マルコ「三人寄れば……」(73)

エレン「はぁ……」

マルコ「はぁ……」

クリスタ「はぁ……」

三人「今日は久々にゆっくり食事ができる……」

エレン「ん?」

マルコ「あれ?」

クリスタ「え?」

エレン「なんだよマルコにクリスタ、二人とも随分疲れた顔してるぜ?」

マルコ「はは、エレンこそ凄いじゃないか」

クリスタ「疲れてるというより、やつれてるよ……?」

エレン「いや、お前達ほどじゃないだろ?どうしたんだよ一体?」

~~~~

エレン「だよなー、マルコは真剣に憲兵団目指してるのに、ジャンの奴はいつもいつも……」

マルコ「慣れてるからいいんだけどね。でも食事中、特に飲み物飲んでるときに背中バンバン叩かれるとちょっと……」

クリスタ「私もたまにユミルにそれやられるなぁ……お酒一気飲みとか、私の飯が食えないのかー!とかも……」

エレン「いやユミルの奴はまだいいだろ?一応クリスタのこと心配してるみたいだしさ。それよりミカサはもっと凄いぞ?」

マルコ「確かに、あれは凄いな。二次災害でジャンが暴れるせいもあって、印象深いよ……」

クリスタ「エレンの食事、完全にミカサに支配されちゃってるもんね……咀嚼回数とか、食べる順番とかも……」

エレン「ああ。今になって気がついたが、こうやって自分の口元を自分で拭いたのも久々な気がする」

マルコ「ここ最近、ミカサがエレンの世話を焼く→ジャンが暴れる→エレンに負ける→教官登場のパターン続いてたもんな」

クリスタ「間でユミルやライナーが煽ったり、騒ぎに乗じてサシャがご飯強奪したりも最早定番だったよね」

エレン「もうサシャに関しては諦めたけどよ、なんでジャンの奴はあんなに俺を目の敵にすんだよ!?」

マルコ「うーん……正直に言ってしまうと、ジャンもミカサに世話を焼いて貰いたいんだよ」

エレン「マジかよ?代わってくれるなら喜んで代わるぞ、俺」

クリスタ「あはは……ミカサも、エレンが心配なんだよ」

エレン「うー……納得しきれないな。常に監視されながら食事する気分ってどんなだと思う?」

マルコ「確かにそれはキツイな。食事っていうのは、もっと自由でこう……」

エレン「救われてなきゃならない、か?」

マルコ「そう、それだよ!やっぱり訓練で疲れた後の食事は、落ち着いて食べたいよな」

クリスタ「賑やかにみんなで食べるのも、嫌いじゃないんだけどね」

エレン「まあなあ……でも、俺は今のこのくらいが丁度よくて好きかもな」

マルコ「同感だ。エレンやクリスタと一緒に食事をすることってなかったから、凄く新鮮だよ」

クリスタ「マルコは予想つくけど、エレンもこうしてると意外と落ち着いてるよね?」

エレン「いや、俺だって本当はもっと静かにゆっくり食事したいなーとか思ってるんだぜ?」

エレン「ただミカサの奴や、ジャンの奴がいるから騒がしく感じるだけで……」

マルコ「訓練のときのエレンの様子を見ていると、どうしてもそっちの印象が強くなるしな」

クリスタ「いつでも一生懸命だもんね」

エレン「お前達もだろ?ジャンの奴も見習えってんだよ。あいつ立体機動上手いのにもったいねえ……」

マルコ「今頃は罰則で、嫌でも走りこみ訓練やらされているだろうけどね」

エレン「なんだ、いないと思ったらあいつまで罰則くらってたのか。実はミカサとアルミンも罰則中なんだよ」

クリスタ「あれ?ユミルとサシャもだよ?」

マルコ「通りで……」

エレン「俺達が珍しく落ち着いて食事できてるわけだよ。ここんとこの騒ぎの原因が全員いないから」

クリスタ「罰則のおかげって、なんだか複雑だね。でもどうしてみんな罰則を?」

マルコ「対人格闘訓練の時、組んだ相手がコニーで、コニーの謎の構えにツッコミを入れてるところを教官に見つかったんだ」

エレン「連帯責任か。ミカサの奴は『何故エレンの直線状に巨人プレートを設置しないの』とか教官にかみついてな……」

マルクリ「うわぁ……」

エレン「成績上がらないのは俺のせいだってのに……んで、ミカサを鎮めるためにアルミンまで犠牲になった……」

クリスタ「サシャはいつもの窃盗で、ユミルは……その、対人格闘のときにやたら私の身体をぺたぺた触ってきて……」

クリスタ「それを見た教官が『羨まけしからん!』とか叫んで、ユミル連れてっちゃって……」

マルコ「おい教官本音漏れてるぞ」

エレン「ユミルかわいそうだなおい。ミカサなんて常時俺のこと触ってくんのに……」

マルコ「……お前がそれをさらりと言えるあたりが怖いよ」

クリスタ「ミカサ、教官の言葉だけど、もっと慎みを覚えないといけないんじゃないかなぁ……」

エレン「今度二人からも言ってくれないか?真面目なお前達の言葉ならミカサも少しは聞くだろうし」

マルコ「試してみるよ。それにしても普段から思っていたけど、ミカサのエレンへの執着心は本当に凄いな……」

クリスタ「何か、理由があるのかな?」

エレン「あー……あるっちゃあるんだが……そろそろ寮に戻らないとまずい時間だな」

マルコ「うわっ、もうこんなに時間経ってたのか」

クリスタ「全然気がつかなかった……」

エレン「結構喋ってたからな。……なあ、お前たちがよけりゃ明日も一緒に食わないか?」

マルコ「お、いいね。お前達とならゆっくり食事できるし、さっきの話の続きも気になるからな」

クリスタ「私なんかでよければ、いつでもいいよ。ミカサの話も気になるし」

エレン「あんま面白いものでもないんだけどな。むしろマルコとクリスタはなんか面白い話とかないか?」

マルコ「そうだな……うん、明日までに考えとくよ。それじゃあ二人ともおやすみ」

クリスタ「私も考えておくね。おやすみエレン、マルコ」

エレン「おう、おやすみ!」


~翌朝~


ミカサ「……昨日は散々だった。いずれあの眼鏡教官の眼鏡は割る」

アルミン「ミカサ……頼むから大人しくしておいてくれ……僕は全身の筋肉がもう限界だよ」

エレン「おはようアルミン、ミカサ」

ミカサ「おはようエレン。昨日は一緒にご飯が食べられなかった。だから早く一緒に食べよう」

エレン「わりぃ、今日はマルコとクリスタと食べる約束してるんだ」

ミカサ「」

アルミン(な、我らが天使のクリスタと!?羨ましい!)

ミカサ「」

アルミン(そして僕はまたミカサを抑える役かぁ……あははは……)

エレン「ようマルコ、隣いいか?」

マルコ「おはようエレン。もちろん構わないさ」

ジャン「お、おいマルコ!なんだってこいつと!」

エレン「あん?」

マルコ(ジャン、エレンはお前がミカサに近づきやすいようにこっちに来てくれたんだ)ゴニョゴニョ

ジャン「ありがとよエレン!じゃ、行って来るぜ!」ダダダ

エレン「お、おう?……な、なにがあったんだジャンの奴?」

マルコ「気にしなくていいよ」

エレン「それもそうだな。あとは……おーい、クリスター」


クリスタ「あ、二人とも!ちょっと待っててね」

ユミル「どうしたんだよクリスター、昨日教官の説教でくたびれた私を癒してくれよー」グテー

クリスタ「ごめんねユミル、今日はあの二人と一緒に食べる約束だったから」

ユミル「なにぃ!?ちくしょうあいつら、私のクリスタに一体何を!?」

クリスタ「もうっ!何かしてきたのはユミルの方でしょ!」トコトコ

ユミル「ぐはっ!」バタッ



クリスタ「ごめんね、待たせちゃって」

マルコ「別に構わないさ」

エレン「おい、あっちでジャンがミカサにパワーボムされてんぞ……」

クリスタ「うわぁ、痛そう。でもジャン、ちょっと嬉しそうだ……」

マルコ「ジャンだからね。エレンがあの位置から動かなかったら、きっと今頃エレンもあれに巻き込まれてただろう」

エレン「やっぱこっちきて正解だったな。これで今日も落ち着いて食事できそうだ」

マルコ「ああ。それより、昨日のミカサの話が気になるな」

クリスタ「わ、私も」

エレン「ああ、あれか。実はミカサな――」

ミカサ(エレン……)

ミカサガソレデナ ヘー

ミカサ(エレンが、私の話をしている……)

ッテナコトガアッテ… ソウダッタンダ…

ミカサ(エレンが、私のことを、私の名を連呼してくれてる……)

マア、ミカサダカラナ ナットク!

ミカサ(……ご飯を一緒に食べられなかったのは残念だけど……)

……トイウコトモアッタ ナニソレコワイ

ミカサ(恥ずかしがり屋なエレンの遠まわしな愛情表現と思えば、悪くない)

ジャン「ミカサァ」ゴッ!「俺はぁ!」ゴスッ!「お前のことがぁ!」ゴスン!「す、すきゃぼっ!?」バギィン!

ミカサ「ジャンうるさい。エレンの声が聞こえない」

ガラッ キース「今しがた、連続で大きな音が聞こえたが……」

ミカサ「サシャが脱糞した音です」

サシャ「!!??」

~夕食~

マルコ「――ということがあったんだ」

クリスタ「す、すごいよマルコ!」

エレン「マルコの話はためになるなぁ」



ユミル「よぉミカサ……」

ミカサ「ユミル……」

ユミル「お前んとこの死に急ぎ野郎に、朝からクリスタをとられっぱなしなんだが?」

ミカサ「それはこちらの台詞。と言いたいけど、残念ながらエレンは私以外の女には興味を持たない」

ユミル「……ああ、うん。じゃあそういうことにしとくよ……」

ミカサ「ので、あなたのクリスタと私のエレンを奪っているのはマルコということになる」

ユミル「いや、それはねーだろ。男と女両方に手を出すなんてライナーぐらいだし、あのマルコだぞ?」

ミカサ「だから私も困惑している。マルコは信じられる人。このもやもやをぶつける先が見当たらない」

ミカサ「だからとりあえず、マルコといつも一緒のジャンで発散することにした」

ジャン「」ブクブク

ユミル「お、おい、流石にそれやりすぎじゃないか……?」

アルミン「無駄だよユミル……」

ユミル「アルミン……どういう意味だ?」

アルミン「ジャンは自ら望んだんだ。ミカサから与えられるものなら、たとえそれがなんであろうと――ご褒美だって」

ユミル(うわぁ……)



クリスタ「それでね、実は――」

マルコ「へえ、それは僕も知らなかったな」

エレン「俺なんて、最初から知らないことだらけだぞ……」

マルコ「話す相手が変わるだけで、こうも新しい発見があるのか」

エレン「俺が話せるのって、後は外の世界の話とかぐらいだけどなー」

クリスタ「それ、聞いてみたいかも」

マルコ「それじゃあ、また明日この席に集合しようか」

エレン(――マルコ達と話すのは、とても楽しかった)

エレン(俺の知らないことを色々知っているし、食事もゆっくり食べれた)

エレン(何故かジャンがつっかかってくることもなくなって……)

エレン(訓練以外の時間も、すごい充実感があった)

エレン(これからも、このさらに充実した訓練兵生活を送れるんだって……)




エレン(そう、思っていた)

エレン(それがまさか、あんなかたちで奪われることになるなんて)

エレン(俺に、わかるわけがないじゃないか……)



~~~~

【訓練兵団・多目的広場】

キース「……さて、訓練兵達よ。お前達に重要な知らせだ」

キース「今期は優秀な訓練兵が多く、採点基準や方法の見直しが考えられているのだが……」

キース「来期より実施する予定の採点方を、試験的に今日行うこととなった。まず紹介しよう、特別教官のミケ・ザカリアスだ」

ミケ「……」スンスン

キース「この男の鼻は、常人にはわからない匂いも判別可能なのだ。つまり……兵士に相応しいか否かの匂い等も細かくわかる」

キース「姑息な手段は通用しないからな。それでは早速、始めようか。一列目、前へ!」
スンスンスンスンスンスンスンスン……
ミケ「むっ!」ブッブー キース「汗臭い匂い!マイナス50!」

ライナー「なんでだよ!?」ガーン

ミケ「?」ブンブン キース「無臭だと……?素晴らしい、プラス250!」

ベルトルト(匂いまで存在感薄いのか、僕って……)

ミケ「……ちっ!」プンプン キース「リア充の匂い!マイナス100!」

フランツ「それ、完全にひがみですよね教官!?」

ミケ「…………うっぷ」ムリムリ キース「衰えない臭さ、ゲロの匂い!マイナス200!」

ダズ「色褪せない美しさ風に言っても傷つきますよ俺は!……う、ウォェロロロロロ……」

エレン「採点厳しいな……」

クリスタ「これ、基準どうなってるんだろう……?」

マルコ「あ、僕らの番だね」

スンスンスンスンスンスンスンスン……

ミケ「ふー……」バツジルシ キース「死に急ぎ野郎の匂い、失格!」

エレン「なんでだよ!?」ガーン

ミケ「クンカクンカスーハースーハー………」ガッカリ キース「死にたがり野郎の匂い、失格!」

クリスタ「や、野郎じゃないです!?」ガーン

ミケ「っ……!?」アウトー! キース「死ぬ野郎の匂い、失格!」

エレクリ「!?」

マルコ「えっ!?ちょ……えええっ!?」ガガーン

キース「なんてザマだ!この場で開拓地送りにされたくなければ、貴様ら三人、食事抜きかつ死ぬ寸前まで走って来い!」

三人「」

とりあえず今日はここまで。

【走りこみ訓練コース】

エレン「どうしてこうなった」タッタッタ…

クリスタ「……」タッタッタ…

マルコ「」タッタッタ…

エレン「なあクリスタ……お前が死にたがりって、本当か?」

クリスタ「……うん、間違ってない。私は……綺麗に見られて、綺麗に死にたいっなって――」

エレン「ふんっ!」デコピン!

クリスタ「あう!?」

エレン「本当なら頭突きもんだぞ!いいか、よく聞け!この世界にはな、生きたくても生きられない人が沢山いるんだ!」

クリスタ「……っ!」

エレン「母さんは俺の目の前で食われて死んだ。そして巨人が母さんを狙ったからこそ、俺はあの時生き延びた」

エレン「調査兵団の兵士だって、毎回死人が出てる。食い千切られた兵士の腕を抱えて泣き崩れる母親も見た」

エレン「俺達は生きている。この世界で生きていられるって、とっても感謝しなきゃいけないことなんだぞ?」

クリスタ「でも……私、誰にも必要とされてない……生まれてこなければよかったって……」ポロポロ

エレン「おらっ!」ゴスッ

クリスタ「いつっ!?」

エレン「なんでそこまで自分を卑下にすんだよお前は?」

クリスタ「だって……」

エレン「……なら、俺はお前を必要としている。これじゃ駄目か?」

クリスタ「ふぇ!?」

エレン「俺だって……自覚はあるさ。巨人は駆逐する!けど、俺にはまだ全然それを実行できるだけの力も才能もない」

エレン「死に急ぎ野郎って言われても、仕方がない。ミカサにも言われたことがあるが……俺は一人だと、確実に早死にするタイプだ」

エレン「俺の側には、俺を抑えてくれる、支えてくれる人が必要なんだ。だから頼むクリスタ。俺と一緒に――」

クリスタ「(か、顔が近っ……!?)は、はひっ!?」ドキドキ


エレン(俺と一緒に、マルコをなんとか助けようぜ!)ゴニョゴニョ


クリスタ「…………え?あ!?」

マルコ「」

エレン(さっきからマルコの奴、ずっとあの調子なんだ……あの教官に言われた言葉が相当堪えたんだろうな)ゴニョゴニョ

クリスタ(そうだった……ごめんなさいエレン、私……怒られて当然だった……)

エレン(わかってくれたなら別にいいさ。クリスタにも辛い事があったってことだろ?)

クリスタ(うん……)

エレン(安心しろよ、これからはクリスタが死にたくならないように、俺も頑張るからさ)ニッ

クリスタ(あぅ……ありがとう、エレン……私も、頑張るからね!……でも、マルコは……)

エレン(あぁ……俺は死に急ぎ、クリスタは死にたがり、これは当たりだった。つまりマルコが死ぬ野郎ってのも――多分当たってしまう)

エレン(死にたがりは心の持ちようで変えられるし、死に急ぎは誰かに抑えて貰えば留まることができるが……)

クリスタ(私達とは違う『既に決められた死の運命』なんて、どうしたらいいんだろう……?)

エレン(俺にもわからない。だからクリスタにも手伝って欲しいんだ。俺はマルコを……死なせたくない)

クリスタ(うん!それじゃあまず、マルコの顔に生気を戻すことから始めよう?)

エレン(おう!)

エレン「マルコ!」

マルコ「」

クリスタ「マルコ!」

マルコ「」

エレン「安心しろマルコ!俺達が、お前を守る!」

マルコ「」

クリスタ「……死ぬ野郎なんて言葉だけで落ち込むな!あんな変質者の言葉なんて気にするなよ!」

クリスタ「なにふざけたこと抜かしてんだって、あいつの鼻を毟り取るぐらいのことをやってみせろよヘタレ!」

クリスタ「それができないなら――今この場で私がマルコをぶっ壊す!!!」

マルコ「!!??」ビックゥ

エレン(マルコが帰ってきた!?)

クリスタ「はぁはぁ……ごめん、ちょっと力み過ぎちゃった……」

エレン「いや、ありがとうクリスタ!俺一人じゃ絶対にマルコをこっちに連れ戻せなかったぞ!?」

マルコ「あ、ああ……」プルプル

エレン「……まあ、効き目がありすぎたみたいだけどな。正直俺もちょっとびびったし」

クリスタ「ご、ごめんね!?とにかく、しっかりしてよマルコ!」

エレン「そうだぜマルコ。お前は一人じゃない、仲間がいるだろ?もっと俺達を頼れってんだ」

マルコ「…………ありがとう、エレン、クリスタ」

マルコ「でも、無理だ。僕はお前達と一緒に頑張ることはできない……」

エレン「どうしてだよ!?」

マルコ「そうだな……例えば、僕が巨人に喰われそうになったとしよう。二人ならどうする?」

エレン「はぁ!?巨人をぶっ殺してお前を助けるに決まってるだろ!?」

クリスタ「わ、私もマルコのこと、助けるよ!」

マルコ「そう言うと思ったよ。エレンは仲間を大切にする性格だ」

マルコ「クリスタも、さすがにさっきのには驚いたけれど、やっぱり根っから本当に優しい子だと思う」

マルコ「だからこそ、駄目なんだ。二人ともきっと、僕を助けるために単騎突撃でもして……周りが見えなくなって、伏兵の巨人辺りに喰われる」

エレン(否定が……)

クリスタ(できない……)

マルコ「死に急ぎ、死にたがりの匂いは間違っていなかった。つまり僕の死の匂いも、本当のことなんだと思う」

マルコ「人間、誰でもいつか死ぬ。けどわざわざあの場で死ぬ野郎って呼ばれたのは……きっと近い将来、恐らく戦死するってことだろう」

マルコ「そう、巨人に食われるか、踏み潰されるか。……僕の側にいたら、お前たちまで巻き込んで殺してしまう。だから……」

エレン「だからこそ、一緒に頑張ろうぜマルコ!」

マルコ「!?」

エレン「巨人は、俺が一匹残らず駆逐してやる。そうすりゃマルコが死ぬこともないだろ?」ニッ

マルコ「お、お前は本当に凄いな。まだそんなことが言えるのか」

エレン「いやさ、俺も無理だってわかってるよ。今のままじゃな。だから、一緒に頑張ろうって言ってるんだよ」

エレン「俺が教えられそうなのって、格闘術くらいしかないけどさ……みんなで弱点を補って、巨人に負けないよう強くなっていけばいいんだ」

クリスタ「私も、馬術と座学くらいなら教えられるかな……?でも、戦術を考えたり戦況を判断するのは苦手だから……」

エレン「それこそ、マルコの出番だろ?同期の中じゃ、間違いなくマルコが一番指揮官に向いてるぜ」

マルコ「いや、僕はそんな大したことは……」

エレン「謙遜すんなって。少なくとも、俺よりずっと冷静な判断が下せるだろ?俺が死に急いだら止めてくれよな?」

クリスタ「わ、私も……死ぬため、じゃないけど……習慣で死に急いじゃうかもしれないから、よろしくね?」

マルコ「エレン……クリスタ……」

エレン「ほら、なんて言ったっけこういうの。一人じゃ駄目でも、三人いれば大丈夫っていう……」

マルコ「三人寄れば……」

エレン「そう、それだ、もんじゃの知恵!」

クリスタ「ぷふっ!」

マルコ「はははっ!なんだよそれ、今時コニーでもしない間違いだぞ?文殊だ文殊」

エレン「う、うるさいな!だから、こういうことも三人で助け合ってだな……」

マルコ「ああ、そうだな。不思議と生きる希望がわいてきた気がするよ」

クリスタ「頑張ろうね!」








???「街て!俺達もいるぞ!」

三人「!?」

トーマス「三人寄って大丈夫なら……」

ミーナ「五人なら、もっと心強いでしょう?」

エレン「トーマス!?それにミーナ!?どうしてここに!」

ミーナ「それがね、私達もあの後失格になって罰則受けちゃって」

トーマス「お前達が途中で止まって話し始めたから、悪いとは思ったが全て聞かせてもらった」

クリスタ「は、恥ずかしい……全部聞かれてたの!?」

ミーナ「ええ。大丈夫、他言するつもりはないわ。それよりもマルコ?」

マルコ「な、なんだい?」

ミーナ「エレンの言う通りよ。あなたには仲間がいる……私達と一緒に、頑張りましょう?」

マルコ「仲間……失格……まさか……!?」


ミーナ「ええっ!『サブキャラの中では出番多いけど結局は死ぬ野郎』の匂いを放つ私、ミーナと!」

トーマス「この俺、『訓練兵団の中で真っ先に死ぬ記念すべき生贄第一号野郎』の匂いを放つトーマス!」

ミナトマ「我ら、志を同じくする者!共に死の運命を乗り越えよう!」

エレン「……俺の死に急ぎ野郎の評価がすごいまともに思えてきた」

クリスタ「私もだよ……」

トーマス「ナックとミリウスも同じような匂いだったんだが……あいつらは残念ながら、開拓地行きを選んだんだ」

マルコ「僕以外にも……そんなにいたのか、死ぬ野郎の匂いを放つ訓練兵は……」

ミーナ「そうよー?だからあんまり落ち込まない!エレンの言ってた通り、皆で頑張って生き残りましょ?」

マルコ「そうだな……ただの『死ぬ野郎』の僕が、もっと酷い評価の二人より落ち込んでいたら……」

トーマス「うっ……マルコ……お前の匂いは、あの後上官から訂正入ったんだ……」ポロポロ



ミーナ「『成績も良く、人望も有り、才能も有りと一見完璧だが微妙に地味で結局活躍できずに死ぬ哀れな野郎』って……」ポロポロ



マルコ「……決めたぞ!僕は何がなんでも生き延びて、いつかあの教官の鼻をもぎとってやるっ!絶対にだ!」

クリスタ「いいぞ、マルコ!」

トーマス「よーし、マルコも元気になったことだし、こんな罰則さっさと終わらせようぜ!」

ミーナ「そうね。マルコ達も急がないと、罰則の量増えちゃうわよ?」

マルコ「ああ、そうだな。行こう!そしてその後は自主鍛錬で強くなってやるんだ!」

トーマス「……マルコ、流石に夕飯抜きの身でそれは自殺行為だぞ?」

ミーナ「あはは、エレンよりも死に急ぎかも?」

マルコ「な、なんだよもうっ!お前達こそ、走るペース間違えてのたれ死ぬなよ!?」


クリスタ「よかった、マルコが元気になって……」クキュ~…

エレン「夕飯が食えないのは痛いけど、これでみんなの結束が固くなったと思えば……」グゥ~…


エレクリ「……!?」ゾクッ


エレン「な、なんだ、この感じは……!」

クリスタ「こ、これは……死の気配……!?」

エレン「どうしてだよ……!?巨人が理由じゃないのか!?」

クリスタ「はっ……この感じはまさか……!綺麗じゃない……惨い死の気配……!?」

エレン「この感じ、俺は知って――――あれかっ!」

エレン「マルコ!トーマス!ミーナ!早く後ろに飛ぶんだ!」

マルコ「え?」

ミーナ「どうしたのエレン!?」

エレン「上から来るぞ、気をつけろ!かわすんだ!」

マルミナ「っ!!」バッ

トーマス「えっ……?うっ……ぁ、あああああ!?」


ドズゥゥゥゥゥゥン……! グシャッ



エレン「ト……トーマスゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」


ライナー「」

トーマス「」


ミーナ「そ、そんな……!落下してきたライナーの下敷きにされるなんて……トーマスゥ!」ポロポロ

クリスタ「ライナー……どうしてこんな酷いことを……!」ポロポロ

ちょっと早いけどここまで。多分明日には終わると思う。
こんな内容だけど、死んでいったキャラはみんな大好きです。

トーマス「うっ……うぅ……」

エレン「ま、まだ息があるぞ!」

マルコ「少しは後ろに退いたから、致命傷を回避できたのか!」

ミーナ「でも両足の骨は完全にやられてるわ!」

クリスタ「慎重に、慎重に医務室に運ぼう!」

エレン「待ってろよトーマス、すぐに助けてやるからな!」











ライナー(…………俺は?)

【訓練兵団・医務室】

エレン「なんとかトーマスは一命を取り留めた。だけどあれじゃあしばらく訓練は無理だな」

ミーナ「生きてるだけでも十分よ。あの時、エレンの声がなかったら私とマルコもライナーの餌食だった……」

マルコ「――とりあえず、わかったことがある」

マルコ「僕ら死ぬ野郎の『死』は、巨人とは関係なしに、突然襲い掛かってくる」

マルコ「が、重傷を負いこそすれトーマスは死んでいない。つまり、死の運命はやはり回避もできるということだ」

マルコ「常日頃から死と近しい関係にあったエレンとクリスタは危機を事前に察知できるみたいだが……」

クリスタ「いつもどこでどういう風に死んだら綺麗な死になるか考えて動いてきたからね!」エヘン

エレン「んなこと誇るなっての」ビシッ

クリスタ「あうん!?」

ミーナ「でも、私達にとってはそれは心強い能力ね」

エレン「確かに、俺達が死の気配に気がつくことができれば、マルコやミーナも死なせずに済むとはだろうな」

マルコ「だが忘れないでくれ。エレンもクリスタも少しは改善されたとはいえ、立派な死に急ぎ野郎だということを」

クリスタ「油断していたら、マルコ達よりも先に、私達が死んじゃうかもってことだね……」

マルコ「お前達の行動なら、僕も多少は止められる。エレンの言っていた通り、互いが互いを補う感じでいこう」

ミーナ「私はみんな程危機察知能力無いからなぁ。そうなると、次に危ないのは私か……」

マルコ「トーマスの件から考えて、死の接近は予想外に早い。十分に気をつけてくれ」

エレン「問題は夜だな。俺もマルコも、女子寮までは入れない。クリスタ一人でミーナを守りきれるか?」

クリスタ「わ、私、頑張るね!きっとミーナのこと、助けてみせる!」

ミーナ「さすがに女子寮まではライナーも降ってこないと思うんだけどねー」

マルコ「正直な話、女子寮には最強のガードマンであるミカサがいるからな。大抵の死の気配はあいつが無意識で排除してそうだ」


~夕刻・欲情~


キャアアアアア…!

ミーナァァァァ!!!

×欲情→○浴場

~翌朝~

クリスタ「ごめんなさい……ミーナを守りきれなかった……」ポロポロ

マルコ「そんな、一体ミーナの身に何があったんだ?」

クリスタ「お風呂に入るとき、床に転がっていた石鹸を踏んじゃって……」

エレン「うっわそりゃきつい」

クリスタ「ううん、それは頭を打ちつける前に、ミカサが庇ってくれたの」

マルコ「流石ミカサだな。あれ?でもそれじゃあ無傷なんじゃないか?」

クリスタ「ミーナを受け止めるときに、ミカサが全力を出しちゃったから……」

エレン「あぁ、ホールド状態で骨を何本かやられちまったんだな……後でミーナの見舞いに行こ」

マルコ「惨いな……助かったと思った先にも地獄が待っているなんて……」

クリスタ「私がもう少し早く、ミーナを呼び止められていれば……」

マルコ「いや、トーマスと同じだ。生きているだけでもいいことじゃないか」

エレン「そうだな。そしてこの感じで行くと……次はいよいよマルコか……」

マルコ「……大丈夫さ、僕は絶対に生き延びて見せる!」

マルコ「三人寄れば……きっと僕の死も回避できる!」

――その日からは地獄だった――

エレン「よけろマルコ!フローリングの床にバナナの皮がっ!」

マルコ「うわっ!」

――食器を片付ける際に見つけたバナナの皮による死を回避して安心していたところに――

クリスタ「危ないマルコ!ジャンとライナーが同時に飛んでくるよ!」

マルコ「なんでアニもミカサも僕の方に向けて投げるんだ!?」

――訓練中でも容赦なく――

エレン「に、逃げろマルコォ!発情した馬がお前を狙っているぞ!?」

マルコ「う、うわああああぁぁぁぁぁ!?」

――突然の理由の無い死の気配がマルコを襲い続けた――

クリスタ「マルコ、進路を変えて!不発ぶどう弾がその先に埋まってるよ!」

マルコ「なんでこんなところに!?」

――回避しても回避しても、次から次へと――

~数日後~

エレン「……」ゼェゼェ

クリスタ「……」ゼェゼェ

マルコ「済まない二人とも……!僕のせいで、こんな……!」

エレン「ははっ……気にするなってマルコ。こうやって生きてお前と一緒に食事ができるだけで満足だよ」

クリスタ「うん。ここまで何度も危ない目にあったけど、マルコはちゃんと生きてるもん……」

エレン「いつかは、マルコだって本当に安全になる日がくる。その日まで頑張ろうぜ!」


ユミル「……なるほど、そういうことか」

クリスタ「ユミル!?」

ミカサ「……私もいる」

エレン「ミカサ!?な、なんでお前達が……」

ユミル「お前達が、愛しのクリスタをずーっと独占し続けるのがいけないんだろぉ……?」シクシク

ミカサ「エレン成分を取り込めていない私は、そろそろ死んでしまうかもしれない……」ウルウル

エレン「な、泣くなよお前ら……」

ユミル「ぐすっ……でもちょっと安心したよ。クリスタが私を嫌ったんじゃなくて、マルコのためだったなんてな」

ミカサ「私はエレンを信じていた。エレンはとても仲間思い。マルコを見捨てるはずもないし、私を嫌いになることもない」

クリスタ「ううん、今でこそだけど、最初はちょっとユミル達と離れて静かに食事がしたいかなーって……」

エレン「俺もだ。ミカサに世話されっぱなしだと疲れるし」

ユミミカ「ぐはっ!?」

ユミル「うぅ……わかった、わかったよ。今度から気をつけるからさ、な?」

ミカサ「……断腸の思い。しかしこれ以上エレンと一緒に食事をできないのは辛い……ので、ここで一緒に食事をさせて欲しい」

エレン「あーもう、わかったからそんな表情すんなよ……」

ユミル「よっし!……で?ここのところずっとマルコにエレンとクリスタが張り付いていた理由ってのは結局なんなんだ?」

マルコ「……この前、教官に匂いを嗅がれただろう?あの時から、評価の死ぬ野郎通り……僕は何度となく死にかけているんだ」

ユミミカ「!!」

エレン「トーマスとミーナもだ。あいつらはなんとかなったんだが、マルコだけ明らかに迫る死の数が多すぎる」

クリスタ「もう途中から数えてないんだけど、多分今日もマルコになんらかの死が迫ると思う」

エレン「俺は、なんとしてでも……マルコを助けてみせる!」

ミカサ「エレン……」

ユミル「そういうことなら、私らも手伝ってやるよ」

クリスタ「ユミル!?」

ユミル「お前とエレンだけじゃあ、それこそマルコ庇って死んじまいそうだしなあ。ま、任せなって」

ミカサ「事情は理解できた。そういったことなら、私も断る理由はない。私もエレンと共にマルコを守ろう」

エレン「いいのか?ミカサ」

ミカサ「問題ない。さっきの話からして、私はミーナの命を救っている。それなら、マルコも救える」ドヤ

マルコ「ミカサ……ユミル……お前達にまで迷惑をかけて、本当に済まない!」

ユミル「気にするなっての。全部私がやりたいことをやってるだけだって。それより早く飯食おーぜ?」

ミカサ「マルコは全力で守る。だから今は、楽しい話題をするべき」

エレン「それもそうだな。あ、じゃあマルコ、あの面白い話聞かせてやってくれよ」

マルコ「あの話か?そうだな――」


クリスタ(――ユミルとミカサもマルコ防衛組に入ってくれた。これなら……大丈夫だよね?)

~数日後~

ユミル「」チーン

ミカサ「」チーン

マルコ「なんてことだ……」

コニー「マルコ、無事か!?」

マルコ「うわっ、どうしたんだコニー?」

コニー「エレンから聞いたんだよ。お前が死んじまうかもしれないって!」

エレン「悪いマルコ……事はもはや、俺たちだけじゃ手に負えないと思ったんだ。アルミンにも頼んで、今色々調べてもらってる」

コニー「水臭えなお前達……俺達、仲間だろ?もっと早くから頼れっての!」

サシャ「そうですよマルコ!」

マルコ「サシャまで!?」

クリスタ「サシャには私からお願いしたの。パンも受け取らず快諾してくれたんだよ?」

サシャ「神様の頼みで仲間の危機ですよ?私もそこまで卑しくないです。見ててください、狩人の勘はすごいですから!」

エレン「よーしお前ら、絶対にマルコを助けるぞ!」

一同「おー!!!」

~さらに数日後~

コニー「」チーン

サシャ「」チーン

エレン「どうなってんだよ一体……」

クリスタ「二人が感づいた死の気配、昨日だけで50はあったよね……」

アニ「……ちょっといいかい?」

エレン「アニ、それにライナーとベルトルトじゃないか」

ライナー「話は聞かせてもらった。俺も時々死因の一つになっちまってるみたいだが、俺達にも手伝わせてくれ!」

ベルトルト(余計な感情は持たない方がいいんだけど……流石にあんな理不尽な光景の数々を見せられたらなぁ……)

エレン「ああ、頼むぜ!お前達までいてくれたら、今度こそ必ず……!」

ライナー「任せろ!奇行種の巨人が降ろうが何があろうが、守ってみせるぜ!」

アニ「ミーナからも、頼まれたからね……」

ミカサ「……総力戦と言っても過言じゃない」

ユミル「馬鹿二人が回復したら、こっちの戦力はほぼ最大だ。これ以上、マルコを守る人数は増やせないぞ」

エレン「やってやるさ……!」

【壁内・あらゆる場所】

ベルトルト「危ないマルコ!固定砲台が崩れてくるぞ!」

サシャ「だ、駄目ですよマルコ!その料理、猛毒のキノコが混ざってます!」

ミカサ「……!待ってマルコ、その立体機動装置は故障していてアンカーが撃てなくなっている!」

クリスタ「マルコよけて!上から植木鉢がいくつも降ってくる……!」

コニー「危ねえマルコ!あいつらは森で有名な暴れ角鹿の群れだ!」

アニ「……!走るよマルコ。この地下通路はもうすぐ崩落する……!」

ユミル「おいおい、それ教官の育毛剤じゃないか!早く戻して来い!教官に殺されるぞ!?」

ライナー「い、行くなマルコ!そっちの店はアブノーマルな店だ、何をされるかわかったもんじゃない!」

エレン「マルコ、寝るな!寝たら死ぬぞっ!起きるんだ!」



マルコ「うああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!僕が、一体何をしたっていうんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

~さらにさらに数日後~

マルコ防衛組「」シシルイルイ

マルコ「みんな、すまない……!」ポロポロ

アルミン「ごめんよ、僕の方でも色々調べてみたんだけど、手がかりはほとんどなかったよ」

エレン「ほとんどってことは……少しはあったのか……」グッタリ

アルミン「うん。とは言っても、かなり胡散臭い資料のものだけどね」

クリスタ「アルミン……それでもいいから……」グッタリ

ミカサ「説明してくれると助かる……」グッタリ

アルミン「わ、わかった。この本によると、僕らは創造神によって作られた存在であり……」

アルミン「それぞれの人間が、なんらかの役割を与えられていて、そしてそれを終えると死ぬ」

アルミン「時々その法則が乱れたり、その死ぬ人間に代役がいた場合は死が遠ざかることもあるが……」

アルミン「中には特殊な例もあり、特定の人間に新たな役割を与えるために死ぬことが役割の人間もいる」

アルミン「その人間は死ぬことが役割であるため、どれだけ死を回避しようと、永遠に死に追われ続ける……」

マルコ「……今の僕の状況か」

マルコ「その本の通りだとしたら、僕は誰かに役割を与える鍵であるということになるけど……一体誰なんだ?」

ミカサ「マルコの死が、与える影響……?」

???「なんだよお前ら、まーだそんなこと話してるのか?」

エレン「そ、その声は!?」

ジャン「いい加減にしろよ?お前じゃあるまいし、マルコが死ぬわけないだろ?」

エレン「ジャン!?お、お前どうして……どうしてミカサのイスになってるんだよ!?」

ジャン「これが、今の俺の役割だと気がついたんだよ!」

ミカサ「以前、じゃれてくるジャンを蹴散らしたら、何故かこうなった。座り心地はいいから続けていた」

コニー「ジャンお前、馬鹿だろ……」

クリスタ(木目の服着てるから全く気がつかなかった……)

ライナー(さすがにあれはない)

アルミン(待てよ、今の俺の役割って……まさか……!?)

ジャン「お前ら最近マルコ守るーとか言ってるみたいだが、ちょっと大げさすぎやしないか?」

サシャ(ジャンは一度、理不尽なマルコの命を狙う数々の罠を見ればいいんですよ……)

ジャン「マルコがお前達みたいに、情けないミスをして死んだりするわけが――」

アルミン「ジャン!」

ジャン「うお、いきなり大声出すんじゃねえよアルミン」

アルミン「ジャン、君は訓練兵団を卒業したら、どうするつもりだい?」

ジャン「あー?何度も言ってるだろ?マルコと同じだ。憲兵団に入って、内地で暮らす」

マルコ「悪いなジャン……僕は、考えを変えたんだ。僕は――調査兵団に入る」

ジャン「ぶふぅっ!?な、なに死に急ぎ野郎と同じこと言ってんだよ!?」

マルコ「そうさ、エレンもクリスタも、トーマスもミーナもみんな死に急ぎ野郎だ」

マルコ「それだけじゃない。死の運命を背負った僕を守るために動いてくれた、ここにいるみんなも立派な死に急ぎ野郎だ」

マルコ「そして……かけがえのない、大切な仲間だ」

マルコ「一緒に行動していて、よくわかったよ。みんな無茶をする。僕には真似出来ないことを平気でする」

マルコ「調査兵団に入ってもそんなことを続けてたら、早死に確定だよ。だから僕は……みんなを抑える役になりたい」

マルコ「もし本当に僕に指揮官の才能があるなら……戦場でそれを生かしたい。みんなを、守りたいんだ」

ジャン「マルコ……お前……」

マルコ「ジャン。もちろんお前も、かけがえのない大切な仲間だ」

マルコ「だから、もしお前が――」

――月日は流れて――


エルヴィン「では、分隊長マルコを筆頭とした陣形で1月後の遠征を行う!」

調査兵団「はっ!」



ジャン「未だに信じられねえ……俺が調査兵団に入らないって言い続けたからマルコが危ない目にあってたなんて……」

エレン「俺もびっくりだよ。だいたいよ、お前の立体機動術は凄いんだから調査兵団で生かせって、俺何度も言ったよな?」

ジャン「だーもうっ!仕方がないだろ!?誰しもがお前みたいに強くはねえんだよ!」

エレン「みんな結構、あっさりと調査兵団に入るーって言ってくれたよなぁクリスタ?」

クリスタ「うん、ジャンが一番遅かったね。マルコがいるなら安心だって入団希望者が増えた後もね?」

アルミン「僕も最初から調査兵団希望だったよ」

トーマス「でもよかったじゃないかジャン。同期の中ではマルコに次いで分隊長にスピード昇進したんだから」

ミーナ「そうよそうよ。私達なんか、この前ようやく昇進できたって言うのに」

ジャン「うるせえよ!あー……もう、お前のせいだからなマルコ……」

ミカサ「でもジャン、そういいつつ毎回素晴らしい戦果をあげている。照れる必要はない」

ジャン「お、俺は別に……俺はマルコの運命を変えるために……」

コニー「とりあえず俺は、お前の役割がミカサの椅子じゃなかったことがなにより嬉しいぜ」

ジャン「いや、あれはあれでやりがいが――って何言わせんだよ!?」

コニー「ああ、そんなことよりマルコがエレンとクリスタのこと呼んでたぞ」

エレン「ん、ああ、例のあれか。んじゃちょっと行って来るわ」

クリスタ「また後でね、みんな」

タタタ…

ジャン「大体、なんであの野郎とクリスタの方がマルコ直属の班なんだよ……」

トーマス「マルコ班は、死に急ぎの兵士が死なずに存分に力をふるえるからな」

ミーナ「それでいてマルコ班、戦死者はおろか負傷者すら出したことないから驚きよね」

ジャン「……俺だって、エレンの野郎に負けてられるかってんだ!」

ミカサ「その意気。ジャンもようやく調査兵団が板についてきた」

コンコン

エレン「マルコ、いるか?」

マルコ「ああ待っていたよ二人とも。今日はこちらの先輩方のチェックだよ。森の中を駆ける作戦になっている」

ペトラ「あなた達が、新しい分隊長?」

グンタ「その若さで……凄いな」

オルオ「ふん、リヴァイ兵長ほどじゃないがな」

エルド「なんでも、死を回避する術に長けているとか……」

エレン「ええ、なんだか長いことマルコの側にいたら、培われていました。ん、んんー……これは……」

ペトラ「私達も、それなりの戦績を出しているから、ちょっとやそっとで死ぬつもりはないけど……」

エレン「そうみたいですね。ただ奇行種難の気配がするから……うん、奇行種が出たら俺もすぐ援護に移ります」

マルコ「大丈夫か?」

エレン「相手の強さによるな。危険過ぎる相手だったら、深追いしないでお前の作戦通り態勢を整えるよ」

マルコ「うん、わかっているならそれでいい。クリスタはこちらの先輩方を頼む。城跡の調査担当だ」

ナナバ「こんな小さな子が……」

ゲルガー「驚きだな……」

リーネ「古城なら、立体機動も使いやすいとは思うのだけれど」

ヘニング「好条件の戦場なら、大丈夫じゃないか?」

クリスタ「えっと……そうですね。不測の事態に備えて、ブレードとガスの予備を多めに持ち込んでください」

クリスタ「後は塔の頂上には登らない方がいいかも。飛び込んでくる奇行種がいるかもしれませんし、念のために」

ナナバ「ああ、確かにそれはいいかもしれない。ゲルガーはいつも無駄に刃を叩き折るから……」

ゲルガー「それが俺の戦闘スタイルなんだよっ!」

マルコ「大丈夫ですよ。あくまで、念のため。今回の遠征も、一人の犠牲者も出さずに終えてみせます!」ドン!


エルド「実績があるだけに、すごい安心感があるな」

エレン「マルコの指示は、いつも的確ですからね」

マルコ「最後に、もう一人いるみたいなんだけど……」

ナナバ「申し訳ない、いつもの癖で道草を食っているらしくて」
コンコン
ゲルガー「お、噂をすれば来たみたいだぜ」

ガチャ


ミケ「……ん?」

マルエレクリ「「あ」」


ナナバ「ミケ、彼らが新しい分隊長で――」

エレン「あー、この人は無理だな。俺らの比じゃないよ、この死に急ぎ野郎臭」

ミケ「!?」

クリスタ「今の私達なら、匂いを嗅ぐなんて変態的なことしなくても、全身から死の気配が漂っているのがよくわかるね」

クリスタ「これは……うん、今まで積み上げてきたもの全てを投げ捨ててしまう程のすごい断末魔をあげながら死ぬ気配だよ」

ミケ「!!??」

マルコ「しかも、代役がきかない気配もするね。なまじ強いために、敵の恐ろしさを現すために一役買って死ぬ気配かな?」

エレン「ああ、それだな。これは流石にきついぞ。絶対にこの人の近辺にやばい巨人出るって」

ミケ「」ガタガタプルプル

ゲルガー「ミケさん!?」

ナナバ「まるで小鹿のように……!?」

マルコ「……安心してください、ミケ・ザカリアス分隊長」

ナナバ「あれ?どうしてミケのフルネームを……」

エレン「俺達も、このままじゃあ死ぬって言ってるんです」

クリスタ「マルコ、もうこの人の死の運命を回避する方法、思いついてるんでしょ?」

ミケ「……!」パァァ

マルコ「もちろん。ミケ分隊長を死に導く最大の要因は、鼻だ。巨人の臭いを探知して、単騎突撃でもしちゃうんだろう」

エレン「だから」

クリスタ「その人騒がせな鼻を」


マルコ「今この場でもぎ取っちゃおう」


ミケ「いやだああああああぁぁぁぁぁぁ!やめてえええええええぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


――おしまい――

以上となります。
マルコが調査兵団入りすれば、きっと調査兵団の生存率も上がったんだろうなと思う。

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