赤犬「あァ? アナと雪の女王じゃとォ?」 (106)

――アレンデール王国

兵士「海軍本部元帥、サカズキ様御一行ご到着です!」

ドンッ

赤犬「ここがアレンデールか。まァ悪くないのォ」

来賓A「な!?」

来賓B「あ、赤犬!?」

ザワザワザワ

大臣「これはこれはサカズキ元帥! 遠いところをお出で下さり恐悦至極にございます!」

赤犬「なァに、気にするな」

赤犬「加盟国王の戴冠式にゃァ、世界政府のもんが出席するのがならわしじゃからのォ」

大臣「ははぁっ」


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ザワザワザワ……

来賓C「ま、まさか海軍元帥が来るとは……」

来賓A「確かに戴冠式には世界政府から役人が派遣されるのが常だが……」

ウェーゼルトン公爵「元帥が出席するなど聞いたことがないぞ! わしの時も来なかったのに!」

来賓B「アレンデールは貿易で栄えている国。それだけ政府から重要視されているということなのでしょうか」


赤犬「……さて」

――数週間前
――海軍本部

ブランニュー「アレンデール女王の戴冠式に?」

赤犬「あァ。わしが出席することになった」

ブランニュー「……!? 元帥自らが!?」

ブランニュー「加盟国の戴冠式には確かに将官クラスが派遣されますが」

ブランニュー「しかし、元帥どころか大将の出席も通常ありません。なぜまたアレンデール王国にだけ……?」


赤犬「数年前、アレンデール王国の近海で凍り付いた海賊船が発見された」

ブランニュー「凍り付いた海賊船?」

赤犬「似たような事例が度々起こってのォ。何か思い出さんか、ブランニュー?」

ブランニュー「……ヒエヒエの実。ですか」

赤犬「あァ。パンクハザードでの決闘でクザンが死んで、新たに生まれたはずのヒエヒエの実」

赤犬「それを食った奴がアレンデールにおるとわしは睨んどる」

赤犬「ここ最近はそういう事例も報告されちょらんから、まだそいつがアレンデールにおるとは限らんが、調べる価値はある」


ブランニュー「しかし、何も元帥が行かれることはないのでは」

ブランニュー「たしかにヒエヒエは強力な能力なので、調査に当たる人間も強い方が良いでしょうが……」

赤犬「いま大将連中は別件で手が塞がっちょるというのもあるが、ヒエヒエの実を逃したのはわしのミスじゃァ」

赤犬「悪魔の実は能力者が死ぬと、近くに対応する果物があった場合、それに宿る」

赤犬「ヒエヒエとマグマグに対応する果物は既にベガパンクが解明しちょった」

赤犬「それゆえ、わしとクザンはそれらの果物をパンクハザードに持ち込んだ……どちらが死んでもまた海軍が能力を管理できるようにのォ」

赤犬「しかし、10日間続いた決闘の中で、わしらはいつの間にか持ち込んだ果物を全て破壊してしまった」

赤犬「それに気づかんままクザンを殺してしまい、ヒエヒエの実は闇の中じゃァ」

赤犬「痛恨のミス……何としてでもヒエヒエをもう一度海軍の手に戻す」

ブランニュー「元帥……」


ブランニュー「しかし、もしヒエヒエの実の能力者を見つけた場合、どうなさるおつもりですか?」

赤犬「そいつが善人ならば海軍へ勧誘する。だが、悪人だったならば……」


赤犬「殺して奪う。選出した海兵にヒエヒエを与えられるけェ、こちらの方がむしろ都合がええのォ」


すまん、本来>>1に書くべきだったが

・ネタバレ注意
・赤犬注意
>>1は字幕と吹き替えを一回ずつしか見ていないので口調が間違ってるかも
・悪魔の実のメカニズムに関して、ファンの妄想の域を出ていない設定を採用

――アレンデール王国

ブランニュー「どうします、元帥」

ブランニュー「ヒエヒエに対応する果物であるキンキンベリーはこちらにご用意しておりますが」サッ

赤犬「あァ、さっそく能力者捜しと行きたいところじゃがァ、戴冠式まであまり時間がないけえのォ」

赤犬「調査は式典が終わった後じゃろうな」


アナ「ふんふーん」ウマレテーハジメーテー

赤犬「ん?」


ドンッ

アナ「きゃっ」

赤犬「おっと」ガシッ

アナ「あいたたたたた……」

赤犬「平気かァ?」

アナ「うん。ごめんなさい、よそ見しちゃって……」チラッ

アナ「…………」


赤犬「……なんじゃァ?」



アナ(…………渋格好良い。特に顎髭が)キュンッ

ブランニュー「……あ! まさか、アナ王女ですか!?」

赤犬「なに? この娘がか?」


アナ「あ。は、はい。そうです……ええっと、あなた達は海軍さん?」

ブランニュー「申し遅れました、殿下」

ブランニュー「こちらは海軍本部サカズキ元帥。私はブランニュー准将と申します」

アナ「……か、海軍元帥!?」

アナ「ってことは、あの有名な赤犬さん!?」

アナ「すっごーい! まさか本物に会えるなんて!! エルサの戴冠式に来てくれたのね!」キャッキャッ

赤犬(うるいさいのォ)


カラーンコローン

アナ「あ! いけない! そろそろ戴冠式が始まるわ!」

アナ「あ、あの、それじゃあサカズキさん! ま、また!」タタッ


ブランニュー「……元気な方でしたね」

赤犬「とても王女には見えんのォ」

エルサ「……」

エルサ「もうすぐ、戴冠式」

エルサ「大勢の人の前に姿を見せないといけない……」

エルサ「どうして、私はあの時、あんな果物を食べてしまったんだろう」

エルサ「悪魔の力さえなければ、こんな風に悩まずに済んだのに……アナとも、きっと……」

エルサ「……お父様……お母様」

――
――――
――――――

――数年前

エルサ「パパ! ママ! アナが……アナが!!」

バンッ

国王「アナ!」

王妃「なんてこと!」

エルサ「ごめんなさい、私……私」

国王「大丈夫だ、エルサ! 必ずアナは助ける!」

――
――――

――トロール族集落

トロール「国王だ……」


パビー「これは、悪魔の実の能力ですね」

国王「エルサは少し前に悪魔の実を食べて……まだ上手く力をコントロールできないんだ」

国王「お願いです、どうかアナを! あなた方トロール族は万物の声を聞き、多くの知識を有していると! どうか……!」

パビー「落ち着いて。大丈夫です。心臓が凍っていれば厄介でしたが、頭なら簡単に」シュウウウ


アナ「……う、ううん」

国王「アナ!」

王妃「ああ!」

エルサ「アナ! 良かった……良かったよぉ……」

パビー「エルサ。君が食べた実はヒエヒエの実だ」

エルサ「ヒエヒエの実……」

国王「やはり、そうだったか。大将〝青雉〟が死んだと聞いたが、それがエルサに」

王妃「この島に悪魔の実が渡ってくることなんて、ほとんど無かったのに……」

国王「ああ、民たちの能力者への認識も……このままでは」


パビー「その力はとても強力だ。力を狙って来る者もいるだろう」

パビー「そして、悪魔の実の能力は、能力者の精神に大きく左右される」

パビー「恐れてはいけない……その力を制御するんだ」

エルサ「力を、使いこなす……」


王妃「大丈夫よ、エルサ」

国王「ああ。私たちがお前を守る!」

――――――
――――
――

エルサ「……」ギュゥッ

エルサ「……大丈夫。今日一日……今日一日、耐えれば」


――教会

聖職者「こほん。女王陛下、手袋を」

エルサ「……っ」スルッ

エルサ「……」スッ


聖職者「ナンタラーカンタラーヘンナジュモンー」


赤犬(まずは女王に訊いてみるか)

赤犬(いくら引き籠もっちょった変人とはいえ、ヒエヒエの能力者がこの国におるんなら何か知っちょるかもしれん)


ピキピキピキッ

エルサ(……あっ!)

赤犬(ん?)

エルサ「……!」バッ


エルサ(…………み、見られてない、わよね?)ドキドキドキドキ


赤犬(気のせいか……今)

――王宮

ザワザワザワザワ

赤犬「さすがにここでは女王から話は聞けんのォ」

赤犬「ブランニュー」

ブランニュー「はっ」

赤犬「お前は先に会場を出て聞き取り調査をしちょれ」

赤犬「兵士、使用人、国民、情報を持っていそうな人間には手当たり次第にだ」

ブランニュー「承知いたしました」


アナ「あ! いた!」タタッ


赤犬「あァ?」

ブランニュー「アナ王女がこちらに」

赤犬「あの騒がしい小娘か……」

アナ「こ、こんにちはサカズキ元帥! またお会いしたわね!」

赤犬「あァ。そうじゃのォ」

アナ「舞踏会は楽しんでる?」

赤犬「あァ」


アナ「……あ、あのさ。訊いても良い?」

赤犬「あァ?」

アナ「海軍はさ、正義の為に世界中で戦っているのよね」

赤犬「あァ、そうじゃ」

アナ「そ、それってさ。女の人でも大丈夫なの?」

赤犬「問題ない。数は少ないがのォ。女の中将もおるわい」

アナ「そ、そうなんだ」

アナ「…………」

赤犬「……もう行ってもえェか? 来賓とも話さにゃァいかんのでな」

アナ「え? あ、ああ、うん。ごめんなさい、引き留めちゃって!」

赤犬「いいや。行くぞブランニュー」

ブランニュー「は、はっ」


ブランニュー(……いくらなんでも一国の王女相手に素っ気なさ過ぎなのでは)

ブランニュー(殿下が気分を害されてなければいいが)チラッ


アナ(……渋格好良い。特にアゴの辺りが……でももう少し長ければ)ポー


ブランニュー(なんかポーッとしてる……)

アナ「お姉様!」

エルサ「アナ?」

アナ「エルサ、話があるの」

エルサ「なあに? アナ」


アナ「エルサ、私ね……」

アナ「私、海軍に入る!」


エルサ「……は?」

アナ「うん!」


エルサ「……え、いや。何を言っているの、アナ」

アナ「私、海軍に入って海賊と戦うの! 正義の為に!」


エルサ「……だ、ダメに決まっているでしょう!」

アナ「え? どうして!?」

エルサ「どうしてって……危険だからよ!」

アナ「それでも海兵になりたいの!」

エルサ「アナ……」

アナ「だって、私たちずっとこの城の中に閉じこもってたのよ?」

アナ「外の世界が見たい。広い海に出たいと思ったって良いじゃない!」


ザワザワザワ

ブランニュー「女王陛下……?」

赤犬「なにやら揉めちょるのォ」


エルサ「……ダメ。ダメよ。許しません」

エルサ「アナが海賊と戦うなんて、そんな、絶対にダメ!」

アナ「エルサ……どうしてそんなこと言うの!?」

エルサ「あなたは海の恐ろしさを知らないのよ!」

アナ「そんなこと、エルサに言われたくない! ずっと部屋に閉じ籠もってたくせに!」

エルサ「……っ」

アナ「どうして私を……みんなを拒絶するの」

アナ「それなのに、どうして私の夢まで……お願い、エルサ。私もうこんな暮らし耐えられない!」


エルサ「…………とにかく、海兵になるなんて認めません」クルッ

アナ「……あ。ま、待ってよエルサ!」グイッ

エルサ「ああっ」

エルサ「……! て、手袋が」

エルサ「返しなさい! アナ!」

アナ「嫌よ! どうして、こんな手袋なんて……」

エルサ「アナ! 返して!」バッ


ゴォッ


アナ「きゃあっ!?」

エルサ「あ!!」


ブランニュー「……な!?」

赤犬「……!!」

キィィィィン

アナ「こ、氷……?」

エルサ「そん、な……」フラッ

エルサ「……っ!」ダッ

アナ「エルサ!?」


ブランニュー「まさか、女王がヒエヒエの!?」

赤犬「追うぞ、ブランニュー!」

ブランニュー「は、はっ!」


バンッ

民A「女王陛下!?」

民B「女王陛下だ!」

民C「おめでとうございます、陛下!」

エルサ「……ハァ……ハァ……」


アナ「エルサ! 待ってエルサ!」

エルサ「……アナ」


赤犬「そこか!」

エルサ「!!」

海兵A「なんだ……?」

海兵B「元帥とブランニューさんが出てきたぞ」

海兵C「パーティは終わったのか?」


ブランニュー「海兵! そこにいる女王がヒエヒエの実の能力者だ!」

エルサ「……!?」


海兵「え!?」

ブランニュー「逃がすな! 捕らえよ!!」

海兵「は、はっ!」チャキッ

エルサ「ひっ」


海兵A「動くな! 動けば撃つ!」

エルサ「あ、ああ……」ヨロッ チャプッ


民A「な、なぜ海兵が女王陛下に銃を!?」

民B「おい、止めろ! その方をどなただと思っているんだ!?」


ピキピキピキピキッ

民C「……な、なんだ? 噴水が……?」

キイィイイイイイイイインン

民C「うわあ!」

エルサ「ああ……っ」


海兵A「ふ、噴水が凍った!」

海兵B「広がっていくぞ!」


赤犬「チィッ……どけ、どかんか!」グイッ

民D「うわっ!」

民E「きゃあああああああ!!」


ドドォッ


赤犬「……くっ、民どもが邪魔で……」

赤犬「どかんかァッ! 貴様ら燃やされたいんかァ!?」

ブランニュー「げ、元帥! 落ち着いてください!」

ブランニュー「各国要人の目の前で民衆を殺すのはマズイです! 大丈夫、海兵が抑えております!」

赤犬「ぬううう」

海兵A「……ひ、ヒエヒエの能力だ!」

海兵B「こ、凍っていくぞ!」


エルサ「……っ」タタッ

海兵C「あ! に、逃がすか!」バンッバンッ

エルサ「ああっ」パリンッ

ピキキキキキキ…


海兵B「だ、駄目だ! ロギアが相手では……」

海兵A「元帥が来て下さるまで足止めすれば良い! とにかく撃ちまくれ!」

ドンッドンッドンッドンッ

エルサ「う、あ、あああ……!」パリンッパリン

エルサ「や、やめ、て……」

海兵A「撃て! 撃てえ!」ドンッドンッ


エルサ「止めてええええ!!」キイイインン

海兵B「え?」

海兵C「は」パキキキキキキ

海兵「」ピキーン


ブランニュー「あ!?」

赤犬「くっ!」グイッ


民A「……か、海兵が」

民B「海兵が凍らされたああああああ!!」

ウェーゼルトン「うわああああ!! ば、化け物だあああああ!!」

キャアアアアアッ ワアアアアッt

ブランニュー「だ、駄目です! 完全に民衆が恐慌状態に」

赤犬「おどれェ……」


アナ「エルサッ!!」

エルサ「あ、あああ……ああアアァァァッ!!」ダッ

アナ「待ってエルサ! エルサ、行かないで! エルサ!!」


赤犬「ヒエヒエが逃げるブランニュー! こいつら殺してええな!?」シュウウウ

ブランニュー「や、やめてええええええ!! 駄目ですってええええええ!!」グイッ

ブランニュー「オハラとは違うんです! こんな状況では隠蔽は困難です!!」

――――
――

赤犬「……ようやく民衆共を掻き分けたが」

ブランニュー「フィヨルドが完全に凍っている……」


アナ「はぁ……はぁ……」タタタッ

ブランニュー「! アナ王女」

アナ「エルサ……エルサ、どこなの……」


赤犬「……!! おったぞ! あそこだ!!」

ブランニュー「……凍らせた海を渡り、山のほうへ向かっていますね」

アナ「エルサ……!」タタッ

ブランニュー「アナ王女! 氷の厚さも不明なのにここを渡るのは危険です!」

アナ「でも……」


ブランニュー「幸い女王は山の方へ向かっています。おそらくはそこに籠るつもりでしょう」

ブランニュー「特に元帥がこの氷上を渡るのは危険すぎます。ここは別ルートから行くべきかと」

赤犬「くっ……」

赤犬(悪党を目の前にしてむざむざ逃がすことになるとは……)


赤犬「……前から思っちょったが、わしの能力はクザンやボルサリーノに比べて移動が不便じゃのォ」

ブランニュー「すぐに追いつけますよ。まずは凍らされた海兵達をどうにかしましょう」


アナ「エルサ……すぐ行くから」

今日はここまで
明日また来ます

ウェーゼルトン「……あ! 戻ってきた!」

ウェーゼルトン「一体どうなっとるのですかな!? 女王は一体どこに!?」

ブランニュー「落ち着いてください、公爵」

ブランニュー「残念ながらエルサ女王は未だ逃亡中です」

ウェーゼルトン「これが落ち着いていられるか! あの女は我々を攻撃したのだぞ!」

ウェーゼルトン「挙げ句見ろ! フィヨルドは凍り付いてこのザマだ! これでは帰れないではないか!!」

来賓A「そうだ、気候も激変し、寒くて仕方ない……」

来賓B「女王は我々をここに閉じこめるつもりなのか!」

来賓C「早く捕らえて何とかしてくれ!」

エルサ「ちょ、ちょっと。エルサはそんなこと……ただ少し混乱していただけよ!」

ブランニュー「皆さん、大丈夫です。ここにはサカズキ元帥がおられます!」

ブランニュー「島の気候を変えることは流石に危険ですが、フィヨルドに関してはすぐに解決可能です!」

来賓A「あ……!」

来賓B「おお、そうだった!」

ウェーゼルトン「元帥! 早くこの状況を何とかしてくだされ!!」

赤犬「あァ、容易いこっちゃ。少し待っちょれ。先に海兵達を……」

赤犬「…………」

赤犬(待て……ここで海兵達を無事に解凍し、来賓共を島から逃してしまえば、女王のやったことは事故として処理され無罪放免となる)

赤犬(そうなれば、ヒエヒエを手に入れるには女王を海軍に入れるしかない)

赤犬(だが、国家元首を海兵にするのは困難じゃァ)

赤犬(それに、あの女の身体能力がそれほど高いとも思えん。強力なロギアとはいえ能力者自身が弱ければ新世界レベルでは役に立たん)

赤犬(……ここは、あの女を処刑してヒエヒエの実だけ回収した方が正義の為じゃのォ)


赤犬「いや、やはり無理じゃァ」

ブランニュー「え!?」

ウィーセルタウン「なにィ!?」


赤犬「フィヨルドを解凍すること自体は可能じゃァ」

赤犬「だが、それだけの規模の能力を使えばアレンデール王国に大きな被害が出る」

赤犬「海兵達も下手にわしのマグマなんぞで溶かせば、無事に蘇生する保証はない」

赤犬「事態を打開するには女王を捕らえるしかないのォ」

来賓A「そ、そんな……」

ブランニュー「げ、元帥?」

赤犬「ブランニュー。話がある」


カクカクシカジカ


ブランニュー「……な、何と。しかしながら、元帥……」

赤犬「海兵もフィヨルドも後で何とかする」

赤犬「わしはこれから女王を殺しにいくけェ、ここは任せるぞ」

ブランニュー「は、ははっ!」


赤犬「よし。わしはこれからエルサ女王を追って山に入る!!」

赤犬「すぐに女王に何とかさせるけェ、少しの間、辛抱しちょれ!!」

ウェーゼルトン「おお、元帥が行くというなら安心だな」

来賓A「うむ、寒いですが、しばらく待ちましょう」

アナ「待って! 私も行くわ!」

赤犬「あァ?」

ブランニュー「アナ王女!?」

アナ「エルサと話したいの! 私の姉だもの。きっと話せば解ってくれると思う」


赤犬(……おそらく覇気使いではないとはいえ、敵はわしと相性の悪い強力なロギア)

赤犬(こいつは女王を油断させるのに使えるかもしれんのォ。いざというときは人質にしてもえェ)

赤犬「よし、お前も連れていっちゃるわ」

アナ「ありがとう!」

ブランニュー「は!? げ、元帥それは!」

赤犬「後は任せる、ブランニュー」

ブランニュー「は、はあ……」

――――――
――――
――

赤犬「まったく、なんちゅう間抜けじゃァ。馬を逃がすなんぞ」ザクザク

アナ「う、馬を驚かせたのはあなたでしょ!」ザクッザクッ

赤犬「貴様が雪の下敷きになりそうだったけェ、それを溶かしたんじゃろうがい!」

アナ「ううー。凍っちゃう凍っちゃう凍っちゃう……」

赤犬「マズイのォ。わしは平気じゃが、このままでは小娘が……」

アナ「あ! あそこに火があるわ!」

――――――
――――
――

アナ「ねえ! この冬はどこから来てるの?」

クリストフ「……北の山だよ」

赤犬「北の山、か……」

アナ「サカズキさん。この人に道案内してもらうってのはどうかな?」

赤犬「なるほど。ソリも持っちょるようだしのォ」


赤犬「おい店主。こいつの分もわしが出す」

クリストフ「は!? 何であんたが……」

赤犬「その代わりお前に仕事を頼みたい。支払いは海軍本部に請求せェ」ピラッ

オーケン「悪いけどうちは現金払いしか受け付けてないよ」ヤッホー

赤犬「あァ!? なんじゃとォ!? わしは現金なんぞ1ベリーも持っちょらんぞ!」

オーケン「じゃあ、これは売れないね」ヤッホー

赤犬「おどれェ……」

アナ「待って待って! 私が払うから!」

クリストフ「……何なんだ、こいつら」

――――――
――――
――

――ソリの上

アナ「その恋愛のプロフェッショナルの友達に会わせてよ」

クリストフ「……しっ! 黙って」

アナ「いいえ、黙らないわ。その友達は……」

クリストフ「静かにするんだ!」

アナ「……?」

赤犬「なんじゃァ?」


クリストフ「…………」

グルルルル…

クリストフ「走れ! スヴェン!」

スヴェン「ブモー!」パカラッパカラッ

アナ「どうしたの!?」

赤犬「なんなんじゃァ、さっきから」

クリストフ「狼だ!!」

アナ「狼!?」

赤犬「……あァ、そんなことか」

クリストフ「落ち着いてる場合か!? 追いつかれるぞ!」

赤犬「まァ、トナカイを食われても困るしのォ……少し待っちょれ」グイ

アナ「え!? 何する気!? 危ないわよそんなに身を乗り出したら!!」


赤犬「犬噛紅蓮!!」ドンッ!


ジュワアアアアアアア!!

キャインッ!! グオアアア…

シュゥゥゥゥゥ…

アナ「ひっ……!」

クリストフ「一体何を……!?」

クリストフ「狼が……」


赤犬「これで全部片付いたじゃろォ。そのままロバを走らせェ」

クリストフ「……あんた、能力者だったのか」

アナ「……」

アナ「追い払うことだって、出来たんじゃ……」

赤犬「あァ? 別に生かしとく必要ないじゃろうがい」

アナ(…………)

――――――
――――
――

アナ「崖があって進めなさそう……」

赤犬「女王がこの先に行っとるなら、どっかに道があるはずじゃァ」

クリストフ「……おーい、道があったぞ!」

クリストフ「ただ、岩場が多くてソリは進めなさそうだ。こっからは歩きになる」

――――――
――――
――

オラフ「黄色はダメだ。雪が汚くなっちゃう!」

赤犬「……なん、じゃァ、この雪玉はァ……」

オラフ「僕はオラフだよ! ハグして!」

アナ「……オラフ」

アナ「そうよ、オラフね!」


赤犬「この生きちょる雪玉を、女王が作ったっちゅうんか……」

赤犬(クザンはこんなことは出来んかった……)

赤犬(悪魔の実の能力は、食った者の資質や鍛え方で変化するが、女王にこんなことが出来るとは)

赤犬(こりゃァ、得難い才能じゃァ)

赤犬(本当に女王を殺すのが正しいんか……?)

――――――
――――
――

オラフ「ねえ、みんな! こっちに階段があったよ!」

赤犬「……こりゃァ、また」

クリストフ「すごい! 氷の橋なんて!」

アナ「この先に、エルサが……」


クリストフ「お前はここで待っててくれよ」

スヴェン「ブモー」

――――――
――――
――

赤犬「……なん、じゃァ……この城はァ……」

クリストフ「うおおおおおお!!」

オラフ「アナ、ノックしてごらん」

オラフ「……ノックを知らないのかな?」コソッ


アナ「……」コンコンッ


ギィィィィ

アナ「あっ……」


赤犬(こんな精緻な氷細工なんざァ、やはりクザンには出来んかった……)

赤犬(こりゃァ、本気で女王を殺すべきかどうか迷ってきたのォ)


アナ「……ねえ、1人だけで話したいの。お願い」

クリストフ「えええ! 氷は俺の命なのに!」

赤犬「……わしは構わん。少し考えたいこともあるしのォ」


アナ「オラフも、ね」

オラフ「なら1分だけ……」

アナ「ありがとう。行ってくるね」

バタンッ

赤犬(しかし、やはり王族……それも国家元首というのが壁になるのォ)

赤犬(女王の座をアナに譲位させて、エルサは海軍へ入れるか……?)

赤犬(いや。もう一つ、エルサ自身は弱いっちゅう問題もある)

赤犬(氷の橋や城も外観こそ美麗だが、所詮は飾り。その精緻さが戦闘で役立つかどうか……)

赤犬(生かすべきか殺すべきか……それが問題じゃァ)

いったんここまで
2時間後にまた来ます

オラフ「59……60! アナー!」ダッ

クリストフ「あっ、おいオラフ!」

クリストフ「……俺も入ろうかな」

赤犬(どうする……)

クリストフ「えーと、元帥? 俺も行くけど、あんたはどうする?」

赤犬「あ……? あァ、好きにせェ。わしはもう少しここにおる」

クリストフ「分かった。先に行ってるな」ギィィィ

――――――
――――
――

ドゴンッ!!

赤犬「あァ……? 中が騒がしいのォ」


クリストフ「うわあああああ!」

アナ「きゃあああああ!!」


赤犬「なんじゃァ?」


マシュマロウ「グオオオオオオオ!!」

赤犬「デカイ雪玉……女王の能力か」

オラフ「みんな、ここは僕に任せて逃げて!」

アナ「げ、元帥! 何やってるの!」

クリストフ「早く逃げないと!」

マシュマロウ「ぐおおおおお!!」ズンッズンッ

赤犬「バカタレがァ。わしを誰だと思うちょる」ボコッボコボコボコッ

ジュゥゥゥ

マシュマロウ「……ぐお?」


赤犬「大噴火!!」ドンッ!!


オラフ「うわわわわ!」

アナ「きゃあっ!」

クリストフ「なんだ!?」


マシュマロウ「ぐおおおぉぉぉォォォ……」ジュゥゥゥゥゥ…


シュウウウウゥゥゥゥ


クリストフ「あ、あいつは……?」

アナ「溶けちゃった……」

赤犬(……あの城。大噴火の余波を食らったっちゅうのに、思ったよりも溶けちょらんのォ。予想よりも強固じゃァ)

赤犬「何にしろ、これで腹は決まったわい」

赤犬(この期に及んでわしらを攻撃してくるなんぞ、明確な悪!!)

赤犬(確実に殺してヒエヒエの実を回収せにゃいかんのォ)


ズズズズズ…


赤犬「……? 何の音じゃァ」

オラフ「なになに!? 何か響いてるよ!」

アナ「これって……」

クリストフ「マズイ……逃げろ!!」

クリストフ「さっきの衝撃で雪崩が起きてるんだ!」

赤犬「なんじゃとォ!?」

ゴゴオオオオオッ!!

オラフ「うひゃああああ!!」

アナ「きゃああああああ!!」

クリストフ「掴まれ! アナ!!」

赤犬「ぬおおおおおおお!!」

ゴオオオオオオオ!!

オオオオオォォォ…………

――――――
――――
――

ジュゥゥゥゥ…

赤犬「……ふんっ」ズボッ

赤犬「おどれェ……どこまで流されたんじゃァ」


アナ「……うう」ガバッ

赤犬「生きちょったかァ、アナ王女」

アナ「……なんとか」

アナ「クリストフとオラフは……?」


オラフ「うわああ! アナ! あ、足が……僕の足の感覚がないんだ!!」

クリストフ「……それは俺の足だ」ズボッ

オラフ「あ、僕のはあっちか」


スヴェン「ぶもー!!」

クリストフ「スヴェン!! お前も無事だったか!!」

スヴェン「ぶもー」

赤犬「時間を無駄にしてしもうたわい。早いところ城まで戻るぞ」

アナ「う、うん……」


アナ「……う」ガクッ

クリストフ「アナ!? 大丈夫か!?」

アナ「……少し、寒い、かな」

クリストフ「髪の毛が……」サラッ

アナ「あ……」

アナ「変?」

クリストフ「……いいや」

オラフ「間があったね」ヒョイッ

クリストフ「すぐに答えたよ!」

赤犬「何事じゃァ?」

クリストフ「どうやら、女王の能力に当たった影響みたいだ」

赤犬「凍ってきちょるわけか。ほんならますます女王のところまで急がにゃいかんじゃろうがい」

クリストフ「待ってくれ。ここからなら俺の友達のところの方が近い」

アナ「友達……?」

赤犬「あァ? なぜそこで貴様の友達なんぞが出てくるんじゃァ」

クリストフ「あいつらの力なら何とか出来るからだよ。友達というか家族に近いけど」

赤犬「能力の効果を何とかするじゃと……?」


――――――
――――
――

――トロール族の集落

赤犬「こいつァ、驚いたのォ……」

赤犬「トロール族といやァ、世界的にも最も数が少ない珍種じゃが、アレンデール王国に生息しちょったとは」

赤犬「確か、見聞色の覇気に秀でた種族だったのォ。それ以外にも特殊な術を使うらしいが」

赤犬「……ん?」


トナカイヘーノアイジョウはイジョウダヨ!

モンダイハアルケレードダイジョオーブサー

ナカヨクヤレルハズアイガアレバ!


赤犬「急に歌いだしおった……なんじゃこいつら」

赤犬「まァええわい。トロール族を確認できただけでも収穫じゃァ」

赤犬「この一件が終われば、こいつらの中から徴兵するかのォ」


赤犬「おい、雪玉ァ!」

オラフ「……え? 僕のこと?」

赤犬「わしは先に女王の城へ戻るけェ、連中にそう伝えとけ」

オラフ「いいよ、わかった!」

――――――
――――
――

クリストフ「パビー、アナを治せるか!?」

パビー「すまない。心臓が凍ってしまっては私にはどうすることも出来ないんだ」

パビー「頭だったら簡単に治せたんだが……凍った心は真実の愛でしか溶かすことが出来ない」

クリストフ「そんな……」


アナ「真実の……愛……」

トロール「真実の愛と言えばキスだよ!」ブチュー


アナ「……赤犬」

クリストフ「なに? なんだってアナ!?」

アナ「私、サカズキ元帥のことが好きなの。多分」


クリストフ「……は?」

クリストフ「……え? え!? そうだったのか!?」

クルストフ「全くそんな素振りも感じられなかったぞ!?」

アナ「……だから、元帥とキスすれば、氷は溶けると思う……の、ハズ」

クリストフ「お、おう、分かった。よし、なら元帥に……」


クリストフ「……あれ? 元帥はどこだ」

オラフ「サカズキなら先にエルサのところへ行ったよ」

クリストフ「ええええ!?」

ごめん、とりあえず今日は以上
明日中にすべて投下します

――――――
――――
――

アナ「……ハァ……ハァ……」

クリストフ「急いでくれ、スヴェン!」

スヴェン「ぶもー!」

オラフ「大丈夫? アナ」

アナ「……う、ん」

クリストフ「もう少しだ、アナ。城が見えてきた!」

クリストフ「すぐに元帥のところまで連れていくからな。果たしてそれで本当に大丈夫なのか甚だ疑問ではあるが!」

スヴェン「ぶもっぶもっぶもっ……!」ザクッザクッザクッ!


スヴェン「……ぶもっ!?」ガクンッ


クリストフ「うお!?」

アナ「きゃあっ」

オラフ「うわあ!?」ゴロンッ


クリストフ「痛てて……スヴェン! 大丈夫か!?」

スヴェン「ぶ、ぶも……」ゼヒュー…ゼヒュー…

クリストフ「……限界か。無理させてすまない、スヴェン」

アナ「ご、ごめん、ね……スヴェン……」ガタガタッ

クリストフ「アナ……! くっ……」

オラフ「僕がアナを抱えていくよ!」

オラフ「クリストフはスヴェンについていて!」

クリストフ「でも……」

オラフ「大丈夫! 城までもう少しだしね! それに僕は疲れを感じないから!」

オラフ「僕に任せて! さあ、行こうアナ!」グイッ

アナ「……ありが……とう、オラフ」

クリストフ「……分かった。頼んだぞオラフ! すぐに俺も追いかける!」

――――――
――――
――

オラフ「しっかり、アナ! 真実の愛できっと氷は溶けるから!」タッタッタッタッ

アナ「……うん」


アナ「でも、私……本当は、よく分からないの」

アナ「愛が、どういうものなのか……」

オラフ「それはやっぱり、誰かのために自分を捧げられることじゃないかな」

オラフ「クリストフがアナの為に身を引いたみたいにさ!」

アナ「……クリストフが?」

オラフ「そうだよ! 気づいてなかったの?」


アナ「クリストフが……私を……?」

――――――
――――
――

――氷の城の外

エルサ「……落ち着かないと……冷静になるの……」

エルサ「力をコントロールして……抑えて……抑えるの……!」

エルサ「早く、早くしないと……アレンデールが……!!」


ギイイィィィ


エルサ「!?」

赤犬「ようやく見つけたぞ、クイーン・エルサァ」

エルサ「さ、サカズキ元帥……」


赤犬「貴様のせいでこの国が今どうなっちょるかわかっとるんかァ?」

エルサ「分かってる……でも、どうしたらいいか分からないの!!」

エルサ「制御できない……どうしたら、止められるのか……分からないの」


赤犬「アナ王女も、その能力で苦しんどるぞ」

エルサ「え……」

エルサ「そんな……嘘……アナ、が?」

赤犬「貴様と接触した時に心の臓を凍らされたんじゃァ」

赤犬「最後に見た時はだいぶ衰弱しとったわ」

赤犬「可哀想に、今頃もう死んどるかもしれんのォ」


エルサ「……う、そ」

エルサ「アナ……アナが……ッ」

赤犬「妹を助けたけりゃァ、もはや能力者である貴様が死ぬしかあるまい」

赤犬「能力者が死ねば、凍らせたモンも元に戻るはずじゃァ」

赤犬(まァ、実際はそうとも限らんがのォ)

エルサ「……う、あ」

エルサ「お願い……」

エルサ「お願い、アナに……アナに会わせて」

赤犬「あァ? この期に及んで命乞いとはァ……」


赤犬「人間はァ、正しくなけりゃ生きる価値無し!」

赤犬「本当に妹のことを思うちょるんなら、生き恥を晒すなァ!!」ボコボコボコッ

>>34
自己弁護しとるがな

>>77
すまぬ……すまぬ……他にもミスしてそう

――――――
――――
――

オラフ「いた! エルサとサカズキだ!!」

アナ「……よ、よかった」


アナ「……え?」

アナ「どうして……元帥の腕がマグマに……?」

アナ「だ、ダメ!!」ダッ

オラフ「あ! アナ!」タタッ

赤犬(ヒエヒエの実の元となるキンキンベリーは持っちょる)ボコボコボコッ

赤犬「……母国に海兵、そして妹までも氷漬けにした貴様は、既に存在そのものが大罪!!」

赤犬「世界政府海軍本部元帥の権限で、この場で貴様を処刑する!!」ドンッ


エルサ(……ごめんなさい……アナ)



アナ「やめてええええ!!」バッ

赤犬「ぬ!?」

エルサ「アナ!?」


赤犬「アナ王女……まだ息があったかァ」

アナ「元帥! エルサをどうするつもりなの!?」

赤犬「見て分からんかァ。わしのマグマで今からこの大罪人を焼き殺すところじゃァ」

アナ「な……!?」

アナ「な、何言っているの!? そんなことさせない!!」

赤犬「貴様の許可なんぞ必要でないわァ」

赤犬「この国とわしの部下を救うにはこうするしかないじゃろうがい」

赤犬「第一、貴様とて今、女王のせいで死にかけとるんじゃろうがァ」

アナ「う……そ、それは……」

赤犬「貴様の為にもこいつは殺さにゃァいかん」

赤犬「わしはただ、皆を救いたいだけじゃけえのォ」

アナ「ふざけないで! そんな……」



エルサ「……良いの、アナ」

アナ「エルサ!?」

エルサ「元帥の言う通りよ……アレンデールや貴女を救うためには、こうするしかないの」

エルサ「私には、結局、この能力を使いこなすことなんて出来なかった……」

エルサ「……最初から、こうするべきだったのよ」

アナ「そんな……ダメよ、エルサ……っ」

アナ「う……っ」ガクッ


ピキピキピキッ


エルサ「アナ!!」

赤犬「言わんこっちゃない……さァ、これで解ったろうが」

赤犬「貴様らが助かるには他に道はない!!」



オラフ「大丈夫!」

赤犬「……あァ?」

アナ「オラ……フ……」

オラフ「トロール達から聞いたんだ!」

オラフ「氷を溶かす方法は他にもある!」

赤犬「なんじゃとォ……?」


オラフ「キスだよ!」

赤犬「……はァ?」

オラフ「愛する者のキスが氷を溶かすんだ!」

オラフ「さあ、サカズキ! アナにキスをして!」


赤犬「……何を言うちょるんじゃァ、貴様はァ」

オラフ「え?」

赤犬「バカバカしい。愛だの接吻などくだらん話を聞かせおって」

赤犬「数秒無駄にした……さっさと始末をつける」ボコボコボコッ

エルサ「……っ」ギュゥッ


アナ「ダメェ!!」ガバッ

赤犬「こいつ……!」バキッ

アナ「ぐ……っ!?」ドサッ

エルサ「アナ!?」

アナ「げほっ……う、あ……」

エルサ「やめて! アナに手を出さないで!!」


オラフ「このお、アナに何するんだあ!」バッ

赤犬「……どいつもこいつも」

赤犬「わしの正義の邪魔をするなァ!!」

赤犬「ふんっ!!」ドガッ

オラフ「うわ!?」


オラフ「うーわあああぁぁぁぁ……」ヒューン


赤犬「……ようやく邪魔者が消えたかァ」

ごめん、時間切れになった
もう少しなんで明日、明日には終わらせます

お付き合いくださりありがとうございました

――――――
――――
――

アナ(……身体が……もう)

アナ(このままじゃ……誰か……誰か!)


クリストフ「アナー!!」

アナ「……!」

スヴェン「ぶもー!」


アナ「……クリストフ……スヴェン……」

アナ(立って…立つの……)ググッ

アナ「……ハァ……く、クリストフ……」ヨロッ


クリストフ「アナ!!」

スヴェン「ぶもー!」ザクッザクッザクッ


ジュゥゥゥ


アナ「!!」バッ


赤犬「終いじゃァ」ジュゥゥゥ

エルサ「……」ギュッ


アナ「……!!」

クリストフ「もう少しだ!!」


アナ「……」

アナ「……クリストフ」


クルッ

ダッ


赤犬「くたばれ!!」グオッ


アナ「だめええええ!!」バッ

赤犬「なに!?」

アナ「……」ピキピキピキピキッ


ドンッ!!


赤犬「ぬお!!」


シュゥゥゥ


エルサ「……え?」

エルサ「アナ……?」

エルサ「うそ……そんな……」

エルサ「アナ!! 目を開けて!! アナ!!」

赤犬(……わしのマグマを防いだじゃとォ?)

赤犬(しかも、王女の氷像の方には傷一つない……)


赤犬「まァええわい」

赤犬「とうとう妹が氷漬けじゃのォ、エルサァ」

エルサ「う……あ……」

赤犬「心の臓から凍っておったんじゃァ、果たして貴様が死んでも元に戻るかどうか」

赤犬「だが、これも自業自得じゃァ。その女がわしの邪魔さえしなければ、芯まで凍る前に貴様を殺せたのにのォ」

エルサ「アナ……あああ……」ギュゥッ

赤犬「心配するなァ。地獄に落ちても寂しくないように……」

赤犬「姉妹揃って葬っちゃるわァ!!」ボコボコボコボコッ


ピキッ

ピキキキキッ

赤犬「……!? なんじゃァ!?」

エルサ「……え?」


アナ「……」キィィィン


パリィンッ!!


ブワッ


赤犬「おおおおォ!?」ドゴッ

アナ「……う」

エルサ「アナ……アナ!!」

アナ「エル、サ……」

エルサ「アナ!! 良かった……良かった!!」ギュゥッ

アナ「どうして……私」


アナ「……愛」

エルサ「え?」

アナ「真実の愛が、氷を溶かす……」

アナ「これが、真実のだったのね!」」


エルサ「愛……」

エルサ「そう……そうよ、愛!」

エルサ「アナ、私……私、解った気がするわ!!」



赤犬「じゃかましいわァ!!」

エルサ「!」

アナ「赤犬……!」

赤犬「何が愛じゃァ、この悪党どもがァ!!」ボコボコボコッ

赤犬「小細工を使いおって!! 死にさらせェ!!」ジュゥゥゥッ

エルサ(マズい!! このままじゃ!!)キィィンッ



クリストフ「うおおおお!!」ガッ

スヴェン「ぶもおおおおお!!」ドゴッ

赤犬「!」

エルサ「あ……!」

アナ「クリストフ!! スヴェン!!」

ジュゥゥゥゥ

クリストフ「ぐ……あああアアァァァ!!」ジュゥゥゥゥ

スヴェン「ぶもおおおおお!!」ジュゥゥゥゥ

アナ「イヤアアアア!!」


赤犬「バカタレがァ、わしはマグマグの実を食ったマグマ人間!!」

赤犬「そのわしに突進なんぞするからじゃァ! そのまま焼け死ぬかァ!?」

アナ「2人とも! 離れて! 離れるの!!」

クリストフ「……あああアアァァ!!」ジュゥゥゥゥッ



クリストフ「いまだ……エルサ!!」

エルサ「……!?」

クリストフ「俺たちごと……こいつを崖から落とせえええ!!」ググッ

スヴェン「ぶもおおオオオ!!」ジュゥゥゥッ

エルサ「そんな……!」

赤犬「貴様ァ!?」

アナ「クリストフ……!」

クリストフ「……アナ……お姉さんと……仲良くやれよ!!」ジュゥゥゥ


エルサ「……う」キィィィンッ

エルサ「あああああああ!!」ゴッ


ゴオオオオオオオッ


赤犬「おどれェ!!」ボコボコボコッ

赤犬「こんな吹雪なんぞォ!!」

赤犬「大噴火ァ!!」ドンッ!


エルサ「あああああああ!!」ゴォォォッ


赤犬「ぬ……おおおおォ!?」

赤犬(馬鹿な……わしが、押し負けちょるじゃとォ!?)


ゴォォォォッ

赤犬「こ、このガキがアアア!!」ジュゥゥゥッ

エルサ「あああああああああ!!」ゴオオオオオッ!


赤犬「お……オオオ……こ、凍る…」ピキピキピキッ

赤犬「ば、馬鹿な……」

赤犬「馬鹿なああァァァ!!」

――――――
――――
――

赤犬「」ピキィン


エルサ「……ハァ……ハァ……」ガクッ

アナ「エルサ!!」バッ

アナ「大丈夫!?」

エルサ「ええ……ちょっと、力を使いすぎたみたい」

エルサ「でも、何とか、元帥を凍らせられた……あの2人のおかげで」

アナ「……クリストフ……スヴェン……」

エルサ「アナ……」ギュゥッ


パキッ


エルサ「!」

アナ「……え?」


赤犬「」ジュゥゥゥゥ


ピキピキピキピキッ


アナ「……う、そ」

エルサ「そんな……もう、力が……」


パリィンッ


赤犬「……ハァ……ハァ」ジュゥゥゥゥ

赤犬「舐めた真似をしてくれたのォ……おどれらァ」

アナ「あ……」


赤犬「……ん」グイッ

赤犬「……まだ足が溶けちょらんかァ」ジュゥゥゥッ


エルサ「アナ……逃げて」

アナ「エルサ!?」

エルサ「私はしばらく動けそうにない」

エルサ「あなただけでも逃げるの……早く!」

アナ「いや! エルサを置いていけない!」

エルサ「アナ! お願い、言うことを聞いて……」


赤犬「麗しい姉妹愛じゃのォ」ジュゥゥゥ

赤犬「逃げようが逃げまいが同じじゃァ……この足さえ溶ければ、すぐにどちらも……」


……ゴロンッゴロンッッ


エルサ「……?」

赤犬「……何の音じゃァ?」

アナ「後ろの山から……?」


……アアアアアアアア


ゴロンッゴロンッゴロンッ!!


アナ「この、叫び声は……」

エルス「まさか……」




オラフ「うわああああああ!! 誰か止めてええええ!!」ゴロンッゴロンッゴロンッ



赤犬「あ、ありゃァ……!」

エルサ「オラフ!?」

アナ「転がって巨大な雪玉になってる……」


オラフ「あ!? アナ! エルサ!」

オラフ「危ないからどいてえええ!!」ゴロンゴロンゴロンゴロンッ


赤犬「こ、こっちへ向かってきちょる……!?」

アナ「エルサ!」グイッ

エルサ「……!」ダッ

オラフ「うわああああああ!!」ゴロンゴロンゴロンゴロンゴロンッ


赤犬「お、おおおおおオオオオォ!!」グイッグイッ

赤犬「溶けろ!! 溶けんかァ、足ィ!!」ジュゥゥゥッ

赤犬「なぜ溶けんのじゃァ!?」ジュゥゥゥッ


オラフ「ぶつかるううううう!!」ゴロゴロゴロゴロッ

赤犬「く、くるな……」

赤犬「くるな雪玉あああァ!!」


ドッゴーンッ


オラフ「あ、止まった」


ジュゥゥゥゥッ


赤犬「う、おおおお!」


ズリッ


赤犬「!?」

赤犬「あ、足が、滑って……」


ズリズリズリズリ


赤犬「ま、マズい……落ちる……」


ズルズルズルズル…


赤犬「お、おおおおお!!」ジュゥゥゥッ


オラフ「あ、抜けれたや」スポンッ

赤犬「あ」グラッ


赤犬「お……おどれェ!! 雪玉アアァァァァァァ」ヒュゥゥゥン

アアアアァァァァァァァ……

――――――
――――
――

オラフ「エルサ! アナ! 無事だったんだね!」

オラフ「……あと、サカズキの声がした気がしたんだけど、気のせいかな」キョロキョロ


エルサ「オラフ!」タタッ

アナ「ありがとう、オラフ!」ギュゥッ

オラフ「? なにが? でもハグしてくれて嬉しいよ!」ギュッ


オラフ「ねえねえ、クリストフとスヴェンはまだ来てないの?」

エルサ「……」

アナ「……あとで、全部話すわ」


アナ「さあ、みんなのところに帰りましょう」

エルサ「……そうね。気候とフィヨルドと、海兵の皆さんを元に戻さないと」

オルサ「わかったよ! ほら、エルサ。僕につかまって!」

エルサ「ええ、ありがとう。オラフ」


アナ「…………」クルッ


オラフ「アナ? どうかしたの?」

アナ「……ううん。すぐに行くわ」




アナ「…………ありがとう。クリストフ……スヴェン」

――――――
――――
――


ヒュゥゥゥゥ…



ガシィッ


赤犬「ハァ……ハァ……」

赤犬「よ、ようやく上まで登ってこられたかァ……ハァ……」

赤犬「あれから一体何日経った……?」

赤犬「クソがァ……両足さえ無事じゃったら崖ごときにこんな苦労はせんかったっちゅうに……」

赤犬「……! 吹雪がやんどる……女王が元に戻したのか」


プルルルルル


赤犬「ん?」

電伝虫「プルルルルル。プルルルルル」


赤犬「電伝虫……ここに落としちょったか」

電伝虫「がちゃ」

赤犬「あァ……こちら赤犬じゃァ」


『ようやく繋がったか』



赤犬「……!? 五老星!?」

五老星『赤犬……3日も消息を絶って何をしていた』

赤犬「申し訳ありません。ヒエヒエの能力者だったエルサ女王に不覚をとり……」

赤犬「ですが、すぐに女王のところまで行き、今度こそヒエヒエの実を!」


五老星『その必要はない』

赤犬「はァ?」

五老星『いや、正確には、もはやそれは出来ぬと言うべきか』

五老星『エルサ女王は凍らせたものを元に戻した後、周囲の海賊団を壊滅させ、世界に対してヒエヒエの能力者であると宣言した』

五老星『加えて、海軍との間に、誤解による多少の諍いがあったともな』

赤犬「!?」


五老星『そのうえ、王国は多額の天上金を臨時に献上してきたぞ。女王戴冠の記念だそうだ』

五老星『わかるな? 女王は天竜人の支持をとりつけた』

赤犬「……」ワナワナ

五老星『この状況で女王が死ねば、政府が疑われることは必至だ』

五老星『アレンデール国民からも高い支持を得ておる。そのうえ天竜人の後ろ盾もあるとなれば、手など出せん』


五老星『彼女の方が上手だったようだな……中々の手腕だ、女王は』

五老星『ヒエヒエの実は諦めろ。それよりも無断欠勤している間に仕事が山ほど溜まっているぞ。早く海軍本部へ戻れ』

赤犬「ご、五老星! しかし!」


電伝虫「がちゃ」


赤犬「……お」


赤犬「おどれえええええェ!!」


~HAPPY END~

お付き合いくださりありがとうございました
吹き替え版3Dが公開されるそうなので、また観に行ってきます

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