ある日のラビットハウス
突如香風チノは意識不明の重体に追い込まれた
ココア「き、救急車!」
ココア「もふもふしてたら…急にチノちゃんが倒れたの!」
リゼ「そ、それ…首が締まってたんじゃないか!?」
ココア「そんなに強くしてないよぉ!」
ドタバタと騒がしくなる店内
お客さんがうまく捌けた一息
ほんわかとした休憩タイムが一転
この短時間に何が起こったか
チノは回想にうなされていた
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<回想>
カランコロンッ
チノ「ありがとうございました」
程よく冷房の効いた店内
この街では珍しく蝉の声が聞こえてくる
夏
今日も天気がいい
ガチャッ
ココア「ぷはっ…これで全部~?」
リゼ「倉庫は暑いなぁ」
チノ「二つも一気に…」
チノ「リゼさんはともかく、ココアさん、あまり無茶をしないでください」
ココア「えへへ、大丈夫だよ」
チノ「手伝います」
昼過ぎ
お客さんが丁度いなくなって
力仕事を終えて
三人は小休憩を取ることにしたのだった
チノ「アイスコーヒーです」
リゼ「おっ、ありがとう!」
ココア「わぁい!」
ティッピーにはストローを用意して
のんびりと歓談
ココア「くはぁ!」
ココア「いい汗掻いた後の一杯は染みるねぇ!」
リゼ「なんだかおっさん臭いな…」
チノはこの時が大好きだった
何をするでもなく
ほのぼのとした空間
いつかラビットハウスをお客さんにもこんな気持ちを共有してもらえる
そんな素敵な喫茶店にしたいと思っていた
ココア「ティッピー、毛が伸びた?」
チノ「ん、そうですか?」
ココア「うん、ほら、ぎゅーってした時に…」
ティッピー「んふ///」
リゼ「暑いのによくやるなぁ」
ココア「なんだかもこもこするよ?」
チノ「はぅ…そうですね、確かに…」
チノ「シルエットが少し大きくなった気が…」
ティッピー「!?」
リゼ「言われてみればそうだな…」
リゼ「よし、私が散髪(?)してやろう!」
ティッピー「!?」
ココア「リゼちゃんはCQCの心得があるもんね!安心だね!」
チノ「止めてください、CQCは関係ありません」
チノ「ちゃんと動物の毛を整える専門のお店に行きます」
ココア「う~ん、そこはちゃんとして貰わないと…」
ココア「ティッピーの抱き心地にも影響するからねぇ…」
チノ「ティッピーは抱き枕じゃないです」
ココア「うん、それに比べて」
ゆらりとココアが揺れる
ココア「チノちゃんは抱き心地の変わらないただ一つの掃除機だね!!」ダキッ
チノ「や、やめてください!掃除機じゃないです!」
リゼ「暑いのによくやるなぁ」
日課だった
ティッピーは抱き枕じゃないです
も
妹じゃないです
も
もふもふされる
のも
しかしそうだ
リゼ『暑いのによくやるなぁ』
今日は暑いのだ、暑かったのだ
ココアは直前、冷房の効いていない倉庫で重たい荷物に四苦八苦していた
すぐにチノは思い知るのだった
チノ「暑いですココアさん!離してください!」
ココア「えっへへ~チ~ノちゃん♪」ギュッ
リゼ「今日はいつにも増して激しいな」
ぎゅーっと胸に押しつけられる
チノ(あれ、ココアさん…なんだか…)
ココア「どうどうどう~♪暴れないでね~♪」
チノ(ちょっココアさんなんだか…!)バタバタッ!
強めに抵抗し
ココア「わわわっ活きがいいなぁ~」
ぎゅっと抱き返された時に
不意に体位が
脇に
ぎゅっ
チノ「…!!!???!!??」
チノ「ん"ん"ん"!!!!!!」
天変地異だった
臭気の突風がチノの脳を犯した
勢いよく稼働するベルトコンベアーが次々に酸味の強いウ○コを運んでくる
バリアフリーの現代社会
初めての光景
地球の落とし穴
絶景
ロシア
走馬灯の様に無意味が駆け巡る
遠くで聞こえる「チ~ノちゃんえへへ」が完全に聞き取れなくなり
チノは意識に置き去りにされた
現在に至る
勘違い防止に一応述べるが、現在とは冒頭ではない
冒頭、つまり始まりの事件から半年後のことである
あの日ココアの脇臭によって瀕死に陥ったチノは
最先端の医療の成果もあり
その一ヶ月後には目を覚ました
後遺症も記憶の混濁もなく、元気を取り戻した
しかし、その一週間後
チノはもう一度、一ヶ月を彷徨うことになる
原因は同じく、ココアの脇臭であった
この夏場、重労働を終えたあとの脇は臭い
これはココアに限らずそうであるが、たまたまココアのスキンシッピが過激なためにである
ココアだから臭いのではないのだ
むしろ
ココアでさえ、臭いのだった
それから今日にのぼるまで様々なことを考え、実践した
断腸の思いで千夜やシャロ、リゼにも相談したし
ティッピーや父親にも相談していた
幾度も解決策を練り、失敗し
永遠の迷路に閉じ込められたかのように思われた
二度に加えてもう二度程、病院のお世話にもなった
そしてついにこの一か月前である
ついに
ついにチノは一つの答えに辿り着く
チノ「リゼさん、千夜さん、シャロさん」
チノ「今までたくさん相談に乗っていただき、ありがとうございます」
チノ「でも、私には」
チノ「私の姉であるココアさんにもふもふをやめろとも」
チノ「まして直接臭いと言うなんてことはできません」
チノ「ここまでに答えは決してしまいました」
チノ「どの道を選んでも、どの道ココアさんを傷つけるしか術がないのなら…」
チノ「なりますよ…何にだって…」
チノ「変態にだってなりますよ…!!!!!!!!!」
その日からチノは嗅いだ
夏真っ盛りの炎天下
ココアの一日着た下着から靴下
いきなり脇ではまた緊急搬送なのでまずは腕から
徐々にうなじへ
制服の脇はもう平然と嗅げるようになっていた
おまけに風呂も覗いた
監視カメラも部屋に取り付け
個室は許さんとココアの部屋のドアもぶち抜いた
筋トレも毎日したし
常にココアのパンツをマスク代わりに着用した
チノ 13歳 夏
姉の脇臭の激臭に限界を感じ悩みに悩みぬいた結果
彼女がたどり着いた結果は
感謝だった・・・・・
自分自身を落としてくれたココアからの限りなく大きな愛(脇臭)
自分なりに少しでも耐えようと思い立ったのが
一日一万回 感謝の脇臭嗅ぎ!!
気を整え
拝み
祈り
構えて
嗅ぐ!!!!!!
一連の動作を一回こなすのに当初は5~6秒
一万回を嗅ぎ終えるまでに初日は18時間以上を費やした
嗅ぎ終えれば倒れる様に寝る
起きてまた嗅ぐを繰り返す日々
2年が過ぎた頃
異変に気付く
一万回嗅ぎ終えても
日が暮れてない
齢13を超えて完全に羽化する
感謝の脇臭嗅ぎ一万回
1時間を切る!!
かわりにシコる時間が増えた
山を下りた時チノの鼻孔は
脇臭を
オカズにした
~エピローグ~
チノ「おじいちゃん、私コーヒーの匂い大好きです」
チノ「緑茶とハーブの匂いも素敵です…」
チノ「…でも最近、安心する臭い(脇臭)が増えたみたいです」
チノ「まだかな…(夏)」
おわり
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