春香「どうしたの？」

美希「だから、おにぎりは日本の形なの！」

春香「え？　う、うーん……確かに日本ならではの食べ物だと思うけど……」

美希「春香、ちょうどいいから今からおにぎりの正しい作り方をレクチャーするの」

春香「私、おにぎりくらい作れるよ？」

美希「一般的な作り方は、簡略化されたものなの。正しい作り方をレクチャーしてやるの」

春香「上から目線だね……」

美希「まず、二人一組で行うの！」

春香「おにぎりって一人でも作れるよね？　アレ？　私が間違ってるのかな？」

美希「いいからいいから！　ミキと春香でちょうど二人だね！」

春香「二人だけど……二人の意味あるの？」

美希「さっさと次行くの」

春香「せめて説明くらいしてよー……」

美希「手をよく洗うの」ﾊﾟﾁｬﾊﾟﾁｬ

春香「汚れてちゃダメだもんね。なんで桶なのかは聞かないけど」ﾊﾟﾁｬﾊﾟﾁｬ

美希「特に注釈なしなの」ﾌｷﾌｷ

春香「手を洗うだけだからね」ﾌｷﾌｷ

美希「SS的には、もうちょっと喋る内容があったほうが、作者が困らないって思うな」

春香「美希、SSって？　作者ってなに？」

美希「春香は気にしないでいいの」

美希「次に、清めの塩をまくの」

春香「清めの塩？　それ本当に必要なの？」

美希「春香はなのって言っちゃダメだよ。語尾が被っちゃうから」

春香「うえぇ！？　別に、そんなつもりじゃないよ！」

美希「いいから早く清めの塩をまくの！」

春香「塩をまくって、ここ事務所だよ？」

美希「いいからまくの！」

春香「じ、じゃあまくよ？　……えいっ！」ｼｵﾌｧｯｻｰ

美希「この時、手に付着した塩を落としきらないのがポイントなの」

春香「ねえ、これ掃除したほうがいいよね？」

美希「今はいいの、ほっとくの」

春香「いいのかなぁ……」

美希「ここの手順分けたら投下分増えたけど内容に困るの」

春香「さっきから変なこと言ってるけど、投下分ってなに？」

美希「春香の質問は無視して、次に行くの」

春香「一回くらい質問に答えてほしいな……」

美希「しゃもじを酒で清めるの！」

春香「酒？　お酒で清めるって、しゃもじをお酒に浸すの？」

美希「違うの。口に含んだお酒を、しゃもじに噴きつけるの」

春香「衛生的にいいのかな？」

美希「気にしないの」

美希「じゃあいくの！」ｵｻｹﾌﾞｰｯ

春香「ホントにやっちゃったね……というか、どこにお酒あったの？」

美希「冷蔵庫の中なの」ﾓｯｶｲ ｵｻｹﾌﾞｰｯ

春香「それってプロデューサーさんが大事にとっておいたやつだよ……」

美希「気にしちゃ負けなの」ｺﾞｸｯ

春香「ん？　飲んだ？　飲んだよね？」

美希「なんのコトかさっぱりって感じかな☆」

春香「だから、さっき一口飲んだよね？」

美希「ﾋｯｸ　……別に飲んでないの」

春香「いやいや、明らかに飲んだでしょ。ダメだよ、未成年の飲酒はご法度なんだから」

美希「酒は飲んでも飲まれるな！　なの　……ﾋｯｸ」

春香「顔赤くなってるよ」

美希「顔とか言ってもSSだから伝わらないって思うな」

春香「だからそのSSってなに？」

美希「ごちゃごちゃ言ってないで次の工程へと移るの」

美希「お次はこれなの！」ﾄﾞﾝｯ

春香「ご飯用意してあるんだ。準備いいね」

美希「おひつから炊きたてのご飯を手に取るの」

春香「おひつなんていつの間に用意したの？」

美希「春香は細かいこと気にし過ぎだって思うな」

春香「えぇー…………」

美希「さっさとご飯を手に取るの」

春香「うん……」

美希「この時の一回の理想の量は110グラムなの」

春香「細かいね」

美希「米2300から2500粒なの」

春香「数えられないよ……」

美希「大体でいいの。そんなに細かいこと気にしてたら老けるよ？」

春香「美希が指定してきたのに……」

美希「クレームは受け付けないの」

春香「えぇー…………」

美希「次は、日本刀で左右の空を切るの」

春香「その日本刀、どこから用意したの？」

美希「知らないの」ｻｯ

春香「なんで知らないの？」

美希「知らないものは知らないの」ｻｯ

春香「えぇー…………。それより、この工程いるのかな？」

美希「大事な工程の一つなの」

春香「する必要ないと思うけど……」

美希「大事なの」

美希「次の工程に入るよ。握り固めるの！」

春香「やっと普通になったね」ﾆｷﾞﾘﾆｷﾞﾘ

美希「最初から普通なの」

春香「え？」ﾆｷﾞﾘﾆｷﾞﾘ

美希「え？」

春香「日本刀のやつって、普通かなぁ？」ﾆｷﾞﾘﾆｷﾞﾘ　ﾃﾞｷｱｶﾞﾘ

美希「普通だよ？」

美希「ご飯を回転させながら握っていくの」

春香「もう、それくらい知ってるよー」ﾆｷﾞﾘﾆｷﾞﾘ

美希「一回の回転は120°、三回で一周するの」

春香「……やっぱり細かすぎだよ」ﾆｷﾞﾘﾆｷﾞﾘ

美希「この時の圧力は37キログラムがベストって感じかな☆」

春香「そんなのコントロールできないよ……」ﾆｷﾞﾘﾆｷﾞﾘ

美希「大体でいいの」

美希「強すぎると硬くて食べられないの」

春香「ご飯が固まっちゃうからね」ﾆｷﾞﾘﾆｷﾞﾘ　ﾏﾀﾃﾞｷｱｶﾞﾘ

美希「弱すぎると崩れてしまうの」

春香「崩れちゃうと食べづらいよね」　

美希「おにぎりを作るときは、その見極めが重要になるんだよ」

春香「37キログラムがちょうどいいのかな？」ﾆｷﾞﾘﾆｷﾞﾘ

美希「わかんないの」

春香「えぇー…………」ﾆｷﾞﾘﾆｷﾞﾘ

美希「加減がわからない春香にオススメしたいものがあるの」

春香「なに？」ﾆｷﾞﾘﾆｷﾞﾘ

美希「ふるふるフューチャーラボでは、おにぎり用の握力トレーナーを通信販売してるの」

春香「ふるふるフューチャーラボ？　なにそれ」ﾆｷﾞﾘﾆｷﾞﾘ

美希「語感が似てるからそうしたの」

春香「語感が似てるって？」ﾆｷﾞﾘﾆｷﾞﾘ　ﾃﾞｷｱｶﾞﾘ

美希「春香には言えないの」

春香「気になるなぁ、なにと語感が似てるんだろう……」

美希「あそこで響が持ってるのが握力トレーナーなの」

春香「あの三角のやつ？」ﾆｷﾞﾘﾆｷﾞﾘ


響「なんだこれ？　おにぎりみたいな形だなー」ﾆｷﾞﾘﾆｷﾞﾘ


美希「ふさわしい圧力がかからないと……」

春香「かからないと？」ﾆｷﾞﾘﾆｷﾞﾘ


響「おにぎり食べたくなってきたなー…………うぎゃっ！」ﾋﾞﾘｯ


美希「電流が走るの」

春香「痛そうだね……」ﾆｷﾞﾘﾆｷﾞﾘ　ﾃﾞｷｱｶﾞﾘ

美希「とっても効果的なトレーニングマシーンだから、買うべきって思うな」

春香「いや、いいよ……」ﾆｷﾞﾘﾆｷﾞﾘ

美希「気になるお値段はなんと！」

春香「話聞いてないし……」ﾆｷﾞﾘﾆｷﾞﾘ

美希「ごちゃごちゃうるさいの。それでは改めて……」ｺﾞﾎﾝ

美希「お値段たったの＄299.99なの！」

春香「高いよ……それと、日本円じゃないんだね」ﾆｷﾞﾘﾆｷﾞﾘ

美希「海外の人に人気なの」

春香「え！　なんで！？」ﾆｷﾞﾘﾆｷﾞﾘ　ﾃﾞｷｱｶﾞﾘ

春香「美希、おひつは空になったよ」

美希「一、二、三……五つあるね」

春香「私が二つで美希が三つでいいよ」

美希「ホント！？　ありがとうなの！　それでは、無事におにぎりが完成したから次の工程に移るの！」

春香「私しか作ってないけどね」

美希「ミキはレクチャー兼日本刀だからいいの」

春香「……うん」

美希「なんか大人しくなったの」

春香「ハハハ……ツッコミに疲れちゃったかな…………」

美希「次の工程は、海苔を火で清めるの」

春香「清めまくりだね」

美希「おにぎりは聖なる食べ物だから、当然だって思うな！」

春香「……そうだね」

美希「春香、元気出してほしいの」

春香「大丈夫だよ……うん、大丈夫…………」

美希「何枚か清めるの」ｷﾖﾒｷﾖﾒ

春香「マイペースだね……」

美希「春香の元気がないけど、海苔を清めおわったから次の工程にいくね」

春香「うん……」

美希「次の工程はみなさんおまちかね！　海苔を巻くの！」

春香「おまちかねってワケでもないけどね」

美希「いいから巻くの！」

春香「…………うん」ﾏｷﾏｷ　ﾃﾞｷｱｶﾞﾘ

美希「ご覧くださいなの！　これが、おにぎりなの！」

春香「……うん、知ってる」

美希「海苔の巻き方にも、いろいろあるの」

春香「例えば？」

美希「春香がさっき巻いたのは、one handなの」

春香「英語なんだ……日本の形ってなんだったの？」

美希「え？」

春香「え？」

美希「よくわかんないから次の紹介するね。これがhouseなの」ﾍﾟﾀﾘﾍﾟﾀﾘ

春香「スルーされた……」

美希「これがaround the worldなの」ﾍﾟﾀﾘﾍﾟﾀﾘ

春香「海苔を巻くのは側面だけなんだね。なんでそんな名前なのかはよくわからないけど」

美希「all blackなの」ﾍﾟﾀﾘﾍﾟﾀﾘ

春香「海苔を全体に巻くんだね。コンビニのおにぎりはall blackになるのかな？」

美希「そして最後、plainなの」

春香「……海苔巻いてないよ？」

美希「plainなの」

春香「……そっか」

美希「さくさく進めるよ。次の工程に早速とりかかるの」

春香「もうおにぎりは完成してるよ？」

美希「日本刀で左右の空を切るの」

春香「……やっぱりする必要ないよね？」

美希「大事なの」ｻｯ　ｻｯ

春香「……うん」

美希「心なしか春香の表情がさらに曇ってるの」

春香「だ、大丈夫だよ……ハハハ……ハハ…………」

美希「お次は、おにぎりを竹の皮で包むの」

春香「あ、なんかそれっぽい！」

美希「わざわざ用意してきたの！　大事な手順なの！」

春香「雰囲気でるねー」

美希「よりおいしそうにみえるの！」

春香「なんで竹の皮なんだろうね？　おむすびころりんでも包んでたけど」

美希「おむすびころりんはおにぎりじゃなくておむすびって呼んでるから邪道なの」

春香「そんなことないよ……」

美希「次は、出かけるの！」

春香「うぇ？！　後片付けは？」

美希「そんなの後でいいの」

春香「いやでも……」

美希「いいからいいから！　早く行こうよ！」

春香「いいのかな、これで……」

美希「それでは出発なの！」

春香「ああ……あとで律子さんやプロデューサーさんに怒られる……」

プロデューサーさん！　近場の公園ですよ、近場の公園！

美希「到着なの！」

春香「なんで公園なの？」

美希「む！　またなのって言った！」

春香「あ、ゴメンゴメン……。それで、公園に来た理由は？」

美希「そんなの決まってるの。手順だからなの」

春香「元も子もないよ……」

美希「あるがままを受け入れることが大事なの」

春香「うん……」

春香「ここまで来たし、もう吹っ切れちゃおっかな！」

美希「いい天気だねー」

春香「そうだね。雲ひとつない晴れ模様！　ピクニックも悪くないかも」

美希「……春香、ありがと」

春香「ふぇ？　急にどうしたの？」

美希「ミキね、夢だったの。おにぎりの正しい作り方を実践するのが」

春香「そうだったんだ……」

美希「春香のおかげで、夢が一つ叶ったの！　ありがとう！」

春香「……ううん、こちらこそ。ありがとう、美希」

春香「今日のおにぎり作り、いろいろあったけど私も楽しかったよ！」

美希「春香……！」ｸﾞｽｯ

春香「もう……泣かなくていいでしょ？」ﾆｺｯ

美希「そうだね、笑顔じゃないと、せっかくのおにぎりもおいしくなくなっちゃうもんね」ﾆｺｯ

春香「それじゃあ、そろそろ食べよっか」

美希「はいなの！　じゃあ、最後の工程なの！」

美希「おにぎりを食べるの！」

春香「うん！　じゃあ、せーの……」

二人「いただきまーす！」ﾊﾟｸｯ

美希「おいしいね！」

春香「晴れた日の公園で食べるおにぎりは格別だね！」

美希「うん！」

しばらくしてからなの

美希「あーおいしかったー」

春香「そうだねー」

美希「春香、おにぎりの正しい作り方、どうだった？」

春香「する機会はないと思うけど、楽しかったよ！」

美希「ここまでの工程を一言も喋らずに行うの！」

春香「……え？」

美希「これが、日本のおにぎりなの！」

春香「……失敗してるよね？」

同時刻・事務所

P「なんで塩がばら撒かれてるんだ？」

おわり

おまけだぞー

P「ん？　なんだこれ？」

響「！　プロデューサー！　それ危ないぞ！」

P「おにぎり用の握力トレーナーじゃん。もしかして響、これ使ったのか？」

響「うん、それ握ってると、なんかびりびりってきて……」

P「これはな、ふさわしい圧力がかからないと電流が走るんだよ」ﾆｷﾞﾘﾆｷﾞﾘ　ﾆｷﾞﾘﾆｷﾞﾘ

響「……平気なのか？」

P「オニギリストの端くれだからな」ﾆｷﾞﾘﾆｷﾞﾘ　ﾆｷﾞﾘﾆｷﾞﾘ

おわり