絵里「幸せについて本気出して考えてみた」 (80)
―部室―
絵里「……はぁ」
にこ「どうしたのよ、ため息なんかついちゃって」
絵里「ああ、にこ……ごめんなさい」
にこ「いや、別に謝る必要はないけど――なにか悩み事?」
絵里「ええ」
絵里「……ただ、悩んで解決策が見つかる問題でもないのよね」
にこ「何よそれ」
にこ「とりあえず話してみなさいよ」
絵里「でも……」
にこ「あのね、絵里」
にこ「私たちはただのクラスメートや知人ってわけじゃないでしょ?」
にこ「同じ目標に向かって歩んでる仲間じゃない」
絵里「それはそうなんだけど……」
にこ「誰かが挫けそうになった時や悩んでる時は、別の誰かがそれを支えるの」
にこ「――今回は私が絵里を支えてあげる」
絵里「にこ……ありがとう」
絵里「それじゃあ、私の力になってくれる?」
にこ「このにこにーに任せなさい♪」フフン
にこ「それで、一体何を悩んでたのよ?」
絵里「どうすれば希の妹になれるかを考えてたの」
にこ「どうやら力になれそうにないわね」
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絵里「話が違うじゃない!」
にこ「そんな話だとは思わなかったのよ!」
絵里「何が『今回は私が絵里を支えてあげる(キリッ』よ」
絵里「――ものの見事に裏切られたわ」
にこ「ア、アンタが突拍子もないこと言うからでしょ!」
絵里「私はにこを信じたからこそ悩みを打ち明けたんじゃない!」
にこ「あんな悩み聞かされたら誰だってサジを投げるわよ!」
絵里「そうやって自分の非を認めないのね……恥を知りなさい」
にこ「同級生の妹になりたいとか言っちゃう人に言われたくないんだけど」
絵里「だいたい何よそのツインテール」
にこ「髪型は今関係ないでしょ!」
絵里「さっさとグドンに食べられちゃえばいいのに」
にこ「誰が古代怪獣よ!」
ギャーギャー!
ワーワー!
にこ「ゼェ……ゼェ……」
絵里「ハー……ハー……」
にこ「――ね、ねぇ?」グッタリ
絵里「な、何かしら?」ゲッソリ
にこ「も、もうやめにしない?」
にこ「この争いは不毛過ぎるわ」
絵里「そうね……そしてなにより醜いものね」
にこ「その……悪かったわね。絵里の気持ちも考えずに無責任なこと言っちゃって」
絵里「私も言い過ぎたわ」
絵里「それに、にこのツインテールってとってもチャーミングよ」
にこ「絵里……」ポッ
絵里「にこ……」キュン
ガシッ
にこ(やっぱりこのポンコツチョロいわね)
絵里(このちんちくりん見た目に違わずチョロいチカ)
にこ「……それで、なんで希の妹になりたいなんて思ったのよ?」
絵里「え、相談に乗ってくれるの?」
にこ「どーせ放っておいてもロクな事にならないしね」
にこ「それならいっそ付き合ってあげることに決めたわ」
絵里「そう……なら一つ聞かせて」
にこ「何をよ」
絵里「にこが思う希の魅力って、何?」
にこ「希の魅力、ねぇ」
にこ「あののんびりとしたマイペースなところ、とか?」
絵里「はぁ……これだから素人は困るのよねぇ」ヤレヤレ
にこ「」イラッ
にこ「じゃあプロのアンタは何だと思ってるのよ」
絵里「いいわ、教えてあげる」
絵里「希の魅力はズバリ――包容力よ」
にこ「包容力……?」
絵里「ええ」
絵里「慈愛に満ちた暖かさで皆と接し」
絵里「聖母のように優しく包み込んでくれる」
絵里「それが――『東條希』という女神の魅力なの」
にこ「アンタの中で希は神格化されてるのね……」
絵里「希の魅力、伝わったかしら?」
にこ「うん、まぁ……なんとなく」
絵里「何その歯切れの悪い返事。細切れにするわよ?」
にこ「物騒なこと言わないでよ!」
絵里「……まあいいわ」
絵里「せっかくの良い機会だし、希の魅力を余すこと無く紹介してあげる」
絵里「――私と希のエピソードを交えながらね」
にこ(正直もう面倒くさくなってきちゃったけど、付き合うって言った手前しょうがないわね……)
にこ「じゃあ聞かせなさいよ――」
にこ「出会った当初や生徒会の時の話でしょ?」
絵里「何を言ってるの?」
絵里「今から話すのは私と希が10歳以上歳の離れた姉妹、という設定の中で生まれたエピソードよ」
にこ「ただの妄想じゃない……」
絵里「希のことを熟知してる私が構成したんだから問題ないわ」
にこ「問題大アリよ!」
にこ「それじゃあ完全フィクションでしょ!」
絵里「私の脳内希の人格再現率は100%――」
絵里「それはつまり、私が想像した希の発言は希本人の意思でもあると言えるわ」
にこ「なにその超理論」
絵里「まずは朝のワンシーンからね」
にこ(勝手に話が進められていく……)
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【絢瀬絵里の幸福~目覚めの朝~】
―朝―
チュンチュン チュンチュン
絵里「」スヤスヤ
希「――えりち~、起きてる?」ヒョコ
絵里「」スースー
希「可愛い寝顔見っけ♪」フフッ
希「ほら、朝だよ~」
ポンポン
絵里「ん……うぅん」ゴシゴシ
絵里「……あ、お姉ちゃん。おはよー」パチッ
希「おはよう」
希「朝ごはんの準備もう出来てるから早く顔洗っておいで」
絵里「はーい」ヨイショ
トテトテ
絵里「――あっ!」ガッ
ゴチンッ!
希「え、えりち!?」ダッ
絵里「ふぇぇ、いだいよぉ~」ブワッ
希「大丈夫!?どこか打った?」ダキッ
絵里「お゛で゛こ゛ぶ゛つ゛け゛た゛~」ヒグッヒグッ
希「どれどれ――」サスサス
希(……少し赤くなってるけど腫れてはいない)ホッ
絵里「グスッ……グスッ……」
希「泣かない泣かない」
希「折角の綺麗な顔が台無しだよ?」ナデナデ
絵里「でも~」ズズッ
希「それじゃあ――ウチがおまじないかけてあげる」
絵里「おまじない……?」キョトン
希「そうや」
ダキッ
希「痛いの痛いの、飛んでけー」
チュッ
絵里「ひゃ、ひゃあ!」ビクッ
希「どう?治ったでしょ?」ニコ
絵里「」サワサワ
絵里「――ホントだ!もう痛くない!」パアァァ
絵里「お姉ちゃんスゴーイ!」キャッキャッ
希「ふふっ、スピリチュアルパワーのおかげやね」
希「さて、転ばないようにウチと一緒に洗面所行こっか」ギュッ
絵里「うん!」ギュッ
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絵里「」フゥ
絵里「――どう、分かったかしら?」
にこ「アンタがかなり拗らせてるってことは分かったわ」
絵里「ああ……やっぱり希は最高ね」ウットリ
にこ「今までの全部妄想だけどね」
絵里「希のおまじないは百薬の長とはよく言ったものね」
にこ「アンタしか言ってないわよ」
絵里「実際にされたら痛みどころか意識まで飛んじゃうけどね」フフッ
にこ「もはや劇薬じゃない」
絵里「……どうやらまだ希の素晴らしさが理解できてないようね」
絵里「それなら次のシーンに移るわ――」
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【絢瀬絵里の幸福~暖かな食卓/不慣れな手際~】
希「じゃあえりち、手を合わせて」スッ
絵里「はい」パンッ
希「いただきます」
絵里「いただきまーす!」
絵里「」パクパク
絵里「」モグモグ
絵里「……んっ」ゴックン
希「えりち、口の周りにご飯粒付いてるよ」フフッ
絵里「えー」ペタペタ
希「あ、素手で触らんといて」
希「ウチが拭いてあげる」
フキフキ
希「――はい、綺麗になったよ」
絵里「ありがとーお姉ちゃん」ニコニコ
希「あんまり慌てて食べたらアカンよ?」
絵里「だってお姉ちゃんのご飯美味しいんだもん」
希「ウチの料理、好き?」
絵里「大好きー♪」
希(……ちょっと意地悪しちゃお)
希「チョコレートとどっちが好き?」
絵里「えっとねー、うんとねー……両方♪」ニカッ
希「ふふ、えりちは欲張りさんやなぁ」ニコニコ
絵里「ごちそうさまでしたー!」
希「お粗末さまでした」
希「それじゃあウチは食器洗うからえりちは着替えておいてな」カチャカチャ
絵里「わかったー」
希「一人でお着替え出来るかな~」ニヤニヤ
絵里「できるもん!エリチカ一人でできるもん!」プクッ
希「そっかー、えりちは賢いもんね」スタスタ
ジャーー
希「」フキフキ
絵里「え……っと」モタモタ
希「」ゴシゴシ
絵里「こっち、が……こう……かな?」モタモタ
希「」キュッキュッ
絵里「あ、れ?……むうぅ」モタモタ
絵里「…………」グスッ
希「えりち~、着替えでk――」クルッ
絵里「お゛ね゛ぇ゛ち゛ゃ゛ん゛て゛つ゛だ゛っ゛て゛~!」ヒグッヒグッ
希「もぉ、えりちは可愛いなぁ」ニコニコ
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にこ「……一つだけ言いたいことがあるわ」
絵里「なにかしら?」
にこ「さっきから愚図りすぎでしょ」
にこ「これじゃあ希に包容力があるっていうよりアンタがただポンコツなだけじゃない」
絵里「成る程」
絵里「つまりにこはもっと純粋な希を求めてるわけね」
にこ(別にそういうわけでもないんだけど……)
絵里「それならとっておきのシチュエーションがあるの」
にこ「どうせまた大泣きオチでしょ?」
絵里「甘いわね、にこ」
絵里「今度のシチュエーションは――『一緒にお風呂』」
絵里「これなら希お姉ちゃんの真骨頂を堪能出来るわ」
にこ「さらっと希お姉ちゃんとか言ってんじゃないわよ」
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【絢瀬絵里の幸福~女神の水浴び~】
希「えりち~、お風呂入るよ~」ヌギッ
絵里「おふろー♪」ヌギヌギ
ガララッ
希「湯船に浸かる前にしっかり体洗わんとね」
絵里「うん!」
希「じゃあまずは頭から洗うからしっかり目瞑っててな」
絵里「わかったー」ギュム
ワシャワシャ
希「どこか痒いところありますか~?」
絵里「無いでーす♪とっても気持ちいいでーす♪」
希「ふふっ、良かった」ニコニコ
希「――そろそろ洗い流すよ~」
シャーーー
希「シャンプーお~しまい」
絵里「サッパリしたぁ!」パァァ
希「――じゃあ今度は背中洗うから後ろ向いて」
絵里「はーい」クルッ
ゴシゴシ
絵里「お姉ちゃんくすぐった~い」キャッキャッ
希「動いたらアカンよ~」フフッ
シャーー
希「はい、背中も綺麗になったね」
絵里「……お姉ちゃん」
希「どうしたん?」
絵里「今度はエリチカがお姉ちゃんを洗ってあげる♪」
希「そう?じゃあお願いしようかな」
ゴシゴシ
絵里「お姉ちゃん気持ちいい~?」
希「うん、とっても気持ちいいよ♪」
シャーー
希「体も綺麗になったしお風呂入ろっか」
絵里「わーい一番乗りー♪」ヒョイ
ザボンッ
希「こら、飛び込んだら危ないやろ」
絵里「えへへ、ごめんさ~い」ニコッ
希「もう……」クスッ
希「それじゃあウチも入ろうかな」
チャプン
希「はあ~気持ちいい~」マッタリ
絵里「お姉ちゃん抱っこして~」
希「お風呂で抱っこしてほしいの?」キョトン
絵里「早く早く~」ジタバタ
希「えりちは甘えん坊やなぁ」フフッ
ダキッ
希「――これでいい?」
絵里「うん!」
絵里「……お姉ちゃんあったか~い」スリスリ
希「えりちもポカポカだよ」フフッ
絵里「おねえちゃ~ん……」ウトウト
希「ん……?」
絵里「」スースー
希「あらら寝ちゃった」クスッ
絵里「」スヤスヤ
希「このままじゃのぼせちゃうし、もうあがろうね」
ザバッ
絵里「…………オネーチャーン」ムニャムニャ
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絵里「オネーチャーン……オネーチャーン……」ニヤァ
にこ「おーい」
絵里「……オネエチャンスキスキー」ニヘラ
にこ「」スッ
パーンッ!
絵里「――痛っ!」ビクンッ
にこ「おかえり」
絵里「……ただいま」ジンジン
にこ「今のでエピソードは終わり?」
絵里「え、ええ」ヒリヒリ
絵里「でもこれで希のことが――」
にこ「全然分からないわね」キッパリ
絵里「……ごめんなさい、よく聞き取れなかったのだけれど?」
にこ「何回でも言ってあげるわ」
にこ「今までの話じゃ、全く希の良さが伝わってこない」
絵里「…………」
にこ「だってそうでしょ?」
にこ「いくら熱弁したところで、それはアンタが勝手にイメージしたもので」
にこ「詰まるところ紛い物ってことじゃない」
絵里「……やっぱり何も分かってないのね、にこ」
絵里「私は希の事を熟知しているのよ?」
絵里「誰よりも近くで触れ合い、分かり合って……自分でも呆れるぐらい惚れ込んでいるわ」
絵里「そんな私が作り上げた希が紛い物だなんて――」
にこ「ねぇ、それならさ」
にこ「――なんで現実の希を語らないの?」
絵里「それは……」
にこ「自信がないのね」
絵里「そんなわけないじゃない!」
にこ「どうだかねぇ」ニヤニヤ
にこ「ヘタレなアンタのことだから妄想の世界に逃げ込んだんでしょ?」
絵里「……言ってくれるわね」ムカッ
にこ「そんなに苛つかないでよ」
にこ「私はホントのことを言っただけなんだから」
絵里「」カチーン
絵里「分かった。語るわ、語ってやるわよ――」
絵里「妄想でも作り話でもないリアルってやつをね!」バンッ!
にこ「そうこなくっちゃ♪」
絵里「やっぱり希といえば母親のような立ち回りが印象的ね」
絵里「いち早くμ'sの可能性を見出し、まだ二年生達だけで活動を始めた時から幾度と無く助言をして導いてきた……」
絵里「そして紆余曲折あって私がμ'sに参加出来たのも希が後押ししてくれたから」
にこ「そういえば希がμ'sの名付け親なのよね」
絵里「ええ」
絵里「だからμ'sに対する想いは人一倍強くて、それが希の包容力の源になっているのよ」
にこ「ふーん、成る程ねぇ」
絵里「メンバーが9人になった後もその役割は変わらない……いえ、むしろ円熟したわね」
絵里「皆が迷ってる時は進むべき道を指し示し――」
絵里「メンバー間で衝突しそうになった時は柔らかな光で包み込んでくれる」
絵里「これは今まで一緒に活動してきたにこ、貴女にも分かるはずよ」
にこ「そこまで仰々しくないけど……まあ、そうね」
絵里「……私はそんな希の母性に触れて暖かさを知った」
絵里「だからこそ、私はもっともっと知りたいし近くに居たい……」
絵里「希の妹になってその愛情を一身に受け止めて――」
絵里「希お姉ちゃんに甘やかされたい!」クワッ!
にこ「……それが絵里の気持ちなのね?」
絵里「ええ」
絵里「これが私の飾り気のない素直な想い」
にこ「……そう」チラッ
にこ「だそうよ――――希」
絵里「えっ……?」
クルッ
希「やっほ♪」
絵里「」
絵里「な、なんで希がいるの!?」ガタッ!
希「ウチだってμ'sのメンバーなんだから部室にいるのは当然やん?」ニコッ
絵里「そういうことじゃなくって……い、いつから居たの?」アセアセ
にこ「アンタがお風呂の妄想垂れ流してる時よ」
絵里「全然気付かなかった……」
希「えりち楽しそうに話してたもんなぁ」
希「――それに、そんな風に想ってくれてるなんて知らなかったよ」ニヤニヤ
絵里「……にこ、謀ったわね」ギリッ
絵里「わざと挑発的な物言いだったのにもこれで合点がいくわ」
にこ「人聞きの悪いこと言わないでちょうだい」
にこ「私はただ、絵里が希のことをどう思ってるのかなって気になっただけなんだから」ニヤニヤ
絵里「まったく、にこなんかに相談を持ちかけた私が賢くなかったわ」ヤレヤレ
にこ「そもそも相談内容が賢くなかったわよ」
希「えりち……」
絵里「希、これはその……あれよ?」アセアセ
絵里「あそこのツルペタ合法ロリに唆されて――」
にこ「その喧嘩言い値で買ってあげる」
絵里「だから……」
希「――いいよ」
絵里「……え?」キョトン
希「お姉ちゃんになってあげても、いいよ」ニコ
希「ウチ、一人っ子やろ?」
希「……前々から姉妹とかに憧れがあったんよ」
絵里「そ、それじゃあ――!」
希「うん。えりちはウチの妹、だから……」
希「――いっぱい甘やかしてあげる♪」
にこ(希もこんなのに付き合ってあげなくてもいいのに……)
絵里「……ねぇ、にこ」
にこ「なによ」
絵里「にこに相談して本当に良かった……貴女は最高の友人よ♪」キラキラキラキラ
にこ「アンタにプライドってもんは無いの?」
絵里「お姉ちゃ~ん♪」ダキッ
希「えりちは甘えん坊やなぁ」ナデナデ
にこ(早速始めだした……)
にこ「それじゃあ私は先に帰るから」スタッ
希「もう帰っちゃうの?」
にこ「今日は練習も無いし、それに……姉妹の時間を邪魔しちゃ悪いでしょ」
希「にこっちはなんだかんだ言って気配りしてくれるんやね」フフッ
にこ「感謝しなさいよ――じゃ、また明日」
ガチャ
バタン
希「……さて、ウチらも帰ろっか」
ギュッ
絵里「うん!」ニカッ
―帰り道―
絵里「フンフフ~ン♪」ランラン
希「えりちご機嫌だね」
絵里「だってお姉ちゃんと一緒だから」
希「いつも一緒に帰ってるやん」フフッ
絵里「今日は姉妹としてだから特別なんだよ!」ニカッ
希「そういうもんなん?」
絵里「そーいうものです」
希「ふふ、そっか」
テクテクテクテク
絵里「あ!クレープ屋さんだ!」グイグイッ
希「食べたいの?」
絵里「……ダメ?」ウルウル
希「ううん、ウチも食べたいし二人で食べよっか」
絵里「やったー♪」キャッキャッ
雪穂「――そしたらお姉ちゃんがさー……」
亜里沙「ハハッ、雪穂も大変だね~」
雪穂「ホントもう少ししっかりしてほしいよ」ヤレヤレ
亜里沙「でも穂乃果さんっていつも明るくて、元気だから楽しそうだけどね」
雪穂「あーないない、それはない」バッサリ
雪穂「はぁ、どうせなら絵里さんみたいな頼れるお姉さんタイプの姉が良かったなー」
亜里沙「お姉ちゃんも意外と抜けてる所はあるよ」
雪穂「いやいや、あれで抜けてるって言ったらこっちのなんか空っぽって感じなんだけど?」
亜里沙「そ、それは言いすぎじゃないかなぁ……」タハハ
<キャッキャッ
雪穂「ん?あれって――」ジーーー
亜里沙「……お姉ちゃん?」
希「えりちはどんなクレープ食べてるのかな~?」
絵里「チョコバナナ!」
希「やっぱりチョコなんやね」フフッ
絵里「お姉ちゃん食べる?」スッ
希「えりちは優しいなぁ」
希「……それじゃあ一口貰おうかな」
パクッ
絵里「……おいしい?」
希「うん、とっても美味しいよ」ニコッ
希「お返しにウチのもあげる」スッ
絵里「わーい♪」パァァ
ハムッ
希「ふふっ、鼻にクリーム付いてるよ」チョンチョン
絵里「お姉ちゃん取って~」
希「はいはい」スッ
絵里「えへへ、ありがとー」ニコニコ
希「後はお家に帰りながら食べようね」
絵里「はーい」
テクテクテクテク
雪穂「」
亜里沙「」
雪穂「…………私、これからはお姉ちゃんに優しくするよ」
亜里沙「亜里沙も今後は一人っ子として振る舞うから」
―希宅―
ガチャ
希「ただいま~」
絵里「お邪魔しまーす!」
希「えりち~、ちゃうやろ?」
絵里「え?」
希「ウチらは姉妹なんよ?」
希「だから――ここはウチの家でもあるし、えりちのお家でもあるんや」
絵里「そっかー!」
絵里「エリチカやり直す!」
希「うん」
絵里「ただいまー!」ギュッ
希「おかえり」ダキッ
希「夕食の準備するからえりちは待っててな」
テキパキ
絵里「」ジーーー
希「……どうかしたの?」
絵里「エリチカお手伝いする!」
希「いいっていいって」
希「えりちはゆっくり寛いでていいよ」
絵里「ヤダ!お手伝いするんだもん!」ジタバタ
希「う~ん、それならお皿とか食器を並べておいてくれる?」
絵里「はーい」
絵里「おってつだい♪おってつだい♪」カチャカチャ
トテトテ
絵里「――あっ!」ガッ
ガシャーン!
希「えりちは期待を裏切らないね」フフッ
絵里「お皿割っちゃった……」シュン
希「怪我はない?」
絵里「だいじょーぶ……」ションボリ
希「良かった」ホッ
希「危ないから破片は触ったらアカンよ?」
サッサッ カチャカチャ
絵里「お姉ちゃん……ごめんなさい」ペコッ
希「ううん、えりちが怪我しなくて良かった」ナデナデ
絵里「お姉ちゃん……」ギュッ
希「さぁ、料理も出来たし食べよ?」
絵里「うん……」
イタダキマース
希「――美味しい?」
絵里「うん!」パァァ
希(えりちは単純で可愛いなぁ)
絵里「ごちそーさまでした!」パンッ
希「お粗末さまでした」
絵里「――お姉ちゃーん」ダキッ
希「よしよし」ナデナデ
絵里「」スリスリ
希「」ニコニコ
絵里「……お姉ちゃーん」
希「ん~?」
絵里「おふろー」
希「お風呂入りたいの?」
絵里「お姉ちゃんとー」
希「ふふっ……よし、行こっか」
ヌギヌギ
絵里「お姉ちゃん早くー」
希「今行くよ~」
ガララッ
シャーー
希「体キレイキレイにしましょうね~」ゴシゴシ
絵里「はーい」ゴシゴシ
希「……えりち」
絵里「なにー?」ゴシゴシ
希「――洗いっ子、する?」
絵里「するー!」ニパァ
絵里「ごしごしー!」キャッキャッ
希「きゃ!……もう、あんまり激しくしないで」
希「ほら、壁に泡が飛び散っちゃってるやん!」プンスカ
絵里「ご、ごめんなさい……」シュン
希「」ニヤリ
希「隙あり~!」ガバッ
絵里「えぇ!?」
希「いたずらっ子にはお仕置きや~♪」ワシワシワシワシ
絵里「いやあぁぁぁ!ごめんなさぁぁぁぁぁいっ!」ビクンッビクンッ
希「――フゥ~、楽しかった♪」キラッキラ
絵里「」チーン
希「よし、湯船入ろ」
チャポーン
希「えりちもおいで~」
絵里「いやチカ。怖いチカ」ガクガクブルブル
希「そっか~」
希「どうやらここにお姉ちゃんの言うことが聞けない悪い子がいるみたいだね♪」ニコッ
絵里「エリチカお姉ちゃん大好き!」
絵里「一緒におふろ入りたいチカ!」
希「えりちが良い子でウチはとっても嬉しいよ♪」ニコニコ
希「はあ、サッパリした」フキフキ
絵里「気持ちよかったー!」フキフキ
希「また一緒にお風呂入ろうね」ニコッ
絵里「う、うん!」
希「この後は何しようか?」
チラッ
絵里「……うぅん」ウツラウツラ
希「あらら、オネムの時間かな?」
絵里「おねえ、ちゃん……ベッドぉ」ウトウト
希「ふふっ、それじゃあもう寝ちゃおっか」
モゾモゾ
希「おやすみ、えりち」
絵里「うん……おやすみなさい」
希「」
絵里「」
希「」
絵里「――お姉ちゃん、起きてる?」モゾモゾ
希「起きてるよ」
希「どうしたん?寝れないの?」
絵里「……なんか目が冴えちゃった」
希「そっか」ナデナデ
絵里「だから……少しだけ、お話したいなって」
希「うん、いいよ」ニコッ
絵里「ありがとうお姉ちゃん」ギュッ
絵里「エリチカ、幸せについて本気出して考えてみたんだ……」
希「うん」
絵里「そしたらね――いつでも同じ所に行きついちゃうの」
希「ふふっ、そうなんや」
絵里「お姉ちゃんは幸せについて考えてみたことってある?」
希「うーん……本気で考えたことはないかもね」
絵里「じゃあさじゃあさ!」ギュッ
絵里「折角だからお姉ちゃんも考えてみてよ!」
希「ウチが……?」
絵里「うん!」
希「幸せか…………フフッ」
絵里「お姉ちゃんなんで笑ってるの~?」キョトン
希「だって、ウチの幸せはだいぶ前から決まってるんよ」ニコニコ
絵里「そうなの?」
希「うん」ニコッ
希「それに……えりちと同じだと思うしね」
絵里「え!?」ドキッ
希「気になる?」ニヤニヤ
絵里「なるっ!すっごく!!」
希「それじゃあ――答え合わせ、しないとね」ズイッ
絵里「え――?」
チュッ
絵里「お、お姉ちゃん……い、いま――」ワナワナ
希「どう?少しは合ってたかな?」ニコニコ
絵里「~~ッ」フルフル
希「……えりち?」
絵里「大正解っ!!!」ダキッ!
希「本当に?良かったぁ」ダキッ
絵里「お姉ちゃん!お姉ちゃん!」ギュゥゥゥゥ
希「ほらほらえりち、明日も練習があるから早く寝よ?」ナデナデ
絵里「も~あんなことされたら眠れないよ~」プクッ
希「ごめんね♪」
希「それなら、えりちが眠くなるまでお話に付き合ってあげる」ニコッ
絵里「ホント!?」パアァァァ
希「ほんとほんと」
絵里「それじゃあねぇ――――」
―翌日・屋上―
絵里「おね~ちゃ~ん♪好き好き~♪」スリスリ
希「ふふっ、しっかりストレッチせんと怪我するよ~」ナデナデ
穂乃果「ど、どうしちゃったの絵里ちゃん……」オロオロ
にこ「穂乃果、アレに深く関わってはダメよ」
海未「ああいった攻め方もアリですね」メモメモ
ことり「……ホノカオネェチャン」ボソッ
にこ「感化されてんじゃないわよ」
凛「――かよちん!」
花陽「ひゃ、ひゃい!」ビクッ
凛「凛たちも絵里ちゃんたちに負けてられないよ!」
花陽「ああいうのって別に張り合うものじゃないと思うんだけど……」
凛「問答無用にゃー!」ガバッ
花陽「ダ、ダレカタスケテー!」
にこ「凛と花陽もふざけてないでちゃんと練習しなさいよね」ヤレヤレ
真姫「……ねぇ、にこちゃん」
にこ「あ、真姫ちゃん」
にこ「調度良かった、一緒にストレッチしましょ」
真姫「――妹、欲しくない?」
にこ「ごめんもう間に合ってるから」
おわり
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