その日、おいらの家に赤紙が届いた
その手紙を見た途端に母ちゃんは泣き崩れた
父ちゃんはそんな母ちゃんを抱き寄せると、寂しげな表情を浮かべていた
おいらは普段と違う両親の姿に戸惑い、ただただ呆然と立ち尽くしていた
その日の夜、おいらは父ちゃんといっぱいお話をした
「父ちゃん、赤紙ってなんだ?」
「父ちゃん、お国の為に戦ってくるんだ。」
「だからもうすぐ行かなくちゃならない」
「いつ、帰ってくるんだ?」
「父ちゃんにもわからん」
「だから父ちゃんが帰ってくるまでは、母ちゃんの事、お前が守ってやるんだぞ」
「父ちゃん」
「どうした?」
「なんでもない…」
「もう寝なさい。明日は早いぞ」
次の日
「おいおい、坊主はまだ寝てるのか。しょうがない奴だ」
「仕方ないわ。昨日あなたとずっとお喋りしてたんですもの」
「お前、昨日寝ていないだろう。酷い顔だ」
「考え事をしていたら眠れなくて…」
「…お前には随分と迷惑をかけたな」
「迷惑だなんて、思っていませんよ」
「……」
「それじゃ、行ってくる」
そして僕が起きると父さんはいなくなっていた
父さんがいない事以外は、いつもと変わらない朝だ
「学校、遅れるわよー」
「うん、ごはんいらない。いってきまーす」
いつもと変わらない母さんの笑顔が、僕を見届けた
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