男「そんなものは、幸せと呼ばない」 (174)

初SSです!

嘘です!


モバマス以外では初SSです!どうぞお手柔らかに



~廃ビル屋上~

男「…」ボーッ

カツンッ カツ カツ カツ

男「?」


少女「どうも~っ!」ヒョコッ


男「…飽きねぇな、君も」

少女「お隣、良いですか?」

男「勝手にしてくれ。っつーか、どうやってココまで登ってきた?階段は全部壊れてるんだが」

少女「もうやだなぁ、私の『能力』をお忘れですか?」ポスッ

男「あぁそうか…便利だな、飛行能力」

少女「飛行だけじゃないですよー?正確には『自分が作れる範囲のエネルギーを別のエネルギーに変換する能力』です!」

男「あ、そう…ふわぁ…」



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1407676037


少女「…それでー、私はこーんなに大事な能力を教えてるのに、貴方はちっとも御自分の能力を教えてくれませんねっ?」

男「…だって、教えたら殺されるじゃん」

少女「私は手を出しませんよ~。他の人達だって、[ピーーー]様な事はしませんよ!多分!」

男「私は、か…」

少女「はいっ!情報屋ですから!」ニコッ

男「…楽しいか?ソレ」

少女「こうでもしないと生きていけませんから!」ニコニコ

男「…そうだね」


男「ヒトゲノムプロジェクトによる地球人の超能力獲得ねぇ…」

少女「全く迷惑な話です。勝手に注射打っといて、能力が発現したら勝手に宇宙人扱い。挙句の果てには勝手に政府から追いかけられる身分ですよ」フンス

男「全くだ」

少女「お陰で2年はお菓子を嗜んでません」

男「……泣くなよ?」

少女「泣きませんよ。コレくらいじゃ」


少女「…そうそう、コレ」カサッ

男「何コレ。電話番号?」

少女「政府から発表された公式のSOS番号です。ここに掛ければ政府が安全に保護してくれるらしいですよ」

男「安全に?笑えねぇな」

少女「これは無償で全能力者に伝えてるんですよー。じゃ、ちゃんとお渡ししましたからね?」

男「おう」クシャッ

少女「もぉ~。目の前でクシャクシャにしなくても良いじゃないですかぁ」

男「だって絶対電話掛けねぇし……捕まってたまるか……」


~~~

友『あぁ!?能力者の回収!?ふざけんな!!』

男『…!』

政府軍『昨日決定された事だ。大人しく連行されなければ…発砲の許可も出ているが?』カチャッ

友『…男!!!逃げろ!!!』

男『え…!?』

友『今すぐこっから離れろつってんだよ!!』

政府軍『両名を捕えろ!』

友『男!早く!!』バキッ

政府軍『ぅあ!?暴れるな!』

男『…っ!』ダッ

友『生きてたらよ!いつもの廃ビルで待ってろ!!行けたら行くからな!!!』バキッ

政府軍『暴れるなと言っている…っ!!』カチャッ


ッターン



~~~

男「………」

少女「どうかしました?」

男「…あぁ畜生。良い天気だなぁ…」

少女「うーんそうですねー。お昼寝したくなるお天気ですねー」ゴロン


ファンファンファンファン!!!!


男「何だ…!」


政府軍「政府地区二○二地区の保護軍だ!このビルに隠れている能力者!ただちに保護を受けなさい!!」

男「…糞ったれテメェ!この場所をリークしやがったのか!?」

少女「し、知りませんよ!!」

男「お前じゃねぇのか…くそっ!」

政府軍「階段は使えないのか…一階だけか?」

政府軍「相手は能力者だ。二階と屋上も調べろ!」

少女「は、入って来ちゃいましたよ…」

男「外にも一人待機してやがる…飛び降りても走るだけじゃ逃げ切れねぇな…」

少女「た、戦いますか…?」

男「…相手は銃器持ちだぞ」

少女「大丈夫!わ、私、強いですから!」ブルブル

男「…隠れよう。奴らもすぐに諦める」

少女「…はい…」ブルブル


政府軍A「おい!しっかりおさえとけよ!」

政府軍B「分かったから早く登れって」

政府軍A「よい……しょと」

政府軍B「どうする?俺も引き上げてくれるか?」

政府軍A「いや……男一人とガキ一人だ。俺だけで良いよ」

政府軍B「そうか。俺は外で待機してるからな」


男「向かってくるのは一人だけか……」

少女「……っ!」ハァァァ…

男「…?何やってんだお前、息なんかかけて。手ぇ冷たいのか?」

少女「いえ、『声を溜めてる』んです」

男「……?」


政府軍A「隠れている者、速やかに出てきなさい」

少女「!」ビクッ

男「(静かに。まだバレてない)」

政府軍「ちっ……どこにいる……?」カツ カツ

男「(引き付けてから飛び出して押さえ込む。その隙にお前はビルから飛び降りろ)」

少女「(いえ、そーゆー訳には!)」

男「(あん?……来たか!)」

政府軍「そこか……?」カツ カツ


男「……ぅおぉおお!!!」バッ

政府軍「出てきたな……!」カチャッ

男「っだぁ!!」ブン

ガシッ

政府軍「!!離せ!!!」


男「おい!さっさと逃げろ!!」

少女「どいてください!!」タタタッ

男「え!?なんでコッチ来るんだよ!!」

少女「掌に溜めた叫び声の『音エネルギー』を…!」タタタッ

政府軍A「な、なんだ!?」

少女「振るう拳の『運動エネルギー』にっ!!」

男「!!」バッ


少女「『変換』しますっ!!!」ブンッッッ

ドゴォッ!!!!!

政府軍「ば……っ!!」ドサッ


少女「……気絶しましたね」

男「声をパンチ力に、か。そんな事も出来るんだな」

少女「へ、へへ、言ったでしょ?私つよい、って、わわ……」フラッ

男「!大丈夫か?」 ガシッ

少女「す、すみません。腰抜けちゃいました……」

男「はぁっ?」

少女「先に逃げてもらって構いませんよ。ビルを降りるくらいなら一人でも…」

男「いや、そういう訳にはいかねぇだろ」

少女「どうしてですか?あ、お金なんて大した額持ってないですよ?」

男「……そういう事じゃねぇっつてんだよ……」

少女「……?何か怒ってます?」

男「あぁ、だいぶ」

少女「何にです?」

男「そりゃもう糞みたいなこの世の……」

政府軍B「おい!応答が無いぞ!!大丈夫か!!」

少女「!!」

男「もう一人来たか!」


少女「は、早く逃げてください!」

男「……」

少女「…どうしたんですか?」

男「……安心しろ。『来た』」

少女「は?」

ドッドッドッドッ……

少女「?」

ドッ!ドッ!ドッ!ドッ!ドッ!

少女「エンジン音……?」


「男ぉ!!乗れぇ!!!」

男「捕まってろよ……!」ダッ

少女「きゃっ!」


政府軍C「なんだお前!止まれ!止ま、うわぁぁぁぁ!」ガシャーンッ

「早くしろ男ぉ!!」


男「おいお前、俺の重力とかって操れるか?」ダダダ

少女「む、無理ですっ!自分の質量エネルギーしか変換は出来ませんっ」

男「そっか。なら良いや。ちょっと危ねぇけど腰抜かすなよ……!!」バッ

少女「ご心配無く!もう抜かしてま…って、落ち、わぁぁぁぁぁっ!!」

ドスンッ

少女「わぷっ!」

男「着地成功」

友「ラッキーだな」

男「良いから早く出せ!」

友「おうよ!」 ドルルンッ

ドッドッドッドッドッドッ

政府軍C「ま、待て!」パンッ パンッ

友「撃ってきやがった!」

男「良いから前だけ見てろ!絶対に当たらねぇ!!」

少女「……?」

友「そうだな!飛ばすぜ!」ドドドドド


~~~

ドドドドド……

少女「追ってきませんね…」

友「アイツらの車、パンクさせといたから」

男「助かったよ」

友「それはそうとお前……さっき頭ん中で、俺を故人扱いしただろ?」

男「えっ?いや、まぁ、良い天気だったからさ…」

友「意味分かんねーよ!」

少女「……?あの、お話がよく飲み込めないんですが…」

男「ん?あぁ、紹介しとくよ。こいつは仲間の友。知ってる人間の考えてる事が見える能力者だ」

友「さっき俺がカッチョ良く登場したのは、男が政府軍に見付かってヤバイってのが見えたからなんだぜ」

少女「へぇ~……」

男「…あ、やべ」

少女「ん?」

友「どうした?」

男「サラッと教えちゃったけど、コイツ情報屋だったわ」

友「はぁ!?お前そういう事は先に……」

少女「だ、大丈夫です!」

友「お?」

少女「私、今の事は誰にも売ったりしません!約束します!助けてくれたお礼……」

男「……友」

友「あぁ、嬢ちゃんの言ってる事ぁ本心だ。信じるよ」

男「ありがとな」ポン

少女「は、はい……」


少女「あの、コレどこに向かってるんですか?」

友「俺達のコロニーだ!」

少女「コロニー?」

男「政府から逃げてる能力者同士が群れてる小さな集落みたいなモンだよ。お前もどっかに所属してねぇか?」

少女「いえ、私はずっと野良だったので」

男「…そっか」

友「もうすぐ着く!もう遅いし泊まっていきな!」

男「ロクなおもてなしも出来ねぇけどな」

少女「はい…お邪魔させてもらいます」


~とある能力者コロニー~

ドドドドド……

能力者「……」チラッ
能力者「………」ジロジロ

少女「……なんか、外国のガラ悪い地域みたいですね」

友「まぁ概ね間違っちゃいねぇよ」

男「もうすぐ俺らの溜まり場だからなー」

少女「ん?もうココが溜まり場じゃないんですか?」

男「いやまぁ、そうなんだけど、コロニーを街とするなら今から行くのは俺の家ってコト」

友「普段寝泊りしてるビルだよ。コイツ綺麗好きだから、多分コロニーの中で一番寝心地良いぞ」

少女「へぇ…」

友「あ、先に荷物渡しに寄っても良い?」

男「そういやお前仕事帰りだったんだな」


~コロニー内 地下バー~

少女「こんな所にお店があるんですね」カツン カツン

男「元はライブハウスだったのを改造して酒場にしたんだと」

友「おーいジイさん!」カランカラン

能力者「お、男だ」

能力者「男さん、お帰りなさいッス」

男「おー」

少女「お友達ですか?」

友「友達っつーか、町民?コイツ、ココのコロニーを旗揚げたリーダーだから」

少女「へぇ!そうなんですか」

男「一応な、一応。おい友、いらねぇ事言うんじゃねぇよ」

友「(こう言ってるけど、コロニーの仲間の事すっげぇ大事にしてんだぜ。ココがここまで平和なのも全部コイツのお陰だ)」

少女「(へぇ……ふふ)」


老人「おう、来たか砂利餓鬼ども……おぅ?おいラッキーボーイ、横の小さいのは何モンだ?」

男「糞ジジイ、その名前で呼ぶんじゃねぇよ。もう片方の目も義眼にすんぞ」

老人「三十年前の俺にそんな事言ってたら、お前の墓標がここの酒瓶になってた所だぜ」

男「そうかい。ならもう三十年後にもっかい言ってやるよ。これでイーブンだろ?」

少女「(意味分かんないです)」

友「(気にすんな。挨拶みたいなモンだ)」

老人「がはは!三十年どころか、あと三年もすりゃあ俺もくたばるわ!!そりゃそうと、友、頼んでた品」

友「おう、ちゃんと全部揃えてあるぜ」ガシャン

少女「わぁ、すごい量のお酒…」

能力者「おぉ!酒だ!コレでこの店も酒屋に戻れるんだな!」

能力者「入荷前なんか酷いモンだぜ。ありゃあもう酒瓶に入った水だよ」

老人「うるせぇ。嫌なら飲むな」

男「じゃあ俺らはもう行くから」

老人「あ!ちょいと待ちな男!」

男「ん?」


老人「お前に客人だよ。奥に待たせてある」

男「客?誰だよ。他のコロニーのリーダーか?」

老人「知らねぇな。ベッピンだった」

友「マジかよ。俺にも会わせろよ」


「―――待ってたわよ、男」


男「……っ!!」

老人「お?出てきちまったか」

友「知り合いなのか?」

男「……女、テメェどうやってココに来た!」

女「歩いて来たわ」

男「ふざけんな!!!」バンッ

少女「っ!」ビクッ

女「……奥で、話しましょう」カツ カツ

男「チッ!……友、この子を任せた」

友「お、おう……」

少女「……」


少女「…綺麗な人でしたね……」

友「ホントになぁ。男め、あんな知り合いがいるなんて聞いてねぇぞ」

少女「うー……マスター!お酒!!」

老人「ガキにゃ早ぇよ」

少女「良いから!!!」

老人「ふん……自棄酒たぁ、随分マセた嬢ちゃんだな」コトッ

少女「うー……」ゴクゴク

友「お、おいジイさん。酒出すのはマズいだろ」

老人「ヴィタヴィーノだ。安心しろ。5%の発泡果実酒。こんなモンはただのフルーツジュースだよ」


~~~

男「……政府軍本部の狗が俺に何の用だ」

女「今日は貴方達を保護する為に来たんじゃ無いわ。個人的に、一人でココへ来たのよ」

男「……」

女「そう睨まなくても良いじゃない。せっかく久しぶりに会えたのに」

男「久しぶり?たぶん違うだろ」

女「あら、気付いてた?」

男「なんとなくな」

女「あらそう?ざーんねん」グニャア……

政府軍B(女)「私の変身を見破れるのなんて、貴方ぐらいよ」

男「……すれ違った知らねぇ奴がお前かも知れねぇ…お前のそういうトコが嫌いなんだよ」

女「ふふ、私は貴方のそういうトコが好きよ」グニャア

男「あん?」


女「ほら、私って美人でしょう?」

男「自分で言うのかよ」

女「だから世間の男性は私の外見しか見てくれない。世間の女性は『どうせその外見も能力で作ってるんでしょ?』って、私を見ようともしない」

男「……」

女「政府軍の人達は、私じゃなくて私の能力にしか利用価値を見出してくれないわ」

男「……」

女「でも貴方だけは違う。貴方だけは、私の能力や役職を知った上で、私の内面を見てくれる。そういう所が好きなの」

男「……わざわざ敵地のド真ん中まで来て愛の告白か?学生じゃねぇんだからよ……良いから本題に入れ」

女「ふふ、用事のついでじゃないと恥ずかしくて告白なんて出来ないのよ。いじらしいでしょ?」

男「だからそれ自分で言うモンなのか」


女「…単刀直入に言うわ。軍に入りなさい」

男「断る」

女「理由は?」

男「あそこじゃあ、俺の夢は叶わねぇ」

女「…夢って何よ。こんな寂れた廃ビルで!ビクビク暮らすのが貴方の夢!?」

男「そうじゃねぇよ」


女「じゃあ……!」

男「さっき俺の横にいた女の子、お前も見ただろ」

女「えぇ……それが何?」

男「いくつに見える?」

女「え?」

男「あの女の子、何歳ぐらいに見えた?」

女「さぁ……14か5くらい?」

男「だろうな。俺も年齢なんか知らないけど、多分それくらいだよ」

女「……それで?」

男「普通なら学校に通ってる年齢だ」

女「……」


男「なのにアイツは、こんなクズみたいな世界で必死に生きてる。制服着て、机に座って勉強してる様な時間を、命や金を素手で扱って過ごしてんだよ」

女「……」

男「俺は今の政府のやり方だけは絶対に認めねぇ。政府軍に『逃げた』お前には分かんねぇかも知れねぇけどな」

女「に、逃げたなんて言い方しないで!私だって!少しでも現状を良くする為に、能力者の側から外れて、違う方面からアプローチを……!」

男「ソレで何か変わったか!!?お前は怯えないで済む寝床を手に入れた!でも俺達の生活には何か変化があったのか!?」

女「……っ」

男「あの子も!友も!この店のジジイも!他の皆だって、現状維持になんか甘んじてない!全員更に良い環境を求めてもがいてんだよ!!」

女「……っ」ポロポロ

男「…っ!……何泣いてんだよ」

女「そんな……風に思ってたのね……」

男「……」

女「私なりに、皆の為を思って、裏切る様な事をしてまで、ここに立ってるのに…」ボロボロ

男「……スマン。言い方が悪かった」


女「……やり方を変えようって意見は、少なからず出てるわ」

男「…!」

女「でも、駄目なのよ。総統は非能力者。貴方達の酷い生活より、自分の怯えを隠すのに必死なの」

男「政府軍に、能力者は?」

女「本部には数人しか所属してないわ。私ももがいてるけど、能力者に、ましてや女の私に 権力を与えようだなんて、上の人間は考えもしない」

男「……」

女「でも貴方は違う。貴方は人の上に立てる!政府や研究機関だって『二歩目』を踏んだ貴方に下手な手出しは出来ないし……!」

男「無理だ」

女「え?」

男「野良だったらまだ話に乗ってたかも知れねぇ。でも今の俺はこのコロニーのリーダーなんだ。そんな希望や推測に乗っかって、ココの連中を見捨てる事は出来ない」

女「な、なら、私が直接上に掛け合うわ!貴方が本部の上位に入れる条件付きなら…」

男「その話は、実際に上部が条件を提示した時にしよう。今日は…帰ってくれ」ガタッ

女「……」


女「来週…コロニーを標的にした一斉保護があるわ」

男「!……」

女「もちろんココも指定地区の一つ……」

男「……」

女「……逃げて……軍に来られないなら、せめて貴方だけでも……」

男「……」

女「お願い……っ」

男「……じゃあな」ガチャ

バタン

女「……」

男「……」バタン

友「おー、終わった?」

男「おう」

少女「誰なんれすかぁ~?いまのおんなはぁ~……」ギュッ

男「おぉぉ!?おい誰だコイツに酒飲ませたの!!」

少女「わらしというものがありながらぁ~……zzz」ギュゥ

友「え?お前、そういう関係だったの?」

男「違う!!!」

少女「zzz……」

老人「何でも良いから早く寝かせてやんな」


少女「zz……あっ、おふろぉ…おふろはいる……」ウトウト

男「はぁ?風呂ぉ?」

老人「酒を裏に持ってかなきゃな~」ガチャガチャ

友「あー俺他の荷物も届けなきゃーじゃあなー」

能力者「さーてそろそろ帰るかー」ゾロゾロ

男「待てお前ら!おい!!」

少女「おふろ~……」グイグイ

男「うるせぇ酔っ払い!」


~~~

男「………」

少女「自分であるけますよぉ~……」zzz

男「おーそうかそうか。軽いなぁお前」

少女「もぉ~……」

男「……」

少女「……ありがとう、ございます……」ウトウト

男「んー?」

少女「助けてくれて……」

男「お前一人でも、多分何とかなっただろ」

少女「でも……あんなに親切にしてもらったの…初めてで……」ポロポロ

男「…泣いてんのか」

少女「……皆、自分がいきるのに必死ですから……寂しくて……」

男「……」

少女「きっとあなたは……とっても、強いんですね……zzz」

男「そんな事無いんだなぁ…残念だけど」

少女「zzz……」


男「ココはよ、お前と同じで、寂しくて、怖がりな奴がいっぱい集まってる所なんだよ」

少女「……」

男「そりゃお前だって寂しいよなぁ……こんな小さな女の子一人だもんな……」

少女「zzz……」

男「お前の居心地が良けりゃ、好きなだけココに居ろよ」

少女「ありがとう……zzz」


~~~

『あの糞ガキ!!!何処に隠れやがった!!!!』

『貴方!!!自分の娘なのよ!!?』

『ほっといたら俺達まで反抗者だ!!追われる身になるんだぞ!!!』

『あぁぁ……神様……っ!!!』

『祈りたいのはコッチの方だ!!!畜生!悪魔の子め!!!!!』

~~~

「あっれぇ!?リーダーが女の子連れてる!!」

少女「っ……?」

男「う!?うるせぇお前!起きちゃうだろ!!」

少女「あの……?」

男「あ?あぁ~……ほら、起きちまったじゃねぇか」

能力者A「どうせ起こさなきゃ駄目じゃ無いッスか」

少女「ここは……?」

能力者A「上の看板読んでみなお嬢さん」

少女「……あっ、お風呂屋さん……」

男「入るって言ってただろ」

少女「……言いましたっけ、そんなこと」

男「え!?言ったよ!!」

能力者A「リーダー……」

男「おいその犯罪者を見る目をやめろ!!」


少女「あの、お風呂、入っていいんですか?」

男「おう、快適さは俺が保証するよ」

能力者A「ちょちょちょ、リーダー!」

男「なんだよ?」

少女「…あの、女湯ってどこですか?」

能力者A「それ!そうですよリーダー!ウチに女湯なんてありません!!」

男「あれ、そうだっけ?」

能力者A「定住者は男ばっかりなんで」

男「一時滞在者の為に女湯も作るか……まぁ今日は、コイツ出てくるまで貸切な」

能力者A「困りますよぉ……」

男「良いから良いから。ほら、行ってこい」

少女「い、いただきます!」タッタッタ

能力者A「タオルとかは全部桶の中ッスからー!……もう俺はどうなっても知りませんよ」

男「なんだそりゃ」


ガララ

能力者B「おーっす」

能力者C「お、リーダーだ」

能力者D「男さんも今から風呂ですか?」

男「あー……今風呂使えねぇんだ」

能力者B「え?故障ですか
い?」

男「いんや、女が入ってる。出てくるまで貸切な」

能力者C「そんなー!オーボーっすよ!職権乱用っすよ!」

能力者D「ちょっと他所の能力者とドンパチやった所為で血と泥と汗まみれなんですよー。早く入れて下さいよー」

男「うっせぇ。喧嘩するお前らが悪い。我慢しろ」

能力者B「こうなりゃ力ずくで……ヘブッ!!!」

男「通さねぇっつってんだろ」

能力者C「男さんに勝ったら女とお風呂っすか!俄然燃えてきました!」メラメラ

能力者A「店ん中で能力はやめて下さいよ~」

男「女っつってもまだガキだ!お前らのニーズには対応してねぇよ!!」

能力者D「むしろ良い!!」バッ

男「まずい!変態か!」バキッ


~浴場~

少女「ふぅ……」チャポン

男『全員かかってこい!風呂前の良い運動だコラァ!!』

『うおおお!!』

少女「ふふ……」


少女(別に毎晩移動しなくても情報屋は出来るし…)

少女(しばらくはココにお邪魔しちゃおうかなぁ……)

男『通さぬ!何人たりとも通さぬぞぉぉぉ!!!』

『戦じゃぁぁぁ!!!』

少女(お風呂の度に…大変な事になりそうだけど……)


少女「ふぅ……」ホカホカ

カラカラ

少女「あの、あがりました……ひっ」

能力者BCD「がはっ……」ボロッ

男「おう、帰るか」

少女「あの、お風呂入らないんですか?」

男「へっ!汗かくほど運動もしてねぇからな」

能力者B「ちくしょー……」

能力者C「ともあれ風呂だ……」

能力者D「昼に消耗してなければ……」

男「おい、コーヒー牛乳」

能力者A「あいよ。150円ッス」

男「おう」

能力者A「毎度あり~」


男「ほら」

少女「え?くれるんですか?」

男「おう。定番だろ?」

少女「さぁ……?」

男「知らねぇのか…あ、もしかしてお前、日本人じゃないのか」

少女「え?はい。二年前にこっちに逃げて来ました」

男「そうか……」

少女「…んー!おいしい!」

男「……帰るか」

少女「はいっ」


~街外れのビル~

男「着いたぞ」

少女「ふぁい……」ウツウツ

男「まだ酒抜けきった訳じゃねぇんだな……よっこらしょ」

少女「わわ………zzz」

男「……」カツ カツ


男「…ただいま~」ガチャ

少女「……あの」

男「ん?」

少女「た、ただいまぁ……」

男「……おかえりー」

少女「んへへ……zzz」

男「何だよ…?」

少女「ふふ……」

男「……おやすみ」

少女「zzz……」

~~~

申し訳ない一旦消えます
続きは明日のこの時間か、深夜に

saga付けてクレヨン

>>41
すみません。こんな物騒な単語が出てくるSSは初めてなモンで……



少女「ん……」パチ

少女「ぁふ………」

男「おはよう」

少女「きゃぁぁあ!!!」

男「おぉう!?」ビクッ

少女「び、ビックリした……」

男「その言葉、リボンとカード付きで返すよ……」

少女「あ…おはようございます。昨日はココに泊まったんでしたね」

男「おう……言っとくけど、何もやましい事はしてないからな?」

少女「えぇ~?ホントにぃ~?」

男「誰が酔っ払いのガキに手ぇ出すよ……ほら、朝飯」

少女「えっ、あ、ありがとうございます」

男「目玉焼きには?」

少女「タルタルソース!」

男「ねぇよ」

少女「ふふ、冗談です。何もかけませんよ」モグモグ

男「あ、ジャムならあるけど、何付ける?」

少女「タルタルソース!」

男「もう良いってそれ」

少女「いちごでお願いします」

男「はいよ」


男「……そんでお前、今日はどうすんだ?」

少女「ふぁい?」モグモグ

男「成り行きとは言えお前の事はもうコロニーの仲間だと思ってる。でもお前、情報屋をやめる訳じゃねぇんだろ?」

少女「ゴクン……はい!コレで生きてきましたから!迷惑を掛けない程度には稼ぎますよ!」

男「ほう」

少女「朝食付きのホテル代に、さっそく一つ教えてあげましょう」ガサガサ

男「お?地図か」

少女「えーと、このコロニーからだと……この北にある小さなチャイナタウン。ここは中立地帯というか、無法地帯なんで、気兼ねなくお買い物出来ますよ!」

男「……マジで?」

少女「はい!」

男「…能力者検問は?」

少女「火曜と金曜の午前中に、小太りのオジさんが一人いるだけです!」

男「今日は!?」

少女「木曜日です!」

男「…いける!よっしゃぁ!!お前最高だよ!!」ヒシッ

少女「きゃぁ!!」

男「おっとスマン!!着替えたら酒場に行くぞ!!」

少女「は、はいぃ!」ガサガサ


~コロニー内 地下バー~

友「北のチャイナタウン??」

男「おう!今日は検問もねぇ!!」

老人「そんな噂聞いた事もねぇな…」

少女「ホントですよ!情報を買ったお客さんが次の日ホクホク顔で話してくれましたから!」

友「お前が行った訳じゃねぇのか」

少女「えぇ、まぁ、はい……」

老人「…ま、様子見して危なそうなら引き返しゃ良い話だろ」カサッ カリカリ

男「俺と友だけで、取り敢えず見に行くだけでも良いしな」

少女「あの!私も連れてって下さい!!」

男「お?」


友「そういやお嬢ちゃん、なんで自分では行った事無いんだ?」

少女「それは……さっきもお伝えした通り、中立地帯というよりは無法地帯なので……」

老人「ガラが悪いって事か」

少女「はい……」

友「だってよ。俺は別に良いと思うけど」

男「うーん。ガラが悪いって聞いた場所にわざわざ連れてくの、ホントは賛成したく無いんだけど……」

老人「まるで親バカだな……そう過保護にしないで、連れてってやんな。その子、テメェが思ってるよりもよっぽど強ぇよ」

男「しかしながら情報屋としてナビゲーションを勤めてもらったりと必要になってくる事も無きにしもあらずで……」ブツブツ

友「ハッキリしねぇなぁ!男ならイエスかノーで答えろや!!」

男「………イエス」

少女「やったぁ!」


老人「これ、頼むわ。無かったら適当に代わりのモン買ってくるか、それも見当たらなかったら買ってこなくて良い」ビリリ ピラッ

友「ん。……なんだこりゃ、ジュースばっかじゃねぇか」

男「ジジイ、いつの間に酒場の看板下ろしたんだ?」

老人「バッカ言うんじゃねぇよ。そこの嬢ちゃんの分だ」

少女「えっ?」

老人「この子に酒出すと、どっかの親バカがうるせぇモンでな」

男「ははっ、こんだけジュース買わせておきながら、どっちがだよこのバカジジイ」

老人「おい待て男。親バカや爺バカならまだ分かるけどな、バカジジイってそりゃもうただの悪口じゃねぇか」

男「言葉の綾だ。いちいち気にすんなよ、ハゲんぞ」カランカラン

少女「あの、失恋します!」タタタッ

老人「おー、気ぃ付けて行ってこい」


~~~

ドドドドド……

友「…んじゃ、着いたらいつもの手筈通りに」

男「おー」

少女「どうするんですか?」

男「俺が街に入って買い物してる間、友がバイクで適当に街の外を彷徨く。そんで買い物終わる頃に元の場所に集合する。そんだけ」

少女「一緒に行かないんですか?」

友「まぁ、コイツは一人にしといた方が都合が良いんだよ」

少女「?」

男「でもお前、街を見に行きたいのに外周り担当じゃ意味無いモンな。付いて来るだろ?」

少女「はい!お願いします!」

男「危なそうだったら一人で逃げろよ。何か連絡手段とかあれば良いんだけど…」

少女「あ!ご心配なく!」ガサゴソ

友「?」

少女「じゃじゃーん!けーたいでんわー!!」

男「おぉ!」

友「お前そんなん持ってんのか」

少女「はい!情報屋の職業柄、連絡手段には事欠きません!!」

男「そりゃすげぇけど…意味ねぇや」

少女「え?」

友「だって俺ら、携帯持ってねぇもん」

少女「あー……」

男「まぁ、友が頭ん中見てくれるから大丈夫だろ」

友「ふっふっふ。嬢ちゃんの考えてる事なんかお見通しなんだぜ?」

男「きもっ」

少女「……///」


~無法なチャイナタウン~

男「じゃあ、また後で」

友「おー。危なくなったら行くわ」

男「行くぞ」

少女「はーい!」テテテ

友「懐かれてんなぁ…」


男「ホント、見るからにガラ悪いなぁ……ウチ以上だ」

少女「能力者、非能力者を問わず悪い人が集まりますからね、麻薬の売人とか」

男「へぇ……」

少女「何処に何があるか、分かります?」

男「うんまぁ、チャイナタウンなんてどこも似た様なモンだろ。今日はヤバいブツを手に入れに来た訳でも無いし、そう深く入り込む必要は無いハズだよ」

少女「なるほど…」キョロキョロ

男「…色々見て回るか?」

少女「はいっ」


少女「わぁっ!見て下さい!豚の頭!」

男「あんなんマジであるんだな…」

少女「あっ!アソコ!飲み物が沢山置いてますよ!」

男「お、おい!引っ張んなって」


男「…品札が読めねぇ……適当に買うか…?」

店員「歓迎光臨」

男「おぉ!?あ~……えーと」

少女「在尋找在這个紙上写着的商品!」

男「!」

店員「明白了」

男「…お前、ここの言葉が分かんのか」

少女「えぇまぁ、元に住んでた地域の言葉ですから」

男「成程な……じゃあここは、お前の故郷の景色に似てたりするのか?」

少女「……」

男「?」

少女「…『二年前まで住んでた地域』には良く似た景色ですね」

男「は?」

少女「私にとってあそこは故郷じゃありません。二度と行く事も無いだろうし」

男「お前……親は?」

少女「私の能力が発現した途端に私を捨てました」

男「っ!」

少女「『悪魔の子』って言われましたよ。全く言い得て妙ですよね、自分の事を悪魔って自己紹介してるんですよ、ふふ」

男「……スマン。いらねぇ事聞いて」

少女「…別に、もう昔の事ですから……」

店員「准備完成了」

少女「謝謝!ほら、行きましょう!」

男「お、おう」


~~~

男「……」

少女「……気付いてますか?」

男「あぁ……つけられてんな」

少女「もう……せっかくのデートだったのにー……」

男「なんでこんな殺伐とした所でデートしなきゃいけねぇんだよ。……お前、一人で出口まで行けるか?」

少女「もうこの街の地図は出来ましたよ?」ピラッ

男「いつの間に……じゃあ出口の方に向かえ。途中で友と合流出来るはずだから」

少女「貴方は……って、聞くまでも無いですね。荷物半分こしましょう。はんぶんこー」

男「おう。じゃあな」

少女「お気を付けて!」スゥ…

男「お?」

少女「私にかかる『質量エネルギー』を『位置エネルギー』に『変換』します!」フワッ

「な、何だ!?」
「飛んでる!能力者だ!」

男「すげぇなぁ……」

アウトロー「……」ゾロゾロ

男「…………」


少女「……」フワフワ

少女「……」スタッ

少女「…ここなら、バレませんかね……」

友「何が?」

少女「きゃぁああ!!」

友「うお!?大声だすんじゃねぇ!」ガシッ

少女「むぐむー!!」

友「…何でお前、隠れて観察なんかしてんだ?」

少女「プァッ……だって、あの人の能力知らないんですもん……」

友「あぁ~……アイツ、あんまり使いたがらないだけで、聞きゃあ教えてくれると思うぞ?」

少女「なんか、タイミング失っちゃって……」

友「ふぅん……じゃあ観戦するか。見て分かる類の能力でもねぇけどな」

少女「………」


~~~

アウトロー1「お兄さぁん、すごいね今の子。妹?」

アウトロー2「先に行っちゃったねぇ~。あっ!もしかして逃がしてあげた感じ?やっさしー」

男「……」

アウトロー3「何買ったの?ちょっと見せてよー」

男「…最初に言っとく」

アウトロー3「あ?」

男「逃げる奴は追わねぇ。お前らみたいなチンピラとは違うから」

アウトロー3「………」ブンッ

ゴッ!!!!!

アウトロー1「わぁお!」

アウトロー2「いったぁーい!あはははっ」

男「……だからな、ヤバいと思ったら、逃げろよ。そこは自己責任だ」


アウトロー2「あっれぇ?口ん中とか切れてないんだ?ラッキーだねお兄さん!」 ブンッ

男「まぁね」パシッ

アウトロー1「よっと」ズドムッ

男「……始まったか」

アウトロー1「あ?……あ、れ」

男「蹴り所、悪かったみたいだな。足大丈夫か」

アウトロー1「うるせぇよ…!」

アウトロー2「お兄さん!ソイツにばっか構ってないでコッチも、って、うわぁ」ズテンッ

アウトロー3「いってぇな!何転んでんだお前は!」

アウトロー2「な、なんだ……?」

アウトロー3「俺が知るかよ!」


男「……」

アウトロー3「うらぁ!」バキッ

男「……!」

アウトロー3「ふんっ!!」ゴッ!! ガッ!!

男「痛いなぁ……!」ボスッ

アウトロー3「うっ!?」ドサッ

アウトロー1「あ!?おい!」

アウトロー3「カフッ……アッ……」

アウトロー1「ちくしょう、何だコイツ……」ミシッ

アウトロー1「!!」

男「あ……じゃあな」タッ

アウトロー2「な!待てコラァ!!おい立てよお前ら!」

アウトロー1「糞が!!何でだ!!!?」

アウトロー3「ウグッ………ハァ……チクショ……」

アウトロー1「何で足が!折れてやがんだよぉお…!!!」


男「……くそっ!」

男「…………やっちまった」

~~~

少女「え、あ……」

友「拾いに行くぞ。アイツ道は全然ダメだから」

少女「あ、はい……」

少女「………」


男(……あれ、どっちだっけ、右か?)

友「残念、そこは真っ直ぐでしたー」

男「お?おぉ、来てたのな」

友「まぁな。帰んぞ」

男「おう……」

少女「………」

男「……あれ」

少女「………」

男「もしかして、見てた?」

友「悪ぃな。見せといた方が良いかなと思って」

男「そっか……えーと……」

少女「……」

友「…よ、よーし!帰んぞー!」

少女「……」

男「………」ポリポリ

友「……失敗だったかな…」


~~~

ドドドドドドドド……

少女「すみません…覗き見なんかして……」

男「いや、別に……俺の能力、分かった?」

少女「いえ……肉体硬化、かな……」

男「……そんなんだったら楽だったのにな」

友「………」

男「俺の能力はなぁ…周りにいる人間の『運』を吸い取るんだ」

少女「え……?」

男「確率操作?かな。発動すると自動で周りの奴の幸運が、俺の中に入ってくる」

少女「……」

男「最大出力で使えば、目の前にいる人間は……5分くらいで、勝手に……死ぬ」

少女「っ!!」

男「ごめん…怖いか?」

少女「い、いえ!ただ…驚いちゃって……そんな能力が……」

男「…離れても良いぞ。お前の運も、その、吸っちゃうかも知れねぇし」

少女「い!いえ!大丈夫です!」

男「そっか…ありがとな」ナデナデ

少女「わ……」

~コロニー内 地下バー~

男「…じゃ、コレ。頼んでた品」

老人「ん。ほらよ、ご褒美だ」ポイッ ポイポイッ

男「自分で買ったジュースをご褒美で貰ってもねぇ」パシッ

少女「わわ、ありがとうございますっ」パシッ

友「じゃー他の荷物を届けに…」パシッ

老人「あー…男」

男「あ?なに?」

老人「裏に重てぇ荷物がある。運ぶの手伝ってくれ」

男「ん?……良いけど」

友「じゃあ俺らだけで行くわ。終わったらまた来る」

男「あー……いや、そのまま帰って良いよ。ココに用事無いだろ」

友「……」

少女「あの……」

男「……お前も、今日は好きな所で寝ろよ」

少女「っ……」

老人「………」

友「…おいおい、男…」

少女「…失礼、します」タタッ

カランカラン……

友「はぁ……また明日~」

男「…おう」


~~~

男「あれ、マスター?荷物ってどこだよ?」

老人「んなモンねぇよ」

男「はぁ?」

老人「テメェ、あの子と何かあっただろ」

男「……まぁな」

老人「あぁいう時ぁ、お互い一旦落ち着いて考える時間が必要なんだよ」

男「……お節介ジジイめ」

老人「カッカッカ!女心も分かんねぇ糞ガキよりぁマシだね!」


老人「…それで、何があった?」

男「……能力、バラした」

老人「ふん。何だそんな事か。つまんねぇ」

男「テメェ……」

老人「良いか糞ガキ、そりゃお前の悩み過ぎだよ」

男「……」

老人「言っとくが、俺ぁテメェの能力なんざ気にしちゃいねぇよ。人の運吸えるから何だって話だ。そんなら俺ぁ大気中の水分を固められるぜ?」ピキッ……

男「……」

老人「周りの連中もあの嬢ちゃんも恐らく一緒さ。誰もお前の能力を知ったぐらいでお前から離れていかねぇよ」

男「あぁ……」


老人「さて、慰めてやんのはここまでだ。こっからは厳しい話すんぞ」

男「…?」

老人「お前……あの子をどうするつもりだ?」

男「どうする、って…?」

老人「親代わりになるつもりか?兄か?それともオトコか?」

男「いや…別に、そんなつもりじゃねぇけど……」

老人「今朝は親バカなんつって茶化したけどな、親ってのは大変だぞぉ?親に限らず、自分以外の誰かの責任まで背負うのは大体大変だ」

男「マスター…子供は?」

老人「あぁ……娘がな、『いた』」

男「そうか……」


男「アイツよ……二年前に親に捨てられて、こっちに逃げて来たんだと…」

老人「……」

男「別に保護者面するつもりはねぇよ……でも、ココがアイツにとっての故郷になってくれたら、良いとは思う」

老人「……ふん。大して恰好良くもねぇ台詞吐きやがって。お前の好きにすりゃ良いが…筋は通せよ」

男「そのつもりだ」

老人「なら俺から言う事はもうねぇよ。お節介ジジイの説教は終わりだ」

男「…ありがとう」

老人「へっ!憎まれ口ばっかのお前からそんな言葉が聞けるとはな!明日死ぬんじゃねぇか俺?」

男「良いこと教えといてやるよ。男の自慢、女の下ネタ、それと老人の自虐。この三つは基本的に面白くねぇ」

老人「肝に命じといてやるよ」


~~~

少女「……」ゴクゴク

友「…お前さぁ」

少女「?」

友「いつからアイツの事好きなの?」

少女「ぶァフェっ!!」ダバァ

友「うわぁ」

少女「あ、あの!お言葉ですが!異性の頭の中を好き勝手に覗くのは、良くないと思います!!」

友「能力なんざ使わなくても分かるっつーの……それで?昨日初めて親しくなったにしては懐き過ぎじゃね?」

少女「………最初から、です」

友「おやおや?」

少女「だから……初めて会った日。4ヶ月くらい前からです」

友「マジで?」

少女「マジです」プシュー

友「ははは!こりゃ乙女だわ!なになに?4ヶ月前に何があったの?」


少女「『最近コロニー同士の喧嘩でボコボコにされたから、相手の能力が知りたい』って依頼が来ましてね」

友「あぁ、そういや前にイザコザあったな」

少女「それで良くいるっていう廃ビルに探しに行ったら……」

友「コロッと?」

少女「そういう言い方はやめて下さい!」

友「で?で?どこが好きになったの?」

少女「……やさしートコ」

友「はっはー!乙女だー!!」

少女「うううるさいですよ!!!!」


友「そんでソレ以来、能力を教えてもらうって口実でしょっちゅう会いに行ってた訳ね?」

少女「ちょ!そこまでは言ってないんですけど!!」

友「……そんだけ長いことアイツの事見てたらさー、分かるだろ?」

少女「え?」

友「アイツがすげぇイイ奴だとか…能力の事あんまり気に入って無いとか…」

少女「はい…勿論です」

友「アイツが良く一人で廃ビルにいる理由、知ってるか?」

少女「…?いえ…一人が好きなのかなーって……」

友「能力で、周りの人間の運を奪わない為だってよ」

少女「あっ……」

友「そんな、馬鹿みたいに人の事ばっか考えてる奴なんだよ、アイツは……あ、コレ、本人には秘密な?」

少女「はい……」


友「秘密ついでにもう一つ教えてやるよ」

少女「はい?」

友「コレはマジで誰にも言ってねぇ事だが……俺の能力、実はそんなに便利じゃねぇんだ」

少女「?」

友「確かに考えてる事は見えるけど、それだけ。ソイツの過去や、性格や何が好きで何が嫌いかなんて、俺が予想してるだけでさっぱり分かんねぇんだよ」

少女「そう、なんですか…」

友「俺はさ、男の一番の理解者みたいな面してるけど、ホントはアイツの事何にも知らねぇ。アイツ、いっつも誰かに気ぃ使って何か隠すから」

少女「何でそれを、私に…?」

友「君なら…アイツの理解者になれるかなって思ってさ」

少女「……!」

友「頼むよ……アイツを支えてやってくれ」

少女「でも、私……」

友「ふふ……約束してくれたら、教えてやるよ」

少女「え?」

友「仲直りの方法、ってやつ?」ニヤ

名前に見覚えはあったがLOのタイトルで小話書いてた人か
台詞回しとか好きよ

>>48少女が失恋してもうてるでー

>>69
申し訳ない。「失礼します」で脳内変換お願いします


~街外れのビル~

男「はぁ……」ガチャ

男「ただいま……」

少女「お、おかえりなさいませ!!!」

男「うおぉ!?いたのか!!……ってお前何だその格好!!?」

少女(E ウサ耳メイド)「しょ!食事の用意が出来てます!!どうぞ!///」グイグイ

男「おうちょっと待て!ちょっと待て!!」

少女「なんですか?」

男「その服は何なんだ!!?」

少女「あの……昨日お風呂屋さんで会った能力者の人から…借りました」

男「あんの変態野郎!!!!」


少女「Dさん曰く」

~~~

能力者D『俺的にー、リーダーは俺と同じ素質があると思うんスよ~。だからこの衣装があればワンパンKOッス!』

~~~

少女「…との事なんですけど……ど、どうでしょう?」クルクル

男「いやぁ王道を押さえつつ安易にネコ耳に走らない所にこだわりを感じるというか、一粒で二度美味しいというか……ってそうじゃなくて!!そもそも誰の差し金だそりゃあ!!!」

少女「友さんです…」

男「そんで何でお前はソレを着ようと思った!!?」

少女「あの、その、な、仲直り……したいなって……」

男「!……」

少女「それで、その、色んな人にアドバイス貰って、その、ごほうし?すれば良いって話になって…でも、何の事か分かんなくて……」ウルッ

男「あー……分かった。ゴメン。」

少女「え…っ?」

男「悪かったよ。不安にさせて。はい仲直りー」ナデナデ

少女「えっ、その……はい」


男「んで何だっけ?飯作ってくれたんだっけ?」

少女「あ!はい!向こうに…」

男「んじゃ頂こうかな……お前、そのスカート歩き辛いだろ」ヒョイッ

少女「あ!やめてください!歩けます!歩けますから!!」

男「良いから良いから…」


能力者D「なんか新婚さんみたいッスね~」

男「うわぁぁぁあああ!!!!!??」バッ

少女「きゃぁああああワプッ!!」ドサッ

男「わ、悪ぃ!」

少女「だ、大丈夫です!」

能力者D「似合ってますね~メイドさん」

男「お前なんでいるんだよ!!!」ゲシッ ドカッ

能力者D「いてっ!やだなぁ、俺の能力忘れたんスかリーダー?死角さえありゃあ俺はどこにだって現れますよ」

少女「て、テレポート…?」


男「帰れ!次来たらマジで泣かすからかな!!」

能力者D「あ、少女ちゃん、その衣装あげます。その衣装も本望ッスよ」

男「分かった!帰れ!!分かったから帰れ!!!」

能力者D「……男さん。俺達みんな、アンタの事を信じて集まってんだよ。水くせぇ事言わずに、もっと頼ってく……」

男「この状況で何言ってもカッコ良く無いから!帰ってくれ!!!」


~~~

男「……」モグモグ

少女「……」パクパク

男「…うまい」

少女「あっ、ありがとうございます。へへ」

男「……そんでさ」

少女「はい?」

男「ソレは、いつになったら着替えるの?」

少女(E ウサ耳メイド)「………」

男「…まさか、ちょっと気に入ったのか」

少女「はい……へへ、可愛くないですか?」

男「……………………」モグモグ

少女「ちぇ」


少女「あの」

男「ん?」

少女「さっき、お部屋をお掃除してたんですけど……」

男「おぉ、さんきゅ」

少女「本棚…」

男「」ビクッ

少女「政治の…難しそうな本、いっぱいでした」

男「!あぁぁそっちね!あーそっか!!」

少女「??」

男「いや、何でもねぇ」

少女「政治に興味があるんですか?」

男「まぁな。能力者になる前は、目指してた」

少女「今は?」

男「能力者の扱いを変えるには政治家になるのも一つの方法なんだろうけどなぁ……やっぱ、難しいよ」

少女「……あの!あ、諦めることは無いと思います!」

男「そうか…?」

少女「はい!」

禁書の死角移動みたいなのか


男「…お前は?」

少女「はい?」

男「夢とかねぇの?」

少女「夢……ですか……うーん……」

男「……」

少女「考えた事もありません……」

男「そっか……大変だもんな」

少女「……あ!」

男「お?」

少女「お菓子!お菓子が食べたいです!!」

男「あ……」

少女「子供っぽいって馬鹿にするかも知れませんけど、夢というか、欲しい物と聞いて真っ先に……あら?」

男「えーと」ガサゴソ

少女「何してるんです?」

男「あった。忘れてたわコレ」ポイッ

少女「えっ………チョコ?」

男「うん。今日買ったんだよ。言葉通じないから必死でさぁ……」

少女「ふぇ……あの……これ……」フルフル

男「ちょ!?泣くなよ!!」

少女「ゴメンなさい……でも、嬉しくて……」ボロボロ

男「泣くならせめて食べてからにしろよ…」


少女「い…いきます」ビリリ

男「お、おう」

少女「あ~……むっ」パクッ

男「……」

少女「………ぶぇええええぇ……」ボロボロ

男「結局泣くのかよ!!」

少女「おいしぃぃ…」ボロボロパクパク

男「…そんなに?」

少女「ちょ、ちょっとだけあげます!ちょっとですよ!」

男「はいはい……なんだよ、溶けかけじゃん。美味いか?」

少女「はい……っ」

男「…なら良いけどさ」


少女「もう……せっかくの夢なのに、あっさり叶えないでくれませんか?」

男「え?ゴメン……?」

少女「夢、何か他にあるかなぁ……?」

男「……あのさ、夢見るのにまで、制限とかかけんなよ?」

少女「??」

男「お前は能力者だけど、普通の女の子じゃん。普通に何でもやりたい事やって良いと思う。っていうか、駄目な筈無いんだよ」

少女「……」

男「能力者も非能力者も関係なく、普通に夢見て普通にそれを叶えられるように、俺頑張るからさ。まずはお前だけでも、夢見てくれねぇか?」

少女「……はいっ!約束ですよ?」

男「あぁ……」


少女「フンフーン♪」

男「……そんで、お前今日はどこで寝んの?」

少女「えっ?」

男「昨日は酔ってたから取り敢えず寝かせたけどさ、そこ、俺のベッドなんだけど」

少女「えー……ココじゃ駄目ですかぁ?」

男「…気に入ったの?そこ」

少女「えぇまぁ、はい」

男「…………じゃあそこで寝ていいよ。俺、隣の部屋行くわ。おやすみ」

少女「えっ!ちょ!そういう事じゃ!」

バタン

少女「そういう事じゃないのになー……もういいや。おやすみなさーい」ゴロン

~~~

こんなに長くなるとは思わなかった…
もう少し続きます。ゴメンなさい


>>77
説明が足りなかったですね

禁書の査楽はテレポートの為に第三者の位置座標を基準にしないと移動出来ないって設定でしたが

能力者Dのはそんな難しい話ではなく単に『誰の視界にも入ってない場所から、同じく誰の視界にも入ってない場所へだけ移動する能力』ってだけです
ストーリーにはあまり関係無いので読まなくて大丈夫です。

実はこの能力にシュレディンガーって名前とか付いてるんですけど
ストーリーには全く関係無いので知らなくて大丈夫です。

>>84
おっつ
既出の能力に名前ついとるんやったら吐き出していってええねんで?(ニッコリ)

>>86
許してつかあさい
ビック黒歴史が厚塗りビック黒歴史になっちゃいます



~~~

男「zzz……」

少女「…おはようございまーす」ガチャ

男「zzz………」

少女「…………」

男「zzz……………」

少女「……」ゴソゴソ

男「zzz………」

少女「…………」ギュウ


~~~

男「……あのさ」

少女「はい」

男「起こしに来てくれようとした事は分かった。それは感謝してる」

少女「はい」

男「それで自分が眠くなっちゃって結局二度寝ってんならまだ分かる」

少女「はい」

男「でもお前、起きてただろ」

少女「はい。昨日は良く眠れたので」

男「おかしいよね」

少女「……?」

男「…まぁ良いや。もうやんなよ、絶対だからな」

少女「は~い」

男「おい適当だぞ返事が。良いか、言語道断だからな」

少女「難しい日本語分かりません」

男「お前『挙句の果てに』とか『言い得て妙』とか微妙に難しい言葉使ってただろ。知ってんたぞお前が日本語達者なのは」


少女「今日はですね、情報屋のお仕事に向かいます。依頼も何件かあるので」

男「おぉそうか。何か手伝える事ある?」

少女「いえ……特には。」

男「そっか。直接行くのか?俺はジジイんトコに寄るけど」

少女「あ、急ぎの用事じゃないので御一緒します。マスターに挨拶したいし」

男「分かった。着替えてこい」

少女「はーい」

男「!ちょっと待てお前!着替えるって何持ってんだ!!」

少女「え?昨日貰ったお洋服ですけど」

男「お前それ洋服として気に入ってんのか!?」

少女「え?それ以外に何があるんですか。コレが食べ物に見えますか?」ヒラヒラ

男「いやそういう事じゃなくてな……やめとけ。それは服ん中でも、ちょっと特殊な服だ」

少女「へぇ?そうだったんですか」

男「あぁ、パジャマで出掛けないだろ?それと一緒」

少女「分かりました!じゃあコレは、お家の中だけで着ますね!」

男「言い方が悪かったかな。もうそれ着るな」

少女「えぇ~……?」

男「外で着たらお前が特殊な奴になるけど、家ん中で着ちゃうと俺が特殊な奴になるんだよ」

少女「んー、良く分かんないです」

男「分かんなくて良いよ」


~コロニー内 地下バー~

少女「おっはようございまーす!」カランカラン

能力者「おぉ、少女ちゃん」

能力者「すっかり慣れたモンだなぁ」

老人「嬢ちゃん、コイツらに言ってやれ。朝っぱらから酒なんか煽って恥ずかしくねぇのかってな」

能力者「ジイさん、別に俺達ぁ仕事しねぇでただ飲んでる訳じゃあねぇのよ」

能力者「そうそう。コレから風呂屋の増築工事だ」

男「お、勝手に話進めてくれてたんだな。助かる」

能力者「そりゃ毎晩決まった時間に風呂屋でリーダー対俺達のガチンコバトルなんかしてたらラチが明かねぇよ」

少女「女湯ですか!」

能力者「そーそー」

能力者「効率よくいきゃ明日か明後日には湯を張れる」

少女「わぁい!」


友「おーす」カランカラン

男「よー」

少女「おはようございますっ」

友「ん」

男「今日なんか仕事入ってる?」

友「いや別に」

男「そうかぁー……」

少女「じゃあ、私はそろそろ行きますね!」

友「あれ、今日は付いて回らないんだ?」

少女「え?はい。お仕事なので」

友「ふぅん……」ジーッ

少女「え、あの…」

友「…うん、別に二人だと気まずいとかそういう訳じゃないのね。良かった良かった」

男「ふん」ゴクゴク

友「良いだろう!行ってよし!」

少女「はい!行ってきまーす!」

友「らっしゃ~い」ヒラヒラ

少女「………」

男「ふわぁ……」

少女「…行ってきます!!!」

男「うわぁビックリした!お前まだいたのかよ!」

少女「行ってきます!!」

男「あぁ…はいはい。行ってらっしゃい」

少女「えへへ」タタタタッ

カランカラン

老人「ふん。青いねぇ」

男「青過ぎんだよ。渋くて食えねぇっつの」

友「お?つまりそれは、熟れ次第美味しく頂くっていう?」

男「うっせぇ!そういう意味じゃねぇ!!!」

老人「じゃあどういう意味なんだよ」


~コロニー付近~

男「ふぁ……」トボトボ

男(廃ビルで昼寝でもしよっかなぁ……)

ガヤガヤ

男「お?」

能力者「畜生、この先どうすれば良いんだ……」

男「…あ、アレだ。一〇五地区のコロニーの奴だ」

他コロニーのリーダー「!アンタは!二〇二の外れんトコのリーダーじゃねぇか!」

男「何してんだ?凄い人数だな……コロニーの連中の半分はいるんじゃねぇか」

他リーダー「政府軍だ……アイツら、コロニーを狙いやがった……」

男「…それは穏やかじゃねぇな」


他リーダー「逃げるしか無かったよ……残りの半分は、皆捕まっちまった」

男「っ!!」

他リーダー「移民しようにもこの人数だ…三ヶ所回ったがどこも手いっぱいだったよ」

男「ふむ………」

他リーダー「でもな、せっかく俺みたいな奴の元に集まってくれた人たちだ……出来ればバラバラにはなりたくねぇんだよ……」

男「うん。よし、じゃあ俺んトコ来い」

他リーダー「は!?」

男「移民?亡命?何になるのかな…まぁ良いや。全員俺のコロニーで面倒見てやる」

他リーダー「い、良いのか!?ホントに!!?」

男「良いよ。多少窮屈になるかも知れねぇけど……」

他リーダー「助かるよ……っ!」

男「その代わり……」

他リーダー「……」

男「何があったのか、詳しく聞かせてくれ」

他リーダー「あ、あぁ…」


~とある能力者コロニー~

能力者B「…おいおい、どうなってんだこりゃあ…」

ガヤガヤ

能力者C「なんだコレ…合併?移民?それとも移動途中かな……」

男「おー、お前ら」

能力者B「!リーダー!こいつはどういう事ですか!」

男「俺ん家の周りのビル、空きいっぱいあるからよ。人集めて掃除して来い」

能力者C「ちょ!説明をしてくださいよ説明を!情報格差ッスよ!」

男「あぁ、困ってたから拾ってきた」

能力者C「はぁ!?」

男「じゃあそういう事で。頼むよー」ヒラヒラ

能力者B「……ホンットにあの人は……馬鹿なんじゃないかな……」


~コロニー内 地下バー~

老人「…あのよ、男」

男「なんだ?」

老人「テメェが超の付くお人好しだってのは重々承知だ。もうそこに関して言う事はねぇ」

男「おう」

老人「移民を受け入れるってのもリーダーのお前が決める事だ。そこにも文句は言わねぇ」

男「おう」

老人「でも何だって、小難 しい会議を開くのにウチの店を選びやがる?」

男「落ち着いて座れる場所をと思って。どうせ昼過ぎなんだから客もこねぇだろ?」

老人「コッチが落ち着かねぇんだよ、畜生が。ほら、さっさと終わらせちまえ」

男「はいよ」


男「…さて、話を聞こう」

他リーダー「地図、あるか?」

男「お?」

他リーダー「地図だ。あった方が伝えやすい」

男「あぁ~……ウチにはロクなのがねぇな。持ってる奴ぁいるが、今日は出払ってる」

友「呼び戻しゃ良いだろ」

他リーダー「あ、電話ならある」

男「お、そうか…アンタさ、これぐらいの背の情報屋知ってるか?14の女の子だ」

他リーダー「あぁ、世話になった事がある。番号も確か持ってる筈だ」

男「だろうな。アイツ色んなトコ飛び回ってるから。呼び出してくれるか?」

他リーダー「あぁ、それは構わないが……」

男「ん?」

他リーダー「あの人は野良だったはずだ。アンタとは一体どういう関係が?」

男「あ?あー……妹だよ」

友「……………………」

他リーダー「そうなのか」ピッピッ


~~~

少女「はい!また何かあれば連絡ください!いち早く情報をお教えしますから!それでは!」

少女「フンフーン♪」

♪prrrrprrrr

少女「あら?お電話だ……一〇五のコロニーのリーダーさん?何だろ」pi!

少女「はいもしもし!」

他リーダー『もしもし、情報屋か?』

少女「はい!どうかなさいました?」

他リーダー『ちょっと事情があってな。アンタ兄さんの代理で電話掛けてるんだが』

少女「は?お兄さん?」

他リーダー『あぁ、兄さんに頼ま「ちょっと代われ」あ、はい』

少女「?」

男『…もしもし、少女か?』

少女「!おおお男さん!?!?」

男『おう。仕事終わった?』

少女「は、はい!今終わらせた所です!」

男『そっか。今から友に向かわせるからよ。急いで帰ってきてくれねぇか?厄介な事になった』

少女「はぁ……?分かりました」

男『頼むわ』pi

少女「………」

少女「……お兄さん?」


~~~

友「………お」ドドドドド

少女「あ!友さーん!ここです!」

友「見っけた見っけた。ほら乗れ。早く帰るぞ」

少女「何かあったんですか?」

友「他所のコロニーから大量に移民が来てな。今その話し合いの真っ最中ってワケ」ドドドドド

少女「なるほど……」

友「…」

少女「…それで、兄というのは?」

友「あれはね、君との関係を勘ぐられた男が苦し紛れについた嘘だよ」

少女「へぇ~……」

友「……」

少女「妹かぁ……」

友「………………」


~コロニー内 地下バー~

ドドドドド……

男「来たようだな」

他リーダー「……」

少女「ただいま戻りました!」カランカラン

男「おー」

友「……」

少女「何か御用ですか!お兄ちゃん!!!」

男「!!??」

友「ぶっ!!」

老人「ごほっ!げほっ!!」

他リーダー「…?」

男(おい友テメェ!)

友「知らんぞ。俺は何も」

少女「どうしたんですかお兄ちゃん!!」

男「おい。1回黙れ」

少女「お兄ちゃーん!」

男「……」ペシッ

少女「あいたっ!酷いですお兄ちゃん!」

他リーダー「あの……話を始めたいんだが」

男「お、おう。そうだな。おい、地図貸してくれ」

少女「はい分かりましたお兄ちゃん!どうぞお兄ちゃん!」ピラッ

老人「………っ」プルプル

友「(おいジジイ。笑うな。笑っちゃいけねぇ)」


他リーダー「政府軍がいたのは主にこことここらへんだ」

少女「地区保護じゃないですね。明らかにコロニーを狙ってます」

他リーダー「あぁ。恐らくそうだろう」

男「コロニー一斉保護……もう始まってやがるのか……」

他リーダー「そんなものが計画されていたのか?」

少女「聞いたことありませんけど…」

男(まずい!)

男「あ、あくまで噂だよ」

他リーダー「でも本当にその噂の通りなのかも知れない。今までの巡回や保護なんかとは比べ物にならねぇ人数と勢いだった…」

男「……」


~~~

男「……話は分かった。歓迎するよ」

他リーダー「あぁ……ありがとう…」

男「外で皆待ってるだろう。アンタが先導してくれ。場所は教える」

他リーダー「あぁ……」

少女「また賑やかになりますねぇ」

老人「今でもうるせぇくらいだってのによ」


男「じゃあ、ココを真っ直ぐ行ったら着くから。部屋割りなんかは好きにしてくれ。アンタの方が向いてる仕事だ」

他リーダー「あぁ、任せてくれ」

ガヤガヤ

「あの………」

男「お?どうしたお婆さん」

老婆「コレを……」カサ

男「なんだ?メモ?」 カサカサ


『話があるわ。今夜8時。七四四地区のフランソワーズって店で待ってる。―――女』


男「っ!!?」バッ

ガヤガヤ
ガヤガヤ

男「おい!今の婆さん!!どこだ!!」

能力者「え?」

能力者「どうしたんですか?」

男「その辺に白髪の婆さん歩いて無かったか!?」

他リーダー「男さん…?ウチのコロニーには婆さんはいねぇよ?」

男「…アイツ…っ!」グシャッ

少女「……?」


~政府軍指定地区第七四四地区~

男「………ここか」

キィ

ウエイター「いらっしゃいませ。お客様、ご予約名をお伺いします」

男「え?あ~……女って奴で通ってるんじゃないかな」

ウエイター「確認して参ります」

男「……慣れねぇな。こういうトコ」

ウエイター「確認出来ました。お連れ様がお待ちです。どうぞ奥へ」

男「……」


♪~~

女「……あら、良いスーツね」

男「テメェ…舐めた真似しやがって……」

女「座ったら?お腹空いちゃったわ」

男「ちっ……」カタッ


ウエイター「お待たせいたしました」コトッ

女「わぁっ美味しそ~」

男「……」

女「そうそう。知ってる?」

男「あ?」

女「既に目の前に出された料理を美味しくする要素は三つあるのよ」

男「タルタルソースかけるとか?」

女「ふふ、馬鹿ね。一つは自分が空腹であること。もう一つは好きな人と食べること」

男「三つ目は?」

女「自分が代金を支払わないこと」

男「…なんだそりゃ」

女「私いま二つ揃ってるわ


男「……いくらだよ。伝票見せろ」

女「うふふ。どうもありがとう」


女「…貴方とテーブルを囲むのなんて、いつぶりかしらね」

男「残念だな。これが初めてだよ」

女「あら忘れたの?失礼ね」

男「お前こそ忘れたか?よく行ったラーメン屋、あそこにはカウンター席しか無かったよ」

女「あ……ふふ、馬鹿みたい」

男「……それで、今日は何の用だよ」

女「…上に話を付けてきたわ」

男「!」


女「結論から言うと、貴方と似たような事を言われた。可能性での話は聞く気にならないですって」

男「……だろうな」

女「でもその代わり。貴方本人を連れていけば確実に話は一歩リードするわ」

男「………」

女「政府軍に能力者を集めた特殊部隊を作るって話も出てる……ねぇ、どうかしら?」

男「……ゴメン。まだ、決心が付かねぇんだ。ホント済まねぇ」

女「………そう…そうよね。私もそうだった」

男「……」


女「来週からって言われてたコロニー一斉保護、もう始まってるのよ」

男「あぁ……知ってるよ」

女「だいたい保護地区の若い順から狙われてる。二〇二地区に到達するのはあっと言う間よ」

男「………」

女「…貴方が私の事をどう思ってるかは分からないけど、お友達として忠告してあげるわ」

男「………?」

女「大切な人の守り方は、一通りじゃないの。良く、考えることね」

男「あぁ……忠告どうも」

女「…ほら、シャキッとしなさい。貴方らしくもない」

男「あ、あぁ…もう少し、考えさせてくれ」

女「えぇ……ご馳走様」カタッ

男「……」

~~~


~コロニー内 街外れの廃ビル~

男「このはじっこの方も、賑やかになったなぁ……」

少女「あ!」

男「おう」

少女「お兄ちゃん!」

男「もう良いっつってんだろソレ。そもそも何で言い出した?」

少女「好きかなと思って」

男「いつもどーりで大丈夫っす」

少女「何しに行ってたんですか?突然怖い顔して走って行っちゃいましたけど」

男「あぁ…詳しく話すよ」

少女「はい…?」


~~~

男「うーん…どっから話したモンかね…」

少女「………」

男「あ、お前が最初にココに来た日、俺に会いに来てた女の人がいただろ?」

少女「…あぁ、いましたねー…」

男「ソイツが…」

少女「会いに行ってたんですか?」

男「ん?」

少女「さっきはその人に会いに行ってたんですか!?」

男「お、おう……」

少女「うー……」

男「…?」


少女「……男さん!!」

男「はい?」

少女「私、あの人に負けてる所なんて、おっぱいぐらいしか思い付かないんですけど!!!!」

男「ぶっ!!!?」

少女「どうでしょう!?ほら!おめめクリクリー!!髪の毛サラサラー!」

男「何が言いたいんだお前はよ!!話続けさせてくれ!!」

少女「お料理も運動も出来ますしー!能力も便利ですしー!!」

男「分かった!お前の方が良い女だから!分かったから!!」


男「……続き、話して良いか?」

少女「はい…すみません、何だか興奮してしまって」

男「アイツな……政府軍の…本部所属なんだよ」

少女「えっ!」

男「アイツ、本部に入ってからも何かと俺や友の事気にかけてくれてさ……前に、教えてもらったんだよ」

少女「コロニー一斉保護…ですか」

男「!よく分かったな」

少女「おかしいと思ってたんです。情報屋の私も知らない事を知ってるだなんて。本部の人間から直接教えて貰ったのなら頷けます」ウンウン


男「それで…ウチのコロニーにも近々一斉保護が来る」

少女「…戦うんですか?」

男「まさか。俺達だけでどうにかなる規模じゃないのは今日の連中を見りゃ分かる」

少女「でも……政府軍に簡単に捕まる事だけはしたくないって、仰ってたじゃないですか……」

男「あぁ………」

少女「それなら……」

男「……」

少女「あ…ごめんなさい。貴方も迷ってるんですね」

男「………うん」


少女「……」

男「……」

少女「あ、あの!」

男「ん?」

少女「以前!言ってくれましたよね!能力を理由に夢見ることを諦めるなって!」

男「うん。それが?」

少女「おんなじです!貴方も、やりたい事の前に、私達を置かないで下さい!」

男「!……」

少女「貴方はこのコロニーのリーダーだけど、一人の男の人です!ちゃんと考えたいなら、私達のことは気にしないで下さい!」

男「……すまん。情けねぇな、こんな子供に慰められて」

少女「……情けなくなんて、ないですよ」ギュ

男「………」

少女「人を助けるのに、年齢も人種も能力も、関係ありません……」

少女(貴方がそういう人だから、貴方のこと、好きになったんです)

男「………さんきゅ」


男「……そうだ。もしもの時の為に、教えとこうと思う?」

少女「はい?」ギュ

男「…離してくれ」

少女「はい…」パ

男「付いてきな」

少女「んー?」テテテ


男「ここ」

少女「本棚、ですか?」

男「うん。昨日見つかったと思ってビビったんだけどな」スッ

少女「?」

男「お前からじゃ届かないかもな……まぁ位置は変えるとして。この黒いカバーの洋書、実は本じゃなくて箱になってる」パカッ

少女「ほうほう!中身は?」ワクワク

男「―――コレ」

少女「っ!!!」

男「P220……簡単なのを選んだ。お前でも扱えると思う」

少女「拳銃……ですか。でもどうして……?」

男「だから言っただろ、もしもの時の為って」

少女「でも……」

男「出来れば使う場面が訪れないに越した事はないんだけど……ここにコレがあるって事は知っててくれ。何かの役に立つかもしれねぇ」

少女「はい………」

男「…悪ぃな。色々話しちまって。今日はもう寝よう」

少女「はい……アノ、げふんっ、あのっ」

男「ん?」

少女「今日、一緒に寝ても、良いです、か……?」

男「………」

少女「……………」

男「……良いよ。今日だけな」

少女「は、はい」

~~~


~翌日 コロニー内 地下バー~

老人「……コロニー一斉保護…?」

友「その話…本当なのか……?」

男「あぁ……ココもいずれ標的になる…」

少女「……」

他リーダー「俺は駄目だったが…ここの皆は違う。前もって準備すれば、何か対策がうてるはずだぜ……」

男「あぁ……友、今日一日、ココの指揮を任せたい」

友「!」

老人「……お前さんはどうするつもりなんだ」

男「一九九のコロニーにこの事を伝えに行く。ウチよりも被害が早いはずだ」

友「そうか……分かった。何とかするよ。任せてくれ」

男「頼む」

友「……へっ」

男「…?何笑ってんだよ」

友「いや、こうしてお前が頼ってくるの、初めてだと思ってさ」

男「そうか…?」

友「あぁ」

男「そっか……すまん」

友「ははっ!任せとけ!大親友の頼みだ!やるだけやるさ!」

男「……ルドルフ、借りるぞ」

友「おう!壊すんじゃねぇぞ?」

男「もちろんだ…行ってくる」

少女「……」タタタッ

友「……さて、やるか」

老人「ふん…Attack of the dawnか……アイツもなかなかどうして、良い背中するようになったモンだな」

他リーダー「…良いリーダーだな」

友「当たり前ぇだよ」

~~~


~~~

ドドドドドド……

男「……」

少女「……」

男「…なに不安そうな顔してんだ」

少女「だって……今から行くコロニーって…」

男「そう。俺が前にボコボコにした所」

少女「うぅ……」

男「心配すんな。何とかなる」

少女「はい………」


~政府軍指定地区第一九九地区~

男「……」カツ カツ

能力者「……あ?」

能力者「あ!テメェ!二〇二の!!」

男「ここのリーダーに話がある…通してくれ」

能力者「なんだテメェ。前の事まだ根に持ってんのかゴラァ!」

男(根に持ってんのはソッチの方だろ…)


「おい、待て」

男「お……」

少女「………」

リーダー「…久しぶりだなぁ…何の用だ」

男「話がある」

リーダー「周りの連中見てみろ。テメェには敵意しかねぇぞ?それでも話したいか?」

男「あぁ。大事な事だ」

リーダー「そうか…付いて来い」

能力者「ちょ、リーダー!」

リーダー「うるせぇぞ!!!!!」

少女「っ」ビクッ


リーダー「終わった事をいつまでもグチグチ言ってんじゃねぇよ情けねぇ!!!」

男「…すまん。昔の事は、謝る。気が済むなら、今俺を殴ってくれても構わない」

少女「!」

男「だから…聞いてくれ。真剣なんだ」

リーダー「ほう………」ズン ズン

少女「あ………ぁ……」


リーダー「………っ!!」ブンッッッ

少女「いや……っ!」


……………

男「…………?」

リーダー「…お前の能力は未だにさっぱり分かんねぇ」

少女(寸止め……?)

リーダー「でも……お前がもし能力を発動してたら、この時点で俺の手首はイカれてた」

男「……」

リーダー「お前が何話しに来たかは知らねぇが、取り敢えず信じてやるよ」

男「………助かる」


~~~

リーダー「コロニー一斉保護……そんなモンが……」

男「ここにも、コロニーから逃げてきた連中がこなかったか?」

リーダー「来たな。人数の都合で追い返す形になったが……アレはそういう事だったのか……」

能力者「…それで、俺達にどーしろってんだ?」

男「それはアンタ達の自由だ……俺の希望としては、逃げて欲しい」

リーダー「ふん………」

能力者「リーダー。簡単に話に乗る事ぁねぇよ。このコロニーを乗っ取る為の罠かも知れねぇ」

リーダー「テメェは黙ってろ!」

少女「……」

リーダー「前に来た連中の事も納得がいく。指定地区の順番で襲われるってんなら、アンタらも危ねぇ筈だろう」

男「あぁ……その通りだ」

リーダー「なのにそれを教えに来た。全部本当だとしたら、相当なお人好しだぜ、アンタ」

男「………」

リーダー「コロニーの乗っ取りが気掛かりなら、良い方法がある……」

男「……?」

リーダー「このコロニー、アンタにやるよ」

男「!」

能力者「は!?」


リーダー「取られんのが怖ぇなら最初から渡しとけって話だ」

能力者「でもリーダー!俺達は…!」

リーダー「撤退だ。今すぐ準備をしろ」

男「…良いのか」

リーダー「もう少し数字のデケぇ所に逃げるよ」

少女「その土地の方と揉めるんじゃ…」

リーダー「嬢ちゃんの気にする事じゃねぇ。アンタらのリーダー程じゃねぇが、腕っぷしには自信がある方だ」

能力者「リーダー……」

リーダー「全員集めろ。事情を説明する」

男「…じゃあ、俺はこれで」

リーダー「あぁ…達者でな。逃げ切れたら…ココの管理、任せる」

男「あぁ、責任持って面倒見るよ」

~~~


~政府軍指定地区第二〇二地区コロニー~

ドドドドドド…

男「…よし、俺達も全員集まって会議だ」

少女「はい!」


友「男!」

男「おぉ、友。どうだったよ」

友「今の所問題はねぇ。全員一箇所に集めてある。詳しい話はお前から頼むよ」

男「ありがとう。助かる」


能力者「リーダー!友さんから聞きました!アレは本当なんですか!」

男「あぁ、全員聞いてくれ。大まかな話は聞いてると思うが、コロニー一斉保護が既に始まっている。ココには最悪の場合今夜、政府軍が押し寄せる」

能力者「今夜…!?」

能力者「なら早く逃げねぇと」

男「戦って追い払うには苦しい人数だ。もちろん逃げるのが得策だろうが、逃げるにしても方法ってモンを考えなくちゃならねぇ」

他リーダー「方法……?」

男「あぁ。アンタにはまず頼みたい事がある」

他リーダー「?」

男「第一〇五地区のコロニー…その跡地が今どうなってるのか、確認してきて欲しい」

他リーダー「!」


男「自分が捨てる羽目になった土地に赴くのは気が引けるかも知れないけど……政府軍が攻略終了した土地をどう扱うのかが知りたい。頼めるか?」

他リーダー「あぁ…行ってこよう」

男「頼む。次に、D」

能力者D「はい?ここッスよ」

男「お前は二〇二に向かってくれ。規模、侵略方法、それと、既に能力者が逃げたコロニーに対する扱いが知りたい」

能力者D「はい。了解ッス」

男「他に、テレポート関係の能力者を連れてった方が良いか?」

能力者D「いえ、一人で十分っす」

男「分かった」


男「他にも近辺の見張り、年少者と高齢者の保護、必需物資の運搬、やる事は多い。各自にやる事を決めて……一人残さず、逃げよう」

友「おう!」

能力者「よし!能力の系統ごとに集まれ!!」


男「忙しくなるぞ、これから」

少女「はい!」


男「知覚や千里眼!見張りの能力者は情報伝達の出来る能力者とツーマンセルを組め!」

能力者K「見張りの必要位置のマッピング出来ました!」

男「確認する。また後で」

能力者K「はい!」

能力者F「リーダー、食料と水分、人数と日にちを考えると量が足りないかも知れません」

男「見直して削減してくれ。悪いけど調達してる暇は無い」

能力者R「あ!それならリーダー、五〇〇地区で今日ナイトマーケットがあるはずですよ!」

男「五百番か……少し時間をくれ。間に合うかどうか怪しい」


男「ふぅ……」

少女「男さん」

男「おう、どうした?」

少女「おにぎり…作ってきました」

男「悪ぃ。先に他の連中に配ってやってくれ」

少女「………えい!」グイッ

男「モガッ!おまっ、何」

少女「もう配りましたよ。あなたで最後です」

男「そうか……すまん。ありがとう」

少女「ふふ…男さん昨日からその二つばっかり」

男「そうか?」

少女「はい」


他リーダー「男さん」

男「ん?」モグモグ

他リーダー「少し休んでくれ。采配は俺がやる」

男「いや、でも」

他リーダー「休むのも仕事の内だと思って、さぁさぁ」

男「じゃあ、このマップの確認だけ頼む。何かあったらまた呼んでくれ、バーにいるから」

他リーダー「自分の寝処には帰らないのか?」

男「いざっていう時にあそこはちょっと遠いんだよ。じゃあな」

少女「……」テテテッ


カランカラン

男「ちょっと寝かせてくれ」

老人「布団なんかねぇぞ」

男「長椅子で良い」

少女「男さん、男さん」

男「ん?」

少女「どうぞ」ポンポン

男「は?」

少女「ヒザ貸します」

男「あぁ……悪いな」ポスン

少女「えっ」

男「zzz…」

少女「えぇぇ……?」

老人「自分から言っといてなんで慌ててんだよ」

少女「こんなアッサリ承諾されるとは思わなくて…」

老人「疲れてんだろ。休ませてやれ」

少女「はい♪」

男「zzz……」

老人「……さて、裏の荷物纏めようかね」ギシッ

少女「……♪」ナデナデ

男「zzz…」

少女「………」ナデナデ

少女(……神様……大嫌いな貴方を、今だけ信じてあげるから…)

少女(どーか、この人に何事も無く済みますように……)


~~~


男「……」パチ


少女「スゥ………スゥ…」


男(やべ、仮眠のつもりだったのに……)ムク


男(ジジイもまだ来てねぇか…)


少女「スゥ……クゥ……」


男「……ありがとな」ファサ…



男「よー」

友「お、起きたか」

男「あれ、お前が仕切ってんのか」

友「あぁ、他リーダーのオッサン、もう一〇五の様子見に行った」

男「そうか。変わるよ」

友「おう」

男「なんかあった?」

友「おう。昨日ナイトマーケット行ってきた」

男「え!お前が?」

友「おう。物資調達なら任せとけって。コレで物資の問題はクリア」

男「そうか……ホント、ありがとう」

友「ははっ、昨日から何回聞いただろうな」

男「あぁ…あいつにも言われた」


少女「男さん!」タタッ

男「おう、おはよう」

少女「おはようございます!パーカーありがとうございました!」

男「おう」

少女「…昨日は、来なかった様ですね」

男「そうだな……となると、今夜か、明日か…」

少女「…何とかなりますよ、きっと」

男「あぁ…何とかする」


能力者D「リーダー。おはようございます」

男「おう」

能力者D「昨日、一九九地区に一斉保護の集団が来ました」

男「!!どうだった!?」

能力者D「もう逃亡は完了して、もぬけの殻でした。政府軍は軽く200人くらいッスかね」

男「……」

能力者D「近辺までくまなく確認した後、コロニーの範囲までイエローテープで立ち入り禁止にして、そのまま帰って行きましたよ」

男「200人っつーと大体本部の実働班と同じ人数か……一斉保護団体が複数あるって可能性は捨てて良さそうだな」

能力者D「でしょうね」

男「分かった。お前は休んでから、裏手のゲートに向かってくれ。情報伝達系の能力者が足りてないんだ」

能力者D「すぐ向かうッスよ。任せて下さい」

男「あぁ……なら、頼む」


~夕刻 街外れの廃ビル~

少女「………」タッタッタ

ガチャ

少女「ただいま……って、今度こそ、誰もいないんですけどね……」


少女「黒い本…あ、届いた」スッ


少女「出来れば……使わずに………」カチャ…


少女「…よし」


少女「連れてけなくてごめんね、メイド服。また今度、きっと取りに来るからね」


少女「……きっと、帰ってくるよ、ココに」



~~~

他リーダー「男さん!」

男「!帰ってきたか!!」

他リーダー「あぁ、見てきたよ」

男「どうだった」

他リーダー「立ち入り禁止のテープが周りを囲んでるだけだ。中には一人も政府軍なんていやしなかった」

男「そうか…よし、分かった」ガサガサ

他リーダー「なんだそれ、全部地図か?」

男「これ、各部隊の代表を優先に、全員に配ってくれ」ドサッ

他リーダー「おう……コレは?」

男「逃亡ルートだよ」

他リーダー「なるほど……あれ、この目的地…」

男「あぁ。目的地は…元、一九九地区コロニーだ」

他リーダー「あそこは、大丈夫なのか?」

男「アンタとウチの能力者に頼んで政府軍のやり方は見せてもらった……一時的だろうけど、奴らはもう侵略の終わったコロニーに戻ってはこない」

他リーダー「なるほど…分かった。配ってくる」


~夕刻 とある監視ポイント~

能力者「………」キィィ……ン

~~~

政府軍『………』ザッ ザッ

~~~

能力者「!!来た!!!!」

能力者D「!?」

能力者「目標8キロメートル先!!ド真ん中からコッチに向かってる!!」

能力者D「分かった!お前も走って帰ってこいよ!」フッ


~~~

能力者D「リーダー!!!」フッ

男「!」

能力者D「来ました!!正面からコチラに進行中!!目標は発見時点で約8キロメートル先です!!」

男「了解!テレパス!!」

能力者「はい!」

男「今の内容を全員の脳内に!!追加で、各自さっき配った逃亡ルートに沿って逃げろと伝えてくれ!!」ダッ

能力者「了解しました!」

他リーダー「アンタはどこへ!?」

男「すぐ戻る!!」


~~~

能力者『全員にお伝えします!!政府軍を約8キロメートル前方にて確認!現在ココへ進行中!!先ほど配った逃亡ルートに沿って避難を開始して下さい!!』

少女「っ!!」ハッ

カツン カツン カツン

少女「ど、どうしよ!誰か来た!」

ガチャ

男「………」

少女「!!男さん!!!」

男「!ココにいたのかお前。何してんだ?」

少女「コレを取りに」

男「そうか。今の聞いただろ?お前も早く逃げろ」

少女「でも私、逃亡ルートなんて聞いてません!」

男「え!地図渡されて無いのか!」

少女「はい」

男「あー…」

少女「男さんに付いていきますよ?」

男「いや、俺直接逃げる訳じゃねぇんだ」

少女「えっ?」

男「囮?って程じゃねぇけど、逃げ道に政府軍が近寄らない様にする」

少女「おとり……あ!良い方法がありますよ!」

男「?」


~~~

少女「ここですか?逃亡ルートから一番関係ないポイントは」

男「あぁ…どうするつもりだ?」

少女「まぁ見てて下さい」カチャ

男「!?」


パン!!! パン!!!!!


少女「…~~っ!腕がビリビリしますね」ジンジン

男「何やってんだお前!?」

少女「早く!ここから離れますよ!」


男「…なんでいきなり壁なんか撃ったんだ?」

少女「ふふん。大きな力も使いようです」

男「は?」

少女「政府軍のほとんどは非能力者、つまりはただの人間です。なのにどうして能力者を圧倒出来ていると思いますか?」

男「…人数と連携?」

少女「その通り。政府軍はよく訓練されてるんですよ」

男「それで?」

少女「彼らは、銃声の方へ集まる習性があります」

男「…なるほど、それで関係ないポイントに政府軍の注意を向けようって事か」

少女「そういう事です♪さ、早く次のポイントに……」


政府軍「フリーズ!!!!!」ザッ


少女「!!」

男「!?」


男(マズい!ココまで来てやがったか!)

政府軍「このコロニーで初めての能力者だ。残りの連中はどこだ?」

男「……」

少女「(男さん……能力を)」

男「!」

少女「(貴方は早く、逃げてください)」

男「そういう訳には…!」

政府軍「動くなぁ!!!」カチャッ


少女「男さん!早く!!!」バッ

男「!!」

政府軍「動くなと言っている……!」


ッターン



少女「 」


男「 !!!」





ドサッ





~~~


~~~

他リーダー「さぁ、ここから出て。この街を迂回するルートを辿って一九九地区を目指すんだ」

友「……?」

老人「どうした?」

友「……男がいねぇ」

老人「……そういや、あの嬢ちゃんもさっきから見てねぇな」

友「………っ」ダッ

老人「ちっ……手間のかかるガキだ」タッ


男「くそ…っ!くそっ!!!」タッタッタ

少女「ハァ……ハァ……男、さん……」

男「黙ってろ!喋んな!!」タッタッタ

少女「大丈夫…です………」

男「脇腹エグれてんだぞ!?良いから安静にしてろ!!」

少女「はい……ゴメンなさい………」

男「………」

男(俺の所為だ……)

男(囮なんて、俺一人で十分だった……)

少女「ハァ……………ハァ……」

男「畜生…っ!!」


政府軍「!ソコに誰かいるのか!」

男「!」


少女「男さん……逃げて………」

男「銃、返してもらうぞ」

少女「逃げて下さい………」

男「……………」カチャ

政府軍「コッチか?」ザッ

男(来る!)

政府軍「!?何だ!?うわぁ!!!」ピシッ

男「!?」


男(何があった!?)バッ

男「!」


老人「クズ野郎入りアイスキューブ……こりゃあ店では出せねぇな」

男「ジジイ!」

友「よう」

男「お前ら!何でまだ残ってんだ!!」

友「少女ちゃん、撃たれたのか」

男「……あぁ、コッチで横になってる」

老人「一人で運ぶつもりだったのかテメェ」

友「バイク持ってくる。待ってろ」

男「駄目だ!音で見つかる!!」

老人「やるしかねぇだろ。早く嬢ちゃんの血ぃ止めなきゃならねぇ」

男「でも…」

老人「テメェ、囮でココに残ってたんだろ?」

男「あぁ…」

老人「……銃なんか持ってたのかお前。それ貸せ。そんでお前は嬢ちゃんと一緒にバイク乗って逃げろ」

男「アンタは!」

老人「俺が囮になる。さっさと行け」


ドドドドドドド……!!

男「!」

老人「おら!政府軍にもこの音は聞こえてんぞ!」

男「……っ」

老人「乗って逃げるか!ココで捕まるか!選べ糞餓鬼!」

男「……悪ぃ!」ダッ


友「乗れ!」

男「ちょっと揺れるぞ、我慢しろよ」

少女「はい………」

ドッ!ドドドドドド!!!

政府軍「エンジン音!」

政府軍「能力者三人発見!!バイクで逃走中!!」パンパン!!

政府軍「応援を呼……うわぁぁあ!!?」ピシッ

政府軍「どうした!?な、何だコレ!?氷!!!?」ピシッ

老人「…………」

政府軍「能力者だ!!!」

政府軍「能力者発見!!ただちに応援を!!」

政府軍「手を塞がれた!銃はもう使……ガァッ」ピシッ

老人「うるせぇなぁ……」ピシッ パキッ

老人(餓鬼共……うまくやれよ)


~夜 第一九九地区 コロニー跡地~

ドドドドドド……

友「さっさと運べ!」

男「………」ダッ

少女「ハァ……ハァ……」


他リーダー「!!怪我してんのか!!」

男「ガーゼと包帯持ってきてくれ。あと水と、綺麗な布」

能力者A「!!リーダー!逃げてこられたんスね!」

男「あぁ」

能力者B「!?少女ちゃん、撃たれたんスか!!」

男「黙ってろ。声が響く」

少女「…………」


~~~

他リーダー「…止血は終わった」

男「あぁ。上手いモンだな」

他リーダー「医療系の仕事してたモンでな」

男「そうか……どうだ?」

他リーダー「内臓のほんの端を掠ってる。銃弾は体内に残って無い。今は意識もあるが、傷口から菌が入ったな……発熱してる」

男「……助かるのか?」

他リーダー「正直……五分五分だ。ちゃんとした病院へ運べばまず助かるだろうが………」

男「…………分かった。」

他リーダー「こんな事…今のアンタに言うべきじゃないかも知れないけど」

男「……」

他リーダー「怪我人はあの子だけだ…アンタの作戦のお陰だよ」

男「………」

他リーダー「………それじゃ」


~コロニー跡地 とあるビルの一室~

男「……」ガチャ

少女「あ……男さん」

男「!起きてんのか」

少女「はい……あ、駄目です!私いま、服着てなくて……!」

男「起き上がんな。寝てろ」ファサ

少女「あ…ありがとう、ございます」

男「…なんか、欲しいモンあるか?」

少女「いえ、特には……あ……手、握ってて欲しいです」

男「…おう」ギュ

少女「へへ…あったかい」

男「熱出てんだぞ。お前の方があついだろ」

少女「そうですかね……ううん、男さんの手の方があったかいですよ?」

男「…そうか」


男「……痛むか?」

少女「いえ……今は、感覚無いです」

男「麻酔なんてあったのか」

少女「さぁ…?」


少女「…あの時」

男「?」

少女「能力、使わなかったんですね」

男「……うん」

少女「…良かった」

男「良かった?」

少女「はい……もし能力使ってたら…私が撃たれた事に…責任感じちゃうでしょう?」

男「……俺の所為だよ」

少女「違いますよ…私が勝手に怪我したんです」

男「…もう眠った方が良いんじゃないか?」

少女「誤魔化そうったってそうはいきませんよ。貴方に責任は無いって認めなきゃ、眠りません」

男「どんな意地の張り方だよ…」

少女「お願いです……貴方は…悪くない……」

男「……」

少女「……スゥ………スゥ………」

男「…ごめんな」


男「……」

It dawns(夜が明ける)

男「……」

The world's longest night(世界一長い夜が)

男「……」

I think(僕は考える)

男「……」

About my and your happiness(僕と君の幸せについて)

About my and your from now on(僕と君のこれからについて)

About what should I choose(僕がどうするべきかについて)


女『大切な人の守り方は、一つじゃないの』


男「…………分かってるよ…っ!」


~~~

男「……」ガチャ

他リーダー「やっと出てきたか」

能力者「一晩中看病だなんて、熱心な親馬鹿っすねリーダー」ニヤ

男「!なんで…お前ら集まってんだ」

他リーダー「俺が集めた…話すこともあるだろうと思って」

男「そうか……」

能力者「リーダー、これからどうするおつもりで?」

男「……………」

友「…聞くまでも無いな。全員、お前の答えは分かってる」

男「えっ……?」


能力者「一晩中考え込んどいて、まだ決心付かないとかはナシっすよ」

能力者「遅かれ早かれこうなる予感はしてたんスよね」

男「あぁ……選択肢は最初からあった。俺は怖がってただけなんだ」

老人「……そんなモン。俺達だって全く一緒だよ」

男「!ジイさん!逃げてこられたのか!」

老人「さっき到着したトコだ……それはそうとお前ぇ…それがお前ぇの筋の通し方なんだな?」

男「あぁ」

老人「……ハッ!ココにいんのは全員テメェに命救ってもらったモンだ。今更どうなろうがテメェの勝手だよ」

男「…………」

友「早く行けよ」

男「…皆スマン。ほんと、ありがとう」


~~~

ガチャ

少女「あ…男さん」

男「目ぇ覚めたか」

少女「…?どうかしたんですか?」

男「…スマン。ちょっと電話借りんぞ」ガサゴソ

少女「電話?どこに連絡するんですか?」

男「……握り潰した癖に、捨てる事は出来なかったんだ………悪ぃな。俺は最初っからただの臆病者だったんだよ」クシャ…

少女「ソレって………!政府のSOS番号!!?」

男「大きな声出すな……体力使うだろ」

少女「だ、駄目です!せっかく無事に逃げてきたんですよ!……っ…!」バッ

男「馬鹿!起き上がんな!!」


少女「なんで……っ」

男「お前が怪我してる。無事なんかじゃねぇよ」

少女「でも、まだ方法があるはずです…!」

男「コレが一番正しいんだよ……お前を助ける為には」

少女「私の事は良いんです!男さんの能力があれば御自分が生き残る事くらい……っ!」

男「それじゃ意味ねぇんだよ」

少女「……」

男「お前を傷付けてまで手に入れる自由に意味なんて無いんだ。他人の幸福を奪ってまで生き長らえても……そんなものは、幸せと呼ばない」

少女「……馬鹿じゃないんですか……私なんかの為にっ、今まで守ってきた物全部捨てるなんて……っ」ボロボロ

男「………もしもし、政府軍本部だな……あぁ」

少女「馬鹿…!男さんの…ばかぁ……っ」ボロボロ

男「怪我人がいる。何でも良いから早く人を寄越してくれ……頼む」

少女「うぇっ……馬鹿ぁっ……うぇぇえん……っ!」ボロボロ


~~~

政府軍「保護地区二〇二地区コロニーより45名!一〇五地区コロニーより21名!SOS連絡により保護しに来た!」

男「あぁ…」

政府軍「怪我人はどこに?」

男「そこの部屋の中で寝てる」

政府軍「了解した」

政府軍「担架を運べ!」

政府軍「他の能力者はこちらへ。車を持ってくる」

女「……男」

男「……アイツを頼む」

女「えぇ……任せて」

政府軍「ほら、君も立て」

男「あぁ……」

政府軍「人数確認が終わり次第能力者カルテと照合して……」

政府軍「もう一台搬入した方が……」

政府軍「病院との連絡取れました……」

男「……あぁ畜生。良い天気だなぁ………」










~~三年後~~


♪~

老人「………」キュッ キュ

カランカラン

少女「……それでね?結局女さんとお揃いで買う事にしたんですけど…」

男「うんうん」

老人「…久しい顔だな。砂利餓鬼ども」

男「そんなに来てなかったっけ?」

少女「最近忙しかったですからぁ~」

老人「ふん。先客、来てんぞ」

男「おう」


友「…お」

男「よー、科学能力省大臣殿」

友「よう、政府軍…じゃなくて、今は政府自警団だっけ?のお偉いさん」

男「政府自警団 対能力者用特殊部隊隊長サマだ。いい加減覚えろ」

少女「そんで副隊長サマです。お久しぶりです、友さん」

友「おう」

男「ココはいっつも客いねぇな。すぐ座れるからいいけど」

老人「馬っ鹿野郎。こういうのは落ち着きがあるって言うんだよ」


老人「それにしても、行政と司法のお偉いさんが顔なんか合わせて、問題にならねぇのか?」

少女「バレませんよどうせ」

男「友はスピード出世だったから、テレビに顔は売れてる方だろ」

友「まーな。よくよく考えりゃ、人の心覗けるなんて、政治家にうってつけの能力じゃねぇかよ。なんで昔はそこに考えが至らなかったんだろうなぁー」ゴクゴク

男「どうなんだよ。政治の世界は」

友「上手く隠してる奴も多いけど、ウラの無い人間の方が少ないくらいだよ。敵も味方も敵だらけだ」

男「はは、何だそれ」

友「いやホントに」


友「っていうか、スピード出世ならお前だってそうだろ。政府軍の名前まで変えやがって」

男「俺のは実力だ。やましい事は何もしてねぇよ」

友「隣のお嬢さんは?」

男「コイツは俺のコネで入れた」

少女「ちょっと!ちゃんと試験受けて入りましたよ!」


友「腹のキズはどう?」

少女「もう左右どっち側だったか思い出せないくらいです」

友「へぇ、見せてよ」

男「殴んぞ」

友「はは、怖い怖い」

prrrr

友「お?」

男「悪ぃ。俺だ」pi

女『もしもし?』

男「おう、どうした?」

女『~~~に集団強盗が入ったわ。現地警察によると犯人に能力者が含まれてる可能性が高いですって。私いま向かってるんだけど、来られる?』

男「げ……俺いま酒飲んでんだけど」

女『あら……あ、少女ちゃんには飲ませてないでしょうね』

少女「……っぷはーっ!」

男「安心しろ。ジンジャーエールでプハーって言ってるよ」

女『そう。最寄駅まで電車で来てね、迎えに行くから


男「はいよー」pi

友「…仕事か?」

男「悪ぃな」

友「良いって。早く行けよ」

男「おう。ほら行くぞ」

少女「失礼します!」タタッ

カランカラン

友「…なんにも変わんねぇなぁ、昔と……」

老人「当たり前だ。お前らの言う昔なんて、ハナクソみてぇなモンだからな」


男「………」タッタッタ

少女「―――あ、そうそう、男さん、気になってた事があるんです」タッタッタ

男「ん?」

少女「幸せに許容量、もしくは残量なんて物があるんですか?」

男「は?いや……詳しい事は知らねぇけど、無いんじゃないか?概念的なモノであって、個体や液体じゃないんだし…」

少女「ふふ、なら安心です!」ギュ

男「何がだよ」

少女「男さんが私の幸せを奪うなら、その分男さんが私を幸せにしてくれれば良いんですよ」

男「…なるほどな」

少女「頼みますよ?」

男「おう、任せとけ」






~end~

お疲れ様ッス
やっとこさ終わった。疲れたよパトラッシュ


こんな糞進行のSSに最後までお付き合いいただいた方、本当にありがとうございました

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