妹「わたしには、お兄ちゃんの営みというものが、まるで検討もつかないよ」
兄「馬鹿にしちゃいけない。これはあくまで、真っ当な男児の生活だ、妹」
妹「でも、だからって、わたしの下着を学校に持っていくっていうのは、どうなのかな」
兄「分かってないな、きみ」
妹「なにが」
兄「僕ぁね、きみのその、純粋で潔白な姿が、たまらなく好きなんだよ。分かってくれよ」
妹「いや、偽クリスチャンみたいな顔して、今日のお兄ちゃんはまったく変だ」
兄「酷いなあ。ちゃんと最後まで聞いてくれよ」
兄「いいかい妹。僕はね、なにもただの狂人になったというわけではないんだ」
妹「いや、でも、実の妹の下着を肌身離さず持ち歩く兄なんて、聞いたことがないよ」
兄「そこに、見えない落とし穴があるっていうんだ、妹」
妹「落とし穴だって?」
兄「そうだ」
兄「考えてもご覧。世界中の諸兄らが、妹に対してとんと興味を持たぬなどという確証が、どこにあるというんだい」
妹「そういわれると、たしかにそうだね」
兄「そうだろう。この世に妹を好く兄がいないなどとは、一概には言えやしないんだ」
兄「分かってくれ給え、妹。僕は、きみが好きなんだ。他の誰よりも、断然きみが好きだ」
妹「お兄ちゃん。好いてくれるのは嬉しいけれども、下着を持って行くというのはちとやり過ぎだと思うよ」
兄「なに、やりすぎだって」
妹「そうだよ」
兄「一体僕の、何がやり過ぎだって言うんだ、妹」
妹「何がって、それはお兄ちゃんの、日々のいかがわしい行動の数々だよ」
兄「きみ、僕に説教をたれる気なのかい?いけすかねえなあ」
妹「何と言われようが、妹として、今のお兄ちゃんを放っておくなんて出来ないよ」
兄「なんだって、ほうっておくことが出来ない?」
妹「う、うん」
兄「つまり妹。きみは僕を、朝から晩まで惜しみなくかまってくれるということなんだね?」
妹「全く、違う」
兄「違うのか」
妹「違う。わたしは、今のお兄ちゃんの、普段の物の考え方がいかがわしいといっているんだ」
兄「ほほう。それで、可愛い妹は僕を一生懸命に更生しようとするわけか」
妹「そうだよ。このままじゃ、いけない」
兄「成る程、それはいい。だが、きみは僕の性分というものを、てんで分かっていない」
妹「分かってる。わたしは、恥の多いお兄ちゃんとの、長い長い生活を送って来た強かな人間」
兄「いや、分かっていない。偉そうなこと言っておいて、てんで気づいちゃいない」
妹「何だって言うの」
兄「つまりだ。僕は妹に、そうやって優しくされるだけで興奮してしまう様な人間だってことだ」
兄「妹が欲しくなった時、僕は下着をくんかくんかすれば、衝動を抑えられた」
兄「だが、もう駄目だ。回数は増えるばかり。こうも優しくされちゃ、手を出すなって方が無理なんだ」
妹「お兄ちゃん、まさか…」
兄「きみの香りが、僕を夢中にさせる」
兄「我慢できなかった。妹の香りに依存してしまった。ああ、許してくれ」
妹「……」
姉「ごはんよー」
兄「人は僕を、千回鞭打たれるべき人間だと言うだろうな」
姉「ごはんだってばぁー」
妹「お兄ちゃん…。お姉ちゃんが下で呼んでるよ…」
兄「でも僕は、壁ひとつ越えれば会える妹というものに、奇しくも恋をしてしまった」
姉「おとうとーいるのー?」
妹「あ、あの」
兄「だから僕は、きみに告ぐ。僕は、きみという名の一輪の花が」
姉「いもうとー?」
兄「うるせぇな!!今いい雰囲気なんだから邪魔すんなよ糞アマ!!!」
姉「な、なんだとデカマラ!!居るんだったら返事しろよこの白痴!!!」
兄「黙れ。てめえなんか地獄の業火に焼かれちまえ」
ガチャ
姉「まーた妹と太宰ごっこしてるの?うちは全員理系なんだから、いい加減諦めなさいよ」
兄「冗談じゃねえ。俺は意地でも文系に入ってそうして父母の期待を裏切るという」
妹「それはいいから、わたしの下着を持っていくのやめてよお兄ちゃん…」
兄「妹!今のきみは、てんでなっていないじゃないか!俺との会話はまだ終わっていないぞ」
妹「こ、これは。わたしとしたことが、危うく道を逸らしてしまうところだったね。いけない」
兄「うむ」
姉「うむじゃないでしょ、下着って何のことよ」
兄「姉貴」
姉「ハッ」
姉「済まない。私としたことが、えらく野暮ったい事をしたものである」
兄「分かれば、宜しい。後は分かっているね?」
姉「もちろん。引き続き、妹と楽しい団欒のひと時を、心置き無く存分に過ごしてくれ給え」
兄「恩に着る。では行け」
姉「相分かった」
バタン
兄「もう二度と来んなよデカ乳!!」
姉「言えた身かよデカ亀頭がッ!!!」ガンッ
兄「ッやめろやァ!!!!!」
妹(もういやだこの姉弟妹関係早くどうにかしたい…)
。。。
兄「全く。とんだ邪魔虫が這入ってきたね」
妹「実の姉を、邪魔虫なんて言っちゃいけないよ、君」
兄「いや、だがね」
妹「だがねも、へちまも無い。現にお姉ちゃんは、私達のために、お夕飯を知らせてくれたのだ」
兄「いやあ、参った。お前の純粋な心意気には、心底感服するよ」
妹「それほどでも、ないがね」
兄「謙遜するな。お前は実に、本当に善い子だ」
妹「……」
兄「ん、どうした妹。体の具合でも、悪いのかね」
妹「……もうやめようよお兄ちゃん。わたし、考えながら喋るの疲れたよ…」
兄「わあっ!」
。。。
兄「全く。とんだ邪魔虫が這入ってきたね」
妹「実の姉を、邪魔虫なんて言っちゃいけないよ、君」
兄「いや、だがね」
妹「だがねも、へちまも無い。現にお姉ちゃんは、私達のために、お夕飯を知らせてくれたのだ」
兄「いやあ、参った。お前の純粋な心意気には、心底感服するよ」
妹「それほどでも、ないがね」
兄「謙遜するな。お前は実に、本当に善い子だ」
妹「……」
兄「ん、どうした妹。体の具合でも、悪いのかね」
妹「……もうやめようよお兄ちゃん。わたし、考えながら喋るの疲れたよ…」
兄「わあ!」
兄「そんな、そんなことがあるものか、おい!!!」ガシッ
妹「ひっ…!?」
兄「て、訂正し給え、妹くん。僕ぁ、何も君をどうこうするつもりは、毛頭無いぞ。だがね」
妹「……っ」ブルブル
兄「だが、しかし、今の君の言動は、誠に失敬だ。無作法にも程がある。不潔で、忌々しい擦り寄る醜女の言動だ!」
妹「そんな……お兄ちゃん酷いよぉ…!わたしのこと、さっきは好きって…」
兄「ええい黙れ。僕は、都会の狡猾な悪商人でもなければ、田舎の醜い、智慧の浅墓な貧農でも、邪悪な偽クリスチャンでも無い」
兄「だがね、君。先刻の君の悪態には、正直大いに幻滅した。期待を裏切られた。君だけは、この穢い世界の中で純血の存在だと思っていたのに」
妹「ご、ごめんねお兄ちゃん。わたしが、下着を返してなんてこと言ったから…」
兄「まるで違うッ!!!なんて見当違いな言動だ、お前の明後日の方向思考にはもううんざりだッ!!!!!」ドンッ
妹「ひぃぃっ…!」
姉『ねぇーそんなに理大が厭ならあたしがお母さんに言っとこうかぁー?』
兄「慎め醜女!!!貴様などはなから眼中にないわッッ!!!!!!!」
姉『っだとテメェ!!!!!オモテ出ろ!!!!!!!ブッ殺してやる!!!!!!!!!』ガシャーン
妹「お姉ちゃん、お兄ちゃんのごはんひっくり返しちゃらめぇっ…!」
姉「ああ妹、ごめんね。救助が遅れたね。妹はやさしいね」ナデナデ
妹「んっ……」
兄「あんちきしょう、隣の部屋から、ヴェランダ伝いにこっちへ来やがった」
姉「おいてめえ。さっきから聞いてりゃあ、あんたは随分とこの娘を虐めてやってるじゃねえか」
兄「なんて醜悪な言葉遣いだ。気味が悪い上、反吐が出る」
姉「しゃらくせえ。こちとら妹のためだけに生きてるしがねえ町女ってもんだいべらぼうめえ」
兄「意味が、解らない」
姉「うっさいな!あんたとの会話の距離感は解りかねるのよ!」
兄「愚姉め。全く、てんでなっていないな」
姉「またそれか。君も、馬鹿な言い回しを何度も何度も繰り返しやがる」
兄「なんだと。もいっぺん言ってみろ」
姉「いいぜ、何度だって言ってやる。君は頭が足りないようだから、もう一遍、改めて言ってやろうじゃないか」
兄「構わん、続け給え」
姉「要するにだ。あんたには、文学の才能が、これまた一片も存在しないってわけなんだ」
兄「なに、なんだと」
姉「だから、何度も言わせなさんな。君に、文学の才能はないんだ」
兄「ばかな。そんなこと、あるはずがないじゃないか」
姉「じゃあ、君に質問する。コペルニクスの地動説について」
兄「太陽を中心に置き、地球がその周りを1年かけて公転するものとして、1恒星年を365.25671日、1回帰年を365.2425日と」
姉「宜しい。では次だ」
姉「太郎は試合に負けた。今まで、叶えられない事象などこの世に存在しないと思っていたが、この試合を機に、この世の中には個人の力ではどうしても動かせぬ、
叶わぬ事象があるものなのだと、その時初めて気付き、そうして彼は静かにうなだれ、大いに落胆した。そう、時にはどうしようもない…云々とあるが」
姉「この時、何故太郎は静かにうなだれ、落胆したのか、彼の心情を察しつつ文章中から抜粋して答えよ」
兄「……………………」
兄「試合に弁当が届いてなかったから」
姉「違ぇだろ馬鹿」
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