モバP「世はまさにアイドル暗黒時代」 (54)
P「そもそも事務員からして薬事法?に引っかかりそうだったりするからなあ」
P「もちろんこの風潮を何とかしなければならない、っていう善意ある人もいるといえばいるけど。765さんとかそうらしい」
P「大抵はむしろこの時代にいかに同調するかっていう流れなんだよ。うちの事務所もそうだ」
P「そして俺もまたそれに流されてる人間の一人なんだよな。情けない話だが」
P「っと、外に気配。どうやら担当アイドルが出社してきたようだ。この時間って事は……」
P「>>2かな」
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桃井あずき
あずき「おっはようございまーす!」
P「おはよう。朝早くからお疲れ」
あずき「昨日は一応早く寝たから大丈夫だよ」
P「……一応? いつもはもっと遅いのか? ダメだぞ。美容とかそういうの明るくないけど、夜更かしはよくないんだろ?」
あずき「そうだねっ。けど仕事の具合によっては仕方ないって時もあるし」
P「? 何か用事でもあるのか?」
あずき「えっとねー」
あずき「副業?っていうのかな。あ、副業大作戦だねっ!」
P「……まあ。いまどきこのご時世、副業やってるアイドルなんてごまんといるからな。別にこっちの仕事に影響なければいいよ」
あずき「それが最近依頼がやっと落ち着いてねっ。だから少し余裕ができたんだ」
P「依頼……? 何か内職みたいなのをやってるって事なのか?」
あずき「うーん、まあ内職かな。家で全部やってるし。取引もメールとか郵便とかだし」
P「そうか。あずきは手先が器用なんだったっけ。確かご実家もものづくり系だったような」
あずき「呉服屋だよっ。もう、プロデューサーさんすぐ忘れちゃうんだから」
P「はははごめんごめん。どうも担当アイドルが多いとたまにごちゃごちゃになるんだよ。ほら、和菓子屋っていうのもあるだろ?」
あずき「あー」
P「さて、と。今日の現場は言ってあるよな。一人で平気か?」
あずき「タクシー回してあるんだよね? 向こうに行けば向こうのプロデューサーさんがいるだろうし」
P「うん。彼女に任せておけば安心かな。じゃあ行ってらっしゃい」
あずき「行ってきまーす」
P「……っと、あれ。おーい、あずき。何か鞄から落としたぞ。……ん?」
あずき「え? おおっと! ごめんごめんっ! ありがとプロデューサーさん!」
P「なんだこれ。……仁徳天皇陵侵入大作戦?」
あずき「あわわ。見ちゃダメだってばっ! いわゆるキミツ文書ってやつなんだからっ!」
P「仁徳天皇陵ってアレだよな。奈良あたりにある。確か高校とかで習ったような」
あずき「え、えーっと。そのお」
P「困ったときのスマートフォン、っと。…………!」
あずき「あわわわ」
P「とりあえずウィキペディアで調べたんだけどさ、あずき」
あずき「う、うん」
P「仁徳天皇陵、通称は大仙陵古墳。日本最大の古墳……」
P「宮内庁が調査のための発掘を認めていない、って書いてあるんだけどさ。侵入ってどういうことなんだ?」
あずき「えっとー、その」
P「そういえば前に奈良で泊まりでイベントがあったけど、関係あるのか?」
あずき「あー、うーん。まあ、関係ある……かなっ」
P「どういうことなんだ? よかったら聞かせてほしいんだが」
あずき「……プロデューサーさんならいいかなっ。えっと」
あずき「その時の自由時間にちょーっと見て来たんだ。あの古墳」
あずき「たまたまね。ほんと偶然なんだよっ? たまたま以来とイベントが重なったからラッキーって」
P「……その依頼ってなんなんだ?」
あずき「へ? いやだなープロデューサーさん。侵入大作戦☆って書いてあるでしょ?」
P「……? も、もしかししてあずき、その古墳に」
あずき「あ、ううん。私は侵入してないよっ! ただ下調べに行っただけで」
P「下調べ?」
あずき「そうだよっ。さすがにあずき一人で侵入はちょっと難しいかなっ!」
P「ひとり。……! ってことは……」
P「お前のやってる副業ってまさか……」
あずき「さすがにバレちゃったかなっ」
あずき「そう。あずきの副業はね、大作戦を考えてクライアントに買い取ってもらう仕事!」
あずき「その筋では有名なんだよっ! この前もちょっと宝石店から高級ダイヤモンド奪取大作戦!の企画書が……」
P「ちょいちょいちょい!」
P「普通に犯罪じゃないか! なんだよダイヤ奪取って!」
あずき「古墳を掘るのも犯罪だけどねっ」
あずき「とにかく……」
あずき「この副業、もちろん儲けもそれなりだけどね」
P(それなり、どころではないんじゃないのか……?)
あずき「なんていうかさっ。これは私のライフワークみたいなものだからっ! それに」
P「そ、それに……?」
あずき「依頼人は殆ど芸能界の先輩とか、お偉いさんとかが斡旋してくれてるんだよっ!」
P「なんと……」
あずき「とりあえずこの計画書は返してねっ。一応これだけでも結構な値段するんだからっ」
P(まさかあずきがそんな事をやっていたとは。悪気はなさそうだが……)
あずき「あ、もうタクシーのお姉さん来てるっ! じゃあプロデューサーさん、行ってきまーす!」
P「…………」
P「……」
P「これが暗黒時代か」
P「思えば最近、妙にワイドショーに上がるような派手目な窃盗事件だの、脱獄事件だのが多くなった気がする」
P「全部が全部あずきの副業とは限らんが……それこそ疑い出したらキリがないぞ」
P「も、もしかしてサツジンとか、そういうのに関わってないよな……?」
P「とりあえず、あんまり危険なのには関わらないように釘を刺しておかないといけないな」
P「……きっと言うこと聞いてくれないだろうけど」
P「っと、そろそろ次のアイドルが出社する時間だ」
P「えっと、>>15が来たかな?」
しき
志希「おっはよ~」
P「おう、おはよう志希。……」
志希「ん~、今日は台風一過で蒸し暑くなりそうだね~」
P(こいつは分かりやすいぞ……。まず間違いなくクスリの方向だろ)
志希「しっかし結構すごい台風だったね。あたしの部屋の植木鉢とかいくつかダメになっちゃったよ」
P(いや、クスリじゃなくともとにかくカガク的ななにかなんだろうな。うわあそういう話したくないわ)
志希「ちょっとキミ? 聞いてるのかな?」
P「お? おお聞いてるぞ」
志希「せっかく世間話とかしてるんだからさ~、相槌くらいはうってくれてもいいんじゃないかにゃ~?」
P「お、おうすまん。えっと台風で植木が、だっけか? それは大変だったな」
志希「そうそう!そうなんだ。おかげでベランダが土だらけだよ」
P「そりゃ大変だな。掃除はもうしてきたのか? あ、ああいうのは乾いてからの方がいいんだっけか」
志希「いやいや当然掃除してきたよ! 放っておいて流れ出たら大変でしょ~?」
P「…………う、うん?」
志希「いやね? 育ててる植物はいいんだけどさ~、養土の方はちょろ~っと人体にはヤバめの……」
P(人体でヤバけりゃ植物でもヤバかろうよ……)
大仙陵古墳は奈良じゃないんだよなあ
志希「あ、ところでちひろさんは?」
P「ちひろさん? 今日は休みだけど……? 台風あったから休日出勤してたんだよ。今日はその代休」
志希「代休かあ。じゃあ仕方ないにゃ~」
P「何か用事か? なんなら後で連絡しておくけど」
志希「いやいや! 大丈夫だよ! 別に急ぎの用事っていうわけじゃあないしね~」
P「そうか? まあならいいけど。あ、今からお茶入れるけど志希も飲むか?」
志希「貰う~。あっ、そうそう。冷蔵庫にコレ入れておかないと」
P「ん? なら立ったついでに入れてきてやるぞ」
志希「ヨロシク~。あ、ちひろさんのスペースにね」
P「了解っと」
P「麦茶っと。あと志希のこれな」
P「なんだこれ。薬ビン?」
P「なんか怪しいな……けどラベルとかないし、中身は分からないな」
P「ほい、麦茶」
志希「ありがと~。お、これはリンゴ風味のヤツだね?」
P「ああ。割と好評だったから買い足しておいたんだよ」
志希「ハスハス~♪ いい香り~」
P「ハハハ。中にはリンゴジュースの入ってたコップにそのまま麦茶入れたみたいとか言うヤカラもいたけどな」
志希「あ~、わかってないな~。このいかにもな感じが逆にいいのに~」
P(こいつは、ねるねるねるねとか色んな味まぜまくって大量生成とかしそうだもんな)
志希「さーてと。そろそろ行かないとかな? 麦茶ごちそーさん♪」
P「ああ。そういえば志希。さっきのビン、一応ちひろさんのコーナーに入れといたけど、そのまま置いといて平気だったか? 匂い移ったりとか……」
志希「へ? あ~そういうことか。大丈夫大丈夫! それ、基本的にはスタドリだから♪」
P「そうかスタドリ、スタドリ……?」
志希「うんうん♪ うちの大事な商品だからね~。安全は保証付きだよ。あ、でもさっきのは試作品だから飲んじゃダメだよ!」
P「そうか。スタドリは安全か。……ん?」
志希「最近、いろんなドリンクとかクッキーとか受注があってね~。といってもあたしはあくまで研究しかしてないけど」
P「ちょい。ちょい待つんだ志希。もしかしてちひろさんに頼まれて何かやってるのか?」
志希「頼まれて……? まあ頼まれてっていうか、注文?契約? 5年前くらいだったかな~。アメリカに留学してた時にそういう話が回ってきてね?」
※デレマスはサザエさん時空です
志希「確か2009年の11月頃までに量産に回したいとかいう話があってね。1年半くらいの開発期間だったけどなんとか完成したのが、そのスタドリね。あとエナドリ」
志希「ちひろさんが依頼人?だっけ。契約自体はけっこうテキトーに済ませちゃったからなあ。もしかしたら法人名義だったかも?」
P「…………」
志希「そうそう。アメリカ飽きて帰ってきた時にちひろさんに誘われてここに来たんだよ? いや~役に立つモンだよね。こういう縁って」
P「一応言っておくがな志希。エナドリはともかく……スタドリや他のドリンク・ブレッドは、一般には流通してないぞ。この事務所だけだ」
志希「まあドラッグストアーとかでは見たことないね」
P「そもそもエナドリだってあれは名前だけだったしな。俺も買って飲んでみたけど全然違う。口触りと味くらいしか同じじゃないっていうか」
志希「そうそう。それもあたしがアレンジしたんだしね~。効能は敢えて付けるなって言われたからさ~」
P「志希、これはちひろさんから直接受けた注文なんだよな?」
志希「え、うん。名義は忘れたけど」
P「で、ちひろさんが直接俺に販売してる……と」
志希「おやおや~? なんか汗が那智の滝のように流れ出てきてるよ? スンスン……」
P「嗅ぐな! いや、そんな事はどうでもいい」
P「あのさ、志希。エナドリとかスタドリなんだけど、これって大量に服用しても問題はないんだよな?」
志希「大量? それってどれくらいのことなのかな? 一日10本とか?」
P「……いや、その100本単位とか」
志希「100本? いやいや、それは普通にアウトだよ?」
P「ま、まあ健康には悪いよなあ。ハハハ名に聞いてんだろ俺」
志希「健康に悪いというか……あれ、一定量服用すると」
P「!?」
志希「……あっ。もうこんな時間だ。ごめ~んもう行かないと! じゃね~」
P「ちょ、ちょっと!」
志希「難しい話は帰ったらするから大丈夫だって! 行ってきま~す」
P「…………」
P「……」
P「なんというか……」
P「どの情報が最もブラックなんだっけ?」
P「スタドリとかを研究してたのが実は志希、っていうのか」
P「それともスタドリの成分の方か」
P「……いや、スタドリのナカミが怪しいってのは前々から分かり切ってたけどさ。でもちひろさんは別に飲みすぎについては何にも言ってなかったぞ」
P「しかしアイドルになる前も後も黒い繋がりがあったとは……」
P「……ふう」
P「と、とりあえずスタドリその他の扱いには十分気を付けないといけないのかもしれんな」
P「しかし志希は前からちょっとおかしい子だとは思ってたが、まさか本格的にそういう研究をビジネスにしてたとは」
P「っと、そろそろ次のアイドルが出社してくる時間だ。気持ちを切り替えねば」
P「次はたしか現場に同行だったかな。えっと>>29が来るはずだ」
幸子
幸子「おはようございます! カワイイボクが来ましたよ!」
P「……おお」
幸子「? なんですかPさん。ボクの顔を見るなりその緩みきったカオ……」
幸子「さては僕のカワイさに身も心も癒されちゃったんですかね! さすがはボク!」
P「あー、ある意味お前の言う通りだわー。癒される」
幸子「素直なのはいい事ですよ! けどそんなに時間もないですよね? さっさと現場へ向かいましょう!」
P「オッケー。じゃあ事務所は社長に任せて行ってくるか。行ってきまーす」
幸子「行ってきます!」
P「うわ、蒸し暑いな……エアコンつけとけばよかったよ」
幸子「そうですよ! こんなんじゃあ着く前にバテちゃいます」
P「若いんだから大丈夫だろー。それにお前は化粧とかもそんなにしないし。若いんだから」
幸子「まあボクは化粧しなくてもカワイイですからね!」
P「でもとりあえずゆっくりしとけー。奈良までは長いぞー」
幸子「どれくらいかかるんですか? 6時間とか?」
P「深夜で飛ばせば行けるかもしれないけど、さすがに日中で6時間は無理だなー。休憩も入れたいし」
幸子「分かりました! とにかくゆっくりしてますよ」
P「気分悪くなったりしたら言えよ。一応、最初のサービスで休憩するつもりだけど、トイレ行きたくなっても早めに言えー」
幸子「なっ! デリカシーがないですよ、プロデューサーさん!」
幸子「フンフンフンフフーン♪ フフフフフーン♪」
P「……ズイブンご機嫌じゃないか、幸子。後ろで何やってんだ?」
幸子「ええ、ちょっと内職ですよ」
P「内職? ……なんか嫌な予感するな。どんな内職なんだ?」
幸子「あれ、プロデューサーさん知りませんでしたっけ?」
P「うん? いや知らないよ。基本的にアイドルの私生活については聞いたりしないようにしてたからな。これまで」
幸子「これまで、ですか?」
P「ああ。ちょっと思うところがあってな。それで何なんだ内職って」
幸子「えっとですね……って、あ!」
P「?」
幸子「酷いじゃないですかプロデューサーさん! コレについて忘れてるなんて!」
P「忘れてる? いやだから聞いたことないはずなんだが」
幸子「いーえ! 事務所でだっていつもやってますし、それに公式プロフィールにだって書いてあるじゃないですか!」
P「プロフィール?」
幸子「そうですよ! アイドルの基本情報すら忘れてるなんて、プロデューサーさんは本当にダメですね!」
P「プロフィールって……ん?」
幸子「正直な話、ちょっと悲しいですよ。怒ってますよ、プロデューサーさん!」
P「なあ幸子。もしかして、趣味の欄と関係があるのか? ノートの清書だったか」
幸子「なんだ、覚えてるじゃないですか。信頼関係の危機でしたよ今のは!」
P「すまん……いや、清書? 清書が内職?」
P「……幸子」
幸子「はい。……って、ちょっとプロデューサーさん。なんでそんな人を憐れむような声をしてるんですか」
P「内職なんてウソ、つかなくていいんだぞ? 相談事があるならいつでも俺に言っていいんだから」
幸子「はい? 何言ってるんですかプロデューサーさん。そりゃまあ、悩みがあれば相談しないコトも……」
P「なんでもっと早く言ってくれなかったんだ! 学校でいじめられてるって!」
幸子「……はいいい!? イジメ!? このボクがですか!」
P「アレだろ? ノート写させろって言われてるんだろ?」
P「確かに大学とかで授業ノートを売ってる学生もいるらしいが、幸子はまだ中学生」
P「きっとカンニングぺーパーとかを作らされてるんだろう! お前友達少なそうだからなあ……」
幸子「し、失礼ですね! 違います、よ!!」
P「ちょ、シートを蹴るな! 事故るぞ!」
幸子「まったく、なんて情けないカンチガイをしてるんですか。ボクがそんな卑劣なタクラミに屈するわけないでしょう!」
P「お、おお。それは心強い。そうだ幸子。負けるなよ。友達がいなくても」
幸子「友達もいますからね?」
P「まあそれはともかく。それなら内職ってなんなんだ? ちゃんとした仕事なのか?」
幸子「当然です! まあカワイイだけじゃなくて多才なこのボクですからね」
P「泳げないけどな」
幸子「山梨に海はないんですよ!」
P「山梨にもプールはあるだろ……」
幸子「とにかく、あれは正式に依頼を受けてやってる清書なんです! それも普通の清書とは違うキワメて高度な清書なんです!」
P「高度な清書ってなんだよ……」
幸子「フフーン! それなら教えてあげますよ。いいですか?」
幸子「清書っていうとプロデューサーさんならきっと、ただ綺麗な字に直すっていうだけだと思ってますよね」
P「そりゃあ清書なんだから。綺麗に書くのが清書だろ」
幸子「まあそうかもしれませんけど。けどボクがやってるのはちょっと違うんですよ」
幸子「例えば、わざと癖を作って書くんです」
P「クセ?」
幸子「ええ! 依頼人からの指示によるんですけどね」
幸子「他には依頼人からいくつか資料を貰うんですよ。それでそれに従って書くっていうのもありますよ!」
P「資料ってなんだよ……」
幸子「手紙が多いですね。たまによくわからない文書とかもありますけど」
幸子「その手紙の文字の癖を真似て書くっていうのもあるんですよ!」
幸子「これが結構大変なんですけど。けどこのカワイイボク!だからこそできる仕事っていうワケですね!」
P「……ちなみに、これはどういう人から依頼を受けるんだ?」
幸子「依頼人ですか? ううーん、本当は秘密なんですけど……まあプロデューサーさんならいいですかね! シンライしてますしね!」
P「それはアリガトウ」
幸子「ううーん。でもさすがに住所と名前を知ってもどうしようもないですよね?」
P「まあそうだなあ……内容は?」
幸子「内容ですか? ああ清書の内容ですね。そうですね。例えば……」
幸子「なーんかムズカシイ……政治?の文書とか」
幸子「指定の日時までにお金を持ってきて下さい、とか……」
幸子「そういうのですかね!」
P「おおう……」
P「……と、とりあえずもうすぐ休憩だぞ。お昼もここで買っていこう」
幸子「え? 食べて行かないんですか?」
P「いや、混んでるだろうし。時間ももったいないし」
幸子「わかりましたよ……あ、じゃあ15分くらいしたら車戻ってきます」
P「15分? そんなに時間かか、ぐふっ!」
幸子「プロデューサーさんは本当にダメですね!」
P「おおう……またシート蹴られた。そして行ってしまった」
P「ところでこの残された内職途中の文書……」
P「…………これ、遺言書じゃあないか」
P「うう……これも普通に犯罪だあ……」
………
……
…
幸子「もう日が沈んでしまいましたね」
P「けどまあ渋滞に巻き込まれなくてよかったよ。新東名サマサマだなあ」
幸子「今日はこのまま現場に行くんですか?」
P「いや。今日のところはホテルに直行だ」
幸子「なるほど。でもホテルですか。奈良ですしてっきり旅館みたいなところかと思いましたよ!」
P「高いんだよ、そういう所は」
幸子「でも高いって言ったらボクたち二人で二部屋っていうのももったいないですよね。……ま、まあ? ボクは心が広いですからプロデューサーさんと相部屋でも別に」
P「ああ、そのホテルでもう一人のアイドルと合流だ。お前は彼女と同部屋な」
幸子「……ソウデスカ」
P「よーし着いたぞー。あー疲れたー」
幸子「お疲れ様です……ちなみに相部屋のアイドルってどなたなんですか?」
P「ん、明日一緒の仕事だろ? 忘れたのか?」
幸子「へ? あ、ああ。彼女ですか」
P「ああ。>>41だよ」
藍子
藍子「あ、早かったですね。プロデューサーさん、幸子ちゃん」
P「ああ、道路状況が予想より良かったからさ」
幸子「でもさすがに座りっぱなしって言うのも疲れましたね。さっさとお風呂入って寝ちゃいたいです……」
P(お前の場合は清書が問題だろう……)
藍子「お疲れ幸子ちゃん。お風呂なら地下に大浴場があるけど……」
幸子「さすがに行きませんよ。部屋風呂借りますね」
藍子「ごゆっくり~♪」
P「藍子は確か午前中にはホテルに着いてたんだよな? 何してたんだ?」
藍子「はい。せっかくなので奈良の街を散策してました。鹿さんかわいいです♪」
P「ああ、奈良公園の方?」
藍子「はい。それと興福寺の方から降りて行って、少し街並みを歩いてきました」
P「なるほどね。まあ古都とか言われるだけあって確かに散歩にはいいかもしれないな」
藍子「はい。……はあ」
P「……? どうしたんだ藍子。少し疲れてるんじゃないか?」
藍子「ま、まあ少しだけ……。帰って来たばっかりですし」
P「帰って来たばっかり? ずいぶん長い間外にいたんだなあ。お寺巡りとかしてたのか? それともどこかでゆっくりしてたとか」
藍子「いえ。ずっと歩いてましたけど……」
P「ずっと歩いてたって……どこまで行ってたんだ?」
藍子「えっと……とりあえず南の方に……隣の市まで」
P「歩き過ぎだろ……隣って事は大和郡山か天理まで歩いたのか」
藍子「でも疲れたっていう程じゃないんです。私、歩くの好きですから。趣味のところにも書いてますよね?」
P「……いや、近所の公園を散歩するのと、隣の市まで徒歩で歩き回るのとは違うと思うけど」
藍子「ふぅー……はい、もう大丈夫です。安心して下さいプロデューサーさん。後はぐっすり寝れると思いますから」
P「……! いや藍子、なんか顔が赤くないか?」
藍子「え? え、ああ。それはその、大丈夫ですよ。ほら、お風呂上がりですから」
P「嘘をつくな藍子。部屋着じゃあないし、髪の毛だって濡れてないじゃあないか」
藍子「でも大丈夫ですよ。いつも夜はこんな感じなんです。私、平熱高いですし……」
P「……そう言われてもなあ。無理をさせるわけにはいかないだろう」
P「……? なんかポケットから落ちたぞ?」
藍子「え? あ、ああこれはその」
P「ラベルが貼ってあるな……なになに、五石散?」
藍子「あっ……」
P「なんだこれ。市販薬、には見えないな。漢方のようだが……」
藍子「そ、それはあの。サプリのようなものでして……」
P「サプリ? プロテインとかそういうのってことか」
藍子「は、はい。その、私新作のテストをよくやってまして……」
P「テスト? って事はこれは治験なのか?」
藍子「い、いえ。治験よりもっと前の段階と言いますか。開発の段階、です」
P「な、なんて危ない事をしてるんだ……! もし何か副作用があったらどうするんだ!」
藍子「だ、大丈夫ですよ! ちゃーんと中毒が出ないように調整されてますから」
P「ちゅ、中毒……?」
P「ちょっと待て……五石散で調べてみるから」
藍子「え? あ、ちょっとプロデューサーさん!」
P「なになに……五石散。五種類の鉱物を混ぜたもの……不老不死の霊薬と信じられた……」
藍子「あわわわわ」
P「ただし中毒症状が発生するので発散させるために歩き回らなければならない……これが散歩の語源……」
藍子「あ、あの」
P「鉱物って……体に悪いに決まってるじゃないか!」
藍子「だ、大丈夫なんですよ。これは最新のカガクでちゃんと中毒の大半は中和されるので」
P「少しであってもよくないだろう。藍子、これはボッシュートだ」
藍子「こ、困ります……。これも仕事なんですから……」
P「ま、また副業か……もしかして」
藍子「今回の奈お仕事を紹介してくれた方関係の依頼なんです。なんでも東大寺正倉院・中国から伝わった宝物っていう企画に関係あるみたいですけど」
P「またそういう系か……」
P「け、結局藍子のクスリを没収できなかったぞ……」
P「参ったなあ……いざアイドルたちの裏の顔を聞いてみれば出るわ出るわ」
P「むしろ一番怪しい志希がまともに見えてくるレベル……」
P「これがアイドルの暗黒時代なのか……」
都「あ、Pさん!」
P「ん? 都じゃないか。到着は明日じゃなかったのか?」
都「それがですね。予定より早くカタがついたので来ちゃいました!」
P「予定ねえ……ここ数日はオフだったみたいだけど?」
都「はい! ちょっと大阪の方で、探偵の仕事の方を!」
P「……おお、まともな副業だ。いやまともか?」
P「探偵の方もちゃんとやってたんだなあ、キャラづくりは大事だぞ。感心感心」
都「えへへ……ところであのお。お部屋は空いてますか?」
P「ん? ああ、そうか。ここは二人部屋だから、幸子と藍子の部屋はダメだな。悪いけど一人……いや、藍子がひとりの方がいいかな。とりあえずもう一部屋」
都「えーっ? もう一部屋なんてもったいないですよ! ……そうですねえ」
都「ズバリ! 私がPさんと同室ならいいんですよ!」
P「はあ!?」
都「Pさんは一人で二人部屋を使うんですよね? なら私がそこに入れば問題ナシです!」
P「ば、バカ! ダメに決まってるだろ。それに声がデカ」
幸子「ちょっと、何を廊下で騒いでるんですか……」
藍子「あれ? 都ちゃん合流は明日って聞いてたんですけど」
P「あー、なんか早く来ちゃったみたいでさ」
都「はい。探偵の方がすぐ終わっちゃいまして。いやー、でも疲れましたよー。一周2.5キロですよ? さすがは世界最大級のお墓ですよねー」
P「…………ん?」
P「ちょっと待て都。お前、どこ行ってたんだ?」
都「へ? ですから大阪ですって。百舌鳥っていう駅から歩いてすぐの……」
P(そんな話、今朝聞いたぞ……?)
都「まあまあ! もう調べたデータは全部送りましたし!」
P(送り相手……心当たりがあるような、ないような……)
幸子「そうですよ! そんな事はどうでもいいんです!」
都「へ? いやどうでもよくは」
幸子「問題は都さんがプロデューサーさんと同室になるとかそっちの話です!」
藍子「そ、そうですよ。そんな事、風紀的によくありません!」
P(風紀とかこいつらには言われたくない)
P「でもまあ。こら都、今回ばかりは藍子たちが正しいぞ。俺とお前が同室なんて」
幸子「ここは一番年下のボクが同室になるべきだと思うんです! プロデューサーさんもそっちの方がイロイロと安心ですからね!」
P「うん?」
藍子「何言ってるの幸子ちゃん。間違いが起きてからじゃあ遅いんですよ。ここは年上の私が」
都「一番年上なのは私ですよ!」
P(おいおい……なんだこれは)
P(悪い気はしないが、いやいやいや! だがやはりここは止めねば)
P「お前ら……」
幸子「プロデューサーさん! 同室はボクですよね!」
藍子「プロデューサーさん、落ち着いて考えて下さい。ここは私が……」
都「いやいやPさん、よく推理して下さい!」
P「俺相手に枕営業なんてなに考えてるんだ! いくら暗黒時代とはいえ、そんなアイドルにした覚えはないぞ!」
幸子「え」
藍子「はい?」
都「へ……」
………
……
…
P「その後、彼女たちは顔を真っ赤にして3人同じ部屋に入って行った。まあ三人とも細身で小柄だし、ベッドをくっつければ寝れるだろうという事だ」
P「はあ、しかし運転もだけどなんか精神的に疲れたな……」
P「さて、と……俺の方も少しだけ、副業を済ましておくか」
P「なになに、機械に強い人物……確か人材リストにあったな」
P「いたいた。HNアキハ系さんね。彼に紹介メールを送ってくか」
P「次はっと。ふむ、神道に明るい……ああ、そういえば神社の家の人がいたかな」
P「これこれ。HN後藤マタベーさん。この人に転送しておこう」
P「最後は……書写の上手い人か」
P「んー、いたかな……あ、いたいた。HN輿水幸子……?」
P「なんだこれ。うちのアイドルにあやかってるのか? まあ書写というか、清書を趣味に打ち出してるしなあ」
P「まあ知名度が高いことはいいことだけど、あからさまに同名は困るなあ。ちょっと注意書きも添えて……送信、と」
P「ふう。今日の仕事斡旋依頼はこんなもんかな」
P「よし寝るかな……」
P「しかし嫌な時代だなあ。アイドル暗黒時代かあ」
P「どこかで諸悪の根源があるのかもしれないなあ。けど聞いた所、業界のかなり根深い層みたいだし……」
P「アイドル業界の未来が心配だ」
P「世はまさに、アイドル暗黒時代だ」
~おわり~
おしまいです。
ありがとーございました。
またどこかでお会いしましょう。さようなら。
>>21 し、知ってらい! 以前奈良から出かけたから間違えたってわけじゃないぞ!
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