モバP「胡蝶の夢」 (22)
P「ふぅ……」
ちひろ「お疲れのようですね。ドリンク飲みますか?」
P「ええ、頂きます。最近なぜか寝ても疲れが取れないんですよ」
ちひろ「寝れないということではないんですね」
P「不眠症の類ではないです」
ちひろ「おそらく睡眠の質が悪いのでしょう。寝る前に物食べたり
ゲームですとかパソコンですとかしてないですか?」
P「そういうのも気をつけてますよ。体質なんですかね……」
ちひろ「……起きたら足が汚れてたり、物が散らかってたりしませんよね」
P「夢遊病でもありません」
ちひろ「夢を見たりしますか?」
P「夢ですか。それが何かを見た気はするのですが何を見たか思い出せないんですよ」
ちひろ「ふむ。でしたらこのクスリをどうぞ」
P「これは?」
ちひろ「明晰夢って聞いた事ありますか?」
P「メイセキム……いえ、聞いたことないです」
ちひろ「明晰夢というのは夢の中でこれは夢だと自覚した夢のことを言います。
これをコントロールすることが出来るようになると夢の中で思い通りに
動くことが出来るのです」
P「ほほう。すごいですね」
ちひろ「そしてこれはその明晰夢を引き起こす特別なクスリです」
P「でもお高いのでしょう?」
ちひろ「タダですよ」
P「へ?」
ちひろ「タダです。今夜服用して寝てください。もしも疲れているもとが夢ならば
自由にコントロール出来るわけですし原因を取り除けるはずです」
P「いいんですか。タダで」
ちひろ「私だってプロデューサーさんのこと心配してるんですよ?
全く……たまには人の好意をちゃんと受け入れてください」
P「ありがとうございますありがとうございます!」
ちひろ「ああ、あと一応夢の内容を報告してくださいね」
P「でも夢を見なかった場合は……?」
ちひろ「人はある程度の睡眠をすれば必ず夢を見ます。
それを覚えているかどうかの話です。これを使えば夢の自覚が出来る
わけですし覚えていることは出来るでしょう」
P「そうですか。よし、じゃあ早速今夜試してみますね」
ちひろ「ええ、頑張ってください!」
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P「ふぁあぁ……そろそろ寝るか。おっと寝る前にこれを飲んでと……」
P「味はあまり良くないな。まぁスタドリだのエナドリで慣れたけど」
P「おお、なんかすごく眠くなってきたぞ……睡眠薬入りなのか……」
P「ぐぅ」
P「……あれ、もう夢の中なのか? どこだ、ここは」
P「扉がいくつも並んでる。あれだけ開いたままだああああ吸い込まれるうううう」
P「ハッ!」
P「ここは! あれ? 事務所?」
「仕事中に居眠りしないでください」
P「あ、はい。すみません。ちひろさん」
ちひろ「最近眠れて無いんですか?」
P「いえ、そんなことは……あれ、ここは夢の中なのか?」
ちひろ「まだ寝ぼけているようですね。顔でも洗ってきてください」
P「ええ、そうします」
P「どうみてもうちの事務所だな。頬を抓っても……痛い」
P「ということはこれは夢の中じゃ……っとっと」ドン
P「すまん。ぼーっとしてた。だいじょう……ぶ……か?」
「平気。プロデューサーこそ大丈夫? 固まってるけど」
P「渋谷……凛さん?」
凛「どうしたの?」
P「なんで渋谷さんがうちの事務所に?」
凛「何言ってんの? アイドルだからに決まってるじゃん」
P「いやいや、アイドルなのは知ってるけど……そうか、これは夢なのか」
凛「本当に大丈夫?」
P「つまり疲れの原因は夢の中でも仕事してるからってことか?
骨の髄までプロデューサーじゃないか、俺は」
凛「ん」ゲシ
P「あたぁ! 何するんですか!」
凛「痛いなら夢じゃないでしょ」
P「行ってしまった。機嫌を損ねてしまったようだ。
とりあえず顔を洗って謝ろう……いや、ここが夢の中なら謝る必要なんてないのか?」
P「明晰夢だっけか。自覚したのはいいけどこれを夢だと言い切るにはどうすればいいんだ」
P「こう感覚がリアルだと実はここが現実じゃないかと錯覚してしまいそうだ」
P「事実、俺はそれに飲まれつつある……」バシャバシャ
P「ふぅ。すっきりしたぞ」フキフキ
P「水の冷たさ。タオルの感触。そしてスネの痛み。どれを取っても現実にしか思えん」
P「俺の知っている現実との差をあげるとすれば……俺が渋谷さんのプロデューサーでは
ないということだけか」
P「……そうか、もしもこれが夢だとしたら俺は何でも出来るはずじゃないか?」
P「すっかり現実的すぎて忘れていたが夢なら出来るはずだ」
P「はああああああ! 飛翔!」フワッ
P「おっとっと。結構飛ぶの難しいな。でも飛んでるぞ、はは」スィー
P「あ、渋谷さん。さきほどは失礼しました」
凛「え、なんで飛んでるの」
P「いえ、夢の中だからじゃないですか」
凛「いや、現実なんだけど……」
P「しかし気分いいなぁ。このまま外に行くか」
ちひろ「プロデューサーさん。空飛んでないで仕事してください」
P「夢の中でまで仕事なんかしたくありません! オープンザウィンドウ!
大空が俺を待っているんだああああああ!!」
P「という夢を見ました」
ちひろ「欲求不満じゃないですか」
P「空中飛行なんて欲求、普通は叶いませんからね」
みく「みくも猫と戯れる夢を見たいにゃ!」
P「それは現実でも可能だろう」
ちひろ「まぁすっきりしたようでよかったですね。
今度はこれを飲んでください」
P「これは?」
ちひろ「夢を断つクスリです。断つと言っても夢を見ることは
阻止出来ませんが夢からの影響を受けなくなります」
P「はぁ。最初からこれを渡してくれればよかったのでは?」
ちひろ「夢の中の原因が明らかであり、それを取り除けるならば
精神的にはそうしたほうがいいんです。ですがプロデューサーさん
の場合は取り除くことが難しいものだと思います。なので
これを使って夢を遮断するんです。そうすれば疲れも
なくなるでしょう」
P「夢を遮断か……」
ちひろ「ちゃんと飲んでくださいね」
みく「ちひろさん、みくにもクースーリー!」
ちひろ「ダーメ」
みく「ぶー」
P「……」
P「これでよし、と」
P「ちひろさんには悪いけど俺はまだ明晰夢に用事があるんだ」
P「見方はちゃんと勉強したしあとは実戦あるのみ」
P「ふぁあぁ……じゃあ寝るか……」
P「ぐぅ」
P「……ここは昨日も来たな。すっかり忘れていたが」
P「また扉がひとつだけ開いている。おおお、吸い込まれていくぅ」
P「ハッ」
P「……朝か」
P「んー、なんか夢見たっけな。思い出せない……」
P「まぁいいや。仕事行こう……」
P「着いた着いた。しっかし何か忘れているような。夢を見たのかな。うーむ。
おはようございまーす」
ちひろ「おはようございます……あれ? 杏ちゃんは?」
P「ほ?」
ちひろ「いえ、ほ? じゃなくてですね。杏ちゃんはどうしたんですか」
P「何か忘れていると思ってはいたが……。
えーっとちょっと待ってくださいね……ふむ、確かに俺の担当は双葉杏になってるな」
ちひろ「何今更なことを言っているのですか!」
P「杏の家は……女子寮のあそこか。じゃあちょっと迎えに行って来ます」
ちひろ「もうしっかりしてくださいね!」
P「女子寮到着ー。というか事務所からこんなに近いんだし俺が来なくても
いいような……まぁいいか」
P「どうやって入ったものかな。いつもならどうしていたかな」
P「ん……いつも? いつもってなんだ」
P「いつも俺は双葉杏を迎えにきてたのか?」
P「俺の担当アイドルは双葉杏だったか?」
P「いや、違う。俺のアイドルはみくだ。これは夢だ! トォ!」スィー
杏「今日は絶対に部屋から出ないぞ」
杏「カーテンを閉めたこの暗い部屋で堕落を……」コンコン
杏「窓に何か当たってる。うるさいなぁ」シャー
P「やっほ」
杏「」
P「オープンザウィンドウ」ガララ
杏「」
P「ふぅ。だいぶ飛ぶのにも慣れてきたな」
杏「……は? え? ここ五階……え?」
P「杏くん! 仕事に行こう!」
杏「え、ちょ、ま」
P「ハッ」
P「……朝か」
P「双葉杏と言えばあのニートアイドルの双葉杏だよな」
P「つーか夢の中でもしっかり仕事したな。空飛んだけど」
P「骨の髄までプロデューサー……あれ、これ前にも言ったような言われたような」
P「……仕事いくか」
P「はー、着いた着いた。おはようございまーす」
ちひろ「おはようございます。良く眠れましたか」
P「ええ、おかげさまで。今日も快調です」
ちひろ「それはよかった。また夢を見始めたら言って下さいね。
またクスリ渡すので」
P「いつまで飲み続ければいいんですか」
ちひろ「ある程度続けていれば夢を見ても疲れなくなると思うので
それまでですかね」
P「ちなみに一本でどのくらい持つんですか」
ちひろ「一週間くらいかと」
P「二本目以降は有料ですか……?」
ちひろ「大丈夫ですよ。タダです」
P「なんだか気前いいですね。いいことありましたか」
ちひろ「まずは私が金の亡者だという認識から改めてください」
みく「おっはようにゃー!」
P「おう、おはよう。仕事すっかー」
P「ん……ここは……ああ、いつもの場所か」
P「夢は覚えているのにここは覚えていないな。なんでだろうか」
P「しかし綺麗な場所だ。降り注ぐような星空とはこのことだろう」
P「月も妙にでかいし。良くみたら足元は大きな時計か」
P「お、あそこのドアが開いてるぞ。今日はあそこに入るんだな」
P「……吸い込みの力弱まってないか。まぁいいや。自分で入ろう」
P「ハッ」
P「ここは……俺の部屋か。現実か夢かわからんからまずは飛行チェック。
とぉ!」フワッ ストン
P「ありゃ、あまり飛べないな。今日は調子悪いのかな」
P「しかし飛べるということは夢か。さて、どうしたものか」
P「はー着いた着いた。なんで仕事場に来てるんだか。
おはようございまーす」
まゆ「おはようございます」
P「ん? まゆだけか?」
まゆ「そうですよぉ。というか今日Pさんおやすみですよねぇ?」
P「あれ、そうだっけか……休みなんて存在したんだな」
まゆ「うふ、疲れてるんですねぇ。Pさん」
P「かもな。ところでまゆ。なんで腕に抱き着いているんだ?」
まゆ「嬉しいんです。今日は会えないかと思ってたから」
P「……とりあえずソファーまで行くか」
まゆ「ソファーまで行って……何するんです?」
P「そら立ちっ放しがきついから座る……いや、まゆは何がしたい?」
まゆ「えっ」
P「どっこいしょっと。ほら、今は二人っきりなんだろ? みんなはいつ戻ってくるんだ?」
まゆ「い、一時間ぐらいは……」
P「一時間あれば色々出来るな。まゆ。何がしたい?」
P(どうせ夢の中なんだ。何をやってもいいじゃあないか)
まゆ「まゆは……」カアア
P「おい、まゆ。なんか顔が真っ赤だけど大丈夫か」
まゆ「Pさんとキキキキスを……!」カアア
P「キスで終わりでいいのか」
まゆ「そそそそそれは……きゅう」バタン
P「あれ、まゆ? おい、まゆ。まゆううううううううう」
P「ハッ」
P「あれ、オーバーヒートしたまゆはどこいった」
P「というかここは俺の家じゃないか」
P「あれ、夢だったんだっけ」
P「今は現実だったっけ」
P「トォ!」シーン
P「飛べないな。ここが現実か。やれやれ、リアルな夢を見ていると
本当にどちらかわからなくなるな。困り物だ」
P「準備して仕事行くか」
P「到着。今日はどんな予定だったっけな。
おはようございます」
ちひろ「おはようございます」
みく「Pチャンおそいにゃ!」
P「ん? なんか急ぎの用事でもあったのか?」
みく「特にないにゃ!」
P「ないならいいだろ。このイタズラ猫め」グリグリ
みく「朝のスキンシップは大切にゃ」
P「じゃあ仕事すっかー」
P「ん」
P「いつもの場所か」
P「しかしここは一体何なんだ」
P「夢と現実の通い路か? ずいぶんと洒落ているが」
P「一応足元の巨大時計は動いているんだな。えーっと、十一時五十分かな」
P「空を見る限り夜だよな。これが十二時になったら何が起きるんだ?」
「夢が終わります」
P「えっ?」
桃華「どうかなさいましたか? なんだか呆然となさっていますが」
P「ん、いや……ちょっと考え事してただけだ」
桃華「ならいいですの」
P「この庭に植えられてるのはバラだっけか。いつ咲くんだ?」
桃華「もうじきですわ」
P「そうか。咲いたらまた来ることにしようか」
桃華「わたくしの家に住めばよろしいですわ。部屋はありますの」
P「そうもいかないだろう。世間体というのもあるからな」
桃華「そのような下らない道理など捨てていいですわ」
P「道理と建前があるからこそ社会は形成されるんだよ」
桃華「張りぼてですわね」
P「それが大事さ。お前も大人になればわかる」
ありす「さぁ食べてください」
P「むーりぃー」
ありす「なぜですか。折角作ったんですよ」
P「そもそもなんでお前が俺の家で飯を作っているんだ」
ありす「それはPさんが今日はコンビニ飯などという不健康なものを
食べようとしてたのでそれを阻止するために私がこうやって」
P「そこも重要だがなぜ俺が帰宅するよりも早く家の中にいたのかを知りたいんだ」
ありす「お金があれば大抵のことが出来ます」
P「ああ、わかった。あの事務員だな。金で俺を売ったんだな」
ありす「温かいうちに食べましょう」
P「なぁありす。調理中に試食ってしてるか?」
ありす「しませんよ。ちゃんと分量通りなんですから間違いありません。
それにイチゴを加えたんですよ? おいしくないなんてことが」
P「ありえるんだよなぁ……」
ありす「それに他の人にも食べて貰いましたから大丈夫です」
P「お前まさか喜多見さんに迷惑かけたんじゃないだろうな」
ありす「さすがに他の事務所までは出向きません。作って置いておいたら
村上さんが食べました」
P「ああ、村上……。担当のプロデューサーにメール入れておこう……」
ありす「おいしいって言ってましたよ」
P「へ?」
ありす「本当です。おいしいって言って食べてくれました」
P「馬鹿な……そんなことが……」
ありす「さすがにそこまで愕然とされると傷つきます」
P「いや、だって……」
ありす「あれから練習したんです、食べてください」
P「……わかった。食べよう」
ありす「たくさん食べてください。おかわりもありますよ」
P(――南無三!!)パクッ
ライラ「プロデューサー殿、プロデューサー殿」
P「どうした」
ライラ「口をあけてください」
P「こうか」アーン
ライラ「どうぞ」
P「ンム。これは……パンか」
ライラ「鳩にあげていたのでございます」
P「道理で鳩まみれなわけだ」
ライラ「鳩は平和の象徴……大切でございますよ」
P「そうだな。平和は大事だな」
ライラ「こうやってプロデューサー殿と鳩に囲まれて話が出来るのも
平和なおかげでございます」
P「本当はもっと忙しいほうがいいんだろうけどな」
ライラ「なぜでございますか」
P「そら、働いたほうが金貰えるだろう?」
ライラ「でも多分プロデューサー殿との平和はお金では買えないのでは?」
P「……ライラはたまにいいこと言うな」
ライラ「ライラさんかしこいですよ」
P「キミは……誰だ?」
「誰かであり、誰でもない女の子ですよ」
P「ここは現実なのか?」
「全ては夢であり現実であり、そしてあなたのいたかもしれないあらゆる場所なのです」
ちひろ「事務所には来ないし連絡も取れないから自宅まで来てみれば
まさかこんなことになってるなんて……」
みく「Pチャン! 起きて、Pチャン!」
P「ぐぅぐぅ」
みく「なんで朝なのに起きないの!」
ちひろ「ちゃんと飲むところを監視しておけばよかった。
まさかここまで囚われていたなんて」
みく「ちひろさん。Pチャンは……」
ちひろ「見ての通り寝ているだけです。私達からみればただそれだけ。
しかし実際は彼の心が夢に囚われているんです」
みく「夢に……?」
ちひろ「今、私達の認識しているこの選ばれた世界が現実だとしたら
夢というのは選ばれなかった世界。簡単に言えばIFの世界です。
人の夢の中にしか存在出来ない儚い世界。しかし元は現実との
分岐された世界。夢と現実の境界があやふやになり、認識が曖昧に
なれば夢を現実だと思い帰ってこなくなる……。当人からすれば
こちら側が夢だという認識になるということです」
みく「なんだかよくわからないけどPチャンは戻ってくるの?」
ちひろ「私が戻します。責任がありますから」
みく「なんでPチャンがこんなことに……」
ちひろ「おそらくプロデューサーさんは職業上、可能性の世界というのが
人よりも遥かに多かったはずです。もしかしたらそれが知らず知らずに
精神を圧迫してたのかもしれません」
みく「Pチャン……お願い、戻ってきて……」
「現実というのを一つの世界と認識してしまえば、他のあらゆる世界は夢になってしまいます」
「そうではないのです。全てが夢であり現実なのです。あなたの夢の中で見る世界全てに
息づく命があり、秩序が存在し、未来が存在するのです」
「夢だからと傍若無人に振舞えば、その世界の秩序は乱れ、未来が失われるかもしれません」
「だから大切にしてください」
P「ふーむ。全てが現実だとしたらプロデューサー業で死ぬんじゃないか」
「プロデューサーさんなら大丈夫ですよ」
P「どういう根拠の自信なんだ」
ちひろ「そこまでです!」
P「あれ、ちひろさん。どうしたんですか」
ちひろ「どうしたもこうしたもありませんよ! さっさと戻りますよ!
全くクスリを飲んでくださいと言ったのに飲まないなんて」
P「バレましたか」
ちひろ「……お説教は後にしましょう。今は戻ることが最重要です」
「どこに戻ると言うのですか」
ちひろ「現実です。彼には彼のいるべき現実があるんです」
「その現実もまた夢かもしれないのに?」
ちひろ「否定はしませんよ。ですが彼には彼の魂が息づいてきた世界
があるんです。彼からすればそこが現実であると考えるのが
自然ではありませんか?」
「……」
ちひろ「全ての魂に帰る場所はあるんです。それはあなたも同じ」
「私の……帰る場所」
ちひろ「おや、これは鐘の音ですか。十二時になったようですね」
P「星空が消えて、だんだんと白んでゆく」
ちひろ「これが夢の終わりです……」
P「……ん」
みく「Pチャン……?」
P「どうした、そんな泣きそうな顔して。というかなんで俺の部屋にいるんだ」
みく「Pチャーン!!」ダキッ
P「え、ああ、よしよし、泣くな泣くな」
ちひろ「やれやれ」
P「なんでちひろさんまで?」
ちひろ「プロデューサーさんがいつまでも来ないから迎えに来たんですよ」
P「えっ……うわ、もうこんな時間なのか。なんで起きれなかったんだろう」
みく「Pチャンが夢に囚われて……帰って来ないかと思った……」
P「夢? 何言ってんだ」
ちひろ「とにかく! 出社しますよ! ほら、準備して!
みくちゃんと私は外で待機してるので四十秒で支度してください!」バタン
P「そんなどこぞの空賊じゃあるまいし」バタバタ
ちひろ「ずいぶんと時間を押しちゃいましたよ」
みく「Pチャンも夢のこと覚えてないみたいだしこれで完全復活にゃ。
ここから巻き返していくにゃ」
ちひろ「……そうですね」
P「お待たせしました」
みく「Pチャン早いにゃ」
P「そら四十秒で支度しないと置いてかれちゃうからな」
ちひろ「それじゃあ行きましょうか」
みく「午前中の仕事なくてよかったにゃ」
P「そもそも午前中の仕事ないのになんで午前からいるんだ」
みく「もちろんPチャンに会うためにゃ」
P「愛い奴め。ウリウリ」
みく「にゃはは」
ちひろ「イチャつくのやめてもらえませんかねぇ」
みく「怒られちゃったにゃ」
P「そうだな。しかし今日はずいぶんと暖かいな。
そろそろバラも咲くだろうし、また紅茶でも飲みに行かないと」
みく「また? 誰と行くにゃ?」
P「あれ……誰とだっけ」
ちひろ「……昔、私と行った時のことでしょう」
みく「二人はどのようなご関係で……?」
P「スカウトしに行ったときだったかもな。今度はみくも一緒に行こうな」
みく「楽しみにゃ」
こうしてプロデューサーさんはこの世界に帰還した。
夢での出来事はもう既に覚えてはいないだろう。
だがこうしてふとした瞬間に、片隅にあった可能性の世界の記憶が蘇る。
きっとこれからもずっと。
P「毎日毎日飽きもせずに最高気温更新なんてよくやるもんだ」
P「あぢぃな……ん?」
「……」テクテク
P「あの子、どこかで見たな……どこだっけな。思い出せない」
P「……ちょっとスカウトしてみるか」
P「おーい、そこのキミ。待ってくれ」
「……」クルッ
P「呼び止めてごめんね。俺はこういうもので」スッ
「プロデューサーさん、ですね」
以上
渋谷凛(15)
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前川みく(15)
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双葉杏(17)
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佐久間まゆ(16)
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櫻井桃華(12)
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橘ありす(12)
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ライラ(16)
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