九兵衞「わしと…契約してくだせえ!」 (51)

穂村「ん?なんじゃあ?」

九兵衞「わしと契約して…野菜を買うてくだせえ!」

穂村「邪魔じゃ!」

九兵衞「お安くしときますからあ…」


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穂村「おい!汚ねえ手で触るな!無礼者が!」

ドガッ!

九兵衞「い、いてえ!」

穂村「百姓の分際で…わしの袖を汚しおったな…?わしが誰か、心得てのことか!」

シャキン!

九兵衞「ひっ!お許しくだせえ!」

穂村「わしはなあ…鹿目公康(かのめ きみやす)様のお抱え自警団総長、穂村十蔵(ほむら じゅうぞう)!」

穂村「見窄らしい百姓めが!今すぐわしの前から消え失せい!」

九兵衞「は、腹が減って…もう…歩けねえです!」

穂村「ほう…久しく喰っておらんのか?」

九兵衞「へい…」

穂村「その野菜を喰えばよかろう?」

九兵衞「これは…喰えねえです。わしの娘が…病で伏せっておりまして…この野菜を売って…薬を…!」

穂村「薬を買うゼニが無いのだな?」

九兵衞「へい…。わしは死んでもええ…娘だけは…」

穂村「気に入ったぞ!」

九兵衞「?」

穂村「籠を降ろして、野菜を見せてみい。わしが買うてやるぞ。」

九兵衞「ほ、本当ですけえ!?ありがとうごぜえますう!!」

ドサッ!

穂村「ほお、ええ野菜じゃのお。」

九兵衞「へえ!昨日採ったばかりで!」

穂村「よし、全部もらおうか。」

九兵衞「おおお!ありがてえ!ありがてえ!」

穂村「籠ごといただくぞ。」

九兵衞「ほ、穂村様!ゼニは…」

穂村「何を言うか。わしが代金など、払うわけが無かろう。」

九兵衞「そ、そんな…!」

穂村「鹿目様に献上するのじゃ!ほほほほ!」

スタスタ

九兵衞「穂村さまあ!…待ってくだされ!」

九兵衞「あ…あ…」

ガクッ

九兵衞「もう…動けん…時子…すまねえ…」

九兵衞「…」

三木「いかがした!大丈夫か!」

九兵衛「う…?」

三木「顔色が悪い…起きれるか?」

九兵衞「腹が…減って…病気の…娘が…」

三木「む…仕方ない。そなたの家へ行こう。ここから近いのか?」

九兵衞「へい…そこに…」

…………


九兵衞「…かたじけねえ…。」

三木「だいぶ具合も治ったようだな。」

九兵衞「こんな汚い百姓めを…救っていただけるとは…」

九兵衞「そ、それに…娘のために薬まで…!かたじけねえ!!」

三木「身分なぞ関係ない。そなたとその娘は死にそうであった。だから助けた。それだけの話よ。」

九兵衞「なんと…素晴らしいお方じゃ…。」

九兵衞「お侍さんや、せめてお名前をお教えくだされ…」

三木「私は佐谷加藩士、三木実盛(みき さねもり)。」

三木「そしてついに…この藩にいらっしゃるということを突き止めたのだ。」

九兵衞「巴様…!ぞ、存じ上げておりまする!」

三木「なにっ!本当か!?」

九兵衞「し、しかし…」

三木「居場所を知っておるのか!」

九兵衞「巴様は…晒し首に…」

三木「な…なんとっ!どういうことだ!!」

九兵衞「五日ほど前にごぜえます…。異端流派の後継者だと…お殿様に…。」

三木「…切腹…か?」

九兵衞「へい…そのようでごぜえます。」

三木「…なんということ!」

ドタッ

九兵衞「み、三木様!」

三木「私の6年間は…無駄であったのか…。」

九兵衞「ここのお殿様は…ひでえお方です…。」

九兵衞「民は皆、重税に悩まされております…。」

三木「そうであったか…!」

三木「許さぬ…許さぬぞ…!民をないがしろにし、美しき武芸を潰す暴君め!」

九兵衞「三木様…、あなた様に、お見せしたい物がごぜえます。」

三木「?」

九兵衞「わしの先祖代々伝えられてきた…不思議な石にごぜえます。」

サッ

三木「光っておるな…初めて見る…。」

九兵衞「蒼琉璽廻夢(そうるじえむ)と呼ばれておるそうです…。でも、わしには価値が分からんのです…」

九兵衞「これを…受け取ってくだされ!」

三木「しかし…家宝であろう?」

九兵衞「三木様は…わしと娘の命を救ってくださった…!どうか!お受け取りくだされ!どうか!」

三木「そこまで言うのなら…いただこう。」

九兵衞「ありがとうごぜえます!」

…………

三木「さて、鹿目公康とやらに一泡吹かせたいところだが…。」

三木「私一人では何とも…はて?」

サッ

三木「石が熱くなっている…光も増したようだ…」

三木「む?何やら石に模様が…?」

ピカアアアアア

三木「ぬ!何だ!?」

キラキラ…

三木「体が…輝いて…」

三木「む?妙な気分だ。力が満ちてくる!!」

三木「ふん!!」

バキッ!

三木「なんと!拳の一突きで木が折れるとは!!」

三木「ダッ!」

ズン!

三木「なんと!足の一踏みで地面に穴が!!」

三木「これならば!鹿目公康なぞ…一捻りだ!!ふははは!!」

ドドドドド!

ー円華城(まどかじょう)ー

鹿目「ぐへへへへへへ!今日の飯も美味えのお!」

くっちゃくっちゃ!

穂村「上様!昨日取れた、新鮮な野菜にございます!」

鹿目「ぐへへへへへへ!ええぞ!民は苦しみ働き、わしのために生きる!なんと快いこと!!」

穂村「まったく!その通りにございます!」

鹿目「ぐへへへへへへ!」

兵「上様あああ!」

ドタドタ

鹿目「なんじゃ!騒々しい!」

兵「城内に…曲者が!」

穂村「なんじゃと!?」

兵「じ、城門を破って!こちらへ向かっております!」

穂村「城門を破ってだとっ!?わしをからかっておるのかっ!」

バリバリ!

穂村「な!?」

グシャア

兵「ごふ…」

穂村「か、壁からだと…?ぐ、ぬ」

バタッ

鹿目「な、なんじゃおぬし!?何者じゃ!?」

三木「私は…佐谷加藩士、三木実盛!」

三木「苦しむ民に代わり…そなたを滅する!鹿目公康!」

鹿目「畜生め!殺苦楽!!」

ストッ!

殺苦楽「は…上様。」

鹿目「こやつを止めるのじゃ!」

殺苦楽「…はっ。」

ダダダッ!

三木「…」

殺苦楽「…」

三木「何者だ…?」

殺苦楽「兇虎流(きょうこりゅう)…斬鬼の殺苦楽(さくら)…。」

三木「忍びの者か…面白い!」

…………


ー天守閣ー

鹿目「ふう!ふう!疲れたわい!」

鹿目「あやつ…殺苦楽でも止められぬか…?」

鹿目「仕方あるまい…!」

ガラッ!

三木「鹿目!もう逃げられまい!」

鹿目「ふん!やはり来おったか!」

三木「観念するがよい!」

グオオオオ!

三木「な、何だ!今の音は!」

鹿目「ぐふ…ぐふふ…」

鹿目「ぐへへへへへへへへへへ!!」

三木「!?」

鹿目「わしにはのお!とてつもなくでかい、ある計画があったのよ!!」

三木「計画…?」

鹿目「その名も!『江戸壊滅計画』!!」

三木「江戸…壊滅だとっ!?」

鹿目「わしは…この国に残る太古の技術、『??畏怖死威怒(ぐりいふしいど)』を見つけ出した!」

鹿目「その技術を使い…わしは怪物を作り上げた!」

三木「怪物!?」

鹿目「その怪物を江戸に解き放つ!江戸城は破壊され、城下は燃やし尽くされる!!」

三木「それが…『江戸壊滅計画』か!外道め!」

鹿目「そなたがわしを殺すというのなら…今、この怪物を解き放つ!ぐへへへへへへ!」

ガシャーーーン!!

ぐおおおおおおおおおおん!!

三木「ぬわあっ!なんという大きさ!形容しがたい異形の怪物!なんと恐ろしい!」

鹿目「ぐへへへへへへ!ぐへへへへへへ!」

ぐおおおおん!!

バキイッ!

三木「か、鹿目の体が真っ二つに!!」

三木「あの触手…!逃げなくては!」

バリイ!!

三木「ぐわっ!危うく首が飛ぶところであった!」

ドスン!ドスン!

ぐおおおおん!!

三木「こいつ!城を壊すつもりか!?」

バリイ!

三木「危ないっ!」

ゴゴゴゴゴ!

三木「床が…崩れる!」

サッ!

三木「もう道は無い!せめてもの抵抗だ!この光る石を投げつけてくれる!」

ゴゴゴゴゴ!

三木「南無三!!でええええい!!」

シュッ!

ピカアアアアア!!

ギャアアアアアアアアア!!

三木「き、効いたのか…?」

ガラガラガラ!

三木「ゆ、床が…!うわあああああ!!!」

ガシャーーーン!
ドドドドド!

…………


三木「…ぐ…」

三木「腕が…折れたようだ…。だが、奇跡的に…生きている!」

ムクッ

三木「城が…瓦礫と化している。」

三木「怪物は…消えたようだな。」

九兵衞「やりましたな…三木殿。」

三木「!?そなたは先程の…。」

九兵衞「とにかく、あなたは江戸を救った。未来は保たれました。」

三木「…未来?」

九兵衞「私は、元の世界に戻るといたしましょう。その石は、永久にあなたの物です…。」

三木「な…いつの間に?腕も治っている!」

九兵衞「では…ご機嫌よう…。」

スウ

三木「消えた…?」

三木「私は…何かとんでもないことをしたのだろうか…。」

チラッ

三木「この石で…私はいつでも力を手に入れることが出来る…。」

三木「だが…私はこの力を、人々のために使おう!鹿目公康のようにはならぬ!!」

農民「い…家が、下敷きに…」

三木「待っておれ!今、手伝いに行くぞ!」

………


それから彼が、力を使って人々を助け、英雄になったのか…
それとも誘惑に負け、人々を服従させる手段として使い、暴君となったのか…

それは定かではない。


こんな夜中に変なSSに付き合っていただき、ありがとうございました。

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