咲「しゃっくりを100回やったら死ぬ?」 (58)



―長野・四校合同合宿所―

優希「そ、それで…その女の子はどうなっちゃったんだじぇ?」

桃子「その女の子、彼女は能力の代償に自らの存在を失ってしまった後…」

桃子「自らの存在を認めてくれる極一部の社会だけに浸り込んだっす」

華菜「………」ゴクリ

久「な、なかなか東横さんの怖い話はインパクトあるわね…」

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桃子「けれど、その能力の代償は彼女だけに留まらなかった」

桃子「一番愛し、一番親しく、一番傍にいた女の子にすらその代償が移り始めてしまったんっす」

衣「…そ、それは何と奇っ怪な…」

桃子「彼女は悩んだっす。そのまま彼女と共に世界から消えるか。それとも、彼女の前から自分が消えるか」

桃子「彼女が愛したその女の子にその事を話せば、きっと二人で消える道を選ぶに決まってるっす」

桃子「かと言って、それが果たして女の子にとって。そして彼女にとって良いことなのかは分からない」

佳織「そ、それで彼女はどっちを選んだの…?」

桃子「……残念ながら、私が聞いた話はここまでっす」

智美「ワハハ、な、なかなか怖い話だったぞ…。」

美穂子「結局のところ、どっちを選んだ方が物語はハッピーエンドを迎えられたのかしらね…」

久「私は分が悪い方を選ぶわね。第三の選択肢とかあっても良いんじゃない?」

まこ「そりゃー、わりゃが悪い待ちを好きだからじゃろ…」

桃子「…けれど、もし自分がその話の彼女だったら」

桃子「悩んで悩んで悩んだ挙句、愛した女の子の側から、無言で消えると思うっすね」

和「ふむ…。と言うと?」

桃子「だって、悲しいじゃないっすか。自分と同じ境遇に、自分の愛した女の子を、自分のせいで巻き込むなんて」

桃子「それが女の子のためなんだと言い聞かせて、消え去るっすね」

一「……分からないでも、ないかな」

透華「引くことが愛、ねぇ…。高尚なお話だこと」

咲「でもそれって、女の子の意見は無視してません?」

咲「私がその女の子だったら、きっと一緒に消える方を選ぶかな…」

桃子「彼女は、女の子を守るために消えるんっすよ?」

桃子「それに、女の子の方に選択肢はないっす」

咲「分からないよ?女の子の方から、事態を把握して話を持ち掛けられるかもしれない」

咲「そしてもし仮に目の前から突然いなくなったら」

咲「絶対に見付けて、突然姿を消したことを謝らせて。その後で二度と離れ離れにならないよう添い遂げるかな」

桃子「彼女は絶対見付からないように逃げるっす!」

咲「女の子は絶対見付ける!」

桃子「見付けられない!」

咲「見付ける!」

ワーワー ギャーギャー

和「さ、流石は宮永さん…。文学少女なだけありますね…。想像力豊かです。でもそれくらいに…」

ゆみ「そ、それくらいにしないかモモ。何でまた仮定の話の中でそんなムキに…」

咲・桃子「」ゼェゼェ

久「…えーと、東横さんの話はここで終わりよね?」

桃子「とっくに終わってるっす!」

咲「終わってない!」

久「じゃあこの話はここまで!はい咲も黙る!」

優希「咲ちゃん、どうどうだじぇ」

咲「むー…」

睦月「モモ、落ち着け」

桃子「ぐぬぬ…」

久「えー、それでは。皆様からお話頂いた怖い話でしたが」

久「最後に私の方からとびきりのお話をして終わりたいと思います!」

ゆみ「自らハードルを上げるとは…これは楽しみだな」

桃子「きゃー!先輩!自分怖いっす!」

智美「ワハハ。あっという間にいつものモモに戻ったな」

咲「あ、余りにも怖い話は止めて下さいね…」

まこ「咲もいつものオドオドした感じに戻ったのう」

和「やっぱりこっちの宮永さんの方がらしいですよ」

久「…さて、それじゃ話を進めていくわね」

久「とある所に、病弱な女の子がいました」

久「彼女はその体には満足はしていませんでしたが、決してその事について悔やんだり、誰かを恨んだりはしていませんでした」

久「それは何故か?彼女にはとても仲の良い友人がいたからです」


?「みんな、ウチのために色々やってくれてありがとうなー」

??「何言うてんねん。やりたいからやってるだけのことや」

??「そうそう、感謝されても困りますわ」

「あははははは…」


未春「いい話ですね」

華菜「でもこれ怖い話だろ?」

美穂子「ここから一体何が…」

久「彼女はとある大会に出場。その競技のエースとして指名され、凄まじい成績で他を圧倒していきます」


?「一発ツモ」

?「また一発ツモ」

?「これまた一発ツモ」

?「はわわわわ」


衣「ん?一発ツモって…麻雀か?」

純「いやいやいや、そうそう一発ツモなんて連発出来ないだろ」

透華「そうですわ!一発なんて偶然の産物に過ぎませんわ!」

智紀「与太話に過ぎない…」

一「仮の話に過ぎないよー」

アハハハハ…

久「ところが彼女はとある対戦カードで苦戦してしまいます」


?「ツモ。ロン。ツモ。リーチ」

?(さっきから点数申告とツモかロンかリーチしか言うてへんわこの人…)

?「すばらです!」

?「はわわわわ」


久「さっきの東横さんのお話のように、彼女もまた限界を越えて能力を発動し、尚戦いに望みます」


?「ダブル…トリプル!」

?(お腹空いたなぁ…。連荘は仕方ないけど、控え室のお菓子が恋しい…)

?(上家のツモを減らすのは下家の役目!)

?「来なくても…私は待ってる!リーチ!」


和「いやもうこれ完全に麻雀の話ですよね」

咲「もしかしたら、どんじゃらとかかも…?」

優希「どんじゃらにリーチってあるのか?」

まこ「うちもどんじゃら導入しようかのう…」

久「限界突破の能力の甲斐あって、彼女は苦戦した相手を大幅に削ることに成功します」


?(そうやチャンピオン…それがあt)ヒクッ

?「ロン!倍満です!」

?「…はい」

?「すばら!」

?(あ…れ…?これって…)ヒクッ


久「それと同時に、彼女は気付きます。彼女の体に大きな異変が起きていることを」

久「この世で最も恐ろしくかつかかりやすい病、しゃっくりが発症していることを…!」


咲「!?」

美穂子「!?」

衣「!?」

智美「!?」

久「そして彼女は知っていました。しゃっくりが如何に恐ろしい病であることを…!」


?(あ…あかん。しゃっくりがこんな時に!)ヒクッ

?(こ…これで7回目や!あかん!ペースがあかん!)ヒクッ

怜(このペースで行ったらリミットの99なんてあっという間や!)ヒクッ


久「…そう。しゃっくりとは、100回してしまうと死に陥ってしまう恐ろしい病であり、彼女はそれを重々知っていた!」


咲「!?」

美穂子「!?」

衣「!?」

智美「!?」

久「彼女は必死にしゃっくりを抑えようとした。ところが止まらないしゃっくり。焦る彼女!」


怜(ぺ…ペースがあかん!とにかく、しゃっくりが止まらへんのなら、100回到達までに後どんだけかかるかを確認するしかあらへん!)

玄「お疲れ様ですっ」

照「お疲れ様でした…」

煌「すばらでしたよ」

怜(そのリミットに達するまでに何としてもしゃっくりを止める…!……10歩先を見る!ディカプル!)

照「!…千里山…」

怜(……って、あれ…)

照・玄・煌「!」

怜(何で床に…)

竜華「怜!」

怜「学校より床が冷たい…」

久「その後彼女は病院に搬送されます。果たして彼女の能力の限界を越えた代償の先にあるものは…」

久「そして、彼女はしゃっくりを100回までに止められる事が出来たのか…!?」

久「それではこれにて、四校合同合宿最後の怖いお話を終わります!」


透華「……え、これで本当に終わりなんですの?」

久「終わりも終わり!怖かったでしょー?」ケラケラ

和「…いや、これ倒れたのは能力の乱用のせいですよね?能力とかいうのが如何にもオカルトですが」

ゆみ「……期待してただけに、肩透かしを喰らった気分だな…」

久「何よもー!とびきりあっさりした怖い話でしょ?」

まこ「あっさりと怖いって一緒くたにして良いんか…?」

華菜「…全く、笑っちゃいますねキャプテン。…キャプテン?」


咲「」ガタガタ

美穂子「」ガタガタ

衣「」ガタガタ

智美「」ガタガタ


華菜「に゛ゃっ!?」

咲「しゃ…しゃっくり…こんな怖いものだったなんて…知らなかったよぉ…」

美穂子「い…いえ、宮永さん。これはチャンスよ…」

衣「そ…そうだな!しゃっくりの恐ろしさを事前に知ることが出来たのはこれ幸いだ!」

智美「わ…ワハハ…。要は99回で止めれば良いんだろ…。何としても止めるんだ…」

咲「ぐ…具体的には止めるのはどうしたら良いでしょうか…?」

美穂子「そ…そうね…。やっぱり水を含むのが良いんじゃないかしら…?」

衣「そ…それなら対策は容易いな…!」

智美「問題は近くに水が無い時だな…。その時は一体どうすれば…」

咲・美穂子・衣「こ、怖いこと言わないで!」


和・未春・桃子・透華「」

久「お?怖がってくれてる人もいるみたいじゃない?」

まこ「アホかあああああああああ!」

未春「あ、あのですねキャプテン…」

優希「そんなん聞いたらのどちゃんがSOA言い出しちゃうじぇ…」

純「しゃっくりで死ぬわけねーだろ?」

ゆみ「第一、何で丁度100回目で死ぬんだ…」


咲・美穂子・衣・智美「ほ、本当に?」


久「いえ、そうとは限らないわ…」

和「ああ!?」

智紀「しゃっくりには大きく分けて3種類がある…。中枢性しゃっくり、抹梢性しゃっくり、横隔膜刺激によるしゃっくり…」

一「ともきー!?」

睦月「…うむ。私も聞いたことがある。そして前者は、病気の症状として起きることがあると…」

佳織「睦月ちゃんまで!?」

華菜「そういやそんな事を私も聞いたことがあるし…」

未春「華菜ちゃん!?」


咲・美穂子・衣・智美「いやああああああああ!!」


久「今日一の悲鳴ゲット!ほら私の話が一番怖いじゃない!」

まこ「このドアホおおおおおおおおおおおおお!」



―全国大会2回戦―


豊音「追っかけるけどー」

恭子「…っ!」

豊音「ロン。5200」

霞「あら。3000・6000ね」

咲(みんな強いなぁ…。私も頑張るよ!)

咲「カン。ツモ。嶺上開h…ヒクッ」

咲「!?」

豊音「?」

霞(どうしたのかしら?)

恭子「おい、清澄。…何や、大丈夫か?」

咲「…だ、大丈夫で…ヒクッ……まだ…ヒクッ」

咲(と…とうとう来てしまったよ…。私にもしゃっくりが…)ヒクッ

咲(合宿が終わった後、和ちゃんからSOASOAたくさん言われたけど…)

咲(私にはどうしても全部が全部嘘とは思えないよ…!)

咲(例えば、これが中枢神経が起こすしゃっくりだとしたら…)

咲「カン」ヒクッ

咲「リーチ」

豊音(おかげでテンパったよ!)

豊音「通れば追っかけるけど!」

咲「カン」ヒクッ

咲(私の体の中で、重大な何かが起こっていて…)

咲(それを限界一杯まで知らせるサインが99回だとしたら…!)

咲「ツモ。2000ヒクッ・4000です」

豊音(宮永さん超強いよ!顔も超真剣だよ!)

豊音(私も本気で行くよ!攻めるよ!)

霞(守備に徹したくても、今はモード切り替えられないのよね…)

霞(それなら、攻め抜きましょうか…)

恭子(どう見ても具合悪そうなんやけどなぁ…)

恭子(…って、あかん。集中出来てない証拠やで!)

咲(もう半荘分の水は飲んじゃった…。後は堪えるしかないよ…)

咲「嶺上開花」ヒクッ

咲「ツモ。テンパネの役・混一」ヒクッ

恭子(やりたい放題されてるのは私の力不足やけど…)

恭子「ホンマ大丈夫か?」

恭子(どうにもならんツモと配牌ばっかで清澄の顔ばっか見取ったが…)

恭子(やっぱ調子悪そうやんな。何か我慢してるっぽい…?)

咲「…いえ。ありがとうございます」

恭子「喉でも乾いてるんか?うちの飲みかけで良ければ…」

恭子(ーって!何言うとんねん!アホか!)

咲「…え?良いんですか?」

恭子「」

咲「」ジュゴゴゴゴゴゴ

咲「ぷはぁっ」

咲「助かりました!ありがとうございます!」

恭子「…え?…ああ。…ああ。……ああ」

咲(……姫松の大将の人、わざわざ敵の私を心配してくれるなんて)

咲(…ちょっと嬉しい。どこにでもお節介焼きな人はいるんだね)

咲(…っと、止まった…?)

恭子(あかん…。と言うか、何で清澄もホイホイ飲むんや…!」

恭子(しかもそれに見とれてもうた…。…アホ!集中や集中!)

咲「カン」

咲「もいっこ、カン」

咲(±0にする上で…)

咲(しゃっくりを止めさせてくれたちょっとばかりのお礼です、末原さん)にこっ

恭子「!」ドキッ

恭子(何こっち見て微笑んでるんや…清澄…。いや、宮永…)

恭子「ーって…」

恭子「ツモ!4000・8000!」

豊音・霞「!」

咲「そして400・800です」

豊音・霞「」

『インハイ二回戦終了ー!!!』

豊音「うぇえええええん!ありがとうございましたああああ!」

霞「ありがとうございました」

豊音「サインお願いしますぅううううううえええええん」

恭子「…おい、宮永」

咲「あ、末原さん!飲み物、ありがとうございました!」にこっ

恭子(うっ…それ反則やろ…)

恭子「…まぁ何や、困った時はお互い様というか…」

恭子「何か我慢してたんやろ?」

咲「…ええ、実は…」


恭子「な、何やて!?しゃっくり100回やったら死ぬやと!?」

霞(そ、それは到底有り得ないと思うのだけれど…)

豊音「と、とんでもない事聞いたよー!みんなに知らせてあげないと!」

恭子「そ、それで宮永!大丈夫なんやろうな!」

咲「ええ…。末原さんから頂いた水で何とか…。…って、ああ!」

恭子「…そ、そうか…。良かったわ…」

恭子「」ハッ

恭子「べ、別に宮永の事が心配なんやないんやで!?次の対戦相手がいなくなると思うと夢見が悪いからな!勘違いせんといてや!?」チラッ

豊音「宮永さんならトイレに走ってったよー」

霞「ふんふむ…。これが所謂つんでれ、ね?」

恭子「ちゃ、ちゃうわーい!」脱兎

豊音「あ、末原さん!サインまだだよー!待ってよー!」

霞「あらあら、みんな元気いっぱいね」

霞(何だか面白そうだし、お土産にみんなにお話してあげようかしら)



―インハイ団体決勝―


淡(サキーとシズノに邪魔されてばっかりだけど、何とかするよっ!)

穏乃(…流石に決勝に残ってるだけあって、みんな手ごわいっ…)

恭子(……なんやかんや決勝まで来てもうたけど、うち全然活躍してせーへんよな…)

咲(まだまだ…これからだよ!私は、負けなヒクッ」

咲「!?」

恭子「まさか!?」

穏乃・淡「?」

恭子「またか!またなんか、宮永!」

恭子「二回戦・準決勝・決勝と来て、またしゃっくりなんか!?」

恭子「もうあんたの体は…しゃっくりに耐えられる体じゃ…!」

咲「ま…まだです、末原さん…」

咲「まだ…私は…やれますっ…!ヒクッ」

恭子「ほ…ほら!うちの水またやるから!」

咲「いえ…もう、頂けないです」ヒクッ

恭子「何言うとるんや!そんな事言うてる余裕ないやろ!」

恭子「今のでインハイ通して78回目のしゃっくりや!うちの目はごまかせへんで!」

恭子「宮永のために2Lの水を用意しておいたんやから!遠慮せずに飲みーな!」

咲「いえ…ダメなんです…。末原さんの水を飲むと…和ちゃんが…和ちゃんの機嫌が…」

穏乃「和の機嫌?」

淡「ちょっと、良く分からないから簡単に説明してよ。説明!」

恭子「あと22回しゃっくりしたら宮永は死んでしまうんや!」

穏乃・淡「何だってーーーーーーっ!?」

淡「ちょ、ちょっとサキー!大丈夫なの!?対局の途中で死なないでよ!」

穏乃「そ、そうですよ!そんな体で…」

咲「や…約束したんだ…。和ちゃんと…。もう麻雀から逃げないって…全力で向き合うって…!」

咲「そして、お姉ちゃんと仲直りするって…」ヒクッ

恭子「あああああああああああ!あと21回しか猶予あらへん!!!」

淡「じゃ、じゃあサキー!私のなら良いんでしょ?ほら、飲みかけで悪いけど!」

咲「あ、ありがとう…淡ちゃん…」

咲「」ゴクゴクゴクゴク

淡「おおう…。良い飲みっぷり!」

咲「これで止まっ…ヒクッ」

恭子「あああああああああああ止まってへん!あと20回やあああああああああ!」

穏乃「じゃ、じゃあ私のも!」

咲「」ゴクゴクゴクゴク

咲「」ヒクッ

恭子「止まらへえええええええええええええええええん!!!」

恭子「宮永!死ぬな!もう原村とか無視してええ!うちのを飲むんや!!」

咲「ご…ごめんね和ちゃん…。でも、私…まだ死にたくないよ!」

咲「」ゴッキュゴッキュゴッキュ

淡(こんだけいっぺんに飲み物を飲める胃…やっぱテルーの妹…)

穏乃(とにかく!宮永さん!頑張れ!!)

咲「」…ごっくん

恭子「どうや!?宮永!止まったんか!?」

咲「………はい。皆さんのおかげで、どうやら!」

淡・穏乃・恭子「いよっしゃあああああああああああああ!」


咲「」ピクッ


淡「いやー、一時はどうなるかと思ったね」

穏乃「宮永さんが無事で何よりですよ!」

恭子「全くやな!おい、宮永。もうしゃっくりはせーへんといて…」

咲「」プルプル

恭子「ーって!またか!またなんか!?」

咲「」プルプル

恭子「もう水はあらへん!お前ら、他に水持ってないんか!?」

淡「も、もうない…です…」

淡(凄い気迫…!私が気圧されるほどに…!)

穏乃「わ、私も持ってないです…」

恭子「うちももう持ってあらへん!うああああああ!死ぬな宮永あああああああ!」

咲「だ、大丈夫です…末原さん…」プルプル

恭子「バカ言ったらあかん!あとしゃっくり19回しか、あんたのリミットは…!」

咲「…ち、違うんです…。こ、これは…」

恭子「もう良い!喋ったらあかん!」

咲「こ…これは…!」


咲「おしっこが…限界近いんです!」


恭子「な…」

淡・穏乃・恭子「なんだ(や)ってええええええええええええ!!」

恭子「あ、あかんで宮永!それだけはあかん!!」

淡「そ、そうだよサキー!毎年視聴率50%越えとか言われているこの生放送で、それだけはやっちゃダメだよ!」

穏乃「いや、今年の決勝は近年希に見る大勝負とか煽られてたから、それを越えるかも…」

恭子「何言うとるんや!宮永がそんな事するなんて分かってたら、視聴率80%は越えるわ!」

咲「」プルプル

淡「わああああああサキーの表情がああああああ!」

穏乃「ダメですよ宮永さああああああん!!」

恭子「気張れ!気張るんや宮永あああああ!!!」



―下腹部の圧迫…強!

―現在後半戦の南1局の北家…遅…後4局…無理!

―ありのままを受け入れる…この場で!?できる!?

―否…人間としての…死!

―死死死死死死死


咲「」カッ

咲「…皆さん、落ち着いて下さい」

淡・穏乃・恭子「!?」

淡(………これは)

穏乃(宮永さんの雰囲気が変わった?)

恭子(……何やこの、今までに見たことのない宮永は…!)

咲「やりましょう、麻雀を」

淡「で、でもサキー…」

穏乃「それどころじゃないんじゃ…」

恭子「せやで…スカートの下から放送禁止の物をあんたに流させるわけには…」

咲「心配要りません、直ぐに…終わりますから」ゴッ

淡・穏乃・恭子(こ…この殺気は!)


恭子「」タン

淡「ダブリー!」

穏乃(来た…大星さんのダブリー!)タン

咲「カン・カン」

穏乃「だ、第一ツモで暗カン2つ!?」

穏乃(今の宮永さんには山の支配が通じないと言うこと…?)

淡「けどサキー!それは悪手だよ!」

淡(裏ドラは私の支配下!シズノの支配がないのなら尚更!)

淡(サキーには悪いけど、麻雀をやるというのなら手加減では出来ないよ!)

恭子(宮永…本当に大丈夫なんやろうな!?)

淡(…っと。初めの角でカン材が来ちゃった。珍しい…)

淡(サキーにも支配があるとして、私の支配も微妙に書き換えられてるのかな…?)

淡「カン」

淡(後は上がるだけ…)


咲「ううん、大星さん。…それこそ、悪手じゃない?」


淡「!?」

咲「カン」

穏乃「三槓子…」

恭子「いや、違うで!それは!」

淡「………四槓子、流れ…っ!」

咲「…っ!末原さんの親流れで…あと、3局です…」

淡(……なるほど。サキーにはその手があったか)

穏乃(そしてこの一局で、宮永さんが私たちに言いたい事も分かった)

恭子(宮永は微差とは言え現在ラス目…。それでも尚、局を進めるということは…)

淡(オーラス以外を全て同じか、似た方法で流し続けるつもりだ!)

淡「…良いよ、乗ってやろうじゃん!私は今トップ!局を流すって言うんならいくらでも協力してあげるよ!」

穏乃「ええ!今のリーチ棒とオーラスまでの積み棒を考えると」

恭子「オーラスは上がったもん勝ちになるって事や。…宮永、あんた以外はな」

咲「……本当に、ありがとうございます…」グスッ

淡「あーちょっと、泣くのは卑怯ー!涙腺以外も緩くしないでよ?」

穏乃「そうですよ!涙はともかく、他の液体を流されたら困りますからね!」

恭子「……良い1年生組やな。あーあ、うちも1年生やったらなー。今後もあんたらと、宮永と対局できたのになー」

咲「…ありがとうございます。…もう、私には時間がないんです」

咲「皆さんともっと長く麻雀をしたかった。麻雀を楽しみたかった」

咲「……けれど、私に残された時間は余りにも短すぎる」

咲「………最後の力を、オーラスに注ぎたいと思います」


咲・淡・穏乃・恭子「勝つのは、私だ!」



―インハイ個人戦決勝―


咲「…やっと、ここまで来たよ」

照「………」

咲「お姉ちゃん」

照「……私には妹はいないって、何度も…」

咲「…淡ちゃんから、聞いたよ?私のこと、話したって…」

照「………私も淡から聞いている」

照「インハイ決勝の南場の四槓子流れの連発…」

照「…しゃっくり100回やったら死ぬ、だなんて」

照「そんなオカルトをあなたは信じてるの?」

咲「…お姉ちゃん」

照「だから、私には妹はいないと…」

咲「その2Lペットボトルは何?」

照「…………」

咲「…………」

照「…別に。ただ私は直前に控え室で、とてもたくさんのお菓子を食べてきただけのことであって」

照「たまたま控え室にあった一番大きな飲み物を持ち込んだだけのこと」

照「……もし、仮にだけど。あなたが持ち込んだ水がなくなるような事があれば。…あなたにも分けてあげる」

咲「………ううん、お姉ちゃん。私、今回は水を一つも持ち込んでないんだ」

照「!?」

咲「今でも後悔してるんだよ…。その、団体決勝の南場の殆どを流局で終わらせちゃったことを」

咲「みんなが賛同してくれたからそう出来たけど、本当はみんな一秒でも長くあの場で麻雀をやりたかったはず」

咲「そう思わない人が、いるわけない。けれど私は、自分の保身のためにそれを選んだ」

咲「そして、今回。お姉ちゃんと、勝ち上がってきた人と。最初で最後の全力勝負が出来る」

咲「今度こそ、私は麻雀を楽しみたい。だから、今日は四槓子流れは絶対にやらない」

咲「そしてそれを引き起こす原因となった水分の過剰摂取も、二度とやらない」

照「で、でも…。今度こそしゃっくりが起こったら…咲、あなたの体は…!」

咲「…やっぱり、お姉ちゃんは優しいね。お姉ちゃんが妹はいないと言っても、私のお姉ちゃんはお姉ちゃんだけだよ」

照「さ…咲…!」

咲「次にしゃっくりが起こるようなら、それは多分100を越える。そしてその時は…」

咲「宮永咲は、雀卓の上で死ぬよ」

照「咲!」

咲「…さ、座ろう?お姉ちゃん。…4人、集まったよ?」

美穂子「よ、宜しくお願いしますね」

小蒔「よ…宜しくお願い致します」

咲「あれ、お二人も喉渇いてるんですか?2Lペットボトルですけど」

美穂子「え、ええ…。少し、だけど…」

小蒔「そ、そうなんですよ!喉が渇いちゃって!た、体調が悪いのかもしれません!」

咲「そうなんですか…。でも、良い麻雀をしましょうね!」にこっ

照(違うの…違うの咲!)

照(私が…私が2Lペットボトルを持ち込んだのは…!)

照(あなたに分け与えるためだけじゃなくて…!!)



―オーラス―


咲「オーラス…私の親番ですね!」

照「」カタカタカタカタ

美穂子「」ガタガタガタガタ

小蒔「」ブルブルブルブル

咲「み、皆さん大丈夫ですか?対局中も小刻みに震えて水を飲むことが多かったですけど…」

咲「三人とも飲み干しちゃってますし…」

照「だ、大丈夫だから」

美穂子「そ、そうですよ。ちょっと喉が渇きすぎただけです」

小蒔「あと12回…あと12回…」ブルブル

咲(点棒はかなり平たい…条件付きだけど、みんなにトップの可能性がある状況…)

咲(みんな体調が良くなさそうだけど、そんな中でもベストの麻雀をしてくれた…)

咲(…私も、最後まで本気でっ!)


「「「「ヒクッ」」」」


咲「!?」

咲(こ…ここで来ちゃったか…あと、あと一局なのになぁ…)

咲(もう…ちょっとで、半荘打ち切れたんだけどなぁ…)ヒクッ

咲「……ご、ごめんお姉ちゃん…。そして、皆さん…」

照「………」

咲「この一局、最後までやれそうにないや…」

咲「最後まで、お姉ちゃんに苦労かけてごめんね…」ヒクッ

咲「こんなダメな子が妹で、本当に…ごめんね…」ポロポロ

咲「あの世に行ったら、お姉ちゃんのこと見守り続けるから…世界一の麻雀打ちになってね…!」

照「……ううん、咲。あなた一人では行かせない」

咲「だって、だって…後、私には10回しか…」


照「私も」


咲「!?」

照「私も、あと10回しかないから」ヒクッ

照「……そして、同卓した時に鏡で見てしまったけど」

照「福路さん、神代さんも…あと、9回」

咲「!?」

美穂子「あ、あはは…。お姉さんの宮永さんの方には、バレバレでしたか…」

小蒔「……そうでしたか。皆さんも、また…」

咲「そっか、それで皆さん2Lのペットボトルを…」ヒクッ

小蒔「怖がってるのがそれを引き起こすのか、それとも私の体が既に病に蝕まれているのか…」ヒクッ

美穂子「とにかく、この半荘ではしゃっくりが絶え間なく小刻みに起こりました」ヒクッ

照「…ごめんね、咲。言い出せなくてごめん。…お姉ちゃんこそ、やっぱりダメな子だったよ…」ヒクッ

咲「お…お姉ちゃん…!」


―姫松控え室―


洋榎「何であいつら全員小刻みに震えながら泣いてるん?キモイんやけど」

絹恵「インハイ決勝のオーラスだから、感慨深いのかもよ?お姉ちゃん」

洋榎「なーにが感慨深い、や。えーからはよサイコロ振らんかい清澄の宮永」

由子「洋榎に言われたらおしまいなのよー」

洋榎「ん?それはどういう事ですかね由子ちゃあん?」

恭子「…っ!」

漫「ちょっと、どこ行くんですか末原先輩ー!?」

咲・照・美穂子・小蒔「」ヒクッ

照「あ…あと、5回…」

小蒔「でも…一人じゃないってことが分かって…」

美穂子「皆さんと一緒に行けるってことが分かったら…」

咲「ちょっと…ちょっとだけ安心しましたね…」

照「あの世でみんなで、この一局をやり直そうか…」



「宮永ーっ!!」



咲・照「え?」

咲「す…末原、さん…。どうしてここへ…」

末原「き…決まってるやろ!あんたに水を届ける為や!」

警備員A「ちょ…誰なんだね君は!」

警備員B「今はインハイ決勝の真っ最中だぞ!」

末原「くっ…離さんかい!」

咲「末原さん、ありがとうございます。でも、もう良いんです」

末原「なっ…何やとぉ!?」

咲「私は最初からしゃっくりが出たら、この雀卓の上で死ぬ準備はしていました」

咲「だから、もう良いんです」ヒクッ

末原「…そんなん!そんなん、良いわけないやろ!!!」

咲「…ふふっ。初めて会った時と一緒ですね」

咲「敵として出会った私に、救いの手を差し伸べてくれた優しい人」

咲「……残念ですが、ここでお別れです」ヒクッ

照「………あと、1回」

美穂子「…最後に提案があるんだけど」

小蒔「何ですか?」

美穂子「皆さんに迷惑でなければ、死ぬ前に…私の想いを叫びにして残したいの」

美穂子「…勿論、皆さんに迷惑がかからなければ、だけど」

照「……うん、良いと思う」

咲「…ええ。叫びたいこと、たくさんありますから」

小蒔「そうですね…。みんなに最後に、一言…」

美穂子「…それじゃ宮永さん。サイコロを振ってくれませんか?サイコロが止まると同時に、各々叫ぶことにしましょう」

咲「……分かりました、振りますね」

恭子「あかん!宮永!振ったらあかん!」


カラカラカラカラ…

小蒔「うええええええええええええええええん!!」

小蒔「みんな、本家の私に優しくしてくれてありがとう!」

小蒔「巴ちゃん!メガネが置いてあったからこっそり入れ替えちゃってごめんなさい!」

小蒔「春!あの時の黒糖全部食べちゃったの私です!ごめんなさい!」

小蒔「はっちゃん!本家の巫女として最後に命じます!ちゃんと服着て!」

小蒔「霞ちゃん!私にとって霞ちゃんは、お姉ちゃんでした!こんな早くに他界する不出来な妹を、許して下さい!」

小蒔「みんなみんな、大好きだよ!転生しても、みんなの側にいたいよおおおお!」ヒクッ



美穂子「久!上埜さん上埜さん、って言ってごめんなさい!」

美穂子「名前で呼ぶのが怖かった!名前で呼ぶことによるその後が怖かった!」

美穂子「あなたとの関係を壊したくなかった!だから、あなたがそれを嫌がってるのにも関わらず、上埜さんと呼び続けた!」

美穂子「それでもあなたは言ってくれた!久、って呼ばないと私も美穂子って言ってあげない、と!」

美穂子「もっともっと!あなたの側にいたかった!あなたの事をもっと知りたかった!」

美穂子「生まれ変わったら、どうかあなたの側にいられますように…!」

美穂子「そして華菜!吉留さん!深堀さん!文堂さん!コーチ!風越を…風越の未来を…頼んだ、わ…!」ヒクッ

照「咲!ごめんね!本当にごめんね!」

照「私が悪かったの!お姉ちゃんが全部悪かったの!」

照「あなたの気持ちも考えないで、私に妹はいないなんて言ってごめんなさい!」

照「ずっと仲直りしたかった!あなたが来てくれた時に無言で帰らせたことを、今でも後悔している!」

照「ずっと、ずっと大好きだった!私の妹は、咲だけ!大事な、大事な妹!」

照「今度生まれ変わったら、もう一度姉妹に!とっても仲が良い、姉妹になろうね…!」

照「菫、尭深、誠子、淡…白糸台の後のことは、任せたよ…」ヒクッ



咲「お姉ちゃん、ありがとう。最後の最後に仲直りできて、私はとっても嬉しいよ」

咲「私も、大好きだった。拒絶されて、麻雀そのものも、お姉ちゃんも嫌いになりそうだった」

咲「それでも、清澄のみんなが教えてくれた。麻雀の楽しさを。麻雀を通じて会話することを」

咲「だから、私はお姉ちゃんも麻雀も完全には嫌いにならずに済んだ。和ちゃん、優希ちゃん、まこ先輩、部長。ありがとうございました」

咲「生まれ変わったら、今度こそ…一緒に仲良く暮らそうね、お姉ちゃん…。たくさん、思い出作ろうね…」

咲「……そして、末原さん」

恭子「!」

咲「自分の事よりも他人の事ばかり考える、お節介焼きさん」

咲「何度も必死で私のしゃっくりを止めようとしてくれるあなたの姿を見て、私、ちょっと自惚れてました」

咲「もしかしてこの人、私に気があるんじゃないか…って」

咲「そして、そう考えている私の方こそ、末原さんの事を気にしているんじゃないかって」

咲「でも、やっぱりそれは私の自惚れに過ぎ―」

恭子「自惚れなんかやあらへん!私は、私は…!」

咲「…ふふっ。これから死ぬって人にまで、そうやって優しい嘘を付かなくても良いんですよ?」

咲「私たち、お互いを好きになるためには…お互いの事を知らなすぎたんです。共有した時間が少なすぎたんです」

恭子「そ、そうや!もっと互いの事を知ろう!もっと私と一緒に過ごすんや!」

恭子「休みの日とかに、大阪に来たらええ!うちが責任持って、観光したる!上手いたこ焼き屋、知っとるんやで!」ポロポロ

恭子「時間が少ないんなら、これから作ればええ!だから!だから!………死ぬな宮永!!」

恭子「まだ!うちは、あんたに!何も…!何も言うてへん!!」

咲「…決勝で言ってくれましたね。1年生だったらな、って」

咲「……私、生まれ変わったら、お姉ちゃんと一緒に大阪行きたいです。そして、その横で、末原先輩と笑ってたいです」

咲「あなたと、もっと…長い時間を…過ごし…たかった…あなたとも、たくさんの思い出を…作りたかった…」ヒクッ

恭子「死ぬな!死ぬんやない!生きて!生きてくれや!!」

恭子「私も、あんたと…もっと長い時間を…!宮永…!…いや」


恭子「咲ーーーーーーーーーーーっ!!!!」


咲・照・美穂子・小蒔「…………」ヒクッ

咲・照・美穂子・小蒔「…………」ヒクッ

小蒔「何も、起こらない…?」ヒクッ


恭子「救急車!救急車を早く!まだ、助かるかもしれへん!」

洋榎「何騒いどるん恭子…。あんたが騒いでるって控え室に連絡来たで…」

恭子「主将!ええところに!早く…119番を!!」

洋榎「いやいやいや。どこにも急病人なんておらんやろ…」


咲「……も、もしかして数え間違いとか…?」ヒクッ

美穂子「いえ、もう軽く100回は過ぎてると思うんですけど…」ヒクッ

照「うん、それは間違いない」ヒクッ


洋榎「さっきからあいつらは麻雀やらずに何訳のわからんこと言うてるん?」

恭子「何言ってるんですか!しゃっくりを100回やってしまったから、あの四人はもうじき死んでまうんですよ!」

洋榎「は?」

恭子「ああもう!主将がかけないならうちがかけます!良いから携帯出して下さい!」

洋榎「いや携帯貸すのはええんやけど…」

恭子「けど、何です!?」


洋榎「しゃっくり100回やっても死ぬわけないやん。アホちゃう?」


咲・照・美穂子・小蒔・恭子「は?」


洋榎「お前ら生まれてからのしゃっくり全部カウントしとんの?」


咲・照・美穂子・小蒔・恭子「」



―インハイ全日程終了から、一ヶ月後―


咲「あ、お姉ちゃん!これもたこが大きくて美味しい!」

照「ふむ…。流石に地元民の勧める店に外れはない」

咲「でも、私あんまり食べる方じゃないから…。これだけ食べたらお腹いっぱいだよ~」

照「咲、たくさん食べないとスタイル良くならないよ?」

咲「それをお姉ちゃんが言う…」

照「がはっ」K.O.


??「どうや……宮永、食べとるかー?ーって!何人前やこれ!」


咲「あ、どこ行ってたんですか!」

咲「末原さん」

恭子「すまんすまん。ここの近いところで、オススメの店を電話で聞いてたもんで」

咲「もう私お腹いっぱいですよ?」

照「私は全然余裕」

恭子「次のところはデザートやから……宮永も行けると思う」

照「デザート!?」

咲「それくらいなら、まぁ何とかですけど…」

咲「…それにしても、末原さん」

恭子「な、なんや…宮永。急に近付いて」

咲「それ!それですよ。『宮永』呼び」

咲「今は宮永姓が二人いるんですよ?どっちを呼んでるのかそれじゃ分かりませーん」つーん

恭子「なっ…!卑怯やろそれ!ほんなら咲だってうちのことを…」

咲「おお!」

恭子「おおって……ああ!」

咲「どうやら咄嗟に私のことを呼ぼうとすると『咲』って呼んじゃうみたいですね」

恭子「うぐぐ…」

咲「そういえばあの時も咲って呼んでましたっけ…」にやにや

恭子「うるさーい!しゃっくり100回したら死ぬとか思ってた奴にとやかく言われたくないわ!」

咲(ブーメラン発言だと分かってない末原さん、可愛いなぁ)

照「よし、次に行こうか」

咲・恭子「もう全部食べて(と)るー!」

照「時間は有限。キビキビ行かないと」

恭子「そらそうやけど…」

照「思い出」

咲「!」

照「たくさん作るんでしょ?私と咲と。そして、咲と恭子で」

恭子「そ…そうやな。そうやったわ」

照「だから早く次の店。ハリー」

咲(もっともらしいこと言ったけど、お姉ちゃんはデザート早く食べたいだけじゃ…)

咲「ーって!」

咲「何で末原さんの事をお姉ちゃんが下の名前で呼んでるの!」

照「ん、癖で」

恭子「お、何や。咲もうちのこと名前で呼んでくれるんか?」

咲「あ、また私のこと名前で呼んでますよ?良いんですか?」

恭子「考えたら別に構わへん。癖やし」

咲「絶対それ癖じゃないですよねー!?」

恭子「さて、照。徒歩5分のぜんざい屋と、徒歩7分のあんみつ屋…どっちを選ぶ?」

照「近い方」

咲「ちょっと!二人で名前呼びとかずるいよ!」

照「咲も名前で呼べば良い」

咲「うううぅー……」

恭子「せやせや!どうせ咲にはそんな事出来へんのやからなー!」

咲「でーきーまーすー!」

恭子「なら言ってみい!」

咲「………えっと、その…」

恭子「………」


咲「………恭子、さん?」


恭子「」ボンッ

咲「」テレテレ

照「……あー。やっぱ甘いのは止めにしようかな…。お腹いっぱい…」

しゃっくりを100回やったら死ぬ。部長の怪談で、私はそれをまんまと信じてしまいました。

その誤った話が色んな人に伝わってしまって、迷惑をかける結果ともなってしまいました。

けれど、私は部長の怪談を聞けて、良かったと思います。


恭子「も、もう一回言って!もう一回!」

咲「いーやーでーすー!」

恭子「もう一回だけで良いから!な!」

咲「……もっと嫌です」

恭子「な!何でなん!」

咲「もう一回しか呼べないなんて、嫌ですよ。…恭子さん」

恭子「」

照「このぜんざいとっても甘いなー。どうしてだろうなー」


昔の宮永咲は死んで、生まれ変わって。お姉ちゃんとも仲直りできて。

そして、大事な人と、思い出を紡げるから。


カン!

連続100回と連続しない100回と色々話はあるみたいですが、とりあえず連続しない100回で押し切りました。
都市伝説を信じるみんなぽんこつ可愛い。そしてマジレス洋榎も可愛い。咲恭と部キャプは始まるようで始まらない。

読んで頂いた方、ありがとうございました。後ほど読み返してHTML化依頼します。

プチ訂正

>>10
×恐ろしい病であることを○恐ろしい病であるか、ということを
>>22
×咲「淡ちゃん」○咲「大星さん」
>>30は仲が良くなった後なのでセーフ)
>>41
×末原先輩○末原さん

それでは依頼出してきます。ありがとうございました。

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