俺「暴力はやめ……」幼馴染「うるさい!」 (119)

始業式!

それは高校生活において一つの通過点であり、自分を変える大きなチャンスでもある。

しかし俺は、その始業式……いや、高校自体が心底嫌だった。

幼馴染「あれ? 俺じゃん!」

俺「やべ……!」

そう、こいつと再び同じクラスになるかもしれないからだ。

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俺(おげ……朝から幼馴染かよ。こいつは不機嫌になると、すぐ暴力を奮うメンヘラ……)

幼馴染「な、なに黙ってんのよ!」ボカッ

俺「痛ッ! 鞄は反則だろ、鞄は!」

幼馴染「うるさい! 私の質問にちゃんと答えなさいよ!」

俺(めんどくせ……)ハァ

幼馴染「クラス替えね」

俺「ああ」

幼馴染「同じクラスになれると良いわね♪」

俺「そうだな」

幼馴染「全然心がこもってない! 何なのよあんた!」ボカッ

俺(ま、マジで勘弁して!)

幼馴染は黙っていれば可愛い。

日本人には無いイラン系の顔立ちに男子はメロメロになること間違い無しだろう。

幼馴染「俺ー! リスの死骸見つけたんだけどいるー?」

この異常な性格が男子の評価をガタ落ちさせてしまった。

俺「いや……無理だわ、流石にリスの死骸は……」

幼馴染「愛妻からの贈り物を拒むの? 殴るよ?」

俺(目が怖い……目が怖いです!)ブルブル

俺「分かった、分かったから取り敢えずリスは捨てろ」

俺「ホラ、校舎も見えてきたし、お前の愛は身に染みたよ」

幼馴染「むふん、賢い選択ね」

そりゃ殴られたくないもんな。

幼馴染「ご褒美に……思い切りビンタしてあげる!」

俺「は?」

パチーン

……ふぅ、頭が吹っ飛ぶかと思った。

帰宅したら頸椎にビールとつまみを振る舞い、しっかり労わないとな。

幼馴染「俺! クラスの表が貼り出されてる!」シュタタタタ

俺「あ、おい待てよ!」

まだヒリヒリする左頬を摩りながら俺は疾走する幼馴染を追いかけた。

幼馴染「あぁーーー!!」

俺「どうした、そんなに驚いて」

幼馴染「く、クラスが……ちが」ガクゥ

膝から崩れ落ちる幼馴染を尻目にクラスを確認。

なるほど、俺がC組であいつがA組か……イイじゃん!

俺「ホッ」

幼馴染「安堵しないでよぉー! 私達離れ離れになっちゃうんだよぉー!?」

幼馴染がヒステリックに泣き叫ぶせいで見事に見世物になっている。

俺「お前さ、大袈裟なんだよ。別クラスになるだけで今生の別れみたいに泣き喚いてさ」

幼馴染「ど……」

幼馴染「どうしてそんなに冷静でいられるのよー!!」ドゴ

俺「おぐふッ! 鳩尾はダメ! 鳩尾は弱点だから!」

幼馴染「あんた、上手く逃げおおせたとでも思ってるでしょ」

俺(ギクッ!)

幼馴染「逃がさない……あんたは私と一緒に居なきゃならないの」

俺(怖ぇーー!!)

ーC組ー

俺「……とまぁ幼馴染がメチャクチャメンヘラなわけよ」

友「なるほど、確かにそれはメンヘラだね」

俺「だろ!? 知恵者のお前なら何とかしてくれると思ってさ」

友「……君は彼女の暴力が怖いのかい?」

俺「まぁメインはそうだな。調教されかかってると言うか」

友「なら君が先に彼女を調教すれば良いじゃないか」

俺「ちょ、調教!?」

涼しげな顔で物騒なことを言うなこいつは。

友「そう、君にこの皮の鞭を一ヶ月貸すよ」

おい、それは学校に持ってきちゃいかんだろ!

友「二、三回打てば泣いて助けを乞うだろうから、条件を提示するんだ」

友「……僕の性奴隷となれとね」

俺「あ、もう良いっす。話が別次元過ぎるし俺にそんな趣味は無いんで」

ガラッ

幼馴染「俺ー! いるー?」

俺(うっ……来やがった)

幼馴染「さっきは人前で泣き叫んでごめんね? そろそろ始業式始まるから一緒にー」

俺「断る!」

幼馴染「……え? どうして? 殴られたいの?」

俺(もうこいつとは付き合い切れねぇ)ダッ

ドン ッ

???「きゃっ!」

俺「ご、ごめん!」

少女「痛たた……」

俺(随分と大人しそうな子だな。もしかして新入生か?)

幼馴染「見惚れるな、バカ!」

俺「この子、右足捻ってるぞ」

俺「こうなったのは俺の責任だ、保健室に連れて行く」

少女「あ、ありがとうございます……」

少女「ごめんなさい、ホントにごめんなさい。おんぶまでしてもらって」

俺「それはこっちのセリフだ。俺が見境無く走っちまったから」

俺「ところで、嬢ちゃんは新入生か?」

少女「あ、はい。1年A組の水戸園香です」

俺「そっか、俺は2年A組の俺と言うんだ。よろしくな」

俺「で、嬢ちゃんはどうして二年の教室に来ていたんだ?」

少女「あれ? でも先輩C組から……」

俺「え? あ、ああ」

俺「そうそう、俺C組だよ! ちょっと色々あり過ぎて混乱してるんだ」

少女「……ふふふ。先輩って面白い人ですね」

少女の清楚且つ妖艶さを帯びた笑みが俺の心を鷲掴みにした。

俺「や、やべぇよ……」

酉変わってすみません
途中の3つと今までのは同一人物です

名前男じゃない?

もしかして、リアルであった話か!!

>>29
[田島「チ○コ破裂するっ!」]の要素も僅かながら入っているので一応最後まで「俺」で貫きますw

>>30
それは極秘です

俺「よし、ここが保健室だ」

俺「失礼しまーす」

少女「あれ……? 誰もいないです」

幼馴染「保健室の先生は今、博多に出張してるわよ」

俺「!!」

背筋がゾッとした。

物音を一切たてずに尾行していたのか、この女は。

少女「せ、先輩のお友達ですか……?」

幼馴染「俺、いつまでその糞女の世話をしているつもり?」

俺「糞女? 園香ちゃんは高校に進学して間もない、右も左も分からない新入生だぞ!」

幼馴染「ふん、どうだか!」

俺「お前な……それが上級生のとる態度かよ!!」

幼馴染「……園香ちゃん」

少女「はい?」

幼馴染「今度俺君に近づいたら、地の果てまで追いかけてボコボコにするから」

少女「ひゃ、ひゃいぃ……」

幼馴染「俺君も、金魚の糞みたいにいるんじゃないわよ! あんたは私のモノなんだから」タッ タッ タ

少女「……」

俺「……気にするな、あいつは昔から面倒臭い奴なんだ」

少女「で、でも凄く怒ってましたよ……?」ブルブル

俺「一年の嬢ちゃんにはまだ早い話さ。さぁ、湿布を貼ってあげるから、こっちにおいで」

俺(幼馴染め、終いには刃物まで持ち出すんじゃないか?)

俺「これで良し、と」

俺「過度な運動は控えるんだぞ」

少女「はい! ありがとうございます、先輩!」ペコリ

俺(先輩か、いい響きだなぁ)

少女「……先輩ってモテそうですよね。面倒見良いし、優しいし、イケメンだし……///」

俺「よしてくれよ、俺は上級生としてすべき事をしただけさ」

俺(それに幼馴染が粘着してるんだ。モテる訳がない)

俺「あっ! 始業式が始まっちまう! 確か入学式は午後からだったよな」

少女「はい、お昼を挟んで午後の一時からです」

俺「よーし、なら無問題だ」

少女「あの、待って下さい!」

俺「どうした?」

少女「入学式終わったら……校門前で待ってます」

それだけ告げると彼女はびっこを引きながら元来た道を戻っていった。

俺「園香さん、何で二年の教室に来ていたんだろ」

謎は深まるばかりである。

ー始業式ー

聞いて驚け、遂に我が校にもイギリスからの留学生が来たぞ。

15歳の女の子で、1ーDの生徒に一週間だけなるらしい。

是非とも話してみたいものだ。

幼馴染「エロイムエッサイムエロイムエッサイム」

俺(なっ……!)

早速隣に座っている幼馴染が留学生を呪いだした。

幼馴染「だって、俺君が奪われちゃったら嫌ですもの。あー事故死しないかなー」


「また幼馴染か……」
「筋金入りのメンヘラだからな、仕方ないっしょ」
「私あーゆー女大嫌いなんだよね」


俺「止めろって! また陰口叩かれてるぞ」ヒソヒソ

幼馴染「今止めたら股間蹴るから」

俺(もうこれはメンヘラを通り越して心の病院に通った方が良いかもな……)

幼馴染「そもそも俺君には私と言う嫁が居るのに」

幼馴染「どうして他の女の子とも話すのかなっ!?」

俺(待て待て大声で叫ぶなよ、周りに聞こえるだろ!)

幼馴染「今後、俺君に近づく者がいたら私が容赦しないからねっ!」

俺(終わった……俺の貴重な二年間が……)

ー放課後ー

幼馴染「俺君! 一緒に帰ろう!」

俺「すまん、先生に呼び出し喰らっててさ。先に帰っていてくれないか」

幼馴染「……待つよ」

俺「へ?」

幼馴染「私と俺君は二人で一つだもん。片割れを置いて行くなんてできない」

意味が分からんのだが。

幼馴染「……校門で待ってる」

マズイな……!

校門には俺が保健室まで連れて行った後輩がいるじゃないか!

少女「先輩まだかな~」

少女「あれ? まさかあの人は先輩のお友達では……」

幼馴染「あら、園香……ちゃんだっけ? あなたもいたの」

少女「はい! 俺先輩に相談に乗って頂きたいことがありまして」

幼馴染「残念だけど、俺君には釘を刺しておいたわ。他の女の子と話したらタダじゃおかないってね」

少女「え……」

少女「それって、まるっきり先輩を束縛してますよね」

幼馴染「束縛? 違うわ、私は不安なの、俺君は浮気性だから」

幼馴染「だから私がしっかり監視しないと、他の雌花にフラフラ飛んで行ってしまうの」

幼馴染「雌花を摘み取るのも良いけれど、そんな事をして俺君が喜ぶわけないよね」

少女「つ、摘み取るって何ですか……? 何をするんですか?」

幼馴染「分からない? 私達の恋路を邪魔する者は全員……リンチの対象なのよ」

少女「ひいっ……!」

幼馴染「顔が痣で完璧に紫色になるまでボコボコに殴って……女として再起不能にしてやるわ」ウヒヒ

少女「……幼馴染先輩、もう正気に戻って下さい!」

幼馴染「正気ですって?」ジロ

少女「だって、だって今の幼馴染先輩完全にメンヘラ状態ですもん」

幼馴染「メンヘラ……ううん、至って正気よ。あんたの方こそクルクルパーなんじゃないの!? 精神科にとっとと行け!」

少女「違います! 私は簡単に大切な人を束縛したり、まして殴ったりなんてできません! 俺先輩が可哀想です」

少女「どうか、俺先輩から離れて下さい! ぶっちゃけ迷惑です!!」ペコリ

幼馴染「……迷惑?」

幼馴染「……あんたに、高校に入ったばかりの糞ガキに、私と俺君の……」

幼馴染「何が分かるって言うのよぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」ギラッ!

少女(パ、パン切りナイフ! 包丁でもカッターでも無く、何故にパン切りナイフを!?)

少女(と言うか今の状況相当悪くない!? このままだと入学早々先輩に殺されちゃう……!)


少女「ま、待って下さい! それはアウト! 学校で刃物振り回すのはアウトですよぉ!」

幼馴染「もう許せない! まずはあんたから血祭りに上げてやる! てぇぇいやぁぁ!!」ブゥン

少女(いや、いや! ナイフを振り下ろさないで、振り下ろされたら私は……!)

ガシッ

俺「……おいテメェ、後輩相手に何してんだよ」

幼馴染「俺君!」ビクッ


少女「俺先輩、怖かったよぉ~!!」ガシッ

幼馴染「あっ、勝手に俺君に抱き付いてんじゃないわよ! この女狐!」

俺(刃物を持ち出す……杞憂では無かったか)

俺「いいから幼馴染は刃物をしまえ。話は後で聞く」

幼馴染「ごめんなさいごめんなさい、ナイフを取り出すつもりとか全く無くてその」

俺「でも使ってたよな。現に園香ちゃんが怯えているし、野次馬共も集まってきてる」

幼馴染「うっ」

俺「普段から乱暴な奴とは思ってたけどさ。流石に愛想が尽きたわ」





俺「もう俺には、近づかないでくれ。高校在学中も、卒業してからも、ずっとだ」

ー俺の家ー

少女「先輩、いきなりぶった切っちゃって良いんですか?」

俺「何を?」

少女「幼馴染先輩を冷たく突き放して、明日から気まずくならないのかと」

俺「……あいつはそれ相応の罪を犯した。公衆の前で暴れるという罪をね」

俺「お前も危うく命を取られそうになったんだろ? 危険人物からは離れる。正当な判断じゃないか」

少女「そうですね……」

俺「よし、茶でも出そう。ダージリンとレモンティーがあるけど、どっちにする?」

少女「ブラックコーヒーで」ニコッ

俺「人の話を聞けよ」

一応今日はここまでで

俺「で、ダージリンとレモンティーどっちにする?」

少女「うーんっとね……>>71にします!」

1.ダージリン
2.レモンティー


Caution!!
この選択は、エンディングに大きく影響する可能性があります

1

少女「美味しい……先輩のダージリンティー美味しいです」

俺「ははは、お気に召してくれた様で恐悦至極だわー」

少女「……あの、先輩に話したいことがあります」

俺「ん? 恋の相談なら他に当たってくれよ。俺は生まれてから16年一度も」

少女「違います」

少女「人に見せるのは抵抗があったのですけど、これ見てもらえますか」サッ

俺「!?」

俺(手首に……リスカの痕!?)

少女「―――最近、不安なんです」

俺「不安?」

少女「はい。将来の事とか考えると怖くて怖くて、このままで私良いのかなって」グスン

俺「でも自傷行為はあかんよ」

少女「ですよね……みんな拒絶するんです。リスカ女など気持ち悪い、近寄るな」

少女「私は全然悪く無いのに"ぃ"ぃ"!!」グサッ

俺「だから自傷行為は止めろ!! そのシャーペンを置け!」

俺(もう嫌、今日の俺メンヘラとご縁があり過ぎだっつの)ハァ

少女「ふえぇぇぇぇん!!!」グサグサ

俺「おい……」

少女「やめてーーー!! 悪魔!! 来ないでぇーー!!!」ジタバタ

俺(駄目だ、完全に錯乱状態に陥ってる。両親が海外に出張に出かけていてマジで正解だったな)

俺「お願いだ……! 正気に戻ってくれ……!」ギュウッ

決死の覚悟で俺は後輩を力一杯背後から抱き締めた。

俺「読者の皆さんも大分冷えた目になってるし、ここらでハッピーエンドと洒落込もうや……!」

少女「先輩……」

コトン

カーペットの上に血まみれのシャープペンシルが転がった。

俺「折角仲良くなった可愛い一年生が狂う姿を、俺は見たくないよ」

少女「またやってしまったんですね、私……」

少女「先輩にまで迷惑かけて、ホント生まれて来なかった方が良かったのかも」

俺「生まれて来てはいけない人間など、この世には居ないさ」

俺「……お前と仲良くなった時、正直滅茶苦茶嬉しかった。ああ、やっと俺の事を心から判ってくれる人間に逢えたんだなって心から安堵したよ」

少女「うぅ……うぅぅ!」ウルウル


少女「こんな私を、先輩は、許してくれるの?」

少女「好きで、いて、くれる?」

俺「あぁ、今のところは先輩後輩としての好き、だけどな」

俺(うん、あんま深入りし過ぎると殺され兼ねんし)

少女「こ"め"ん"な"さ"い"~! うぐっひぐっ……!」

俺「ほらほらもう泣くな、夕飯の時間だし帰らないと親御さんに悪いぞ」

俺(俺にもだけど!!)

少女「すみません……ひくっお願いですけど、私を泊めて頂けませんか? えぐっ 一日だけで良いので」

俺「はっ?」

俺「いや、別に断る理由は無いが……親御さんに連絡入れろよ」

少女「両親は今出張でマラウイにいます」

俺「そっか、判ったよ。一緒に夕飯の材料買いに行こうぜ」

少女「あっ! 帰りにハーゲン奢って下さい!」

俺「おいおい、それ先輩に言う言葉かよ~」

ま、これにて一件落着って感じかな。

後輩の精神には不安な面があるけど、先輩である俺が上手にカバーしてやるか!

ゆっくりと忍び寄る群青色の夜に、俺は安堵の微笑みを浮かべるのだった。


THE END

疲れた
何かもう最後らへんカッコよさげな文句を吐いてみたり色々ぐちゃぐちゃになってました
ここから裏エンドになります
(レモンティーエンド)

因みに補足すると
レモンティーエンドは>>81の続きから
要は後日談みたいなものです

~スーパーマーケット~

少女「今日のご飯どうします~? 私は白身魚のホイル焼きが良いです~」

俺「そうだな……あとほうれん草のおひたしも欲しいな」

少女「あ、おひたし! あれメッチャ美味しいですよね!」

少女「それとハーゲンも忘れずに♪」ガサッ

俺(俺の分まで……こいつめ!)フフッ

俺(園香ちゃんって幼馴染みたいにしつこく無いんだよな)

俺(自傷癖という唯一の欠点を除けばお嫁さんに貰っても文句ナッシング)

俺(夜の営みも性格同様控えめなのかな? それとも夜は一変超弩級の淫乱に……)ムクムクッ

俺(お、ヤバいヤバい。外でご神体を顕現させたら警察のお世話になっちまう)

俺「ごめん、ちょっくらトイレに行ってくる」

少女「はぁ~い、買い物済ませておきますね」

俺「トイレトイレ!」

バタバタ

俺「ふぅ、危なく猥褻物陳列罪でお縄にかかるところだった」ホッ

俺「俺としたことが、まさかメンヘラの後輩に性的興奮を抱くとは」

俺「……おっぱいデカかったな」ムクムク

俺「バカ! 愚かにも程がある」

俺「……今夜、チャンスかもしれねぇな。混浴にでも誘うか~」ズヌヌヌ

この時、俺は気が付いていなかった。

鏡の隅でこちらを睨みつけている幼馴染の存在に。

俺「いや悪い悪い、遅くなって」

俺(やれやれ、暴れ馬を押さえつけるのには骨が折れたぜ)

少女「いえ、別に先輩に合わせるのも後輩の務めかなと思いますし」

俺「買い物終わったなら、早く帰ってメシにしようぜ」

少女「先輩、ちょっとした賭けしましょうよ」

俺「賭け?」

少女「はい、家まで競争するんです。勝った方がハーゲン二個食べられるの!」ダッ

俺「ちょ、待てよ! せめて合図くらいは出そうよ!」ダッ

幼馴染「……うぅぅ、楽しそうにして、許さない……」

トントントントントン

ほうれん草を切る単調な音がキッチンに響く。

競争は結局俺の負けで終わったがまぁ良いだろう、アイスの一つや二つ。

お、随分と美味しそうな香りが漂って来たじゃないか。

俺「園香ちゃんは料理得意なのかい?」

少女「小学生の頃にお母さんにみっちり鍛えられてましたから」

少女「料理のできない女は将来嫁ぎ先に困ると」

俺「へーぇ、厳しいんだね。そちらの親御さんは」

少女「どうぞ、できました!」

食卓には白身魚のホイル焼きを筆頭に数々の和食が所狭しと並んでいる。

少女(実は味噌汁の隠し味に私のヨダレ垂らしちゃったけど……別に問題無いよねっ)

俺「おぉ良い感じじゃん! とても一か月前まで中学生だった女の子の料理とは思えないよ」

俺「ありがとな、お前最高だよ!」ナデナデ

少女「そ、それ程でもぉ~///」クネクネ


ガンガン!

ガンガン!

俺「何だ? 外が騒がしいな」

少女「どうせ酔っ払いでしょ。早くしないとお味噌汁冷めちゃいますよ」

俺「ちょっと外見て来る」

俺(ったく、最近の押し売りもマナーが酷くなったもんだ)ジロッ

幼馴染「……よッ! ……!」ガンガン

俺(うげっ!)

俺(こいつ、相当キレてやがる。今扉を開ければあるのは死のみ……!)




幼馴染「早くあの糞女を引っ張り出しなさいよ! いるのは分かってるのよ!?」ガンガン

シーン

幼馴染「あらそう、あんたがあくまで抵抗するつもりなら――」

ミシッミシミシッ

幼馴染「力ずくでも通るからねーーーッ!!」

派手な音をたて、鋼の扉が毟り取られた。

少女「先輩、どうしたんですか!?」

俺「園香ちゃん、急いで俺の部屋に行くぞ!」

少女「え? なになに、全然状況が分からないんですけど」アタフタ

俺「幼馴染が来てる、俺達を殺す気だ!」

少女「幼馴染先輩が!?」

俺「ゴチャゴチャ話している暇は無い。死にたくなかったらついて来い!」 

自室に戻り、扉に鍵をかける。

俺「これでもまだ心配だ。キツいかもしれないけど、一緒に本棚を扉の前まで寄せてバリケードを作ろう」

少女「は、はい!」

生きるか死ぬかの瀬戸際にもう疲労は意識の彼方に吹っ飛んでいた。

俺「バリケードを張り終えたら急いでクローゼットに隠れるぞ!」

少女「でもここ狭いですよ……?」ギュウギュウ

俺「小さい頃友達とおしくらまんじゅうやったろ! その要領だ!」ギュウギュウ

少女「私達、助かりますかね……」

俺「俺が聞きたいくらいだ。少なくとも今の幼馴染の精神状態は殺人鬼のそれと通じている」

俺「まともに話とか、できる段階じゃねぇんだよ」チッ

ヒタ……ヒタ……

幼馴染「俺君~どこにいるのぉ~!? 私よぉ~未来の奥さんよぉ~!!」

幼馴染「あっはっはははははは!!!」

少女「こっちに来てます、来てますぅ……!」ウルウル

幼馴染「ここか、ここにいるのね」

ガチャガチャ

幼馴染「ふん、鍵なんかかけて私を止められると思ってるの?」

幼馴染「てぃやぁ!!」

バァン!

俺(扉とバリケードをたった一発で……蹴り飛ばした!?)

俺(あのメンヘライラン人め、一体何者なんだよ)ゾッ

幼馴染「ふふ~どこかな~どこかな~」

少女「……先輩、ごめんなさいっ!」バッ

俺(園香ちゃん!? 駄目だ、今クローゼットから出たら――)

少女「うわぁぁぁぁ!!」ガシッ

幼馴染「……放してっこの女狐!」

少女「私と先輩につきまとわないでぇ!」

幼馴染「はん、俺君の嫁にでもなったつもり? 大体あんたさえいなければ、あんたさえ入学してこなければ!」

幼馴染「私は俺君とラブラブな高校生活をエンジョイできたのに!!」バシン

少女「なによ古参ぶって、あなたはもう先輩から見切られたの! 幼馴染先輩の恋心は結局一方通行だったの! 流しそうめんの様なものだったのぉぉ!!」ドカッ

幼馴染「ふざけんなぁぁ新参がぁぁ!!!!」ギラッ

俺「園香! 早く幼馴染から離れろ、今度はマジで刺す気だぞ!」

グサリ

鈍い音と共に後輩の華奢な体が床に崩れ落ちた。

少女「せん……ぱ……」ビクッビクッ

俺「園香、園香! 大丈夫だ、すぐに止血してやる、それに救急車を……」

幼馴染「俺君のiPhoneみーっけ♪」バキャッ!

幼馴染「はい二つに割りましたーこれにてそこで喀血している糞女はおしまい☆」ニタァ

少女「わた……し…が、ば……かだ、ったの。と、げのついた……ば、らに手を、出した……」ゴフッ

少女「せんぱ、い……に、げ、て」グフッ




俺(これは、逃げるべきなのか!?)

俺(分からない、ここで逃げれば園香を見捨てる事になる。それだけは避けたい)

俺(でも……)

幼馴染「うふふ❤」

俺(くそっ! どうする……)

幼馴染「ねぇ俺、園香ちゃんを助けてあげても良いわよ」フフッ

俺「なに……」

幼馴染「勿論、俺君が私のモノになればだけど」

俺「モノに……? どう言う意味だ」

幼馴染「そんなの、決まってるじゃない」

幼馴染「人が絶対に踏み込むことの無い山奥でずーーーーっと二人だけで暮らすの!」

俺「なっ……!」ゾッ

幼馴染「そうだ、私ん家の金庫からお金を抜いて海外にでも渡ろうかしら」

幼馴染「チベットの山奥にでも飛べばお母さん達が追いかけて来る心配も無いし♪」

俺「そんなの……無理に決まってんだろ」

幼馴染「あれー? 園香ちゃんが死んじゃっても良いのー? 見た感じもって5分かな」

少女「ハァ……ハァ……そ、その人の言いなりに、なっちゃ……だ、め」

俺「……狂女め」



そして―――――――――















翌朝

少女「う、ううん……」パチッ

看護婦「先生、先生! 目を覚ましましたよこの子!」

医師「そうか、もう手遅れと思っていたが……!」

少女「え? え……?」

医師「自分の事を『俺』と名乗る少年が瀕死の君を運んできてくれたのだよ」

看護師「名前くらい聞いておけば良かったですね~命の恩人ですもん」

少女「……」ポロポロ

医師「ど、どうしたのだねっ? 何故泣くのだね!?」

看護師「もうそっとしておきましょう、先生」

ーチベットのとある山小屋ー

俺「くそッくそッ!」ガチャガチャ

俺(柱に鎖がしっかり固定されてやがる!)

キィー

幼馴染「暴れちゃだめよ俺君、あんたは私のペットなんだから」

幼馴染「安心して、ここには怖い猛獣も鬱陶しい両親も来ないわ」

俺(お前が怖いんだよ!)

幼馴染「はい、今日の夕飯」コト

俺(木の実に……生肉!? 何の肉だ!?)

幼馴染「何だか今の私って、俺君のお嫁さんみたいね///」

俺(地獄だ、目も背けたくなる様な地獄がこれから始まるんだ……)

幼馴染「もぅ可愛い、ガチガチ歯なんか鳴らしちゃって。上手に食べられないなら私が口に運んであげる」

幼馴染「あーんして、ほら、あーん……」


THE END

これにてレモンティールート終了です!

結局
ダージリンルート=ハッピーエンド
レモンティールート=バッドエンド
という感じですね

変な感じに終わってしまいましたが、今まで読んで下さった方々ありがとうございました!

ではまたな!

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年04月19日 (土) 23:49:24   ID: bVWfolKU

レモンティーに並々ならぬ恨みを感じる

2 :  SS好きの774さん   2014年07月31日 (木) 18:35:42   ID: QT8U8sp5

むかしレモンティーに何かあった?

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コメント:


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