プチッ
モロボシ・ダン隊員(以下、ダン)「いてっ」
友里アンヌ隊員(以下、アンヌ)「……」ジー
ダン「なんだいアンヌ、いきなり人の髪の毛なんか抜いて」
アンヌ「あらダン、知らないの? 人と怪物を見分ける方法よ」
ダン「ああ、今朝キリヤマ隊長が言ってたやつか」
アンヌ「ダンは怪物じゃないみたいね、安心したわ」
ダン「はは、それはよかった」
ナレーション『傍目には仲睦まじい男女の会話ですが、人と怪物を見分ける方法、とは随分と物騒な話です』
ナレーション『いったいどういうことなのでしょうか。話は数か月前に遡ります……』
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第 XX 話
『 寄 生 獣 』
※概要 「ウルトラセブン」と「寄生獣」のクロスSSです。
※世界観 寄生獣の世界、及び時代にウルトラ警備隊が存在しウルトラセブン本編の事件も起こっている、という設定です。
※寄生獣本編に沿って話は進みますが、展開が違ったり、オリジナル登場人物も登場します。
※地の文があります。ナレーションはウルトラセブン本編にも流れるもの、地の文は状況説明であるものとしてお読みください。
※更新は遅いです。気長にお付き合いください。
――――――数か月前
―――ウルトラ警備隊・本部
フルハシ・シゲル隊員(以下、フルハシ)「ミンチ殺人?」
キリヤマ・カオル隊長(以下、キリヤマ)「うむ、このところ日本各地で相次いで発生している」
キリヤマ「被害者は皆、まるでミンチにされたように身体がバラバラに引き裂かれていることからそう名付けられた」
アンヌ「まあ、恐ろしい」
ソガ隊員(以下、ソガ)「我々に話が回ってきたということは、まさか犯人は宇宙人なんですか?」
キリヤマ「いや、まだはっきりとはわかっていない」
アマギ隊員(以下、アマギ)「なんにせよ、警戒は必要ですね」
フルハシ「イカれた人間だったら俺たちの専門外だぜ? 警察はなんて言ってるんです?」
キリヤマ「うむ、日本全国で発生していることから単独犯とは考えにくいが、組織的な犯罪とも考えられていない、とのことだ」
ダン「正体は不明、しかし少なくとも敵は複数いる……ということですね」
キリヤマ「その通りだ。各員、慎重にパトロールを行ってくれ」
一同「了解!」
ナレーション『やがでミンチ殺人は世間にも知られるようになるが、犯人は一人も見つからなかった』
ナレーション『それどころかミンチ殺人の件数はある時期急速に減少し、代わりに失踪者、行方不明者が増えて行くようになった』
ダン(何か嫌な予感がする……)
ナレーション『モロボシ・ダン、すなわちウルトラセブンの超感覚をもってしても日本中に存在するはずの「犯人」は捉らえられなかった』
ナレーション『運の悪いことに、ウルトラ警備隊の行動範囲には偶然「犯人」が存在しなかったのだ』
ナレーション『しかしダンは、良くない何かが今この地球に存在することを確信していた』
ナレーション『そして日ごとにウルトラ警備隊のパトロール網が拡大していくうち、ついにその驚くべき「犯人」と接触する』
―――ウルトラ警備隊・本部
フルハシ「公園でライオンが死んだり、学校で暴漢が爆発自殺したり。ここんとこ奇妙な事件ばっかりだぜ」
アマギ「そのかわりにミンチ殺人が減っていくってのも、なんだか気味悪いですね」
ソガ「どうして犯人が一向に捕まらないんでしょう?」
フルハシ「警察は何やってるんだ!」
キリヤマ「待て、これは一般には発表されていないことなんだが……」
フルハシ「何です?」
キリヤマ「警察の人間も何人か犠牲になったり、行方不明になっている」
ソガ「返り討ちに合ってるってことですか!」
アンヌ「……ダンは?」
アマギ「パトロールだ、あいつ最近遠くまで回っているようだな」
アンヌ「心配だわ……」
―――某市・路上
ナレーション『そのころダンは、海に面した崖沿いをウルトラ警備隊専用車「ポインター」で走っていた』
ナレーション『すでに本部からは数十キロ離れていた』
ピピー
ダン「!」ピッ
ダン「はい、こちらダン」
アンヌ『ダン、もう夜遅いわ。いい加減帰ってらっしゃいよ』
ダン「心配ありがとう、だがこんな時間こそ犯人は動く。そうは思わないか?」
アンヌ『でも……』
キリヤマ『ダン、キリヤマだ』
ダン「隊長!」
キリヤマ『ダン、気合が入っているはいいが、ミンチ殺人の件はまだ警察の範疇だ。あまり我々が首を突っ込んでいい問題ではない』
ダン「ですが……」
キリヤマ『アンヌの言うとおり、程ほどにして切り上げてこい。分かったな?』
ダン「了解しました」プツッ
ダン(……)
ナレーション『ダンは、キリヤマ隊長の命令通り引き返そうとした』
ダン「!」
ナレーション『しかし、人間よりもはるかに優れた聴力を持つダンの耳は、闇夜に微かに響いた女性の悲鳴を聞き逃さなかった』
ブオーン キキッ
ダン「確かこのあたりに……む!」
海に面した崖の先端にぽつんと立っている倉庫。車を降りたダンは辺りを見回す。
ふと視界に、建物の陰にうずくまっている女性が映った。
ダン「もしもし、大丈夫ですか?」トン
肩を叩かれた女性は、そのままゆっくりと倒れた。
返事は無かった。返事をする口も、頭部さえも無かったのだ。
ダン「あっ!」
ザッ ザッ ザッ
ダン「!」
驚いたダンは、暗闇の中からゆっくりと近づいてくる男性を視界に捉える。
血まみれのその服装は、この死体を作った犯人を明確に指し示していた。
ダン「お、お前は……!?」
しかしダンは、二重の意味で驚くこととなる。
一つはもちろん血に塗れた姿であるが、さらなる問題はもう一つのほうだ。
男「貴様……見たのか」
ダン「動くな!」
ダンは素早く腰に差した光線銃『ウルトラガン』を構え、男に突きつけ静止を促す。
そしてダンは確信を持って、男に問いかける。
ダン「貴様は人間ではないな!? 何者だ!」
ダンの超感覚はこの男が人間ではないことを即座に見抜いた。
男「貴様もな」
男「だが貴様は……仲間では……ない……?」
ダンはまたも二重の意味で驚いた。
ダン(この男は俺の正体を見抜いている! しかも仲間!? 他に仲間がいるのか!?)
ダン(いや、とにかく今は目の前の事態だ! なんとしてもこいつを拘束……)
男「まあ、面倒だ。見たからには死ね」バラ
ダン「!?」
バラ バラバラ グニャリ
男の顔はまるで伸びるスプリングの様に奇妙に分解していった。
その先端は刃物のように鋭利になり、ダンの喉元へと―――
ダン「うおっ!」バッ
ガァン!
素早くかわしたダンは、たまらずウルトラガンを発砲する。
男「ぐがっ!」
放たれた光弾は、正確に男の心臓を撃ち抜いた。
男「う……ぐ……」ヨロヨロ
男は頭部を奇妙に変形させたまま、傷口を抑えてふらふらと後退する。
ダンは息を整えながら様子を伺うが、男の後方が断崖になっていることに気付くのは遅かった。
ダン「しまった!」ダッ
慌てて男を捕まえようとするが、男はそのまま海へと落ちて行った。
一連のミンチ殺人事件の重要参考人は、海の藻屑となってしまった。
ダン(奴は何者だろう……宇宙人、なのだろうか?)
ダン(しかし奴の身体から飛び散った血は紛れもなく地球人の物だ)
ダン(だが奴は俺の正体に感づいた……さらに仲間とは……?)
冷静を取り戻したダンは、ひとまず腕のビデオシーバーで本部との通信を取る。
すぐに帰還命令が出され、本部でダンの報告を待つこととなった。
奇しくも本部では、近頃巷で噂になっている『口だけ男』の話題で持ちきりになっていた―――
つづく
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