トンボ「突然気が変わって離したりとか可能性ある?」
カマキリ「ない」
トンボ「そっか」
カマキリ「うん」
トンボ「でも失礼だとか思わない?初対面で体を貪るとか」
カマキリ「思わない」
トンボ「そっか」
カマキリ「うん」
トンボ「ついでに聞きたいんだけどほんとに離してもらえたりとかは」
カマキリ「しない」
トンボ「うん」
トンボ「鎌が食い込んで痛いんだけどちょっとだけゆるめてもらっていい?」
カマキリ「いいよ」
トンボ「いいの」
カマキリ「ちょっとだけね」
トンボ「ああ。だいぶゆるくなったね。ありがとう」
カマキリ「どっちにしろ逃がせないけどね」
トンボ「わかってたよ」
トンボ「今までもトンボ食べたことあるの?」
カマキリ「ある」
トンボ「おいしかった?」
カマキリ「なんとも」
トンボ「微妙なの」
カマキリ「そう」
トンボ「じゃあ無理矢理僕を食べなくてもいいんじゃないの」
カマキリ「食べる」
トンボ「そっか」
トンボ「カマキリってお腹に虫がいるって聞いたんだけど」
カマキリ「うん」
トンボ「いるの?」
カマキリ「いるよ」
トンボ「いるんだ」
カマキリ「いる」
トンボ「どうして追い出さなかったの」
カマキリ「追い出せないから」
トンボ「そう」
カマキリ「俺はこいつに必死度で負けたの」
トンボ「どういうこと」
カマキリ「俺もこいつも一生懸命だったってこと」
トンボ「説明へただね」
カマキリ「うん」
トンボ「ところでさ」
トンボ「君は僕を食べなきゃ死んじゃう?」
カマキリ「うん」
トンボ「食べれば生きられるの?」
カマキリ「わからない」
トンボ「だよね」
トンボ「仮に僕を食べたとしてさ」
カマキリ「うん」
トンボ「水場にいくと虫に腹を突き破られて死んじゃうんでしょ?」
カマキリ「うん」
トンボ「栄養も全部その虫にもらわれちゃうんでしょ?」
カマキリ「うん」
トンボ「その虫じゃなくてもさ」
トンボ「他の虫に食べられるかも」
カマキリ「うん」
トンボ「生き延びられたってさ」
トンボ「最後には死んじゃうんでしょ?」
カマキリ「うん」
トンボ「最後には死んじゃうんでしょ?」
カマキリ「うん」
トンボ「じゃあ」
トンボ「なんで生きようとするの?」
カマキリ「…」
カマキリ「じゃあ」
カマキリ「お前は」
カマキリ「なんで生きようとするの」
カマキリ「羽もないのに」
カマキリ「俺に食われまいと」
カマキリ「会話をしてる」
カマキリ「それはどうして?」
トンボ「ああ」
トンボ「そっか」
トンボ「なるほど」
トンボ「羽をもがれて」
トンボ「天を追放されて」
トンボ「僕はもう生き物としての存在と自分のことを思えないんだ」
トンボ「だけどちがかったんだね」
カマキリ「うん」
トンボ「僕は君に食べられて生物として死ねるんだね」
カマキリ「うん」
トンボ「ああ僕は君にみすみす食べられやしないよ。最後まであがいたらぼくはむしなんだぼくは」
カマキリ「…うん」
トンボ「ああカマキリ君」
トンボ「我が生を完全にしたる良き友よ」
トンボ「願わくは、また来世で」
カマキリ「…………」
カマキリ「さらば、愛しき過去よ」
カマキリ「願わくは、また、生物としての生と共にあらん」
自分で読み返してもきついものがあるわ
深夜のノリの思い付きは危険や
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません