小鳥「本気ですか!?」
P「大学時代に複数の人間のDNA情報を合成させる研究をしてましてね。髪の毛一本でできますよ」
小鳥(なんでこの人プロデューサーなんてやってるんだろう…)
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P「さっそくウチのアイドル全員の髪の毛を取ってきました」
小鳥「やっちゃうんですか本当に」
P「やっちゃいます」
P「春香のように家庭的で、千早のような歌唱力があり、やよいのように元気で、真のように凛々しく、あずささんのようにスタイルがよく、響のように運動ができ――といった具合にそれぞれから遺伝子を取り込み調整する」
小鳥「それぞれの良い部分を集めるということですね!」
P「YES」
P「とりあえずウチの事務所の13人分の合成は完了しました」
小鳥「どれくらいで誕生するんです?」
P「その気になれば3日もあれば14~5歳ぐらいに成長したのが生まれます。ただ…」
小鳥「ただ?」
P「はっきり言ってまだこれくらいじゃ満足できない!」
小鳥「といいますと?」
P「アイドルとして良い部分をもっと取り込みたい。更なる完璧なアイドルが作れるはず。むしろ今のままじゃ完璧には程遠い!」
小鳥「言われてみれば…確かに」
P「876プロのアイドル達からも遺伝子を分けてもらいましょう」
小鳥「そうですね!頑張ってください!」
P「876の三人、桜井夢子、そして伝説のアイドル日高舞からも遺伝子を得て融合した…」
小鳥「今度こそ完全無欠の…」
P「ダメだ。まだこんなものじゃない」
小鳥「え?」
P「文字通り完璧なアイドルを作るのにたった20人ほどで足りるわけがない」
P「こうなったら持てる限りのコネクションを全て駆使して何十何百のアイドルの遺伝子を得よう」
P「そうだな…海外やすでに引退したり故人になったりしているアイドルの遺伝子も欲しい」
P「その果てに、今度こそ『アイドル』以上に形容すべき言葉の存在しない、まさに欠点のない究極完全のアイドルが生まれるはず!」
P「そのためならいくらでも時間も労力も惜しくはない!」
小鳥「は、はあ…」
小鳥(やばい、重すぎる)
P「知り合いのシンデレラプロ、モバイルプロ、ミリオンプロのアイドル達の遺伝子もすべて収集した」
P「そして俺が独自にプロファイリングした他事務所のアイドルの遺伝子も厳選に厳選を重ね取り込んだ。老若男女、古今東西、様々なアイドルを関係なく全て」
P「むろん取り込む遺伝子の部分だって適当に選定していない。アイドルに関するありとあらゆる書物や理論に目を通し厳格な基準にて選び出した」
P「気が付くと気が遠くなるほどの時間と金をかけていたが別に安い代償だ」
P「そして――」
P「やったぞ小鳥さん…ついに合成が完了した!もうこれ以上のアイドルはいない!」
小鳥(1××歳)「そうですかプロデューサーさん…長かったですねえ…」フガフガ
P「もうすぐこのクローン生成器から完璧なアイドルが生まれる!長年の夢がついに叶う!」
小鳥(1××歳)「おや、生成器が開いたようですよ…?」フガフガ
P「さあ…見せてくれ!今こそ、生涯かけて完成させた俺の最高傑作が――」
しかし、そこには誰もいなかった。いや――
正確には、そこにはアイドルはいるのだ
ただ、人間も他の生物も何らかの形をもった物体も存在せず
クローン生成器から、直視しがたいほどの光が溢れ出しているだけであった
この光こそがアイドル、Pが探し求めた『完璧なアイドル』なのである
P「……一体何なんだこれは」
P「どこだ…アイドルはどこだ!まさか失敗したか!?」
小鳥(1××歳)「プロデューサーさん、あの光こそがアイドルなのですよ」
P「何だと?」
小鳥(1××歳)「アイドルとは『偶像』。偶像とは元来崇拝の対象である存在、すなわち神――」
P「神……俺は神を作り上げた?」
小鳥(1××歳)「神は実態も姿もない。ただ、そこに存在するだけです。ましてや歌ったり踊ったりすることもないのです。ですが確かにアイドル――」
P「神か…さすが人生を棒に振ってまで時間をかけ作っただけのことはある!この神は俺の物だ!」
小鳥(1××歳)「ダメです!神は誰のものでもありません!たとえプロデューサーさんが望もうとも、この『アイドル』はもはや人間を見守るだけの存在で…」
P「うるせえ!そんなことになったら俺の苦労はどうなるって――!!!」
P「う…うわああああああああああああああああああああ!!!!」
小鳥(1××歳)「プロデューサーさん!!!」
Pは『神』から突如発せられた一筋の光に囚われ、包まれた。そして瞬きする間もなく刹那――
Pの姿は掻き消された。水にさらわれた砂の城が溶けていくかのように、心も体も枯れきった狂気の男は影も形も消え失せた
小鳥(1××歳)「そ、そんな…はっ!?外の様子が……」
既に地上の文明は崩壊を始めた。陸は揺れ、海は割れ、天は乱れる。Pの傲慢たる狼藉に、神の怒りが触れたのだ
『完璧なアイドル』は、Pの思惑通り、他の追随を許さぬ勢いで、歌い、踊る
この世を消し飛ばし、新たなる世界を創造するため
終わり
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