兄「やったあっ! 人生初チョコ、ゲットォォォ!」
妹「兄ちゃん、やめなよそんな悲しい嘘」
兄「嘘なんかじゃないって、マジだよマジ! ほらこれ!」
妹「えっ、それ……」
兄「正真正銘、バレンタインチョコでーす」
妹「ちょ、ちょっと見せて」
兄「いいよ、はい」
妹「これって……」
兄「ふふん、どうだ?」
妹「ま、まあ義理にしては結構大きいじゃん」
兄「義理じゃねえし」
妹「は? そんなのなんで判んのよ」
兄「義理なら手渡すだろ? これ下足入れに入ってたんだよね」
妹「だからって」
兄「ていうかさ、そもそも俺義理チョコ貰えるような女友達なんていないし、そんな可能性全くないもん」
妹「……うぬぬ」
兄「なっ? これで判っただろ?」
妹「うん……」
兄「でさ、でさ、ちょっと教えて欲しいんだけどさ」
妹「なにを?」
兄「これ明日すぐにお礼言った方がいいのかな?」
妹「知らないよ、そんなの」
兄「んな冷たいこと言うなよー」
妹「知らないから知らないって言ってんのっ」
兄「お前だってチョコあげたことあるんだろ?」
妹「ないよ」
兄「え、あげたこと無いの? なんで?」
妹「だって好きな人いないもん」
兄「マジか……なんかごめん」
妹「は?」
兄「お前って寂しいやつだったんだなぁ」
妹「大きなお世話だよっ! 好きな人が出来たらあげるってのっ!」
兄「何ピリピリしてんだよ」
妹「ふん、別にしてないし」
兄「……」
妹「あーわかったよ、このバカ」
兄「な、なんだよ」
妹「私だったら、私だったらだよ? お礼は早い方がいいかな」
兄「そっ、そうかっ」
妹「うん、待つのも辛いしね」
兄「じゃあ付き合ってっていうのもその時に言った方がいいよな?」
妹「は?」
妹「ちょっと待って。 付き合うって、何?」
兄「いやもうこの際付き合っちゃおうかなって」
妹「え? 相手は? 相手は知ってる人なの?」
兄「いやまだ中見てないから名前もわかんないけど」
妹「チョコ貰っただけで付き合っちゃうの?」
兄「それも有りかなって」
妹「兄ちゃんのタイプじゃない人かもしれないんだよ?」
兄「大丈夫、俺好きって言ってくれる人が好きになっちゃうから」
妹「ちょ」
兄「現にもう半分好きになってるし、チョコくれた人」
妹「えぇー」
兄「それにさ、俺今までチョコ貰ったことなかっただろ」
兄「だからもし俺みたいなのにチョコくれる子がいたら、付き合おうって決めてたみたいなとこもあるんだよ」
妹「それって早いもん勝ちってことじゃん……」
兄「ん? なんのこと?」
妹「あ、いや別に」
兄「だからなんて告白したらいいのかな? いきなりでいいのかな?」
妹「だからっ! ま、待て! 兄ちゃん!」
兄「なに?」
妹「先に開けよう、なっ? 中、確かめよう、なっ?」
妹「ほ、ほらっ、もしかしたらドッキリでしたとか書いた紙入ってるかもしんないし」
兄「えー、そんな不安になるようなこと言うなよ」
妹「でもあり得ない話じゃないよね?」
兄「そう言われれば……じゃあ開けてみようか」
妹「そうそう、それが順序ってもんだから。 これ私が開けてもいい? 兄ちゃん開ける?」
兄「開けてくれていいよ。 あ、包装は破らないでな、一生取っとくんだから」
妹「わかった」
ガサガサ
妹「これは本命っぽいなあ……あ、兄ちゃん」
兄「ん?」
妹「女さん、って知ってる?」
兄「おんなじクラスだけど……って、それ女さんがっ?」
妹「そうみたい」
兄「あーそうかあ、女さんかあ……あー」
妹「……」
兄「そうかー」
妹「ねえ……どんな人なの?」
兄「女さん、大人しい感じの可愛い人だよ」
妹「へ、へえ……良かったじゃん」
兄「うわー、なんかうわー」
妹「じゃあさ……付き合っちゃうんだ」
兄「そうだなー、いきなりデートに誘ってもいいのかなあ」
妹「……」
兄「あーなんかドキドキしてきた」
妹「ね……このチョコ、食べといた方がいいんじゃない」
兄「え? もったいないよ」
妹「でもほら、美味しかったって……言わなきゃさ」
兄「あ、そっか。 んじゃ一口食べるか、貸して」
妹「はい」
兄「んぐ」 ポリッ
妹「……」
兄「ん、おいひい」
妹「そ、よかったね」
兄「お前も食べる?」
妹「いらない」
兄「あれ? チョコ好きだったろ? 遠慮すんな」
妹「いいよ……ほらちゃんと仕舞っとかなきゃ。 一生取っとくんでしょ」
ガサガサ
妹「……あれ? これ……」
妹「に……兄ちゃん?」
兄「ん?」
妹「友さんって……」
兄「友? 俺の友達だけど? なんでお前が知ってんの?」
妹「ここに書いてあるんだけど。 友君へって」
兄「へっ?」
妹「兄ちゃん、これまさか間違って……」
兄「なんでっ、それ俺の下足入れに入って……あ」
妹「どうしたの?」
兄「友の下足入れ、俺の隣だ……」
妹「じゃあこの女さんって人、間違って」
兄「ちょっとそれ見せて」
妹「ほらここに友君へって」
兄「ああ……ほんとだ」
兄「……」
兄「……」
妹「……兄ちゃん」
兄「……そっか、そうだよな」
兄「ま、こんなもんか」
兄「……」
兄「ちょっと友に電話してくるわ」
妹「兄ちゃん」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
兄「なあこれと同じチョコって売ってるかな?」
妹「うーん、バレンタイン用だしもう売ってないんじゃないかな……って買う気なの?」
兄「だって共に弁償しないと」
妹「弁償しろって言われたの?」
兄「いや、返って謝られちゃった。 」
兄「迷惑かけたなってさ」
妹「だよね、兄ちゃんは悪くないよ、そもそもその女さんが間違ったのが原因なんだから」
兄「友には間違ってなかったことにしといてくれって頼んどいた」
妹「どういうこと?」
兄「ちゃんと友が受け取ったことにしといて、女さんには言わないでくれって」
妹「なんで兄ちゃんが気を使う必要があるのさ」
兄「でも俺が早とちりしなかったら良かったことだし」
妹「もう兄ちゃんお人好しすぎだよ」
兄「そっかなあ」
妹「そうだよ」
兄「あーでもなんだかなあ、失恋した気分だ」
妹「え? 失恋?」
兄「だってもう女さん好きになってたし、俺」
妹「ほんとバカだね」
兄「あー今日はもう寝るわ。 んじゃありがとな」
妹「ちょ、ちょっとっ」
兄「ん?」
妹「もうっ! 仕方ないなあっ!」
兄「はあ?」
妹「いいからここで待ってて!」
妹「ほらっ! これっ! チョコあげるからっ!」
兄「え? なんで?」
妹「なんでもいいでしょ! あげるったら、あげるっ!」
兄「あ、ありがと……でもお前チョコあげないんじゃなったっけ?」
妹「一応緊急用の予備を用意してあんのよ、急に好きな人が出来るかもしれないしさ」
兄「あーそうか、情けない兄貴に同情してくれんのか」
妹「違うわよっ。 それから義理でもないからねっ」
兄「判ってるよ予備だろ」
妹「ちがっ……って、もうそれでいいよっ」
兄「妹……」
妹「それで我慢しなさいよ、女さんみたいにおとなしくも可愛くもない妹からだけど」
兄「いやお前だって可愛いって、女さんに負けてないよ」
妹「え……兄ちゃん」
兄「女さんは胸が凄く大きいんだけどさ、そんなの関係ないよ」
妹「なあっ? 悪かったなっ! まだジュニアブラで!」
兄「え?そうなの?」
妹「う、うるせーっ!」
妹「と、とにかく、兄ちゃんはバカでお人好しだけど」
妹「でもそういうとこが好きって人もどこかにいるよ」
兄「そうかな、だといいんだけどなあ」
妹「いるよ」
妹「きっといるよ」
兄「ありがと」
兄「ところでチョコのお礼にデートに誘いたいんだけど」
妹「へ? 私?」
兄「うん、だめかな?」
妹「え、いやっ、ダメってことは……ないけど」
兄「よしじゃあ今度な」
妹「お、おう」
おしまい
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