提督「君は本日より第二艦隊を率いてもらう」 (70)

※本隊を率いる提督とは別の、普段ではいわゆる遠征部隊を指す部隊を指揮することになった名も無き妖精さんの物語

※第二次キスカ島撤退作戦が舞台

※このスレに登場する駆逐艦たちは選ばれなかったという劣等感からひねくれている子が多い

※わざとキャラに個性を持たせようとしたのでキャラ崩壊、設定崩壊多数

※基本的に胸糞注意

※不定期更新

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1412993168


大佐「舞鶴鎮守府中将将閣下傘下の第二艦隊に配属されたわけだが」

雪風「はい、私達はこれより駆逐艦隊を組織し、キスカ島における撤退作戦を行うのでしたよね」

大佐「ええそうです。・・・雪風特別准将殿」

雪風「准将殿はやめてください大佐」

大佐「そうは言いますがね、准将殿。あなたは提督麾下の秘書艦であり、歴戦の武勲艦であらせられる」

雪風「本日よりしばらくはあなたの部下であり、あなたの艦でありますよ、『艦長』。 司令はあなたのことを大変高く買っておられます。もちろん私も、あなたのことは信頼していますから」

大佐「勘弁して下さいよ、私はあなた達を使うようなド外道にはならないつもりだったというのにこのザマです」

雪風「ええ、『噂』はかねがね。旧式艦隊を率いてあれだけの戦果。『わたしたち』を指揮すればどれだけの」

大佐「わかってますよ。お国のため、ひいては陛下のため、・・・と、つきましたよ雪風殿。駆逐艦娘宿舎です」

雪風「はい。大佐も、ここに一歩足を踏み入れた瞬間から私とあなたは友人ではまかりなりません。覚悟のこと、よろしくお願いします」

大佐「・・・わかってますよ」

雪風「・・・大佐?」

大佐「わかっている。・・・一先ず艦娘たちを集めて、おん?」

朝潮「舞鶴鎮守府第二艦隊旗艦、朝潮であります。大佐殿、提督着任のこと、まことにおめでとうございます。我々駆逐艦娘一同より代表して、失礼ながらお出迎えに参りました」

大佐「あ、あぁご苦労。これからよろしく頼むよ」

朝潮「はっ」ビシッ

大佐「・・・」

霞「・・・ふーん、あんたが新しい司令官? あの屑とどう違うのかしら?」

雪風「ちょっと!?」

大佐「いいから。・・・君は?」

霞「霞よ」

大佐「霞?」

大佐(駆逐艦「霞」ね。そうか、この娘が山名艦長の)

霞「なによ、言いたいことがあるなら目を見てあででででで」

朝潮「霞!! 申し訳ありません大佐」

大佐「いい、山名さんには私も世話になった」

霞「・・・ちっ」

雪風「大佐は長旅でお疲れです。一先ず執務室へ」

朝潮「はい。ではこちらへどうぞ」

宿舎廊下


大佐「・・・」スタスタ


ヒソヒソ
ヒソヒソ


――あいつが新しい提督?

――よりによって駆逐艦隊配属なんて、ロリコンじゃないの?あれ

――あはははは、あいつの部下ならそうよきっと


雪風「・・・」スタスタ


ヒソヒソ
ヒソヒソ


――ねえ、あれって

――うん、死神でしょ?

――司令官のお気に入り、第一聯合艦隊の旗艦様がなんのようだろうね

――大方、左遷じゃありませんか。飽きられたとか

――あーだからあんな顔してるのかな


大佐(駆逐艦は肉体的にも精神的にも幼いとは聞いたが、これではまるで吹き溜まりだな)

朝潮「・・・申し訳ありません大佐」

大佐「いや、いい。・・・噂には聞いていた」

朝潮「彼女たちは編成の外の駆逐艦です。・・・私から彼女たちに何か言う事はありません」

大佐「わかっている。何も言うな」

執務室


大佐「さて、朝潮、・・・雪風」

朝潮「はい」

雪風「なんでしょう」

大佐「改めてよろしく頼む。第二次北方海域キスカ島救助作戦は私が指揮するが、異存ないな?」

朝潮「勿論です」

大佐「編成に関しては全権を持っているが、私から何か特別な変更は加えない。が、緊急を要することから、熟練度の高い艦を優先する。現状最も練度の高い雪風の代わりに誰かに外れてもらうことになるが、異存あるか」

朝潮「・・・いえ、ありません」

大佐「旗艦についてだが、先に言った通りだ。いいな雪風」

朝潮「・・・」ギリッ

雪風「はい。現旗艦、朝潮の指揮下に入ります」

朝潮「・・・えっ?」

大佐「いいな、朝潮」

朝潮「は、はっ! 光栄であります、大佐!」

大佐「よって、旗艦朝潮以下、雪風と、島風、改二への改装予告のあった夕立、綾波、時雨だ。現編成で外れることになった霞には私から伝える。いいな」

朝潮「・・・了解であります」

大佐「じゃあ雪風、済まないが霞を」

霞「ここにいるわよ。勝手にすればいいわ」

朝潮「霞、盗み聞きは」

大佐「いいから、・・・雪風、朝潮、貴様らは下がれ」

雪風「ですが」

大佐「下がれ」

雪風「・・・はい」




大佐「・・・さて」

霞「・・・なによ」

大佐「練度で言えば、夕立よりは君のほうが高い」

霞「・・・ああそうね」

大佐「いや、君だけではない。他に数名練度だけで言えば近似値である艦がいると報告がある」

霞「言いたいことがあるならはっきり言いなさいよ」

大佐「正確には君、潮、響の三名だ」

霞「・・・いい事教えてあげるわ。その三人がなんて呼ばれていたか知っているかしら?」

大佐「死に損ないだったか、結構じゃないか。実はわたしは、その三人とあと三隻の駆逐艦を加えた編制を考案している」

霞「スペア?」

大佐「そうだ。・・・ここだけの話な、現第二艦隊は目立ち過ぎる」

霞「本隊。・・いえ、第一聯合艦隊は陽動だと聞いたけどそれでも足りないっての?」

大佐「そうだ。特に雪風は元々第一艦隊の旗艦。そこにその姿が見えなければ敵も陽動を警戒するだろう」

霞「はん、旗艦があの屑のお気に入りじゃなくてあの優等生なのはせめてもの目眩ましってわけね」

大佐「ああ、だがそれだけではなく、任務に忠実な朝潮が旗艦なのは『入れ込ませる』ためだ」

霞「ふん、あいつならまぁそうでしょうね」

大佐「おそらく彼女は頑張り過ぎる。よって退き際を見失う可能性がある。私は提督から、彼女たちのストッパーの任を受けた。中破でも進軍させることはない」

霞「見えてきたわ。前大戦で象徴的な活躍をしたあいつらをわざわざよりすぐった理由。あんた、私達から捨て駒を選ぶつもりね」

大佐「そうだ。第二聯合艦隊本隊とは別に君たちは駆逐隊を編制し、被害を顧みず進軍してもらう。・・・勿論、むざむざと玉砕させるつもりはない。我々も可能な限り奮戦するし、救援のための艦隊も追って編成する」

大佐「だが私の指揮を離れる以上、何が起こっても責任は取れない。そもそも、許可が下りなかったから、これは私の独断だということになる。提督には出来うる限り真実を伝えるが、君たちは待機命令を無視し独断で出撃した。と、表向きには処理されるだろう。その責を負う役目は、君にお願いしたい」

霞「そう、そのための『死に損ない』と、『私』ね」

大佐「そうだ」

霞「ふーん、・・・誰が考えたのかは知らないけど、素敵な作戦ね。反吐が出るわ」

大佐「残りの編成は君にお願いしたい、が。・・・できうる限り内密に頼む」

霞「言われるまでもないわよ、ったく…どんな采配してんのよ…本っ当に迷惑だわ!」

大佐「なんとでも言ってくれ。私からは以上だ」

霞「・・・失礼するわ」

霞「・・・」ガチャ

霞(・・・)スタスタ

食堂

ガヤガヤ

雪風「・・・」ポツン

霞「ふんっ」ドカッ

雪風「・・・」

霞「・・・」ガツガツ

雪風「・・・あの、雪風になにか御用でしょうか」

雪風「・・・」キョロキョロ

雪風(・・・あなたは、私に構っている場合ではないでしょう?)ボソッ

霞「なによ、いきなり情報漏洩? 栄光の第一聯合艦隊様の軍規はどうなっているのかしら?」

霞(やっぱり知ってやがったのね)

雪風「申し訳ありません。・・・ですが」

霞「同情してるつもりかしら? 言っとくけど、寿命が伸びてせいせいしてるわ。かの死神様も人助けをするのね」

雪風「は? いや、あなたは」

霞「・・・」ジロッ

雪風「・・・」ビクッ


霞「勘違いしないでよね! 私、あんたを認めたわけじゃないから!」ガチャン!

雪風「・・・っ?」



ザワザワ

――見てよあそこ、霞が死神様に因縁つけてるわよ
――ぷっ、外されたのがそんなに悔しかったのかしら
――あはは、いつも偉そうにしてるからよ、いい気味だわ


霞「覚えてなさい、いつかあんたより武勲をあげてやるから。靖国で待ってなさい」

雪風「・・・私は、雪風は沈みません」

霞「・・・ふん」

雪風「・・・」チラッ

ザワザワ
ザワザワ

雪風(・・・・・・)

霞「というわけだから、あんたたち、死んでも悔いはないかしら」

響「わざわざ集まって何を言うかと思えば、それはわざわざ答えなければいけないのかい? 提督からおおよそのことは聞いているさ」

潮「・・・」オドオド

漣『あなた達は死なないわ。私が守るもの』

朧「お、朧に異議を唱える理由はありません。む、むしろ感謝しています」

曙「・・・」

霞「結局、新旧第七駆逐隊で集まっちゃったわね」

曙「・・・なんだってのよ」


霞「なに? 言いたいことがあるなら目を見て言いなさいな」

曙「なんであんたがリーダー面してるのって言ってんの」

霞「あん?」

漣『おいおい、早々に喧嘩かい? 仲がいいねまったく』

曙「あんたその、括弧付けて喋る癖やめなさいよ。イライラするから」

漣『拒絶。私のアイデンティティを否定される覚えはない』

曙「あんたのそれは借り物でしょうが」

漣『そうとも言うにゃー』

霞「まぁいいわよ。今更あんたのクソみたいな個性に文句つけたってしょうがない」

響「そう。死に損ないにお誂えたような死地を用意してもらえたんだ。今更何を言ってもしょうがないさ」

曙「そうね、死ねって言われたんだから命令通りにするまでよ。おかげさまで気持よく死ねそうだわ」

霞「なによ」

曙「やる気?」

潮「や、やめて・・・」

曙「ちっ、あんたも、足引っ張ったらころすわよ」

潮「う、うん。私、頑張るから」

朧「・・・」スクッ

曙「どこ行くのよ。言っとくけど、訓練のし過ぎで負傷退場なんかさせないから」

朧「そ、そ、そんなことしない。お、朧はできるだけのことを、し、しようと思っただけ」

曙「どうだか」

霞「吃りに電波にうじ虫にキザにくそガキってね。まったくあの新しいのも面倒くさいのを押し付けてくれるわ」

曙「あ? ふざけんじゃないわよ。あんたが呼んだんでしょうが」

霞「あ? 文句あんの?」

曙「やってやろうじゃないの」

潮「お、お願いやめて・・・」

響「やれやれ」

漣『胸くその悪い人選だってばよ』




雪風「ここにいましたか」

時雨「やぁ、雪風ちゃんじゃないか。聯合艦隊での活躍、僕も伝え聞いているよ。くっくっ。あやかりたいものだ」

雪風(・・・心にも無いことを)

雪風「大佐より軍議への召集がかかっています。至急、執務室へ来てください」

時雨「いい雨だね。この分だと明日は霧が出るだろう」

雪風「・・・時雨さん」

時雨「霞たちがね、何か焦っているように僕には見えるんだ。君はなにか知っているのかい?」

雪風「いえ、・・・なにも」

時雨「そうか。それなら僕もなにも聞かないよ」

雪風「・・・」

時雨「・・・ぼかぁね、さっさと解体処分されて、こんな戦争からはさっさとおさらばするのが夢なんだ」

雪風「時雨さん、その発言は」

時雨「君も朝潮のようなことを言うんだね。なに、僕はただ早くこの戦争を終わらせたいだけさ」

雪風「・・・非国民の敗北主義者め」ボソッ

時雨「おおこわいこわい。対して君はずいぶんと戦争熱心だね。まだ仲間の死に様を見足りないのかい?」

雪風「雪風は、・・・あなたのことが嫌いです」

時雨「僕は雪風ちゃんのこと好きさ。けど、君にだけは負けたくはないね」

雪風「殊勲賞でも欲しいのですか? それはあなたらしくないですね」

時雨「まさか、僕は先の大戦で誓ったんだ。誰よりも長く生きるってね。。・・・さぁ早く行こう。司令官が待っているのだろう?」

小休止します


島風「あー!やっときた! 二人共おーそーいー!」

時雨「やぁごめんごめん。君は早いね」

島風「あたりまえだもんね! だって島風はいちばん!」

時雨「そうかい。じゃあ今度の作戦でも一番の戦果を期待してるよ」

島風「べーっだ! 時雨に言われなくても私は一番なんだもん!」

綾波「私だって負けませんよ。・・・特に雪風さんには」

雪風「わ、私だって」

夕立「夕立は~、とにかくはやく終わらせて観たい番組見たいっぽい」

朝潮「み、みんな静かに! 今から指令より作戦行動の指示があります! あ、時雨さん窓際にいかない! 夕立さんは起立してください!」

時雨「わかったよ委員長」

夕立「ほーい」

島風「いいんちょー、私にはなにか言わないの?」

朝潮「いいから静かに!」

大佐(さすがにこの娘たちは戦意が高いのか、なんとも重畳なことだ)

時雨「どうしたんだい司令官、軍議だろう?」

大佐「わかっている。・・・では朝潮、作戦の概要を頼む」

朝潮「は、はい! こほん。ほ、本作戦においては・・・――」

大佐(朝潮くんにしても期待通りだ。この分なら大丈夫だろうか)

大佐(・・・さて)

朝潮「――つまり、あ、し、指令、どちらに・・・?」

大佐「先程君に行ったとおりだ。他の駆逐艦を遊ばすわけにはいかない。非常事態に備え、今日、臨時に大規模な演習を行おうと思っている。私はその通達にいく」

時雨「大規模な演習だって?」

大佐「そうだ。明日も行う、が、明日は君たちのみ実弾装備で秘密裏に演習を離脱。そのままキスカ島へと向かってもらう」

時雨「へぇ? まぁ、了承したよ」

朝潮「で、ですが指令! この軍議は!?」

大佐「君に伝えた作戦を改めて伝えようと思っただけだ。君に任せたよ」ニコ

朝潮「は、はい!!!」

大佐「では失礼する」

講堂


大佐「よく集まってくれた。君たちに集まってもらったのは他でもない。本日と明日の二日間、大規模な特別演習を行う」

大佐「本日の演習で特別な勲功を上げた艦で編制し、明日の作戦にて有事の際後方支援を行ってもらう」

ガヤガヤ
ガヤガヤ

霞「・・・」

曙「・・・」

不知火「指令」スッ

大佐「なんだ」

不知火「それは私達の中からもう一部隊を編制するということでしょうか」

大佐「そうだ」

不知火「実戦に?」

大佐「表向きは演習だが、可能性はある。が、作戦の性質上約束はできない。本隊の作戦が滞り無く成功した際は何事も無く演習を終える」

不知火「・・・了解しました」グッ

ザワザワ
ザワザワ

大佐(効果の程は、半々か。少しだけ目に光が宿った艦が数隻)

大佐(・・・)チラッ

不知火「・・・」ジッ

霞「・・・」ギロッ

大佐(・・・やれやれ、これは刺されるかもな)


執務室


コンコン

大佐「入れ」

霞「失礼するわ」ガチャ

大佐「よく来てくれた」

霞「よく言うわ、あんたが呼んだんじゃない」

大佐(・・・視線を送った程度だが、優秀なことだ)

大佐「そうだったな。不知火も来ているか?」

霞「あ? 用があるとかで、部屋の外で待ってるわ」

大佐「そうか、期待通りだ。では彼女も呼んでくれ」



不知火「お呼びでしょうか」

大佐「ああ、実は――」


演習場

ワー
ワー

「い、電の本気を見るのです!」

「ちょ、ちょっと電! 先行しすぎ!」

「もろたでぇ!」

「敵艦撃沈、次だ」


大佐(士気の高い者とそうでない者の差が激しいな。内気だと聞かされている者が頑張っているのは、・・・大方解体処分されることを恐れているんだろう)



深雪「どわぁあああ、また演習でぇええええ!?」

朧「敵艦撃沈!次!」

響(朧、頑張りすぎだよ。君がMVPに選ばれてどうする)

朧(で、で、でも。お、朧は)

潮「朧ちゃん! 響ちゃん!うし――」

不知火「沈みなさい」

朧「あっ!?」

響「くっ・・・!」

朧「・・・ぐっ、まだ、まだよ、沈まない!」

響「いいから、私達はここまでだ」

不知火「・・・」チラッ

――ゆ、油断してる。今なら・・・!

不知火「・・・」

――この、いつもスカしてんのが気に喰わないのよ・・・!

不知火「う、ぁっ・・・!」

「あ、当たった! ほら、さっさと退きなさいよ」

不知火「・・・わかりました。・・・・・・覚えてなさい・・・!」

「ひっ、な、なによ!」

不知火「・・・なんでもないわ」ギュッ


大佐(うん、首尾良く予定の艦は大破撤退したか)


――

不知火「――つまり、この演習は出来レースと、そう仰るのですね」

大佐「そうだ。私が構想している隊は『四隊』。朝潮率いる第二艦隊本隊と、予備隊。そして君たちの率いる第七駆逐『連隊』」

大佐「本隊は予定通り演習中に離脱。第七駆逐隊は明日の演習にて撃沈後、高速修復剤にて治療、換装のち出撃してもらう。そして彼女たちを撃沈するのは」

不知火「私ですか。・・ずいぶんと、手のこんだことをされるのですね。件のスパイ対策、ですか?」

大佐「そうだ。・・・霞、第一艦隊の情報は?」

霞「風のうわさよ。最初はそうかもしれないから始まって、今、それを疑う者はいないわ」

大佐「本来ならば漏れる筈のない機密だ。警戒するに越したことはない」

大佐「・・・もし、万が一。霞たちの存在が露呈した場合に備えて、後ろから付いて行くのが不知火率いる別動隊だ」

霞「私達がもし気付かれたら、散々暴れてやればいいのね。その隙にそこの根暗が作戦を遂行する」

大佐「そうだ」

不知火「お言葉ですが、指令。その作戦は賛同できかねます」

大佐「この件に関しては異議の申立ては許さない。勿論、拒否も認めない」

大佐「本隊が敵部隊と交戦した際は救援部隊が出撃し、出来うる限り引き付けながら交戦のち撤退。後は先程説明した通り」

大佐「君たちの練度は少々心許ない。まともに交戦しては勝てないだろう。・・・が、数はいるのが我々の強みだ」

不知火「しかし・・・!」

霞「いいからあんたは、いつもみたいにスカした態度で黙って行動すればいいのよ。決まったことよ」

不知火「・・・」

大佐「これらがもしも杞憂であるならば、本隊によって作戦は完遂される。念のためだ」

不知火「・・・了解であります、大佐」

――


大佐(私から彼女たちにかけられる言葉などなにもない)

大佐(・・・提督、見ていますか? 私は、なんと後ろ指をさされようと、この作戦は完遂してみせます)

とりあえずここまで
続きはモチベーション次第で今日になるか明日になるか

再開します。
が、同時進行でリメイク版の構想も練ってあるのでこのスレが完結するのが先か
結局このスレを落とすのが先かはリメイク版の進み次第でお願いします


――

大佐「みな、ご苦労だった」

大佐「諸君らにとって演習とはいえ実戦形式での戦闘は久しぶりだろう」

大佐「特殊な調整を施されているとはいえ、諸君らの背負う艤装は体への負担が大きい」

大佐「今日はゆっくりと休養を取り、また明日の演習に備えろ。――以上だ」

大佐(・・・)チラッ

――ね、ねぇ誰が選ばれるのかな

――な、なに? 期待してるの?

大佐(・・・・・・)

――


陽炎「納得いきません」

大佐「旗艦初霜以下、夕雲、長波、秋雲、若葉、五月雨の編制で決定した。選考基準は先程説明した通りだ」

陽炎「ですが不知火は第七駆逐隊他多数の艦を撃沈しています。彼女が選ばれない理由をお願いします」

大佐「何度も言わせるな。それとも分かるように説明したほうがいいのか。・・・いいだろう、要するに、生き残ったもの勝ちということだ」

大佐「勿論、戦果もいくらかは考慮してある。最後まで生き残った中でも、その為に選考を外れた者もいる。が、それでも早々に脱落した者には任せられん」

陽炎「・・・この部隊の任務は救出ではなく救援であると認識しています。よって、速やかに敵を排除する必要があると思われます」

大佐「彼女なら出来ると?」

陽炎「はい」

大佐「そうか、まぁ、気持ちはわかる。君が仲間思いであることもわかる。が、それは少し違うんじゃあないか?」

陽炎「・・・」

大佐「いいか。この部隊の救援対象は第一艦隊旗艦雪風を加えた精鋭部隊だ。彼女たちが進軍不可となる程の損害を被る相手に一人で勝てると君はそう言っている。それをわかっているのか」

大佐「君が彼女をかばう理由はわかる。が、感情論で勝てる程甘い相手ではない。異論あるか」

陽炎「・・・いえ、ありません」

大佐「この隊の目的は敵を殲滅することではなく、生き残ることだ。・・・むざむざと玉砕させるような真似はさせられん」

陽炎「・・・不知火なら大丈夫です」

大佐「そうかもしれん。だが、それを判断するのは君ではない。異論あるか」

陽炎「・・・ありません」

大佐「他になにか質問はあるか」

陽炎「・・・あり、ません」

大佐「では下がれ」

陽炎「・・・はい」ギュッ

大佐(むざむざと玉砕させるような真似はさせられん、か)


コンコン

霞「いるんでしょ? 入るわ――」

陽炎「・・・」

霞「・・・」

ガチャン

霞「・・・」

提督「どうした」

霞「泣かしたわね?」

提督「それがどうした」

霞「ふざけんじゃないわよ。・・・ああそうそう、今回の作戦ね、私一人に任せなさい」

提督「何を言っている」

霞「どうせ人員救助用に旧式の艦隊を引っ張ってくるんでしょ? だったらそれで隊を組めばいいじゃない」

提督「・・・確かに君たちは何らかの方法で数百人もの人間を輸送しなければならないし、その方法として旧式駆逐艦を選んではいたが」

提督「・・・霞くん、君は――」


コンコン

提督「入れ」

霞「ちょっと、話はまだ終わってないわよ!」

雪風「駆逐艦雪風、入ります」

霞「・・・死神様がなんの用かしら」

雪風「指令。私を、第七駆逐隊に配属してください」

霞「・・・はぁ? あんた何言って」

提督「・・・」

雪風「雪風は沈みません。ならより危険度の高い任務の方が適当かと」

提督「・・・君が、いや」

提督「雪風殿、・・・あなたが第七駆逐隊に入ったとして、誰が本隊に移るのですか?」

雪風「霞さんをお願いします。彼女なら妥当です」

霞「ふざけんじゃないわよ! あんた何を勝手に言ってるの!」

提督「それはできません」

雪風「お願いします。内容は先程あなた達が言っていた通り、私一人で充分です」

提督「・・・提督は、あなたたち二人ががそう言い出すのをわかっていました。もちろん、私も」

雪風「だったら!」

提督「だからこそ、あなたには本隊にいてもらわなければならない」


「その通り、君は君の仕事をすればいい」


響「やれやれ、どうも信用がないね。水臭いじゃないか」

曙「・・・あんた達なんか信用できないわ。私がいないと何しでかすかわかったもんじゃないっての」

漣『英雄様は黙って陽の当たるところにいればいいのよん。自己犠牲的なヒーローはこれだから困っちゃうのね』

朧「し、し、心配しないで、み、みんなは、・・・朧が守りますから」

潮「・・・ありがとう、霞、雪風さん。わたしたちは大丈夫ですよ」

雪風「で、ですが」

霞「あんたたち! わかってんの!? 死ぬのよ!?」

響「だったら、何も言わずに一人で行ってしまえばよかったんだ。大丈夫さ、不死鳥の名は伊達じゃない」

曙「巻き込んだんだから最後まで責任取りなさいよ」

漣「そんなにガクブルしてないよ。英雄様が頑張ってくれるんでしょ?」

響「その通り、君たちが十分に引きつけてくれていれば作戦に支障はない」

雪風「それは、・・・そうですが」

漣『じゃあ平気。それでなくてもヒーローは遅れてやってくるって相場は決まってる』

霞「・・・あんたたちも私も、ヒーローってがらじゃないわね」

曙「失敗したらただじゃおかないから」

提督「・・・作戦に変更はない。いいな」

雪風「そんな・・・」

霞「・・・ちっ、なんだってのよ。馬鹿ばっかりなんだから。いいわ、失礼するわよ司令官」

提督「ああ」

カチャ、パタン


提督「・・・」

雪風「・・・」

提督「・・・雪風殿、私は自分がわからなくなります」

雪風「・・・」

提督「恨まれるものと、そう思っていました。最悪、脅しをかけてでも、彼女たちに命令しようと」

雪風「彼女たちは」

雪風「・・・死なせたくありません」

提督「・・・」

雪風「作戦に修正はありませんか。なんとかして」

提督「・・・」

雪風「・・・いえ、辛いのはあなたも一緒ですね」

雪風「失礼します、大佐。・・・私はあなたを信じます」

カチャ、パタン

大佐(提督、私は・・・――)


雪風「・・・」

霞「お、やっと出てきたわね?」

雪風「・・・」

霞「なんて顔してんのよ。あんた、私を追い出していいとこ取りするんだからもっとふてぶてしい顔をしてなさいな」

霞「ついてらっしゃい。あんたにはやってもらわないといけないことがあるのよ」ニヤッ

雪風「・・・勿論です。私にできることなら、なんでも」

雪風「・・・申し訳ありません。それでアガリです」

「どええええええええええ?? まだ二周目、ってかそれあんたがさっき捨てた牌じゃん!!」

霞「あーらら、見事に飛んだわねぇ? いやいや、ツイてないわね」

「ふっざけんな!! てゆーか霞がやってんじゃないじゃない!!」

霞「私がこいつに代打ち頼んだんだから私の勝ちよ。ねぇ、死神ちゃん?」

雪風「は、はぁ・・・?」

「うがー! 霞が負けてるからって逃げ出したの見て笑ってたのに! カモ連れてくんのかと思ったらこんな死神連れてくるなんて!!」

「勝てるわけないじゃんこんなん! なによ始まっていきなり役満ツモるとか!」

霞「はっはっは。勝負は非情なのよね」

雪風「・・・あ、あの、霞さん?」

霞「なによ死神。文句あるの?」

雪風「い、いえ! ・・・あの、私にやらせたいことって、賭け麻雀ですか?」

霞「当たり前じゃない! いやーサンキュー死神さまさま! 儲けさせてもらったわ!」バシバシ

雪風「ひ、いたっ、痛いですって!」


「し、時雨ぇ・・・。お願い、助けて・・・」

時雨「・・・僕にそんな化け物を相手にしろというのかい?」

「おねがい! 時雨しかいないって! いつもみたいに馬鹿勝ちして霞をやっつけちゃってよ!」

時雨「やだよ」

「あ、ああそんなご無体な・・・」

霞「ほら、さっさと負け分耳そろえて払いなさいよ」

「う、うぅぅ・・・。私の貯金が・・・退役後の活動資金が・・・」

雪風「・・・え?」

霞「かかか! あんたの金は私のものよ」

「・・・わかったわよぅ。払うから提督への持参金にでもしなさいよぅ」

霞「ば、ばっかじゃないの!!! そんなんじゃないわよ!!!」

雪風「退役、後? 持参金?」

「あん? あーこいつね、あのクソロリコンに惚れてるから。メロメロだから」

霞「は、はぁ~~~?? なにいってんの? 誰があんな屑! あんな節操無しに女をもてあそぶような・・・」

「ふふーん、死神ちゃんいやさ雪風ちゃん。こいつに言ってやってよ。ロリコン提督にはお前みたいなのがお似合いだ~って」

雪風「え、あ、いや、その」

「うん?」

霞「なによ!」

雪風「いえ、・・・戦争が終わった後のことなんて考えたことがなかったから」

霞「・・・ふん」

「え? マジで? あんた戦争が終わった後も軍人でいるつもりなの? ひぇ~、さすが英雄様は言うことが違うねぇ」

「あれじゃない? メイヨカイキュウってやつじゃない? 死ぬまで金もらえるやつ」

「ちくしょー! 雪風さん私と結婚とかどっすかね!? 炊事洗濯は得意よ地味に! せんこーに鍛えられてるから!」

霞「ああ、嫁入り修行ね」

「そ、あんたが落第のやつよ」

霞「馬鹿にすんな! 私だって肉じゃがくらいは練習してるわ!」

時雨「ピンポイントで肉じゃがという辺り何をか言わんやではあるけれど心配しないで霞、僕も落第だから」

雪風「霞さん、時雨さんも?」

霞「いらないって言ってるのにあの屑がやれやれってうるさいのよ。・・・まぁ、私たちは任務があるからこいつらよりは少ないけど・・・」

「ふふーん、あんたらがドンパチしてる間、私達は将来に備えての戦争してるのよ」

雪風「そう、ですか」

「なんたって私達は若い女の子の時期が長い!」

「そうそう、言うなればエルフよエルフ! 希少価値はヤバイ!」

「あ、ロリコンが言ってた奴ね? 霞なんか暇さえあれば耳引っ張ってるもんね」

霞「な、なんで知って・・・、ちが、そんなわけないでしょ!!」

時雨「僕は深窓の令嬢、僕っ娘などなど属性が豊富だと教えられたよ。・・・苦笑するしかなかったけどね」

霞「私なんかつんでれだからちょっと優しくすればころっと落ちるって言われ・・・何言わせんのよ」

雪風「あは、あはは・・・!」

「ねえねえ雪風ってさー、提督のとこに最近いたんでしょ? どうだった?」

雪風「どうだったって言われても・・・」

雪風「・・・信頼に足る人物であると思います」

「かー! そうじゃないって、もっとこうあるでしょ? セクハラとか!」

雪風「セクハラ・・・?」

「遠慮することないわよ? あいつ変態だから」

雪風「へ、変態ですか?」

雪風「・・・そう言われてみれば、目つきがいやらしかった?です」

霞「あんの屑なにやってんのよ!!!!!!!」

「「「ぎゃははははははははははは!!!!!」」」

雪風「・・・バレてないつもりで服の裾を指でめくろうと?したりとか・・・」

時雨「あの人は・・・いったいなにをやってるんだ・・・」

霞「コロス、絶対コロス」

雪風「そう言えば辞書の卑猥な単語全てに赤線引いてあったんですが、それって・・・」

時雨「・・・それは僕も知ってる」

霞「・・・私も」

「「「ぎゃーっははっはっはっはっははは!!!!!」」」ゴロゴロ

雪風「・・・ふっ、あ、は」

雪風「あはははは!」

時雨「ふふっ」

霞「・・・あーぁ・・・」

「ねぇねぇ他は? 他になんかないの?」

霞「もうういいわ! ちょっとあんた! 飲み物買って来なさいよ、負け分チャラでいいから」

「へいへーい、チューハイでいい?」

霞「頼むわ。飲み直しよ」

不知火「チューハイ?」

「ん? ああ、酒は飲めないのかって、・・・うげっ」

雪風「チューハイってアルコール飲料ですよね?」

朝潮「今、チューハイと言ったのですか?」

霞「あ、やば・・・」

朝潮「・・・こんな時間にうるさいから見回りに来てみれば・・・」プルプル

不知火「・・・覚悟はよろしいですか? 介錯はたまわりますが」ジャキッ

「撤収!!」

「ちょっと! 空き缶処分しないと!!」

「今は逃げるが勝ち!!」

「じゃあね死神ちゃん! 帰ったらまた提督の話聞かせなさいよ!」

「あ、あと金剛おね、・・・戦艦の裏話とかも!」

朝潮「あ、こら! 待ちなさい!」

不知火「処分します」


――ぎゃー! なんであんたら実弾装備してるのよ!

――ぬ、ぬいぬいさん・・・? 昼間のことは謝るからそれ下ろしてお願いだから・・・

ギャーギャー
バタバタ

霞「や、やれやれ・・・よ、よりにもよってあのお固い奴の着任直後にこの不祥事はま、不味いわね」ダラダラ

時雨「くっくっ、か、彼女たちには良い薬になるだろう」ダラダラ

雪風「どこへ行くつもりですか? 私が見逃すとでも?」

霞「近寄んじゃないわよこの死神!」

時雨「僕は君がきらいだ」

雪風「今更そんなこと言っても遅いです、片腹痛いです。大佐に報告しますからついてきてください」ギュー

霞「やめて、やめて、他のはともかくアイツは絶対洒落にならないって」ズルズル

時雨「僕は折檻プレイされるキャラじゃない」ズルズル

雪風「問答無用です」


――

大佐「・・・・・・・・・・・・・・」

霞「・・・・・・・・・・・」

時雨「・・・・・・・・・・・」

大佐「私は、君たちへの接し方がわからない。が、処罰はしなければならない」

霞「・・・」

時雨「・・・」

大佐「よって私は敬愛する提督に倣い、・・・尻叩きだったか?」

雪風「はい」

大佐「・・・」ハァ

大佐「・・・まだ子供もいないのに」ボソッ

霞「・・・冗談よね? 嘘よね? 更迭で軟禁とかよね?」

時雨「まさか、そんな、僕が、この僕が・・・」

大佐「私はこういったことに経験はない。・・・手加減はできない」

雪風「良い薬です。やっちゃってください」

大佐(・・・)

大佐「わかりました。准将殿の命では逆らえません」

霞「・・・死神め」ボソッ

時雨「雪風ちゃん、君には失望したよ」ボソッ

雪風「やりなさい」

大佐「はっ」

――ぐ、強いって! うぐ、何回、ちょ、うぎゃーーー

――こんな、くつじょ、屈辱ぅううううううーー



――


大佐「こんなものでしょうか、准将殿」

雪風「ええ、充分です」

霞「」チーン

時雨「」チーン

大佐「さて、次からは私も容赦はしない。今後、よく肝に銘じること、いいな」

時雨「・・・わかったよ・・・」

霞「・・・お、覚えてなさい・・・」

ガチャ、バタン

大佐「・・・」

大佐(心身共に幼いまま、か)

雪風「・・・」

大佐「どうしましたか?」

雪風「・・・もう、かしこまらなくていいですよ。さっきは、特別です」

大佐「あ、ああ、わかった」

雪風「・・・大佐」

大佐「なんだ」

雪風「大佐は料理ってできますか?」

大佐「できなくもないが、・・・いや、できないと言い切ってもいい。精々飯が炊ける程度だ」

雪風「私もです。現地で食事を摂る際の必須事項として飯ごう炊飯の講習は受けました」

大佐「・・・」

雪風「・・・」

大佐「・・・嫁入り修行、だったか」

雪風「ご存知でしたか」

大佐「名前こそもう少し畏まった呼び方に直してあったが、そういう講義があると資料にはあった。が、まさか冗談の類だと信じていなかった」

雪風「第一連合艦隊では主に戦闘訓練ばかりでしたが、・・・考えてみれば自炊する艦もいたように思います」

雪風「それだけではありません。彼女たちは、将来を見据えた貯蓄というのを行っているとのことです」

大佐「将来?」

雪風「戦後の、であるそうです」

大佐「・・・戦後・・・」


雪風「私には使い道がないので支給された金付は手付かずで残っています。彼女たちはいったい何に浪費するのでしょうか」

大佐「・・・見当もつかないな」

雪風「『軍属たるもの、不自由は常なるを思ひ毎事節約に努むべし、奢侈は勇猛の精神を蝕むものなり』」

大佐「・・・」

雪風「私は、いえ艦娘は戦争のために造られた兵器。そう認識していました」

大佐「君は、先の大戦後も場所を変え戦ったのだったな」

雪風「はい。文字通り、沈むまで。ですが、異質ながら人として生を受けた今、戦後というものが私には想像もできません」

雪風「私たちはどうなってしまうのでしょうか」

大佐「必要最小限の戦力を残し、後は艤装を解体という処分になるはずだ」

大佐「あなたほどの戦歴を誇る艦なら、たとえ解体処分されたとしても軍属として現地士官、或いは兵として徴兵されるだろう」

雪風「・・・そうでない艦は」

大佐「最低限の支援の下除隊だ」


雪風「そう、でしょうね。その為に彼女たちは」

大佐「・・・」

大佐「羨ましい、か?」

雪風「いいえ」

雪風「もし、明日。いえ、一年後にでも深海棲艦との戦争に決着がつき、その結果軍隊の必要ない世界になるならば、或いは彼女たちを羨むのでしょう」

大佐「それは、そうだ。・・・もしそうなれば、一緒に浜辺の空き缶拾いでもやりましょうか」

雪風「ええ、一緒に。楽しみにしていますよ。大佐」


――――

霞「・・・」

時雨「・・・」

霞「戦後ねぇ。あんた、軍隊辞めたがってたけどなんかアテでもあんの?」

時雨「ないさ。僕はそこまで器用には生きられないからね」

霞「どうすんの?」

時雨「どうとでもなるさ」

霞「不器用って言ったじゃない」

時雨「・・・そうだね」

霞「・・・」

時雨「・・・」


霞「明日死ぬとして」

時雨「・・・藪から棒に」

霞「いいじゃない。・・・で、明日死ぬとして、あいつらみたいに義務感とか目的持って死ねたなら、どう思う?」

時雨「ごめんだよ。僕はその義務や目的の先の未来を託されて、それを見ることなく沈んだ。だから今度はそれを見たい。いや、見なければいけないと思っているだけさ」

霞「まぁ、そうね」

時雨「けれどね、僕は思うんだ。もし僕があの大佐の下で雪風ちゃんのように過ごしたら、きっと今度こそ託された未来を掴むんだって、そう心から思っていただろうってね」

霞「託された? 随分殊勝なことを言うのね」

時雨「そうでもないさ」

時雨「駆逐艦時雨には数百人もの乗組員がいて、それぞれの人生があって、それを棒に振ってまで未来を託してくれた。彼らが何を思ってどういうつもりで戦争に臨んだのかはわからないけれど、お国のために、愛する人のために、子のために、何かを守るために戦った人は絶対いたんだ。全員じゃなくても、たとえ一人でも、僕の中にいたはずなんだ」

時雨「きっと今僕がこうして生きているのは神様がくれたチャンスなんだ。彼らの思いを、彼の思いを、今度こそ果たすことが出来る。兵器としてではなくて、艦娘として、自分の意志で戦える。・・・きっと、そう思っていた」

時雨「だからさっきの質問だけど、もし、駆逐艦として死ねたのなら。それはきっと僕たちにとって本懐を遂げたということなんだろう。幸せなことなんだろう。・・・そう思う」


時雨「けど、今はね? 今は、僕は人間なんだって思う。司令官のおかげさ。
遊びも覚えたし、おしゃべりも覚えたし、読書も覚えたし、お酒も覚えたし、痛みも知った。・・・生きたいと、思うようになったのさ」

時雨「いいかい霞。僕たちは人間だ。だから、僕は、絶対に艦娘なんて存在を認めない」

時雨「歴戦の幸運艦娘雪風を認めないし、彼女をあんな風にしたあの大佐は絶対に認めない」

時雨「絶対に、絶対に」


霞「・・・あんたがそんなに喋るところ初めて見たわ」

時雨「意外かい?」

霞「・・・さぁね。まぁあの屑の下に長いこといたらどうなるのか、少し察したわ」

時雨「・・・」

霞「あの死神も言うだろうけど、私からも言ってやる。『私こそ、あんたを認めない』」

霞「甘えてんじゃないわよ。人間だとか艦娘だとか、馬鹿じゃないの?」

霞「『こんな姿』だから死ななくてもい? 心があるから死ななくてもいい? 違うわね、死ぬときゃ死ぬのよ。言い方が変わるだけ」

霞「私はね、お国のためだと割りきって戦って結果死ねるのはどう思うのかを聞いたのよ。死にたくないなんて腑抜けた答えは聞いてないわ」

霞「私だってやらされて戦争するのはゴメンよ。けどあんたみたいにただのうのうと生きるために戦うのもクソ喰らえよ」

霞「どこかの誰かが始めやがったこのクソッタレな戦争をさっさと終わらせるために、・・・仕方なく戦ってやってんのよ」

時雨「だとしても、死ぬために戦ってどうなる。たとえ死ぬとしても、生きようと努力するべきだ」

時雨「それとも君は、仕方なく死ぬつもりなのかい?」

霞「そうよ。腰抜けの敗北主義者にはわからないでしょうけどね」

時雨「・・・」

霞「・・・」


時雨「君は、・・・やっぱりそうなのか」

霞「・・・なにがよ」

時雨「・・・六萬五千八百二十円」

霞「・・・は?」

時雨「僕の勝ち分だ。ツケにされたジュース代も入ってる。・・・払うまで、死ぬことは許さない」

霞「・・・払うわよ、出世払いで」

時雨「言っておくけれど、二階級特進を出世だなんて馬鹿なことを言い出さないでね」

霞「・・・善処するわ」

時雨「それじゃあ困るんだ」

霞「わかったわよ! 払う、払うから!」

時雨「約束だよ」

霞「はいはい約束約束」

時雨「・・・」

霞「・・・」


霞「・・・明日は遠征じゃないほんとの実戦でしょ? あんたこそ、死ぬんじゃないわよ」

時雨「・・・善処するよ」

霞「勝ち逃げなんか許さないんだから」

時雨「僕を誰だと思っているだい? 雪風ちゃんには負けるけれど、それでも僕は彼女と並び称される艦だよ」

霞「けっ、これだからあんたみたいなスカした奴は嫌いなのよ」

時雨「・・・そろそろ消灯だ」

霞「引き止めて悪かったわね」

時雨「そんなことはないさ」

霞「じゃあ明日、頑張りなさいよ」

時雨「うん、ありがとう」



時雨「・・・僕に、任せて」

今日はここまで、・・・なんだけど自分で書いてて説明不足の感が否めない
提督と大佐の立場の差とか雪風の大佐、提督との距離間の差とか
霞と時雨のスタンスの差とか
雪風がなんでこうなったのかとか
もっと語るべくはあったろうと思う
このスレはもう書いちゃってるから仕方なくこのままで行くけど
出来るならもっかい最初からやり直したいもんだ

落とそうかな・・・(心折)

質問なんだけど一度完結させた内容をリメイクでもっかい
スレ立てってこの板的にはいいのん?
地の文と描写は増々にしてるけどどう足掻いても大筋が同じだから重複とか言われない?

ありがとう
一応完走させるから気長に待って

完走させると言っておいてなんだけども
書きなおしている内に展開どころか結末まで変わりそうなのでこのスレは落とします
新しく立て直すつもりではいるけど
今ある部分だけ投稿するか書ききってから投稿するかは様子を見ながらということで

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