぎる。いくら装甲車でもこの人海を突破するのは大変です」
装甲車の前に生身の身体による体当たりは通用しないように思えたが、数百人単位で体当たりをすれば効果はある
数百人の雑兵による防壁は装甲車の進行を確実に阻止していた
ブチブチブチッ
雑兵「ぎゃああああ!」
雑兵「ぐあああ!」
加納「敵が多すぎる!速力低下…………」
三田村「この際、車両が壊れても構わない。何としてでも本陣にたどり着け!」
加納「はい…………!?」
ガコッ
ガコン
加納「なっ…………!?」
三田村「どうした?」
加納「車輪に死体が絡まった模様。くっ………。車輪が回りません!」
三田村「くっ」
矢野「後続の軽装甲機動車は?」
後部の兵員室から矢野が操縦席にやって来る
矢野「この装甲車が走行不能になった場合は後続の軽装甲機動車に先に突入させる」
矢野の指揮する部隊の車両は矢野が元々乗っていた高機動車を失った今、96式装輪装甲車と軽装甲機動車の2両のみだった
周りを敵兵に完全に囲まれ、操縦席の窓なども敵兵の身体によって塞がれてしまっている
故に車両内から外の様子はほとんど分からなかった
そんな状況下であるから装甲車内の隊員は後続の軽装甲機動車がどのような状況になっているかを把握できていない
加納「無線で連絡を取ってみます」
三田村「加納、お前は操縦を続けろ。連絡は俺がする」
加納「はい」
そう言って三田村は無線で軽装甲機動車に連絡を取ろうとする
三田村「こちらAPC(装甲車)。LAV(軽装甲機動車)応答しろ」
無線 『ザザッ こちらLAV。送れ』
三田村「こちらAPC。現在、敵兵の人海作戦によってAPCは走行不能。任務続行が困難だ。我々がここの敵兵を何とかして引きつけるから、その隙にLAVのみで宇喜多の本陣へ突入してくれないか?」
無線『こちらLAV。そうしたいところですが、我々の車両も同じく周りを完全に囲まれていて進めません』
三田村「くそっ!本陣はすぐ目の前なのに!」
無線『我々も何とかして…………。くそっ!うおああああ! ドン ドンドン タタタン ギャアアア ザザザッ』
三田村「!?」
矢野「どうしたんだ!」
三田村「おいっ!どうした!応答しろ!」
無線『ザザッ く……敵が、我々の車両を………押し倒して……。ザザッ く………。タタタ タタタ タタタ うおおおお!』
三田村「押し……倒した?」
矢野「軽装甲機動車……をか?」
軽装甲機動車の重量は4.5トン
その重量を雑兵たちは押し倒してしまったのだという
数十人でかかれば押し倒すことも出来るかもしれないが、装甲化された戦闘車両を力任せに押し倒す戦法は矢野たち自衛官にとって完全に盲点であった
三田村「どうします!?はやく彼らの救援に行かなくては!」
矢野「……………」
加納「救援っつっても………この状況で?」
無線『ザザッ こちら……LAV………。救援は必要ありません。タタタタン タタタ ギャアアア 我々、LAVの乗員は今から装甲車に体当たりを仕掛けている雑兵に所持する全ての装備を使用して攻撃を仕掛けます。その隙に………本陣へ!』
矢野「……………くそっ」
三田村「馬鹿を言うな!そんなこと出来る筈がないだろうが!」
無線『このままではこの戦は終わりません!矢野2尉!はやくこの戦いを終わらせてください!」
矢野「……………分かった」
三田村「2尉!?」
矢野「装甲車の周りの敵兵を蹴散らしてくれ。ただし、全ての弾薬は使い切るな。お前たち軽装甲機動車の乗員の命を守るために必要な弾薬はしっかりと確保しろ。いいか?必ず生き残れ。これは命令だ」
無線『…………了解』
矢野「よし。加納!軽装甲機動車の乗員が周囲の敵を攻撃してくれている間に何とかして装甲車を発進させるぞ!」
加納「了解しました!」
~96式装輪装甲車より少し離れた場所・押し倒された軽装甲機動車内
軽装甲機動車には3名の隊員が乗っていた
押し倒された軽装甲機動車はドアが吹き飛び、防弾ガラスも割れてしまい、敵の格好の標的となってしまっている
そんな状況下で3名の隊員は奮闘していた
隊員1「いいかお前ら!我々の持ちうる全ての装備を使って装甲車周辺の敵を殲滅するぞ!」
隊員2「了解っと。つっても!こんなに囲まれてるとなぁ」
タタタン タタタン
雑兵「ぎゃあ!」
雑兵「ぐあっ」
押し倒された軽装甲機動車内に身を隠しながら戦う3名の隊員たち
吹き飛ばされたドア以外は完全に装甲で守られているために、彼らは数百人規模の雑兵相手に何とか戦えていた
隊員3「とにかくこの車両の周辺の敵兵を一掃しないといけません。LAMと誘導弾を全て撃ち尽くせば何とか一掃出来ますかね?」
隊員1「敵兵の半数以上は装甲車のほうに群がっているが、こっちの車両にも100人以上は群がってきてるからな………。まあ、兎にも角にも、ありったけの火砲をぶち込んでやれ!っと、うわっ」
タタタン タタタン
雑兵「ぎゃあ!」
雑兵「がっ」
隊員1「俺が小銃で援護射撃をする。その間にLAMやMATの射撃準備を完了させろ!」
隊員2「了解!」
隊員1「うおらああああ!」
タタタタタタタタタタタ
隊員1は軽装甲機動車の車外に身を乗り出すと、小銃の連射モードで援護射撃を開始する
雑兵「ぐあっ」
雑兵「ぐあああ!」
雑兵「鉄の車は倒れて動けない!今が勝機じゃぞ!」
隊員1「ちっ。これでも食らいやがれ!」
ピーンッ
雑兵「なんじゃ?ありゃ?」
ズドオオオオンン
雑兵「ぎゃあああ!」
雑兵「うわあああああああ」
隊員1は群がってくる雑兵に手榴弾を投下していた
隊員1「こうなったら出し惜しみ無しだ。全て投下してやるっ!」
ズドン
ズドンッ
ズドンッ
雑兵「ぎゃあああ!」
雑兵「うわああ!」
隊員1「いそげ!LAMの発射準備はまだか!?」
隊員2「発射準備完了!」
隊員1「よっしゃ!“全弾”撃ち込め!」
隊員2「はい!」
隊員3「中MATも発射準備完了しました!」
隊員1「おし。派手にやってやろうじゃねえか」
隊員1「…………あとは頼んだぜ、矢野2尉」
よっし追いついた
読み応えがあって素晴らしい。こんど歴史勉強してみようかな
4月から自分も!?意味深だなあ。
まさか陸自・・・?
隊員1「発射あああああああ!」
バシュッ
シュウウウウウウ ズドオオオオン
雑兵「ぎゃあああ!」
雑兵「ぐあっ!」
隊員1「おらおら!てめえらの相手はこっちだ!」
タタタン タタタン タタタン
雑兵「ぎゃあ!」
雑兵「おのれええ」
軽装甲機動車の乗員たちは96式装輪装甲車に襲い掛かる雑兵たちに対戦車弾や小銃で攻撃を仕掛ける
隊員2「中MAT発射準備よし」
隊員1「待て。誘導弾は仮に射撃した場合、装甲車の熱に反応して装甲車を攻撃してしまうかもしれん」
隊員2「そっか。危ない危ない」
隊員1「とにかくありったけの弾を使って敵を引きつけるんだ。装甲車に群がってる敵も全て、俺たちに攻撃の矛先を変えるようにするんだ!」
隊員2「全ての敵兵を我々が引き受ける………ということですか。やってやりましょう!」
隊員3「はい!」
タタタ タタタ タタタ
隊員1「ほらほらこっちだ!てめえらまとめてかかってこーい!」
一日一回と言ってたがそれで一レスだけなら二日に一回とかでもいいのよ?
自分で言ったことがプレッシャーになっちゃあいかんからね。
軽装甲機動車の乗員の攻撃に次々と倒れる宇喜多の兵士
装甲車に攻撃を仕掛けていた雑兵たちも軽装甲機動車の隊員達の攻撃に気付いた
雑兵「あそこじゃ!もうひとつの鉄の馬から攻撃してきおる」
雑兵「おのれえええええ!」
うおおおおお!
隊員1「よし!こっちの攻撃に気付いたぞ。もっと弾幕を張ってひきつけろ」
隊員2「はい。っと!うわっ」
タタタン
雑兵「ぎゃっ」
隊員3「ひきつけるのは良いが、そろそろ…………。厳しくなってきましたね」
隊員1「………………。良いから攻撃に専念しろ。俺たちの仕事は矢野2尉たちを本陣に送り出すことだ」
隊員3「そうですね。くっ!」
タタタ タタタ
バシュッ
ズドオオオオオン
雑兵「うぎゃ」
雑兵「こっちの鉄の馬は後回しじゃ!あっちの攻撃してくる鉄の馬を先に倒すんじゃ!」
雑兵「うおおおおお!」
隊員1「よし!装甲車に群がってた兵がこっちに来たぞ」
隊員2「矢野2尉。今のうちに本陣へ!」
タタタ タタタ
ズドオオン
隊員3「LAMの残弾がもうありません!」
隊員1「くっ………」
110ミリ個人携帯型対戦車弾が切れる
隊員2「手榴弾を下さい!小銃じゃ防ぎきれない」
隊員1「これでラストだ」
隊員2「感謝します」
隊員1「装甲車はどうだ?本陣に突入できそうか?」
隊員2「…………………!」
敵兵の山に進行を妨げられていた96式装輪装甲車だったが、隊員1たちが敵兵たちを引き寄せた為にどうにか動けるようになったらしい
エンジン音と共に、巨大な装甲車は前にゆっくりではあるが進み始めていた
隊員3「装甲車が走行を開始しました!」
隊員1「俺たちの任務は………成功したのか」
隊員2「はは。その代わり、相当量の敵兵が我々の元に押し寄せてきますけどね」
隊員1「…………。まだ死ぬって決まったわけじゃない。目の色が黒いうちは絶対に諦めるな!生き残ることを第一に考えて戦え!」
隊員2「了解」
隊員3「はい!」
そう返事をして彼ら3人の隊員は小銃を敵兵に向けて構える
しかし、隊員達の持っている小銃弾の残弾は残り僅かであった
足となるはずの軽装甲機動車も押し倒され、戦場からの脱出も不可能
その上、押し寄せてくる敵兵の数は3名で防ぎきれる人数ではない
それでも彼らは戦う
隊員1「頼むぜ!矢野2尉!」
宇喜多秀家の本陣に突入する装甲車を視界の片隅に確認した後、隊員達は再び戦闘を開始した
~宇喜多秀家本陣~
宇喜多秀家「……………鉄の馬がここに!?」
配下の兵「はっ。もうじきここへ来るものと思われます」
宇喜多秀家「我が陣の防御に当たっていた鉄砲隊や兵たちはどうした?」
配下の兵「鉄の馬2つを倒すことには成功したのですが、1番大きな鉄の馬は倒し損ねた模様。そして、鉄砲隊と弓隊は全滅、残った兵もほぼ壊滅…………とのこと」
宇喜多秀家「何と!?」
配下の兵「殿!お逃げください。あの鉄の馬………。ただの刀や鉄砲では倒せませぬ。刃も鉄砲弾も弾き返され、足軽が近づいても連発銃や爆裂弾にやられてしまいます。この本陣に残った僅かな兵では太刀打ちが出来ませぬ」
宇喜多秀家の兵のほとんどは自衛隊に倒されるか、東軍への攻撃に参加していて本陣にはほとんど人が残っていない
秀家本人と20名ばかりの兵のみが本陣にいた
宇喜多秀家「………………」
配下の兵「今ならまだ西軍が優勢です。確かに他の武将もあの奇怪な連中に劣勢ではありますが、一部の西軍の兵は内府家康の本陣の手前まで迫っております。勝機はまだ…………」
宇喜多秀家「わしに…………」
配下の兵「は?」
宇喜多秀家「わしに逃げろと申すのか!?」
ガタッ
配下の兵「そ…それは」
宇喜多秀家「わしは逃げぬ。例え怪物並みの力を持った鉄の馬が来ようと逃げぬ。わしも武士だ!戦いを挑んできた者が居るのなら受けて立つ!」
配下の兵「しかし!殿!」
宇喜多秀家「刀を持って来い!」
配下の兵「………………はい」
宇喜多秀家「わしは太閤殿下の恩義を果たす為にこの戦に参加した。ここで逃げては亡き太閤殿下に合わす顔も無い。いや、それ以前に武士としての名が廃る!」
配下の兵が刀を持ってくる
宇喜多秀家「よし。逃げたいものは逃げよ。敵は怪物じゃ。誰も咎めはせん」
一同「「 ……………… 」」
宇喜多秀家「ふん。おぬしらも武士……ということじゃな」
そう言って秀家は刀を鞘から出す
宇喜多秀家「怪物退治じゃ。鉄の馬だろうと連発銃だろうと、わしの手で葬ってやる」
>>409
ありがとうございます!
自分も歴史には疎くて、色々無知なところを誤魔化しながら書いていたり………
>>410
陸自ではないです
あまり詳しくは言えませんが、そっちの方向に進むのは間違いないですけど
>>412
ありがとうございます
なるべく1日1回を目指しますが無理な日があるかも……です
色々コメントありがとうございます!
あと少しで宇喜多編は終わりですかね
防衛大か…
さすが若い武将は血気盛んだね。
人生の半分以上を八丈島で過ごした人が今度はあっけなく死ぬのかな・・・
どっちが幸せかは知らんが
~96式装輪走行車内~
当初、10名居た宇喜多秀家討伐隊の隊員は既にその数を5名まで減らしていた
矢野「総員、下車準備。本陣突入と共に装甲車から下車し、戦闘陣形を展開する」
隊員たち「「 了解 」」
三田村「突入まで残り秒読み10秒!」
矢野「後部扉を開け!三田村と加納は装甲車上から援護射撃!」
三田村「了解!」
加納「はい!」
装甲車に乗る5名の隊員のうち矢野を含む3名の戦闘員が装甲車の後部扉から下車し、速やかに宇喜多秀家の身柄を確保する
三田村と加納の装甲車組は車上から矢野たち3名の隊員の援護をする
これが宇喜多秀家の本陣攻略の作戦であった
自衛隊員を乗せた装甲車はついに本陣に突入する
グオオオオオ
ウオン オン
バキバキバキ
雑兵「!?」
雑兵「来おったか!」
三田村「本陣突入しました!後部扉、開放します!」
矢野「よし!行け行け行け!遅れるな!」
三田村「加納!小銃持って車上に行くぞ」
加納「はい」
宇喜多秀家の本陣に突入した装甲車の後部扉が開き、矢野たち3名の隊員が吐き出されるように出てくる
宇喜多秀家「これが鉄の馬か…………」
明石全登「お下がりください。ここは自分が…………」
宇喜多秀家「全登、こやつらはわしの討伐に来たのだろう。ならばわしが相手をするまでのこと」
明石全登「しかし…………」
宇喜多秀家の軍師的存在である明石全登は秀家を守ろうとしたが、秀家はそれを止める
本来の史実では明石全登は福島正則と戦闘をしているはずだったのだが、自衛隊が宇喜多秀家の軍勢に攻撃を仕掛けているという話を聞いた彼は配下の兵を引き連れて秀家の本陣に戻ってきていた
無論、連れてきた配下の兵はほとんど自衛隊の近代兵器にやられてしまっている
雑兵たち「………………」
本陣に残っている兵士たちは秀家本人を守るために陣に居るだけあって、全員が全員、精鋭であった
精鋭と言われるだけあって、彼らは突入してきた装甲車にうろたえもせずに武器を構えている
タタタ タタタ
雑兵「ぐっ!」
雑兵「がはっ」
雑兵「連発銃じゃ!気をつけろ!」
雑兵「殿を守るのじゃ!」
タタタ タタタ タタタ
装甲車から下車した3名の隊員は3点制限射撃で身近に居た兵士の何人かを倒す
先手を取って、相手が怯んだ内に周囲を確保する
それが矢野たちの第一目標であった
しかし…………
雑兵「りゃあああああ!」
雑兵「おうおおおおおおお!」
矢野「装甲車にも小銃にも怯まないだと!?」
大西1士「うわあああ!2尉!どんどん来ます」
矢野「落ち着け大西!敵は20名程度だ。冷静に1人1人対処しろ」
大西「はい!」
タタタン タタタン
ドン ドン ドン
雑兵「ぐおっ」
雑兵「くあっ」
精鋭部隊の兵士たちであれど刀や槍と小銃ではリーチが違いすぎた
小銃弾に宇喜多の兵は次々に倒れていく
それでも彼らは怯まなかった
隊員「ひっ。こいつら死ぬのが怖くないのか!」
矢野「くっ」
タタタ タタタ カチカチ
隊員「弾切れだ………」
雑兵「うりゃあああああ!」
雑兵「おおおおお!」
パタタタタタタタタタタ
雑兵「ぐはっ」
三田村「俺らが援護する隙に予備弾倉を装填しろ!」
隊員「はい」
雑兵「く………。連発銃か。やはり強い」
雑兵「もう10名も倒しおった」
小銃および機関銃の射撃で20名居た宇喜多の兵は半減していた
矢野「お前ら!俺たちの力はもう思い知っただろ!刀と銃じゃ勝負にならん。いいか、俺はこれ以上無益な血を流したくない。おとなしく投降しろ!そうすれば命の保証はする」
明石全登「投降じゃと!?」
雑兵「そんなことするか!」
雑兵「そうじゃ!うおおおおお!」
タン タン
雑兵「がはっ」
矢野「我々にはこいつ(小銃)がある。お前たちの持つ刀の刃が俺たちに届く前にお前たちは倒されるんだ!それでもまだ勝負するのか?」
雑兵たち「「 ……………… 」」
矢野(頼む。全員投降しろ。これ以上の戦闘はもはや意味がない)
「そうじゃな。わし以外は投降すべきであるかもしれぬ」
矢野「!?……………宇喜多……秀家か」
宇喜多秀家「おお!そうとも。某は宇喜多秀家である!おぬしの名は何と申す?」
矢野「陸上自衛隊、第十二旅団所属、矢野隼人2等陸尉だ」
宇喜多秀家「りくじょう………じえいたい?内府の軍勢か?聞いたこと無いのう。南蛮の兵士でも無さそうじゃし。連発銃に鉄の馬、着ている衣服も奇妙じゃ。おぬしらはどこから来た?」
矢野「……………」
宇喜多秀家「答えられぬか?」
矢野「……………我々の故郷である国は“ここ”日本だ。400年の時が違えど、ここが我々の故郷であることに変わりは無い。そして、我々は我々の故郷で起きている戦を一刻も早く終わらせるために来た」
宇喜多秀家「よく分からんの。じゃが、おぬしらはわしを倒そうとして来たのじゃろう?」
矢野「必ずしもそうとは言えない。あなたが降伏し、投降してくれれば我々はあなたに攻撃はしないし、他の兵にも攻撃はしない」
宇喜多秀家「ふむ」
矢野「頼む!投降してくれ。我々は無益な戦闘はしたくないんだ!」
宇喜多秀家「……………のう、おぬし。おぬしも武人ならわかるであろう?」
矢野「?」
宇喜多秀家「相手がどんな強者であろうとも、降伏したら死んでいった配下の兵に申し訳が立たぬ。手足がまだ動くうちは決して戦うことを止めぬ!」
矢野「秀家!」
宇喜多秀家「おぬし、先程面白いことを言うたな。刀と鉄砲では勝負にならぬ…………と」
矢野「おい。何をする気だ!?」
宇喜多秀家は持っていた刀を構え、矢野の方を向く
宇喜多秀家「本当にそうか試してみようではないか」
乙です
毛利はまだ弁当食ってるのだろうか。
島津は帰った人数の方が少ないくらいだからともかく毛利は戦闘に参加したら維新の元勲が一人くらいは死にそうだなー
矢野(本気なのか?こいつは……………)
宇喜多秀家「…………………」
ジリッ
矢野「!?」
矢野(この目…………。小銃相手に刀で本気に………!)
小銃を構える矢野にじわりじわりと迫る宇喜多秀家
その目からは半端では無い気迫が感じられる
矢野(数多の修羅場を潜り抜けてきた目だ。これが戦国武将…………か)
雑兵「殿!」
雑兵「連発銃相手には!」
雑兵「殿をお守りしろ!」
宇喜多秀家「手出し無用おおおおおおおおおお!皆の者!手を出すでないぞ!」
雑兵たち「「 …………… 」」
加納「車長!宇喜多の野郎、2尉とタイマン張るみたいですよ!援護しないと!」
三田村「相手は刀だ。こっちにゃ小銃がある。タイマンで負けるはず無いだろ。矢野2尉が秀家を圧倒して終了だ。心配するな」
加納「しかし………。あの気迫…………」
三田村「ああ。やべえ空気ではある。だが、矢野2尉の射撃の腕は特殊作戦群内でもトップだったと聞く。この距離で外すはずがない。大丈夫だ」
加納「………………」
ジリッ
ザッ
矢野「………………」
宇喜多秀家「………………」
ザザッ
矢野「!?」
加納「秀家が動いた!」
矢野「くっ」
タアァーン
宇喜多秀家「……………くおっ!」
カキイイイイイイイイン
矢野「なっ!?」
宇喜多秀家「もらったああああああああああ!」
矢野は県3尉から宇喜多秀家が関が原の後でどういった人生を歩むのかを聞かされていた
故に矢野は宇喜多秀家を殺そうとは思っていない
仮にここで秀家を殺せば歴史が変わってしまうのだ
そこで矢野は迫ってくる秀家の利き腕を撃ち抜き、戦闘能力を奪おうとした
だが、
宇喜多秀家「うおおおおおおお!」
矢野「くそっ!」
ガツン
キーンッ
宇喜多秀家はそんな矢野の意図を見透かしたかのように弾道を見極め、小銃弾を刀で防いでしまった
至近距離から撃たれた小銃弾をまともに受けた衝撃で秀家の持っていた刀は若干変形してしまったが、殺傷能力は失っていない
この時代の鍛冶職人の腕の賜物である刀もまた、近代兵器に怯まなかったのである
あまりの出来事に一瞬怯んでしまった矢野は反撃の機の逃し、秀家の反撃を許してしまう
刀による斬撃を小銃でかろうじで防ぐことに成功するも、小銃の利点である射程を封じられた矢野は完全に劣勢となった
矢野「くおおおお!」
ガチガチガチ
小銃と刀がぶつかり合い、金属の擦れあう音が鳴る
宇喜多秀家「おぬし、本気でわしを殺す目をしておらんかった。戦場では少しの弱気が命取りになるぞ」
矢野「くっ………。確かに………俺たちは人を殺すことを恐れている…………」
ガチガチガチガチ
矢野「だがなぁ………!殺すことを恐れなくなったら………それで………人として………」
宇喜多秀家「!?」
矢野「終わりじゃねええええかああああああああああああああああああ!」
ガッキイイイイイン
矢野は秀家の刀を弾き返す
陸上自衛隊では銃剣道という武道が行われていて、矢野たち陸上自衛官は小銃での白兵戦闘の心得が無いわけではなかった
特に矢野は白兵戦闘訓練で優れた成績を修めている者であり、この時代の兵士とも互角に戦えている
宇喜多秀家「やるではないか。おぬし。面白い、久々に刃を交えるとするか!」
矢野「くっ」
ガシャッ
矢野「!?」
激しい白兵戦闘のせいか小銃のマガジンが脱落してしまう
矢野「ちっ」
宇喜多秀家「ほう。その中に鉄砲の弾が詰められていたのじゃな」
矢野「どうせ格闘戦じゃ射撃は必要にならん。さあ行くぞ秀家!」
宇喜多秀家「言われるまでも無いわ!」
ガキイイイン
キイイイン
ガンッ
ガンッ
加納「車長!このままじゃ2尉が!」
三田村「まさか………こんなことになるとは!?」
加納「くそっ!俺がここから秀家を撃ち抜けば!」
三田村「やめろ加納!今撃ったら矢野2尉に当たってしまう可能性がある」
加納「しかし…………」
ガキイイイン
カンッ
キイイイン
白兵戦闘を続ける矢野と宇喜多秀家
最初こそ互角に渡り合っていたが、徐々に秀家が優勢となっていく
矢野(くそっ!攻撃が速い!防ぐのが精一杯だ。戦闘経験の差か?)
宇喜多秀家「うおおおおお!」
キイイイイイン
矢野「ぐっ………」
矢野(今まで数々の戦闘で培った経験の賜物………。あらゆる攻撃パターンを予測して確実に俺の攻撃を封じてやがるのか!)
戦闘はほとんどが遠距離からの射撃で、実戦経験も乏しい矢野と歴戦の武士である秀家の力の差は目に見えていた
現代では強者であった矢野も戦国武将の前には無力である
カキイイイイイイイイイイイイイイイイン
矢野「あっ!?」
宇喜多秀家「もらったああああああああ!」
グサッ
矢野「ぐっ…………」
ひとまずここまで
矢野「ぐっ…………」
三田村「2尉!」
加納「矢野2尉いいいい!」
宇喜多秀家が矢野の腹部に刀を突き立てる
ガツッ
宇喜多秀家「!?」
矢野「鎧を着てるのは…………あんたらだけじゃないさ」
宇喜多秀家「服の下に………鎧が!」
矢野「おおおお!」
ガキイイイン
宇喜多秀家「くっ!」
矢野たち自衛官はボディアーマーを着用しているが、ボディアーマーは戦国時代の兵士の着ている鎧とは全く違う見た目を持つ
宇喜多秀家は矢野の着るボディアーマーが刀を弾き返すほどのものだとは見破れていなかった
そもそも、この時代の兵士がボディアーマーを見ても、それが鎧のような役割を果たす衣服だということには気付かないであろう
宇喜多秀家は確実に止めを刺そうと、全力でボディアーマーに刀を突き立てたわけだが、見事に刀は弾き返され、その反動で秀家は刀を手から放してしまった
宇喜多秀家「何のこれしき!」
矢野「取るな!」
ダンッ ダンッ ダンッ
手から離れ、地面に落ちた刀を拾おうとする秀家
だがその前に矢野がすかさず腰元から9ミリ拳銃を取り出し、落ちた刀に銃弾を撃ちこむ
宇喜多秀家「か………刀が……」
矢野「いくら頑丈な刀とはいえ、至近距離から9ミリ弾を3発も食らえば折れるのは必至。勝負あったな」
宇喜多秀家「く…………。相手が鎧を着ていないと思い込み、決着を焦ったわしに敗因がある……か。うむ。わしの………負けじゃ」
矢野「……………ハア」
勝敗が決まり、矢野はほっと一息つく
雑兵「そんな………!」
雑兵「殿が………!?」
明石全登「くっ………」
雑兵「こんなの認めんぞ!」
雑兵「そうじゃ!」
宇喜多秀家「皆の者!静まれ!負けは負けじゃ!」
雑兵たち「「 ……………… 」」
三田村「どうにかなったな…………」
加納「自分はヒヤヒヤしましたよ。はァ…………」
矢野以外の自衛官も安堵する
宇喜多秀家「矢野……・・・と言ったか?」
矢野「ああ」
宇喜多秀家「わしの負けじゃ。それは認めよう。じゃが、ひとつ武士の情けで頼みを聞いて欲しい」
矢野「武士の………情け?」
宇喜多秀家「ああ。そうじゃ。最期は………己の手によって!」
矢野「……………腹を切るつもりか」
宇喜多秀家「………………」
矢野「残念だがそれh」
雑兵「おのれえええええええ!おぬしらに!おぬしらに殿はあああああ!」
矢野「!?」
宇喜多秀家「!やめ…………」
激怒した雑兵が矢野の首筋に刀で斬り付ける
ブスッ
矢野「が……………」
三田村「矢野2尉!」
加納「あんにゃろおおおお!」
タタタタタタタタタタ
雑兵「ぐっ、がはっ…………」
大西「矢野2尉!」
矢野を攻撃した雑兵を小銃の連射で倒す加納
他の隊員は矢野の元の駆け寄る
雑兵「くっ!」
雑兵「おのれええええ!」
大西「動くんじゃねええええええ!」
パタタタタタタ タタタタタ
雑兵「うわっ」
雑兵「くそっ!」
宇喜多秀家「皆の者!動くでない!」
雑兵マジ空気読め
三田村「くっ。出血が激しい。加納!止血しろ。誰か装甲車から救急用のセット持って来い!」
大西「自分が行きます。おい、お前は他の兵士が動かないように見張ってろ」
隊員「了解!お前ら、動いたら容赦なく銃弾を浴びせるからな!」
矢野の首筋から噴き出す血を抑える加納
しかし、その行為も虚しく、抑えても抑えても血はあふれ出してきてしまう
加納「止まらねえ!くそおおお!」
三田村「落ち着け加納!しっかり抑えてろ!」
加納「はい!」
加納も三田村も矢野の血しぶきで全身を赤く染められてしまう
矢野「く………。おま……えたち………」
三田村「矢野2尉!」
加納「傷口が浅く、致命傷にまでは至ってないのか!?」
三田村「だとしてもこのままじゃ出血多量で駄目だ!はやくベースに戻って手当てしないと!」
加納「ここで応急処置して即効でベースに戻りましょう!………ですが、軽装甲機動車の乗員たちの回収も……」
矢野「だま………って聞け」
三田村「2尉…………」
矢野「いい……か?宇喜多…秀家を…………殺すな。宇喜多秀家の………軍を……解体…………させたあとで、秀家を……逃がすんだ」
加納「しかし、2尉!」
矢野「それが………歴史の……ただ…………しい、あり………かた」
三田村「分かりました!分かりましたから………もう、しゃべらないで下さい!」
矢野「く…………。すまない。俺………のせい…で多くの………ぶ……かを………」
三田村「2尉のせいではありません!」
大西「救急用のセットです!持ってきました!」
加納「急げ!」
大西「はい!」
矢野「……………………結局………歴史は…………俺たちに…何をさせようとしていたんだろ……うな」
三田村「矢野2尉いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
>>425
コメントありがとうございます
>>426
そういえば毛利輝元の存在を完全に忘れていました
総大将なのに
>>436
実際、戦国時代の戦でこういうことあった場合、周りの兵士はどうするんでしょうね?
ちょっと気になります
今日はここまで
次回からはほったらかしの小早川陣地の戦いを書き始めると思います
はい
関が原で鮭弁当食ってるのは輝元の子供の秀元だよ。
輝元は大坂で秀頼の子守してる。
~桃配山・家康(仮)陣~
県「小西行長をはじめとする幾つかの軍勢が正信の陣へ到達、伊達政宗と島左近は一進一退の戦い、宇喜多秀家は敗走、小早川は動かず………か」
隊員「宇喜多秀家が敗走………ということは矢野2尉たちがついに!」
県「ああ。そういうことになる。これで少しは戦況が変わるだろう。あとは小隊長が石田三成の陣を攻略するか、空挺隊員達と戦車が小早川の陣を攻略するかすれば我々の勝利だ」
隊員「おお!」
県の言葉に、自衛隊員だけでなく周囲の元家康配下の兵たちも表情が明るくなる
県(とは言ったものの、決して我々が優勢になったわけでは無い。我々自衛隊の部隊が石田三成の陣に到達しようとしているように、西軍の軍勢も、この桃配山に到達しようとしている。どちらが先に大将の本陣にたどり着くか………。それで勝敗が決まる)
西軍の軍勢は本多正信の陣の手前まで迫ってきている
正信の陣に居る野中や海野といった隊員達によって何とか、その足を食い止めてはいるものの、そう長くは保たないだろう
県「にしても……、都合が良すぎるよな」
隊員「は?」
県「いや、伊達政宗に前田利家のことは前に話したよな」
隊員「はい。伊達政宗も前田利家も本来は関が原に参加していない武将である……と」
県「本多正信もだ。しかも、俺に知っている歴史では前田利家はすでに死んでいることになっている」
隊員「我々が……この時代にやって来たために、歴史が狂ってしまっている。ということですね?」
県「ああ。ちょっと前までは俺もそう思っていたさ。だが、それだとおかしいことに気付いた」
隊員「おかしい?」
県「そうだ。我々がこの時代にやって来たために歴史が変わったというのならば、歴史が変わるのは我々がこの時代に来た後のみ………ということになる。つまり、1600年9月14日以降の歴史が変わるということだ」
隊員「そう…なりますね」
県「ならば、なぜ?1599年に死ぬはずだった前田利家が生きていたんだ?」
隊員「!?」
県「我々が来る前から歴史は変わってしまっていた、と考えるのが妥当なんだろうな。まぁ、我々が来て、家康が死に、完全に歴史が狂ってしまった今となっては、どうでも良いことではあるけどな」
隊員「……………」
県(元々狂っていた歴史。なぜ前田利家が生きていたのか?なぜ伊達政宗が関が原付近に居たのか?なぜ本多正信が関が原に参加したのか?関が原の戦いが開戦する前はそれがずっと疑問だった。しかし、開戦して数時間経過した今、俺はその答えが分かったような気がする)
県(島左近との戦いで苦戦する小隊長の元に駆けつけ、救った伊達政宗。その伊達政宗の不在で桃配山に押し寄せてきた小西行長の軍勢を防ぐように存在する本田正信の陣。そして、正信の代わりに上田城を攻める前田利家…………)
県(出来すぎているんだ。都合よく出来すぎているんだ。だから俺は………ひとつの結論を出してしまった)
県(この俺が………桃配山に居る意味。それは…………)
雑兵「忍びじゃああああ!」
雑兵「くそ!小西の先遣か!?」
雑兵「討てええええ!」
県「!?」
隊員「西軍の忍びが桃配山に侵入したそうです!」
隊員「万が一のこともあります。家康役の県3尉はパジェロ(73式小型トラック)に退避してください」
姿は見えないが西軍の忍びが桃配山に侵入したらしい
元家康配下の兵が忍びが居ると思われる林へと入っていく
家康役の県が討ち取られると、東軍の敗北は必至だ
それを避けるために県の居る家康本陣(仮)には脱出用の車両が1台置いてあった
隊員「忍びだろうと結局はこの時代の兵士だろ?小銃の掃射で終わりだ。俺が退治して来る」
隊員「よせ。根元から聞いた話だが、この時代の忍びってのはレンジャーなんかと比べ物にならないほどの工作員らしい。林の中での戦闘じゃ俺たちが不利だ。ここは敵が姿を現すまで待ってから攻撃をするべきだ」
県以外の2名の隊員はそう言い合いながら小銃や機関銃を車両から持ってくる
隊員「3尉も小銃を」
県「ああ。2人とも単独行動はするな。忍び複数人相手じゃ、いくら小銃を持っていても危険過ぎるからな。それと俺からあまり離れるな」
隊員「は…はあ」
雑兵「ぐあっ!」
雑兵「そっちじゃあああ!」
雑兵「ぎゃあああ!」
林の中から忍びの討伐に向かった兵たちの悲鳴が聞こえる
県の周りに居る兵たちはその声を聞いて浮き足立った
県「みんな!無闇に林に入るな。林は忍びにとって格好の戦場だ。敵が確実に姿を現すこの本陣で決着をつけよう」
雑兵たち「「 御意! 」」
ガサガサガサガサ
林の中の草木が揺れる音がする
県「来たか」
ガサガサガサガサ
ザザザザザザザ
雑兵「出おった!」
雑兵「県殿をお守りしろ!」
隊員「よし撃て!」
タタタ タタタ タタタ
タタタタタタタタタタ
パパパパン パン パン
ヒュンヒュン
雑兵たちの持つ火縄銃や弓、隊員の持つ89式小銃と5.56ミリ機関銃が一斉に火を吹いた
一旦離脱
あ、弓が火を噴くっておかしいですね
火矢ならまだしも………
そういえば棒火矢とか抱え大筒ってこのころにはもうありましたっけ?
http://paomaru.dousetsu.com/file/03_buki_013.html
>>戦国時代では最大で百匁のものが使われていたそうです。
あるっぽい。一般兵に配備できたかは知らんが。
タタタ タタタ
隊員「こんだけの弾幕だ。いくら忍者でも生きてるはず無いだろ」
隊員「気を抜くな。敵兵の死体を確認するまではな」
県「………………」
シーン
ありったけの銃弾や矢が撃ち込まれた林からは何も聞こえてこない
小銃弾に含まれていた曳光弾によって僅かばかりの草が燃えているのが確認できるだけだ
雑兵「やったか!」
雑兵「おおお!さすがは“じえいたい”の鉄砲じゃ!わしらの火縄銃とはわけが違ったぞ!」
雑兵「ああ。これがあれば三成など恐るるに足らん」
小銃手が県を含めた3名の隊員だけでは心もとなかった為に、元家康の配下の兵の何人かにも89式小銃を持たせていた
狙いを定めて目標に正確に当てるような射撃は無理だが、掃射による弾幕張り程度ならこの時代の兵にも出来る
元々、小銃を撃つだけならさほど難しい操作は必要されない
県「撃ち方が雑ではあるが………。まあ、充分だろう」
隊員「火縄銃に比べれば威力も射程もありますからね。この時代の兵士が驚くのも無理はないです」
雑兵「県殿。敵兵の死体を確認してまいります」
県「よろしくお願いする。だが、まだ敵が生きているかもしれない。気をつけてくれ」
雑兵「何の何の!あれだけの鉄砲玉を浴びせたんじゃ。あれで生きておるはずがない」
雑兵「よし。行くぞ!」
県「………………」
雑兵たちは忍びたちの死体の確認のために林へと入っていく
隊員「しかし………。忍びとは言え、敵兵がここまで到達してくるとは……」
隊員「野中たちは大丈夫だろうか?」
県「心配するな。ほら聞こえるだろ?」
隊員「?」
バシュ
カシュッ カシュッ
シュウウウウウ
ズドオオオン
ドオオン
タタタタタタタタタタタ
隊員「迫撃砲やLAMの発射音…………。機関銃の射撃音!」
隊員「野中たちはまだ頑張っている!」
県「ああ。我々の陣に敵を到達させないように踏ん張ってくれている」
隊員「しかし、迫撃砲に機関銃。第一次防衛線は突破された………ということですよね?」
県「第一次防衛線突破か。ということは野中たち自衛官は迫ってくる敵の姿を既に目の前にしているということか」
隊員「数百、数千って数の兵士が目の前から突撃してくるんだろ?俺だったら腰が抜けちまう………」
県「……………。そうだ。敵の忍びの死体はどうなったんだ?」
そう気付いて県は林のほうを見る
見れば雑兵たちが林の中でガサガサと何かやっていた
県「おーい!死体は見つかったのか?」
雑兵「それが…………。何人かは見つかったのですが」
雑兵「襲撃してきた忍びはもっと大勢居たと言っている者がおりまして」
雑兵「見間違いじゃないのか?」
雑兵「そんなことはない!わしは見たぞ!少なくとも20名は居た筈じゃ!」
県「………………」
隊員「何か嫌な予感が………………!?」
隊員「3尉!あそこ!」
県「!?上か!」
ガサガサガサ
死体の捜索をしている雑兵たちの真上の木の枝が揺れる
県「気をつけろ!上だ!」
雑兵たち「「 !? 」」
ザザザザザザザザ
雑兵「うおっ!」
雑兵「木に登って鉄砲の弾を避けたのか!?」
雑兵「おのれえええ!」
忍びたち「「 …………… 」」
雑兵「ぐあっ!」
雑兵「ぎゃあああ!」
雑兵「ぐはっ」
木から滑り降りてきた忍者たちは根元に立っていた雑兵たちを次々に倒す
雑兵たちも反撃をしようとするが、力の差が圧倒的過ぎた
隊員「何だよあれ!速過ぎて見えないぞ!」
隊員「くそっ!まとめて撃ってやる」
県「やめろ!今撃てば味方の兵に当たる!」
隊員「しかし…………」
県「くっ」
隊員「踊るように人を殺していきやがる…………。ありゃデルタでも勝てないぞ………おい」
戦忍(いくさしのび)というのは一般的にフィクションだと思われていた
県3尉は戦国時代に詳しいとは言え、詳しいのは文献に載っている範囲内での歴史である
であるからにして戦に参加して、戦闘を行ったり、破壊工作を行う忍び、つまりは戦忍という存在を知らなかった
小西行長の命によって桃配山を襲撃したのは、歴史的文献には記述の無い裏の組織である戦忍だ
県「まるで殺しの為に存在しているような連中だ…………」
隊員「3尉!危険ですから車両まで退避しましょう」
県「……………」
隊員「おいおい………あっという間に雑兵が!?」
速過ぎて見えないぞ!
ワロタ
殺しのプロである戦忍(いくさしのび)たちはあっという間に死体捜索を行っていた十数名の雑兵を倒す
本陣に配属されているだけあって、県の周りに居る兵は皆、相当な手練だったはずだ
その手練をあっという間に倒してしまった戦忍の戦闘能力は計り知れない
隊員「敵兵は確認できるだけで13名…………。小銃で………倒せるか?」
隊員「俺たちの持ってきた89式を持たせていた兵士は全員、あの忍者たちに殺されてしまった。生き残っている兵士は槍や火縄を装備した兵ばかりだ」
自衛隊の小銃を持たされていた雑兵は既に全員殺されていた
本陣にはまだ大半の兵が残ってはいたが、彼らの持つ武器は槍や刀、火縄のみだ
刀や槍では戦忍13名には到底勝てないだろう
火縄銃は装填が遅く、命中精度も89式小銃にはるかに劣るものだ
隊員「頼みの綱は俺たちってことか」
隊員「3尉!下がっていてください。我々2名で何とかします!」
雑兵「わしらとて力にならないわけではなかろう!助太刀いたす!」
県「……………。わかった。だが、攻撃は初撃の一斉射撃のみに限定しろ」
隊員「は?」
県「命令だ。火縄を持った兵とお前たち2名の隊員の小銃による一斉射撃が終了したら、全員、俺の後ろまで後退してくれ」
隊員「なっ!?」
雑兵「どういうことじゃ?」
県「来るぞっ!」
ザザザザザザザ
林から戦忍たちがかなりの速さで出てくる
隊員「来たぞ!」
隊員「初撃を絶対はずすな!」
タタタタタタタタタタ
タタタタ タタタタタ
パパパパパパパパパン
戦忍「ぐはっ」
戦忍「がっ」
小銃と火縄銃の一斉射撃によって戦忍の何人かが倒れる
隊員「ちっ。速い!」
隊員「上だ!まだ木の上に何人か居やがった!」
雑兵「くっ」
ザザザザザザザザザ
タタタタタタ
タタタタ
戦忍「ぎゃあああ!」
戦忍「ぐはっ」
隊員「8人目!残り5名!」
タタタ カチッ カチッ
戦忍「ぐはっ」
戦忍「げっ」
隊員「弾切れだ。装填するから援護…………」
県「撃ち方止め!総員後退しろ!」
隊員「3尉…………」
隊員「くっ。後退だ」
県の号令で隊員2名を含めた全員が後退する
それと同時に県は前進する
隊員「3尉!何をするつもりです!?敵の忍者はまだ3人残って…………!」
戦忍「………………」
戦忍は苦内や刀を構えたまま物凄い勢いで県に迫っていく
県(俺の考えが正解ならば…………。俺の撃つ銃弾は外れない!)
県は手に持った9ミリ拳銃を構える
隊員「敵のあの速さじゃ拳銃は当たらないぞ!」
隊員「3尉!」
ダンッ
戦忍「がはっ」
ダンッ
戦忍「ぐはっ」
ダンッ
戦忍「ぐおっ」
県の立て続けに放った3発の9ミリ弾は見事に戦忍に命中した
3人の戦忍たちはその場に倒れこむ
隊員「ま……まじかよ」
隊員「あんな速さで迫ってきた3人の忍者をたった3発で全滅させやがった…………」
雑兵たち「「 おおおおおおお! 」」
県「…………………」
県(偶然…………ではない。やはりそうだ。俺の考えは正しかった…………。それを3発の銃弾が証明して見せた。あんな速さで迫る3人の敵に的確に弾を命中させる射撃の腕は俺には無かった。では、俺の役割は……………やはり!)
>>440
なるほど!
どうりで輝元の影が薄いわけだ
>>445
ほうほう
こりゃ自衛隊にとっても脅威になりそう
>>449
速いんです!
めちゃくちゃ速いんです
今、ちょっと挿絵的なイラスト描いてて
出来たらここに載せようかなとか思ってます
忍者スゴイ
乙です
ニンジャスレイヤー県!!
ツヨイ テッポウ (士気4 紅葵)
県の射撃の腕があがっt…すみませんなんでもないです
県って絶対小学生のころ○○県ってあだ名つけられてたよね。多分宮崎君と一緒のクラスだったら宮崎君は飛び火して宮崎県!って呼ばれてただろうし、県は県でけんじゃなくてあがただよとか思って親を恨んだと思うんだ。
何が言いたいかというと県って名字のやつを笑うやつは丸腰で関が原にタイムスリップしちまえって話だな。
~小早川秀秋の陣~
島田「島2尉!無事ですか?」
島「ああ!救援は必要ない………とは言ったが、助かった」
島田「それは何より」
小早川の陣に突入した10式戦車と空挺隊員達は合流していた
10式戦車の対戦車ロケットを弾き返しながら進んできたその姿に恐れをなしたのか、小早川の兵たちは本陣奥深くまで後退してしまっている
島田「へっ。10式戦車の力を見せ付けてやったぜ」
島「気をつけろ。テロリストたちはまだ半数程度は生き残っているはずだ。いくら10式でも対戦車弾の集中砲火を受けては………」
丸岡「自分の腕なら対戦車弾の数発かわしてみせますよ」
島田「とにかく、これからこいつ(戦車)で小早川を追い詰めます。島2尉たちは戦車の陰に隠れながら敵兵を警戒してくれますか?」
島「分かった。大賀、穴山、戦車の側面に沿って敵を警戒しながら進むぞ」
大賀「了解」
穴山「はい!」
「おーいっ」
島「!?望月、三好?」
林の中で敵兵を引きつけていたはずの望月と三好が走ってくる
島「どうした?」
望月「我々が相手をしていた小早川の兵たちが本陣まで後退していったので、何があったのかと来てみたのですが………。なるほど、戦車の登場でしたか」
三好「このまま小早川秀秋のとこまで突入するんですよね?」
島「ああ。はやく小早川をどうにかしないといけない」
島田「よし!とっとと終わらせましょう。おい、丸岡発進だ。菊池はいつでも主砲で攻撃できるように準備しろ」
丸岡「了解っと」
菊池「はい!」
島田「発進します。轢かれないように気をつけてください」
グオオ
グオオオオオオン
エンジンを呻らせ、10式戦車がゆっくり前進し始める
島「対戦車弾に注意しろ!」
空挺隊員達 「「 了解 」」
グオオ
グオオオン
オオオオ キュラキュラキュラ
10式戦車は小早川秀秋が居ると思われる本陣の最深部へと進む
雑兵「怪物が来たぞおおおおお!」
雑兵「どうする?」
雑兵「ここで食い止めるんじゃ!殿をお守りしろ!」
雑兵「あの連中はどうした!?あの者達は“怪物は我々が退治します”と言っておったろ!」
雑兵「あの者達はさっきわしらごと攻撃しおった!もうわしは信用せん」
テロリストたちは島たちを攻撃する際に小早川の兵も巻き込んでしまっている
小早川の兵を盾にしたり、自衛官を倒す為に容赦なく発砲した結果として小早川の兵を大勢殺傷してしまったりなどだ
その光景を見て、兵たちはテロリストを信用しなくなったのだろう
雑兵「刀や槍では近づく前にやられる。鉄砲じゃ!まだいくつか残っておるじゃろ!」
グオオオオ
オオン オン
島「鉄砲隊の生き残りか!」
望月「弓兵も集まってきています」
島「撃て!敵の飛び道具は完全に無力化しろ」
タタタ タタタ
タン タン タン
パタタタタタタタタタ
ズドドドドドン
空挺隊員達の小銃と戦車上で島田の構える12.7ミリ機関銃が火を噴く
雑兵「ぎゃああ!」
雑兵「ぐはっ」
雑兵「な……なぜこんなに連発…………」
ズドドドドドン
雑兵「がはっ」
雑兵「ひいぃ。か…身体が木っ端微塵じゃ!」
タタタ タタタ
大賀「敵、完全に沈黙。攻撃の気配はありません」
島「撃ち方やめ!」
三好「くそっ。残弾が少ない」
穴山「自分も今装填しているマガジンでラストです」
島田「俺の小銃使ってくれ。こっちには重機関銃が2丁あるから小銃は必要ない」
そう言って島田は車内から89式小銃とマガジンを取り出して三好と穴山に投げてよこす
通常は戦車の乗員は小銃ではなく9ミリ機関拳銃などの火器を持つのだが、島田は万が一の事態を考慮して小銃を持ち出していた
島「ありがたい。礼を言う」
島田「いえ。それよりも…………。あれ」
島「!? あそこか!」
小早川の兵が固まり、防御陣形を築いている場所があった
おそらく小早川秀秋の潜む場所なのだろう
島田「あそこか!ついにたどり着いた!」
島「よし一気に突入して終わらすぞ!」
大賀「おっしゃ!」
ヒュン
ガンッ
島「!?」
大賀「何だ?」
望月「戦車に敵弾が着弾。火縄銃じゃないぞ!」
穴山「2時方向!マズルフラッシュを確認。テロリストの攻撃と思われます!」
三好「くそ!後少しだと言うのに!おおおお!」
島「待て、三好!戦車の陰から出るな!」
ズガガガガガガガ
カカカカカカン カン
三好「うおっ。痛っ!」
島「三好!」
三好「かすっただけです。くそ!」
テロリストの攻撃が再開される
テロリストの攻撃は戦車の存在によって島たち空挺隊員にはあたらないが、無闇に小早川の元に近づけない
島田「うわっ!危なっ」
丸岡「車長!?」
島田「おう。俺は平気だ。主砲同軸の機関銃で連中を黙らせてやれ」
菊池「了解。主砲、回転します」
島田は車内に退避し、敵弾から身を守る
10式戦車の主砲の横には74式7.62ミリ機関銃が取り付けられている
菊池は砲等を回転させ、その機関銃の銃口をテロリストたちへと向けた
ドドドドドドドドン
ドドドドドドド
テロリストと戦車の距離は200から300メートル
主砲同軸に固定された機関銃は固定されているが故に狙いを正確に定めることは出来ない
菊池は砲塔を左右に振って、機関銃弾が敵にあたるようにしているが、なかなか命中せず、敵の攻撃の手は止まなかった
島田「くそっ!」
バシュッ
バシュッ
シュウウウウウウウ
ズドオオオオオン
島「うおっ!くそ。対戦車弾がまだ残ってやがったのか」
大賀「まずいですよ。このままじゃ戦車はただの的だ!」
島「………………」
大賀「島2尉!自分は………2尉の命令とあれば、どんな命令であれど従います」
島「大賀、何を…………」
大賀「この場合の最善策。一刻も早く任務を遂行する方法………。分かってますよ」
島「………………」
望月「自分も従います」
穴山「自分も」
三好「俺もだ」
島「………………」
シュウウウウウ
ズドオオオオン
ガキイイイイイイイン
ズガガガガガガガン
島「………………」
大賀「2尉!」
島「…………分かった。島田曹長!」
島田「な……なんです?」
戦車の上部ハッチから少しだけ顔を出し、島田が返事する
島「戦車単独で小早川秀秋のところに行ってくれ。テロリストたちは我々が相手をする」
島田「はあああああ!?」
島「我々を守りながらゆっくり進んでいたらいくら戦車といえど、確実にやられる。だが、我々がテロリストを殲滅すれば戦車はほぼ無敵状態で小早川の元に突っ込めるだろ」
島田「おいおい!戦車の援護なしに対戦車弾や小銃持った連中に突撃するのかよ!こんな見通しの良い場所で………!」
島「10秒カウントする!カウント終了と共に2手に分かれて突撃!弾幕を張ってけん制しつつ接近する!」
隊員達「「 了解! 」」
島「10、9、8……………」
島田「まじかよ!くそっ!」
島「5、4、………」
島田「おい!菊池、主砲発射準備!テロリストの方向に向かって2,3発お見舞いしてやれ!」
菊池「敵が近すぎます!しかも、敵は一人一人が一定の間隔を空けて展開していますから命中させるのは困難で………」
島田「良いからやれ!それと丸岡。主砲発射と共に小早川のところに全速力で突っ込め!」
丸岡「え?でも………」
島田「良いからやれって言ってるんだ!」
島「2、1…………」
菊池「発射!」
ズドオオオオオオオオオオオン
ズドオオオオオオン
島「0!突撃!」
島田「丸岡!出せ!」
丸岡「くっ」
グオオオオオオオオオオオオオオオオン
ひとまずここまで
>>455 >>456 >>457 >>458
コメントありがとうございます!
忍者ってどれくらいの運動神経があったんでしょうね?
>>459
石川君や福島君、福井君とかも………
自分の苗字もある地名と同じなので小学生の時はまあネタにされまくりました
帝国陸軍特有の万歳突撃
戦車砲を一発お見舞いしたとはいえ成功するのだろうか・・・
島「撃て撃て撃て!」
大賀「うおおおおおお!」
タタタ タタタ タタタ タタタ
ギャアア
グアッ
ズガガガガガガガガガガガ
10式戦車の主砲による射撃でテロリストは怯む
テロリストたちは散らばって展開していたため、主砲弾1発や2発の着弾では全滅はしなかったが、それでも数人は吹き飛ばされていた
テロリストが怯んだその隙をついて島たち5名の隊員は突撃する
望月「2時方向だ!」
穴山「くっ」
三好「あと200メートル!」
タタタ タタタン
テロリスト「ぐはっ」
テロリスト「ぎゃっ」
テロリスト「敵はたった5人だ!人数で押し切れ!」
望月「日本語!?」
タタタ タタタ カチッカチッ
望月「くっ!残弾が!」
望月の小銃が弾切れを起こす
弾のなくなった小銃に再びマガジンを装填する時間は無いため、彼は腰のホルスターから9ミリ拳銃を取り出そうとする
ズガガガガ ズガガガガ
バシュッ
穴山「望月3尉!RPGです!退避を!」
望月「なっ!」
ズドオオオオオオン
穴山「望月3尉いいいいいいいいいいいい!」
望月のすぐ脇に敵の対戦車弾が着弾する
望月「うっ………」
穴山「3尉!無事ですか!?くそっ」
タタタタタタタタン
テロリスト「がはっ」
テロリスト「うおっ」
望月「俺は良いから早く行けっ!立ち止まるなあああああ!」
穴山「は……はい!」
望月の一喝で穴山は再び走り出す
望月「がはっ………。俺ももたもたしてられね…………。?」
着弾した弾頭の破片と思われる金属が望月の足に突き刺さっていた
その傷口からは次々に血があふれ出している
望月「……………………。くそったれが!」
ドン ドン ドン ドン
望月は9ミリ拳銃をテロリストのいる方向へ向けて引き金を引き続けた
テロリストの数は戦車の攻撃等によって相当減ってはいたが、島たち空挺隊員の2倍以上の人数が生き残っていた
そんな人数のテロリストが自動小銃によって弾幕を張る中、島たち5名の隊員はテロリストに接近出来たのは、戦車による1回きりの援護射撃と、島たち自身の射撃のおかげである
テロリストたちは自衛官に攻撃をしたいものの、その自衛官たちが突撃しながら、ありったけの弾丸を撃ち込んでくるので無闇に反撃できない
島(俺たちが敵に接近できたのは最初の戦車の発砲があったからだ。つまり“先制攻撃”を仕掛けたから………ということだ)
先制攻撃
専守防衛を理念としている自衛隊にとって抵抗のある言葉だった
島(この時代に来て…………。俺たちは変わってしまったのか?自衛官という身分を捨てて………、この時代の武士たちのような本当の軍人になってしまったのだろうか?)
タタタ タタタ タタタ
テロリスト「がはっ」
テロリスト「くそおおおお!もうあいつら目と鼻の先だぞ!」
テロリスト「まずい!この距離じゃRPGはもう………!」
島「一斉射撃だ!敵を制圧しろ!」
大賀・穴山・三好「「 了解! 」」
タタタタタタタ
タタタタタタタタタタ
タタタタタタタタ
ドン ドン ドン
テロリスト「がはっ」
テロリスト「ぐあああ!」
テロリスト「ぎゃっ」
テロリスト「くそおおおお!」
島たちの最後の一斉射撃で生き残っていたテロリストたちは一気に無力化される
テロリストたちも反撃しようとしたが、彼らの撃つ銃弾はことごとく外れた
自衛隊の精鋭である空挺隊員と、射撃の腕からして素人じみたテロリストたちとの決定的な差が射撃の命中精度であった
島たちは突撃しながらの射撃ではあったが、ほとんど弾を無駄にせず敵を制圧したのに対して、テロリストたちは無闇に連射するだけで、銃弾を命中させることは出来ていない
もっとも、テロリストたちの持っている小銃がAK-47カラシニコフのコピー製品であり、粗悪品であったのも命中率が悪い理由のひとつには挙げられたが…………
島「全員、武器を捨てろ!勝敗は決まった!」
ガチャガチャガチャ
島の後に続いていた大賀、穴山、三好が生き残ったテロリストに銃口を向ける
小銃を杖代わりにして望月もその後からやってくる
テロリスト「……………。その部隊章………。第一空挺団……か。それならこの人数を相手にしても死者ゼロなわけだ」
望月が負傷しているものの、島たち空挺隊員に死者は出ていない
テロリスト「こんな至近距離の白兵戦じゃもう勝ち目は無い。それに、こっちにはもう満足に戦える戦闘員は残っていない」
ガシャッ ガシャッ
僅かに生き残ったテロリストは7名
その7名が次々に持っていた銃や対戦車弾を地面に捨てる
島「お前たちは美浜原発を襲っていたテロリストたち……で間違いないか?」
テロリスト「ああ。そうだ。ってことはあんたらは俺らを制圧しようとしていた自衛隊ってことか」
島「原発を襲って国民の安全を脅かすだけでなく、この時代で小早川につき、歴史を狂わせようとする………。我々の敵であることは時代が変わっても同じだな」
テロリスト「国民………か。はぁ」
島「何だ?我々はこの時代に居ても自衛官として20XX年に生きる日本国民の為に戦う。だからs」
テロリスト「自分たちの時代の国民を守るためにはこの時代の人間は何人でも殺すってか?」
島「………………」
テロリスト「いや、別にそれを攻めるつもりは無い。だが、この時代の人間を大勢殺傷してまで、あんたらは“あの日本国民”たちを守りたいと思うのか?」
大賀「テロリストのクセに何言ってやがる!お前らなんて理由も無く無差別に民間人を殺傷するような奴らじゃねえか!」
穴山「そうだ!」
テロリスト「俺たちは決して理由も無くテロを起こしたのではない。俺たちには崇高な目標がある!ただ上の命令に従って何も考えずに行動するあんたら軍隊もどきの集団とは違ってな!」
三好「なんだと!こいつ!」
島「落ち着け」
望月「理由とは何だ?この時代で歴史をわざと狂わせようとしてまでして、何がしたいんだ?お前たちは」
テロリスト「狂わせ………ねぇ。あんたらだって思いっきり歴史を狂わせたくせに」
島「確かに我々がこの時代に来たことで歴史は少なからず狂った。しかし、我々はその狂いを正そうとしたんだ。それをお前たちは…………。歴史が狂えば未来の世界がどうなってしまうか分かっているのか!」
テロリスト「だから!そんなに必死になってまであんたらは俺たちの生きていた時代の国民を守りたいと思えるのか?この時代の人間を大量に殺してまで!」
島「我々はあの時代の日本国に所属する組織だ。我々が守らなくてはならないのは我々の所属する国の国民。そのためには歴史の修正を最優先にしなくてはならない」
テロリスト「そのためにこの時代の人間を殺傷するのは構わない………と?」
島「………………」
テロリスト「本音は違うだろ?」
島「………………。俺は自衛官であると同時に、家族を持つ者だ。自分の家族が幸せに生きている時代を守りたいと思うのは当然だ。個人の都合を優先するのは俺個人、どうかとは思うが………。だが、それが本音だ」
望月「当然だ。誰だってそう思うに決まっている………」
テロリスト「まあ、そうだろうな。国の為に戦うというよりも家族のために戦う。良い解答だ。日本人があんたたちみたいな人間ばかりなら、俺たちだってこんな行動は起こさなかった」
島「………………」
テロリスト「だが、現代の日本人の現状は酷いものだ。かつての日本人とは違う。この時代の武士を見て確信したよ。平和ボケをして、自国が危険に晒されても、他国から蔑まれても、まるで関心を持たない。自身の利益にしか興味を持たず、他人の不幸をあざ笑い、他人を利用して自分が生き残ることしか考えていない。巨大化したネットワークの世界に発信されるのは暴言ばかり。自国の為、家族のために命をかけて戦ったかつての日本人たちが築き上げた平和の中で腐敗し続けながら生きている。だから俺たちは行動した!」
島「日本人の目を覚ます為にテロを行った……というのか?」
テロリスト「そうだ。そして、この時代に来たときに、俺たちは意図的に歴史を狂わせて、未来を変えようと思った。あんな日本人たちが生まれない日本を作るために!」
島「………………」
テロリスト「あんた等なら分かるだろ?」
島「…………………さっぱり分からんな」
テロリスト「何!?」
島「我々はこの時代で大勢の人を殺してしまった。だから、説得力が無いだろうが、だが、声を大にして言おう。お前たちはただの人殺しのテロ集団だ」
テロリスト「!?」
島「確かに、今の日本人に問題が無いとは言えない。だがな、だからといってお前たちの行動を肯定は絶対に出来ない。どんな理由であれ、何の武器も持たない市民を武力によって脅かす人間にに正義や理想を語る資格は無い。俺たちも武器を持っているが、この武器は自分の独りよがりな理想を他人に押し付けたり、他人を服従させたり、恐怖させたりする為に持っているものではないんだ」
島「我々が持つ武器は“国民を守るために持つことが許可された武器”だ。お前たちとは違う」
テロリスト「………………」
島「それに、もうひとつ言っておくことがある。俺はかつて起きた大震災の時に被災地に救援に行ったことがある。その時に被災地でお互い助け合う被災者たちの姿を目にした。自分のことだけを考えるのではなく、他人のために行動をする彼らの姿を見たときに俺はこう思ったんだ。“まだまだ日本人も捨てたもんじゃない”とな」
とりあえずここまで
>>466
実際に戦車砲が自分のほうに向いたら失禁ものです
特に相手が10式だったら………
テロリスト「あんたらはあくまでも“あの時代”の日本を守りたいということだな?」
島「そうだ。俺たちは自分たちの居たあの時代を守るために、歴史を元の流れに戻す。だからお前たちのように意図的に歴史を変えようとするイレギュラーな存在は除去せねばならない」
テロリスト「そんなにあんな時代が好きなのか?いいか?我々は西軍を勝利させて、徳川幕府の設立を阻止する。そして、鎖国をせずに、欧米との外交を盛んに行い、200年も早く文明開化をするんだ。そして、欧米と共に列強になる。アジアに英国同様の先進国を作り上げるんだ!あんたらだってこの時代に来て一度は考えたことがあるだろ?この時代からやり直して日本を世界一の国にすることを」
島「残念だが、俺はお前たちの意見を支持は出来ない。我々はこの時代に来ても、まだ自衛官であることを捨ててはいないんだ。だから我々の任務は依然として日本国民の平和と安全を守ること。平成の時代に生きる日本人の生活を脅かそうとしているお前たちに賛同する気は無いよ」
テロリスト「腰抜けの公務員の意見だな。俺たちの崇高な目的をあんたら凡人が理解できるとは思っていない!」
島「平成に生きる日本国民、いや、世界中の人の生活を脅かそうとしているお前たちの行動が崇高な目的のための行動とは笑わせてくれる。お前たちがこれ以上歴史を変えようとせずにおとなしくするなら我々はお前たちにこれ以上の攻撃はしない。だが、抵抗するならば………」
テロリスト「お前たちのような腰抜けに俺たちが倒せるものか!」
島「……………自衛隊を舐めるな」
そう言って島はテロリストのリーダーと思われるその男に小銃の重厚を向ける
他の隊員も手に持つ銃を生き残っているテロリストたちに向けた
島「悪く思うな」
テロリスト「殺せるのか?俺たちのことを?」
島「なに?」
テロリスト「俺たちも日本人だ。同じ日本人と分かった人間を殺すことがお前たちに出来るのか?」
島「寝言は寝て言え。そんな台詞を吐く人間は所詮、小物だ……………」
オオオオオオオオオ
ワアアアアア!
ウオオオオオオオオ!
島「!…………………」
テロリスト「どうした?やはり軍隊もどきには同胞は殺せないか!」
島「…………………」
テロリスト「どうした!」
島「なるほど。そういうことか……………」
テロリスト「?」
島「お前たちテロリストがこの時代に来たのもまた必然……ということだったんだな」
テロリスト「何を言っているんだ?」
タタタタタタン
タタタタ タタタタ
テロリスト「ひっ」
バキンッ ガキガキガキ
島は地面に落ちていたテロリストたちの武器であるAK-47を銃で破壊する
島「お前たちの役目は終わった。お前たちを裁くのは俺たちではなく、歴史…………この時代の人間たちだろう」
テロリスト「は?」
オオオオオオオオオオオオオオオオ
ワアアアアアアアアアアアアアア!
テロリスト「!?」
島「島田たちがやってくれたんだな」
小早川の本陣から次々に兵が出てくる
その兵たちは方向的に大谷吉継の陣へ向かっていた
テロリスト「小早川が……裏切ったのか」
島「そうだ。これで歴史は元の流れになった。チェックメイト。我々の勝ちだ」
小早川の兵たちは島やテロリストたちが居る場所にも押し寄せてくる
すでに小早川の軍勢にとって西軍に加勢していたテロリストたちは敵になったも同然であった
つまり、このまま小早川の兵が押し寄せればテロリストたちは確実に…………
テロリスト「くそっ!俺たちはまだ死ぬことは出来ない!逃げるぞ!」
テロリスト「くっ」
テロリストたちは逃げ出す
それを島たちは追うことはなかった
大賀「追わなくて良いのですか?」
島「あいつらにはもう満足な武器が残っていない。追わなくてもそのうち…………」
大賀「……………」
島「それより、我々は10式戦車と合流しなくては」
穴山「そうですね。はやいところ戦車と合流してベースに戻らないと。望月さんの怪我が…………」
望月「大丈夫だ。止血はした。なんとか歩けはする」
島「よし帰還する!信号弾を撃って戦車に我々の位置を………………」
パパパパパパン
バスッ
島「なっ…………」
大賀「島2尉!」
突然、火縄銃の発砲音がし、その後、島の首筋から血が吹き出した
島「が………は。お…俺の………役割も…終わり…………だったのか」
バサッ
望月「2尉!くそっ!西軍の伏兵か?」
三好「あそこだ!あそこの茂みから煙が出ている!」
穴山「ずっと隠れてたのか?」
石田三成は小早川秀秋が裏切った場合、その小早川秀秋を亡き者とするようにあらかじめ小早川の陣付近に伏兵を忍ばせていたのである
大賀「くそったれ!」
タタタタタタタン
タタタタタタ タタタタタタタ
伏兵「ぐはっ」
伏兵「ぎゃあ!」
伏兵「あれが噂の“じえいたい”か!」
伏兵「しかし奴らはもう若干しか生き残っておらん!」
伏兵「一気に攻撃して討ち取るぞ!」
オオオオオオオオオ!
大賀「島2尉!く…………そ」
首筋に銃弾を受けた島の息は既に無くなっていた
望月「あいつら!総攻撃を仕掛けてきやがった!」
穴山「敵は20人以上いますよ!自分はもう残弾が…………」
三好「俺もだ。くっ」
押し寄せてくる伏兵たち全員を対処する弾薬はもう残されていない
隊員たちは銃に銃剣を装着した
大賀「最後まで戦ってやる!島2尉…………」
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
オオオオオオオオオオオオオオオオオ!
久々に投稿出来ました
関ヶ原の戦いもいよいよ終盤です
島大尉・・・
あっけねぇ…
~伊庭たち石田三成討伐隊~
おおおおおおおおおおおおおおおお!
伊達政宗の軍勢と島左近の軍勢が衝突する中、伊庭たちは島左近を探していた
伊庭「伊達政宗の軍勢に気を取られて俺たち自衛隊の存在をあまり気にしていない今がチャンスだ。三村、島左近を見つけ次第、すぐに狙撃しろ」
三村「了解」
木村「頼むぞ三村」
三村陸士長は狙撃手であった
その腕は空挺団で狙撃手をしていた大賀と並ぶ程である
73式小型トラックのボンネットにスナイパーライフルを固定し、スコープを覗き込む三村
木村「逃げたとは言え、島左近はまだ狙撃銃の射程内に居るはずだ」
三村「……………仮に見つけたとしても、馬で走りながら逃げている人間を仕留めるのは初めてです。失敗する可能性もあります」
伊庭「失敗は許されない。お前の腕を信じて任せる」
三村「……………。了解。任されました」
木村「他の車両は車載の機関銃で伊達政宗の兵を援護しろ!」
他の隊員たち「「 了解! 」」
タタタタタタタ
タタタタタタタタタン
雑兵「ぐはっと」
雑兵「ぎゃあ!」
2両の73式小型トラックと軽装甲機動車の車上にとりつけてある5.56ミリ機関銃が一斉に火を噴く
伊達政宗「おお!味方にすると連発銃は心強いな!」
三村「…………………居た」
木村「あれか!?11時の方向!馬で逃走する島左近と思われる人影を発見」
伊庭「三村、頼んだ」
三村「………………」
馬の走る速さは時速30~40キロになることもある
時速30キロや40キロで走る馬の上に乗る人間を乱戦の中で狙撃するのはかなり難しい
しかし、
タアァーン
バスッ
三村の撃った狙撃銃の銃弾は正確に島左近の頭部を撃ち抜いた
雑兵「なっ…………」
雑兵「どこから撃ってきおった!?」
雑兵「まさかあんなに離れた場所から?」
雑兵「殿おおおおおおおおおお!」
スナイパーライフルの銃声が島左近の周辺に居た雑兵に聞こえる前にライフル弾は島左近の頭部に着弾している
よって雑兵からすれば島左近の頭部が前触れもなく吹き飛んだように見えたようだ
大将の突然の死に島左近の兵たちは混乱しだす
伊達政宗「?」
伊達政宗の兵たち「「 ??? 」」
伊達政宗たちもそれは同じで皆、目の前の出来事を理解できずにいた
伊庭「よくやった。三村」
三村「ふぅ………。やはり、人間相手だと良い気分ではありません」
木村「小隊長。敵兵が混乱している今がチャンスです。一気に三成の本陣に突入しましょう!」
伊庭「ああ。全車両に告ぐ!これより石田三成の本陣に突入する。続け!」
ブロロン
ブロロ
グオオオオオオ
伊庭の乗る73式小型トラックに続いて、もう1台の小型トラックと軽装甲機動車が動き始める
伊庭の隊は生存者8名
その内、重傷者が1名であるから実質的な戦闘員は7名であった
伊庭(7名………。7名で本陣までたどり着かねばならんのか)
雑兵「鉄の馬じゃ!」
雑兵「あやつらが殿を!?」
雑兵「許すまじ!討ちとれ!」
木村「敵兵接近。全車両、敵を車両に近づけるな」
タタタン タタタン
タタタタタタタタタタタタン
雑兵「ぐあっ」
雑兵「ぎゃっ」
ピーンッ
ズドオオオン
雑兵「ぎゃああああ」
雑兵「いてええええ」
車両の進行を妨げようとしていた雑兵の塊に手榴弾を投げつける隊員
伊達政宗「やはり島の左近を討ったのは伊庭殿たちであったか!」
進行する小型トラックの横に併走するような形で伊達政宗が現れる
伊庭「ええそうです。我々は今から三成の本陣に突入します」
伊達政宗「治部の陣へ行くのか!しかし、おぬしらの人数では…………」
伊庭(確かに。いくら小銃や機関銃などを装備していても、西軍の実質総大将の本陣に8名で突入するのは…………)
伊達政宗「よしわかった!おーい!皆の者おおおおお!聞けええええ!」
伊達政宗が大声を張り上げる
政宗の配下の兵たちはその声に反応した
伊達政宗「わしらも“じえいたい”に続いて三成の本陣へ斬り込む!左近の兵を振り切るぞ!続けえええ!」
伊庭「政宗殿!?」
伊達政宗「別に助太刀するわけでは無い。おぬしら“じえいたい”に全ての手柄を渡したくないだけじゃ」
政宗はニッと割りながらそう言う
伊庭「了解しました!我々が先頭を切ります!後に続いてください!」
伊達政宗「おう!連発銃に鉄の馬の御味方があればこちらも心強い!」
3両の車両に続いて伊達政宗の政宗の兵が走りだす
島左近の兵たちは島左近の死に動揺し、戦意喪失している者も多かった
よって政宗の兵たちが島左近の兵を振り切るのは案外、容易かったようである
中には自衛隊車両に襲いかかってくる兵も居たが、その人数は少なく、ほとんどが機関銃や小銃の銃弾に倒れた
あの映画みてると家康嫌いになるけどなww
おおおおおおおおおおおおお!
タタタン タタタン タタタン
雑兵「がはっ」
雑兵「ぎゃっ」
ズドオオオオン
ドオオオン
自衛隊車両は石田三成の本陣に到達しようとしていた
しかし、本陣近くは三成配下の兵士で溢れている為、車両は思うようには進めない
伊庭「突破口を開くぞ!対戦車榴弾を撃ち込め!」
木村「了解」
バシュッ
バシュッ
ズドオオオオン
雑兵「ぐあああああ!」
雑兵「なんじゃこれは!」
伊庭「間髪入れるな!次弾急げ」
木村「三村、LAM次弾発射準備に入る。その間、MINIMIで援護しろ」
三村「はい!」
パタタタ
雑兵「ぐはっ」
タタタン
雑兵「ぎゃあああ!」
タタタタタン
雑兵「ごはっ」
木村「流石は三村だ。機関銃射撃も百発百中じゃねえか」
狙撃手である三村の機関銃による援護射撃はほぼ百発百中であった
無闇に敵兵に連射で銃弾を浴びせるのではなく、数発ずつ断続的に射撃し、一人一人確実に倒す
木村「次弾発射準備完了。小隊長。LAMの残弾はあと3発です」
伊庭「3発………か。他の車両に積んであるLAMは?」
木村「既に使い果たしているとのことです」
伊庭「そうか。出し惜しみをするな。残弾は全て発射しろ」
木村「了解しました」
バシュッ
ズドオオオオン
バシュッ
バシュッ
ズドオオオオン
ズドオオン
雑兵「ぎゃああああ」
LAM……110ミリ個人携帯型対戦車弾が底を尽きた
一発の破壊力が大きく、車両に襲いかかってくる敵兵の排除に最も効果的だった対戦車弾が底を尽きたことで、自衛官たちは今よりさらに苦戦を強いられる
木村「LAV(軽装甲機動車)にはまだ誘導弾が積んであります。それを投入すれば………」
伊庭「誘導弾は切り札だ。三成の本陣に突入するまでは機関銃と小銃、それに手榴弾で戦う」
木村「小銃弾も残り僅かとなってきました。しかし、敵兵は増えるばかりです」
伊庭「………………」
次々に押し寄せてくる敵兵を自衛隊は小銃や機関銃で排除しているのだが、その敵兵の多さから銃弾はものすごい勢いで無くなっていく
パタタタタン
タタタ タタタ カチッ
木村「弾切れだ。装填する。三村、援護してくれ」
三村「了解。しかし、機関銃の残弾も………」
雑兵「きええええええ!」
雑兵「おおおおおお!」
木村「!?」
伊庭「馬から車に飛び乗ってきたのか!」
ガキイイイイン
木村「くっ」
馬から車に飛び乗ってきた2名の雑兵
その片方の斬撃を木村は手に持っていた小銃で受け止める
一方、機関銃射撃を行っていた三村はもう一人の雑兵に飛びかかって羽交い絞めにする
三村「く……おおおおお!」
雑兵「銃撃が止んだぞ!今じゃあ!」
雑兵「おりゃあああ!」
伊庭「なっ!?」
銃手である木村と三村が銃撃をやめてしまった為に弾幕が無くなり、その隙にさらに2名の雑兵が車に飛びかかる
木村「くおおおおお!」
ガッ
雑兵「くっ」
木村「おらあああああ!」
ザクッ
雑兵「がはっと」
激しい白兵戦を木村は勝利する
ダンッ ダンッ ダンッ
雑兵「ぎゃっ」
雑兵「ぐはっ」
雑兵「うあっ」
伊庭「はぁ………はぁ…………」
新たに乗り込んできた雑兵と三村が羽交い絞めにしていた雑兵を9ミリ拳銃で倒す伊庭
三村「はぁ……はぁ……。感謝します」
伊庭「本陣まであと少し。何とか持ち堪えなくては」
木村「はい」
タタタン
タタタタタタタタ
タタタ
タタタ タタタ
ぎゃあああ
うああああああ!
ジャラッ
伊庭「!?木村、空薬莢を投棄しろ」
木村「了解しました」
ずっと射撃をしていた為、車内は空薬莢で溢れていて満足に動けなくなってしまっていた
木村は三村と伊庭が弾幕を張っている隙に床に溢れている空薬莢を車外に放棄する
タタタン
タタタタタタタタン
ガガガガ
ズガガガガガガガン
ドーン
木村「!?」
三村「もう1台の小型トラックが!」
伊庭たちのいる位置から少し離れた場所を走っていたもう一台の73式小型トラックが横転していた
押し寄せてくる雑兵の山に足を取られたらしい
伊庭「くそっ!」
木村「小隊長。救出に行きましょう!隊員たちはまだ生きています」
タタタン
タタタタタタタ
横転した車両から投げ出された隊員たちが押し寄せてくる敵兵に銃撃をするのが見える
伊庭「………………」
木村「小隊長!」
三村「!?小隊長。あれを見てください!」
伊庭「!?」
横転した車両の隊員の一人が伊庭たちに向かって手を振り何かを伝えようとしている
木村「何やってるんだ…………。!あれは手旗信号か!」
三村「!」
隊員の手の振り方は手旗信号のそれであった
木村「サ・キ・ニ・イ・ケ」
伊庭「先に行け!?」
三村「小隊長…………。彼らは………」
伊庭「………………くっ。すまない」
木村「小隊長!?」
伊庭「進路そのまま!三成の本陣に突撃する!」
三村「……………」
伊庭たちの乗る小型トラックは横転した小型トラックの隊員たちを置いたまま発進する
そんな伊庭たちに残された隊員たちは敬礼をした
伊庭「すぐに三成を倒し、この戦を終わらせる。だからそれまで何としてでも生き残ってくれ!」
>>492
それはドラマ版ですね
確かにあのドラマを見ると家康が嫌いになりますwww
とりあえずここまで
次あたりで遂に三成と交戦かと
合宿も終わったので再開します!
石田三成本陣
三成配下の兵「殿!申し上げます!先程、左近殿が討ち死にしたとのことです」
三成「何!?左近が!?」
配下の兵「はっ。侵攻して来た“例の奇怪な集団”の持つ鉄砲によって一撃で………」
三成「何と………。左近が………」
別の兵士「殿!?只今、小早川秀秋が東軍に寝返った模様!小早川の軍勢は山中村の大谷軍を襲撃しております!」
三成「何!小早川が!?」
10式戦車の乗員たちは戦車ごと小早川の本陣に突入し、小早川秀秋を東軍に寝返らせることに成功していた
テロリストたちという後ろ盾を失った小早川秀秋の軍勢に10式戦車に対抗できる術は無く、また、無差別攻撃を実施してしまったテロリストたちに小早川の兵たちは少なからず敵意を持ちはじめていたために、寝返らせることは割と容易だったのである
三成「くっ…………。他の西軍の軍勢も押されている。宇喜多軍も敗走し、現時点で戦えるのはわしと小西勢くらいか」
矢野率いる部隊によって宇喜多秀家は敗走し、大谷吉継は小早川と交戦中
島左近も死んだ今、石田三成にとって唯一の希望は家康本陣手前の本多正信及び自衛隊の構築した陣地を攻略しようとしている小西行長をはじめとする混成部隊のみであった
三成配下の兵「左近殿を倒した鉄の馬に乗る集団はここへ向かっています。我々にもまだ鉄砲隊や大筒は存在しますが、あの者たちの持つ鉄砲や大筒は桁違いの威力を有していると聞きます。殿、ここは一旦、佐和山まで退いた後、大阪で再び決戦を!」
三成「………………」
配下の兵「ここで殿が死んでしまったら誰が“義”の戦いを再びするのですか!?」
三成「…………義……か」
配下の兵「そうですとも。この戦は豊臣家に対する義の戦いと殿は申された。その義をここで滅ぼしてはならないのです」
三成「確かにそうだ。しかし、ここでわしが逃げるのは義に背いた行動であるぞ。まだ懸命に戦っておる者たちが大勢居る中、一人わしだけ退くわけにはいかぬのだ」
配下の兵「殿!」
三成「鉄の馬だろうと連発銃だろうと、敵では無い。わしは負けぬ!」
ガッ
そう言って三成は勢いよく立ち上がった
三成「わしについてくる者はここに残れ。鉄の馬に怖気づいてしまった者はすぐにこの場から去り、そして逃げよ」
一同 「「 ………………… 」」
配下の兵「………………」
三成「うむ。一人もおらんか。ならばおぬしらもわしと同じく義の為に命を賭けて最後まで戦う………ということでよろしいか?」
三成の周りの兵は無言で全員頷く
三成「おし!ではまず、向かってくる鉄の馬を退治するぞ!大筒、鉄砲隊、弓隊、飛び道具の全てで鉄の馬の進行を阻止する。すぐにでも大筒に弾込めをしろっ!」
兵「かしこまって候!」
何名かの兵が走って出て行き、大筒の配置されている場所へ向かう
また、鉄砲隊や弓隊の兵士たちも慌しく戦いの用意をし始めた
三成「いくら鉄の馬であれど大筒の弾を数十、数百と食らえば足も止まるであろう」
バシュウウウウウウウウウ
バシュウウウウウウウウウウウウ
三成「!?」
ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン
ドオオオオオオオン
雑兵「ぎゃああああ!」
雑兵「ぐああああ」
雑兵「なんじゃ!?これは」
雑兵「大筒が………木っ端微塵になっておる!?」
雑兵「上から……何か降ってきたのが見えたぞ!」
三成「な……何と」
突如として三成本陣の脇に存在した大筒陣地が吹き飛ばされる
何の前触れも無く陣地が丸ごと吹き飛んだ現象に兵士たちは騒然としていた
雑兵「矢じゃ。大きな矢が飛んできたのじゃ」
雑兵「煙を吹きながら物凄い速さで…………」
何人かは陣地が吹き飛ばされる前に起きた“前兆”を目撃していたようである
87式対戦車誘導弾
通称、中MATと呼ばれる対戦車ミサイルによる攻撃だった
今までの戦いで自衛隊は110ミリ個人携帯対戦車弾や81ミリ迫撃砲などの重火器を使用してきたが、誘導弾の使用はこれが始めてであった
上記の装備は誘導式ではなく、発射したら真っ直ぐに飛んでいく火器であるが、中MATはセミアクティブレーザーホーミング方式の誘導兵器である
つまり、攻撃目標にレーザー光を照射し、目標からの反射光をミサイルのシーカーが捉えることによってミサイルを目標へ誘導するのである
2キロ以上の射程を持ち、250メートル毎秒以上の飛翔速度で飛び、なおかつ誘導によって目標にほぼ確実に命中する兵器であるこの中MATは戦国時代のみならず現代でも強力な兵器であった
三成の本陣へ進む自衛隊は大筒などの飛び道具による攻撃を恐れ(小型トラックなどの車両に大筒の弾が命中すれば犠牲が出てしまう可能性が高かった)、本陣よりもかなり手前で中MATを発射し、大筒を予め無力化しようとしたのである
自衛隊のミサイル攻撃は見事に成功し、三成本陣で残存していた大筒は大筒発射要員の兵士ごと木っ端微塵に吹き飛んだ
三成「おのれ!どこから攻撃をしてきた!?」
配下の兵「鉄の馬はまだどこにも見えません!相当遠くから攻撃を仕掛けてきたとしか…………」
三成「目視も出来ない場所から大砲を撃って、命中させること等、不可能だ!だがしかし………あの者たちの力は計り知れぬところがある」
配下の兵「………………」
三成「案ずるな。大筒が駄目になろうとも、まだ兵は大勢残っておる。それに対して鉄の馬を操る輩たちは十数名と聞いた。いくら連発銃等を持とうとも、その人数に押し切られるわしらでは無い」
配下の兵「は!」
グオオン
グオオオオオオ
三成の本陣に向かってくる自衛隊の車両が見える
三成「!?」
配下の兵「!あれは…………鉄の車?」
三成「ほう。あれが鉄の馬と、それを操る連中か」
配下の兵「何という速さなんだ。馬よりも速く大地を駆けるとは」
三成「鉄砲隊、弓隊。攻撃を開始だ。あやつらに武士(もののふ)の底力を見せ付けてやれ!」
兵「「 はっ! 」」
今日はここまで
待っていてくれた方、ありがとうございます
あと更新遅れてすみません
これが・・・サジタリウスの矢・・・
何日遅れてもいいんだ
最後まで楽しみにしているよ
乙
石田三成の陣にたどり着いた隊員は伊庭を含めて6名だった
その6名を乗せた2両の車両が三成の居る本陣へついに突入する
木村「流石はレギオンをも苦しめた中MATだ。大筒は完全に無力化されてる」
伊庭「鉄砲隊と弓隊はまだ生き残ってるぞ!機関銃で黙らせろ!」
木村「了解!」
パタタタタタタン
パタタタ タタタタタタタタ
雑兵「ぎゃああ」
雑兵「ぐはっ」
73式小型トラックに備え付けられた機関銃の掃射で瞬く間に鉄砲隊が沈黙する
雑兵「うおおおおおおお!」
雑兵「りゃりゃりゃああああ」
木村「2時方向から雑兵の集団が襲来!」
伊庭「くっ。相手も必死だ!気を抜いたら一気に押し倒されるぞ」
タタタタタタン
タタタタタタタタ タタタタタタ
雑兵「ぐあっ」
雑兵「ぎゃ」
タタタタタ タタタタタタン カチッ
木村「MINIMI残弾なし!給弾します」
伊庭「援護する!」
タタタン タタタン
機関銃に給弾する木村
機関銃の沈黙をカバーするように伊庭は手に持つ小銃で迫ってくる雑兵を倒していく
雑兵「ぐあああ!」
雑兵「次から次へと鉄砲玉が!?」
タタタン タタタン カチッ
伊庭「!?こっちも弾切れか!」
ドンッ ドンッ ドンッ
弾の切れた小銃に代わって拳銃で襲撃者を迎撃する伊庭
雑兵「弾幕が薄くなったぞ!今じゃああああ!」
雑兵「うおおおおおお!」
伊庭「くそっ!三村。スピードを上げろ!」
三村「道が悪くてスピードがもう出せません!これ以上スピードを出すと横転する可能性が!」
伊庭の乗る小型トラックの運転手は先程の戦闘で絶命していた
その隊員に代わって運転をするのは狙撃手の三村である
伊庭「木村!給弾はまだか!?」
木村「小隊長!MINIMI用のマガジンがもうありません!」
伊庭「!」
車載されている5.56ミリ機関銃のマガジンは弾薬200発の入った機関銃用のマガジンなのだが、長期化した戦闘によってそのマガジンは全て使い尽くしてしまっていた
もっとも5.56ミリ機関銃MINIMIは89式小銃用のマガジンにも対応していたのだが
雑兵「うおおおおおお!」
雑兵「おりゃあああああああ」
ポトン
雑兵「?」
ズドンッ
雑兵「ぎゃああああ!」
雑兵「いてええええええ!」
木村「手榴弾!根元たちの攻撃か!」
ズドンッ
ズドンッ
ズドンッ
伊庭達の小型トラックと並走している軽装甲機動車上から根元3曹が次々と手榴弾を投げている
雑兵「ぎゃあああ」
雑兵「いてえええええ」
根元「もっと!もっと手榴弾をよこせ!」
平井(3曹)「もう残り数発しかないぞ」
軽装甲機動車の内部で弾薬の補給作業をしていた平井3曹が答える
根元「じゃあ残ってる手榴弾を全て渡せ。数発の手榴弾でこの量の雑兵の壁を突破できるかは分からんが…………」
平井「押し寄せてくる敵兵の数は千以上居る。たった数発の手榴弾じゃ到底倒せない」
根元「んなこと言ったってやるしかないだろうが!何とかしろ!」
平井「何とか……と言われても…………。いや、何とかなるかもしれない」
根元「本当か!?」
平井「ああ。敵兵を全滅させることは出来ないが、本陣内まで進入するだけなら何とかなるかもしれない」
根元「何でも良い。策があるならとっととやってくれ!」
平井「おう。おい須賀!小隊長に無線連絡。今からこの車に備え付けてある煙弾を全て発射する。おそらくその煙弾で敵兵は数秒程度怯むだろうからその瞬間にアクセル全開で本陣内まで突っ切ると伝えろ」
平井は軽装甲機動車を運転している須賀にそう言う
須賀「煙弾程度で敵兵は怯みますかね?」
平井「スタングレネードも迫撃砲も対戦車弾も使い果たした今、敵兵を怯ませる事が出来る装備は煙弾しか残っていない。石田三成の居ると思われる本陣は目と鼻の先だ。一瞬でも敵を怯ませる事が出来れば、車両で一気に切り込める。煙弾の発射でその一瞬が作り出せることに賭けるしかないだろうが」
須賀「了解しました!
軽装甲機動車の後部には4連の発煙弾発射装置が2つ備え付けられている
車両上空に花火のように発煙弾を打ち上げるもので、ヘリの攻撃から身を隠す為に使われるものだ
戦国時代にも打ち上げ方ののろしが存在したし、また、花火なども戦国時代以前に既に日本で開発されていたという説もある
よって自衛隊車両から発射される発煙弾に戦国武者たちが怯まないのではないか?と根元たち自衛官は少し不安に思っていた
がしかし
バシュッ
バシュ
バシュ
バシュ
パパパーン
雑兵「!?」
雑兵「なんじゃこりゃ!」
雑兵「あやつら……空に雲を作り出しおったぞ!?」
予想以上に雑兵たちは発煙弾に驚いたようである
軽装甲機動車から発射された8発の発煙弾はオレンジ色の火花を散らしながら、車両上空に白い煙を撒き散らしている
伊庭「発煙弾のおかげで敵兵の動きが鈍くなった!今がチャンスだ!一気に突入するぞ」
三村「了解しました!摑まっていてください」
グオオオオオオオオオオオ
オオオオオオン
雑兵たちが怯んだ一瞬の隙をついて、2両の自衛隊車両は全速力で本陣へ突進する
雑兵「しまった!鉄の馬が殿のところへ!」
雑兵「おのれ!」
雑兵「逃すな!追うんじゃ」
おおおおおお!
グオオオオオン
グオオオオ
雑兵「駄目じゃ追いつけん」
雑兵「何という速さじゃ。馬の足を遥かに超えておる」
軽装甲機動車の最高速度は道が良ければ時速100キロ
73式小型トラックはそれをさらに越える
馬以上に速い乗り物を知らない戦国時代の人間にとってその速度は脅威であった
グオオオオオオオオオ
伊庭「もっとスピードを出せ!敵兵を完全に振り切るんだ!」
三村「こ……これ以上出すと車が…あだっ」
舗装されていない凹凸だらけの道をかなりのスピードで走っているために車両は大きく揺れる
その揺れの中で喋っていた三村は舌を噛んでしまったのだ
木村「この際、車両は壊れても良い!とにかく本陣へ乗り込むんだ!」
三村「り……了解!」
口から血を流しながら三村は返事をする
そして、車両の速度を一気に上げた
グオオオオオオオ
雑兵「うわあああああ!鉄の馬があああああ!」
雑兵「怯むな!怯むなアアアア!」
雑兵「おおおおおおおお!」
本陣最後の砦を死守している兵たちは時速80キロ近くで突っ込んでくる2両の車両から三成を守ろうと必死に立ち向かう
三村「くそ!どけどけどけえええええええ!」
ガアアアアアン
ズガアアアアン
雑兵「ぐsづqkうぇk」
時速80キロで走る車に生身の人間が敵うはずも無い
三村「うわっ!うわあああ」
伊庭「しっかりアクセル踏んでろ!」
キキキイイイイイ
伊庭「左だ左に切れ!横転するぞ!」
雑兵がぶつかった衝撃で車は横転しそうになる
木村「小隊長!摑まってください!」
ガガガガガガガガガガ
ガガガガガガガガガン
白い幕で覆われた本陣内へと伊庭を乗せた小型トラックは雑兵や防御用の丸太などを巻き込んだまま突入する
ガガガガガ
ズドオオオオオオン
キキキキキイイイイイイイイイイイイイ
ドオオオオン
石田三成「ついに来おったか!」
本陣突入と共に小型トラックはバランスを保てずに横転してしまった
伊庭「急げ!車から出て展開!」
横転した衝撃で伊庭は頭を打ち、血を流していた
木村と三村も少なからず怪我をしている
雑兵「うおおおおおお!」
雑兵「りゃあああああああああ」
パタタタ
タタタ タタタ
雑兵「ぎゃ」
雑兵「ぐはっ」
横転した車から脱出した伊庭たち3名の隊員は襲い掛かってきた雑兵を小銃射撃で一掃した
石田三成「それが……噂に聞く連発銃か!」
グオオオオオン
キキイイイイイッ
三成「もう片方の鉄の馬か!」
伊庭達に遅れて軽装甲機動車も本陣内に乗り込んでくる
軽装甲機動車は73式小型トラックと異なって装甲車両であったので衝突によるダメージは少なく、横転することなく停止した
根元「小隊長無事ですか!?」
停止した軽装甲機動車から根元ら3名の隊員が出てくる
ジャキジャキジャキジャキ
雑兵「殿!下がってください!」
雑兵「たった6人の兵、我々でぶった切ってやります」
石田三成を包囲するようにして展開した6名の隊員
その隊員達の持つ小銃の銃口から三成を守るようにして防御陣形を築く兵士たち
天下分け目の戦い、関が原の戦いの決着を付けるための最後の戦いが今、始まろうとしている
三成「某は佐和山城主、石田治部少輔三成と申す!」
伊庭「石田……三成!」
木村「わざわざ名乗ってくれたか。ありがたいこった」
三成「突如として現れ、戦の優勢劣勢を一気にひっくり返した謎の一団。西軍にも“おぬしらに似た一団”がおったが、あやつらとおぬしらとではやはり雰囲気が違うておる。あやつらには覚悟や“義”が無かった。じゃが、おぬしらは“武人としての構え”というものがはっきりと見えておる」
伊庭「武人としての………構え……だと?」
三成「そうじゃ」
伊庭(数日前に伊達政宗に言われたこととは正反対の言葉だ。僅か半日の戦闘で我々は…………)
三成「おぬしらは何者だ?」
伊庭「………………」
三成「?」
伊庭「陸上自衛隊…………。いや。戦国時代に存在しながら現代日本を守るために戦う集団。そう、言うなれば……………」
三成「言うなれば?」
伊庭「戦国自衛隊だ」
三成「戦国………じえいたい」
伊庭「そうだ。戦国自衛隊の指揮官、伊庭義明。それが俺の名だ!」
馬よりも早い乗り物?船があるじゃないか!(揚げ足取り)
そして遂にクライマックスですね!楽しみにしてます!
三成「伊庭………義明」
伊庭「………………」
ガチャガチャ
雑兵「………………」
雑兵「………………」
自衛官たちにむけて槍や刀を向ける雑兵たち
須賀「ど…どうするんですか?撃って良いんですか?」
根元「待て。この距離だと下手に動いたら俺たちがやられる可能性もある」
木村「だが、三成の兵の応援が来る前に決着を付けないと」
自衛隊は時速80キロというスピードで雑兵の集団を振り切り、本陣に突入した
自衛隊車両に襲い掛かっていた1000を超える兵は時速80キロの車両に追いつけるはずも無く、自衛隊の本陣突入を防ぐことは出来なかったのである
しかし、彼らは三成の命を守るために自衛隊の後を追って本陣に駆けつけることだろう
1000を越える兵が三成の命を守るために本陣に到達した場合、自衛隊は逆に袋の鼠となってしまう
伊庭「………………」
三成「………………」
ジリッ
ザザッ
伊庭「……!」
三成「………!」
雑兵「!今じゃ!かかれえええええ!」
雑兵「一斉にかかれ!」
伊庭「くっ!撃ち方はじめっ!敵の戦力を確実に無力化しろ」
木村「了解!撃て撃て撃て!」
根元「はい!」
パタタタ
タタタ タタタ タタタ
タタタタタタタタン
雑兵「ぐはっ」
雑兵「ぎゃ」
雑兵「ひるむなあああああ!」
本陣内に居た三成の兵士は40人程度であった
その内10名ほどが三成を取り囲み、三成本人を守っている
残った30名が自衛官たちを少し距離を取りながら包囲しようとしていた
その30名が一斉に6名の自衛官に襲い掛かる
タタタ タタタ
6名の自衛官の持っている小銃弾の数なら30名の兵士などすぐにでも全滅できるのであるが………
雑兵「うおおおおおお!」
雑兵「りゃああああ!」
ガキイイイン
木村「くそっ」
包囲していた30人の兵と自衛官の間の距離は10メートルも無かった
全力で向かってくる30名の兵士
その兵士全員を全滅させるのに10メートルという距離は自衛官にとってあまりにも短すぎた
平井「くそっ!近寄るな!近寄ったら容赦なく撃つぞ!」
雑兵「りゃああああああ!」
平井「ちっ」
パタタタタタタ
雑兵「ぎゃあ!」
雑兵「おのれええええええ」
グサッ
平井「ぐっ」
対処し切れなかった兵が10メートルの距離を走りきり、自衛官に攻撃を仕掛ける
白兵戦闘になれば小銃は本来の力を発揮できない
木村「平井!」
平井「ううっ。へ…平気です。くそっ」
タタタタタタタタタタ
左腕に斬撃を受けた平井は右腕だけで5.56ミリ機関銃MINIMIを持ち直し、反撃をする
タンッ タンッ タンッ カチッ
須賀「うわああああ!弾が!」
三村「援護する!伏せろ!」
須賀「はいっ!」
タタタタタ
雑兵「ぐあっ」
白兵戦闘に持ち込まれそうになった自衛官たちであったが、何とか優勢を保つ
三成「6名だからといって侮るでない!」
雑兵「30人が………あっという間に!」
雑兵「そんな馬鹿な」
雑兵「これが“じえいたい”とやらの実力だというのか!?」
ズドンッ
雑兵「がはっ」
ダンッ ダンッ ダンッ
タタタン タタタン
雑兵「がっ」
雑兵「ぐはっ」
三成「………………………」
伊庭「今の兵でラストか。チェックメイトだ。石田三成。もうお前を守るための兵士は生き残っていない。おとなしく投降しろ」
短いですけど今日はここまで
>>524
馬の足の速さが確か40キロ以上に達するみたいなので「馬の速さ>帆船の速さ」だとか思ってました
海自の護衛艦が5戦速で30ノットらしいので帆船がディーゼル艦より速いことは無いだろとか適当に思って書いてます
>>528
一応、風向きがベストではない状態の帆船が一日に120~200kmを進むみたいです。
一方馬は替え馬を乗り継ぐ急使でも一日に50~80kmしか進めないようなので船の方が早いですね。
おそらく>>1さんがご覧になった馬の速さは時速ではなく日に進む距離ではないでしょうか?
なんだか本当に揚げ足とりみたくなっちゃってすいません…
>>529
帆船すげええ!
風向きがベストでないときもそんなに進むとは………
ジャキジャキジャキ
本陣内に三成を守る兵はすでに存在しない
たった一人生き残った三成に6人の自衛官が銃口を向ける
三成「降伏じゃと?」
伊庭「そうだ。降伏しろ!」
伊庭は県から石田三成がどのような最期を遂げたかを聞いている
石田三成は関が原では死なず、戦線離脱した後に捕まり、後日打ち首になる……というのが史実であった
であるからにして伊庭はこの場では三成を殺したくは無かったのだ
それともう一つ
仮にこの場で石田三成を伊庭達だけで殺してしまったら東軍武将たちは何を思うか
「手柄を自衛隊が独り占めした」と思う武将も出てくるかもしれない
そのような状況はなるべく避けたい伊庭であった
しかし、それと同時に、はやいところこの殺し合い(関が原)を終わらせてしまいたいという気持ちも存在する
三成「わしとて武士だ。降伏するのなら切腹を選ぶ。それにここで降伏したならばわしの為に死んでいった兵たちに申し訳が無い」
伊庭「三成!」
三成「確かに勝敗は決したかもしれぬ。しかし、わしは“義”のために最期まで戦おう。最期に至るまで諦めぬ!」
伊庭「やはり………歴史書通りの頑固者だったか…………」
木村「あの三成の目………。まだ闘志がある。本当にこの状況で諦めてない!」
三成「………………」
ジリッ
三成は刀を持つと、一歩一歩、伊庭のもとに近づいてきた
その威圧に伊庭達は一歩後退してしまう
伊庭「くっ」
木村「小隊長!接近戦になる前に倒してしまわないと!」
伊庭(三成は歴戦の武将。銃剣道を心得た俺ではあるが、接近戦では勝ち目は無い。ならば接近戦になる前に三成を撃ち抜けば良い。しかし、心臓などの急所を撃ち抜いてしまえば、三成は死ぬ。それを避けるには…………)
ジリッ
三成はまた一歩伊庭に近づく
伊庭(この距離なら………一か八かだが………。やるしかない)
三成「……………!」
ザザザザッ
三成が伊庭に向かって刀を振り上げながら走り出す
三成と伊庭との距離はわずか数メートル
木村「小隊長!」
三村「くそっ」
ジャキ
伊庭に向かってくる三成に隊員達は発砲しようとする
しかし
伊庭「他の者は撃つな!」
隊員達「「 !? 」」
三成「おおおおおおお!」
伊庭「……………くっ」
タアアァーーン
ガキキイイイイイン
三成「なっ」
伊庭は小銃の単発射撃で三成の持っていた刀を撃ちぬく
至近距離から撃たれた小銃弾は刀を少し変形させる
戦国時代の刀職人の技術の賜物だろうか
小銃弾を受けても刀自体は折れたりしなかった
しかし、伊庭の狙いは刀を使用不能にする事では無い
数メートルという短い距離から放たれた小銃弾が刀に当たった時の衝撃はかなり強いものだ
その衝撃で三成は思わず刀を落としてしまう
三成「ちいっ!」
落とした刀をすかさず拾い上げようとする三成
しかし、伊庭はその隙を逃さなかった
タタタタタタタタタタタン
マガジンに残っていた残弾を全て落ちている三成の刀に浴びせる
ガガガガガン ガキキイイイイイ
流石の刀も至近距離から数十発の小銃弾を浴びて無事なはずが無い
三成「刀が………真っ二つに!」
伊庭「今度こそ終わりだ三成!」
三成「………………」
伊庭「動くなよ?少しでも切腹しようとしたり、反撃しようとしたら今度は足や腕を撃ちぬく」
三成「何故だ」
伊庭「?」
三成「何故わしを殺そうとはせんのだ?」
伊庭「……………」
三成「戦とは敵の総大将の首を取ってこそ勝利と言える。おぬしらが東軍の軍勢ならば、わしの首を取って勝利を手にするはず。しかし、おぬしらは配下の兵を倒すばかりで、わしの命は頑なに取ろうとせん。切腹すら許さんとは…………。おぬしらは一体何のために戦っておるのだ?」
伊庭「何のため…………か」
三成「わしに情けをかけているわけでもなかろう?ならば何のためじゃ?」
伊庭「それは………………!?」
木村「なっ!?」
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
根元「まずい!援軍が来ちまった」
木村「思ったよりも早い!」
須賀「小隊長!三成を捕まえて車両で退避しましょう!」
先程、自衛隊車両を襲っていた1000人余りの三成の兵が本陣に到達した
雑兵「殿おおおおおお!」
雑兵「殿!殿は無事か?」
雑兵「あやつらだ!鉄の馬がおるぞおおおおお!」
伊庭「くそっ」
三成「義明と言ったか?戦はやはり最期まで諦めぬことに限るな」
伊庭「くっ!総員、防御陣形を築け!」
本陣内に突入してきた1000人の兵士
それを迎撃するように6名の自衛官は半円のような形に広がって展開する
平井「5丁の小銃と1丁の機関銃…………。これで1000人を対処出来るのか?」
根元「残弾は6人合わせても、もう1000発も残ってないぞ」
木村「別に敵兵を全滅させる必要は無い。三成を人質にしたまま車両で我々の陣まで撤退すれば良い」
三成「皆の者!わしに構わず、攻撃を仕掛けよ!」
雑兵たち「「 !? 」」
木村「正気か?何言ってやがるんだこいつ!」
伊庭「我々が三成を殺すことが出来ないと三成は知ってしまった。だから、自分が人質にとられていても構わずに攻撃をしろと言ったんだ。人質が殺される心配が無ければ、安心して我々を攻撃できるだろ」
木村「殺される心配が無い人質は既に人質として機能しない………というわけか」
うおおおおおおおおおおおおおおお!
タタタタン
タタタ タタタ タタタ
押し寄せてくる1000人余りの兵
根元「たった6人じゃ防ぎきれない!」
平井「あと一歩でこの戦が終わるところだったのに…………」
木村「次から次へときりが無い」
パタタ タタタ タタタ
タタタタタタタン タタタタタタタタ
隊員達は果敢に反撃するが、多勢に無勢だ
いくら近代兵器で武装していようと、6対1000という人数差では勝ち目が無かった
タタタタタタタタ
タタタタタタン カチッ カチッ
須賀「残弾なし。装填します!」
伊庭「援護する!下がって給弾しろ!」
須賀「はい!」
タタタン
雑兵「がはっ」
雑兵「敵はたった6人じゃ!押し切れ!」
根元「まずい!弾がもう無い」
平井「俺のをやる。これが最後のマガジンだ」
根元「サンキュー!助かった。装填する!三村、援護射撃を頼んだ」
三村「はい!」
タアァーン タアァーン
雑兵「ぐはっ」
雑兵「ぎゃ」
既に小銃弾を使い果たしていた三村は、スナイパーライフルで応戦している
ダンッ ダンッ ダンッ
雑兵「がっ」
伊庭も小銃弾を使い果たしてしまった為に、9ミリ拳銃を片手にして戦っていた
伊庭「総員着剣!」
根元「マジかよ!白兵戦じゃ分が悪いぜ!?」
伊庭の命令で隊員達は小銃の先っぽに銃剣を装着し、白兵戦闘の備えをした
伊庭(小銃弾はもうほとんど残っていない。だが、敵兵は500以上まだ残っている。戦を東軍の勝利とし、はやく終わらせる為。何より、隊員の命を守るためにも、残された選択肢はひとつ)
タタタ
タタタタタタン
タアァーン タアァーン
うおおおおおおおおお!
伊庭(三成を殺害することだけだ!)
タタタタ カチッ
木村「くそっ。残弾無し!予備ももう無い」
三村「こっちもありません!誰か援護を!」
須賀「自分が援護します!」
パタタタ タタタタン
伊庭(隊員達の持っている弾薬はあと僅か。迷っている暇は無い!多少歴史が変わろうが関係ない!俺の手で石田三成を!)
木村「小隊長!あれを!」
伊庭「?…………!?」
根元「弓隊か!」
三成殺害を決意した伊庭が行動を起こそうと思った矢先に、木村が叫ぶ
何事かと木村が指を指す方向を見れば、今まさに、矢を放とうとする弓兵が多数居た
その数はおよそ20
距離は50メートルも離れていなかった
この時代の弓兵の練度は高い
この距離ならば確実に弓兵の放った矢は伊庭達自衛官に命中するだろう
伊庭「くそっ!伏せろ!」
根元「無理!無理です!」
平井「伏せたら敵兵に潰されてしまう!」
隊員達は押し寄せてくる敵兵の対処で手一杯だった
とても矢から身を守るために伏せることの出来る状態では無い
三成「良いぞ!己の力を信じて矢を放て!わしはおぬしらの腕を信じておる!」
隊員達の背後には三成が存在する
弓兵の放った矢は三成に当たってしまう可能性もあった
しかし、三成は弓兵たちが確実に自衛官のみを射抜くことが出来ると信じて疑わない
伊庭「もう間に合わない!ここまでなのか……………」
伊庭だけでなく、他の隊員達も諦めかけていた
が、しかし
ズガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン
雑兵「ぎゃああああああああああああ!」
雑兵「あああああああああああああ!」
雑兵「わああああああああ!」
ドオオオオオオオオオン
伊庭「!?」
三成「何が………起きた!?」
凄まじい轟音とともに、大地が爆発する
弓兵はおろか、その周囲に居た兵たちも跡形も無く吹き飛ばされてしまっている
吹き飛ばされなかった兵たちはあまりの音と衝撃波に皆、地面に転がって悲鳴を上げていた
木村「この威力!この時代の兵器じゃない!」
根元「!この音は!」
グオオオオオ キュラキュラキュラ
三村「戦車だ!小早川秀秋の陣に行っていた戦車が救援に来たんだ!」
伊庭「10式戦車がここに!」
伊庭(鉄砲隊も弓兵も大筒ももう三成の手元には無い。敵に戦車に対抗できる武器は無い!)
今日はここまで
グオオオオン オオオン
キキイイイイイッ
丸太で出来た防壁などの障害物を無理やり押しのけて10式戦車は本陣内へ突入した
島田「伊庭1尉!救援に駆けつけました!無事ですか!?」
戦車上部のハッチから顔を出していた車長の島田が伊庭に呼びかける
伊庭「ああ!無事だ。よく来てくれた!」
木村「まさに間一髪ってところだったよ」
根元「遅えぞ!待ちくたびれたぜ!」
隊員達は到着した10式戦車の姿に安堵する
そして、車長の島田を拍手で迎えた
雑兵「なんじゃこの大きさ………」
雑兵「今まで見てきた鉄の馬とは桁違いの大きさじゃ」
雑兵「しかも、この鉄の馬は火を噴くぞ」
雑兵「どうやって戦えば良いのじゃ!?」
三成の兵たちは10式戦車の圧倒的な存在感に驚愕していた
雑兵「くそっ!」
ヒュンッ
ガキイイイイン
島田「ちっ。無駄な足掻きだ!」
ズドドドドドドドン ドドドドドド
雑兵「がはっ」
10式戦車に矢を放ってきた雑兵に向かって島田は車載の12.7ミリ機関銃M2で攻撃した
12.7ミリ機関銃の掃射を受けた雑兵はミンチ状態になってしまう
雑兵「ざ……ザクロが弾けたみたいに人の体が………」
雑兵「こんな威力の鉄砲がこの世に存在するなんて………」
雑兵「南無三。もはやこれまで!」
主砲の120ミリ滑空砲と12.7ミリ機関銃の一連の攻撃で三成の配下の兵たちはすっかり戦意喪失してしまった
三成「…………………」
伊庭「三成。あなたの言う通りだったようだ。勝負は最後の最後まで諦めてはいけない」
三成「……………そうだな。そのようじゃな」
伊庭「で?あなたはまだ我々と戦うつもりなのか?」
三成「………………」
三成は戦意喪失した配下の兵たちをチラッと見る
雑兵たち「「 …………… 」」
三成「いや。彼らをこれ以上戦わせるのは酷じゃな。もう既に戦う気力を無くした彼らを無駄死にさせとうないしの」
伊庭「………………」
三成「わし一人戦うことも考えたが…………。あの鉄の馬の鉄砲玉で跡形も無く消されてしもうては、わしごとこの世から“義”というものが粉砕されてしまうことの暗示のような気がしてならん。ならば、いっそのこと…………」
伊庭「切腹………するのか」
三成「最期は武人らしく終えたいのでな。武士の情けだ。腹を切る時間くらいは与えてくれても良かろう?」
伊庭「………………」
雑兵「殿!」
雑兵「くっ。我らに力が無かったからこんなことに………」
雑兵「やはり最後まで我々も!」
雑兵たちは再び三成の為に戦おうとする
が
三成「ならぬ!」
雑兵たち「「 !? 」」
三成「わしはおぬしらに無駄死にして欲しくは無いし、それに、わしの最期を誰が後世まで伝えるのじゃ?」
雑兵たち「「 …………… 」」
三成「おぬしらがここで全員死ぬこととなれば、“義”を持つ武人はこの国から居なくなってしまう!内府に楯突くことの出来る武人が居なくなってしまうであろう!おぬしらは生き残り、そして、この国を良い方向へ導け。それが、わしの最後の命じゃ」
雑兵「殿!」
見れば三成の兵たちは涙を流しながらひざまずいている
それを見て伊庭は思った
伊庭(これほどまでに信念を貫き通す武人………。このような人間がかつての日本には存在したと言うのか。現代の日本、いや、世界にこれほどまでの人間が存在するだろうか…………。俺は今まで知る由も無かった。…………そうだ。この男がどんなに立派な武将であったか、ということをもう現代日本の人間は知らない。歴史の闇の中に彼の信念は消え去ってしまったのだ)
伊庭(それは三成だけでは無い。彼と敵対勢力であった東軍の武将たちにも信念が存在し、彼らは己の信念に従って戦ったのだ。どちらが正しいと言うことはない。どちらとも正義と言うものが存在する。その正義の為に命を賭けて力をぶつけ合う。それが戦国時代。では、我々、自衛隊にとっての正義とは何だ?)
伊庭(それは………現代日本に生きる人間を守ること。その為に歴史を正しい流れに導くことでは無いのか?)
伊庭(ならば、俺はここでどうするべきか。答えは出ている!)
伊庭「三成…………。逃げろ」
三成「!?」
木村「小隊長?」
島田「おいおい。逃がすって………。正気の沙汰じゃねえぞ!」
伊庭の言葉に三成や自衛官たちはおろか、三成配下の兵たちもどよめく
三成「何と申された?」
伊庭「逃げろ三成。あなたが本当に己の信念を貫き通したいのなら、この関が原から撤退し、そして、あらためて内府とやらに再戦をしろ」
三成「おぬしは………おぬしは東軍の軍勢ではないのか?」
伊庭「聞こえなかったのか?逃げろ!そして、あなたの言う“義”とやらのために生きよ!」
三成「…………………」
伊庭「行け!石田三成!」
三成「!?………………ああ」
三成は立ち上がる
三成「皆の者!撤退じゃ!わしに続け!この場は一旦退いて、再び内府との決戦に挑む!この戦で命を落としていった者のためにも!」
雑兵たち「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
三成は馬に乗ると既に数百名となった配下の兵を引き連れて戦場を離脱しようとする
三成「伊庭殿。わしはおぬしの考えが分からぬ。が、しかし。礼を言おう。おぬしのおかげで、わしはこの国を良い国にすることが出来るという希望をまた手に入れることが出来たのだからな!」
伊庭「……………」
三成「また会うこともなかろう。さらばじゃ!」
そう言って三成と兵たちは関が原から去っていった
その後姿に伊庭は敬礼をする
木村「よろしかったのですか?逃がして」
島田「三成の男気に惚れた………とかですか?伊庭1尉?」
伊庭「いや。違う。これが正しい歴史だからだ」
木村「?」
伊庭「三成は関が原を離脱に成功。後日、捕まり、斬首される。これが正しい歴史なんだ」
島田「なっ」
木村「それじゃあ、三成は………。このあと…………」
根元「捕まって斬首か。あんなに張り切って徳川にまた挑もうとしていたのにな」
須賀「何か………かわいそうなことしましたね。ここで腹切ったほうが幸せだったかも」
伊庭「そうかもしれないな。だが、我々は狂った歴史を元に戻すために戦ってきた。なら、少しでも史実通りに事を運ばせようとするのが、我々の信念に従った行動……と呼べるのではないか?」
隊員達「「 …………… 」」
伊庭「とにかく、これで歴史は元の流れに戻ろうとし始めた。我々はこれより帰還する。総員乗車準備!」
隊員達「「 はっ! 」」
伊庭の号令で隊員達は軽装甲機動車と10式戦車に乗り込む
伊庭達の乗ってきた73式小型トラックは横転し、使い物にならなくなっていたため、伊庭と木村と三村の3名は10式戦車の上部に乗った
伊庭「燃料は保つか?」
島田「大丈夫です!正信の陣までは保ちます」
伊庭「島田…………。島2尉たちは?」
島田「……………。我々は小早川秀秋を説得した後、島2尉たちとテロリストが交戦していた場所にすぐに向かったんです。しかし………」
伊庭「しかし?」
島田「テロリストたちの死体や、撃ち捨てられた対戦車弾などは見つかりましたが、島2尉たち空挺隊員の姿はどこにも見当たりませんでした」
伊庭「そうか…………」
島田「それと、ここに来る最中にひっくり返った小型トラックと動かなくなった隊員達を見ました」
伊庭「そうか」
伊庭達が三成の本陣に突入する際に小型トラック1台がひっくり返った
それに乗っていた隊員達は伊庭達に「先に行け」と伝え、伊庭は苦渋の決断で彼らをその場に残して進んでしまったのだ
伊庭「彼らの遺体を回収してどうにかベースまで連れて帰りたい。彼らのところまで行ってくれるか?」
島田「了解っと。まだ戦は終わってませんから、矢や鉄砲には気をつけてくださいよ。それと、正信の陣では我々の仲間がまだ必死の攻防戦をしている可能性があります。彼らの救援の為に急ぐので、時速50キロ以上の速さでの走行となります。振り落とされないようにしてくださいな」
伊庭「頼んだ」
10式戦車と軽装甲機動車は三成の本陣を後にした
今日はここまで!
コメントありがとうございます!
乙
73式って今も現役なのか
乙
鬼島津「そろそろ出番かな^^」
桃配山・家康(仮)本陣
隊員「石田三成が敗走!大谷吉継は山中村で討ち死にしたとのことです」
県「なるほど。歴史は元の流れに戻ったか」
隊員「他の西軍武将も次々に敗走。小隊長たち………ついにやったんだ!」
雑兵たち「「 うおおおおおおおおおお! 」」
県3尉が居る桃配山の家康(仮)本陣は東軍の勝利が決定的なものとなったことを確信して歓声が上がっていた
県「気がかりなのは野中たちだ。三成敗走で西軍が総崩れになったのは良いが、小西軍による正信本陣への攻撃の手はまだ緩んでいない。正信直属の兵と野中たち数名の隊員で小西軍を防ぐのはもう限界だろう」
隊員「三成軍と交戦していた伊達の軍勢が正信の軍に加勢すれば戦況は変わるかもしれませんが、彼らが正信本陣にたどり着くまでに保つかどうか………」
県「……………」
本多正信の本陣を防衛するために配置された自衛官は負傷者含める若干名のみ
その若干名で運用出来る迫撃砲などの野戦砲の類の数は限られている
それに、伊庭の三成討伐隊や矢野の宇喜多討伐隊などの部隊にかなりの弾薬を回してしまっているために正信本陣を守るための弾薬は決して多くは無かった
それでも野中たち自衛隊員は奮戦しているらしく、いまだに桃配山に敵兵が到達することは無い
県(が、それもいつまで保つか…………)
先程まで正信本陣の方角から聞こえていた迫撃砲や対戦車砲の発射音はもう聞こえていない
おそらく残弾が無くなったのだろう
現在は機関銃の連続射撃音が聞こえるばかりだ
西軍の負けは決定したが、県や正信たちの安全は保障されていないのが現状である
県「この現状を打破するには西軍の各軍勢と交戦していた東軍の軍勢が正信本陣まで戻ってくるか、あるいは、10式戦車や小隊長たちの部隊が戻ってきて加勢するしかない」
隊員「三成や宇喜多秀家が敗走したことから、小隊長たちは任務を遂行したと思われます。ですから彼らの帰還ももうすぐかと」
県「そう楽観ばかりしてはいられない」
隊員「え?」
県「関が原の戦いが仮に史実通りに動いたとしたら、最後に“島津の敵中突破”が来る」
隊員「島津の敵中突破?」
県「そうだ。島津は三成と戦前に対立していた関係から、関が原の戦いでは一歩も動かなかったんだ。そして、彼は三成が戦線離脱した後、東軍の軍勢が犇く関が原を単軍で突破して薩摩に帰った」
隊員「へぇ~」
県「俺が危惧しているのはその島津の敵中突破のことだ」
隊員「?」
県「島津が敵中突破をする際に通ったルートは家康の本陣、つまりこの桃配山の目と鼻の先だ。史実通りならそのルートは東軍の軍勢がたくさん居たんだが、現在はというと…………」
隊員「…………小西たち西軍の軍勢が居る。東軍は正信の軍勢を含め若干しか………」
県「そうだ。島津にとっては簡単に撤退できるルートだ。だが、島津にはもうひとつの選択肢がある」
隊員「小西に加勢して………正信の陣と桃配山を落とす…………という選択肢ですか?」
県「そういうことだ。もし仮に島津が加勢してしまった場合、我々に彼らを防ぐ手立ては無い」
隊員「でも!島津がここに到達する前に他の東軍の軍勢や戦車が間に合えば!なんとか………」
ザザザザッ
雑兵「報告します!島津の軍勢が真っ直ぐにここへ向かってきております!」
やや動揺した顔をした兵が県の元へ走ってきて報告する
その報告を聞いて他の兵士もざわめきだす
県「くっ。やはり来るのか!島津」
隊員「3尉!自分は野中たちのところに行って戦いたいです!仲間が必死で戦っているのに自分だけここで見ているだけなんて………」
隊員「そうです3尉!」
県「……………」
正直なところ県本人も正信の本陣へ行って戦いたかった
伊庭や矢野たちが命がけで戦っているのに自分は家康気取りで桃配山でじっとしているのはもう耐えられなかったのだ
しかし………
県(歴史は確実にもとの流れに向かっている。が、まだ完全では無い。いつまたイレギュラーな事態が発生するかも分からんのだ。俺は起こり得る最悪の事態を考えて行動しなくてはならない)
県「駄目だ」
隊員たち「「 !? 」」
県「俺だって戦いたい。仲間を救いたい。だがな、もし仮に正信の陣が落ちて、敵兵がここまで到達し、俺たちが死んだらどうする?俺は仮ではあるが、徳川家康の代役を演じろと言われている人間だ。俺が死んだら東軍総大将が死んだと同義になってしまう。そうなったらもうおしまいだ。小隊長たちの努力が全て水の泡となってしまう」
隊員「………………」
隊員「しかし…………」
県「辛いだろうが、ここは耐えろ」
隊員達「…………はい」
一旦ここまで
>>548
73式小型トラックの新型は現役ですよ
旧型もたまーに駐屯地祭で見かけます
このssでタイムスリップした車両は新型のパジェロタイプのほうです
>>549
コメントありがとうございます
>>550
ずっと島津出したいと思ってたんですけど、どこで出そうかなって迷ってました
このコメント見て「このタイミングだ!」とか思って出しました
ありがとうございます!
~本多正信本陣前・自衛隊防御陣~
タタタタタタタタタン
ズガガガガガガ
タタタ タタタ タタタ
野中「もっとだ!もっと弾持って来い!」
正信の兵「はっ!」
野中「くそおお!きりがねえ!このままじゃこの陣もいつまで保つか分からんぞ!」
押し寄せてくる小西行長の兵から正信の陣を守る自衛官と正信の兵たち
すでに81ミリ迫撃砲L16や110ミリ個人携帯対戦車弾、指向性散弾などの重火器は残弾が尽きている
遠距離攻撃の可能な重火器がなくなったことで自衛隊の想定した防衛線は次々に突破され、敵兵はついに最終防衛線に到達してしまった
自衛隊は人手不足から、小銃並びに機関銃の射撃と弾薬の補給を正信の兵の一部にさせている
正信の陣を囲うよう弧の字に彫られた塹壕は全部で6つある
その塹壕ひとつに指揮者として自衛官1名と小銃手、機関銃手、鉄砲隊、弓隊の混成部隊15名程度を配置してある
自衛官の式の下、正信の兵15名が自衛隊の貸した小銃や火縄銃、弓などで迫ってくる敵兵へ攻撃をしていた
その塹壕の後方5メートルの位置に2両の大型トラックと1台の中型トラックが弾薬補給庫として停車してある
トラックの荷台にも正信の兵が3名ほど待機しており、塹壕内の自衛官の指示によって適宜、弾薬補給を行うこととなっていた
刀、槍でぶそうする兵たちは全員、正信の本陣内で最後の砦として待機させてある
尚、自衛官6人中、半数近くは負傷者であったが、人数不足から負傷者であっても前線指揮にあたっている
野中「2時の方向から敵兵の集団だ!MINIMIで蹴散らせ!」
正信の兵「はっ!」
パタタタタタタタタ
雑兵「ぐあっ」
雑兵「ぎゃ」
野中「弾薬まだか!?」
正信の兵「今持って行きます…………ぎゃああ!」
野中「なっ!?」
飛来した矢が弾薬補給を行っていた兵を貫く
野中「くそっ!どこから撃ってきやがった?」
正信の兵「野中殿!あそこ!」
野中「長槍隊の後ろに弓隊が隠れていたのか!おらあああ!」
タタタタタタン タタタタタ
雑兵「ぎゃああ!」
雑兵「ぐあっ」
野中「俺が弓隊に攻撃している間に誰かトラックから弾薬持って来い!」
正信の兵「わしが行きまする!」
野中「頼んだ!」
敵兵はもう前方50メートル以内にまで迫ってきている
野中「元々、トラックに積んであった弾薬の8割は使い切ってしまってる。このままだとあと30分も保たないぞ」
「うああああああああ!」
野中「!?」
悲鳴は野中の居る塹壕のすぐ横の塹壕から聞こえた
見れば、塹壕の中から黒い煙が出ている
野中「戦忍が爆裂弾の類でも入れたのか!?」
黒煙を上げる塹壕から血まみれの兵たちが命からがら出てくる
その中には自衛官の姿もあった
野中の隣の塹壕で指揮に当たっていた自衛官は初日の戦闘で足を負傷していた隊員だ
その傷はまだ完治しておらず、一人ではまともに歩けない状態である
野中「くそ!おい、お前。俺の代わりにここの指揮をしろ」
正信の兵「かしこまって候!」
野中は横に居た正信の兵のひとりに指揮権を預けると、倒れている自衛官の救助に向かった
野中「大丈夫か!?しっかりしろ!」
隊員「ううっ。の…野中2曹………。自分は…だ……だい」
野中「大丈夫なわけねーな!今、後方の救護所まで運んでやる!海野2曹!来てくれ」
海野「!?」
衛生科の海野2曹が駆け寄ってくる
海野は衛生科であったが、現在は前線で指揮を執っていた
野中「爆裂弾の類を至近距離で受けたようだ。出血が激しい。後方の天幕で手当てをしたい」
海野「見せて。…………爆弾の破片と思われるものが傷口から体内に入ってる。太ももの大動脈が損傷………。出血が止まらない。早く輸血しないと…………」
野中「輸血パックはまだあるか?」
海野「まだ若干の余裕があったはず。彼の血液型は?」
野中「ドックタグを見る限りO型だ」
海野「分かった。彼を運ぶのを手伝って!」
野中「了解」
野中と海野は負傷した隊員を運ぼうとする
が、しかし
ヒュンヒュンヒュンヒュン
野中「弓隊の残存兵か!」
またも矢が飛来する
それだけではない
塹壕のひとつが使い物にならなくなり、弾幕が少し薄くなってしまっている
そのため、防御に少し穴が出来てしまい、敵兵がいままでよりも多く殺到してしまっていた
野中「くそ!対戦車弾が残ってれば………」
隊員「も……申し訳ありません。じ……自分…の…せいで」
野中「お前のせいじゃない!」
海野「!?敵兵の一部が最終防衛線を突破して左翼の塹壕に到達!」
野中「何!?」
弾幕が薄くなった隙を突いて敵兵の一部が左側を防衛していた塹壕のすぐ手前まで到達してしまっていた
塹壕内にいた自衛官は手榴弾や小銃をフルで使って必死に戦うが、いかんせん敵が多すぎる
野中「西沢あああああ!左翼の陣だ!援護射撃!」
西沢「了解!撃て撃て撃てええええ!」
タタタタタタタタン タタタタタタ
タタタタタタタタタ
西沢1士と正信の兵たちが援護射撃を行う
雑兵「ぐああああ!」
雑兵「がはっ」
野中「…………。海野2曹、こいつを頼む」
海野「え?」
野中は負傷した隊員を海野に預けると弾薬補給用のトラックへ走り出す
海野「何をする気!?」
野中「これだけ敵に囲まれては、もう弾薬を補給する暇はない!ならもうトラックは必要ないだろ」
海野「まさか?」
野中「別に特攻しようってわけじゃねえ。だが、小銃射撃よりもこっちの方が効率が良いと思ってな」
野中は73式大型トラックに乗り込む
大型トラックで弾薬補給の任務にあたっていた雑兵3名にありったけの弾薬を持たせて下車を命じた後、野中はエンジンを始動させた
海野「やめなさい!危険過ぎる!」
野中「そんなことは百も承知だ!そんなことより敵兵が迫ってるぞ!」
海野「くっ」
パタタタ
雑兵「がはっ」
迫ってきていた雑兵を海野は片手に持った小銃で倒す
野中「さて!地獄のドライブの始まりだ!」
グオオオオオオオオ
アクセルを踏んでトラックを動かし始める野中
急に動き出した大型トラックを見て敵兵は驚く
兵員22名を乗せて走ることが出来る大型トラックは装甲車並みの大きさがある
その巨体が迫ってくるのは戦国時代の兵士にとって恐怖でしかない
野中「どけどけどけどけ!」
敵兵を自陣に近づけないように野中はトラックで敵兵を追い立てる
時速50キロ以上で追いかけてくるトラックに腰を抜かす敵兵も多い
腰を抜かして座り込んでしまった兵は容赦なくトラックの巨体に轢かれた
ガコンッ
ガコガコガコッ
野中「くそっ。死体の山の上を走るとなるとかなり揺れる。それにあんまり気持ちの良いもんじゃねえな!」
死体だけでなく生きた敵兵も轢殺しながら走る野中であったが、それらを轢く度に振動が伝わってくる
さらに、血糊でタイヤもスリップしてしまう
野中「ちくしょう!トラックにビビッて撤退するかと思ったが、戦国武士ってのは肝っ玉でかいやつが多いのか!?」
敵兵の中には走行中のトラックに飛び乗ろうとしたり、刀や槍で攻撃しようとする者も多く居た
雑兵「うおおおおおおおお」
雑兵「いくら化け物であろうと、この人数を相手には出来んだろ!」
雑兵「押し倒すんじゃああああ!」
雑兵「りゃあああああ!」
野中「冗談じゃねえぞ!」
ガガガガガガガガガガガ
時速50キロで走行していた大型トラックに数十の兵が体当たりした
兵たちはその衝撃で跳ね飛ばされ即死する
しかし、その攻撃の衝撃はトラックにも及んだ
ズッガアアアアアアアアアン
あまりの衝撃に大型トラックは横転してしまう
野中「ぐあああっ」
フロントガラスは割れ、タイヤは吹き飛び、車体は変形してしまう
野中「いてて………」
雑兵「りゃあああああ!」
野中「うおっ!うらああ!」
タタタン
雑兵「がはっ」
横転したトラックに次々と敵兵が群がってくる
その敵兵の一人が運転席で倒れていた野中を見つけて、攻撃してきたのだ
野中は咄嗟に傍らにおいてあった89式小銃で応戦する
タタタ
タタタ タタタ
雑兵「ぐあは」
雑兵「ぐっ」
野中「これでも食らえ!………いたっ」
シートベルトを外して、割れたフロントガラスを潜って車外に出た野中はそこで身体全体に痛みが走っていることに気付く
彼はエアバックとシートベルトによって即死は避けられたものの、ガラスの破片で体中を切ってしまっているし、肋骨や足の骨が折れていた
だが、そんなことに構っている暇は無い
車外に出た野中に数百の兵士が襲い掛かってくる
野中「くっそ………」
タタタタタタ カチッ
野中「ちっ。ならこっちだ」
ドン ドン ドン
持っていた89式小銃の残弾が0となったので、野中は腰元から9ミリ拳銃を取り出して戦う
トラックの荷台にはまだ多少の弾薬が積んであったことを思い出し、拳銃で敵をけん制しながら、彼は荷台のほうへ移動する
だが、足の骨が折れているために上手く歩けない
ドン
ドンドン
ドン ドン ドン ドン
カチッ
荷台に移動し終える前に拳銃が弾切れとなった
野中「そんなっ!」
雑兵「うりゃああああああああああああ!」
雑兵「おおおおお!」
もはや戦う術の無くなった野中に敵兵が殺到する
襲い掛かってくる敵兵を眺めながら野中は死を悟った
野中(ここまでか…………)
ヒュルルルルルルルルルル
ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン
雑兵「!?」
雑兵「なんじゃ!」
雑兵「これは……………」
野中「……………10式!」
なかなかにくいところでやってくるな、戦車。
ヒーローは遅れてやってくるんだよ
伊庭「無事か!?野中!」
野中「し……小隊長!」
伊庭「根元!野中2曹を救出しろ!」
根元「了解です!」
三成本陣から戻ってきた10式戦車は機銃掃射でトラックに襲い掛かる敵兵を片っ端から潰していく
その間に根元の乗る軽装甲機動車が野中を救出した
西沢「小隊長だ!小隊長が帰ってきた!」
海野「10式もいっしょに!?」
隊員「まさに間一髪ってところだったな!」
10式戦車の登場に自衛官たちはおろか、正信の兵たちも歓声を上げて喜ぶ
対する小西行長の兵たちは10式戦車の攻撃で完全に戦意を喪失してしまい、逃走する者も多くいた
島田「伊庭1尉。後方に新手の軍勢が接近中です!」
伊庭「何!?」
島田「丸に十文字の旗印。どうします?今なら主砲の攻撃で一掃出来ますが…………」
正信「丸に十文字は島津の軍勢じゃ!」
停止した10式戦車の横に馬に乗った本多正信がやって来る
戦車の登場によって敵兵の襲撃も無くなり、安全が確保されたことで正信が前線に出ても平気な状況になっていた
伊庭「島津?」
正信「島津義弘じゃ。わしにも分からぬがこの戦いが始まって以来、自陣から一歩も動いていなかったのだが…………」
伊庭「今になって動き出した……というわけか。この陣が落ちそうになったのを見て手柄目当てで加勢したのか?」
正信「いや。あの者はそういうことはせん。漁夫の利とかそういった類のことをあやつは好まない。しかし、島津の兵がここに攻撃を仕掛けてくるとなれば、戦況はまた自軍の不利になる」
伊庭「それなら10式で再び攻撃を再開するしか…………!?」
正信「?…………………!」
パタタタタ
タタタタタタタン
グオオオオオ
島田「装甲車!?矢野2尉たちが帰ってきた!」
10式戦車の背後から迫ってきていた島津の兵の進行を防ぐように96式装輪装甲車が戦場に突入してくる
いきなり進路を妨害してきた装甲車に島津の兵たちはたじろぎ、止まってしまう
グオオオオオオオ
島田「装甲車………。すごい速さで向かってきますけど」
木村「何か急いでるんだろうか?」
伊庭「負傷者が居るのかもしれん。海野2曹!負傷者が出た場合に備えておいてくれ!」
海野「了解しました!」
戦車の脇に駆け寄ってきていた衛生科の海野に伊庭は指示する
木村「にしても………装甲車だけか」
伊庭「………………」
宇喜多秀家の討伐に向かった車両は96式装輪装甲車の他に高機動車と軽装甲機動車があったはずだが、その姿はどこにも見当たらない
おそらくは任務の途中で使用不能になって放棄したか、もしくは、敵兵に破壊されたのだろう
伊庭達も投入した車両の半分以上を失っていたし、隊員にもかなり犠牲が出てしまっていた
正確な人数は把握していないが、すでに自衛官にも相当な“戦死者”が出ていることを伊庭は悟っていた
グオオオオオオオオ キキキイイイイイイイイ
10式戦車や軽装甲機動車が停車してある横に96式装輪装甲車は急ブレーキをかけたようなかんじで停止した
停止すると共に装甲車の後部扉が開かれる
その扉から三田村と大西の2名の隊員が飛び出してきた
伊庭「三田村!大西!無事で何よりだ!」
三田村「報告は後です!それよりも輸血パックをすぐに用意してください!」
大西「急がないと手遅れに!」
降りてきた2名の隊員の様子に伊庭は一抹の不安を覚えた
伊庭「輸血パック………?負傷者が多数居るのか!?」
大西「矢野2尉が………!意識不明の重体なんです!」
伊庭「矢野………矢野が!?」
伊庭は大西の口から出た隊員の名前を聞いて頭が真白になる
伊庭(矢野………。矢野が意識不明だと!?あの、どんな戦場からでも生きて帰ってきそうなタフな男が…………)
伊庭はレンジャー訓練時や特殊作戦群で矢野と行動を共にしたことがあった
レンジャー訓練での伊庭と矢野は教官と訓練生という関係であり、特殊作戦群では共に戦う仲間だった
長い間、矢野を見てきた伊庭は彼のことを良く知っている
如何なる状況下、如何なる任務でも冷静に行動し、逸早く決断を下す
冷血そうに見えて実は部下のことを第一に思っている
射撃や格闘、作戦立案など、どの分野でも優れた成績を残し、米軍のデルタフォースにも匹敵する戦闘員とも言われる隊員
それが矢野2等陸尉であった
その彼が…………
加納「矢野2尉!しっかりしてください!」
隊員「血が……血が止まらない!」
矢野「」
加納ともう一人の隊員に担がれて装甲車から出てきた矢野は首元から血を垂れ流し、生きているかどうかも分からない状態であった
彼を担いでいる2名の隊員の呼びかけは既に悲鳴に近いものになっている
伊庭「矢野おおおおおおおおおおおおおお!」
矢野「……………ぐ……………ぅ」
加納「意識が!」
伊庭「しっかりしろ!お前はこんなところで死ぬような男じゃないだろ!」
矢野「……………ぃ………ば………たい」
伊庭の呼びかけに少しだけ意識を戻す矢野
海野「輸血パック持って来ました!手術用の道具などはありませんが、出来る限りのことはやってみます!」
伊庭「頼んだ!」
加納「2尉…………」
伊庭「……………矢野のことは海野にまかせよう」
加納「でも………」
伊庭「今、我々がしなくてはならないのは正信の本陣を守り抜くことだ。敵兵が襲ってくる中じゃ矢野の救命も出来ないだろ。加納と三田村は装甲車を用いて新たに出現した島津の軍勢がここに近づかないようにけん制してくれ」
加納「………はい」
三田村「了解」
宇喜多秀家討伐隊の残存隊員は矢野を含めて5名
三成討伐隊の残存隊員は伊庭を含めて6名だった
これに島田たち10式戦車の3名と正信の陣を防衛していた負傷者含む6名
合計20名
これが現在、正信本陣に集結している生存した自衛官の総数である
そのうち矢野を含めた2名が重傷で動くことが出来ない
実質、戦闘可能な隊員は18名ということになる
伊庭「戦車があるとはいえ、今の我々では正信本陣や桃配山を完全に防衛するのは困難だな」
木村「そうですね…………」
残存兵力の確認をしていた木村曹長の表情は硬い
何せ、タイムスリップ前に50名以上居た隊員がその半数以下にまで減ったのだ
伊庭はその現実に責任を感じていた
伊庭「俺の指揮のもとで相当な隊員が命を落とした。この責任は俺にある」
木村「そんなことはありません。皆、自分で参戦を決意したんです。危険を覚悟で」
伊庭「それでもだ。俺は彼らの死を背負わなくてはならない。彼らのためにも歴史を修復して、未来の日本を守らねばならん」
木村「隊長………………」
グオオオオオオ
キュラキュラキュラ
ズドドドド
ドオオオオオオオン
10式戦車と96式装輪装甲車は小西行長の残存兵と島津の兵を正信の配下の兵と共に追い立てている
島津の軍勢は元々、正信の陣に攻撃を仕掛ける意思は無かったようで、戦車が攻撃をする前からとっとと戦線離脱を開始していたようだ
小西行長の残存兵たちも戦車の主砲弾や装甲車の銃撃によって壊滅しかけている
伊庭「戦は………決したか」
木村「はい。西軍各武将は逃走するか討ち死にしています。東軍の武将たちに三成敗走の伝令も出しましたし、そろそろ戦も終わるでしょう」
伊庭「…………………そうか」
関が原の各所から歓声のような雄叫びが聞こえてくる
おそらく戦闘に勝利した東軍の軍勢のものだろう
伊庭「これで俺たちの役目は終わりか」
木村「はい。戦車と装甲車を呼び戻して、それから残弾の確認を…………」
海野「小隊長!矢野2尉が意識を取り戻しました!至急こちらに来てください!」
木村の声を遮るように海野が伊庭を呼ぶ
伊庭「本当か!?」
木村「10式と装甲車への呼びかけは自分がしておきます。小隊長は矢野2尉のところへ」
伊庭「ああ。頼んだぞ木村」
木村「了解!」
ひとまずここまで
>>565 >>566
コメントありがとうございます!
矢も刀も鉄砲も通用せず、時速70キロで走り、さらに一度に数十人を吹き飛ばす戦車はこの時代ではチート
そういえばゲートのPV第2弾が公開されましたね
キャストも好きな人が多くて嬉しいです!
~正信本陣・医療用天幕~
正信の本陣内の一箇所に自衛隊の天幕が設営されている
主に通信基地と負傷者の収容に使われていたのだが、矢野はこの天幕で輸血を受けていた
伊庭「矢野。聞こえるか?」
矢野「…………ぅ。伊庭…………小隊長…………」
伊庭「よく帰ってきた」
矢野「……………」
簡易ベットの上で仰向けに寝かされている矢野の首筋には止血用のガーゼが何重にも巻かれていた
しかし、そのガーゼはほとんどが赤く染められている
海野「可能な限りの措置は行いましたが…………」
伊庭「……………」
素人目にしても矢野が助からないのは明らかだった
それでも伊庭は矢野に励ましの言葉をかけようとする
矢野「し……小隊長。じ………自分……は大勢の部下を…………」
伊庭「自分を責めるな。元はと言えば俺の立案した作戦だ。全責任は隊長である俺にある」
矢野「…………た……い長。俺は……本当は………歴史とか…………元の…時代とかどうでも良かったん………だ」
伊庭「……………」
矢野「俺は………俺に出来ることは…………戦闘……くらい…しか無かった………から。元の時代では………部下も上官も………俺…の戦闘能力……しか見ていなかった。お……れは人望……とか…そういうものに………憧れて…たんだ」
伊庭「矢野…………」
矢野「だから………あなたが……羨ましかった………んだ。何も言わなくても………部下がついてきてくれる……あ……なたに…………俺は嫉妬すらしていた」
矢野「この時代に………来ても…………それは…か……わらなかった。俺は……この時代に………来た事を…チャンスと………思っ……て必死に…戦った。指揮を……とろ…うとした。そうすれば………俺にも…………誰かついてきてくれる……と思ったんだ」
伊庭「お前………そんなことを考えていたのか」
矢野「だが………俺には……不可能…だ……った。結果的に大勢が死に…………。うっ」
伊庭「そんな事は無い!お前は自分の役割をしっかり果たした。それに部下だってお前のことを信頼し、そして…………」
バッ
隊員達「「 矢野2尉! 」」
伊庭「!」
天幕内に生存した隊員達が押し寄せてくる
彼らは矢野の容態を気にしたのだろう
三田村「2尉!しっかりしてください!」
加納「2尉!」
大西「矢野さん!」
矢野の指揮下にあった隊員達は矢野の元に駆け寄り口々に叫ぶ
矢野「…………そ……うか。はは………。この……時代に来て………少しは……報われ…………た……のか………」
そういい残して矢野は目を閉じる
そして、その目は二度と開かれることは無かった
伊庭「くっ…………」
三田村「……………」
加納「2尉…………」
大西「ううっ」
伊庭は動かなくなった矢野に対して敬礼をする
他の隊員もそれに習った
時刻は15時を回ろうとしている
宇喜多秀家、石田三成は関が原から撤退
他の西軍各軍勢も敗走し、勝敗は完全に決した
島津の軍勢も戦線離脱を成功させ、関が原の戦いは終結を迎える
討ち死にした武将、裏切りをした武将、戦線離脱をした武将
全て自衛官たちの知る歴史通りであった
細部が若干異なってはいたが、自衛官たちは見事に関が原の戦いを再現したのである
だが、彼らの仕事はまだ終わらない
関が原終了後も家康不在という歴史の穴を埋める為に自衛官たちは奔走することとなる
生き残った自衛隊員22名
残存している燃料弾薬は若干
その若干の燃料を使用して22名の自衛官は関が原を離脱後、東軍首脳と共に京都の伏見城へ向かった
西暦1600年・9月22日
伏見城
伊庭「残った燃料はあとどのくらいだ?」
木村「せいぜい200リッターってところですかね?」
伊庭「そうか。ではもう戦車や装甲車は動かせんな」
島田「…………………。ま、そうだろうな。主砲弾ももう無いし、整備も出来ないとなれば、もう戦車(こいつ)に用は無い。それに、戦車が活躍するような戦ももう無いんだろ?」
伊庭「まあ……そうなるな」
島田「俺は寂しいが………。こいつが活躍するってことは、また大勢の人が死ぬってことになっちまう。うん。やっぱ平和が一番だ」
木村「そうだな」
伊庭「戦車や装甲車をどうするかはまた後で考えるとしよう。弾薬はどうだ?」
木村「迫撃砲や対戦車弾はもう残っていません。榴弾の類は手榴弾が十数個あるのみです。あとは5.56ミリの小銃弾が1000発に10式戦車搭載機関銃が2丁あるってとこですかね。自分はこの戦で全弾使い切ってしまうだろうと思っていたんですが、案外残ってました」
伊庭「だが、もう大規模な戦闘は行えんな。それに東軍武将らに対して大きな発言が出来るほど強大な軍隊じゃなくなってしまった。どうするべきかね」
木村「正信さんが我々の立場は保証すると言ってくれたのでは?」
伊庭「正信だけでなく伊達政宗とか他の武将も我々を歓迎してくれると言っている。関が原は終わったが、この後も引き続き歴史の修復を行わなければならないから、東軍首脳に歓迎されている現状は俺にとってもありがたいよ」
木村「小隊長………。だいぶこの時代の人間っぽくなりましたね」
伊庭「…………………そうかもな」
伊庭はもう元の時代に戻ることを半ば諦めている
それは他の隊員も同じだ
中にはこの時代で生きたいと言う隊員も居る
その一人が県3尉だった
伊庭「とりあえずこれから東軍首脳と今後の方針について会議だ。俺の留守中、装備品の護衛を頼んだぞ」
木村・島田「了解」
今日はここまで
多分あと数回で終わるかと
大阪の陣も15年後だし、島原の乱に至っては37年後だしね。
海外だとそろそろ30年戦争あたりか?地球は戦争だらけだなあ
いかに関ヶ原が天下分け目の戦いだったかわかるな
そんなのが一瞬で終わるのが面白いところ
~伏見城内~
正信「そうか………利家殿が」
伊庭「利家………前田利家か」
県「……………」
上田城を攻めていた前田利家が戦死した
その知らせに東軍首脳たちはざわついていた
現在、伏見城では関が原後の方針を決定する会議が行われている
本多正信、伊達政宗、池田輝政、黒田長政、井伊直政ら関が原の戦いでも大きな役割を果たした武将たち十数名が揃っていた
自衛隊からは伊庭と県が参加している
伊庭と県はこの会議に参加する前にふたりだけでこんな会話をしていた
~回想~
県「そうか。正信が関が原に参加した為に正信が本来行うはずだった真田との戦闘を前田利家が…………。だから彼は生き残っていたのか」
伊庭「どういうことだ?県」
県「前田利家は関が原開戦前に亡くなっていたという話はしましたよね」
伊庭「ああ」
県「自分は家康の死や政宗の関が原参戦などの“歴史の狂い”は我々自衛隊がタイムスリップして歴史に介入したために起こったものと考えていました。しかし、それでは利家の生存は説明がつかない。利家が生きていた……ということは我々自衛隊がタイムスリップする前から歴史に狂いが生じていたことになります」
伊庭「確かにそうだ。では我々の存在は一体?」
県「これは自分個人の考えなので確証はありませんが、“自衛隊がタイムスリップしたことも歴史のひとつ”なのではないでしょうか?」
伊庭「それはつまり、我々がタイムスリップしたから歴史が狂い、それを我々が元通り修復したということではなく、我々がタイムスリップしてから再現した関が原の戦いこそが、元々我々の知っていた史実通りの関が原………ということか」
県「そうです」
伊庭はずっと自衛隊がタイムスリップしたことで歴史が自分たちの知っている教科書通りの歴史とは違うものになってしまったと思っていた
そして、その歴史のズレを修復する為に戦った
教科書に乗っているような元の歴史に戻すように戦ったのだ
しかし、県が言うには、自衛隊のタイムスリップでは歴史は変わっていないらしい
というよりも、自衛隊がタイムスリップしたことは史実通りで、歴史の規定事項だったというわけだ
狂った歴史を直そうとして史実通りに再現した関が原であったが、それは再現ではなく関が原の戦いそのもの
自衛隊の参加した関が原の戦いこそが史実通りの出来事ということだったのである
伊庭「そう考えると変な感じだな。俺が中学時代に歴史の授業で習った関が原の戦いは、俺たちが参加した戦いだった………ということだろ」
県「はい。我々の存在はこの時代にとってイレギュラーではなかったんです。我々がこの時代に来たことも正しい歴史だった………というのが自分の考えなんです」
伊庭「なろほどな。でも、仮にそうだとしたら何故、現代の教科書には我々の存在がしるされていないんだろう?それに関が原開戦の日時とか、参加武将は史実通りではなかったんだろ?」
県「それに関しては何とも言えません。ただ、まだ我々がこの時代に存在している……ということは…………」
伊庭「ああそうか。俺たちが俺たちの知っている史実通りになるように情報操作をするってことか。利家が死んでいたことにしたり、政宗が関が原に参加していなかったことにしたり。俺たち自衛隊がこの時代に存在していなかったことにしたり……………な」
県「ちょっと切ないですよね」
~回想終わり~
話は戻って伏見城内
政宗「勝った良いが、家康殿の件はどうする?」
輝政「戦中に病死したということにすれば…………」
政宗「それでは大阪に付け込まれるぞ。三成は捕らえたが、豊臣家は未だに存在している。家康の死を知ればまた戦になるであろう」
関が原終了後、少し経ってから石田三成は捕らえられた
打ち首は時間の問題だ
宇喜多秀家らも同様に捕らえられている
正信「影武者を立てたいが…………。しかし、今後の内政などを決める“殿”の存在無しに事は上手く運ばん。じえいたいはどう考える?」
伊庭「………………」
武将たちは伊庭と県を見つめる
正信や政宗のようにカンの良い人間はもう自衛隊が未来から来た存在だと気付き始めていた
県「理由は語れませんが、自分は家康殿の目指していた太平の世がどのような仕組みの上に成り立っているかを存じております。自分が家康役をするのは気が退けますが、家康殿の頭脳役なら出来るかもしれません」
政宗「なるほど」
輝政「鉄の車などを見せられているから、家康殿の考えを知っていると聞いたところで驚きはせん。が、やはり全てを信用することは出来ない。急に出てきて急に味方のなったおぬしらを信用するにはちと時期が早いように思える」
池田輝政の発言に何人かの武将が頷く
まあ無理も無いだろう
突如出現して、突如味方となった奇妙な集団をすぐに信用するほうがおかしい
それに自衛隊は各武将に自分たちがそこから何の為にやってきたのか、などの情報を一切公開していない
怪しい集団といわれればそこまでだ
伊庭「確かに、我々はあなた方にとって不可思議で疑わしい存在かもしれない。だが、我々も関が原では必死で戦った。それも事実です。我々にも大勢の犠牲が出ましたし…………」
武将「大勢と言っても数十名であろう」
伊庭「自分たちは元々、50名程度の集団でした。だから、数十名の犠牲は重いものです。我々は別に手柄や名誉や地位が欲しい訳ではない。我々が欲しいのは“平和”です。太平の世が欲しいだけです。ですからその為の助言をしましょう。ほとんどの武器を失った我々に出来るのはそれしかありません」
政宗「地位も名誉もいらぬ………か。まあ、仲間の命が第一のおぬしら“じえいたい”はそう言うであろうな。まあ、おぬしらが疑わしいのに違いは無いが、わしらは家康殿ほど“将来の設計”が出来ているわけでも無い。太平の世を築くための助言とあれば正直、喉から手が出るほど欲しいものじゃ。皆もそうであろう」
武将たち「「 ……………… 」」
正信「わしは“じえいたい”に絶対の信頼を持っておる。だから、おぬしらの知る“太平の世の築き方”も信用しよう。もし、この中で彼らを信用せぬ者がおれば今申し上げよ」
武将たちは沈黙したままだ
正信「ならば今から“じえいたい”は家康の頭じゃ。早速、これからの国のあり方を聞こうではないか」
~数時間後
三成や宇喜多秀家の処遇や豊臣家に対する圧力のかけ方、大垣城を攻めるかどうかなどを県主導で次々と決め会議は終了した
最初は疑心暗鬼だった武将たちも、県が出す案の(もっとも、県が発案したのではなく、ただ史実通りに事を運ぼうとしただけであるが)有用性に感心し、次第に彼を認めるようになっていた
伊庭は歴史に疎く、関が原以降の出来事は江戸幕府を作ることと大阪の陣程度しか知らなかったので、今後の内府の政策は全て県に一任している
会議で決定された大垣城攻めに自衛隊の残った装備が投入されることとなったので、伊庭は重火器並びに車両の整備を隊員達に命じる為に伏見城の一角に設営された自衛隊ベースへ足を運ぶ最中であった
伊庭(俺たちがこの時代に来てから半月か。もう半月………。いや、まだ半月と見るべきだろう。何せ我々にはまだやるべきことがたくさんあるんだからな)
城内の廊下を歩きながら伊庭は思う
伊庭(元の時代に帰りたくないと言えばそれは嘘になる。俺以外の隊員もそれは同じだろう。この時代の生活を気に入った県や島田は除くが。だが、俺はもう元の時代には帰れない事を悟っている。それは先程、県の言っていたように、俺たちがこの時代で史実通りの歴史を作らねばならないからだ)
伊庭(俺たちもそうだが、敵対したテロリストたちもまた、歴史の一部だった。未だに信じられないし、夢のような出来事の連続だった)
伊庭(我々が江戸幕府を作り、そして、その結果、400年後に我々が生まれた“あの時代”が誕生する。何だか可笑しな感じだが、嫌な思いはしない。あの時代がやがてしっかりと誕生出来るようにする、ということは我々のいた21世紀の日本を守るのと同義だ。俺たちはこの時代でも自衛隊として生き続ける事が出来るんだ)
伊庭(我々自衛隊の存在が歴史の闇に消えても、我々が作った歴史は消えない。俺たち戦国自衛隊は確かに歴史の中に存在したんだ!)
21世紀の日本の歴史書のどれを見ても、安土桃山時代の後期、1600年の時代に自衛隊が存在したということは記されていない
小中高の歴史の授業でも関が原の戦いは徳川家康と石田三成程度の人名しか出てこない
江戸幕府を開いたのは徳川家康と教えられるし、自衛隊という単語はどこにも無かった
だが、しかし
21世紀の日本はここに確かに存在している
21世紀に生きる日本人は“史実通りの歴史”を教えられ、知っている
誰もタイムスリップした自衛隊が過去の世界で活躍したことを知らないが、彼らが作り上げた“日本”はしっかりとここに存在しているのだ
これで本編は終了です
後日談をあとちょっとだけ書きますが、それでおしまいです
長い間ありがとうございました!
>>578
数百年前に比べたら戦争の数は劇的に減りましたよね
それでも戦争が0にはなりませんが
やっぱ平和が一番
>>579
関が原で何か時代が一区切りついたってかんじですよね
この後も大阪で大規模な戦いがあるわけですが
真田幸村出そうと思って出せなかったので後日談でちょっと出します
そういやこれ大坂の陣どうなるんだ?
後日談で書かれるのか?
隠蔽まで書かれるかと思ったけどさっくり締めたな
楽しかったよ乙
ひとまず乙
…もっと話広げてもええんやで
西暦1614年
徳川家康は豊臣家の財を減らし、その力を弱体化させようと策を廻らせていた
その策のひとつとして“寺院再建”があったのだが、再建後の方広寺の鐘に書かれていた国家安康の文字に家康は言いがかりを付ける
国と安という字が家康の名前を分断している、と
この些細なきっかけを元に徳川軍は大坂の豊臣に戦を仕掛ける
史実通り1614年に大坂冬の陣は始まったのだ
~12月3日 大坂城前~
徳川家康本陣
県「史実通りに事を進めて、大坂の陣も再現しました。前田利常の12000の兵など多数の部隊が現在、大坂城の陣を包囲しています」
伊庭「それも史実通りか?」
県「はい」
島田「あんだけの兵に囲まれたらもう豊臣も終わりだろ。大坂城外の砦は全て攻略してあるし、勝利も時間の問題だろ」
県「そう簡単に事は運ばないんだ車長」
島田「ん?」
県「今、こっちの軍勢が囲っているのは“真田丸”と呼ばれる陣だ。真田幸村って名前は知ってるだろ?」
木村「有名だな。真田十勇士とかなら俺も知ってる」
県「名前の通り真田丸は真田幸村……この時代では信繁か。彼が築いた陣なんだよ。幸村の策に前田の兵はかなりの犠牲が出る」
島田「は!?なら、今すぐ前田を助けにいかねえと!」
伊庭「島田。それでは史実通りでは無い」
島田「そっか。なんか嫌な感じだぜ。死ぬって分かってる連中を助けられないのはよ」
伊庭「そうだな。だが、我々は関が原以降そうやって歴史を作って来た」
この大坂の陣を仕掛けたのも自衛隊の工作によるものであった
県の助言を元に、家康の影武者が豊臣家に言いがかりを付けて戦を始める
そのほかにも自衛隊は数々の裏工作を行ってきた
ちなみに、小早川秀秋は1602年にノイローゼとなって死んでいるのだが、これにも自衛隊が関わっている
伊庭「まあ、この調子で事が進めば“切り札”は使わなくても住むかもな」
切り札
関が原で自衛隊の装備はほとんど無くなっていた
しかし、まだ若干の弾薬と車両は残っている
厳重に密閉して保管されているが、車両などはもう動かないかもしれない
それでも万が一の時はそれらを使うことを伊庭は考えている
島田「あぁ………俺の戦車…………」
木村「戦車も装甲車もスクラップになったからな。残ってるパジェロとかも廃車寸前。銃弾だって僅かにしか残ってない。ぶっちゃけ切り札って言うほどのものじゃないよな」
今、家康本陣に居る自衛官は皆、戦闘服ではなくこの時代の服装を身にまとっていた
隊員達はある者は知識を活かして武器開発をしたり、ある者は兵の指揮をしたり、ある者はただの商人をしたりしている
徳川家康(家康役には有能な家臣が選ばれた。性格や能力などを考慮し、東軍首脳たちと一緒に選んだだけあって充分に家康の代役を果たしている)の側で色々工作を行っているのは伊庭と県、それに木村と島田くらいなものだ
伊庭「ところでその前田利常に聞いた話なんだが、少し気になることがあってな」
木村「気になること?」
伊庭「ああ。彼が真田丸を攻めようとしていた時に真田丸に配置されていた武器が“見たことの無い形”だったというんだ」
県「まさか、またかつての我々みたいに現代の人間がタイムスリップして大坂側についたのですか!?」
島田「おいおい。マジかよ!」
伊庭「いやいや、そうではない。見たことの無い武器と言っても我々の持っていた近代兵器では無く、この時代でも作れそうなものだったらしい」
木村「この時代でも作れそうな?」
伊庭「そうだ。黒色火薬を用いたランチャー型の発射装置や地雷にも似た導火線着火タイプの爆裂弾だったりな」
木村「その手の武器なら根元や平井たちが江戸で開発してますよ。現に何回か実戦配備されてますし」
武器商人としてこの時代で働いている根本たち数名の自衛官はこの時代でも作れそうな簡単な迫撃砲やロケットランチャーの開発を行っている
あまり歴史に影響を及ぼすようなものは作るなと言ってあるが、彼らは伊庭の忠告を無視して武器開発を楽しんでいた
島田「なら俺たちの武器開発の情報が大坂に漏れたってことか?」
県「まあ、そういうことになるな。史実でも抱え大筒とか色々な武器が開発されて実戦投入されてたし。新たに近代兵器を持った組織がタイムスリップしてきたっていう可能性は低いだろう」
伊庭「……………だといいがな」
伊庭はそれ以上は何も言わなかった
実際、大坂の陣で近代兵器が出るようなことは無く、基本的には史実通りに全て終了した
ただ、最前線で戦っていた前田の兵たちは奇妙な現象が何度も起きたと後に語る
~12月4日~
前田の先遣部隊は12月4日、篠山の奪取をするために篠山攻めを行った
しかし、真田の兵は城内に退避が終了しており、前田軍の行為は無駄に終わる
史実ではこの後、真田の軍勢が前田の軍勢を挑発し、その挑発に乗った前田軍が真田丸に突撃
結果として前田軍は鉄砲で蜂の巣にされる
だが、“この歴史”では真田軍は挑発を行わなかった
挑発をされなかった前田軍は撤退をし始めようとする
雑兵「何じゃ。敵は皆、逃げておったか」
雑兵「とんだ無駄足だったわい」
雑兵「真田の兵はこんな肩透かしを食らったわしらをからかうかと思ったが………」
雑兵「真田丸の連中………。不気味なほど静かだ」
雑兵「飯でも食ってるんじゃないか?」
はははは、と笑い声が上がる中、それは起こった
ビシッ
雑兵「がはっ」
雑兵「!?」
急に飛来した銃弾が雑兵の一人を打ち抜いたのだ
その光景を見て慌てふためく兵たち
前線指揮を取る兵「皆の者!落ち着け!これは敵の攻撃である!やつらの沈黙はこの攻撃の準備だったのじゃ!」
雑兵「で……でもよ。真田丸からここまではまだかなりの距離がある………」
雑兵「そうじゃ。火縄銃が届く距離では無い」
前田の部隊と真田丸の距離はかなり離れている
とても火縄銃の有効射程圏内とは言えない
前線指揮を取る兵「…………わしらのなかに間者が居て、そいつが撃ったのか?しかし、発砲音は聞こえなかった」
雑兵「あっ!あれ!」
前線指揮を取る兵「!?」
夕闇に包まれた真田丸で何かが光っている
この場所に自衛隊員が居たらその光がマズルフラッシュの光であると分かっただろう
しかし、前田の兵たちはその光が松明の炎か何かだと思っていた
タタタタタタ タタタタタタタ
雑兵「!?」
雑兵「ぎゃっ」
雑兵「ぐあっ」
マズルフラッシュが光った次の瞬間、無数の銃弾が兵たちの身体を貫く
雑兵「なんじゃこれは!」
雑兵「逃げろおおおおお!」
この一連の攻撃によって前田の兵に相当な犠牲者が出た
マズルフラッシュや連続射撃音を確認した兵はほとんど銃弾に倒れ、“近代兵器”が牙を剥いた事実を伊庭達自衛隊員に伝える者は一人も居なくなったのである
~同時刻・真田丸~
真田幸村「前田の兵は壊滅。撤退したようじゃ」
???「そうですか。それなら良かった。これで徳川との和議に持ち込める確立が上がりましたね」
???「ああ。今の攻撃でこちらの残存火力をかなり使用してしまったが」
???「大丈夫です!俺たちの作った“ランチャー”や“地雷”があれば得意のアウトレンジ戦法がまた使える」
???「そうだな。で?この戦闘は史実通りなのか?」
???「自分は真田幸村の話だけは大好きで、よく本を読んでいたんです。だから大坂の陣は詳しくて………。本当は少し違うんですが、まあ前田軍が大損害するのは史実通りです」
???「そうか。良かった。大賀はどうしてる?」
???「また武器の開発をしています」
真田幸村の周りに集まった数人の男たち
彼らは関が原の戦いが終わった後、真田幸村の元に突然現れた者たちである
幸村は彼らに生まれや育ちを尋ねたが、彼らは彼ら自身のことを一切口にしなかった
彼らは自らのことを“真田十勇士”と勝手に呼び(人数は10人も居ないのに十勇士と呼んでいるのは疑問だ)そして、大坂の陣では新しい武器を開発したり、様々な戦術を使って次々に勝利を手にしている
真田幸村「おぬしらの目的は一体何だ?」
そう幸村は彼らに訊いたことがある
その質問に彼らをまとめる頭役だった望月という男はこう答えた
望月「我々はただ役割を果たしているだけです。ただ強いて言えば、我々の生まれ育った国を守る、いや、作りだす、というのが目的です」
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