勇者「遊び人と農民と全裸しか残ってない?」(117)

勇者「え?何なのこの人選?全裸に至っては職業ですらないよね?」

店主「みんな他の勇者と旅立ってしまってね」

勇者「え?俺一人の方が強いんじゃないの?」

店主「舐めてはダメよ!遊び人はいずれ賢者になる可能性を秘めてる。農民は畑を耕して作物を入手できるわ!」

勇者「全裸は?」

店主「みんなー出番よー!」

勇者「オイ誤魔化すんじゃねーよ!」

遊び人「カジノ行きたいです」

農民「二毛作したいです」

全裸「さぁ!魔王を倒しに行こう!」

勇者「ダメだツッコミ切れねー。心が挫ける音がする」

勇者「とりあえず服着ろ全裸」

全裸「勇者、キミは私が好き好んで全裸だとでも思っているのか?」

勇者「違うのか?」

全裸「私はな、金がないのさッ!」

勇者「ぬののふくやるよ。着ろ」

全裸「イヤだ!裸が良い!」

勇者「やっぱ好きなんじゃねーか!」

農民「敵です勇者様!」

勇者「よっしゃ、先陣は任せろ!」

農民「えっ、じゃあえっと、私は見てます!」

全裸「私は全裸で見守ろう!」

遊び人「じゃあ私は勇者の攻撃が外れる方に10ゴールド」

勇者「ち、ちっくしょおおおお!うおおおりゃああああああーー!!」スカッ

全裸「勇者、今日はここいらでキャンプしよう。もう戦える状態じゃない」

勇者「誰のせいだよ!」

全裸「次の街まで三日も掛からないと言われたが…やれやれ、先が思いやられるな」

勇者「誰のっっ!せいだよっっ!」

遊び人「勇者ーポーカーやろー?」

勇者「自由気ままかよ!やらねえよ!」

遊び人「勝つと私のぱんつが見れる」

勇者「…一回だけだぞ?」

勇者「ツーペア」

遊び人「スリーカード。勇者の負け」

勇者「負け方が地味過ぎる!」

農民「勇者様ー」

勇者「今度は何だよ!」

農民「ひっ、あ、あの、薬草を…その」

勇者「えっ」

農民「ごめんなさい!私戦闘では役に立てないから、こんな事しかできなくてっ」ぐすっ

勇者「えっえっ」

勇者「えっ?」

農民「さ、差し出がましかったでしょうか…?」ウルッ

勇者「いや!真面目か!」

勇者「あれ、違う」

勇者「えーっと、その」

勇者「あ、あり」

勇者「ありが、トウ…」ブワッ

農民「!キズ痛みますか!?」

勇者「今!今俺に!三千世界の優しさが溢れている…っ」

農民「勇者様!?」

勇者「俺が死んでもキミは幸せになれっ!」

農民「勇者様がおかしい!」

全裸「ようやく第二の街についたようだ。一週間かかったな。やれやれ」

勇者「ツッコまねーぞ」

遊び人「むしろ馬車で2日の距離。よく来る。見飽きてるレベル」

勇者「歩いて来るのがオツなんだろーが!魔物倒しながら、旅って感じがしてよォー!」

農民「皆さん来たことあるんですか?私、あの、初めてなんですけど…なんだか達成感ありますねっ」

勇者「どうしよう、農民のことどんどん好きになる」

全裸「私、農民カワイコぶってると思うー」

遊び人「ワタシモー」

勇者「女子高か!」

勇者「そういや装備買う必要あるの俺だけなんだな。安上がりだな」

全裸「済んだか勇者」

勇者「仁王立ちで笑顔やめろ」

全裸「酷いな。キズついたぞ」

勇者「うるせーよ。てゆーか何で全裸が店内にいて騒ぎになんねーんだよ。無法地帯かここは」

全裸「ふっ、勇者は私の局部を見たことがあるかね?」

勇者「そら全裸なんだから見え……!?なんだこれ!?見えない!?」

全裸「呪い…と言うべきかな」

勇者「局部が…なんだ?ぼやけてる?胸と股関の辺りが…いやそもそも体の輪郭が上手く掴めない…?」

全裸「私の父も、そのまた父も、全裸だった…」

勇者「服着ろよ…」

全裸「全裸が先か、ぼかしが先か、それは定かではないが…一つだけ言える事がある」

勇者「え?ちょっと待って?もしかしてお前女の可能性もあんの?」

全裸「我が一族は誇りを持って呪いと闘って来た!この全裸は、我が一族の誇りなのだ!」

勇者「そうか。大変だな。服着ろ」

遊び人「出発する?」

勇者「イベントとかねーのか?洞窟に巣くう魔物とか」

農民「ダンジョンですか!?」

全裸「捕らわれの姫!」

勇者「最深部には金銀財宝!」

遊び人「腐るほど勇者が通る街。全部解決済み」

農民「な、なるほど」

勇者「第三の街にしゅっぱーつ…」

遊び人「勇者、敵」

全裸「行け勇者!」

農民「頑張って下さい!」

勇者「大丈夫だ!俺はまだ挫けない!」

勇者の攻撃!会心の一撃!
魔物に42のダメージ!
魔物を倒した!

農民「おおっ」

遊び人「脇が甘い」

全裸「まだまだだな」

勇者「俺はまだっ!くっ挫けないっっ」ブワッ

農民「第三の街ですよー!」

勇者「おおっ!」

遊び人「田舎くさい」

全裸「人も少ないね。てゆーか殆どいないな」

「勇者様!?もしやアンタ勇者様でねェべか!?」

全裸「いかにも」

勇者「お前じゃねえ」

「お願いがありますだ、勇者様!」

全裸「話を聞こう」

勇者「なんなのお前」

「これさ…見てくンろ…」

勇者「うっ」

全裸「酷いな」

「村の可愛い牛っこだァ。見ての通りハラワタがぶちまけられて…悲惨なもンだべ」

遊び人「すぷらったー」

農民「……」

「メドはついてる!北の山に住み着いた魔物の仕業だァ!」

「あいつが毎晩オラ達の牛っこを襲うんだァ!」

「どうか退治してくンろ!勇者様!」

全裸「任せたまえ」

勇者「お前ぜってー働けよ?」

勇者「待ち伏せだぜ!」

全裸「毎晩来るようだしね。これがベストだろう」

農民「……」

勇者「しかし不謹慎だが…こういうのを待っていたぜ!ワクワクするじゃねーか!」

全裸「ようやく勇者パーティーらしくなってきた、って感じだな」

勇者「そうだな!パーティーって所には疑問しか沸かないが今は見逃してやるぜ!」

農民「…あの」

勇者「どした?」

農民「遊び人さんは…どうしてるのでしょうか?」

勇者「アイツは宿で寝てるよ。全く、アイツは勇者の何たるかを分かってねー!」

農民「そう…ですか。…あの、勇者様…?」

勇者「ん?」

農民「その……牛、見ましたか?」

勇者「牛?」

勇者「牛って昼間の?ハラワタぶちまけられてたヤツか?」

全裸「酷い状況だったね」

農民「…確かにハラワタが散らばって、牛も血まみれでした。でもあの牛、よく見ると外傷がなかったのはご存知ですか?」

勇者「…え?」

農民「キズ一つ付けずに…魔物はどうやってハラワタを取り出したのでしょうか?」

勇者「ちょ、超能力ってことか?」

全裸「…死んだ牛の上に後から別の動物のハラワタをぶちまけた、とかかな?でも農民、そうすると魔物の仕業というより…」

農民「わ、私だって疑いたくなかったんです!でもここに来てっ……この牧場、全然手入れがされてないっ!まるで昨日まで誰もいなかったみたいに!」

勇者「……おいおい」

全裸「だとしたら、何であの村人は私達を騙したか、だ。私達を騙して何のメリットがある?」

農民「そこまでは…」

勇者「っ!遊び人が危ねぇ…!」ダッ

農民「勇者様!?」

全裸「私達の荷物は宿に…!そうかアイツらは――!」

「おいおい、俺の田舎者の演技は迫真だったよなァ。わざわざ牛にハラワタぶちまけてよォ」

「おォよ、とても盗賊には見えなかったぜ。そこいらの旅芸人よりよっぽど巧かったよ」

「そうだよなァ…良かったよなァ……じゃあ何でッ!ここに勇者の仲間がいるんだよッ!」

遊び人「私はバクチ打ち」

遊び人「バクチ打ちを騙そうってんなら」

遊び人「そりゃあ大根役者じゃあ、務まらない」

「うるせェ三下ッ!」ドカッ!

遊び人「きゃっ」

「今回はよォ…スマートにやろうと思ったのによォ!結局殺しちまうじゃねェか!あァ!?」ドカッ!!ドカッ!!

遊び人「いっ…やっ…」

「クソったれ!ハラん中にクソ詰め込まれた気分だッ!さっきまで最高だったのによォ、たった今最悪になっちまったッ!」ドカッ!!ドカッ!!

遊び人「あっ…くっ」

「収まりがつかねぇッ!オラッ股開け!」

「オイそんな時間ねェよ!さっさと」

「うるせぇッ!!」

遊び人「…ゆっ、勇者……っ!」

「うるせぇぇぇぇッ!何言ってやがるクソガキ!殺すぞッ!」

がちゃり

「あ、お前は」

勇者「遊び人!大丈…」

遊び人「勇者っ!」

「……ああ~?」

勇者「よく分かった。てめぇら殺す」

農民「遊び人ちゃん!」

遊び人「途中までは私もカッコ良かったハズ」ぶい

農民「動いちゃダメ!すぐ手当てするから!」

勇者「何で言ってくれなかったんだよ遊び人!」

遊び人「勘だったから。あと、マルエー狙い」

農民「マルエー?」

遊び人「バクチで一人勝ちの状態」

勇者「お前っ、そんな理由で!」

遊び人「全裸は?」

勇者「…後処理してくるってよ」

遊び人「…そう。全裸なら」

勇者「あん?」

遊び人「全裸なら、たぶん分かると思う」

勇者「何が?」

遊び人「マルエー狙い」

全裸「こんなものか」

全裸「しかし勇者パーティーが死体の隠蔽とは。いや正当防衛だが」

全裸「……」

全裸「…分かるさ、遊び人」

全裸「私達にできるのは所詮『こんなこと』だけだからな」

全裸「勇者はよくやってる。よくやり過ぎてる。私達が引け目を感じる程に」

全裸「…こんなポンコツパーティで、何故ここまで来れたんだろう」

全裸「第二の街辺りで、解散すると思ったのだけどなぁ」

農民「第四の街ですよー!」

勇者「おおっ」

遊び人「都会」

全裸「人が多いね」

勇者「オイ見ろよ地面が土じゃねえ!石の床ってお前!未知の技術かよ!」

全裸「はしゃぐなはしゃぐな田舎者め」

勇者「お、オラわくわくが止まんねーぞ!ちょっと行ってくる!」ダッ

遊び人「カジノが…呼んでる!」ダッ

全裸「…農民はいいの?」

農民「え?あ、私は」

全裸「元気がないな?風邪か?」

農民「此処には…豊かな土壌がないので…」

全裸「キミは野菜なのか?」

農民「凄いですね…この街は…家も歩道も石作りで…」

全裸「そうだな」

農民「全裸さんは来たことあるんですか?」

全裸「出が貴族だからな、こう見えて」

農民「全裸貴族…!」

全裸「いや間違いではないが。何だキミは、勇者がいないとよくボケるな」

農民「勇者様には、これ以上迷惑かけられませんから」

全裸「…そうか」

「おい、聞いたかよ」

「サーカス野郎の話か?」

全裸「む?」

「それだ!サーカス野郎!信じられるか?仲間が遊び人と農民と、全裸らしいぜ?サーカス以外の何物でもねぇ」

「魔王も驚くだろうな」

「行ける訳ねーだろ。つか全裸が街に入れる訳ねー。警備ナメんなって」

農民「全裸さん」

全裸「行こう、彼らにこの街の警備がザルだと教える義理もない」

農民「いや、そうじゃなくて、アレ」

全裸「え?」

勇者「よォ、そのサーカス野郎ってヤツについて詳しく教えてくれよ」

「な、何だお前っ!」

勇者「勇者だよ。ちなみにな、サーカス野郎は勇者になる前はクソみたいなチンピラだったらしいぜ?噂するならお前らも気をつけた方が良い」

「お前まさかっ」

勇者「ん?まさか、何だ?……言ってみろオラ」

「い、いやっ、さ、サーカス……の人も、き、奇抜で素敵だよねっ」

勇者「失せろ!」

「ひいっ」ダダダッ

全裸「はぁ、何やってるんだ勇者」

勇者「よォ、なんか人気者だな、俺たち」

全裸「まぁ一番人気は私だがな!」

勇者「いや誇ってんじゃねーよ!」

勇者「だーくそ!何でこんなヤツのために絡んでったんだ俺は!バカなのか!」

全裸「私は感動したぞ?」

勇者「いや服着ろや!それでおおかた丸く収まるわ!」

農民「勇者様…」

勇者「おん?」

農民「私達は…邪魔でしょうか?」

全裸「……」

農民「私達も、勇者様について来てそれなりにレベルアップしたと思います」

農民「でも、私達……っ」

農民「…ダメっ……ですよね?」

農民「戦闘で全く使えませんよね…?結局、勇者様ひとりに全て任せてしまって…」

農民「勇者様は私達を庇って…私達はただの足手まといで……」

勇者「いや今更かよ!」

農民「!」ビクッ!!

勇者「初めからそうだわ!戦闘ではお荷物以外の何物でもねーわ!」

勇者「仲間がいて逆につらくなる戦闘があるか!ってあったわ!俺以外みんな非戦闘員だわ!バランス考えろ!」

勇者「てか戦闘参加しろや!いつ参加してくれるのかなーって思ってたら此処まで来てたわ!健気か!」

勇者「だいたい」

全裸「それくらいにしておけ勇者」

勇者「あ!?」

農民「ぐすっ……ぐすっ…」

全裸「オーバーキルだぞ」

勇者「なん…だと…!?」

勇者「いや…え?ボケられたから…ツッコミを…」

全裸「農民はあんなボケ方しないぞ」

勇者「新境地かと…」

全裸「ハッピーな脳だなお前は」

勇者「あ、ええと農民?ご、ごめんな?」

全裸「いえ…ぐすっ…らいじょうぶ、れす」

勇者「呂律がまわ」

全裸「ツッコむ所じゃないぞ」

勇者「……」

農民「ぐすっ…えへっ…しょう思ってたんれすね…勇者様っ」

勇者「呂れ」

全裸「我慢だ」

勇者「……」

農民「私、ずっと勇者様に罪悪感というか…引け目を、感じてて…」

勇者「なんでだよ」

全裸「私もあったぞ」

勇者「お前はあって当然だ」

全裸「なんでだよ!」

農民「私、ずっと気付かないフリしてました。このまま何食わぬ顔で勇者様について行けばって…」

勇者「あー……」

農民「でも、ダメですよね。私が戦闘に参加しないと、勇者様の負担が減りません」

勇者「それはまぁ、そうだな」

農民「だから私…頑張りますから!サーカスだって力があれば、誰も笑わなくなるんだから!」

勇者「そんなサーカスは嫌だな。でもまぁ、無理はしなくていいぞ」

農民「いいえ無理しますっ!勇者様はずっと無理してくれてたんだからっ!」

勇者「…そっか、うん。じゃあ期待するよ、農民」

農民「はいっ勇者様っ」

全裸「完!!」

勇者「お前本当になんなの」



「レイズだ」

遊び人「…お前は『ツキ』を信じるか?」

「バカ言うな。ポーカーは確率のゲームだ」

遊び人「勿論そうだ。しかし確率を突き詰めて行ったその先…出来る事を全て排除していったその先に、最後に残る純粋で理不尽な『何か』

遊び人「その『何か』にどれだけ近付けるか…それがバクチ打ちの本質だと。そうは思わないか?」

「講釈はもう十分だぜお嬢ちゃん。なんなら俺はオールイン(全賭け)で良い。嬢ちゃんはどうする?」

遊び人「…オールイン」

「バカが…おらよ、kのフォーカードだ。嬢ちゃんはフルハウスか?あ?」

遊び人「aのフォーカード」

「な」

「オイ…ポーカー王が負けたぞ!」

「もう誰も止めらんねぇ!」

「今いくら稼いでんだよオイ!」

勇者「よう遊び人」

遊び人「あ、勇者っ」

勇者「楽しそうだな」

遊び人「チョー楽しい!」

勇者「なんか一席ぶってたけど」

遊び人「おっとこれは恥ずかしい。いつもの寡黙な遊び人ちゃんに戻ろう」

勇者「結構勝ってんの?」

遊び人「3000万くらい」

勇者「ファッ!?」

遊び人「全部あげる」

勇者「えっいやこんなに貰ってもですね?」

遊び人「サーカスの運営資金」

勇者「あー、お前も根に持ってたのか」

遊び人「これでシャレにならないくらい最高の装備買って」

勇者「分かった。サンキュ。先の街から行商人来てたからソイツから買おう」

遊び人「…ふふふ、見て勇者。あいつら顔がひきつってる」

勇者「そらこんだけ勝ったらな」

遊び人「あっれぇ~?ピエロはどっちなのかな~?」

勇者「楽しそうだな」

遊び人「チョー楽しい!」

農民「敵です勇者様っ!」

勇者「よっしゃ行くぜ!3000万の装備の力見せてやる!」

勇者の攻撃!会心の一撃!
魔物aに152のダメージ!
魔物aを倒した!

勇者「オーバーキル過ぎる!この武器強いなー」

魔物bは攻撃態勢に入った!

勇者「!?まだいるぞ!引け!」

農民「いいえ引きませんっ!えいっ」

農民は火薬草を発火させた!
魔物に50のダメージ!
魔物を倒した!

農民「た、倒せた!倒せましたよー勇者様っ!」

勇者「おおー!やるなぁ農民!」

農民「えへへー!なでなでして下さいっ」

勇者「偉いぞー」ナデナデ

遊び人「農民の媚び売りが加速してる」

全裸「何か吹っ切れたようだね」

勇者「第五の街にはまだつかねーのか」

全裸「どうやら街間の距離が最も長いようだね」

農民「前の街に人がいっぱいいるのも、第五の街にたどり着けない人が多いからなんですって」

遊び人「カジノにも庸平崩れが結構いた」

勇者「つーかもしかしてこの洞窟越えていくのか?」

全裸「そのようだね」

農民「ヒカリゴケ!これで明るさは確保できますよー」

勇者「頼もしさ爆発」

遊び人「農民万能説」

農民「ふっふっふっ、今の私は隙あらば役に立ちますよー」

勇者「頼もしすぎる。結婚してくれ農民」

農民「えっ?」

遊び人「勇者!騙されては駄目!」

勇者「は!危うく騙される所だったぜ…」

農民「えー騙されちゃって下さいよぉ」

遊び人「バクチ打ちの勘が告げてる。こいつはクズ」

農民「なんですとー!」

全裸「お楽しみの最中悪いが、魔物のようだよ」

農民「えっ」

勇者「敵か!」バッ

勇者「あれ?でも攻撃してこないな?」

全裸「む?確かに。もはやさわれる距離だな。ほれほれ」ツンツン

勇者「俺もやる!うりうり!」ツンツン

魔物は無防備な勇者に突撃した!
勇者に84のダメージ!

勇者「ごっはああああ!?」

農民「や、薬草薬草!」

遊び人「心の闇を見抜かれた」

全裸「私のように清らかじゃないとね」

遊び人「そんな事ない。お前はクズ」

全裸「あれぇ!?」

勇者「どれだけ進んだ?今は昼か?夜か?」

全裸「感覚が麻痺してきたね」

農民「ちょっと休みますか?」

遊び人「ポーカーやる人ー?」

勇者「トランプの準備早いな!」

農民「あれだけ勝ってるの見せられたら相手出来ませんよ」

遊び人「ちゃんと手加減する。右手一本で相手しよう」

農民「それなら勝負になるかな?」

遊び人「しかも指二本しか使わない」

農民「勝てる!」

勇者「これツッコんだ方がいいのか?」

全裸「……」

勇者「おいどうした?」

全裸「いや、なんか主っぽい魔物がいるのだが」

勇者「!でけえ!」

全裸「うりうり」ツンツン

勇者「ばっ…お前!俺もやる!」ツンツン

魔物は無防備な勇者に攻撃した!
勇者に147のダメージ!

勇者「ぐっはああああ!!」

農民「勇者様っ!」

全裸「勇者の心はもはや漆黒だな」

遊び人「ヘドロハート」

農民「や、薬草薬草っ」

勇者「もう誰も信じねぇ!殺す!」

勇者の攻撃!会心の一撃!
魔物に158のダメージ!

魔物は氷のブレスを放った!
パーティーに80のダメージ!

勇者「ブレス!?やべぇ!みんな大丈夫か!?」

遊び人「二発目来たら死ねる」

農民「み、みなさん薬草を!」

全裸「うん、暗がりでよく見えなかったけど、あれドラゴンじゃないかな?」

勇者「マジかよ……くそっ、テンション……上がってきたぜえええ!!」

勇者の攻撃!会心の一撃!
魔物に156のダメージ!

勇者「敵がドラゴンとか勇者らしくなってきたよなァ!ご機嫌だぜ!」

遊び人「それは勇者だけ」

全裸「これは厳しいんじゃないか」

農民「ほ、本当にやるんですか勇者様っ!?」ガクブル

勇者「おうよ!農民は回復に専念!遊び人はヒカリゴケと火薬草で明かりの確保!全裸は上手いこと二人のサポートを頼む!」

農民「ゆ、勇者様はっ!?」

勇者「田舎街のドチンピラがよォ、ドラゴン倒したって最ッ高にカッコいいよなァ!?」

農民「えっ」

勇者「前線は俺が貰ったッ!行くぜお前らァ!」

……


…勇者の攻撃!会心の一撃!
魔物に162のダメージ!
魔物を倒した!

勇者「っしゃオラァァァ!!」

農民「倒した…す、凄い!凄い凄い勇者様っ!!」

全裸「というか勇者の攻撃って会心の一撃以外見たことないんだが。どんな精神構造してんだ」

遊び人「田舎のチンピラ最強説」

勇者「よっしゃあ!先に進むぜ!」

農民「さっきの勇者様、勇敢でカッコ良かったです?///」ポッ

農民「あ、ドラゴンの牙とか高く売れそうなんで剥ぎ取っておきますね!」 ガリガリ

全裸「頬染めた1秒後に解体とかどんな精神構造してんだ」

遊び人「異常者集団」

農民「第五の街ですよー!」

勇者「おおおーようやくついたー!」

全裸「感動もひとしおだね」

農民「あ、この街は転職の神殿があるみたいですよー!」

遊び人「行ってくる!」

農民「おおっ遊び人ちゃんがついに賢者に!?」

勇者「あれ?でも悟りの書とかあったっけ?」

遊び人「借金のカタで巻き上げてきた」

勇者「お前は遊び人として最高に正しい」

「よぉ、お前がサーカス勇者か」

勇者「あ?そういうお前は何だコラ、ピエロ伯爵か?」

「ははは!いや悪かったな。せっかくここまで来たんだ、勇者様の子孫同士仲良くやろうぜ」

勇者「俺勇者様の子孫じゃねーけど」

「国王に任命された勇者達は、みんな初代勇者様の子孫らしいぞ」

勇者「いやその話絶対ウソだろ。子孫何人いんだよ。絶倫か」

「まぁいいじゃねーか。俺は好きだぜ?万年一般兵でうだつの上がらなかった俺がよ、実は勇者様の血筋ってんなら人生上等だろ」

勇者「はっは、そうかもな」

「さて情報交換しようぜ。なんかめぼしい情報とかあるか?」

勇者「武器や防具は装備しないと意味がないぜ」

「最初の街ですらいらねー情報かよ」

勇者「はっはっは。いや、悪いがウチはこれ以上マジでねーぞ」

「いやあるだろ!お前らどうやってモンスター仲間にしたんだよ?教えてくれ!」

勇者「は?」

「なんかそういうアイテムがあるのか?唯一品か?どこで手に入れた?」

勇者「……何を言ってるか分からねーな」

「ん?アレはモンスターじゃないのか?いやでもあんな人間はいないだろ」

勇者「おい、それはウチの誰のこと言ってやがる」

「なんだよ、お前ら皆アレを人間だとでも思ってるのか?なんかいるじゃねーかよ?あの、シャドーみたいなヤツがよ」

全裸「やぁ勇者」

勇者「いや転職してこいや!何を優雅に日光浴だよ!」

全裸「これはこれは、キミの方から話があると思ったんだがな」 

勇者「全くその通りだ。おい全裸。服着ろ」

全裸「なぁ、今の私は、勇者にはどう見えているんだ」

勇者「どうもこうもねーよ。服着ろよ」

全裸「勇者、真面目な話がしたい」

勇者「全裸とシリアストークなんざできるか」

全裸「頼む」

勇者「知りたくねぇよ!」

全裸「頼む」

勇者「……」


全裸「結論から言おう。私は魔物じゃないよ。呪いがかかった人間だ」

勇者「ぼかしの呪いか」

全裸「そうだ、覚えててくれたのか。嬉しいな」

勇者「…おい」

全裸「この呪いはね、なんでも存在を蝕んでいく呪いなんだそうだ。ゆっくりと体の輪郭がぼやけ始めて、最後には世界に溶け込む。まるで初めから何もなかったかのように」

勇者「何でそんな呪いに掛かったんだよ」

全裸「魔王が封印される直前に放った、末代まで続く呪いらしい」

勇者「初代勇者様の血を引いているような言い方だな」

全裸「事実そうらしいからな」

勇者「全裸なのにか」

全裸「全裸なのにだ」

全裸「この呪いはな、症状が進むと衣服は纏えないし、物を持つ事も出来なくなる。世界との接点がどんどん無くなっていくんだ。私はもう物が持てない所まで来た」

勇者「おい結構進んでんじゃねーか」

全裸「先日のドラゴン戦の時、勇者は私にフォローを頼むと言ったよな…だが私は、何も出来なかったんだ。農民から薬草が受け取れなかった。見てる事しか出来なかった」

全裸「そもそも、ドラゴンも魔物も私を認識していなかったよな。今の私はシャドーみたいなんだろう?そのうち人間にも気付かれなくなる」

全裸「でもな…勇者。これだけは言っておきたい。心に留めておいてくれ」

全裸「私は!呪いで衣服が着れなくなる以前から全裸だ!!」

勇者「いやいいじゃねーかそこは!呪いのせいで!」

全裸「私にもプライドがあるのだ!」

勇者「知らねーよ!捨てちまえ!」

全裸「はっは、まぁそんな訳だからな、私はその内に消えるよ」

勇者「消えねーよ!消させねーわ!バカ!なんとかするわ!」

全裸「最後のはボケてないぞ」

勇者「うるせー!ボケはお前の存在そのものだわ!」

全裸「ははは、勇者のツッコミは力があるな。農民が吹っ切れた理由もわかる気がするよ」

勇者「田舎のチンピラなめんなよ?すぐ顔覚えるぞ。しつこいぞ」

全裸「そうか。じゃあ私の呪いを解く方法だが…」

勇者「あるんかいッッ!!」

全裸「いや、本当は言うつもりはなかったんだが」

全裸「ひっそり消えようと思っていたんだが」

全裸「なんか勇者が、私に消えて欲しくなさそうだし」

全裸「実は私も、農民みたく勇者に甘えてみたかったりするので」

全裸「ちょっと本気出してみる」

全裸「勇者様っ!」

全裸「私のためにっ!」

全裸「魔王倒してくれピョン!」

勇者「最後ので一気にやる気なくした」

賢者「見事賢者へとクラスアップした私を褒め称えるが良い!」ぺかーっ

農民「こっ神々しいーっ」

賢者「苦しゅうない。頭が高い」

農民「ははーっ」

勇者「いやどっちだよ」

全裸「うーん、本格的に役立たずが私だけになってしまったか」

賢者「今の全裸ニフラムで消せそう」

農民「ゾンビキラー効きそう!」

全裸「キミら本当にデリカシーないな!?」

勇者「おかしい、農民はデリカシーの塊だったはずだ」

農民「ふっふっふ、私のデリカシーなんてとっくの昔に馬のフンの肥料ですよ!」

勇者「肥料の肥料なの?」

全裸「ボケ方が雑だな」

賢者「汚い言葉使えば良いと思ってる時点でクズ」

農民「デリカシーない!」

不合理に身を任せてこそギャンブル……!つ④ コトッ

>>53あざす!

今完全に書き終わったから朝までに最後まで行く

たぶん

朝までに最後まで…い…行く…行ぎだいっ!

勇者「せっかくなので皆の目標を聞きたいと思う」

勇者「てゆーか怖くて聞けなかったんだけど、お前らなんで魔王倒す旅ついてきたの?」

農民「私は二毛作の知識を得るために!」

勇者「最初からこれだよ。良いよ。農耕が盛んな国に行けよ」

賢者「まだ見ぬ強敵とバクチを打つために」

勇者「前のカジノで割と達成したよね?なんならそこで雇われたりすれば良かったよね?ここまで来る必要ないよね?」

全裸「呪いを解くために」

勇者「最初からそうなんだけど、お前の動機だけ真面目なのが本当にイヤ。徹底して出落ちにつとめろよ。なんなんだよお前。最近ちょっと可愛く思えてきた自分も本当にイヤ」

農民「ぶー、そう言う勇者様はどうなんですか?」

勇者「え?チンピラが魔王倒したら超ロックじゃん?」

農民「バカ」

賢者「クズ」

全裸「私は良いと思うよ」

農民「なっ、ここへ来て全裸さんがあざとくポイントを集めに来てる…!」

賢者「面出ろ。今の私ならヤれる」

全裸「無理だな。今の私は攻撃を受け付けないんでな。もうすぐ消える証拠だが!」

農民「イヤだ!全裸さんが消える前に殺して私も死ぬ!みんなで死ぬ!」

賢者「全体破壊呪文は任せて」

全裸「大丈夫だ!キミ達は私の心の中で生きる!」

農民「一人だけ生き残ってるじゃないですか!一番年上のくせに!」

賢者「即死呪文連発すんぞババア」

全裸「はっはっはっ、ようしキミら面出ろ…!」

勇者「くくくっ、来たぜ、来た!なんか今まさに無敵な感じがするぜこのパーティー!勝てる!魔王に!」

農民「勇者様のそういう所すごいと思う」

賢者「ただのクズ」

全裸「そしてまた会心の一撃連発するんだろう?全く勇者の精神構造は訳が分からん」

勇者「よしっ乗り込むぜ!魔王城に!」

農民「魔王城の前にまだ街ありますよ」

勇者「えっ」

農民「敵です!」

勇者「よっしゃ行くぜ!」

勇者の攻撃!会心の一撃!
魔物aに210のダメージ!
魔物aを倒した!

農民「えいっ!」

農民の特別火薬草!
魔物の群れに50のダメージ!

賢者「どーん」

賢者のイオナズン!
魔物の群れに170のダメージ!
魔物達を倒した!

勇者「なんか遊び人が賢者になってから戦闘がクッソ楽になったんだけど」

全裸「今まで勇者と農民で一匹ずつ倒してたからね」

農民「せっかく全体攻撃覚えたのにこの格差!」

賢者「苦しゅうない」

勇者「てゆーか俺が魔物倒す意味なくね?賢者が呪文に巻き込めば良いじゃん」

農民「私なんて更に劣化版ですよ勇者様」

勇者「いや、農民は凄いよ。全体攻撃できるもの」

農民「でも殆どダメージ与えられないですから。仕留められる勇者様の方が凄いです」

勇者「いや、やっぱ農民は凄いよ」

農民「勇者様こそ」

全裸「おい、なんか傷の舐め合いが酷いぞ」

賢者「強すぎてごめーんご」

勇者「クッソ負けるかボケェ!」

全裸「こうやってまた会心の一撃を撃つ精神状態に持って行くのか。勇者は凄いな」

農民「会心の一撃…そうか!私にもその手が…! 」

全裸「農民も強くなったなぁ」

農民「第六の街ですよー!」

勇者「わーお廃れてるぅー!」

全裸「魔王城に一番近い街だからな」

賢者「この先に魔王城があるの?」

全裸「いや、本来なら第七と第八の街があるんだ。だが両方とも既に…」

農民「魔王に占領されてるんですか?」

「占領されてる訳じゃない。ただ、滅ぼされた」

勇者「おっ、ようピエロの伯爵!」

「ようサーカスの団長。クソッ、この挨拶しまらねーぞ!」

農民「私達以外の勇者…ですか?」

勇者「そうそう。ほんで俺のダチコー」

「育ち悪いだろお前。今日びダチコーて」

勇者「チンピラ上がりなもんでな」

「マジかよ。勇者様の血筋にロクなヤツいねーな。ってそうじゃなくて、情報交換だよ、フレンド。オーケー?」

勇者「農民のバストサイズでも教えてやろうか?」

農民「なっ、知らないでしょっ!?」

「…お前な、そういう所も確実にあるぞ?普通ムサい男旅になるんだからな?女二人も連れてっからサーカスとか言って妬まれんだよ団長」

勇者「ご忠告傷み入るよ伯爵。だが残念ながら、ウチは女三人なんだ」

「あーこのシャドーか?」

全裸「聞こえてるぞ?」

「聞こえるように言ったからな。っとと、なんだよ睨むなよ。マジかよお前ら」

勇者「仲間なんでな」

「こんなのと一緒にいれる神経がわかんねーわ。まぁいい。俺の方からの情報はこれだ」

勇者「なにこれ鞘?」

「聞いて驚けよフレンド!伝説の剣の鞘だ!魔王をぶっ倒したっていう、勇者様の剣がこの先にあるんだよ!」

全裸「!」

農民「そう言えば、伝説の装備とか全く揃えてませんね」

勇者「賢者大先生が稼いだ3000万で最高の武具買っちゃってるしな」

賢者「えっへん」

「ちらっ」

勇者「…ん?」

「ちらっちらっ」

勇者「………」

「ちらっちらっちらっ」

勇者「………あー」

勇者「…おー、フレンド。まさかお前のその装備。」

「気付いてしまったかぁぁフレンド!実は俺のこの装備は伝説の勇者様の装備なんだよおおお!!!」

勇者「おいフレンド、これ僻みじゃないけどな、似合ってねーぞ。サイズ合ってなくねーか」

「伝説の勇者様と俺は体格が違うらしくてな!でもよフレンド、お前なら分かるだろ?」

勇者「あ?」

「元一般兵の俺がこんな装備揃えちゃうなんてよ、ロックだろ?」

勇者「超おおおおロックだぜフレンド!訂正するよ!やっぱ最高にイカすぜお前!」

農民「ついていけない…」

賢者「男の世界」

「そんな訳でよ、俺は伝説の剣を探すぜっ。お前らも来るかっ?」

勇者「いや、やめとくぜフレンド。その剣はお前が見つけるのがロックってもんだ。旅の無事を祈っとくよ」

「そうか!じゃあここでお別れだな!魔王城でまた会おうぜ!」

勇者「おうよフレンド。俺は今まさに無敵の気分だが、もし魔王城に行ったときにお前がいたなら、多分もっと無敵だ」

「おう!じゃあな!死ぬなよ!」

勇者「おうよ!またな!」

農民「良かったんですか本当に?伝説の剣じゃないと魔王傷つけられないとかないですか?」

勇者「そん時はフレンドに倒して貰おう!」

農民「そ、その間私達はどうするんです?」

勇者「俺の会心の一撃が唸るぜ!」

農民「え、えぇー?勇者様、男友達とつるむとこんな感じになっちゃうの…?」

賢者「悔しい?」

農民「ちょっと…じゃなくて!これからどうします?すぐにでも出発しますか?」

全裸「…私はやはり、伝説の剣が欲しいな」

農民「えっ」

勇者「何でだよ、俺の剣も良い剣だぞ?神剣サラマンダー。今そう名付けた。炎とか出ないけど」

全裸「伝説の剣には破邪の効果があると聞く。それならば私の呪いも、あるいは」

農民「そ、そんな!なら絶対手に入れなきゃ駄目じゃないですか!」

全裸「いや、呪いを完全に消せる訳ではないと思うんだ。ただ五分か十分か。あるいは30秒かも知れないけれど、本来の姿に戻れると思う」

勇者「五分かよ。いや意味ないとは言わねーけどよ、やっぱり完全に消さねーと」

農民「それは…そうですね」

賢者「さっさと魔王倒すべき」

全裸「私も戦いたいんだ!」

勇者「!」

全裸「キミ達が魔王と戦っている時…私は何をしていれば良い!?」

全裸「応援か!?いつかの洞窟でのドラゴンの時のように!」

全裸「薬草すら持てないこの手を呪いながら、キミ達を見守る事しか出来ないのかっ!」

勇者「……」

全裸「細い足で駆け回り、必死で明かりを振りまく遊び人をっ」

全裸「強大な敵に恐怖しながら、それでも勇者を懸命に追いかける農民をっ」

全裸「その身にブレスを受け止め、勇敢に活路を切り開く勇者の姿をっ!」

全裸「私はただっ、見守る事しか出来ないのかっ!!」

勇者「……」

全裸「勇者、前に言った通り、私の家系は勇者の直系だ」

全裸「末代まで続く、魔王の呪いで今はこのザマだが」

全裸「伝説の剣があるのなら、必ずやキミの力になる!」

全裸「必ずだ!約束する!だから!」

全裸「だから勇者っ!頼むっ!私は!私だって…私…だってな…?」

全裸「いい加減、大好きなキミ達の、役に立ちたいんだよ」

全裸「もう、役目なしは嫌なんだ」

全裸「頼むよ…」

勇者「……」

勇者「フレンドは、お前の事を嫌ってる」

全裸「知っている。シャドーと言われた」

勇者「俺はお前の事が大好きだけど、フレンドの事も結構好きだ。あいつの生き様が、カッコいいと思ってる」

全裸「うん、知ってる」

勇者「だからこうしよう」

勇者「今からフレンドを追う。そこで」

勇者「俺があいつに伝えるよ。お前の想いを。余すとこなく。全身全霊をもって。伝える」

勇者「それであいつが譲ってくれるって言うなら、譲り受けよう」

全裸「駄目だった時は?」

勇者「どうしても諦め切れないなら、襲ってもいい。その時は俺は、お前につくよ」

勇者「でもな、全裸。お前が戦おうと戦うまいと、俺はもう、お前の気持ちは受け取ったから」

勇者「俺だけじゃない。多分みんな、受け取ったから」

勇者「だから覚えておいてくれよ。お前は決して、役目なしなんかじゃない」

勇者「堂々と、力強く、俺たちを見守ってくれ」

全裸「うん…分かったよ」

全裸「分かったよ、勇者…」




「ようフレンド!元気してたか!?」

「あ!?聞こえねーよ!もっとデカい声でしゃべれ!…あ?なんだって?聞こえねーな!」

「あ?…あー。これ俺か。俺の耳がイカれてんのか。ちょっと血流し過ぎたかね」

「いや何泣いてんだよお前ら。やめろよ、こんなのよくある事だろ」

「いいよ、回復なんて。薬草でどうにかなる傷じゃねーよ。そんな事より話でもしようぜ」

「いや、伝説の剣は取って来たんだよ。ただ帰りにやたら強いのに襲われてな。このザマさ」

「あーあ、勇者様の血筋なんてマジでロクなもんじゃねーわ。せっかく装備全部揃えたのによ。頑張り損っつーか。骨折り損っつーか」

「まだ魔王城にすら付いてねーんだぜ?信じらんねーよな。馬鹿みてーだ」

「俺の人生って何だったんだろうな。なんつうかさ、情けねーわ。こんなの。無駄死にじゃねーかよ。情けねーよ。情けねー」

「…なぁ、フレンド。俺はさ、死ぬのは怖くないんだよ」

「たださ。誰にも、何も残せずに」

「ここで一人で無駄死にする事が」

「たまらなく怖い」

「怖いんだ」

「だから、この剣を持って行ってくれよフレンド」

「鎧も、兜も」

「そこに宿った俺の魂ごと」

「持って行ってくれよ」

「この剣は絶対にお前を守るから」

「魔物の攻撃から」

「魔王の攻撃から」

「この先にどんな理不尽な事が起こったって」

「絶対にお前を守るから」

「守ってみせるから」

「だから頼むよ、フレンド」

「頼む」

「…は!なんつってな!わはは!似合わねーこと言っちまったな!」

「ははは。まぁいいよ。お前の好きにしてくれ。別にシャドーに持たせたっていい。好きにしてくれ」

「まぁそん時はお前のこと守らねーけどな!わはは!」

「はは…あーくそ、なんかもう目も見えなくなって来やがった。どうしろってんだよ、ちくしょう」

「おいフレンド!いるか!ちゃんと俺の話聞いてるか!」

「おい!返事しろよフレンド!おい!」

「おい!…けっ、もう居なくなっちまったかよ。薄情なヤツだぜ…」

「くそっ…ちゃんと…剣持って行ったんだろうな?もう…分かんねー…よく…分かんねーんだ…」

「はぁ…死ぬ…死ぬのか…ああ…くそったれ…何か……」

「何か…残せたか?…俺は…くそ…」

「…ああ…でも…気分は…いい…いいな…」

「なんつうのかな…この感じ…なんか…」

「なんて…いうかさ…」


勇者「無敵な気分だ。そうだろ?フレンド」


「そうだ…無敵な…気分……だ……」

ラストスパート行くよ!

魔王「私は、相当な数の勇者を潰してきたハズだがな」

魔王「有力なヤツほど優先的に。騎士団上がりの勇者も、傭兵上がりの勇者も、伝説の武具を揃えた孤独な勇者も。私自ら出向いて、潰してきた」

魔王「だとしたら…お前らは何だ?」

魔王「私はお前らの事などまるで知らん。それはつまり、注意すべき存在ではないという事だ」

魔王「お前らは何だ?」

魔王「お前らは何の間違いで、ここに立っている?」

勇者「何もかも間違いだわこんなもん。チンピラ上がりの俺が勇者ってのも、サーカスみてーな俺のパーティーもな」

勇者「…でもよ魔王さん、アンタも多分、何か間違えたよな?」

勇者「じゃなきゃ説明がつかねえぜ。あのポンコツ共がよォ、こんな無敵なパーティーに育っちまったんだからなァ!!」

勇者「行くぜお前ら!準備はいいか!」

農民「サポートは任せてください!」

賢者「それなりに頑張る」

女勇者「この装備があれば私も戦える!行こう!勇者!」

勇者「よっしゃあ!最終決戦だぜ!」

魔王「話にならんわ!失せろ!」

魔王はイオナズンを放った!
魔王は灼熱の業火を吐き出した!

女勇者「下がって!攻撃は全部私が引き受ける!」

勇者「おおっ!前衛が二人とか画期的だな!」

賢者「これが普通」

農民「あ、あれ?私だけクラスアップしてない!」

女勇者は仁王立ちした!
賢者はフバーハを唱えた!
農民は女勇者に超特薬草を使った!

勇者「攻撃に専念出来るとか考えた事もなかったわ!」

勇者の攻撃!会心の一撃!

勇者「もう一発いっとけ!」

勇者の追加攻撃!会心の一撃!

魔王「な、何だ貴様ら!このパワーはッ!」

魔王は女勇者に攻撃を放った!
魔王は四本の腕でばくれつけんを放った!

女勇者「すまない!さっきカッコつけたけど受けきれそうにない!」

勇者「あいよー!」

女勇者は防御した!
勇者は防御した!

賢者「私の出番?」

農民「いっちゃいましょー!」

農民は賢者に魔力草を使った!
賢者の魔法攻撃力が倍に上がった!
賢者はメラゾーマを放った!

賢者「なにこの謎植物凄い」

農民「農民万能説よ再びっ!」

勇者「いや前衛に回復は!?」

賢者「カッコつけたかった。許せ」

農民「許せ」

魔王「ぐぬううう…この、パーティーは」

勇者「効いてんのか効いねーのか分かんねーな」

女勇者「どちらにせよ、魔王が混乱している今が好機だ!一気に畳みかけよう!」

魔王は瞑想している!
魔王の体力が回復した!

勇者「いいのかな魔王さんよ、回復した倍のダメージで返しちゃうぜ!」

勇者の攻撃!会心の一撃!
勇者の追加攻撃!会心の一撃!
賢者はメラゾーマを放った!

農民「女勇者さん!」

農民は倍力草を女勇者に使った!
女勇者の攻撃力が倍に上がった!

女勇者「助かる!私は勇者と違ってホイホイ会心の一撃がだせないからな!行くぞっ!」

女勇者は伝説の聖剣を抜き放った!

女勇者「はああああああ!!」

女勇者の攻撃!魔王に致命的な一撃!

魔王「お、おおぉおぉおお…この…破壊力…は…っ!」

魔王を倒した!

勇者「え?」

農民「ほえ?」

勇者「終わりか?」

農民「あっけないですね」

賢者「…来る!」

女勇者「構えろ!」


魔王の体が醜く膨れ上がっていく…!

魔王は闇に何かを囁きかけた!
空間の重力が増した!
魔王は闇の力を吸収した!
魔王の魔法力が回復した!

魔王は全ての魔力を解き放った!

賢者「マダンテ…!?」

勇者「か、体が重てぇっ!」

女勇者「これは…耐えられる威力ではっ」

農民「ウソでしょ!?一発で形勢逆転って…!」

勇者は壊滅的なダメージを受けた!
女勇者は壊滅的なダメージを受けた!
賢者は壊滅的なダメージを受けた!
農民は壊滅的なダメージを受けた!

魔王「…認…メよう」

魔王「お前タちは…全テがデタラメだが…」

魔王「デタラメ故に…強イ…と…」

魔王は闇の力を吸収した!
魔王の魔法力が回復した!
魔王は虚空に向かって何かを呟いた!
上空に小さな太陽が出現した!
魔王は大地に向かって何かを呟いた!
大地からマグマが吹き出した!

勇者「冗談…きついぜ…」

賢者「…理不尽」

農民「こんなの…どうすれば…」

魔王「失セろ…!」

女勇者「ぐっ…待てよ魔王。私達のターンを…飛ばしてもらっちゃあ困るな…!」

女勇者は伝説の聖剣を抜き放った!

女勇者「頼む…私の事なんて、嫌いかもしれないけど」


女勇者は聖剣に何かを囁きかけている!


女勇者「今は黙って力を貸してくれよ!私もあの時、誓ったんだよ!キミと共に!」

女勇者「守るんだろう!絶対に!」


聖剣は輝きを増した!
女勇者は空間を切り裂いた!
聖剣はなおも輝きを増している!
女勇者は虚空を切り裂いた!
聖剣はなおも輝きを増している!
女勇者は大地を切り裂いた!

魔王「何ヲ…デタラメ…な」

女勇者「それはお互い様だろう。それにお前は、何も分かっていない」

女勇者「これからだ、これから来るんだよ」

女勇者「毎回会心の一撃を放つような、本当にイカれたデタラメなヤツがっ!」

女勇者は聖剣を放り投げた!

女勇者「立てっ!勇者っっ!!」

勇者「っ…無茶言いやがるぜ」

農民「勇者様、回復を…っ」

賢者「…農民、勇者は任せた」

農民「え…?」

賢者「私は勇者への『繋ぎ』を引き受ける!」

魔王「何だ…貴様…」

賢者「…魔王、お前は『流れ』を信じるか?」

魔王「な…ニ…」

賢者「いいか、今から起こる事が例え三千万分の一の確率だろうとな、私達は引くぞ」

賢者「女勇者と勇者の親友が作ったこの『流れ』は!」

賢者「必ず!私達に奇跡をもたらす!」

賢者「賭けても良いッ!」


賢者はパルプンテを唱えた!
天空から無数の流星が飛来した!

魔王「…な…」

魔王は流星によるダメージを受けた!
女勇者は流星を全てかわした!
賢者は流星を全てかわした!
農民は流星を全てかわした!
勇者は流星を全てかわした!

農民「あは、私だけカッコつかないなぁ。最後まで薬草だもんなぁ」

勇者「農民がいなかったら、第二の街につく前に全滅してるさ」

農民「あはは、ありがとうございます。――勇者様、伝説の剣を」

勇者「おう、サンキュー」

農民「お体、大丈夫そうですか?」

勇者「お陰様で!無敵の気分だぜ!」

魔王「何だ…」

魔王「なんなんだ…貴様ラ…は…」

勇者「よォ、会心の一撃を出し続ける方法、教えてやろうか?」

魔王「勇…者…ァ!」

勇者「まず、心に無敵な自分を思い浮かべるんだ。例えば俺の場合は、そうだな」

魔王「勇者ァ!」

勇者「今から一瞬後の、皆と笑い合ってる俺の姿とかな!」



魔王の攻撃!魔王は攻撃を外した!



勇者の攻撃!会心の一撃!



魔王を倒した!

おわった!まさかの100ぴったし!すげえ!

最後に。
みんなのそのご。


勇者
元チンピラの能力を活かしてヤクザ組織を設立。
「いや活かすなら勇者の方やろ!」とセルフツッコミをしては悦に入っている。
最近『カンサイベン』という最強の特技を身に付けた。まさに無敵。


賢者
フラフラと放浪しながら博打三昧。勇者の組織で代打ちすることもあるとか。
最近ポーカー放浪記という小説を執筆しているが、発売前からパクリ臭が半端ない。
批判は勇者の組織の力を使ってもみ消す予定。「必殺権力爆発」

農民
勇者に農業の素晴らしさを布教していたハズが、いつの間にか麻薬の栽培を手伝わされそうになる。そこで農民さんブチ切れ。
「勇者様、麻薬って何か分かってますか?」
「医療用のお薬って言ってた」
「それ言ったヤツ今すぐここに連れて来い」
農民さんがいる限り、勇者様の組織は今日もクリーンです。


女勇者
あのあと宿に帰り全裸になろうとしたら、鎧が脱げない。「やだ、私太った?」呪われていた。
ピエロ伯爵の呪いなのかなんなのか。全裸の呪いからフルアーマーの呪いに。勇者の組織で用心棒をしながら解呪の方法を探すことに。
何気に恋愛に一番積極的で、一度勇者を押し倒して全裸にしたものの、自分の鎧が呪いで脱げなくて断念。
「勇者…脱がせてくれないか?」
「出来るならやっとるわ」
それなりにハッピーらしい。



おしまい!

つーわけでおしまいです!読んでくれた人ありがとー!

なんか質問とかあったら受け付けマスよ!

ボリュームか
なんか書き終わったときもっと短くまとめなきゃ!とか思ってたけどむしろ足りないのか
なるほど

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