京太郎「夢の彼方」 (342)


○京太郎が登場する短編SSがメイン

○更新不定期

○ハギヨシ主役のSSがあるかもしれない

○進行は気分などによりageたりsageたり

○そもそも、京太郎もハギヨシも出ないかもしれない時も

○ヤマもオチも意味もない、元になったらしい意味でのやおいスレとも言えます

○適当に書いてるので、書いてる側も見ている側も訳が分からなくなる話が出る可能性も

○ネタは随時募集中ですが、クオリティの保障はいたしかねます…安価で受けた場合はなるたけ早く書きます

以上が注意事項です
誤字だのなんだのが目立つかもしれませんが、どうぞよろしくお願いいたします

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1402227323


前スレらしきもの

京太郎「夢の欠片」
京太郎「夢の欠片」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1382787965/)

京太郎「夢の此方」
京太郎「夢の此方」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1387290463/)


>>998の続き?

京太郎「…ふぁぁ」

咲「あれ、京ちゃん?」

優希「ひょっとして寝不足かー?」

京太郎「いや、夜更かしなんかしてないけど」

和「眠りが浅かったとか」

久「寝る前のパソコンやスマホは特にね」

京太郎「そういう訳でもないんですが」

まこ「ふむ…それじゃあ何が原因なんじゃろうな」

京太郎「…久しぶりの運動だから、思ってたより体力使ったからかもしれません」


咲「運動?…ああ、雑用のことだね」

優希「インハイ終わったし、前みたいに雑用しなくてよくなったからなー」

京太郎「むしろ麻雀ばっかり打ってたわー」

和「…須賀君、本来それが普通なんですよ?」

久「場所によっては、雑用がメインにならないとも限らないけどね」

和「えー…まあとにかく、以前と生活習慣が変わったのは確かですね」

和「思うにそれが、須賀君のバイオリズムを変化させたのではないでしょうか?」

優希「…バイオリズムって、何?」

久「生き物の体調などはすべて周期的に変化するという仮説、あるいはそれを図にしたものね」

和「はい。もうすこしかいつまむと体調の波とか、月経周期の隠語的言い回しとしても…」

まこ(…若干下ネタ入っとるのう。そんなつもりが無いとも言えんが)

京太郎(和が言うならアリかなとも思ったが、若干キツいかもしれねえ…)


和「とりあえずですね、寝ればいいと思います」

京太郎「はあ」

和「今まで肉体労働メインだったのが、頭脳労働メインになれば疲れもしますよ」

京太郎「…含みのある言い方だなー」

和「気のせいですよ」ニコッ

優希「まあ、アホの京太郎に麻雀は難しいということだな!」

和「…補修受けたのは優希、あなただけですよ?」シレッ

優希「うっぐ…のどちゃんそりゃないじぇ」

京太郎(へっへー、ざまみろ)

優希(後で覚えとけよ)

京太郎(こいつ直接脳内に…!)


京太郎「ではお言葉に甘えまして、おやすみなさい」

久「おやすみー。あ、ちゃんとシーツは換えてるからね」

京太郎「何の断りですか何の…ふぁ」

京太郎「…」

京太郎「……」...zzz

久「…随分早いわね」

まこ「アンタが使い倒したせいじゃろうかのう?」

久「あー…まあ、ね。それにしても気持ちよさそうだわ」

和「どんな夢を見てるんでしょうか?」

優希「コイツのことだから、どうせのどちゃんでエロい妄想してるに決まってるじぇ」

和「え、ええっ…いきなり何を言い出すんですかっ!」

咲「多分それで合ってるような気もするけどねー」


【???】

京太郎『…』

京太郎『…ん』

京太郎『…』

京太郎『…あれ…?』

京太郎『ここって…一体どこなんだ……?』

京太郎『俺…確か部室で寝てたはずだよな…どう見てもここ、ウチの部室じゃないよな……』

京太郎『…』

京太郎『…ウチの部活より、ずっとでかい!』

京太郎『……』

京太郎『…言ってる場合じゃねえわ。よく分からんが、このままじゃ俺不審者だし』

≪清澄高校麻雀部、男子生徒が不法侵入で逮捕≫

京太郎『あ、あわわ…』

京太郎『とりあえずここを出ないと。よっこいせ、っと』


京太郎『…うん』

京太郎『何でだろうな…やけに視界が低いんだが』

 違和感を感じ、京太郎は辺りを見回す。

京太郎『周りは何ともないよな…大きく見えたりはしないし』

京太郎『…まさか、な』

 まさかと思い…しかし、そのまさかだった。

京太郎『…』チョローン

 成人の頭高…おおよそ23cmくらいだろうか。
 彼の姿は小人のようになっていた。
 それも、元の姿とは似つかわしくない可愛らしい姿で。

京太郎『…』

京太郎『…な』

京太郎『…なっ、なんじゃこりゃああぁぁああぁあぁっ!!!!!』


ン、ナンカキコエタカ-?

キノセイヤナイ?

セヤケドイマ、オトコノコエガシヨッタデー

京太郎『…』

京太郎(し、しまった…見つかる前に隠れないと)

ガチャッ!

京太郎(ヤバい!こんな姿を見られたら、一体どうなるかわかったもんじゃ…)

...ンー?

ダレモオランヤン

オッカシーナー タシカニコエハキコエタンヤガ

ウン...ナンカキミワルウテイヤヤナー

京太郎『…』

京太郎(…気付かれて、ない?)





ガチャン


京太郎『…』

京太郎(…た、助かった)

京太郎(どうやら今の俺ってば、向こうからは「視えてない」らしいな)

京太郎(もしかしてだけど…俺、幽霊にでもなっちまったんじゃなかろうか?)

京太郎(だとすれば、今の俺の身体は一体どうなって)

ガチャッ

京太郎『!?』

京太郎(お、落ち着け。今の俺は誰にも見えない、見えないはずだ…)ブルブル

「…」

京太郎(…やっぱり明後日の方を向いてる。よかった、やっぱり気付かれちゃいないん…)ホッ

『…まさかまた、あの子と似たようなんを目にするとは思わんかったよ』

京太郎『え…』

『男の子に膝枕なんてした覚えはないんやけど。あれや、霊感みたいなんが見についたんかもな』

京太郎『あの…俺が見えてるんですか』

『せやな。ちなみに君で二人目やわ』

京太郎『…』

京太郎『…どうりで見覚えがあるはずだ。あなたは確か千里山の…』

竜華『…清水谷竜華や。ついこないだまで部長をやっとった、な』

京太郎(平均獲得素点は関西随一だって話だけど…おっぱいの大きさも関西、いや…全国随一だな!)

竜華(なんやスケベっぽいんも怜に似とる気が…どないなっとるんやろ……)

一旦ここまで
怜が竜華の体つき(太もも)にゾッコンなのは、ごくごく自然な事だと思うのですよ

投下


竜華(幽霊になるんはみんなスケベばっかなんやろか…?)

京太郎『…何か失礼な事考えてません?』

竜華『そういうアンタはなんややらしい事を考えてそうやけどな』

京太郎『…さ、さあ』メソラシ

竜華『君…嘘を吐くんは下手やねんな』

京太郎『どうやらそのようで…あ、俺は須賀京太郎って言います』

竜華『とりあえずよろしゅうなー』



一方、その頃の清澄では…


咲「…京ちゃんってばまだ寝てるよ」

和「気が付けば一時間は経ってますね。そろそろ起こした方がいいでしょうか?」

優希「まあ、折角練習出来るようになった訳だし…おーい」ユサユサ

京太郎「…」

優希「…おーい!」

和「…起きませんね」

咲「どうしたんだろ。身体の調子が悪いのかな?」

まこ「今はもう夕方じゃからのう。もしそうなら病院へ行かせた方がええ」

久「そうね…これからという時だし、大事はとっておくべきよね」

和「…とりあえずここは脈でもはかってみましょうか」

咲「あ、それじゃあここは私が…」サワサワ


咲「…」

咲「…」

咲「!?!?!?!?!?!?」ビビクン!

和「さ、咲さん?」

優希「一体どうしたっていうんだじょ…」

咲「…脈がない」

久「え?」

まこ「は?」

咲「どうしよう…京ちゃん、ひょっとしてもう手遅れなんじゃ…」

和「そんなまさか。冗談はその辺にして…」サワ...









和「…ダメみたいですね」

咲「」

優希「」

久「」

まこ「」

短いですがこの辺で
ではでは


和「…失礼しました。確かに『私達だけでは』ダメなんですよ」

和「脈なし病の可能性も一応はありますが、予断を許さない状況には違いありません」

咲「ど、どうにかできないの…?」

ピッピッピッ...

和「急性の疾患、まして医療従事者でもなければ事態を悪化させてしまいかねません」

久「…けど、私達には彼が居る」

プルルルル...

和「部長。あの人は別に私達のものじゃないんですよ?」

久「わかってるってば…あ、もしもし」

『あら、どうかしまして?』

久「…どういう訳か、ウチの部員が危篤状態なの。それで」

『なるほど、緊急事態と言うヤツですわね…ハギヨシ』


「はい、お嬢様。ただいま現場に到着いたしました」

久「…おお」

まこ「一体どこから現れて…いや、聞いても仕方ないか」

優希「これこそまさにオカルトチックだじょ…のどちゃん」

和「…いや、それよりも」






咲「――お願い、萩原さん」

咲「…京ちゃんを、大事な大事な私の幼なじみを…どうか、どうか助けて――――!」


ハギヨシ「…」

ハギヨシ「…宮永さん」

咲「はい…」

ハギヨシ「――ご心配には及びません。幸いなことに、彼はもうすぐ目を覚ますようです」

咲「…あの。こんな時に冗談はやめていただけ」

ファァ...

咲「…あくび?」



京太郎「あの…おはようございました」



ハギヨシ「ほら」

咲「……」

咲「…確かに、目を覚ましはしましたね」

まこ「明らかに様子が変なんじゃが」

和「それはまあ…ともすると臨死体験の後ですから」

優希「…」

優希(パシらせ過ぎで死なせるとか、色んな意味で洒落にならないんだじぇ…)

優希「…よかった」


久「…須賀君」

京太郎「――すみません。なんか心配かけちゃったみたいで」

久「それはいいの。ううん、そんなことは気にしなくていい」

久「…だからね」

京太郎「?」

久「数日の間、学校は休んだ方がいいわ。勿論部活もね」

京太郎「へ…どうして」

ハギヨシ「…お言葉ですが須賀君、今のあなたは尋常ではありません」

ハギヨシ「まず第一に休んでください。あなた自身に、確かな安らぎを与えるべきです」

京太郎「…安らぎ、ですか」

ハギヨシ「――確かにお伝えしましたよ。それでは」

シュタッ

まこ「…行ってしまったのう」

咲「なんか意味深な言い方だったね…京ちゃん、何か心当たりは?」

京太郎「いや、なんでもないけど」

咲「…そっか」

京太郎「……」

京太郎(多分だけど、単に気付いてないだけなんだろうな…俺は)


竜華『…ウチの相方。ああ、園城寺怜って言うんやけどな』

京太郎『ああ、先鋒の人ですね』

竜華『なんや君、あの子のこと知っとったんか』

京太郎『そりゃまあテレビ中継で見てましたし』

竜華『なるほどな…麻雀は好きなんか?』

京太郎『勿論です。つうか俺、今はこんなナリだけど麻雀部員なんですよ』

竜華『さよかー。で、どこの高校なん?』

京太郎『それは…』


―――申し訳ない…!清澄の名に泥を塗ってしまって……!


京太郎『…』

竜華『どないしたん?なんや気分が悪そうやけど』

京太郎『いえ…はは、幽霊みたいなのでも気分が優れなかったりするんですね』

パァァ...

京太郎『!』

竜華『な、なんや…急に姿が薄らいで』

スゥゥゥ...

竜華『…』

竜華(なんや急に居なくなってしまいおった…あの子は一体なんやったんやろか?)



―――京太郎の自室。


京太郎「…」

ポイッ、パシッ

京太郎「……」

ポイッ、パシッ

「…しばらくだな。お前がそいつで遊んでいるのは」

京太郎「ああ…そうだな」

「中学のころが懐かしくなったか?あの頃のお前、今と違って大活躍だったからなー」

京太郎「――そんなんじゃねえよ」

「ならいいんだがな。とりあえずさ、あんまり気負ったりすんなよマイサン」

京太郎「…ありがとな」







――自分は本当に、あそこに居てもいいんだろうか。みんなと一緒に夢を追い求めても、いいんだろうかと。

そんな不安が、不意に彼の脳裏をよぎるようになっていた……。




>>32
×:―――京太郎の自室。
○:―――須賀邸



今回の投下は以上ですー。



【教室】


嫁田「幽体離脱、ねぇ」

京太郎「ああ」

嫁田「一応聞くけど、それってマジで言ってる?」

京太郎「どうだろうな。自分でも言っててよくわかんねーし」

嫁田「…でもまあ、お前が部活中に倒れたのは確かだ」

嫁田「結構な騒ぎだったよ。なんせ死人が出るか出ないかの話だもんな」

京太郎「その割にはピンピンしてるけどさ」

嫁田「病院にはもう行ったのか??」

京太郎「異常なし、だってさ。わざわざ遠くのデカい病院で色々診てもらったんだが」

嫁田「……」

京太郎「正直おっかねえよ。俺、死にかけたって言うのに何もないって」


嫁田「…医者にも分からんことはあるだろうさ」

嫁田「病気で苦しんで、その原因が分からなくて、或いは…原因が分かったって治療のしようがない場合だってある」

嫁田「京太郎、お前はそうじゃないんだろ?」

京太郎「…まーな。一応身体は健康そのものらしい」

嫁田「なら、今はそれでよしとしようぜ」

京太郎「…だな」

嫁田「…今日のお前はホントらしくねえな。いつもとは別人だわ」

京太郎「そうか?」

嫁田「そうだとも。普段のお前は、そんな風にウジウジするやつじゃねーし」

嫁田「あんなことの後じゃ無理もねーことかもしれんが、京太郎…何でそんなに悩んでる?」

京太郎「…」

京太郎「…やっぱさ、お前には分かっちまうか」

嫁田「たりめーだろ?」


京太郎「……」

京太郎「…なあ嫁田」

嫁田「あん?」














京太郎「―――俺、ひょっとしたら麻雀部辞めちまうかもしれねーわ」

嫁田「…あぁん?」

ここまでっす


京太郎「やっぱダメかな?」

嫁田「…別に止めやしないが、勧めもしないぞ」

嫁田「大体さ…今ここで辞めちまうのは、色々ともったいないと思うぜ?」

京太郎「もったいない、か」

嫁田「それにさ、お前は咲ちゃんのことを麻雀部に誘ったんだ」

嫁田「理由はどうあれここで辞めちまったら、あの子は勿論お前だって傷つくさ」

京太郎「…だろーな。だから余計にどうしようかって気持ちが強くなる」

京太郎「咲をあそこに誘った理由は結構身勝手だったけどさ…それでも」

嫁田「…麻雀が嫌いになったか?」

京太郎「それはない。少なくとも、麻雀自体を止める気はさらさらないぞ」

嫁田「…」

嫁田「…お前だけが初心者なのは関係あるか?」

京太郎「―――どう、だろうな」

京太郎「けどまあ、こうして言いよどんでいる時点で関係ないだなんて言えねーわ……」


嫁田「…」

京太郎「…なんていうかさ、今の自分に違和感を感じるようになったんだよ」

京太郎「ほんの一時だけどさ、あの日確かに俺は死に近づいてた」

京太郎「そう考えるとなんか怖くなっちまって…普段考えないようなことを考えてた」

京太郎「そしたらさ、ふと思い出しちまった。中学の…お前と一緒に部活をやってた頃のことを」

嫁田「…」

京太郎「あの頃は楽しかった。絶対全国行ってやるんだって、皆バカになって頑張ってた」

京太郎「ヘトヘトになるまでめちゃくちゃ走らされたりしたけど、辞めたいだなんて思ったことはなかった」

京太郎「ハンドボールが楽しいって、ただそれだけでやっていけたんだ」

京太郎「結局全国には行けなかったが…それでもやっててよかったなって思うよ」

嫁田「麻雀を止めて、もう一度ハンドをやってみたいってか?」

京太郎「…そうじゃねえ。少なくとも今は、そうじゃねえんだ」

嫁田「…わかんねえ奴」

京太郎「自分でもそう思う。今日の俺、ホントどうかしてるわ」


京太郎「…ただな、思うんだよ。どうしてあの頃みたいに頑張れないのかってな」

京太郎「別に麻雀をおろそかにしてる訳じゃない。麻雀やってる時間より、雑用の時間が多かったのは確かだが」

嫁田「そりゃお前、あの部長さんが全国目指して頑張るからって…ああ」

京太郎「どうした?」

嫁田「京太郎。お前がどうして違和感みたいなのを感じてるか、少しは分かった」

京太郎「…聞かせてくれ」

嫁田「お前は多分…ハンド部の頃と今居る麻雀部のことがごっちゃになってんだよ」

嫁田「どっちでも全国を目指してて、でもハンド部ではそれが叶わなくて」

嫁田「そんでもって麻雀部だ。お前が咲ちゃんを誘うまでは、全国だなんて意識することもなかったとこだ」

嫁田「けど何の因果か全国に行けちまって…お前以外は、みんな大活躍だったよな」

京太郎「ああ。俺はそれをすげーなーって見てるだけだったけど」

嫁田「そのみんなが少しでも活躍出来るようにって、あくせく働いてたのもお前だろうに」


京太郎「…」

京太郎「…そんなんじゃねー。ホント、そんなんじゃねーんだよ」

京太郎「俺はただ、みんなに押し付けただけだ」

嫁田「…押し付けた?」

京太郎「そう。俺はああいう大舞台に行きたくて、でも行けなかった奴だ」

京太郎「そんでもって、麻雀部で全国に行くだなんてのはあんまし考えてなかった訳よ」

京太郎「…アイツが、咲があの決勝戦で劇的な逆転勝利をするまではな」

嫁田「…それでお前はどう思った?」

京太郎「もちろん嬉しかったぜ?けど同時に、自分に大した力がないのを怖く感じた」

京太郎「みんなみたいに麻雀打てる訳でもないのに、個人戦じゃ大きい結果を求めてたくらいにはな」

京太郎「でも勝てる道理はなくて…それで俺は、みんなに頑張ってもらおうと考えた」

京太郎「…自分に出来なかったことを、いや…自分が叶えたかったことを、他の誰かに押し付けるようにしたんじゃないか」

京太郎「いつのまにか、俺は麻雀を…ハンドボールの代わりにしてたんじゃないかって」

京太郎「そう思っちまって、麻雀部を辞めるかもなんて言ってるのかもしれねえ」


嫁田「京太郎…お前、一体何言ってんだよ?」

京太郎「何ってほら…バカ言ってんだよ」

嫁田「茶化してんじゃねえ。ああもう、今日のお前は相手しててイライラするわー」

京太郎「…すまん」

嫁田「あやまんな。なんか余計にイラっとくる」

嫁田「お前の悩みをバカらしいの一言で片付けたくはないけどさ…今のお前、マジでバカになってんよ」

京太郎「…俺、一体どうしたらいいんだろ?」

嫁田「知るかよ。そんなことは他の誰かに訊いてくれ」

京太郎「……」

嫁田「まーせいぜい悩めや。悩むだけ悩んで、そしていつものお前に戻ってくれると助かる」

嫁田「でないとそのうち、俺がお前を傷付けちまいそうになるからさ…そんなのはさ、嫌なんだよ」


京太郎「…」

京太郎「…そしたらもう、お前と俺はダチじゃなくなるのかもな」

ゴスッ

京太郎「っ痛ぅ!」

嫁田「寝言は寝て言え。なんなら殴ってでも元に戻してやっから」

嫁田「たとえお前が嫁さんからさえ愛想をつかされても…京太郎、俺はお前のダチを止めたりなんかしねえから」

京太郎「…」

京太郎「…」グスッ

京太郎「…ありがとな、○○」

嫁田「バーロー…泣いてる男に礼言われたってそそられんぜ」

中断


京太郎「…」スタスタ ストッ

京太郎「ふー…結構重かったな、コレ」

 そういう少年の顔は満足気のようでもあり、得意げでもある。

優希「えー?京太郎ならこのくらいは余裕だろー?」

京太郎「いやいや、流石に山の上まで望遠鏡を持ってくのはキツかった」

 京太郎が持ってきたものはおよそ8kgほど。天体望遠鏡の中では、重い方の部類だ。

優希「そっかー。そりゃご苦労さん、だじぇ」

 優希は軽く彼を労うが、そもそもこうなったのは彼女の思い付きだ。

 6月24日。

 この日はUFO記念日、あるいは空飛ぶ円盤記念日と呼ばれている。


 それを和に聞いた優希は、その辺の小山からでもUFOを捜してみようと考えたのだ。

 京太郎はそれにつき合わされたのだ。

 はじめは「え、何で俺が?」と言っていた彼だが、何だかんだで彼女に付き合っている訳だ。

 付き合いがいいからか、面倒見がいいからか。なんにしても嫌々付いて来てはいない。

京太郎「それにしてもUFOねぇ…俺はどうもピンと来ないわ」

優希「夢のない奴だじょ」

京太郎「そんなんじゃねーよ。いるかどうかも分からんもんに、興味なんか持てやしないだけだ」

優希「…もしUFOから、のどちゃんみたいな可愛い子が出て来たら?」

京太郎「そんときゃお前、精一杯アプローチをかけていくまでよ!」

優希(…出来ないだろうなー)

 いかんせん、京太郎はヘタれている。

 アプローチをかけてみても、あのへっぴり腰では空振り三振が精々だろうと優希は思う。

 実際その通りなのだから。


優希(こんな所で二人きりなのに、そのことに触れもしないとは気が利かない奴)

 多少なりとも、優希は京太郎を異性として意識している。

 そういう仲かどうかはさておき、自分だけが意識するのは何となくバカらしいとも思っている。

優希(女として意識されないのって、やっぱり嫌だじぇ)

優希(のどちゃんと一緒にいると、色々大きさに差を感じるから尚更…張り合っても仕方ないんだけどな)

 中学当時、優希は和との差をここまで意識してはいなかった。

 気にはしていたし、憧れもしていたが、それでも対抗意識を持つまでには至らなかった。

優希「欲しいなあ、成長期」

京太郎「ならさ、星にでも願ってみるか?」

優希「…それもいいかもしれないじょ」


優希「…」

優希「…でっかいオッパイがほしいじょー!」ホシイジョー ホシイジョ-...

 何となく鬱屈した気持ちでいるのが嫌になって、優希は叫ぶ。

 ウジウジなんてしてられるか。

 得意の麻雀でも、決して思うようにはいかなかったけど、負けるもんか。そんな気持ちで。

優希「…ふう」

京太郎「ふう、じゃねーよ。こんな夜中に叫んだら迷惑だろうが…」

優希「ははは、すまんすまん!」

京太郎「まったく…でもさ、そっちの方がお前らしいと思うよ。タコス娘」

優希「うむ!」

 とりあえず、今はこれでいい。そう思って、優希は空を仰ぎ見る。


優希「…」

京太郎「…」

優希「…」ソワソワ

京太郎「…」

優希「…なあ、京太郎」

京太郎「…ん?」

優希「…今日の夜空は、結構綺麗だじぇ」

京太郎「そうだなー。お目当てのUFOは見えねぇけど…」

優希「…」

京太郎「…」

京太郎「…なあ優希」

優希「まだ帰らないじょ!」

京太郎「えぇぇぇ…俺さ、正直もう眠いんだけど」

優希「…悪いけど、も少し我慢しろ!」

京太郎「…へいへい」


京太郎「…」

京太郎(…いつだったか、誰かとこんな風にしてたような気がする)

京太郎(あれはいつだったろうか。誰と一緒に、夜空を見上げていただろうか)

 京太郎は、それを全く覚えていない。

 それはきっと大切なことで、忘れずにいれば良かっただろう。

優希「もし宇宙人に遇ったら、のどちゃんみたいなグラマー体形に…」

京太郎「お前も飽きないなぁ」

 もし忘れずにいられたら。

 忘れずに済めば、今彼の隣にいたのは…果たして誰だったろうか。


「…」

「…こんな所にいたのか」

「うん!UFOってのが見たくてさー!」

「夜空ならいつも見てるだろうに」

「たとえUFOが見れなくても、曇りでないなら星が見えるしモーマンタイ!」

「そうか。それならいいが、夜更かしだけはするんじゃないぞ」

「夜更かしは美容の大敵だからね。ふふん、それくらいわかってるよー」



「…おやすみ、淡」

「うん。おやすみなさい、お養父さん」


 ―――大星淡は、両親と血が繋がってはいない。所謂養子だ。

 無論それで親子仲が悪くなったりはしていない。淡がそれを知ってからも、関係は良好なままだ。

 元の両親は事故で亡くなっている。その父方の弟夫妻が、天涯孤独となった彼女を引き取ったのだ。

淡(…もしテルーに会えてなきゃ、星だけが私の友達だったかもね)

 テルーこと宮永照は、麻雀で独りになった淡を…その心ごと拾ってくれた恩人だ。

 彼女が居なければ、大星淡は今でも孤独に苛まれていたに違いない。

 …だが、

淡(どうしてだろう。私、何か大事なものから遠ざかったような気がする)

淡(…とても、とても大事な誰か。星ではなくて、星じゃない誰かから)

 その誰かを思い出せず、淡は少しもどかしい思いをしていた。


 亡くなった淡の両親。

 二人には養子がいた。込み入った事情から、引き取らざるを得なかった男の子が。

 両親はその子を疎みはしなかったし、むしろ淡と同じ位に愛した。

 ―――淡と男の子は、とても仲のいい姉弟だった。

 二人は夜空が大好きだった。

 夜空を眺め、その輝きに目を光らせている姿を、両親は愛おしく思っていた。

 だが両親は、事故で帰らぬ人となった。

 淡は天涯孤独になった。

 ならば、養子であった男の子は…淡の弟は、一体どこに消えてしまったのか。

 …なお、記録上では失踪宣告を出されている。


京太郎「俺が、養子?」

「そうだ」

京太郎「…じゃあ俺、二人のことをなんて呼べばいいんだ?」

「今までどおりでもいいさ」

「急な話で何だけど、後で知られてもややこしいだけだしね」

京太郎「あのなー…ま、変な勘ぐりとかしなくていいのは確かだよ」

京太郎「俺が二人に育ててもらったのは変わらねーし…とりあえず今はそれでいいよ」

「そうしてくれると助かる」

「元の家族については…そうね、京太郎が聞きたい時に話すわ」

京太郎「じゃあ、今で」

「…いいの?」

京太郎「変にもったいぶられても、それはそれでなんかなーって思うし」

「…それもそうね」


「まず、前の両親だけど…事故で二人とも亡くなってるわ」

京太郎「…そっか」

「それと京太郎、お前は引き取られる前から養子だった」

京太郎「え?」

「前の両親と言ったのはそういうことだ。お前の元の両親は、お前を手放すことにしたんだよ」

京太郎「…なんでさ」

「さあな。詳しい事情は分からんが、どうにもきな臭かったのは確かだ」

「確かなことは、アンタには義理の姉がいて…その子とは別にこちらで引き取られたということよ」

京太郎「へー…俺にねーちゃんっていたんだ」

「確か歳はお前と同じくらいだったはずだ。生きていれば、そのうちどこかで会えるかもな」

京太郎「ふーん。どんな人なんだろ」

「美人なのは確かね。亡くなったご両親は、かなりの美男美女だったし」

京太郎「……」

「…義理だからって、変な気起こそうとするなよ?」

京太郎「しねーって!」

「けど今は、名実共に赤の他人に戻ってるわけだし…それはそれで面白いかもね♪」

京太郎「…それはそれでどうかと」



―――麻雀が、分かたれた二人を引き合わせる。



 ―――きょー、ちゃん?


                   京太郎お前、あの大星とどんな関係なんだじょ!?


      お、俺が知るかよ!むしろ俺が聞きたいくらいだし…


                       おかしいな…京ちゃんをそう呼ぶのって、私だけなのに


           お、嫉妬か咲ちゃん?無理もねえ、旦那が浮気したかも知れないんだもんなー


   さ、咲さん…


        ふふ…これはどうにもこうにも、面白くなりそうねっ!


                         そんなん言うとる場合じゃないじゃろう、部長…



        ―――――――あなたは、誰と星を見ますか?


                   star☆gazer
              ~宇宙(そら)が落ちる夢~

                原画:とものり H・Gi-
                シナリオ:嶺上に咲く花
              OS:XP/vista/7/8日本語版
 価格:2.940円


              20XX年6月24日 発売予定!

そのうち誰かが京太郎と淡の義理兄妹設定で書いてくれると信じて
では


 ■

京太郎「…」

 嫁田に愚痴を聞いてもらったが、京太郎は未だ鬱屈としていた。それもそのはず…

京太郎(よく考えたら、今は部活に行きたくても行けないじゃん!)

 そういうことである。

 過労で倒れたばかりなのに、その一因である部活などさせられないのだ。

京太郎「……」

京太郎(…わーヒマだー。ヒマ過ぎるとかえって落ちつかねーわー)

 部員たちの気遣いは、どちらかと言うと無駄になっていた。

 どうにもままならない。


京太郎(つってもなー…この前みたいに倒れでもしたら色々マズい)

京太郎(過労で倒れるくらいに扱き使われてる部員がいる。そんな話を広められたら…)

 そう、事態は京太郎が思っていたより深刻だったのだ。

 どうして彼が倒れてしまったのか、その原因は当然だが追求される。

 あの場はハギヨシがどうにか収拾をつけてくれたため、悪いようにはならなかった。

 …だからといって安心は出来ない。

 もし同じことがもう一度起こってしまえば、事実などお構いなしに醜聞がはびこる可能性は高まるだろうから。

京太郎(雑用したい、って言っても今の皆は聞いてくれないだろうな)

京太郎(時々は面倒臭くも思っていたけど、いざ出来なくなってしまうとそれはそれで)

 もっとも当人は、それとはまた別の問題に直面していたのだが。


 ■

「ん、君は…まだ校内に残っていたのか」

京太郎「あ、内木副会長」

一太「会長からも言われているだろう。休部している人間なら、早く帰った方がいいよ」

京太郎「頭じゃそれが分かっているんですけど…どうも」

一太「…雑用しないと落ち着かないかい?」

京太郎「ええまあ」

一太「その言葉、間違っても会長達の前では口にしちゃいけないよ?」

一太「みんな君がワーカーホリックになってないかって、気が気でないらしいからね」

京太郎「ま、マジっすか…」

一太「今のは聞かなかったことにしておく。だからさ、今日の所は聞き分けてくれないかな」

京太郎「はい、ありがとうございます。ところで…」

一太「何かな?」

京太郎「ひょっとして副会長、部長に言われてわざわざ俺を捜しに来たんですか?」

一太「さて、どうだろうな。でもまあ気にしなくたっていいさ」

一太「別に僕は嫌がっちゃいないし、気にかけてもらって嬉しいくらいに思っていればいいんだ」


一太「それじゃあね。身体には気をつけるんだよ」

 副会長はそれだけ言って去っていった。

京太郎「……」

 気にかけてもらって嬉しいと、そう思っていればいい。

 その言葉で京太郎はいくらか気が楽になった。

 このところ部活の中で、彼が孤独感を感じる時間は次第に増えていた。

 自分は仲間外れなのだと思ってしまうのが嫌で、必要以上に張り切りすぎてしまうくらいには。

 …雑用による過労は事実だが、それは京太郎自身の力みすぎにも原因はあったのである。

京太郎(柄にもなく、真面目ちゃんになり過ぎてたのかな)

 時たま物事を重く考える癖はあるが、京太郎は元々軽いノリの男だ。

 麻雀部だって深い考えがあって入った訳ではない。楽しそうだからやってみようと思っただけだ。

京太郎(みんなは全国に行って、すげー活躍して…けど、俺は俺でしかないよな)

京太郎(どっかで始めて数ヶ月の子が、麻雀の大会でチャンピオンになったなんて話もあるけど)

京太郎(…ちょっとずつでもいい。俺は俺で前に進んでいこう)

 ほんの少し、けれど確実な一歩。

 置いて行かれた事実は変わらないだろうが、京太郎は仲間の後を追いかけていこうとする―――。

とりあえずここまで



 前スレ>>954の続き(?)


京太郎「部長…いつまでも自炊出来ないのってどう思いますか?」

久「何よ急に」

京太郎「余計なお世話でしょうけど、作れるようになった方がいいっすよ」

京太郎「外食頼りになっちゃうとついつい食が偏っちゃいますし…」

久「須賀君…それって多分、少し前までのあなたでしょ」

京太郎「…そうとも言います」

久「外食を抑えちゃったら、レディースランチのあんなメニューもこんなメニューも…」

京太郎「あ、それならご心配なく。ある程度は作れますから」

久「…え?」

京太郎「そういや部長は知らなかったんでしたっけ。ああ、あれは部長が引退した後からだったからな…」

京太郎「実は俺達、月に一度はハギヨシさんから料理の手ほどきを受けているんです」

久「え、なにそれ…なにそれ」

京太郎「最初は俺一人のはずだったんですけど、なんやかんやで全員参加になっちゃいました」

京太郎「けどそれはそれでよかったですね。みんなの料理を食べ比べたりなんかしましたし」

久「…へえ」

京太郎「…こんなタイミングで言うのもアレですけど、よければ今度部長も一緒に」


久「今度っていつ?」

京太郎「えっと…大体は毎月の末頃に」

久「いや、今でしょ」

京太郎「へっ?」

久「言葉が足りなかったわね。残念だけど、私に料理をする気は無いわ!」エヘンプイ

京太郎「いや、あの…そんなのをどや顔で言われても…」

久「だけど食べ比べなら出来るわ。上手いか不味いか、ただそれだけなんだからね」

京太郎「…部長、まさかアンタ」

久「丁度ここにおあつらえなものが沢山あるじゃない。私達が貰った、大事な大事なプレゼントがね」

京太郎「えぇー……」

久「と・に・か・く、よ。チョコの食べ比べ…いってみましょうか!」


久「…」パクパク

京太郎「…」ムシャムシャ

久「…どう?」

京太郎「どうって言われても…その、普通のチョコとしか」

久「そうじゃなくて!どう美味しいか、あるいは不味いか評価しなさい!」

京太郎「いや…凝り性の人でもなければ、市販のチョコを溶かしたりして作るものですし」

久「そうなのよねぇ…」

京太郎「それより部長、さっきから俺ら全部のプレゼントを半分こにして食べてますよね?」

久「そうね」

京太郎「これってどうなんでしょう?」

久「捨てたりせず、そのまま美味しく食べれるんだしいいんじゃないかしら」

京太郎「…それもそうですね」


京太郎「味はさておき、思ってたよりも結構バリエーションが多かったですね」

久「あれには驚いたわ。どうしてああなったのかしら?」

京太郎「ふーむ…ああ、これはネットにレシピが多く公開されてるからか」

久「レシピ?」

京太郎「チョコの販売各社がチョコの正しい溶かし方から、その後の調理についてまで書いてますね」

京太郎「へぇ…さっきのカップケーキはこうやってつくるのか。勉強になるなー」

久「…」

京太郎「これとかなら俺にも作れそうだな…あれ、部長どうかしました?」

久「いやその…面白そうにスマホを眺めていたものだから」

京太郎「…」

京太郎「部長…よかったら俺と一緒に作ってみたりします?よかったらですけど」

久「…うーん」

京太郎「食べるのもいいですけど、自分で美味いものを作れたらそりゃもう最高ですし!」

久「そうねえ…はあ、どうしようかしら……」

ここまで


 ■

京太郎(にしても部長が料理かー)

京太郎(前出されたのは食べ物じゃなくて食品サンプルだったんだが)

京太郎(アレって一体どこから調達したんだ…見た目じゃ全然判別できなかったし)

京太郎(…謎だ)

京太郎(部長の人間関係ってホント謎が多い。カツ丼、じゃなくて藤田プロとも知り合いだし)

京太郎(聞けば結構前から付き合いがあったらしい。きっと早くに目をかけられてたんだろうな)

京太郎(考えてみれば、部長のプライベートなんか知らないことだらけだ…)

京太郎(説教と指図がよく似合うのは知ってるが、それだけ)

京太郎(思いつきとはいえ、ちょっとばかし考えが足りなかったかなー?)


 ■

 そんなこんなで後日。

京太郎「それでは部長、今日はよろしくお願いします」

久「こちらこそ。美味しいのを期待してるわね」

京太郎「いやいやいや、部長も一緒に作るんですよ!?」

久「えー…」

京太郎「えー…じゃありません。誘いに乗ったのそっちでしょうに」

久「乗ったんじゃないわ。乗ってあげたのよ」

京太郎「…傲慢!」

久「野依プロみたいに言うのやめなさい」


久「…部活じゃないのに学校行くのって、なんだか新鮮ね」

京太郎「今日は日曜ですしね」

久「生徒会がワガママ聞いてくれてよかったわ。私的利用で家庭科室を貸し切れるから」

京太郎「権力様様ですよねー。流石に材料とかは自前ですけど」

久「ご苦労様。えっと、代金はどうしようかしら?」

京太郎「うーん…じゃあ半分で」

久「半分でいいの?」

京太郎「出した金が多い少ないとかってなんていうか…その、色々面倒臭いですし」

久「なるほど、それは一理あるかもしれないわ。じゃあ、半分だけ」

京太郎「あざっす」


 ■

久「で、準備の方はもう出来てるみたいだけど…これは」

京太郎「何かおかしいですか?」

久「おかしいって言うか、種類が少し多すぎるんじゃないかしら…」

京太郎「一品だけじゃないですからね」

久「なるほどねー…って!」

京太郎「難しいもんじゃありませんし、そう焦らなくても」

久「こんなの聞いてないわよ…」

京太郎「言ってませんからね。もし言ったら断られてたでしょうし」

久「…意地の悪い」

京太郎「そりゃお互い様ってもんです」


久「…こうなったら仕方ないわね。須賀君、よろしくお願いね」

京太郎「まかせてください。麻雀以外でしたら何でも!」

久「仮にも麻雀部員でしょうに…」

京太郎「ハギヨシさん直伝の技、とくとごらんあれ!」

久(聞いてないし)

京太郎「…ってのは嘘で、今からは部長に料理してもらいます」

久「!?」

京太郎「もし無理でしたら、俺が全部やってもいいですけどね」

久(むう…馬鹿にしちゃって!)

久「いいわよ。上手くやってあげようじゃない」


 ■

京太郎「…ではまず、オクラに塩をふって板刷りしていきましょう」

久「板刷り?」

京太郎「素材に塩をふってから、まな板の上でこすりつけるように転がすことですね」

京太郎「最初は指先、塩がなじんできたら手のひらで押し付けるのがベターです」

久「ふむふむ」シャカシャカ

京太郎「用語は覚えておいた方が楽ですね。その辺は麻雀とかでも一緒ですけど」

久「…それでも面倒ねえ」コロコロー

京太郎「そう言いつつも、中々楽しそうにしてますよ?」

久「だんだん綺麗になってきてるのを見ていると、化粧をしているみたいで」

京太郎「素材の色をよくして、表面のでこぼこを均一にならしていくのが板刷りですから…」

京太郎「化粧と言うのは言いえて妙ですね」


京太郎「じゃあ次はパプリカを切っていきましょう。と、その前に」ゴソゴソ

久「一体何を…」

京太郎「あはは…すみません、まな板に滑り止めを使うのを忘れてまして」

久「ああ、まな板がぐらついちゃうから?」

京太郎「そうですね。いっぺんそれで指先を切っちゃいましたし」

久「痛そうな話ね」

京太郎「最初に切ったのは咲ですけど。で、ああはなるまいと思ってたら俺も切っちゃったと」

久「あのねえ…」

京太郎「けどホント怖かったのは確かですよ。もし指をざっくりいってたら、って思うと余計に」

久「あの…須賀君?やる前から怖がらせないでくれるかしら…」


久「…で、包丁はどんな風に握ればいいのかしら」

京太郎「ちょっと貸してください…ほら、こんな感じっすね」

京太郎「親指と人差し指で刃元の中央を握って、他3本で柄を握ります」

久「えっと…こうかしら?」

京太郎「ええ、バッチリです。そのまままな板に対しては平行に立って…」

久「…」

京太郎「で、材料の握り方は指先を立てるようにして…」

とりあえずここまで


 ■

京太郎「あ、オクラを水洗いするの忘れてた」

久「しっかりしてよ…あ」ポロッ

 ファサァァッ

久「あらら…塩の山が出来ちゃったわね」

京太郎「あららじゃなくて、どうすんですかこれ」

久「須賀君が何とかしてよ。先生でしょ」

京太郎「にしても限度がありますよ…」


 ジュワー

久「いい匂いねえ」

京太郎「それなりにいい肉ですから、そりゃあね」

久「…」

久「…火加減を強めたらどうなるかしら?」

京太郎「え?」

 クイッ ボッ! ジュワァァァッ!

久「おお、焼けてる焼けてる…って熱っ!油が、油がっ!」

京太郎「言わんこっちゃない…」


久「…はー熱かったわー」

京太郎「いや、熱くしたのは部長っすよ」

久「油が多すぎたんじゃないかしら」

京太郎「え、俺のせいですか?」

久「教える側が教わる側に責任を持つのって、当たり前の事だと思うの」

京太郎「腑に落ちない気がするのは気のせいっすかね」

久「気のせいよ。一応だけど、インハイ終わった後には指導したはずだし」

京太郎「それ以上に扱き使われた気もしますが…」

久「嫌なら断ってもよかったのよー?」

京太郎「そう言われりゃそうなんですけど。ほんと、どうしてなんでしょうねえ」


 サクサクサクサク....

京太郎「よし出来た。後はこれをレタスに盛り付けて…完成!」

久「おおー」パチパチパチパチ

京太郎「写真のよりもいい彩りに見えるなぁ」

久「真面目にやってきたからよ」

京太郎「別に大きくなったりはしませんけど…それじゃあ早速いただきましょうか」パクッ

久「そうね。お腹がすいて仕方なかったし」パクリ

 モグモグ...

京太郎「うむ、美味しい」

久「ちょっと塩辛いけどね」

京太郎「自虐ですか?」

久「そうじゃないけど、もう少し上手くやれたかなって」

京太郎「確かに。もっと美味く出来ただろうとは思いますね…でも」

久「そう思えるのが楽しいことなのよ。何をするにも」

京太郎「ええ…」


久「自分で作るのと、人に作ってもらうのとではやっぱり違う」

久「…いい勉強になったわね」

京太郎「どうやって作ったら美味しいだろう…そう考えられるのがいいんですよ」

久「見ているだけなら、絶対こんな風にはならなかったわね」

京太郎「そうですね。ただ、見ているだけなら」

久「……」

久「ひょっとしてだけど、インターハイのことでも思い出したかしら?」

京太郎「…はい」

京太郎「俺も今じゃ多少は打てるようになりました。毎回ラスを引かなくなる程度には」

京太郎「だからこそ、あの時を思い出すともどかしくなっちゃうんですよね」


久「…もし須賀君が初心者じゃなくて、それこそ、個人で全国を目指せるレベルだったら」

京太郎「ああももどかしくはならなかったでしょう。そうに違いない」

久「その貴方がここに来ていれば、みんなで全国を目指すことだって出来たわね」

京太郎「男女混合ではないですけどね。それでも、健闘を祈りあうくらいは…」

京太郎「そして…一緒に強くなろうとするくらいは、出来たかもしれませんね」

久「…でもね」

久「でもね、そんなに打てるなら…須賀君はここに居なかったかもしれない」

久「かもしれない、なんて考えるのは不毛だわ。それでも貴方は思い出しちゃうんだろうけど」

京太郎「不毛ですよね。ええ、分かってるつもりなんですけど」

京太郎「…でもやっぱり気にはなります。ええ、もうすぐ部長がいなくなっちゃいますから」

久「…」

京太郎「俺に麻雀を、その楽しさを知るきっかけをくれたのはこの麻雀部でした」

京太郎「部長がいなくなったら、それが変わってしまうかもしれないのは…ちょっと怖いかな」


久「…今みたいな居心地ではないでしょう」

京太郎「はい。だから未練がましくなって」

久「でも私は居なくなるし、須賀君だって先輩になっちゃうのよ?」

京太郎「そうなんですよね。俺、麻雀そんなに強くはないのに」

久「強い子ばかりがくるとは限らないし、そもそも新入部員が来るかどうかも分からない」

久「心配するなら、まずは勧誘の仕方でも考えるべきね」

京太郎「…咲の時みたく、半ば無理やりで済めばいいんですが」

久「…まあ、それはそれでアリかもしれないけど」

京太郎「いずれにしろ、俺はどうならなきゃいけないのかなーって思います」

久「そう重く考えないで。せいぜい『どうなりたいか』くらいでいいのよ?」

京太郎「どうなりたい、か」

京太郎「それなら俺は部長みたいに、何だかんだで道を示せる人になりたい」

久「…へえ」

京太郎「あ、でも色々語りだしたくはないかな…」

久「誰が年寄り臭いって?」

京太郎「言ってませんから。ええ、言ってませんから」


 ■

京太郎「…もう、あの6人じゃ居られないんだなー」

久「須賀君、なんか年寄り臭いわよ」

京太郎「まだ引きずってたんすか…とにかく俺は、今の面子で居るのが楽しいです」

久「それに未練がましい」

京太郎「それだけ大事に思ってたんですよ。麻雀部のこと」

京太郎「そうでなきゃ、ろくに麻雀勝てないからって部活を辞めちゃったりしてたかもしれませんよ?」

久「それはないわね」

京太郎「即答!?」

久「拗ねて腐ったままでいるような子じゃないって、確信があった」

京太郎「どこに根拠があったんですか…」

久「そんなのないわよ。言ってしまえばただの直感」

京太郎「うわ…」

久「でもそれは間違いじゃなかった…でしょ?」

京太郎「買い被りかもしれませんよ?」

久「そうかしら。まあ、答えならそのうち出るわよ」

久「貴方が麻雀を好きでいられるかどうか、言ってしまえばそれだけのことだもの」


京太郎「…」

京太郎「…そう、ですね」

京太郎「でもどうせなら、今の面子で十二分に楽しみたかった」

京太郎「その気持ちは多分変わらないだろうし…俺にとって、それはある意味原点なんです」

久「そうさせた理由の一つは、私」

京太郎「けど、それを選んだのは俺です。もどかしくなる道を選んだのは」

京太郎「それが嫌なら、県大会の後にでも辞めてしまえばよかった。でも無理だった」

久「…楽しかったから?」

京太郎「はい。とりあえずは、それで十分だった」

京太郎「…それだけで、よかった」


京太郎「…みんなのようになりたいと。みんなのように打ちたいと」

京太郎「そう思って、自分なりに頑張って、けど…思うようにはいかなくて」

京太郎「けど、思い通りにいかないからこそ…より追い求める気持ちが強くなった」

久「…ドMかしら?」

京太郎「言い方が引っ掛かりますが、そうかも」

京太郎「そうして…出来るようになったのは、こんなことばかりだ」パクッ

久「あのね…」

京太郎「…寄り道ばっかで、いつ辿り着くかわかりゃしない」

久「……」

京太郎「それでも諦めないでいるのは、これでいいんだと思えるから…でしょうか」

京太郎「…あ、もうなくなっちまった」

久「あー!いつの間に全部食べちゃって!」

京太郎「慣れない話してたら腹減っちゃって…」

久「ペンギンみたいに吐けとは言わない。それより、私の分だけ作り直して頂戴」

京太郎「えー…自分の分なら自分で作ってくださいよー」

久「それを貴方が食べたんでしょ!?」


 ■

京太郎「…もうちょっとだけ、6人で一緒にいたかったな」

久「2人で、じゃなくて?」

京太郎「からかわないでくださいよ。俺達別にそんな仲じゃないでしょ」

久「そうなんだけどね。それとも須賀君、まだ私に扱き使われたいの?」

京太郎「いや、それは勘弁して欲しいです」

久「そりゃあね」

京太郎「けどそれがある種拠り所でもありましたから、一概には」

京太郎「…こういうのって何ていうんでしたっけ。確かその、レーなんとかって」

久「レーゾンデートル、ね」

京太郎「そうそう。レーゾンデートルレーゾンデートル」

久「一応聞くけど、意味は知ってるかしら?」

京太郎「ええと…うーん…生きがいとかそういうのですか?」


久「…それもあるけど、存在意義とか存在理由とかって意味もあるのよ」

京太郎「存在意義…なんか難しそうな単語が」

久「ようするにね『自分はここに居てもいいのか?』ってことよ」

久「須賀君の言ってることからすると、貴方はずっとそのことが引っ掛かっていたように思えるわ」

久「私達の居る、麻雀部に自分の居場所はあるのかなって」

京太郎「……」

京太郎「…そう、でしょうか?」

久「唯一の初心者に、そう思わずに居ろというのは酷かもしれないけど」

京太郎「とんでもない!」

久「…そうね、言い過ぎたわ。それで擦れてダメになるほど、貴方は弱くなんかないのにね」

久「いや…弱いのは私か。悪いことしたかなって、許して欲しくて」

京太郎「…許すも何も、お互いこれでよかったんですよ」

京太郎「ただ…今の麻雀部がもうすぐなくなっちゃいますから、それが惜しくなってるんです」

京太郎「…惜しみすぎて、それが過去への後悔になっちまうくらいに」


久「…」

京太郎「…ああ、嫌だな。今のままじゃなくなったら俺、麻雀部にいられるのかな」

京太郎「そんな不安を持つのって、おかしなことなんですかね?」

久「雑用をする自分が、麻雀部での価値あるだって思ってるならおかしくないわね」

久「けど…一緒に麻雀を楽しもうとする仲間としては、この上なく間違ってる」

京太郎「…」

久「…」

京太郎「…周りからは色々言われてますけど、俺にとっては今の部活、とっても居心地いいんですよ」

久「だから失くしたくない、と」

京太郎「…はい」

久「…別になくなったりはしないわよ。ええ、貴方がそれを捨てない限りは」

京太郎「元のままでなくなったら?」

久「なるべくなら、私は貴方にそれを受け入れて欲しいかな」


京太郎「…難しいな」

久「そうかしら。須賀君になら出来ると思うけど」

京太郎「出来ないとは言いませんけど、挫けてはしまいそうで」

久「みんながいるじゃない」

京太郎「けど、一番の助けはいないでしょう」

久「和だって居るのに?」

京太郎「和は…少なくとも、麻雀のことじゃ誰も甘やかしたりはしませんし」

久「それもそうね。むしろ傷口に塩を塗っちゃうかも」

京太郎「でしょ?」

久「でも私に甘えようとしてもダメよ」

京太郎「まさか。悩みの答えは言ったりしてくれますけど」

久「それもじきになくなるわ。これからはみんな、自分で答えを見つけなきゃいけなくなる」

久「…みんながみんなそれに必死だから、いつも互いを助け合えって言っても難しいわよね」


京太郎「…そういやウチ、監督なんていませんからね」

久「顧問ならいるけど」

京太郎「…部長でしょ」

久「議会長ね」

京太郎「それ、どっちも竹井先輩ですよね」

久「…」

久「…急に言い方変わったけど、どうしたのかしら」

京太郎「なに、先輩が居なくなるのを俺なりに受け入れようってしてるんです」

久「…もし」

久「もしも部活に、ちゃんとした顧問がやってきたら…須賀君、あなたはどうする?」

京太郎「扱き使ったりしない人なら、誰でも」

久「あら」

京太郎「…嘘です。俺、竹井先輩以外のリーダーなんて考えにくいですよ」

久「…」

京太郎「ですけど…先輩が受け入れろというのなら、どうしたって受け入れますよ」


久「…」

久「…出来るだけ、出来るだけ私の方で捜してみるわね」

京太郎「ぜひ」

久「手近な所なら、藤田プロとかどうかしら?」

京太郎「…ああ、子供とカツ丼が好きな」

久「…子供が好き?」

京太郎「ありゃ、知らないんですか?あの人が龍門渕の大将にあれこれしてるって」

久「えっ…」

京太郎「一応、いかがわしい事じゃありませんよ?それならすぐ、保護者の皆さんが止めるでしょうし」

久「…付き合い方、考え直そうかしら」


京太郎「…やっぱり俺、部長がいいなあ」

久「呼び方戻ってるわよ?」

京太郎「もう少しはそう呼ばせて欲しいっす」

久「…今の部長はまこだからね」

京太郎「それは俺も分かってるはずなんですけど、ね」

久「…たまに私が部長と呼ばれると、いつもあの子は凹んでるのよ?」

京太郎「…気をつけます」

久「須賀君に限った事じゃないけどね。私の方も、部長って声を聞くとつい反応しちゃうし」

京太郎「子離れが出来ない親、か」

久「そして須賀君やみんなが、親離れの出来ない子達ね」

京太郎「…難しいな」

久「私だってそうよ。今のままがいいとも思うのは、須賀君と一緒」

久「けど時間は過ぎて行くの。止まったままでも、巻き戻ったりもしない」

京太郎「…だからこそ俺は今を、そしてこれからを大事にしますよ。それくらいは、ちゃんと分かってますから」

久「…なら、いいのだけど」

京太郎「信じられません?」

久「心配なのよ」


京太郎「…」

京太郎「…はあ」

京太郎「…そのうち、お互いを気にしてられなくなるのかあ」

久「…」

京太郎「離れ離れになったら、どうしたって今みたいには出来ない」

京太郎「一緒に過ごす誰かの方を優先しなくちゃいけないのは、当然だから」

久「合理的ではあるのだろうけど、寂しい話ね」

京太郎「別れるってそういうことですしね。だからこそ、忘れないようにしたいと俺は思うんですが」

久「それって凄く辛いことよ?」

京太郎「それでも大事だって思うから。忘れてしまう時だってあるでしょうけど」

久「…分からないなあ。忘れた方がいいかもしれないのに」

京太郎「…俺にはそれが分からない」


久「…本当の気持ちなんて、どこにもないのかもね」

京太郎「分かってたら、悩んだりなんてしないでしょう」

京太郎「それらしいことを、その時々の状況とかで判断してるだけで」

久「なんだか直感みたいね」

京太郎「実際問題そうなんですよ。それに部長が好きな悪待ちだって、同じことです」

京太郎「こういうのにも、方程式とかあったらなあ」

久「それじゃあロマンがないわ。論理と計算づくで成り立つなんて、そんなものは」

久「それなら人じゃなくっていい。機械を動かすプログラムのように、ただ理路整然に動けばいいんだから」

京太郎「…機械だったら、こうやってウジウジ悩んだりもしませんし」

久「…それって面白いかしら」

京太郎「勿論つまらないですよ。しかしそれに近い生き方なら、知らないうちにしてるかもしれない」

京太郎「…それが生きてるって言えるかどうかは、学者とかにでも決めてもらえばいい」

京太郎「当人が幸せなら、とりあえずはそれでいいんじゃないっすかね?」


久「…ああ、分かった」

久「その『とりあえず』がよかったのかって、須賀君はそれを不安に思っているのね」

京太郎「基本ノリだけで生きてますから。でなきゃ、麻雀部なんて来ちゃいないでしょう」

久「まあ、酷い言い草」

京太郎「けど最初は、気楽にダベれりゃいいやって思ってましたよ。そんな雰囲気だってありましたし」

久「…否定は出来ないわ」

京太郎「それが変わったのは、俺が『とりあえず、数合わせで』咲を連れて来たからでした」

京太郎「…だからなのかもしれませんね。もう少し、賢く生きてりゃこんなことにはって」

久「…」

久「…須賀君がそんな人なら、私は貴方をここに入れたりしていない」

久「そもそも咲だって、貴方がそんなズルい相手ならもっと警戒してたと思うわよ?」


京太郎「…考えてみれば、俺は」

京太郎「俺は…その、周りにどう思われてるなんてあんまり考えてなかったですね」

久「『とりあえず』なんでしょ、須賀君は」

久「『とりあえず』で動いてきたから、今があるのよ。それが最善かどうかなんて、どうでもいいこと」

京太郎「どうでも、いい?」

久「言ってしまえば、貴方のそれはただの贅沢で…それに不毛。もっといい結果をだなんて、過去に求めるのは」

久「『とりあえず』で生きているなら、そんなのはらしくない」

京太郎「……」

久「だからこの先も『とりあえず』で行きましょうよ。今よりも少し、手札は増やした方がいいと思うけど」

久「須賀君の場合、出来る事を増やせば何とかなる気がするもの」

京太郎「……」

京太郎「あの…料理とかじゃダメですか?」

久「…どうせなら麻雀にしなさい」



  ■


 適当というか、『なんとなく』で麻雀部に入って、それからも『なんとなく』で過ごしてきた。

 須賀京太郎とは、そんな風に捉えることも出来る人物である。


京太郎「…おい優希」

優希「ひゃんひゃひょ?」パクパク

京太郎「タコス食いながら話すなはしたない…それはそうと、お前も少しは新入生を勧誘しろよ」

優希「それならお前や他のみんながいるだろー?」

京太郎「確かにそうだが、あの格好じゃみんな勘違いするだろ…」

優希「…あー」

京太郎「なに考えてんだよ部長…メイド姿で勧誘とか、まあ…和の奴は最高だったけど」

優希「どうせなら私も着たかったじぇ」

京太郎「着れなかったの、お前が勧誘めんどくさがったからだろー?」

優希「そうとも言う!」

京太郎「そうとしか言わねえよ…」



 そんな須賀だが、彼は決していい加減な人間ではない。

 軽い調子で振舞っているが、その割には存外気苦労するタイプの人柄だ。


「…あの、ちょっといいですか?」

京太郎「おっ、麻雀に興味があるのかな?」

優希「来るもの拒まず、だじょ!」

優希(…ん?この人どこかで見たような)

「いえ、そうではなくて…宮永さん達、連れて行かれちゃいましたよ?」

京太郎「…あらら」

「ここは私が見ていますから、どうか早く行ってください」

京太郎「わ、わかった!」

 タッタッタッタッ

京太郎(ちくしょう!やっぱりあの格好は、風紀的に色々アウトだったか!)

京太郎(…特に和が!)


 そんな彼の気苦労は、彼女が加わる事で更に増していくだろう。


京太郎(部長が…竹井先輩が守った部活を、俺は守る!)

 そう意気込み、メイド3人の所へと走っていく京太郎。

 その頃…

優希「…」ジーッ

「…なんでしょうか、私の顔をじーっと見て」

優希「…」

優希「…貴女とは、前にどこかで会いましたよね?」

「えっ…なんのことでしょう?」

優希「質問に質問で答えるなんておかしいじょ。南浦さん」

「…バレていたんですか」

優希「気付いたのはさっきだけどな!私と打った時じゃ、リボンなんかほどけてなかったし!」

 思わぬ所で、思わぬ人が彼らの前に現れていた。

 そしてそれはきっと、いや、もしかしなくても竹井久の差し金だ。


 ■

久「…」

美穂子「どうかしました?物思いにふけったりして」

久「長野にいる後輩のことを考えててね」

美穂子「そんな風に思ってもらえるなんて、その子達は幸せ者ね」

久「でしょう?」

美穂子「ただ、久が誰かを扱き使ったって噂も耳にするけど」

久「…気のせい気のせい」

美穂子「もう…ほどほどにしてくれないと困りますよ?」

美穂子「貴女に憧れる身としては、幻滅なんてしたくありませんしね」ニコッ

久(やば、ちょっと怒ってるかも…まあいいか)

久(イタズラの代償としては、このくらいで済めば御の字よね)


 彼女の言うイタズラ。

 そのイタズラは、京太郎達に何をもたらすのか。



 彼らの今後については、いずれまた語られる日が来るだろう。

 清澄高校麻雀部の、最初の6人…その未来に幸あれ。

                                                fin



 >>72の続きから


京太郎「…」グテー

「帰ってくるなり、ソファーでだらけるのはやめなさい」

京太郎「だってさお袋。俺、やることなくて暇なんだよ」

「勉強しろ」

京太郎「そんなのテスト前でいいし…」

「麻雀があるじゃないの」

京太郎「麻雀?」

「麻雀するなとは言われてないんでしょ?部活の方は、アンタが雑用したがるから休ませただけで」

京太郎「…それもそうか」


 カチ...カチッ

京太郎(おお、初っ端から聴牌じゃん。今日はツイてるなー)

京太郎(…ここはやっぱりダブリーかな)

 『リーチ』

京太郎(よし、後は和了るのを待つだけで)

 『ロン』

京太郎「…はい?」

 『国士。対局終了です』

京太郎「……」

京太郎「……」ピクピクッ

京太郎「…はっ、はぁぁあぁぁぁあああっ!?」

京太郎(マジかよ…全然ツイてなんかないじゃん俺……)


京太郎「畜生…次だ次!」

 ○

 『天和』

京太郎「げぇ!」

京太郎(け、けどさっきよりはマシだし)カタカタ

 『地和。対局終了です』

京太郎(はい終わりー!)

 ○

京太郎「…」

京太郎(…一位だ。ラスじゃない、一位だ)

京太郎(たとえ親の倍満直撃でも、これなら逆転出来ねーだろ)

京太郎(いつもこうならいいんだけどな。とりあえずここはベタオリで行こうか…)

 『ロン』

京太郎「いい!?」

 『国士。対局終了です』

京太郎「…」

京太郎「…だーもーう!またお前かよ!何なんだよ!」プンスコ


 カチカチ

京太郎「…」

 『ロン』

京太郎「あ…」

 『断幺、七対子、対局終了』

京太郎「…」

京太郎(…また、負けた。これで何回目だっけな)

京太郎(もう起こる気力も湧かねえ。ただただ疲れちまったって感じ)

京太郎「…おもんねーわ」

京太郎「こんなんじゃ、ホントおもんねーわー……」


京太郎「…ふぁ」

京太郎(なんか眠くなってきた。当然だけど)ウツラウツラ

京太郎(こんだけ負けてばっかだとさ、気疲れして起きてるのが辛くなるし…)

 カチカチ カチッ

京太郎「…」

 『シャットダウンしています...』

京太郎「…」

京太郎(…ちょっとばかし休むか)





京太郎「…」zzz...


>>126

×:京太郎(もう起こる気力も湧かねえ。ただただ疲れちまったって感じ)
○:京太郎(もう怒る気力も湧かねえ。ただただ疲れちまったって感じ)

とりあえずここまで


 ■

京太郎「…」

...カチッ

 『宮永咲 プラマイゼロの謎に迫る!』

 『末原恭子 凡人の打ち筋』

 『対木もこ ちっちゃな大型ルーキーさん』

京太郎(今じゃ咲もちょっとした有名人か。随分と差がついちまったな…)

京太郎(小馬鹿にしてた方の俺が、今じゃ小馬鹿にされる方ときたもんだ。実際は馬鹿にされちゃいがいが)

京太郎(…でもいっそのこと、馬鹿にしてくれた方が助かるかもしれない)

 『お姉さんについてはどう思っていますか?』

 『ご家族は今どうなっていますか?』

京太郎(…アイツも苦労してんなあ)


『清澄の宮永咲選手とは、三度卓を囲むことになった訳ですが…』

恭子『恥ずかしながら、私は一度も彼女に勝てなかった』

恭子『ですがそれを悪いと思ったことはありません。むしろいい刺激になりました』

『宮永選手をどう思いますか?』

恭子『怖いですね。正直、戦わずに逃げ出したくなる気持ちさえ抱けます』

恭子『それでも最後まで打てたのは、やはり私が麻雀を楽しんでいたからでしょう』

『…お強いですね』

恭子『恐縮です。現状において、私はただの負け犬に過ぎませんから』

恭子『次に宮永さんと戦える機会はいつか分かりませんが、なるべく早めに再戦したいものです』

『やはり次こそは勝ちたいですか?』

恭子『勝ちたくなければ、私は彼女と三度も打たなかったし、負けることもなかったでしょう』


恭子『悔しくて仕方ありません。まして相手には、相当なブランクがありました』

恭子『経験・環境などにおいて私は有利だったのに、それを十分に生かせなかったのは、私の怠慢です』

『ご自分に驕りがあったと?』

恭子『はい。私は自身を凡人と自称していましたが、結局は自惚れていた』

恭子『それが自分の打ち筋にも影響したと考えています。私は、万全ではなかったのです』

『その口ぶりですと、万全であれば勝ち目があったと言いたげですが?』

恭子『そのように言いました。これは決して自惚れではなく、確固たる自信です』

恭子『万全を期せば私に負けは無い。ですがそうでなければ、自信はまた自惚れに変わってしまうでしょう』

恭子『そういう意味では、私の敵は私自身…そのように言えるのかもしれませんね』



『最後に一言お願いします』

恭子『運だろうと牌だろうと、結局は掴み取ってこそ。その為の労力は決して惜しんではいけない』

『―――本日はお忙しい中、インタビューに応じていただきありがとうございました』

恭子『ありがとうございました』


京太郎(おお、なんかカッコいい)

京太郎(この人、決勝戦じゃ涙目になってたんだけどな。いじらしい)

京太郎(いやいや、いじらしいとか思っちゃダメだ。ろくに打てない俺が、この人を馬鹿にしちゃダメだろ!)

京太郎(…これも自惚れなんだろうな)

 カチッ、カチッ

京太郎(さて、次はこの対木さんの記事でも見てみるか)


『麻雀を始めたきっかけは?』

もこ『…なんとなく』

『なんとなく、ですか。東海王者になったことも、その、なんとなくですか?』

もこ『…違います。まさかああなるとまでは思っていませんでしたが』

『あの優勝は想定外だったと?』

もこ『…はい。私は麻雀初心者で、まして独学だった訳ですから』

『まさか』

もこ『嘘ではありません…事実私は、当時の監督からも指導を受けていませんでした』

『それはどうして?』

もこ『…早い話、私は他の部員とうまくいっていませんでした。ですから部活にも顔を出すことも稀で』

もこ『監督は何度か私を訪ねてくれましたけど、そのことであらぬ噂まで立てられて…といった感じです』

『あらぬ噂?』

もこ『…私がこの容姿ですから、それを構うのはロリコ…幼児性愛者だのなんだのと』

『…なんだか世知辛く感じますね』


もこ『…実際問題、私の身体はとても小さいです』

もこ『それでからかわれるのは珍しくないですし…普段着もそれを強調づけるもので』

『その格好はいつから?』

もこ『…丁度麻雀部に入った頃くらいです。私、この格好の自分になら自信が持てましたから』

『自信、と言いますと?』

もこ『小さくたっていい。小さいなら、小さいなりの生き方があるんだって』

もこ『…自慢みたいでなんですけど、この格好って似合ってませんか?』

『ええ、よくお似合いですよ』

もこ『…恐悦至極』


『…ところで今は麻雀部に所属していないとか』

もこ『…はい』

『やはり中学時代が原因で?』

もこ『…それもありますが、私はあまり口数が多くないですから』

『そうでしょうか。少し間をおきつつも、ちゃんと話は出来てるように思えますが…』

もこ『…友人が出来ましたので』

『ご友人といいますと?』

もこ『…中学時代の実績から、インハイ個人戦のMVPがやって来るようになりました』

もこ『そのうちの荒川さんグループ…特に、后土学園の百鬼さんとは懇意にしていただいてます』

『三箇牧の荒川選手…そのグループと言えば、全国でも指折りの面子ですね』

もこ『…そうですね。あの人たちと麻雀を打っているのが、今現在の一番充実した時間です』


もこ『…もっとも戦績については、よく私がラスを引いてます』

『…失礼ですが、そう仰られる割には悔しさを見受けられませんね』

もこ『…今の所、それよりも楽しさの方が優っています。中学では、こうはいかなかった』

もこ『ネット麻雀以外で、誰かと打つ機会はそれこそ大会くらいしか無かった訳ですから…』

『なるほど。嬉しそうに笑っているその為ですか』

もこ『…私、今笑ってました?』

『ええ、それはもう』

もこ『……』///





京太郎(なんでこの子だけ動画なのか分からんかったが…なるほどなー)

京太郎(…ウチのタコス娘とは好対照だ。いや、アイツはアイツで多分可愛らしいんだろうけどさ)

>>138 『なるほど。嬉しそうに笑っているその為ですか』→『なるほど。嬉しそうに笑っているのはその為ですか』

一時中断


京太郎(にしても凄い子だよなー…)

京太郎(あんなに小さいけど、麻雀はかなり強いってのが)

京太郎(…龍門渕の天江さんとかもそんなだったな。咲のお姉さん…照さんと同じくらい強かったし)

京太郎(今思えば、清澄はよくインハイなんかに行けたよ…)

京太郎(すげーよなあ。あんまりすげーから、俺じゃとてもついていけねえ)

京太郎(初心者の俺じゃあな…この子みたいに、始めてすぐにチャンピオンだなんてとても)


京太郎(…)

京太郎(…いけね。俺ってばなに考えてんだ)

京太郎(あの時咲が天江さんに負けていれば、だなんて…そんなこと、考えてどうすんだよ)

京太郎(あそこで咲が負けて、それで…俺はアイツを慰めでもしたかったか?)

京太郎(そうすりゃ俺は、アイツのことを下に見ようと出来るから…なんて、考えちまえるのはどうしてだろう)

京太郎(…やな奴だな。須賀京太郎ってのは)

京太郎(身近だった奴が遠くに行って寂しいって気持ちを、少しも受け入れられてない)

京太郎(それに…咲の面倒を見ていたって自負が、今じゃただの虚栄心みたいになってる)

京太郎(凄いのは咲の方で…アイツを麻雀部に誘った俺は、全然大した事ないのに)


京太郎(あの面子と一緒に麻雀部にいた俺ってすげーだろ、ってか)

京太郎(…あーやだやだ。やってらんねえ)

京太郎(みんなに比べて俺は…みたいなことを言われたこともあった)

京太郎(その度に俺は、みんなが活躍するのを助けたんだからって…何にも出来ない奴じゃないって)

京太郎(そう思って、軽く流してきた)

京太郎(けどさ…雑用出来るからって、麻雀が出来なきゃ麻雀部員としちゃ話にならないんだ)

京太郎(俺、マネージャーとかじゃないしさ…)


恭子『私は一生凡人のままでありたいと、そう思います』

恭子『でなければ戦う前から負けてしまう。誰かと戦う前…自分自身に負けてしまうと、そう思いますから』

 この人がそうなら、俺は一体どうなってしまうんだ。

 京太郎はそう思った。

 彼は自分が自惚れてると意識している。

 インハイで実績を挙げた麻雀部、その一員である自分を凄いと思いたがるくらいにはと。

 …彼は自分を等身大に見たいのだ。

 尊大でもない、かといって卑屈でもない視点で。

 自分がこれから何をしたくて、何をすべきかを探したいのだ。

 けれどそれは阻まれてしまう。

 麻雀部の仲間たち…その実績は、今の京太郎とはあまりにスケールが違いすぎるから。

 俺もみんなみたいに凄くなれたら、という気持ち。

 それが彼を堂々巡りさせる。


 足りていない。

 京太郎が仲間達のようになるには、必要なものがあまりに足りていない。

 それは彼自身も分かっている。

 先日はっきり自覚して、しかし納得は出来ていないのだ。

 納得しようとするも、それがなかなか叶わない。

 その上、納得から遠ざけてしまうものまで現れて。

京太郎(…俺にも、この子みたいな才能があったらな)

 だから逃避する。

 理想と現実の狭間で揺れ動く彼の心に、行き場は無い。


京太郎にとって、5人の活躍はとても誇らしい。

まぶしいほどに。その輝きを、自分のものにしてしまいたいくらいに。

あの輝きのいくらかは、自分のお陰なのだと彼は言いたかった。

だが言えなかった。

言えば自分がみじめになり、5人の事を仲間だなんて言えなくなるから。

京太郎は、なおさら辛くなった。

麻雀部がインハイに出ていなければ、自分と対比する必然性は生まれなかったろうから。


咲、和、優希、まこ、久。

5人はそれぞれ次を見据えて前を進む。

先の戦いなんかはもう過去のこと。少なくとも、固着するほどではない。

その当事者にはなれなかった京太郎。

あれが彼にはまぶしく見えた。

いつも一緒にいる彼女らが、その時はまるでスターのようであったから。

…京太郎は、過去のまぶしさに目をくらませているのだ。


身近ゆえ目に付きやすく、離れにくい。

それが彼には厄介だった。

周りの声が仲間を称えることで、厄介さはより強くなる。

あんな風になれたらという、その思いは。

憧れろ。

そんな風に、周りからは強要されているようだ。

…京太郎と5人の成果は、決して比較されてはいない。

しかし前者は称えられず、後者は称えられる。

だから、羨ましくなる。




                           ―――だが奴は…弾けた。












咲「…」テクテク

咲(京ちゃんが居なくなって、麻雀部は少し寂しくなっちゃったなあ)

咲(数日くらいならって思ってたけど、くらいじゃ済まなかった)


京太郎「…」スタスタ


咲(あ、京ちゃんだ)パァァッ

咲(迷子になった訳でもないのに、なんだろうこの安心感)

咲(…やば、テンション上がってきた)

シュタッ!


京太郎「…」

タッタッタッ...

咲「…きょーちゃーん!」

京太郎「…」

咲「京ちゃんってば、ねー聞いてるのー?」

京太郎「…」

咲「…ねーってばー!」

京太郎「…」クルッ

咲「…え?」

咲(あれ…京ちゃんだっけ…なんか右目に眼帯とかしてるんだけど……)

京太郎「…るな」

咲「え?」



京太郎「…俺に、話しかけるな。俺の…この呪われた右目が、疼いてしまうだろうが……!」

咲「」

京太郎「…分かったか。もし警告を無視すれば、たとえお前でもどうしちまうか分からん」

咲「」

京太郎「…では、さらばだ」スタスタスタ


 ■

咲「…」ズーン

和「えっと…どうかしたんですか?」

優希「元気ないじょ」

咲「…京ちゃんが」

和「須賀君がどうかしたんですか?」

優希「犬の奴、元気にしてたかー?」

咲「……」

咲「…これ、京ちゃんです」

 右目には眼帯。

 額には包帯。

 耳には髑髏のピアスという風体だ。

和「」

優希「」





 そのころ、生活指導室では…

「…いい加減、その珍妙な格好を止めなさい」

京太郎「断る!」

 教員たちが代わる代わるでこじらせた彼の面倒を見ているのだった。


>>149 ―――だが奴は…弾けた。→ ―――そして奴は…弾けた。


 ■

京太郎「…」

「おい須賀…聞いているのか、須賀!」

京太郎「…聞いているさ」

「なら質問に答えろ。その珍妙な姿は何だ?」

京太郎「……」

「…黙ってないで何か言え」

京太郎「……」

京太郎「―――答える必要は無い」

「いいから答えてくれよ!」

「麻雀部のお前に奇行なんてされたら、どうしたって見過ごせないんだよ…」


京太郎「…それはアンタらの都合だ。俺には関係無い」

「何を馬鹿な…」

「お前が麻雀部でなかろうが、どの道見過ごせはしない。常識的に考えて…」

京太郎「…常識、か」

京太郎「その常識が、俺を幸せにしてくれるのか?」

「常識は、自意識を保つための盾だ」

「…社会において、異質なものとして排除されやすくならない為のな」

京太郎「ならばあの5人も異質だろう」

京太郎「特に咲の奴はな…それこそ世界に名を馳せる事を期待されるレベルで」

「……」

「…そんな真似をしても、お前は宮永のようになれんぞ?」


京太郎「―――そんな、分かりきった事を言って!」

京太郎「俺に全てを諦めろって言うのか、アンタ達は!」

「…冷静に現実を見ろと言うことだ」

「君の麻雀暦からして、そんなことはどだい無理でしょうに」

京太郎「…だからって」

京太郎「だからって…はいそうですかって諦められる訳、ないだろうが…!!」

pipipi...

京太郎「む、これは…」

「…意味深に振舞わずに早く出ろよ」

ピッ

京太郎「…俺だ」


『ヌル、こちらアインスだ』

京太郎「…お前か」

『どうやらあの男は、俺たちとやる気らしい…』

京太郎「ふむ、やはりな」

京太郎「何となくだが、奴とは相容れないものだと確信していたよ」

『…ああ、俺もだ』

『優れた雀士と言えど、所詮は地球人類だ…我々の理想など理解は出来まい』

京太郎「…ああ、分かってる。あいつなりの考えだな…」






「『ラ・ヨダソウ・スティアーナ』」


京太郎「…」

京太郎「…それが世界の選択、か」

「…何言ってんだ?」

「早く正気に戻って、それからとっととハンド部に転入してくれ」

京太郎「…それもいいかもしれないな」

京太郎「だが、今の俺に与えられた役割は…そんなことではない」

シュタッ!


     ( \/ /_∧   <./|   /|       /\___
     ヽ/ /Д`/⌒ヽ  / .| / /     /    //
      / /\/ ,ヘ  i   ̄ > \_/   /____//
      し' \_/    i  />      ̄ ̄ ̄ ̄
         i⌒ヽ  ./   ̄>__         .|| |::
     /⌒ヽ i  i  \(    .|/  / /\    .|| |::
     i    | /ヽ   ヽ  ∠__/   ̄       .|| |::
     ヽ ヽ| |、 \_ノ  >   <>       || |::
       \|  )  ̄  ./V       ___    ..|| |::
____  .ノ ./⌒)∧ /  ...____[__||__]___||___
     / し'.ヽ ( .∨    /\________|__|

    //    し'  / /\   ̄:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


京太郎「…俺は、俺の役割を果たす」








「…むう、あれが元ハンド部の実力か」

「やるじゃないか」

「麻雀を覚えた事で、その身体能力は更に増したらしいな…」


シュタタタタタタタッ

京太郎「…」

 『あの男』

 『所詮は地球人類』

京太郎(…宇宙からの侵略者、か)

京太郎(どうやら奴らは地球人類すべてを討つ気らしい…だが、そんな事はさせてたまるか)

京太郎(『所詮は』などと敵を蔑む者が、討つ覚悟など持っている筈は無いのだ…)

京太郎「…」ギリッ

京太郎(―――討っていいのは、討たれる覚悟がある奴だけだ!)


「…遅い」

「ヌルの奴は何をしている…この計画に、失敗など許されないのに」

「慢心、という奴か」

「そのようだな。仮にも今回のターゲットは、あのお方に匹敵する程なのだがな」

「…ミヤナガ、サキ」

「アレを手に入れれば、地球の浄化はより捗る事だろう…」


京太郎「…ここにいたか」


「…何者だ」

京太郎「おいおい、誰だはないだろう。俺だ、ヌルだよ」

「ありえない。なぜならお前の雀力は、せいぜい5アーデルハイドに過ぎないのだから」ピピ...


京太郎「…試してみるか?」スゥ...

「むっ!?」

「…これは、ヤーパンにおいてNINJAと呼ばれる者の業か」

 …雀士とは、戦士。

京太郎「これで、どうだああああぁっ!」

「何ッ、いつの間に下…をうっ!!」

「フュンフがやられた!?」

 実力行使に抵抗できぬ者では、決して生き残れない。

 そもそも、麻雀とは軍事に代わる新たな闘争のシステム。

 故に、麻雀で覇を競う者は…もれなく戦闘力が高い!

中断


昔話をしよう。

時は16世紀。天から日本にひとつの遊具が舞い落ちた。

「麻雀」

この遊戯は老若男女などを問わず、爆発的に広まった。

無論、それは全国の戦国大名たちにも。

その虜となった彼らは、武器を捨てて牌を握ることになる。

戦よりも、麻雀に命を懸けた武将達。

その志は滅んでおらず、社会構造の根幹として今も残っているのだ。


麻雀は、さまざまな異能持ちを引き寄せると言われている。

甘いものを食べると能力が上昇する「織田信長」。

矢が刺さったりしても命に別状の無い「豊臣秀吉」。

片目を失って以来、牌などが透けて見えるようになった「伊達政宗」などなど。

だから人が消えたりしても、本来それは何ら不思議な事ではない。

しかし原因不明なのも事実。

異能に関するエピソードは悉く伝説と化し、普遍なものではなくなっていった……。


今はオカルトと呼ばれる異能。

それを否定する立場にあるのが、デジタル。

だがデジタルも一枚岩ではない。

オカルトとされるもの、その原理を究明し実用化しようとする者達もいる。

デジタルと言う概念が生まれるよりも、ずっと前から。

…一説によれば、麻雀は10世紀以前に存在していたとされる。

真相は定かでないが、あらゆる宗教には少なからず麻雀が影響しているのも事実。

ローマ教皇の選出に麻雀が用いられるのは、その最たる例だ。

教皇は、神の代行者としてある程度の神格を有していなければならない。

およそ人の領域ではない力を。

それに習ってか、国の為政者達も麻雀によって決められるのが世界の慣習と化している。


麻雀は世界中に浸透している。それは間違いない。

だがその割に流行ってもいない。

…理由の一つに、異能による差別の抑制がある。

異能持ちとそうではない者が、一方を虐げ…あるいは虐げられる事態。

そんなことは幾度となくあったし、今でもなくなっていない。

麻雀だけが人間の価値を決めるディストピアは、半世紀ほど実在していた。

そこでなら、須賀京太郎は間違いなく奴隷の立場であったろう。






…ならばこそ、奴隷でないはずの彼が改革を望んだのはあまりに皮肉。

「していた」

そのように形容されるであろう地獄への道を、躊躇うことなく突き進んでいく様は…見る者に哀れみさえ感じさせる。


「…おのれっ!」

仲間を倒され、憤った集団の一人が京太郎を迎え撃つ。

反応もその後の動きも迅速。

迷いなく振るったナイフは、間違いなく敵の背中を袈裟斬りにした…そのはずだった、が。

京太郎「…ふん!」

「!?」

京太郎は難なくこれをさばき、投げ飛ばす。

そして、

京太郎「はああァァァ…、もらったァッ!」

手からオーラのようなものを出し、それを背中に直撃させた。

「ぎ…」

ほんの少し、うめき声をあげる敵。

苦痛で顔を歪ませる間もなく、彼女の意識は刈り取られた。


京太郎「…この程度じゃねえだろ」

不満げな声色だった。

片方のグローブを外し、それを集団の方にぶらつかせる。余裕綽々といった所か。

「むぅぅ…クソジャップが!」

「――待て」

「待てるかよ!こちとら二人もやられてんだぞ!」

大柄の男が声を上げると、

京太郎「くうゥゥッ!はあッ…はあッ……」

京太郎が突然苦しみだした。

手からは禍々しいオーラが溢れ、ガクリとうなだれている。

「…どういうことだ」

「力の反作用だな。どうやら奴は、邪気眼に目覚めて間もないらしい」

「邪気眼…何だそれは?」

細身の男が言う「邪気眼」なる言葉は、大柄な男は少しも知らなかった。

「…持たぬ者には分からんだろう。まあいい、今のうちに撤退するぞ」

それを意に介する事なく、彼は撤退を進言する。

「撤退だと!?」

「作戦は失敗だ。俺達二人だけでは実行困難だからな」

「……」

不本意ではあるが、納得したというような顔。

大柄な男は倒れた仲間を背負うと、その巨体に見合わぬ俊敏さでその場を後にした。


細身の男が踵を返すと、

京太郎「…ま、待てよ……」

ようやくオーラを押さえ込んだ京太郎が、必死な形相をして彼を引き止めた。

「……」

男はただ沈黙していた。

嘲るようでも、哀れむようでもない目で、京太郎の方をじっと見ていた。

まるで…何かを懐かしむかのように。

京太郎「…お前らのそのゴテゴテな格好、何なんだよ?」

「これは軍服だ。それにお前の格好だって…そのポンチョに、一体何の意味がある?」

京太郎「マントの代わりさ。マントほどヒラヒラはしないけど、動きやすいし」

「非合理的だな」

京太郎「かもしれねーけど…俺はこれ、結構カッコいいって思ってるぜ」

京太郎「…それはお前だって同じだろ?お前だって、カッコいいと思うからその服を……」

「……」

「…一理ある、と言っておこうか」

その時彼らは確かに分かり合っていた。出自から何もかもが違い、敵同士の二人が。

まして、京太郎が邪気眼に目覚めてなければ出会いもしなかった。

麻雀は…関係あるんだかないんだか。


「…ではな」

京太郎「…貴様らの目的は何だ?」

「さあな…」

京太郎「ふん…まあいいさ、どうせろくでもないことだろう?」

「何とでも言え…だが」ガッ

京太郎「……」

「お前が我々の前に立ちはだかるなら…その命を…罪を、穿つ!」 ゴ ゴ ゴ ゴ

京太郎「…やってみろよ。俺はどこまでも…足掻いてやる!」







―――ズドン。


「――遅かったじゃないか」

「麻雀もロクに打てん奴にやられおって…情けない」

「…面目次第もない」

「まあええわ。ここは私が時間稼ぎしとくから、はよ行き」

「…恩に着る」

シュタッ!

京太郎「ま、待て!」

「させへん…まぐれの快進撃もここまでや」


            t------‐‐‐‐‐‐--------ハハ
           r: : : : : : : : : : ハヘ : : : : : : : : : : ヽ
         /: : : TTニニニニi iニニニニフフフ : : : : :ヽ

         { : : : : : : : :   { 卍 }   : : : : : : : : : : :フ
           ヽ : : : : : : : : : : : :: : : : : : : :: :: : : : : : : /
            ,|ニニニニニニ::ト::ニニニニ::イ::::ニニニニニニニr
          |ニニニニニ:::::ハト{ ○ }イイ::::ニニニニニニニ|

          ,'==========================k-゙.
            ノ\_____________________________________r,'::!:::.!
          | !>::|/ |'|'-l::::::::/;:/_ l:::/!ヽ:::::!::.:|<!
            j:´|:::::/リzチ=x|::/ /,===!x、|:/|::::':::::!: :.|
         ,': ハ:::l〈 tc::ij:::}´   ´{c::ij:::ヌ</:/::::::!: :.|    悪いけど、総統閣下の為に死んでもらうで!

         /:l:::::ヽ:! ゞー''     v_:''_;ノ〃::::::::,':: : :!
          /: :!::::::::{.! ,, ,,   ,       ,'|:::::::::!::: : :l
.         /: :.:|::::::::`l         " " ,'_j:::::::::!:::: : : 、
       /: : : |::::::::::::::、,   ヽ~     ノ::,':::::::::l::::.: :ヽ:ヽ
       .'::ハ: : |:::::::::::: :::≧:...    .._:<::::/::::::::/::::::.:.::::|ヽ!
      |:' l: :.!:::::::::::::::::::::::λ! ー '´_,,レヽ::/:,':::::/L::-─、! i!

      |'  |:,r=、:、::::::::::_:ノ >、 r<´   7イ:::/;'  /..- 、 i!
          // 我 ``\  ノ(卍)、ヾ >、 //:'ニ;'  ハ.ヽ  li!
       //   が 闘 \=X=K=、ニ_Y::ニニニ! ..,' !   |
      /二ニゝ     争 //「|:トヽ、7/:ニニニ| .,'l====卍=|
    r'´-‐ 、\       ,.チ/|| |:| \'./|::ニニニ|.,' |      |


京太郎「…千里山の園城寺怜」

怜「へえ、私のこと知っとったんやな」

京太郎「インハイの中継見てましたし…一応俺も、あの大会には行ってましたからね」

怜「…そうなんや。一度も見かけたことあらへんけど」

京太郎「恥ずかしながら、出場選手になれるような力はないんで」

怜「どうりでな…アーデルハイドが低いわけや」

怜「そんな子に不覚を取られてまうとは、私の未来視でも予測出来んかった…」


京太郎「…未来視、か」

京太郎「そんなものが俺にもあったら、今頃ここにはいなかっただろうかもな…」

怜「もしもの話をしてもしゃあないわ。それに私も、君とそんなに立場は変わらんで」

怜「なにせ団体戦の後、私には未来が見えんようになってもうたからな…」

京太郎「何?」

怜「あの力が無くなった私なんか、一軍は勿論二軍にもおれへん…」

怜「個人戦には元々出場してへんかったし、三年生やから影響はせんかったんやけどな」

京太郎「……」

怜「…何もかもダメになってもうたって気がしたわ」

怜「竜華とセーラ…それと私の三人で一緒にインカレを目指すことは、絶望的になったんやから」

京太郎「あてにしていた力が消えて、がっかりしたか」

怜「それもある。せやけどそれ以上に、以前ほど勝てなくなって麻雀を楽しめなくなったんが辛かった」

京太郎「麻雀始めてたかが数ヶ月の俺が言うのも何だけど…その気持ち、少しは分かる気がします」

京太郎「なにせ俺は勝率が3%あるかどうかって、そんなレベルですから…」

怜「…どんだけ打ったんや?」

京太郎「部活では100戦ほど、ネット麻雀では300戦程度…ラス率は8割超えてます」

怜「…君、ホンマにツイてないんやなあ」

怜「そんな戦績やったら、麻雀なんか打ってても面白ないやん…」


京太郎「ええ、面白くは無いっすね」

京太郎「…正直もう止めちゃってもいいんじゃないかって、そんな気もしてますし」

怜「ならもう止めてもええんやで?」

怜「何の因果でここにいるんか知らんけど、本当なら君が関わったってしゃあないんや…」

怜「…『もたざるもの』の君では」

京太郎「だが俺にはこの邪気眼がある」

怜「残念な事に、機関の研究ではそれが無意味やって結果を出してる」

怜「麻雀以外、それも運動系の競技でならかなりの成果を出せるみたいやけど」

京太郎「……」

怜「身体能力、そして執念だけであそこまで戦えたんや。悩む事なんかあらへんよ?」

怜「―――止めてしもうたらええやん、麻雀」

中断


京太郎「…俺は」

怜「……」

京太郎「俺は、麻雀を止めたりなんかしない!」

怜「!?」

京太郎「まだ…諦めるわけにはいかないんですよ」

怜「…分からんなあ」

京太郎「俺にだって分かりませんよ。止めてしまった方がいいのは変わらないでしょう」

京太郎「園城寺さんが言ってることは正しいし、俺はそれに従うべきなんだ…」

怜「そうしないのは、どうして?」

京太郎「…諦めたくないってだけです」

京太郎「仲間には、いい夢見させてもらいました。そしたら俺、今度は自分がその夢を叶えたいだなんて思っちゃって」

京太郎「叶いっこないって、鼻で笑われるだけの願いでしかないのに…」


京太郎「…羨ましかったですよ」

京太郎「仲間の才能が妬ましくて、身もだえしそうになってしまう」

京太郎「だから少しでも追いつきたくて…俺なりに、色々頑張ってみたりして……」

京太郎「けど、無駄だった」

京太郎「地を這う蛇がどれだけ鎌首をもたげても、空を飛ぶ鳥には届かない…」

京太郎「...Wanna be」

京太郎「今の俺を物語るのには、この言葉がもっとも相応しい」

京太郎「咲達の打つ姿を見て、それに憧れて…少し足掻いただけの俺には」

怜「…頑張るウサギさんが相手やからな」

怜「それに張り合おうと思ったら、多少は無茶をせなあかん」

怜「けど…今の君ではどうやったって、宮永咲の所へは行けへんわ…近づけさえしない」

怜「…君が憧れてるものは、そのくらい大変な存在なんや」


怜「―――だから、な」

反応する間もなく、京太郎は頬に傷を付けられた。

その後には、やはりズドンと言う音が響く。

怜は銃を…それどころか、殺傷力のある武器自体持ち合わせていない。

…京太郎は、先ほどまで立っていた場所を見る。

棒の様なもの。

だが彼にはそれが何かはっきり分かった。

麻雀部員である彼には、非常に馴染み深く…そして、守らなければならないものだ。

―――点棒。

それが彼女の…園城寺怜の、最大の武器。


怜「今のは警告や…次は外さへん」

その目は京太郎の額を見据えていた。

先ほどの投擲は実に正確だった…ならば、今しがたのように狙いを外したりはしないだろう。

その事実に彼は身を震わせる。

あの細身のどこにそんな力がとか、そもそも何故点棒なのか…そんなことを考える余裕はない。

あまりにもリアリティに欠けた現実。

それに浸っていたから京太郎は気付かなかった…自身が、死地に赴いている事実に。

幸か不幸か、彼は運が良かった。

あの集団が油断していなければ、間違いなくやられていたのは京太郎だ。

怜「麻雀に…宮永咲に関わらなければ、五体満足は保障する」

この提案に嘘はない。

彼女は人を殺した事などないし、殺したくもない…それは洗脳された今でも変わらない。

ただ…

怜「もし君を殺す事になっても、それは私自ら望んで選んだ道…ためらいもない」

洗脳された事自体は、園城寺怜自身の意思。

無力な者に戻って、仲間と共に歩めなくなることを拒んだ結果だ。

ここまで



 【萩原さんと!】


ハギヨシ「須賀君は手際がいいですね」

京太郎「そうですか?」

ハギヨシ「それに、聞いたことはきちんとこなしてくれます」

ハギヨシ「こちらの意図が伝わらないということも、ままありますからね。しかし貴方にはそれがない」

京太郎「いやいやそんな…褒めすぎですよ、ハギヨシさん」

ハギヨシ「…お嬢様はそうでなかったですから」トオイメ

京太郎「え、龍門渕さんがですか?」

ハギヨシ「はい…」

京太郎「変だなあ…あの人って大抵のことは出来ますよね」

ハギヨシ「勿論ですとも。なにせ彼女は、龍門渕家の次代当主ですからね」


京太郎「そんな人が利かん坊になるとは思えませんが…」

ハギヨシ「なまじ何でもお出来になるから…ということでしょうか」

ハギヨシ「兎にも角にも料理だけがその、あの方にしてはとても不出来で」

京太郎(かなり言いよどんでるな…)

京太郎「で、でも流石に不味いってことは無いでしょう?」

京太郎「ここには何度かお邪魔させてもらってますけど、裁縫とかも普通にこなしてたし」

ハギヨシ「…須賀君」ズイッ

京太郎「は、はい!?」

ハギヨシ「どうしたって無理なものは無理なのですよ。ゼロに何をかけても、所詮はゼロです」キッパリ

京太郎「…珍しい」

ハギヨシ「何がですか?」

京太郎「ハギヨシさんって、龍門渕さんのことはいつも褒めちぎってますよね。それがどうして…」


ハギヨシ「…須賀君」

京太郎「すみませんハギヨシさん…失言でした」

ハギヨシ「分かっていただけるのなら」

京太郎「……」

京太郎「…あんな人でも、出来ない事はあるんですね」シミジミ

ハギヨシ「誠に遺憾ながら」

京太郎「…」

京太郎「ハギヨシさんにも出来ない事って、あるんでしょうか?」

ハギヨシ「…さあ」

京太郎「ハギヨシさんに出来ない事って、あんまり想像付かないですけど」

ハギヨシ「どうでしょうね…」

京太郎「…俺好みの女性になってくれたら、なんて」

ハギヨシ「それだと元は男ですが…」

京太郎「ハギヨシさんなら、多分大丈夫な気がして…」ボーッ

ハギヨシ「…早まってはいけませんよ?」


京太郎「冗談です、冗談」

ハギヨシ「眼はマジでしたが」

京太郎「けど、ハギヨシさんみたいになりたいとは思いますね」

京太郎「あの仕事ぶりは格好いいですからね…見てて惚れ惚れする」

ハギヨシ「…恐縮です」

京太郎「それに、あんな風に出来たら女の子にモテる気がして」

ハギヨシ「モテませんよ?」

京太郎「えっ」

ハギヨシ「いや、女性と縁はありますけれども…上手くいくかどうかは分かりませんね」

ハギヨシ「ですが私の場合、相手のコンプレックスを刺激してしまうことが多かったもので…」

京太郎「えっ…ろくに気遣いしなかったとか、そういうことではありませんよね?」

ハギヨシ「…優しさは時に人を傷付けます」

ハギヨシ「私はそれがどうも分かっていなくて、結果相手を惨めにしてしまうんです」


京太郎「…そういうこともあるんですね」

ハギヨシ「私には、自分がやらなくてはという気持ちが根付いているのですよ」

ハギヨシ「それは執事の職業病かもしれませんが…ただ相手に尽くすがままと言うのも、それはそれで身勝手なもの」

ハギヨシ「極端な話、尽くされる側を貶めることにもなりかねませんからね…」

京太郎「難しいなあ」

ハギヨシ「『この人には私がいなくちゃ』みたいな思考にならなければ、問題ないかと」

京太郎「……」

京太郎「…それ、ダメンズにハマる女性の思考ですよね」

ハギヨシ「恥ずかしながら、私もそれを笑える立場ではありません」

京太郎「…どうしよう」

京太郎「彼女を作るコツとか、ハギヨシさんには色々聞きたいことがあったのに…」

ハギヨシ「はは、とんだ反面教師でしたね」

京太郎「悲しい顔して言わないでっ!」


ハギヨシ「…ただ、アドバイスなら出来ます」

ハギヨシ「時に須賀君、貴方に好きな人はいますか?」

京太郎「あの、出来たらノーコメントで」

ハギヨシ「はぐらかさないで下さい。貴方が誰かと向き合うなら、まずは自分と向き合って下さい」

ハギヨシ「自分から目を逸らせば、結局は相手の気持ちからも目を逸らすでしょう」

ハギヨシ「―――私もそうでしたから」

京太郎「…います」

京太郎「俺、好きな子がいるんです。高嶺の花みたいなもんですけど、どうしても諦められなくて」

ハギヨシ「『諦められなくて』?」

京太郎「何ていうか…そういう対象としては見られてないんですよ。いや、そもそも眼中に無いのかも」

京太郎「同じ麻雀部だから、同じ部員として気遣っては貰ってますけど」


ハギヨシ「…須賀君はそれをどう思いますか?」

京太郎「どうって、ありがたいと思ってますよ」

京太郎「優しくしてもらえて…それだけで、心が満たされてしまうんじゃないかって」


ハギヨシ「―――そこまでです」


京太郎「は…」

ハギヨシ「その先は言わなくていい。言ってしまえば、貴方はもっと悲しい思いをする」

京太郎「……」

ハギヨシ「先ほど私は、優しさが誰かを傷付けることもあると言いました」

ハギヨシ「今の話はまさにそれだ。彼女には、貴方の想いに答える気持ちが…」

京太郎「――やめてくれっ!」

ハギヨシ「……」

京太郎「それ以上は、何も言わないでくれ…お願いだ、俺は諦めたく」


ハギヨシ「須賀君!」カッ

京太郎「!?」

ハギヨシ「―――もう、やめましょう」

ハギヨシ「この先に…未来に希望など無いのです。あるのは絶望だけ」

ハギヨシ「それは須賀君、貴方が一番知っているはず」

京太郎「…だけど俺は」

ハギヨシ「諦めていないのは、絶望しつつも希望を失っていないからだとでも?」

京太郎「なっ…」

ハギヨシ「ですがそれはただの欺瞞。貴方は既に、その愛を諦めている」

ハギヨシ「須賀君、貴方は先ほどこう言いましたね。優しくしてもらえただけで、心が満たされる気がしたと」

ハギヨシ「―――そんなはずはない」

ハギヨシ「好きになった相手と言うのは、自分が幸せにしたい者…そして、幸せを共にしたい者のこと」

京太郎「――――ッ!」

ハギヨシ「なのに貴方は、その相手に幸せにしてもらって…それで満足しようとした」

ハギヨシ「与えられただけで満足し、飢えることを忘れようとした者が…誰かと求め合うなどありえない」

ドンッ!

ハギヨシ「……」

京太郎「…うっ、うう……」

ハギヨシ「多くから好意を持たれ、想い人の目を惹こうとしても…それは無駄だ」

ハギヨシ「それでは誰も…何より貴方が幸せではない。幸せになど、決してなれはしない」

ハギヨシ「―――だから、今は泣きなさい」

ハギヨシ「誰に遠慮する事なく、思いっきり。惨めだった時間はもう終わりです」

ハギヨシ「…さあ」


京太郎「―――ああ、畜生」

京太郎「ハギヨシさんが優しすぎて…女だったら、どうにかなっちまいそうだ」

ハギヨシ「……」ゾクッ

京太郎「……」

京太郎「けど俺…泣いたりなんかしませんよ」

京太郎「俺はこの想いを決して忘れない。辛いからって、上書き保存したりしない」

京太郎「あんな風に誰かを好きになれたことは…俺にとって、間違いなく宝物だから」

京太郎「…本当に、好きだったんだ」

京太郎「もう諦めちまったけど、俺はアイツに…和に振り向いて欲しくて……」

京太郎「……」

ハギヨシ「……」


 ―――その場をしばし静寂が支配した。

 男二人は空を見上げ、ただずむ。雲一つない空を…恨めしげ、或いは妬ましげな顔で。

 二人の心は曇っていた。

 ああ、空はあんなに青いのに――彼らは確かに、そう訴えかけていた。

 誰ともなしに。


 ■

京太郎「……」

京太郎「…なあ優希」

優希「だじょ?」

京太郎「お前ってさ、恋したことってあるか?」

優希「…さーな」

京太郎「はは、だろうな。お前が恋してるのは、きっとタコスだろうし」

優希「何だとぅ!」

京太郎「タコスを片手に凄まれたってなあ」

優希「…むっ」イラッ


京太郎「まーそういきりたつな。むしろ俺は、それをありがたいって思ってんだ」

優希「…どういうことだー?」

京太郎「失恋したんだよ、俺」

優希「……」

京太郎「俺って臆病でさ…告白すら出来ないまま、その恋をダメにしちまった」

京太郎「猶予は十分にあると思ってた。けど実際は、半年にも満たなくて」

京太郎「…俺は置いてきぼりにされたよ。あの子はもう、どこか遠くへ行ってしまった」

優希「…そっか。で、お前はどうする?」

京太郎「どうすっかな。とりあえず今は、恋とかこりごりだ」


優希「どうしてだじょ?」

京太郎「疲れるからさ。それに俺、失恋のことを忘れられないんだ」

京太郎「失恋した事より、何もしなかったことが情けなくて…辛い」

優希「…犬にしては、随分と重い話をするじぇ」

京太郎「まーな。つか犬呼ばわりはやめろって」

優希「それはお前の心がけ次第だじょ!」

京太郎「手厳しいこって」

優希「躾は厳しくしないとなー」

京太郎「おお、くわばらくわばら」


優希「…一つ聞いてもいいか?」

京太郎「いいけど」

優希「京太郎、お前の好きな相手って…私も知ってる誰かか?」

京太郎「…ああ」

京太郎「お前と違ってとても女らしいし、綺麗な子だったよ」

優希「何それ嫌味かっ!」

京太郎「お前にゃ犬呼ばわりされてるしさ、その仕返し」

優希「それは、その…まあ、仕方ないかもしれないけど……」

京太郎「まあ、嫌とも言ってないけどな」

優希「うん?」





京太郎「…お前とは、ずっとこのままがいいんだ」

京太郎「こんな風に安心出来る相手、部活じゃお前くらいだからさ」



 ■


優希「……」


 『こんな風に安心出来る相手、部活じゃお前くらいだからさ』


優希(…『部活じゃ』って、京太郎は確かにそう言ったじょ)


優希(と言うことは、やっぱり麻雀部の誰かのことだろうか…私以外の)


優希(…本気、だったのかな)


優希(のどちゃんのこと、アイツは本当に好きだったんだろうな)


優希(そうでなきゃ…あんな辛い顔、絶対出来ないじぇ)



優希「……」


優希「…羨ましいじょ、京太郎」


優希(そんな風に誰かを想える、お前の事が)


優希(…私には分からないじぇ)


優希(そんな辛い思いをしても、忘れようとする気はなさそうだったお前が…)


優希(―――京太郎)


優希(私が恋を知ったとして…その相手が、もしもお前だったなら)


優希(そのときお前は…私と今のままでいたいお前は、どうなってしまうんだろう?)

続かない



 【少年は旅に出ました】


ガチャッ

咲「おはようございます」ペッコリン

和「あ、咲さん!」

優希「丁度いい所に来たじぇ!」

咲「えっと…何があったの?」

まこ「京太郎が逃げ出しおった」

久「部活どころか、この長野からね」

咲「えっ…京ちゃんなら、今朝方通学路で会いましたけど」

まこ「何じゃと?」

咲「その時はどこか遠くへ、なんて様子ではなかったですし…突発的なものかと」

和「ふむ、計画性ゼロの犯行ですか」

優希「のどちゃん、それじゃ犯罪者呼ばわりだじょ」


久「咲…須賀君の逃げた場所に心当たりはないかしら?」

咲「逃げた場所って言われても…」

久「例えばほら、会話の中で話題になった場所とか」

咲「うーん…あっ、そうだ!」

久「何か心当たりが?」

咲「昨日は京ちゃん、>>210の話をしてました!」

熟女


久「…熟女ですって?」

咲「はい、確かにそう言ってました」

まこ「幼なじみ相手とはいえ、京太郎もよう話したりするのう…」

咲「いえ、私相手には話してません」

まこ「うん?」

咲「同級生の友達とそれを話してました。私はただ、その後をつけてただけで」

和「す、ストーキングですか…」ドンビキ

優希「咲ちゃん、どうしてそんなことをしたんだじぇ?」

咲「えっとそれは…>>212だから」

京ちゃんの匂いに惹き付けられて…


久「なるほど、匂いフェチね」

まこ「…ふむ、何となく分かるのう」

優希「一理ある。アイツがいると安心出来るじょ」

和「…いやいやいやいや」ブンブン

久「和は違うの?」

咲「やっぱり和ちゃんは、京ちゃんの事苦手なのかな?」

和「いや、そういう問題じゃないですよ…ストーキングは犯罪です」

和「犯罪の理由に納得するのは、友達としていかがなものかと思いまして」


咲「…和ちゃんは真面目だなあ」

和「真面目というか、それが普通です!」

優希「私服がその…マイノリティなのどちゃんがそれを言ってもなー」

和「酷っ!優希ったら、私の格好をどんな風に見てたんですか!?」

優希「うーん…モノホンの痴女!」

和「」ガビーン!

久「…真面目ちゃんの和も黙ったことだし、話を進めましょうか」

まこ「そうじゃのう。じゃあ咲、話を続けてくれんか?」

咲「はい。京ちゃんは、年上の女性に甘えたいって言ってました」

咲「熟女とは言ってましたが…実際は20代後半くらいの相手に」

まこ「いやに具体的じゃのう」

久「…ひょっとしたら、麻雀とも関係があるのかも?」


咲「!」

久「その反応を見る限り、図星か」

咲「…はい」

久「多分だけど…須賀君は麻雀プロの話をしてたんじゃない?」

咲「う…流石は部長、その通りです」

まこ「麻雀プロの話か…一体何を考えているのやら」

優希「…そうか、分かったじょ!」

久「何が分かったの?」

優希「京太郎の奴は、プロ相手に麻雀を教わりに行ったんだじぇ!」


久「…確かにそれはあり得るわね」

まこ「京太郎への指導、中々出来てないからのう」

久「あら、それはまこに任せたはずだけど」

まこ「…練習中に、誰かさんが京太郎に頼みごとせんかったらの」

久「うっ、それは…」

まこ「アイツもそれを無視すればいいのに、ついつい聞いてしまうから…」

久「そうよそうよ!」

まこ「部長、アンタは反省せい」

久「…はい」



 一方その頃…


京太郎「たのもー!」


「…誰?」


京太郎「>>218さんですね?俺、清澄高校麻雀部の須賀京太郎っていいます!」


「…麻雀部員が何の用?」


京太郎「俺に麻雀を教えて下さい!出来る事なら何でもしますから!」

すこやん


健夜「指導を頼まれたことはあったけど、家に押しかけられるとは思わなかったなー」

京太郎「…それだけ切羽詰ってるんです」

健夜「だろうね。でなきゃこんな真似はしないだろうし」

京太郎「非常識なのは分かってます…だけど俺、どうしても強くなりたい!」

健夜「…須賀君だっけ。確か、清澄の麻雀部とか」

京太郎「はい…あ、これは学生証と部活の集合写真です」スッ

健夜「ふむ、どうやら嘘ではないみたいだね」

京太郎「じゃあ…」

健夜「まだ教えるって決めた訳じゃないよ?それに、教えるのは私でなくても…」

健夜(…この子からは何も感じない)

健夜(見た目はなかなか悪くないけど、多分すぐに壊しちゃうよ…そんなのやだし)

京太郎「…貴女じゃなきゃダメなんだ!」

健夜「え…」

京太郎「だって俺、>>220

藻女には緊張しないから


健夜「…喪女?」

京太郎「…失礼ですけど、小鍛治プロには浮いた話なんてありませんよね」

健夜「…」ムカッ

健夜(失礼な!それも遠慮気味な感じて言うとか、ムカつく!)プンスコ

健夜(…私の自業自得でもあるけどね)

京太郎「…あの」

健夜(ただ、このまま馬鹿にされたんじゃ収まりがつかないよ)

健夜(…だからさ、ちょっとくらいは驚かせたっていいんじゃないかな!)


 ■

ガチャッ

京太郎「…えっ」


                 /:::::::::::::/:::::::::::::::: /::::::::::/:::::::::::::::::::::::::::ハ
             ,::::::::::::::::::::::::::::::::::://|/ア::::/|/|::::::|::::::::::::.

             ,::::::::::::::::::::::::::::::::::/-―- 、 ̄   |/И:::::::::|
            ,:::::::::::::::::::| :::::::::::/               И/ ::|
            ,:::::::::::::::: __| ::::::::: |斗午トミ      `ヽ |:::::::|
           ,::::::::::::: /⌒| :::::::: イ!ノ:::}゚|      __  / ::::::|

              .:::::::::::::::{  |:::::::::: 代__ン      ア午ミ .:゙! ::::: |
           .::::::::::::::: \_」::::::::::::|          {ノ:リ イ゙:::| :::::::|
              .::::::::::::::::::i::::: |::::::::::::| 、::、     . ゞ゚ /::::::| :::::::|
           .:::::::::::::::::::i::::: |::::::::::::|         、::、.::::::::::| :::::::|
             .:::::i:::::::::::: i::::: |::::::::::::|    ー ‐     .:::::::::::::| :::::::|
         /::::::i:::::::::::: i::::: |::::::::::::|\      イ:::::::::::::::::| :::::::|

          :::/|::i:::::::::::: i:::::_|::::::::::::|   >‐=七チ:::: i::::::::::::::::::| :::::::|
         |:::i人i ::::::::__jン^|::::::::::::| / ::::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|
         |斗sヤ¨´    ∨\八 \:/__/|/|::::::::::::::/:::::::::::j


健夜「どうしたの?そんな驚いたような顔をして」

京太郎「え、いや…」オロオロ

京太郎(何でいきなりドレスなんて…テレビと全然違って見えるんだけど)

健夜(ふふ、驚いてる驚いてる!)

健夜(このイブニングドレスとスカーフ、結構評判良かったんだよねー)


健夜(…こんなことで着るのは正直アレだけど、見くびられるよりマシだし)

京太郎「……」

健夜(それにしても、さっきから何も言わないな…やりすぎたかな?)

京太郎「…しい」

健夜「?」

京太郎「美しい…どうして俺は、貴女にあんな無礼な言葉を」

健夜「あの…キャラ変わってるよ?」

京太郎「…どうか弟子にしてください!」

健夜「私って喪女なんでしょ?それでいいの?」

京太郎「喪女なんかじゃない!俺にとって小鍛治プロ、貴女は>>225だ!」

腐りかけの果実(アラフォー)


健夜「…私、それをどう捉えたらいいのかな?」

京太郎「今が最盛期だって意味で」

健夜「腐りかけなんて言われたら、普通は怒られるよ?」

京太郎「…小鍛治プロなら、そうはならないと信じてました」

京太郎「テレビで見るよりずっと余裕があるし、思慮深いと思います」

健夜「…そうかなあ」

京太郎「それに優しい。だからこんな、俺みたいな奴の話を聞いてくれる」

健夜「べた褒めされて…まあ、悪い気はしないね」

健夜「ただ、自分みたいな奴って言い方はどうかと思う。そこまでいくと謙遜にならないよ」

健夜「…私の弟子になりたいのなら、尚更」

京太郎「…!」

京太郎「で、弟子にしてくれるんですか!?」

健夜「いいよ。けど君が見込み違いなら、すぐに見捨てるから覚悟して」

京太郎「…はい。どうかよろしくお願いします、先生!」


 ■

京太郎「今日から修行かあ…なんだかワクワクしてきました!」

健夜「須賀君…朝からテンション高いねー」ボーッ

京太郎「…眠そうですね」

健夜「君が来てから、何故だかお母さんが厳しくなって」

健夜「あーあ…コレじゃあ実家生活の楽しみがなくなっちゃうよ」

京太郎「先生…俺のせいですみません」

健夜「そういうのは止してよ。君が埋め合わせてくれれば、それでいいんだからさ」

京太郎「先生…」

健夜「じゃあ、最初の特訓始めちゃうよ。>>230ね」

おやつ買ってきて


京太郎「分かりました!では行って」

健夜「え、ちょ…」

京太郎「まだ何か?」

健夜(試しに言ってみただけなのに、どうしてこう反応がいいのかな?)

健夜「いや、何買って来てもらうか言ってないし…とりあえずはポイブルでいいかな」

健夜(あれ、口が勝手に…)

京太郎「ポイブルですね。すぐに買ってきます!」

ドヒューン!

健夜「……」ボーゼン

健夜(い、行っちゃった…どうしよう)

健夜(頼みごとなんてするつもりじゃなかった…それに、言わずにいられなくなる何かを感じた)

健夜(…ひょっとしてオカルト持ちかな?)


健夜「…ねえ、須賀君」モグモグ

京太郎「何でしょう?」

健夜「その…さっきから対局見てるけど、自分から進んで振り込んでるように見える」

京太郎「はは、俺ってば下手くそですから」

健夜「そうじゃなくて!どうも君の打ち方って、接待麻雀に似てるんだよね」

京太郎「接待麻雀?俺が?」

健夜「ここにやって来たんだから、そんなつもりで打ってる訳じゃなさそうだけどね」

健夜「…そのままじゃ、一生やっても勝てないよ?」

京太郎「そ、そんなっ!」ガーン

健夜「だから考えたんだけど…ひょっとしたら君、オカルト持ちなのかもしれないね」

京太郎「オカルトって…その、咲や優希たちみたいな?」

健夜「多分そう。今のところ、それは君の邪魔にしかなってないけど」

京太郎「うわ、ツイてねえ…」

健夜「とりあえずどうにかしないとね…試しに>>233しようか」

腹筋


京太郎「…とにかく身体を鍛えればいいんですか?」

健夜「そうだね」

京太郎「ハンドボールやってましたし、多少は自信がありますけど」

健夜「…試してみようか」サッ

京太郎「あれ、何でしょうかその牌?」

健夜「これ、偉い人から貰った特注品なの。試しに持ってみて」

京太郎「へえ…では早速」ニギッ

ズシ

京太郎「お、重っ!!?」

健夜「劣化ウランで出来てるからね」

京太郎「う、ウランって…」

健夜「下手に扱うと燃えちゃうから気をつけて」ヒョイッ

京太郎「は、はい」ガクブル

京太郎(あの牌を束にして持てるなんて、やっぱりプロは凄いんだな…)


健夜「…鍛え方が足りないって、分かったでしょ?」

京太郎「は、はい…」

健夜「オカルトの力はね、身体能力に比例するの。人によって程度は違うけど」

健夜「力に身体がついていかないと、今の須賀君みたいに振り回されがちになる」

京太郎「…全然知らなかった」

健夜「鍛えなくても強い人は強いからね。それに現状じゃただの少数意見だし」

京太郎「だったら俺が、少数を多数にしてみせますよ!」

ズイッ ズイッ

健夜「…そんなにトばすとバテちゃうよー?」

京太郎「ご心配なくっ!」

ウリャアアァァァアァ

健夜(だ、大丈夫かな…)


 30分後…


京太郎「…腹痛い」

健夜「だから言ったのに…」


 ■

「…小鍛治プロが弟子を取った?」

「あくまで噂ですが」

「そう言えば最近、服装が野暮ったくない頻度が増えて…」

「見栄を張る相手が出来たから、か」

「そういうことですね。で、弟子は男か女かどっち?」

「いえ、そこまでは分かってないんですよ」

「福与アナにでも訊いてみたらいいんじゃないかなー」

「…多分知らないと思うぞ?」

「あの人が知ってたら、周りに言いふらしてる可能性は高いだろうからな」



「…なんだか面白そうな話をしてますね」

「あ、>>239プロ!」

「その話、もう少し詳しく聞かせてくれませんか?」

のよりん


 ■

理沙「…というのが、ここにやって来た次第です」

京太郎(…あののよりんが普通にしゃべってる!!?)

健夜「そっちも随分ヒマなんだね…」

理沙「ヒマじゃなくて、退屈」

健夜「いや、一緒だから…少しは口下手マシになったんだね」

理沙「村吉アナに矯正されて…後、三尋木プロにはコケにされた」

健夜「矯正してる所に咏ちゃんが…ああ、何となく想像がついちゃうよ」

京太郎(…いっぱい煽られたんだろうなあ)


理沙「…」ジーッ

京太郎「…何だかむずがゆいな」

健夜「理沙ちゃん…もう随分時間経ってるよ?」

理沙「…もうちょっとだけ」ジトーッ

京太郎「あの、流石にこれ以上は」

健夜「…理沙ちゃーん?」

理沙「…失礼。なにせ彼が>>243だったから」

包茎っぽそう


京太郎「なっ…!」///

健夜「それってセクハラだよー?まあ、須賀君も私に失礼したから因果応報かもね」

京太郎「とほほ…」

理沙「…おねえさんが慰めてあげよっか?」ニカッ

京太郎「!?」

理沙「冗談。そんなことはしない」

理沙「…頑張りようによっては、可愛がってあげるかも」

京太郎(ヤバい…これが咲から聞いたギャップ萌えって奴か)

京太郎(本命ははやりんか戒能プロだったんだけど…このままじゃ俺、浮気性のビッチみたいになっちまうよ……!)

健夜(…なんか身悶えてて怖い)

理沙「…とりあえずさ、>>245してみようよ」

ロシアンルーレット

そろそろ夜勤なので中断します。
では。

生存報告


理沙「まずは少年の運試しということで…はい」ゴトッ

京太郎「いや、はいじゃありませんが」

健夜「ヒロダのシュークリームかあ。これ、昔と比べて値段が上がっちゃったねー」

理沙「…それでも美味!」

京太郎「ですが、この中の一つがお辛いんでしょう?」

理沙「…まあ、そうなんだけど」

京太郎「中には何が?」

理沙「ブート・ジョロキアって唐辛子」

健夜「えっ」

京太郎「…それって、どのくらい辛いやつなんですかね?」

健夜「うーん…一個食べたら、救急車のお世話になるくらいかな」

京太郎「oh...」

理沙「そうなりたくなければ、知覚を駆使して回避すべき」

京太郎(いやいやいやいや!)


京太郎「…うーん」

理沙「嫌ならば、拒んでも構わない」

健夜「単なる思い付きだしね」

京太郎「……」

京太郎(確かに、先生達の言う通りには違いない…だけど)ウズウズ

理沙「…迷ってるの?」

京太郎「それは、まあ。病院送りは怖いんで」

健夜「その割には、なんだかウズウズしてるけどね」

京太郎「先生…確かにそうです。けど、どうしてなんでしょう?」

健夜「…それは勿論、勝負がしたいからだろうね」

京太郎「……」

健夜「きっと須賀君はさ、勝負に飢えてるんだよ。負けてばかりだから尚更ね」

健夜「…こういうのなら、ひょっとしたら勝てるかもって思ってるんじゃない?」

京太郎「……」

京太郎(…なんも言えねー。事実その通りだからさ)

理沙「…図星」

健夜「それじゃあ、いっちょやってみよっかあ」

京太郎「…はい!」



激辛シューは誰の口に?

京太郎→>>257 のよりん→>>258 すこやん→>>259

コンマ?

安価なら全員セーフ
駄目なら安価下

記載ミスっとった…まあ、不定期更新ですしゆっくりやります。

激辛シューは誰の口に?(コンマが一番高い人で)

京太郎→>>258 のよりん→>>259 すこやん→>>260

ふむ…では罰ゲームはのよりんで


京太郎「…ぐぬぬ」

健夜「須賀君…早くしないと日が暮れるよー?」

理沙「…優柔不断!」

京太郎「つっても病院送りがやっぱ怖くて」

健夜「まー何とかなるよ。それ、あくまで可能性の話だし」

理沙「…そもそも、中らなければよし!」

京太郎(くそう…他人事だと思って!)

京太郎「…ええい、ままよ!」ガバッ

健夜「それじゃあみんな」

理沙「いっせーのーでっ」

パクッ


京太郎「…!」

健夜「!!」

理沙「!?」

京太郎「…うん、ふつーに美味いっす」モグモグ

健夜「そうだねー」ハムハム

京太郎「こっちはツインフレッシュですね」

健夜「私は桃だね…これ、期間限定なのが惜しいかも」

理沙「…」パクパク

理沙「……」ムシャムシャ

理沙「………」

京太郎「…」

健夜「…」

理沙「…けほっ」

理沙「…な、何?べ、別に私のは当たりなんかじゃないしっ!」

京太郎「…」ジトーッ

健夜「…それ、本当?」

理沙「…本当!」ゴクンッ

ヒリヒリヒリ...グオォォッ!!

理沙「!?!?!?!?」

理沙「…ゲホゲホッ! カッ、カアァァァァッ!」

京太郎「ちょっ!?」

理沙「…う、ウエエッ…カハッ……」

健夜「…須賀君」

京太郎「砂糖水、準備出来てます…さっ、どうぞ」

理沙「み、水っ!」ガバッ

京太郎「おっと」

理沙「…ごくっ、ごくっ、ごくっごくっごくっごくっ……」

理沙「…ふう」

京太郎「あの、大丈夫ですか?」

理沙「…かたじけのうござる」


健夜「お腹、何ともない?」

理沙「うう…あの、少しばかり下痢っぽいかもしれません……」

健夜「…どうしたらいいかな?」

京太郎「正露カンとかあればいいんですけど…失礼」

理沙「あっ…」

ピ...ピシッ

理沙「…何でか治まっちゃいました」

健夜「何したの?」

京太郎「ツボを圧しました。人差し指と親指の間くらいの奴を」

健夜「…誰に習ったの?」

京太郎「知り合いの執事さんに」

健夜「……」

理沙「あの…小鍛治プロ」

健夜「何かな?」

理沙「彼がここに居るのって、単に身の回りを世話してもらって…」

健夜「違うよ」


>ロシアンシューから数日

健夜「…ん」

京太郎「先生、ここがいいんですか?」

健夜「そうだねー。とっても気持ちがよくなっちゃう」

京太郎「…恐縮です」

健夜「謙遜しないの。実際、君はとっても上手なんだよ?」

京太郎「それはそうですが…」

...モミモミ

京太郎「…こんなこと(マッサージ)ばかり上手になっても、どうしようもないんですけど」

健夜「いや、いいんじゃない?」

京太郎「しかしですね、俺がここに来た目的は…」

健夜「そう必死になっても、しょうがないと思うけどね」


京太郎「…そういうものでしょうか」

健夜「じゃあ聞くけど、須賀君は麻雀プロにでもなりたいの?」

京太郎「それは…まだ何とも」

健夜「今すぐ結論を出す必要はないよ。そりゃまあ、麻雀が強くなるに越した事はないでしょう」

健夜「だけど今の君には、それに拘る理由がないだけの話」

京太郎「…俺には、麻雀に対する熱意が足りないと?」

健夜「そうとも言えるし、単に他の選択肢があるとも言えるよ」

京太郎「…それっていい事なのかなあ」

健夜「私個人は、悪いことじゃないと思うよ。一つの事しかまともに出来ないのは、とっても不都合だし」

京太郎(先生の場合、単にやらないだけなんじゃ)

健夜(―――聞こえてるよ?)

京太郎(…失礼しました)ペッコリン

健夜「さて、と。もうそろそろ、>>267が来るはずなんだけど…」

今回はここまででー

遅レジェンド

投下開始っす


<ピーンポーン

健夜「はーい…って、あれ?」

京太郎「どうしました?」

健夜「いや、モニターに誰も映ってなくて…ピンポンダッシュかな?」

京太郎「先生相手にそれはないと思いますが」

健夜「ところがどっこい」

ガシッ!

「あだだだっ!」

京太郎「……」

健夜「…赤土さん。何やってるんですか?」

晴絵「い、いやー…ちょっとした茶目っ気といいますか」

健夜「…須賀君」

京太郎「警察に電話ですね。では…」ピ、ポ、パ

晴絵「やめてっ!」


京太郎「…甦る伝説と言われた赤土さんが、こんな人だったとは」

健夜「少し前はこんなのじゃなかったんだよ。うん」

健夜「けど、プロに復帰してからは調子に乗ることが多くなって…ぶっちゃけなれなれしい」

晴絵「そんなあ…私と小鍛治プロの仲じゃないですかあー」アッハッハ

健夜「…そーだねー」

京太郎(先生ってば、死んだ魚のような目をしてる)

健夜(彼女がこーこちゃんと鉢合わせにならなければ、こんなことには)


晴絵「…ところで私、どうしてここに来たんでしたっけ?」

健夜「何言ってるの?」

京太郎「えっと…ここには指導で来たんじゃないんですか?」

晴絵「うーんとね…ただの暇つぶしかな」

京太郎「…さいですか」シラー

晴絵「いや、勿論冗談だからね!?」

京太郎「先生…ホントにこの人で大丈夫なんですか」

健夜「そう思うのは分かるけど、大丈夫…うん、大丈夫だから」

晴絵「うわー…すっごく傷つくわー」


健夜「それが嫌なら、もう少しくらい真面目にしてよ…」

京太郎「…よろしくお願いします!」

晴絵「おー、よろしく少年!」

京太郎「で、俺は一体何をすればいいですか?」

晴絵「そうだね…今の君じゃ、色々と足りなさ過ぎる」

晴絵「本当なら何でもかんでもやらせたいところだけど…とりあえずは、>>276かな」

体を鍛える


京太郎「…う、うーん」

晴絵「え、すっごくやる気ありげだったのに難色?」

京太郎「え、いやその」

健夜「赤土さん…それね、私が出した答えと同じなのよ」

晴絵「あっちゃー…」

健夜「けど、あなたも同じ答えを出したのなら、やっぱり身体を鍛えるのが近道なんだろうね」

晴絵「そうですね。技術とかは最低限で何とかなるでしょうし」

京太郎「…あの」

健夜「何かな?」

京太郎「とりあえず、いつもの走りこみに行って来ますね」

タッタッタッ...

晴絵「…いい走りしてますねえ」

健夜「彼、中学時代はハンド部だったからね」

晴絵「なるほど納得」


晴絵「となると、体力はそれなりについてますよね」

健夜「そうだね。そっちの高鴨さんには及ばないだろうけど」

晴絵「はは、シズと比べちゃ流石に酷ですよ…それと小鍛治プロ」

健夜「何?」

晴絵「どうしてあの子を迎え入れたんです?正直、そこまでする理由はないと思いますけど」

健夜「気まぐれだよ、気まぐれ」

晴絵「若いツバメを育てて食べる…そんな噂も立ってますけど」

健夜「言わせておけばいいよ、そんなの」

晴絵「…相方の福与アナに茶化されますよ?」

健夜「それはやだな…あの子、この手の話は何度も振ってくるから…」

晴絵「…苦労してるんですね」

健夜「いや、あなたも大概だからね!?」


京太郎「…ふう」

晴絵「お疲れさん。いつもこのペースでやってるの?」

京太郎「はい。といっても最初はブランクあってキツかったですが」

晴絵「それにしたってねえ…10キロを30分強って」

健夜「正直、陸上で頑張ってれば全国狙えるレベルだよ」

晴絵「そう考えるとなんか勿体無いですね」

健夜「うん…」

京太郎(褒められてるはず、なんだけどなあー!)



晴絵「まだ余裕がありそうだし、次は>>280して鍛えてみようか」

充電


京太郎「…充電?」

晴絵「そ、充電」

京太郎「生憎俺に発電機能はありませんが…」

晴絵(…あったらやりそうだなーこの子は)

晴絵「そうじゃなくて…かくかくしかじか」

>胡桃ちゃんが充電!充電!

京太郎「…えっ」

健夜「あの、赤土さん?」

晴絵「君にはこれから、>>283の人間椅子になってもらうのだ!」

座るのは誰?
A:晴絵
B:健夜
C:その他咲キャラ

2


健夜「…ええ?」

京太郎「赤土プロ、これは一体何が狙いで」

晴絵「ずばり、忍耐力の強化!」

京太郎「忍耐力…」

健夜「まさかとは思うけど、赤土さん」

晴絵「そう、須賀君が小鍛治プロ相手にた」

ベキィ

晴絵「ばわ!」

健夜「アンタ、子供相手に何言おうとしてんの!」

晴絵「それは勿論、青少年に必要な性…」

健夜「 そ こ ま で だ よ ? 」

晴絵「マジすみませんっした!」ドゲザー


健夜「まったくもう…!」プンスコ

京太郎(先生、いつもより大分うろたえてるな)

京太郎(基本俺の前じゃローテンションだし…うん、見てて新鮮だわ)

健夜「ゴメンね須賀君…代案なら私が考えるから」

京太郎(だからもう少し)

京太郎「いえ、その必要はないですよ」

ヒョイッ

健夜「ふえ?」

ストン

健夜「…あ、あのさ須賀君」

京太郎(いつもと違う先生の姿も見てみたいかなって)



京太郎「折角だしやってみましょうよ、充電」

>>286のコンマで判定

00-50 うん、どうもしない
51-89 あれ…なんかムラっときたかも?
90-99 大人の充電って、どんなものか教えてもらっていいですか?

ほい


>...30分後

健夜「…」

京太郎「…」

晴絵「…」ニヤニヤ

健夜「…あ、あの」

晴絵「この充電、大体1時間が平均らしいですよー?」

健夜「」

京太郎「…まあ、そういうことですから」

健夜「なにがそういうことよっ!」グイッ

京太郎「ちょっ…倒れそうになるからやめて」


健夜「きゃっ」

京太郎「おっと…ふぅ、何とかなった…あ」

健夜「あ…」

晴絵(須賀君が両手を支えにして、倒れるのを防いで…)

晴絵(そしたら彼の頭は下を向いた。小鍛治プロは倒れそうになって、結果顔が上に向く形に)

京太郎「…あ、あの」

晴絵(あわやキス寸前ですかあ…小鍛治プロ、存外やりますねえ)ニタニタ

健夜「こ、この程度でうろたえちゃダメだよ。うん」///

晴絵(そっちの方がうろたえてるじゃん!)


京太郎(ちょっ…先生、顔が近いですよ顔がっ)

健夜「…須賀君」

京太郎「は、はい」

健夜「…こんなに近くでお互いを見たの、初めてだね」ニコッ

京太郎(いきなり笑顔で何言ってんのこの人ー!!)

京太郎「…そうですね」

健夜「だからなのかな。近くで見るあなたの顔が、とても輝いて見えるの」

京太郎(さっきからテンションおかしいですよ、先生!)

京太郎「…恐縮です。ただ、この体勢だと腕がしんどいのでそろそろ」

健夜「…もうちょっと」

京太郎「!?」

健夜「もうちょっとだけ、このままでいたいんだけど…いいかな?」

...ムラムラッ

京太郎(おろ?ひょっとして俺、先生にムラっときちゃったりなんかしてる?)

>>290で指定

たってる?たってない?

勃ってる


健夜「…どうしたの?」

京太郎「え、いや」

健夜「やっぱりこの体勢って辛いだろうし、やめちゃう?」

京太郎「ま、まだ大丈夫」

京太郎(全然大丈夫じゃねー!俺、ちっとも大丈夫じゃないから!)

健夜「そう?ならいいんだけど」

ググ...

京太郎(…お、おい)

健夜「ねえ…」

京太郎(し、鎮まれ…鎮まれ…頼むからたつな、たつんじゃあない!)

京太郎「な、なんでしょうか先生?」

健夜「…私の下で燻ってるそれ、よかったら鎮めてあげようか?」

京太郎「」

京太郎(あ、これダメな奴だ)


>数十分後...

健夜「…戻ってこないね」

晴絵「そりゃまあ、あんなことの後じゃ気まずいでしょう」

健夜「…やっぱり?」

晴絵「と言うかそちらも人が悪いですよ。若人の心を弄んじゃったりして」

健夜「まあ、修行だからね」

晴絵「…誰の修行ですか」

健夜「さあ、ね」





京太郎「…どうしよう」

>>293(ん、あれは…)

>>293で人物指定

こーこちゃん


恒子「あ、やっぱり須賀君じゃん。やっほー」

京太郎「ど、どもっす」

京太郎(よりによってこんな時にこの人かよ…)

恒子「こんな所でふさぎこんでどうしたのさ?」

京太郎「それが…修行が上手くいかなくて」

京太郎(うん、嘘は言ってない)

恒子「えー…あんだけしごかれたのに、今更?」

恒子「腕立て100回5セットとか、それなりに苦労はしてたじゃない」

京太郎「もう慣れましたけどね」

恒子「…そんな風に言ってられる子が、ちょっと上手くいかないくらいで拗ねるとは考えにくいんだけど」

京太郎(うっ…このままじゃさらに追求されそうだ)


恒子「で、ホントはナニがあったのかな~?」

京太郎「い、いやあ…別に」

京太郎(このままダラダラ引き延ばしても意味はない。しかし…)

恒子「…言わないのなら、すこやんに連絡しちゃうよ?」

京太郎「そんなっ!?」

京太郎(今戻るのはマズい!仮に向こうがよくても、俺が耐えられないから!)

京太郎(うう、一体どうすれば…)

>>295 自由安価



今回はここまででー

訂正、>>295>>297

とりあえず一回抜いて再チャレンジ


京太郎(…やっぱリベンジするしかない!)

京太郎(つまづいてなんかいられない。よし、早速どこかでぬいて)

恒子「あれ、どこ行くのー?」

京太郎(…そうだった。この人がいたんだった)

京太郎「もうそろそろ戻らないといけないかなって…」

京太郎(まいったな。どうやってごまかそうか)

>>300 どうする?

付きまとうな的な台詞で突き放す
しつこいようなら怒鳴っちゃえ


恒子「すこやんの所に戻るんでしょー?だったら私も」

京太郎「…遠慮してください」

恒子「えー?」

京太郎「赤土さんのお陰で先生いっぱいいっぱいなんですよ…」

恒子「あ、ハルちゃんも来てるんだ」

京太郎「ですから結構イライラしてて…何かあっても、俺じゃ庇いきれませんよ?」

恒子「あー…仕方ない、今回は諦めるかぁ」

京太郎(ほっ)


京太郎「…じゃあ俺はこれで」

恒子「じゃあねー」

スタスタ...

京太郎「…」

恒子「…」ニヤニヤ

スタスタ...

京太郎「あの、なんでついてきてるんですか」

恒子「べっつにー?」

京太郎「…正直鬱陶しいんで、やめてもらえませんか?」

恒子「え、やだ」

京太郎「おい」ギロッ

恒子「余裕無いなあ…なんか可哀想だし、今回は遠慮するけどねー」

京太郎「…はあ」

京太郎(ぬくまでもなく、色々萎えちまったよ)


京太郎「…すみませんでした」

晴絵「まー気にしない気にしない」

健夜「無茶振りもいいとこだからね」

京太郎「出来たら今すぐにでもリベンジしたいですけど、どうですか?」

晴絵「んー…どうします、小鍛治プロ?」

健夜「…」

>>304
A:リベンジする
B:リベンジしない

※コンマ安価で3回成功、または3回失敗でおしまいです(現在成功1、失敗0)

A


健夜「…大丈夫?」

京太郎「大丈夫です。今の所は」

晴絵(さっきと比べてなんか落ち着いてるなー)

京太郎(福与アナのお陰で助かった…)

健夜「さっきよりも落ち着いてるし、確かにこの調子なら大丈夫かな」

京太郎「だといいんですが」

健夜「そこはもうちょっと自分を信じようよ」

京太郎「さっき失敗しちゃいましたからね、こればっかりは」

>>306 コンマ判定

01-30 …勃っちゃった
31-99 勃つわけないさ


健夜「…どうもしない」

京太郎「どうもしませんね」

健夜「それはそれで悔しいんだけど」

京太郎「そう言われても…」

晴絵(脳内ピンクな二人を期待してたのに…)

晴絵「…何はともあれ、これで修行は成功したね」

京太郎「ホントに成功してるんでしょうか?」

晴絵「ふむ…じゃ、試しに打ってみようか」

健夜「三麻で大丈夫なの?」

晴絵「いえ、四人です」

ヒョコッ

恒子「随分とまあ、面白そうなことしてたねー?」

健夜「こーこちゃん!?」


京太郎「…やっぱりついてきてたんですね」

恒子「そりゃあね。というかみんな何やってるの」

京太郎「ま、麻雀の練習…」

健夜「…一応ハウツー本は読んでたし」

晴絵「目を逸らしながら言ってもねー」

恒子「ねー」


>...そんなこんなで

恒子「…ノーテン」

健夜「ノーテン」

晴絵「テンパイ」

京太郎「テンパイ」

恒子(こっちの当たり牌、全部あの子が抱えてたのか…)

健夜(鳴かせてもくれなかったね)

晴絵(捨牌じゃあこちらの手は読めなかったはずだけど)

京太郎「…次、行きましょうか」


恒子(手は悪くないんだよねー。なのに和了れない)

健夜(最初は赤土さんとの一騎打ちになると思った。けど…)

晴絵(後の二人も存外侮れない、か)

京太郎(正直、安手でもいいから和了りたいなあ)

京太郎(今の所…流局テンパイでしか点を取れてない。その代わり中られもしないけど)

健夜「…リーチ」

京太郎「!」

健夜(流石に、そのままでしのげるとは思ってないよね?)

京太郎(来たか…!)


恒子(捨牌は…バラバラで読めないなあ)

晴絵(今の所、点数はほぼ横ばいできてる)

京太郎(終盤だし、このままなら僅差で俺が逃げ切れるけど)

健夜「…」ゴゴゴ

京太郎(そういう甘えは許しちゃくれないだろうな…)

晴絵(あんまり和了れないのも癪だし、ここは勝負に出てもいいかもね)

恒子(私は…何もしないでいるのが一番かな)

京太郎「…!」

京太郎(ここで生牌…それもドラ牌かよ!)

京太郎(これまで通りオリればしのげるか…いや、しのがせてもらえるのか)


京太郎「…」

京太郎(今は何を切っても中られる気がする…多分この牌は、先生に掴まされたんだ)

晴絵(…小鍛治プロも人が悪い)

健夜(困ってる困ってる。実際、今彼が持ってるのは大体が当たり牌だろうから)

恒子(すこやんが悪い顔してる…)

京太郎(…こいつを使えば手は伸びる)

京太郎(でもこの局面で高い手は必要じゃない。和了って、それからしのげさえすればいいんだ)

京太郎(そう、しのぎさえすれば…)

『カン』

京太郎「!」

『もいっこカン…もいっこ、カン!!』

京太郎(何で今俺、あの時の光景を…)

『ツモ。清一…対々、三暗刻』

京太郎(ダ、ダメだ…求めちゃいけない)

『三槓子、赤1、嶺上開花…32000です!!』

京太郎(持ってない奴が、持ってる奴の真似しちゃいけない…憧れても、近づこうとしちゃいけない)

京太郎(…分をわきまえるんだ)


京太郎「…」

京太郎(俺の麻雀に光はいらない。眩しさは目をつぶしてしまう)

健夜「…」

京太郎(…だから俺は)

タン

健夜「!」

京太郎(あえてそれを手放そう。怖くて怖くて仕方が無いけど)

晴絵(へえ…ここでドラを切ってくるか)

恒子(中盤以降、それもリーチがかかったこの状況で!?)

健夜(…それが須賀君の答えか)

...タン

京太郎「…ツモ。300、500です」


健夜「須賀君、1位おめでとう」

京太郎「…ありがとうございます」

恒子「何だか嬉しくなさそうだけど…」

京太郎「プロ相手にここまで出来たって、どうも実感がわかなくて」

恒子「なるほどねー」

晴絵「麻雀は初心者だって勝てないことはないからね。そう重くとらえる事もないよ」

京太郎「はは…そうですよね」

健夜「…楽しかった?」

京太郎「えっ?」

健夜「今の半荘、打ってて楽しかった?」

京太郎「…楽しくはなかったですね。勝てるように打とうとしたら、それでいっぱいいっぱいで」

健夜「…そっか」

京太郎「それってやっぱりダメですか?」

健夜「―――ずっと続けていたいなら、ダメかもね」


 ■

晴絵「…小鍛治プロ、彼は」

健夜「潜在能力はあるよ。ただ、それと麻雀を楽しめるかは別だろうね」

晴絵「制約のあるオカルトだったりするんでしょうか?」

健夜「さあね。単にカンがいいだけかもしれないし…」

晴絵「諦めがいいだけなのかもしれませんね」

健夜「…」

晴絵「須賀君は多分、和了りたくて仕方なかったと思うんですよ」

晴絵「それが修行の結果、我慢する事を覚えて…そしたら中られなくなって」

健夜「…安全に打ってるね。いや、安全だけで打ってるね」

晴絵「勝つ為にはそれもいいでしょうね。問題は…それに固執することか」


京太郎「…」

京太郎(萎えた後はカンが冴えたな…あれか、賢者タイムって奴なのかな)

京太郎(実際今日は読み通りに場が進んだ。和のように最適牌を見出すのとはまた違うけど)

京太郎「…はあ」

京太郎(勝てば楽しくなると思ったが、そういう訳でもなかったな)

京太郎(負けが多くて…だから麻雀が楽しくないって、そう思って…いや、信じたかったんだが)

京太郎(…いや、勝つ事自体は悪くないんだ)

京太郎(部活のみんなだって、ずっと楽しい麻雀だけを打ってきたわけじゃない)

京太郎(だから今日のアレだって間違っちゃいない。勝とうと思えば、第一線級のプロにだって勝てるんだ)

京太郎(それでいいじゃないか…)


 ■

京太郎「さて、今日も一日頑張りますか」

健夜「張り切ってるね」

京太郎「何だかんだで先生に勝てましたからね」

健夜「あ、それは嬉しかったんだ」

京太郎「今度部活のみんなに自慢してあげたいですよ」

健夜「…その後に腕試しとか言われたら?」

京太郎「遠慮します!」

健夜「即答って…プライドとかそういうのは」

京太郎「…それでボロ負けしたら、先生の顔に泥を塗っちゃいますし」

健夜「そう重く考えなくても…」

>>320 なにする?

雑談


健夜「そういや須賀君、部活じゃ何してたんだっけ」

京太郎「タコス作ってました」

健夜「…料理研究部かな?」

京太郎「いや、麻雀部ですけど…」

健夜「誰に教わったの?」

京太郎「執事さんに」

健夜「…またそれかぁ。執事さんって何者なの?」

京太郎「うーんとですね…そう、どこにでも現れそうな人ですね!」

健夜「それ、ちょっとしたホラーだよ……」


ハギヨシ「…呼びましたか?」

健夜「!?」

京太郎「あ、ハギヨシさん。別に呼んだつもりはないんですけど」

ハギヨシ「失礼。ふとそんな気がしたものですから」

健夜(ホント、どこにでも現れるんだね)

京太郎「お仕事の方は大丈夫なんですか?」

ハギヨシ「衣様なら、今は沢村さんが一緒にいますから」

京太郎「沢村さんって…ああ、あのふくよかな」

ハギヨシ「はい」

京太郎「何してるんでしょうか?」

ハギヨシ「キャッチボールかと」

京太郎「…あれ、天江さんが犬みたいに」

ハギヨシ「その言い方、かなりいかがわしいです」


健夜「…あの」

京太郎「すみません、先生」

ハギヨシ「私としたことが礼を失するとは…申し訳ございません」

健夜「いや、そんなことは気にしなくていいんですけど…その」


小鍛治父「…おい、母さん」

小鍛治母「男友達を連れて来いとは言ったけど、これは…」


京太郎「…先生」

健夜「慣れない光景に二人が困惑してるから、外に出た方が…というかあなた、不法侵入ですよ?」

ハギヨシ「ごもっとも…では、>>326にでも参りましょうか」


 ■

京太郎「ハギヨシさん、ここは…」

ハギヨシ「筑波山ですね」

京太郎「何故山に?」

ハギヨシ「折角近くにあるものですから。日本百名山、あるいは日本百景の一つとされています」

ハギヨシ「標高こそ高いとは言えませんが、富士山と対比される由緒正しき山なのですよ」

京太郎「へー」

ハギヨシ「ちなみにここでは、歌垣という風習が盛んだったそうです」

京太郎「歌垣?」

ハギヨシ「今で言うと…婚活パーティーがこれに近いでしょうね。男女が出会うための場だった訳です」

ハギヨシ「その年の豊穣を祝い、翌年の豊穣を祈る意味合いもありました」

健夜「まじない、あるいは願掛けみたいなものですね」

ハギヨシ「はい。これについては、先に述べた富士山と比較する説話があります」

ハギヨシ「ある神様が富士山と筑波山で宿を求め、前者はぞんざいに、後者は快くこれを扱ったと」

ハギヨシ「そして富士山は雪に覆われ登る人もなく、筑波山は昼も夜も人が集って、歌い飲食をするようになったと」

京太郎「事実はさておき、富士山への対抗心を感じるエピソードですね」

健夜「…この山、標高だけなら1000mもいかないし対抗しようがないんだよ」

健夜「けど立地とかはバッチリ。気象観測や無線通信の上でも重要な拠点なんだよ…だからほら」ユビサシ

京太郎「おお、だからアンテナがいっぱいあるんだ…」

ハギヨシ「実際景観はかなりのものです。それ故に、富士山の美しい景観まで見れるくらいには」

ハギヨシ「関東の富士見百景にも数えられているのは皮肉ですが、それだけ縁が深いということなのでしょうね」


 ■

京太郎「…おお」

健夜「どう、すごいでしょ?」

京太郎「これは…見ていて気持ちのよいものですね」

ハギヨシ「まったくもって」

健夜「と言っても私自身、ここに登ったことはそうないけど」

健夜「…歌垣の話があったでしょ?お母さんがよく、それを話の引き合いにしてきて」

京太郎「あー…それはキツそう」

健夜「惚れた腫れたよりも、私の精神的自立を促してるのは分かるんだけど…どうもね」

京太郎「先生、家事全般を任せちゃってますからね」

ハギヨシ「…ふむ」

京太郎「ハギヨシさん?」

ハギヨシ「突然で恐縮ですが、私でよければ手助けしてもよろしいでしょうか?」

健夜「ええと…私は構いませんけど、そちらこそ大丈夫なんですか?」

ハギヨシ「…実の所、溜まった有給を消化するようお嬢様からお叱りを受けまして」

京太郎「ああ…それにハギヨシさん、休みの日でも働いてますよね…」

ハギヨシ「小鍛治さんを口実にしてしまう事になりますが、良い機会かと思って」

京太郎「…帰ったらどう説明します?」

健夜「…私だってやる気に思えばこれくらい、とでも言っておくよ」


 ■

小鍛治母「…」


               _________/⌒}__r-、
.        ,.  -‐  ´   /⌒}__r-、  /;'´,ィ(ソft'/}   ‐- 、
.       / .        /;'´,ィ(ソft'//;'´,ィ(ソfti/;': ;|   ./ア=/ フl
    / /.      /;'´,ィ(ソfti//;'´,ィ(ソf/ア=/ フl  / ´. : / /. :!
   /  /     /;'´,ィ(ソfti//;'´,ィ(ソf/ ´. : / / .l/ ´,ィソf/ /. : :|、 ヽ
.   /  /.     /;'´,ィ(ソfti//;'´,ィ(ソf/ ´,ィソf/ / ; '; '. ;{ソfz/ / . : /  ヽ \
  / ./    /;'´,ィ(ソfti//;'´,ィ(ソft; '; '. :{ソfz/ / / / ,ィソfz/ / , : /     ',  ヽ
 ,  i   /;'´,ィ(ソfti/,'´l f' (ソftイ/ / ,ィソfz/ / / /. :{ソfz/ / , ; /       ',  i
 |  {  | f' (ソfti/,'´. : | |. ftz〃/ /. :{ソfz/ / / / ,ィソfz/ / . : /        !   |
 i  l  | |. ftz〃 ´. : ;.,..'LL_|ル{ / / ,ィソfz/ / / /. :{ソfz/ / . : /       }  |
    ', LL_|ル{ {,; : :/    `^/ /. :{ソfz/ /. :{. {. : .ヾ゙/ / . ; /         ,'  i
  ',   ',    `^ヽ:/      {. {: : ,;ヾ゙/ /. : ;.,'.;: .Y´ ;.ノ, : :/        /   /
  ヽ. ヽ             '.,: .Y´ ;.ノ. : ;,/  '.;_{ `i. : ;/        /   /
    \. \               '.;_{ `i: : :/     \i/        / /
     \ ヽ、           \i/                  / /
       `ヽ、 ヽ、 ________________.x<´, ''´
         `ー―――――――――――――――――‐ ´


京太郎「うわ、すっごく美味しそう…味見いいですか?」

健夜「いいよー」

京太郎「それじゃあ早速…うん、美味い!」

健夜「ほ、本当?」

ハギヨシ「では私も…ふむ、これは中々ですね。小鍛治さんは筋がいい」

健夜「…ありがとうございます。でもその、形とかはちょっと不恰好になっちゃって」

ハギヨシ「気にするほどではありません。きちんと食べられるものを作ることが、何より大事ですから」

ハギヨシ(教えた通りに作ってくれる。それに優る喜びはありません……!!)





小鍛治母「あ、あなたぁ…」

小鍛治父「…引き籠りの子供が部屋から出てきた親の気持ちって、こんなものなんだろうか」

健夜「お父さん…それ酷くない?」


 ■

恒子「へー…すこやんってば、随分と面白そうなことになってるね」

京太郎「面白そうって…否定はしませんけど」

恒子「でしょ?」

京太郎「つっても俺が言う事じゃないか」

恒子「仮にも教え子だもんね」

京太郎「まず自分をどうにかしろって話ですから」

恒子「…殊勝なのは悪くないけど、卑屈にはならないでねー?」

京太郎「分をわきまえようとは思いますが、卑屈にはなりませんよ」

恒子「うん…それがいいよ。すこやんもきっと、そう望んでるだろうから」

京太郎「…先生、俺のことなんて言ってます?」

恒子「覚えも聞き分けもいいけど、手のかかる教え子とだけは」

京太郎(褒められてるのかどうか分からんな…)


 □

恒子『…怖い?』

健夜『うん。下手したらあの子、昔の私みたいにならないかなって』

恒子『それは考えすぎじゃない?すこやんだって、あの時本気で打ってた訳じゃないでしょ?』

健夜『ううん』

恒子『え?』

健夜『全力とまではいかないまでも…私と赤土さんは、真剣になって相手してたよ?』

健夜『…ぶっちゃけ、全力でもてこずらされるんじゃないかな』

恒子『そんなに?和了ろうと思えば和了れたんじゃ…』

健夜『どうだろうね。けどあの時は、一度だって和了れる気がしなかったの』

健夜『蛇ににらまれた蛙みたいに、身動きか取れなくなって…』

恒子『……』

 □

恒子(もし本当にそんな真似が出来たとして…一体何が、彼をそうさせるんだろうね)

恒子(…すこやんもそうだけど、麻雀って不思議なことが多いなあ)


京太郎「…」

ピピピッ...

京太郎(空を飛ぶ鳥は、何故ああも輝いて見えるんだろうか)

京太郎「…」

 □

京太郎『リリエンタール?』

咲『そう。ライト兄弟よりも前に、空気より重い飛行機を作ろうとしてた人だよ』

京太郎『ふーん…また随分と小難しい本読んでるんだな』

咲『小難しいって程でもないと思うよ。その、飛行機理論の方は置いといてさ』

咲『空を自由に飛んでみたいって憧れて、そしたら本当に飛べるようになっちゃって…』

咲『そういうのって何だか素敵だなって思うんだよね』

京太郎『…そんなものかねえ』

咲『もう…京ちゃんは夢がないなあ』

京太郎『素敵な彼女、もしくは嫁さんが欲しいとは思うけれど』

咲『…相変わらずなんだね』


 □

京太郎(…どうにもままならないもんだな)

京太郎(俺じゃどんなに頑張っても、空を飛べる気はしない。打ちたいようには打てないらしい)

京太郎「…窮屈だな」

京太郎(けどそれに耐えれば、俺は勝てるかもしれないんだ…誰だろうと)

京太郎(目的からは遠ざかってるけど。ホントはもっと、華やかな打ち方をしたいからさ)

京太郎(そっちの方が楽しいに違いないし…でも、俺は俺だ。あの5人でも、まして先生でもない)

京太郎(…それでも俺は、憧れる事をやめられない)

京太郎(これって恋かな?)

>>336 どうする?

今回はここまででー

耐えられなくなるまで耐えてみる

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom