上条「エイプリルフールのせいだ……」(437)

土御門「カミやん、今時間あるかにゃー?」

上条「あぁ、時間はあるけど。何か用か?」

土御門「……カミやんと二人きりで話したいんだ。次の休み時間になったら体育館裏に来てくれ」

上条「ここじゃ駄目なのか?」

土御門「人前で話せる内容じゃねーんだにゃー。……絶対来てくれよ」

上条「お、おぉ……」

土御門「待ってるぜよ、カミやん」

上条(人前ではできない話、また魔術師関係か? でも、何で土御門は顔を赤らめてたんだろ……)

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アッー!

体育館裏

上条「悪い、待たせたか?」

土御門「いや、オレも今来たとこだぜい」

上条「で、話ってのは何なんだよ? まさか、またどっか海外に行けとか言うんじゃ……」

土御門「いや、違うぜよ。オレとカミやんにしか関係ない話だ」

上条「じゃあ、その俺とお前にしか関係ない話をさっさとしてくれよ」

土御門「それが、その……心の準備ってヤツがにゃー」

上条「お前らしくねーな、馬鹿にしねえから早く言えよ」

土御門「……分かった。言うぞ、オレの素直な気持ちだ」

上条「お、おぉ……」




土御門「カミやん、好きだ。オレと一緒に居て欲しい」

上条「……ほぁ?」


土御門「……何だよ、聞こえなかったか?」

上条「あ、あぁ……今日は耳の調子が悪いみたいだ。悪い、もう一度言ってくれ」

土御門「分かった、もう一度言うのは恥ずかしいけど……カミやんには聞いてもらいたいからにゃー」

上条(さっきのは聞き間違えだ、そうだ、きっとそのはず……)




土御門「カミやん、愛してる」

上条「……oh」


土御門「また聞こえなかったの? だったらもう一度……」

上条「……いや、聞こえた。……思わず現実逃避したくなるような内容だったけどな」

土御門「そうか、だったら、その……返事をしてもらってもいいかにゃー?」

上条「あー、その前に確認してーんだけど……」

土御門「確認? 何を確認するんだ?」

上条「えーと……お前は」

土御門「オレは?」

上条「俺が」

土御門「カミやんが」

上条「……好き?」

土御門「う、うん……」

上条「……頼む、顔を赤らめて伏し目になるのはやめてくれ」

上条「土御門のケツ御門あたたかいなりぃ…」

上条「あ、あぁ! 分かったぞ、友達として好きとかそういう 土御門「違うぜよ」

上条「……ライクじゃなくて?」

土御門「……ラブ、だにゃー」

上条「…………」

土御門「カミやん、何か言って欲しいぜい……じゃないと、オレ……不安で」

上条「……とりあえず、その涙目で上目遣いするのはやめてくれ」

土御門「それは……下(しも)目遣いしても良いって事かにゃ!?」

上条「もっとやめろ」

上条「土御門、ちょっといいか?」

土御門「愛しのカミやんのためならいくらでも待つぜよ。あっ、言っちゃった……」

上条「……よし、ちょっと時間もらうぞ。すぅー……」

土御門「カミやん? 何をする気だ?」

上条「すぅー……深呼吸してからの」

土御門「からの?」

上条「…………えええええええええぇぇぇええええええ!?」

土御門「か、カミやん!? 急に大声出してどうしたんだ!?」

上条「これが大声出さずにいられるか!? うわぁぁぁぁぁぁ! 夢だ、これは夢なんだぁぁぁあああ!」

土御門「か、カミやん……」

上条「嘘だ、嘘だと言ってくれ……もしくは夢であってくれ……」

土御門「カミやん……オレの想いは、迷惑だったか?」

上条「迷惑なんてもんじゃねえよ!? もう駄目だ、何も考えられねえ……」

土御門「カミやん……オレは」

上条「あぁぁ、それ以上言うな……気持ち悪い、吐き気がする……」

土御門「……それでも、オレは」

上条「うわぁぁぁぁぁぁ! 不幸だあああああ!」

???「カミやん、それ以上は許さへんよ」

上条「そ、その声は」

上条「青髪ピアス? どうしてここに」

青ピ「そんな事はどうでもええんや……。カミやん、今つっちーに何て言うた?」

上条「えっ? 気持ち悪いとか不幸だとか言っ 青ピ「このロクデナシがぁ!」ゴスッ

上条「ぐほっ……痛えじゃねえか! 急に何しやがんだテメェ!?」

青ピ「よーく考えてみい。つっちーはカミやんに告白をしたんや、それに対してカミやんは何をした?」

上条「それは……」

青ピ「いくら相手が男やからって、それは許される事やない。カミやん、どう思うんよ?」

上条「……そうかもな。悪かったよ、土御門」

土御門「……いや、別に良いぜよ。カミやんはやっぱり、優しいにゃー……」

上条(でも、その上目遣いだけは本当に気持ち悪いからやめて欲しい……)

土御門がサングラス外して上目してきたら余裕で足がすくむわ

青ピ「さて、つっちーくん。分かっとるんやろうな?」

土御門「……何のコトかにゃー」

青ピ「そういう態度取るんか……この、裏切り者!」

上条「う、裏切り者? どういう事だよ?」

青ピ「勝手にカミやんに一人で告白……抜け駆けは無し、って決めたやろ!?」

土御門「…………」

上条「ぬ、抜け駆け? って……まさか、いやそんな事は!」

青ピ「カミやん、聞いてや。ボクは、カミやんの事が」

上条「聞きたくない聞きたくない……」




青ピ「ボクもカミやんの事が大好きなんや!」

上条「……もうやだ」


青ピ「ボクもカミやんの事が大好きなんや!(開眼)」

土御門「なっ……どさくさに紛れて何告白してんだにゃー!」

青ピ「カミやんが好きなんやから仕方ないやろ!?」

上条(今の内に、こっそり帰ろう……帰ってスフィンクスを撫でて忘れよう……)

土御門「カミやん、どこ行くつもりぜよ」

上条「……えっ? いや、今日はあとホームルームだけだし帰ろうかなぁ、なんて……」

青ピ「逃がさへんで。さぁ、カミやんはどっちを選ぶんや!?」

上条「どっちも選びたくねえよ! テメェら二人とも頭冷やして考え直せ!」

土御門「それって、もしかしてオレ達は……」

青ピ「……フられた、って事なん?」

上条「当たり前だろうが! 分かったなら……って、おい。何だよそのナイフは……」

土御門・青ピ「…………」

青ピ「死のう」

上条「だああああ! ま、待て! 落ち着け!」

土御門「止めるなカミやん!」

上条「何で死のうとしてるんだよ!? 落ち着けって!」

青ピ「カミやんに愛してもらえないんやったら死ぬしかないやない!」

上条「意味分かんねえっつーの!」

土御門「だったらカミやん、どっちか選んでくれるのか?」

上条「えっ? 嫌だけど」

青ピ「死のう」

上条「す、ストップ! 分かった、選ぶ! 選ぶから!」

背中刺す刃が、自分の胸元を刺してどうすんスかwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

上条「俺が、俺が選ぶのは……」

土御門「……選ぶのは?」

上条(想像してみろ……土御門と腕を組めるか? 青髪ピアスと手を繋げるか?)

上条(……否ッ! 断じて否ッ! 想像しただけで吐き気がする……)


青ピ「(カミやん、地面に頭つけて悩んでもうてるな)」

土御門「(そろそろ良いかにゃー。アレの用意は?)」

青ピ「(ばっちりやでー!)」


上条(土御門は舞夏も好きだから女に興味がある分マシか……? いや、バイだから余計たちが悪い?)

十分後

上条(青髪ピアスは意外と大切にしてくれそうな気も……でも、うーん……)

青ピ「(……いくらなんでも悩みすぎやろ)」

土御門「(……ネタバラシするかにゃー。行くぜよ)」

土御門「カミやん、カミやん」

上条「ま、まだ待ってくれ! 休みの日に一緒に出かけるなら……」

青ピ「カミやん、顔上げてみい?」

上条「土御門は遊園地か? いや、意外と公園……それだと弁当は俺なのか舞夏なの 土御門「ストップ!」

上条「な、何だよ! 俺は真剣に!」

青ピ「ええから、顔上げてこの札見てみ」

上条「札? ったく、何だ…………ん?」

『ドッキリ』

上条「…………はぁ? ドッキリ?」

土御門「カミやん、今日は何月何日で、何の日かにゃー?」

上条「えっ? 今日は四月一日で……あああああああ!? まさか……」

土御門「そう! 今日はエイプリルフールぜよ、つまり」

上条「全部……嘘だったのか!?」

土御門「ピンポーン」

青ピ「テッテレー! まんまと引っかかってまったな、カミやん」

上条「ふ、不幸だ……あんまりだ……」

上条「テメェら……よくも、よくもやりやがったな!」

土御門「おっと、オレ達に文句言われても困るぜよ」

青ピ「恨むんならこんな事考えた人を恨むんやなー」

上条「…………」

土御門「じゃ、また会おうぜい」

青ピ「またなー」

上条「クソッ……クソッ!」

上条(誰だよ……エイプリルフールなんて考えたヤツは……いや、もうそんな事はどうでもいい)

上条(……帰ろう。帰って、インデックスにお菓子買ってきたぞー、って嘘でもつこう……)

上条(でも、その後噛みつかれたりしそうだな……理不尽だ)

上条(……帰ろう)

その頃、一人の少女がある重大な決意をしようとしていた。

姫神(春。それは。出会いの季節。つまりーー上条くんが他の女の人出会ってしまう)

姫神(これ以上相手が増えたら。私なんて。きっと。見向きもされない)

姫神「今日。伝えよう。きちんと……素直に」

上条「はぁ……不幸だ」

小萌「上条ちゃーん」

上条「小萌先生? 何か用ですか?」

小萌「元気がありませんねー。その様子だと……騙されちゃったんですか?」

上条「えっ!? 何で先生がそれを?」

小萌「放課後、まだみんな残っていたので、何かと思って聞いてみたのですよー」

上条「それが何か関係してるんですか?」

小萌「いえ、それが……上条ちゃんがまんまと騙された、という話で……」

上条「……話してたのは土御門ですか?」

小萌「は、はい……」

上条「土御門のヤツ……全員に言いふらしやがって! ……はぁ、もう嫌だ」

小萌「げ、元気出してくださいね……」

上条「善処します……また明日」

小萌(まったく、土御門ちゃんにも困ったものですね……)

吹寄「あっ、小萌先生」

小萌「吹寄ちゃん、そちらから来てくれるとは思わなかったのですよー。姫神ちゃんは大丈夫でしたか?」

吹寄「あたしは途中まで保険室に一緒に居たんですけど……急に立ち上がって出て行ってしまって」

小萌「ええっ!? 姫神ちゃん、大丈夫でしょうか……」

吹寄「自分で歩けるくらいですから、大丈夫だとは思いますけど……」

小萌「そうだと良いのですが……」

上条(エイプリルフール、訳すと……四月……フール? 四月フールって何だ? 帰ったらインデックスにでも聞くか)

姫神「待って」

上条「ん? 誰だよ……って、姫神?」

姫神「……少し。時間もらってもいい?」

上条「あ、あぁ。別にいいけど……どうした?」

姫神「うん……。その。えっと」

上条(……言いづらい事なのか?)

上条(二、三分は経ったかな……そんなに話しにくいのか?)

姫神「……ごめんね」

上条「い、いや、別にいいって。そういえば、ちゃんと咲いて良かったな」

姫神「えっ?」

上条「桜だよ、今年は遅咲きだっただろ? 今が見るには一番いいかもな」

姫神「……うん。そうかもしれな……っ!」

上条「うわっ!? 風か……こうやって風が吹くとさ」

姫神「なっ。何をするの?」

上条「じっとしてろよ……よし、取れた」

い、良いふいんき(何故か変換できない)じゃないか

姫神「花びら……取ってくれたの?」

上条「あぁ。姫神の髪は長いから、他の人よりもつきやすいのかもしれねーな」

姫神「……ありがとう。ねぇ。上条くん」

上条「ん? どうした?」

姫神「私。あなたの事が好き」

上条「……えっ?」

上条「ひ、姫神? 今、好きって言ったのか……?」

姫神「うん。言った」

上条「俺の事が……好き?」

姫神「……そうやって何度も確認されると。恥ずかしい」

上条「わ、悪い……」

姫神「答え。もらってもいい?」

上条「答え……ちょっとだけ、待ってもらってもいいか?」

姫神「分かった。でも。不安だから……あまり待たせないで欲しい」

上条「そ、そうだよな……すぐに答えるから」

上条(姫神が、俺の事を……? 落ち着け……一度落ち着こう)

上条(姫神は……可愛い、性格も良い、料理も上手い、髪もサラサラだ。ん? 彼女にするなら最高なんじゃねーか?)

上条(……来た、モテ期が来た! 不幸な俺にも幸せが来たんだ! 現にこうやって、今日は二度目の……二度目?)

土御門『今日はエイプリルフールぜよ』

青ピ『カミやんはチョロいなー』

上条(それに、土御門はクラス全員に言いふらした。つまり……)

上条(姫神の告白も……嘘?)

上条(いや、落ち着け! 姫神はいい子だ、そんな事をする訳がない!
今までだって何も無かった……あれ?)

上条(そういえば、お見舞いに行ったらゴムボールをぶつけられたり、
背中をさすったらアッパーされた事もあったな……って事は、もしかして姫神って)

姫神(……胸が。痛い)

上条(姫神って……意外とお茶目なのか? という事は、この告白は、お茶目な姫神のイタズラ!?)

上条(いや、万が一……万が一という事もある。確認だ、確認をすべきだ)

上条「な、なぁ、姫神。一つ聞いてもいいか?」

姫神「うん。何でも答えるから。何でも聞いて」

上条「えっと、告白してくれたけどさ……それって、今日じゃないと駄目なのか?」

姫神「それは……」

上条(告白は別に明日でもできる。だが、今日しかできないって事だとそれはつまり……)

姫神「そう。今日じゃないと駄目だったから」

上条(エイプリルフールの嘘って事じゃねえか! ちくしょう……ちくしょう……)

姫神(思い立ったその日が。吉日っていうし。せっかく決意したから。今日じゃないと……)

上条(分かったよ、姫神……そっちがその気なら、こっちも乗ってやらねーとな!)

姫神(顔つきが変わった。何か。決意したのかも……)

上条「姫神!」

姫神「は。はい」

上条「俺、知らなかったよ。姫神にそんな(イタズラ好きな)一面があったなんてさ……」

姫神「一面?」

上条「姫神、お前の言葉に応えてやるよ。一緒に今日を楽しもうぜ!」

姫神「えっ? ?ご。ごめん。確認したいんだけど。それって……私の想いは。届いたって事?」

上条「あぁ 、姫神の気持ち、受け取ったよ」

姫神「わ。私……っ。嬉しい。すごく。……嬉しい」

上条(イタズラできてそんなに嬉しいのか……でも泣く程の事じゃねーよな)

上条「だ、大丈夫か?」

姫神「うん。大丈夫……明日から。よろしくね」

上条(明日から? ?何の事だろうか……)

姫神「……泣き顔見られるの恥ずかしいから。今日は帰るね」

上条「えっ? ?帰っちまうのか?」

姫神「ごめんなさい。でも。明日からはずっと一緒に居るから」

上条(まぁ、同じクラスだしそりゃそうだよな)

姫神「だから。今日は……さようなら」

上条「おぉ、また明日なー」

姫神「最後に……上条くん。大好きだよ」

上条(最後まで嘘をつくのか……だったら俺も応えるべきだな、よし)

上条「俺もだよ、姫神。また明日からよろしくな」

姫神「う。うん。またね」

その一部始終を見ていた一人の少女がいた。

美琴(桜舞い散る中で、男と女が二人きり……声は聞こえなかったけど、何だろう……もやもやする)

美琴(気になる……も、もしアイツがあの女の人に告白されてたとかだったら……)

美琴(あああ! もう、どうしたらいいのよー!)

上条「おい、御坂。ビリビリ放電しまくって何やってんだよ?」

美琴「うっさいわね! アンタの事で悩んでんだからアンタには関係な……って、いつの間にか目の前に!?」

上条「さっきから居たけど。どうした、花粉症にでもなったか?」

美琴「ち、違うわよ!」

美琴「ね、ねぇ、一つ聞いてもいい?」

上条「別にいいけど、気になる事でもあるのか?」

美琴「えっと、あの女の人……アンタに告白でもしてたの?」

美琴(って何を聞いてんのよ私!? で、でも、気になるのは事実だし……)

上条「よく分かったな。その通りだよ、(冗談で)告白されたんだ」

美琴「そ、そっか。……付き合うの?」

上条「いや、付き合わねーって」

美琴「えっ!? じゃあ、その……振ったって事?」

上条「んー……違うな、そんなんじゃねえよ」

美琴(あの女の人、泣いて帰っていった……だから告白されて付き合わないって事は、振ったって事よね)

美琴(でも、そんなんじゃない、ってどういう意味か分からない……。中学生には、まだ早いのかな……)

上条(急に黙ってどうしたんだろうか……中学生だし色々あるのか)

上条「いやー、でも困ったもんだよな。今日だからって三人に告白されちまったよ」

美琴「ええっ!? そ、そんなに!?」

上条「あぁ、みんな(イタズラが)好きなんだな……俺はそういうのはよく分かんねーけど」

美琴「あ、当たり前じゃない。好きだから告白するのよ」

上条(……エイプリルフールの嘘は告白が定番なのか?)

美琴「……ねえ、アンタは……その、」

上条「ん? どうした、御坂?」

美琴「……ごめん、何でもない」

美琴(私が告白したらどうなる? なんて聞ける訳ないじゃない……)

上条「何だよ、俺はてっきりお前も俺に告白するのかと思っちまった」

美琴「え、ええっ!?」

美琴(な、何を言い出すのよ……確かに私だって、その……)

上条「……よし、俺はそろそろ行くよ。じゃあな、御坂」

美琴「ま、待って!」

上条「今度は何だよ……まだ何かあるのか?」

美琴「アンタって……彼女とかは、欲しいの?」

上条「そりゃ、まぁ……男としては、欲しいよな」

美琴(今日だけで三人……明日は? もし、明日素敵な人が現れたら、きっと……)

美琴(コイツの隣には、私じゃない女の人が……ずっと、)

上条(ふわぁ……春って、眠くなるよな……)

美琴(どうしよう……怖い。怖いけど、でも……)

上条「どうした? 今日のお前、何か変だぞ?」

美琴「今日の私……? じゃあ、いつもの私は、その……どうなのよ」

上条「いつもの御坂か。んー……考え過ぎたり、頑張ったり……その時その時を大事に生きてるって感じだな」

美琴「……えっ?」

上条「そういうの、少し羨ましいかもな。それに、何だかんだで優しくしてくれるし」

美琴(私の事、結構見てくれるのかな……)

上条「あっ、それだと今悩んでるのもお前らしいって事になっちまうか……」

美琴「ふふっ、何よそれ……。決めた。ねえ、さっき私が告白するかと思ったって言ったわよね」

上条「あぁ、それがどうかしたのか?」

美琴「それ、当たりって事」

上条「……?」

美琴「鈍いわね……だから、私も……アンタに告白する」

上条「み、御坂?」

美琴「私、アンタの事が好き。だから……側に居てもいい?」

上条「御坂……」

美琴(い、言っちゃった……どうしよう……怖い、怖い……)

上条(やっぱりエイプリルフールの嘘は告白ネタが多いみたいだな。でも、何で今更言うんだ?)

美琴(何で黙ってるのよ……)

上条(……あぁ、なるほど。嘘をつくのに慣れてねーんだな、だから顔が真っ赤なのか。一応、常盤台のお嬢様だし)

美琴「な、何か言ってよ……」

上条「御坂、恥ずかしいのによく頑張ったな」

美琴「へっ?」

上条「お前の気持ちは受け取ったよ。慣れてないんだろうけど、ちゃんと伝わったからな」

美琴「う、うん?」

上条「安心しろって、いい告白だったぞ」

美琴「???」

美琴「け、結局、私の告白はどうなったのよ……」

上条「だから言ったじゃねーか、お前の思いは受け取ったって」

美琴「それって、その……私の告白は、上手くいったって事?」

上条「あぁ、だからもう心配しなくても良いんだ」

美琴「そっか……良かった……私、不安で……怖くて、本当に怖くて……」

上条「大げさだな……(嘘をつくだけなのに)」

美琴「だって、だってぇ……」

上条(……エイプリルフールって、大変なんだな)

上条「落ち着いたか?」

美琴「うん……ごめん、もう大丈夫だから」

上条「本当か? 寮まで送ってく位なら……」

美琴「だから大丈夫、……明日はちゃんと笑顔で会えるから」

上条「分かった。気をつけて帰れよ?」

美琴「分かってるつーの。……明日が楽しみね、ばいばい」

上条(御坂、ずいぶん機嫌良く帰っていったな……)

上条(……嘘つくのって、楽しいのか?

上条「ただいまー」

イン「とうま、おかえりー」

上条「インデックス、フールってどういう意味だ?」

イン「とうまみたいな人の事を表す言葉なんだよ」

上条「俺みたいな?」

イン「うん、馬鹿って意味」

上条「よーし、インデックスは今日は飯抜きな」

イン「なっ!? それは酷すぎるかも!」

上条「冗談だって。……いや、それにしても今日は色々あったなぁ」

イン「どうしたの? 何があったの、とうま?」

上条「実はな、姫神と御坂に告白されたんだよ」

インデックス「へー、あいさと短髪に告白され……告白ぅ!?」

上条「まぁ、今日は仕方ないよな。日が日だし」

イン「と、とうま! 詳しく聞きたいかも!」

上条「だから、二人に(冗談で)告白されたんだって」

イン「そんなぁ……とうま、二人にはどうやって答えたの?」

上条「どう、って言われてもな……」

イン「じゃ、じゃあ……二人のどちらかと付き合うの!?」

上条「付き合う? いやいや、そういうのは無いから」

イン「ほっ……ちょっと安心したかも」

上条「? 何でインデックスが安心するんだよ」

イン「そ、それは……何でもないから放っておいて!」

上条(安心したり怒ったり……インデックス、今日はどうしたんだろ)

続きは午後にでも、それでは

イン(とうまの事を好きな女の子は……もしかしたら、もっと居るのかも。あいさと短髪とは付き合わない、でも他の女の人とは?)

イン(もし、とうまに恋人ができたら……私は、もうそばに居られない……とうまと離れ離れ)

イン(私は……祝ってあげる事はできるの? とうまの幸せを……とうまが誰か、他の女の人との幸せを)

イン(……でも、いつかはとうまと離れないといけないかもしれない。それは間違いない……)

イン(それでも、私は……とうまと一緒に居たい。終るのなんて嫌、離れたくない! それなら……今、伝えるしかない)

イン(私の想い、伝えなきゃ。伝えて、とうまと一緒にこれからも……)

イン(で、でも、断られたら……もう、とうまと一緒に暮らすなんて……)

イン(あぁ……どうしたらいいのか分からないんだよ……)

上条(インデックスが真剣な顔をしている……腹でも減ったのか?)

イン(もし、とうまに好きって伝えたら、ずっと一緒に居られるかもしれない。でも、駄目だったらもう一緒には……)

イン(もし、伝えなかったら、いつかは他の誰かと一緒になって、私は離れなくちゃいけない……)

イン(……とうまとは、ずっと一緒に居られないのかな。そもそも、とうまは私と暮らしていて何も思わなかったの?)

上条(インデックス、まだ何か考えてやがる……元気出してもらうために、今日はカレーでも作ってやるか)

イン(とうまが私をどう思っているのか、私には全然分からないんだよ……とうまが、怖い……かも)

イン(うう……こんなに悩む事になるなら、もっと早く素直に……あれ? そういえば、私……)

イン(とうまと出会ったばかりの頃、病院で好きって伝えた……って事はもしかして)

イン(……とうまは私の気持ちを知っている!? じゃあ、今まで鈍感っぽかったとうまの言動は分かった上での事!?)

イン(そうだとしたら、今まで私の気持ちを知りながら一緒に居たの? とうまぁ……とうまの考えている事が知りたいよぉ……)

上条(カレーはやっぱり安い鶏肉……いや、思い切って牛肉か? 間を取って豚肉という手も)

上条(そういえば、イギリスでもエイプリルフールってあんのか? インデックスに聞いてみるか……)

イン(……悩み過ぎてどうしたらいいのか分からなくなってきたんだよ。イギリスに戻らないといけないのかな……)

上条「インデックス、ちょっといいか?」

イン(イギリスには……戻りたくない、とうまのそばに居たい。でも、とうまは……私が居ない方が……)

上条「インデックス? おーい、インデックスさーん」

イン(……こんなに悩んで辛い思いするくらいなら、あいさや短髪みたいに素直に 上条「インデックス! 」


イン「わわっ!? びっくりしたんだよ……とうま、急に大声出してどうしたの?」

上条「何度も呼んだんだけどな……まぁいいや、イギリスについて話があるんだけど」

イン(イギリスについての話……!? それって……)

上条『インデックス、彼女ができたからイギリスに帰ってくんねーか?』

イン(そ、そんなの……そんなの……)

上条「いや、イギリスにもエイプリルフールってあるのか? ……って聞いてます?」

イン「そんなの……嫌! 絶対に嫌なんだよ!!」

上条「い、インデックス……?」

上条「な、何だよ……急にそんな嫌がったりなんかして」

イン「急じゃないもん! ずっと、ずっと考えてたんだから!」

上条(ずっと考えてた? ……エイプリルフールについてか?)

イン「私だって……このままじゃ駄目ってのは分かってる。でも、今はこうしていたいんだよ……」

上条「は、はぁ……そうっすか」

イン「私は……辛いんだよ。とうま、私の気持ちが分かる?」

上条(辛い? エイプリルフールは辛いものって事か……? ……ハッ! そういう事か!)

上条(エイプリルフール、これは英語だ、即ち……イギリスはエイプリルフールの発祥の地……)

上条(イギリス国民である限りは必ず嘘をつかなければならない、それは人を騙す術を知らない聖職者であってもだ……)

上条(つまり……エイプリルフールというのは、インデックスにとってはとても辛いイベントだったんだよ!)

上条「そっか、そういう事だったんだな……」

イン「……とうま?」

上条「インデックス、お前も辛かったんだな……それなのに、俺は何も知らなくて」

イン「とうま……ううん、私もいつかこういう日(とうまと離れる日)が来るのは分かっていたんだよ……」

上条「そうだな、生きていれば必ず、この日(エイプリルフール)は訪れるからな……でも、無理しなくても良いんだぞ?」

イン「……とうま、ありがとう。でも大丈夫。今日、私もあいさや短髪みたいに素直になるんだよ」

上条「姫神や御坂みたいに? それって……」

イン「うん……私もとうまに告白する」

上条(インデックス、覚悟を決めたんだな……そしてやっぱり、イギリスでも定番の嘘は告白ネタなのか)

イン「とうま、私はとうまと一緒に居る事ができて、本当に嬉しかった。だから、……だから、離れたくない!」

上条「インデックス……」

イン「ずっと、そしてこれからも……大好きだよ、とうま」

上条(やばい……嘘と分かってても、グッとくるものがあるな)

イン「お願い、とうま……私と、ずっと一緒に居て?」

上条(こ、これは……! もしこれが嘘じゃなかったら、どれだけ幸せだろうか……)

イン「は、恥ずかしいけど……私の気持ちは伝えたんだよ。とうま……とうまの気持ちを教えてくれない」

上条「俺の気持ち、か……そうだな、こうやって表せばいいか?」

イン「……っ!? と、とうま? 急に抱きしめたりなんかして、どうしたの……?」

上条「辛かったのに、よく頑張ったな……お前の気持ちはちゃんと届いたよ」

イン「……とうま」

イン「とうま、確認……してもいい? 私の想いを……受け止めてくれるんだよね?」

上条「あぁ、インデックスの精一杯の言葉、きちんと受け止めたよ」

イン「とうま……とうまぁ!」

上条「お、おい、急に泣き出してどうしたんだよ?」

イン「だって、嬉しいんだもん……私、ここに居てもいいんだよね? イギリスに戻らなくてもいいんだよね?」

上条「へ? 当たり前だろ、何言ってんだ?」

イン「ぐすっ……とうまにとっては当たり前かもしれないけど、私にとっては最高に嬉しい事なんだよ」

上条「そっか、よく分かんねーけど喜んでくれて良かったよ」

イン(あいさ、短髪、ごめんね……私、とうまとずっと生きていくから)

上条(インデックス、いい笑顔してるな……嘘、か。今日くらい、ついてみるのも悪くねーかもな)

上条「インデックス、落ち着いたか?」

イン「……うん、もう大丈夫。ごめんね、とうま」

上条「お前も悩んでたんだな……気遣ってやれなくてごめんな」

イン「ううん、それも必要な事だったから……。とうま、私ちょっと出かけてくる」

上条「出かけるって、どこに行くんだ?」

イン「私ととうまの事を伝えたい人がいるんだよ。だから、会いに行ってくる」

上条「分かったよ、晩飯までには戻ってこいよ?」

イン「うん! いってきまーす!」

上条(……少し時間があるな。何をして時間を潰すか……そうだ!)

上条(せっかくのエイプリルフールだ、俺も楽しむしかねーよな! そうと決まれば、電話電話っと……)

上条「もしもし、土御門か? 頼みがあるんだけど──」

時間は過ぎて夜

姫神(私の想いを。あの人はちゃんと。受け止めてくれた)

姫神(もう。目立たなくてもいい。個性も要らない。ただ──)

姫神(あの人が。上条くんがそばに居てくれれば。それでいい)

姫神(……おやすみ。上条くん)

常盤台女子寮

美琴「ふんふふん、ふふーん♪」

黒子「あら、お姉様。ずいぶんとご機嫌ですわね」

美琴「えー? そうー? そんな事ないと思うけどなー、ねぇゲコ太ー?」

黒子「……浮かれていらっしゃいますの。春の陽気にあてられたのでしょうか……」

美琴(明日から、アイツと私は……きゃー! もう! 恥ずかしいじゃない)

黒子(……超能力者も、春の陽気には勝てませんのね)

美琴「ふふふ……ふふふふふ!」

黒子「そ、そういえば、今日はエイプリルフールだからといって、嘘の通報をするイタズラが多発したようで」

美琴「へー、そうなんだー。大変ねー。……ふふ、ふふふ」

黒子(……まったく聞いていませんの。いったい、何が……ハッ! ま、まさか……男ぉ!?)

黒子(……って、わざわざエイプリルフールに告白する物好きなんている訳がありませんの)

美琴「あーあ、早く明日にならないかなー……」

上条の部屋

上条「だ、だからそれはいいって!」

イン「ダメ! 私と一緒に寝ようよとうま!」

上条「それは流石にマズイって言ってんだろうが!?」

イン「とうま、何がマズイの?」

上条「それは……上条さんの上条さんがですね……」

イン「とうまのとうま? 何それ?」

上条「と、ともかく! 俺は風呂場で寝るからな! おやすみ!」

イン「あぁ! 待ってよとうま、とうまぁ!」


上条(インデックスのヤツ、急にどうしたんだ……? まぁ、とりあえず寝るか……)

上条(ふわぁ……色々あったけど、エイプリルフールも悪くねーな。嘘をつくのも、たまにはアリか)

上条「……すぅ、すぅ……」

翌日 四月二日

上条「ふわぁ……おはよう、インデックス」

イン「とうま! おはよう! えいっ!」

上条「なっ……急に抱きついてどうしたんだよ!?」

イン「だってー、とうまは学校に行っちゃうから、少しでもくっついておこうと思って」

上条「な、何だよそれ……恥ずかしいから離れろっつーの!」

イン「だーめ、離れないもーん」

上条(どうなってんだ!? いや、悪い気はしねーけど!)

イン「とうま♪ とうま♪ とーうまー♪」

上条「と、とりあえず離れろ! 朝飯作れねーだろ!?」

イン「むう、それは困るかも。寂しいけど……離れるね」

上条(インデックスのヤツ、どうしちまったんだ……?)

上条「……よし。朝飯食うぞ、インデックス」

イン「うん! うわぁ……とうまの作ってくれた朝ごはん、とっても美味しそうなんだよ」

上条「いつもと変わんねーと思うけどな。じゃ、いただきまーす」

イン「あむ……あぁ……とうまと朝ごはんが食べられて渡るは幸せなんだよ……」

上条「大げさだな……まぁいいけどさ」

イン「はい、とうま」

上条「ん? ウィンナーを俺の前にやってどうするつもりだよ?」

イン「えっとね……はい、あーん」

上条「ぶふっ!? い、インデックスさん……?」

イン「ほら、早く早くー。あーん」

上条「あ、あーん……んぐんぐ」

イン「どう? 美味しい?」

上条「あ、あぁ、美味しい……って、料理したのは俺だろうが」

イン「とうま、私にもやってよー」

上条「えっ? やるってまさか……」

イン「私にも食べさせてほしいんだよ」

上条「……そんな羞恥プレイをやれとおっしゃるのでございますか?」

イン「うん! ほら、あーん」

上条「えーっと……あ、あーん」

イン「あむ、……とうまの食べさせてくれたウィンナー、美味しいんだよ……」

上条(……いったい、何がどうなってんだろうか)

イン「とうま、本当に学校に行っちゃうの……?」

上条「当たり前だろ……何でそんなしんみりとしてんだよ?」

イン「……だって、寂しいもん」

上条「お、おい、昨日まではそんな事言わなかったじゃねーか……」

イン「でも、寂しいものは寂しいんだよ……お願い、とうま」

上条「うん?」

イン「早く、帰ってきてね……?」

上条(涙目+上目遣い……これは、反則だ……)

上条「わ、分かった ! 急いで帰るから、それでいいんだろ?」

イン「とうま……うん! いってらっしゃい!」

上条「あぁ、行ってくるよ」

上条(インデックス、今日は何であんなに……ん? あそこに居るのは)

美琴「あっ、やっと来たわね」

上条「御坂? お前、こんなところで何やってんだ?」

美琴「何って……アンタを待ってたに決まってんでしょうが」

上条「へっ? 俺を……?」

美琴「ほら、……行くわよ」

上条「!? お、おい、御坂……」

美琴「……何?」

上条「えーっと……何故ゆえに、腕を組んで歩こうとしているのでございましょうか」

美琴「い、いいじゃない! ……こういうの、やってみたかったんだから」

上条「いや、やってみたかったって言われましても」

美琴「いいから! 急がないと遅刻しちゃうでしょ? ほら、早く!」

上条「腕は組む必要は……」

美琴「あるの! だから、このままで……歩いて」

上条「……どうしても?」

美琴「……アンタは、私と腕組むの……嫌?」

上条(……弱々しい声+俯くってのも卑怯だよなぁ)

美琴「嫌だったら……離しても……」

上条「……急がねーとな。歩きにくいんだから、このままだと遅刻しちまう」

美琴「えっ? それって……」

上条「ほら、行くぞ」

美琴「う、うん……ありがとう」

上条(……調子狂うなぁ)

上条「…………」

美琴「…………」

上条(何で腕を組みたかったんだ? って聞きたいけど、聞ける雰囲気じゃねーな…)

美琴(うぅ……思ったより緊張する。昨日はあんなに楽しみだったのに……)

上条(いや、ここは思い切って聞くべきだ。タイミングを見計らって……)

美琴(このままじゃ、明日も明後日もギクシャクしたままよね……だったら、今話さないと……!)

上条(……今だ!)

上条「あのさ」 美琴「ねぇ」

上条「あっ……」 美琴「えっと……」

上条(被っちまった……聞くタイミング、逃したな……)

美琴「ふふっ……ねぇ、もしかしてアンタも緊張してんの?」

上条「えっ? あー……緊張、なのかもしれねーな」

美琴「……そっか、私も一緒よ。やっぱり、いきなりこういうのは無理があるわよね」

上条「まぁ、いきなりやられたら……ちょっと困るかもな」

美琴「そうね。だから、少しずつ慣れていけばいいわよね……焦らず、ゆっくりと」

上条(……何の事かさっぱりだ)

美琴「でも、腕を組むってのはやっぱり憧れるじゃない? だから、また今度……ね?」

上条「なぁ、御坂……どうして俺と腕を組みたいって思ったんだ?」

美琴「それは……」

上条「それは?」

美琴「……恥ずかしいから、また今度! じゃあね、私、こっちの道だから」

上条「お、おい、答えは……」

美琴「……分かってるくせに、いじわる」

上条「いや、分かんねーから聞いてんだって」

美琴「……今は恥ずかしいから。また帰りになったら、ね?」

上条「帰り? 帰りも一緒に帰るのか?」

美琴「当たり前でしょー、じゃ、また後でね」

上条「お、おーい! ……行っちまった」

上条(インデックスも御坂も、今日は何か変だったな……春だったからか?)

土御門「よう、カミやん。朝から何か考え事かにゃー?」

上条「ん? まぁ、大した事じゃねーよ。……多分」

土御門「怪しいぜよ……土御門さんに何も言わずに楽しむのは無しだぜーい!」

上条「分かった分かった……何かあったら教えてやるよ」

土御門「そういや、昨日のアレは何だったんだ?」

上条「あぁ、アレは……別に何でもねーって」

土御門「ますます怪しいぜよ……」

上条「何もねーって……ん?」

姫神「おはよう。上条くん」

上条「姫神か、今日も元気そうだな」

姫神「うん。昨日は。寝られなかったよ」

上条「へっ? 寝られなかったのに元気ななのか?」

姫神「上条くんに会えば。眠気なんて。飛んでいくから」

土御門(……ん!? 姫神、今の言葉は……)

上条「俺の顔には目覚まし機能でもあんのかよ……」

姫神「それより。今日は。お昼ご飯は用意してきた?」

上条「昼飯? あー、何も用意してねーな。学食で安いうどんでも食べるかな……」

姫神「大丈夫。私に任せて」

上条「任せて、って……どういう意味だよ」

姫神「後で分かるよ。期待しても。大丈夫だから」

上条「分かったよ。その時になったらよろしくな」

昼休み

上条「姫神、俺はどうすればいいんだ?」

姫神「これ。食べて」

上条「……弁当箱? これ、姫神のじゃねーのか?」

姫神「私の分は。ちゃんともう一つ用意してあるから」

上条「じゃあ、この弁当箱は?」

姫神「上条くんの分。上条くんのために作ったから。食べてほしい」

上条「本当か!? でも……何でそんな事を」

姫神「……上条くんの。喜ぶ顔が。見たかったから」

上条「姫神……本当に食べていいのか?」

姫神「……私の作ったお弁当は。食べたくない?」

上条「そ、そんな訳ねーだろ!? じゃあ……ありがたくいただきます」

姫神「うん。召し上がれ」

上条「じゃあ、遠慮なく……んぐんぐ」

姫神「どう? 上手く。できたかな?」

上条「……一つ、言ってもいいか?」

姫神「う。うん(美味しくなかったのな……)」

上条「……姫神さん、アンタ最高だよ。美味い、美味すぎる!」

姫神「……良かった。残さず全部食べてね」

上条「言われなくてもそうするって! んぐんぐ……」

姫神(……頑張って。よかった)

上条「ふぅー……美味すぎて、ついがっついちまった。ごちそうさま」

姫神「あっ。口元にご飯粒が」

上条「えっ? どこだ、この辺か?」

姫神「取れてないよ。じっとしてて……えいっ。……取れた」

上条「あっ……」

姫神「昨日とは。逆になっちゃったね」

上条「そ、そうだな……」

姫神「満足した? 物足りない。って思ってない?」

上条「いや、満足したよ。量も丁度良かったし、味は文句無しだったからな」

姫神「良かった。じゃあ……明日も。楽しみにしててね」

上条「明日も? 何か悪い気が……」

姫神「気にしないで。ただ。上条くんの喜ぶ顔が見たいだけだから」

上条「姫神……」

姫神「上条くん……」

上条(……女友達って、いいもんだな。明日は俺も何か作っていくか)

上条「さて、と。そろそろ授業始まるし、行くか」

姫神「上条君。今日の放課後。時間ある?」

上条「時間? 特に予定は……あっ」

イン『とうまぁ……寂しいよぉ』

姫神「どうしたの?」

上条「いや、今日は早めに家に帰りたいんだ。だから、あまり時間はねーな……」

姫神「じゃあ。途中まで。一緒に帰ろう? それなら。大丈夫だよね」

上条「あぁ、分かったよ」

放課後

上条(やっと終わった……さて、帰るか)

姫神「上条君。待って」

上条「ん? 何か用か、姫神」

姫神「約束。忘れたの?」

上条「あ、あぁ、一緒に帰るんだったな。でも、良いのか?
    俺はそのまままっすぐ自分の寮に向かうから、どこにも寄れないぞ?」

姫神「それでも良いよ。上条君と。少しでも一緒に居たいから」

上条(姫神、今日は何か雰囲気が違うな……)

姫神「どうしたの? やっぱり。私と歩くのは。嫌?」

上条「そ、そんな訳ねーだろ。ほら、行こうぜ」

姫神「うん。……手。繋ぐ?」

上条「なっ……何をおっしゃってるのでございますか!?」

姫神「そっか。まだ恥ずかしいよね。じゃあ。今日は諦める」

上条(……本当に、今日は御坂といい姫神といい何かが……ん? 御坂?)

上条(あれ、俺……何か御坂と約束したような……何だったけ。……まあ、会った時に話せばいいか)

姫神「上条君。次の休日は。何か予定ある?」

上条「休日? んー、特には無いはずだけど。それがどうかしたのか?」

姫神「うん。二人で。どこかに出かけない?」

上条「出かけるって、俺と姫神の二人でか?」

姫神「もちろん。他の人は。居て欲しくない」

上条「別に良いけど……何で俺なんだ? 吹寄とかじゃ駄目なのか?」

姫神「当たり前。上条君じゃないと。駄目だよ」

上条「……何で?」

姫神「……言うのは。まだ。少し恥ずかしい」

上条「そ、そうか。とりあえず、今のところは大丈夫だぞ」

姫神「じゃあ。どこに行こうか?」

上条「だったら、適当に買い物とか……」


??「あっ、来た来た。おーい、こっち……えっ?」


上条「あれ? 今の声は……」

姫神「どうしたの?」

上条「誰かに呼ばれたような……気のせいか」

??「……ねえ、呼んでるんだけど。無視?」

上条「いや、無視してる訳じゃ……あれ、お前……」

姫神「上条君。この女の子は?」

上条「コイツは……ほら、常盤台の超能力者で」

姫神「あぁ。どうりで。見覚えがあると思った」

美琴「御坂美琴です、どうも。……で、一つ聞きたいんだけど」

上条「ん? どうした?」

美琴「……どうして、」

上条「……御坂?」

美琴「――どうして昨日の女の人がアンタの隣に居るのよ!」

上条「!? み、御坂さん……?」

姫神(……嫌な。予感がする)

上条「な、何だよ……急に大声出して」

美琴「……何だよじゃないわよ! どう考えてもおかしいでしょ!?」

上条「おかしい、と言われましても……何がなんだか」

美琴「私はアンタが来るのをずっと待ってたのに……それなのに……」

上条「ま、待ってた? ……あっ、そういえば、帰りも一緒にって」

美琴「……そうよ、だからアンタを待ってたの。朝があんな感じだったから、
    今度こそは二人で楽しく帰ろうと思ってた。でも、アンタは別の女の人を連れてきた!」

上条「いや、そんな事言われても……」

美琴「それにその人……昨日、アンタが振った女でしょ!?」

上条「…………へっ?」

姫神「ちょっと。待ってくれる?」

美琴「何よ……あなたには関係ないからどっか行ってくれると嬉しいんだけど」

姫神「あなたは。勘違いしてる。だって」

上条「……姫神?」

姫神「私は。振られていない」

美琴「振られて、ない? ……どういう事よ!?」

上条「い、いや……俺にも何の事だかさっぱりで……」

美琴「アンタには聞いてないわよ! ……ねえ、あなたは昨日コイツに告白したんでしょ?」

姫神「そう。それは間違いない」

美琴「それで、振られた……だから、あなたは泣いて帰って行った」

姫神「違う。私は上条君に想いを伝えた。それを上条君は受け止めてくれた」

美琴「なっ……何よそれ!? それだと、あなたがコイツの……」

姫神「その通り。昨日から私は――上条君の恋人になった」

上条「……えええ!?」

美琴「なっ……」

美琴「……ちょっと、どういう事よ!?」

上条「い、いや、俺に聞かれましても……」

美琴「アンタ以外に説明できるヤツが居るの!? 何とか言いなさい!」

上条「ひ、姫神……確認したいんだけど、お前は俺の……彼女なのか?」

姫神「そうだよ。昨日。上条君も。私の事を大好きって言ってくれた」

美琴「はぁ!? それ本当なの!?」

上条「……言ったっけ?」

姫神「……酷い。確かに言った。それに。お前の言葉を受け止めるとも言った」

上条「あれ……どうしてそうなったんだ?」

姫神「そういう事だから。あなたはもう帰って欲しい。二人の時間を邪魔しないで」

美琴「ま、待ちなさいよ! まだ話は……」

姫神「あなたは。どうしてそんなに必死になってるの? 上条君にとって。あなたは。何?」

美琴「わ、私は……コイツの――」

美琴「私はこの男の恋人よ! あなたじゃない、私が彼女なの!」

上条「ええええ!?」

姫神「……それ。本気で言ってる?」

美琴「本気よ! 私だって……不安だっだけど、コイツに全てを打ち明けた……」

上条「……何それ」

美琴「断られたらどうしよう、って……胸が痛くて、返事を聞くのは怖かった。でも、コイツは……」

上条(……やべえ、さっぱり状況が呑み込めねえ)

美琴「私を……こんな私を受け入れてくれた! 悩んだとき、困ったとき……私を助けてくれた。
    昨日も、全て分かった上で私の気持ちを受け止めてくれた……だから、だから……」

美琴「コイツの彼女は私だけ、あなたじゃない。……私達の邪魔をしないで!」

姫神「……上条君? 説明。してくれるよね」

上条「ええと、それがですね……」


??「あっ、見つけた。おーい、とうまー!」


上条「……あれ? あそこに居るのは……」

上条(あそこに居るのは……インデックス? 助かった、これでこの場から抜け出せるかもしれない……)

イン「とうまー、何してるの? とうまが遅いから私、迎えに……ねぇ、とうま」

上条「な、何だよ、インデックス」

イン「……どうして、あいさと短髪が居るの? 説明してほしいかも」

上条「えっと、インデックスさん……雰囲気が、何だか……」

美琴「邪魔しないでくれる? 今は三人で大事な話をしてるんだから」

姫神「そう。これは私達の問題。悪いけど。どこかへ行ってくれない?」

イン「むっ、何それ。そっちこそ私の邪魔をしないでほしいんだよ!」

美琴「邪魔? 何よ、何の邪魔になるのかしら?」

イン「それは……とうまと私の甘い時間の事に決まってるんだよ」

美琴「……はぁ!?」

姫神「……上条君。これは。いったい。どういう事?」

上条「ひ、姫神さん? く、苦しいです……く、首はダメだと思いますが……」

美琴「ちょっと! 甘い時間ってどういう事よ!? まさか、このシスターとも……!」

上条「ぐ、ぐるじい……お前まで首に手をやる、な……」

イン「ちょっと! 二人ともとうまに乱暴しないでほしいんだよ!」

上条「そ、そうだ……インデックス、助けてくれ……」

イン「うん、とうまの事は、恋人の私が守らないとね!」

姫神「……恋人? 私以外に二人も……?」ギリギリ

上条「ひ、姫神さん……それ以上は……それ以上は……」

美琴「へぇ、恋人……アンタ、このシスターまで恋人にしたって訳?」ビリビリ

上条「み、御坂さん……電撃もまずは抑えて頂けませんでしょうか……」

イン「……とうま、その二人の言っている事の意味が分からないんだけど」

上条「俺にも何が何だかさっぱりでですね……」

姫神「一度。話を整理したほうがいい。上条君。それでいいよね?」

上条「えっと、拒否権は……」

美琴「あると思ってんの? さっ、行くわよ。……誰が本当の彼女かハッキリさせましょう」

イン「とうま、事と次第によっては私も……容赦しないからね」

上条(に、逃げたい……)

姫神「逃げたい。とか。思ってないよね?」

上条「ひいっ!? お、思ってません! 全然全くこれっぽっちも思ってません!」

美琴「行くわよ、アンタの家でいいわよね?」

上条「えっ? それはちょっと困 美琴「い・い・わ・よ・ね?」

上条「……はい、どうぞいらしてください」

現在、上条の部屋では三人の女性が上条の前に座っていた。
テーブルを挟み、上条から見て左から、姫神、インデックス、美琴の順である。

上条「…………」

姫神「…………」

美琴「…………」

イン「…………」

上条(何だこの沈黙……まだ何か言ってくれた方がマシだ……)

姫神「……上条君」

上条「は、はい!」

美琴「面倒だから、さっさとハッキリさせましょう。アンタ達もそう思うでしょ?」

イン「短髪にしては良い事言うね。まぁ、もう分かりきってる事だけど」

姫神「確かに。確認する必要は無い。だって。上条君の彼女は」

姫神・美琴・イン「私だから」 

全員「…………」

姫神「……へぇ」 

美琴「……そう」 

イン「……ふーん」

上条(前言撤回……黙ってる方がまだマシだった……)

イン「……とうま、質問しても良い?」

上条「……ええ、もう何でも聞いてください。この場から逃れ――ハッ!?」

美琴「逃れ……何? 何て言いたかったのかしら?」

姫神「上条君のせいなのに。まさか。逃げたいとか思ってたりしないよね?」

上条「め、滅相もございません……(怖いよ……怖いよぉ……)」

イン「とうま、安心して。私はシスターさんだから、とうまには慈悲の心をもって接するからね」

美琴「なっ……!」

上条「い、インデックス……ありがとう、お前だけが頼りだ……」

姫神(この雰囲気で。自分の好感度を上げるなんて……恐ろしい子)

イン「じゃあ、私は質問するんだよ。とうま、昨日言ったよね?」

上条「昨日……どの辺の話をすればいいんだ?」

イン「私が、二人のどちらかと付き合うの? て聞いたら」

上条『付き合う? いやいや、そういうのは無いから』

イン「って言ったよね?」

上条「あー……確かに言った気が――ひいっ!?」

姫神「……ふーん」 美琴「……へー、そうなんだー」

上条(両側を見てはいけない……! 見たら死ぬ……何か分かんないけど絶対死ぬ……!)

イン「という事は、あいさと短髪とは付き合っていない。そういう事になるよね?」

上条「そ、そうなるんじゃ……ないでしょ 美琴「…………」バンッ

上条「ひいっ!? み、御坂さん……机を叩くと近所の方が、あの……」

美琴「あー、ごめん。ちょっと、怒りが……収まらないのよねぇ……」ビリビリ

上条(一方姫神は……うわっ、何か武器持ってる……魔法のステッキとか言ってたヤツ持ってる……)

イン「ちょっと、短髪……とうまが怖がってるからやめて欲しいかも!」

美琴「しょうがないでしょ? アンタの言い方に納得がいかないんだから」

イン「私は真実を述べているだけ、二人はとうまの彼女でも何でも無いんだよ!」

上条(ついでに言うと、インデックスも俺の彼女じゃないんだけどな……)

姫神「待って。確かに。上条君はあなたにそう言ったかもしれない」

イン「あいさ、認めたね? だったら、私が 姫神「でも。それが真実とは限らない」

イン「……どういう事?」

姫神「上条君が言った事が。全部嘘だったとしたら。どうなる?」

イン「とうまの言っていた事が……全部、嘘?」

姫神「そう。この部屋には上条君以外にもう一人住んでいる。それは。誰?」

イン「それは……」

美琴「えっ……? まさか……このシスターもここに住んでるって事!?」

上条「あー……それは、その……」

姫神「上条君。正直に言って」

上条「……あぁ、インデックスと俺は、この部屋に一緒に住んでるよ」

美琴「そ、そんなぁ……」

イン「でも、それがどうしたの!? それととうまが嘘ついてる事に何の関係があるの!?」

姫神「確認だけど。上条君とは。ずっと前から恋人だった?」

イン「それは……違うかも」

美琴(……良かった。ちょっと焦ったけど、恋人では無かったんだ……)

姫神「だったら。良く考えて。上条君にあなた以外の恋人ができたとき。あなたはどうなる?」

イン「…………」

姫神「もう。今までの様にはいかない。この部屋を出なければならない」

イン「そんな事……そんな事あいさに言われなくても分かってる!」

姫神「じゃあ。こうは考えられない? 上条君はあなたの事を思って。
    恋人ができたという事を隠すかもしれない。って」

イン「それは……」


上条(……よく見ると、スフィンクスが窓の近くで怯えてる……窓を、
    窓を開けてあげたい……! だが、俺も動けない……すまん、スフィンクス……)

姫神「もう。何が言いたいかは分かった? つまり。上条君は」

美琴「この子を追い出したくないから、誰とも付き合ってない、って嘘をついたって事ね……」

イン「そんな……私は、……でも、とうまは優しいから……」

姫神「その通り。上条君は優しいから。という訳で――」

上条(……姫神がまとめようとしている。俺もスフィンクスも、ついにこの場から解放されるのか……!?)


姫神「上条君は私のもの。お邪魔虫は。さっさとお家にゴー・ホーム」


美琴「……そうね、これ以上は邪魔だし私は帰る――ってなるかぁ!」

姫神「……チッ」


上条(すまん、スフィンクス……まだかかりそうだ……)

美琴「何でそうなるのよ!? まだ私とあなたのどちらかってのは決まってないでしょ!?」

姫神「ほら。そこは。諦めるという形に」

美琴「ならないわよ!」

イン「……あれ? そういえば、別にとうまが嘘をついたって決まった訳じゃないよね?」

上条「あっ、そういえばそうなるな」

イン「……あいさー? うまい事言って、私に諦めさせようとしたんだね!?」

姫神「さあ? ちょっと。何言ってるか。分からない」

イン「むー! それに、とうまの言ってる事が本当だとしたらどうするの!?
   もし、それが本当だったら、あいさも短髪も彼女じゃないって事になるんだよ!」

美琴「確かに……それは確認すべきよね。って、もうそれ聞くくらいならいっその事」

姫神「……誰が本当の彼女か。聞いた方が早い」

イン「そうだね……という訳で、とうま」

上条「は、はい……?」

姫神・美琴・イン「誰が本当の彼女かはっきりして(しなさいよ!)(してほしいんだよ!)」

上条「いや、その……それがですね?」

姫神「はぐらかすのは駄目だよ。私。信じてるからね」

美琴「早く言いなさい! その……私だったら、嬉しいかな」

イン「とうま、怖がらなくても良いから、正直に言ってね」


上条(一度、冷静に考えてみよう……)

上条(三人とも、俺に告白してきて、それを俺が嘘だと思って勘違いしてしまった……)

上条(ん? 嘘って思ったのは……そうだよ、エイプリルフールだから告白も嘘だって思ったんだ!)

上条(だから、俺はOKした訳じゃない。なーんだ、そういう事だったのか! って事は……)

上条(……今更だが、全部エイプリルフールの嘘だって思ってたって、言った方が良いよな)

上条(よし、言おう! 正直に言えばきっと……許して……くれ、ないかな……くれないだろうな……)

美琴「……答えは、出た?」

上条「あぁ……そもそも、俺はお前達に言わなくちゃいけない事があったんだ」

イン「言わなくちゃ……いけない事?」

姫神「それはいったい。何?」

上条「あぁ、実は――」

ピンポーン

上条(なっ……! このタイミングで誰だよ!?)

??「上条さーん!」

上条「……へっ?」



五和「上条さん、こんにちは! あなたの大精霊チラメイド、五和がやってきましたよ!」


上条「…………」

姫神「…………」

美琴「…………」

イン「…………」

五和「ちょっと恥ずかしかったんですけど……上条さんが喜んでくれると思って、わた……あ、あれ?」


姫神「…………」

美琴「…………」

イン「…………」


五和(……えっ? この重苦しい雰囲気はいったい……その前に、この女の人達は……?)

上条「……えっと、五和……だよな?」

五和「は、はい……五和で間違いありませんけど……」

上条「あー……とりあえず、座ってくれ。多分、それが正解だと思う」

五和「そ、そうですか……では、お邪魔します……」

上条の部屋には現在、四人の女性が存在する。
上条の対面には三人、先程と変わらず姫神、美琴、インデックスが、
上条の下家には五和がそれぞれ座っている。

五和「…………えーっと」

美琴「ねぇ、大精霊チラメイドさん?」

五和「は、はい……」

姫神「あなたは。何しに来たの?」

五和「えっ……? 何しに、と言われましても……」

イン「その変な格好、何か関係あるの?」

五和「これはですね……その……」

五和(うう……建宮さんがあんな事言うから着て来たのに……)

上条(……五和がきたおかげで、エイプリルフールについて話すタイミングを逃してしまった……)

美琴「来たばかりで悪いけど、何も用が無かったら帰ってくれる?」

姫神「私たちは今。大事な話をしてるから。邪魔をしないでほしい」

五和「だ、大事な話……ですか?」

イン「そうなんだよ。今、誰がとうまの恋人なのかって話をしてるから邪魔しないで」

五和「そうなんですか……すいません、それなのに私……お邪魔してしまって」

姫神「分かってくれたのなら。それで良い」

五和「本当にすいませんでした……。……あれ? ちょっと待ってください」

美琴「何よ……こっちは雰囲気壊されて迷惑してるのに」

五和「上条さんの恋人が誰か、という話をしてるんですよね……?」

イン「そうなんだよ、だからいつわには早く帰って欲しいかも」

五和「えっと、それでしたら――」

五和「えっと……上条さんの恋人は、私ですよ?」

美琴「……はぁ!?」

イン「い、いつわ!? 何を言ってるの!?」

五和「いえ、ですから上条さんの恋人は私だと」

姫神「……上条君? また。増えたの?」ギリギリ

上条「ひ、姫神さん……テーブルを越えての首攻撃は勘弁して頂けないでしょうか……ぐ、ぐるじい……」

五和「や、やめてください! 私の上条さんが苦しがってるじゃないですか!?」ガッ

上条(おおっ!? 露出した五和の胸が目の前に……)

美琴「……さりげなく、『私の』って付けるあたり」

イン「……相当自信があるみたいだね。とうま!」

上条「は、はい……何でございましょうか?」

姫神「説明。してね」

上条「えーっと、何を説明していいのやら……」

美琴「詳しく教えてもらえるかしら……? いつ、どちらから告白したのか……!」

五和「ええと、それは昨日の」

イン「昨日!? とうま、どういう事!?」

姫神「待って。まずは。この人の話を聞いた方が良い」

五和「あれは、昨日の事でした……思い出すだけでも。……ふふふ」

美琴(不気味な笑い……でも、見覚えがあるのは何故だろう……)

姫神「その昨日の事を。教えて欲しい」

五和「はい……あれは、私がお洗濯をしていた時の事でした――」

五和(良い天気……これならお洗濯物もすぐ乾くかな)

五和「さーて、干したらお掃除を」プルルル

五和「……電話? 誰だろう、もしもし?」

『おっ、繋がった繋がった。五和、今大丈夫か?』

五和「そ、その声は……上条さんですか!?」

上条『あぁ、俺だよ。ちょっと話があるんだけど、良いか?』

五和「はい! 上条さんの話ならいつでもどこでも大丈夫です!」

上条『? まぁいいや、えーっと……あのさ、聞いて欲しいんだけど……』

五和「はい、何でしょうか?」

上条『んー……あー、やっぱり緊張するな、こういうのって』

五和(緊張するような事……? それにわざわざ電話するって事は……もしかして!?)

五和(こ、告白……!? まさか、今までのおしぼり大作戦が報われる時が来たっていうの!?)

五和(……なーんて、そんな事ある訳が)

上条「……よし、言うぞ。実は、俺――」



上条『俺、五和の事が……その、好きなんだ』

五和「…………えっ?」

上条『あれ? 聞こえなかったか……?』

五和「か、上条さん!? もう一度、もう一度お願いできますか!?」

上条『あ、あぁ……俺、五和の事が好きなんだ』

五和(好きなんだ……好きなんだ……好きなんだ……好きなんだ……)

上条『……五和? おーい、五和?』

五和(……ハッ、つい心の中でエコー再生を。で、でも……)

五和「か、上条さん……聞き間違いじゃない、ですよね?」

上条『あぁ、聞き間違いじゃねーよ』

五和「上条さん……私、私……嬉しいです」

上条『えーと、五和……一つ聞いても良いか?』

五和「はい……何でしょうか?」

上条『(嘘つくのって)こんな感じで良いのかな? ちゃんと伝わったか?』

五和「もちろんです……上条さんの(愛の)言葉、ちゃんと私に届きました」

上条『そっか、不安だったけど、俺の(エイプリルフールの)言葉は届いたのか。良かった……』

五和「上条さん……私、この日を忘れません……」

上条『俺もだよ。俺もこういうのは(エイプリルフール)初めてだからさ』

五和「上条さんもですか? 実は、私も……こういうのは初めてで……」

上条『そうなのか……五和は真面目そうだし、それも納得がいくな』

五和「……上条さん、近いうちに会いに行っても良いですか?」

上条『会いに? まぁ、いつ来てもらっても良いけど』

五和「本当ですか!? 待っててくださいね、上条さん!」

上条『? よく分かんねーけど、じゃあ待ってるよ』

五和「――という訳です、それで私はここに来ました」

姫神「…………」バンッ 美琴「…………」ダンッ イン「…………」ドンッ

上条「ひいっ!? 机を叩くと近隣の方々にご迷惑がですね……」

姫神「上条君。覚悟は。良い?」

上条「な、何の覚悟でございましょうか……? って胸元から出て来たそれはスタンガンですよね!?」

美琴「それくらいじゃ足りないわよ。……もっともーっと強いスタンガンが欲しくない?」ビリビリ

上条「死ぬから! それ絶対死ぬから! い、インデックスはそんな事はしないよな……?」

イン「とうま、良い事を教えてあげるね」

上条「良い事……?」

イン「うん。物事にはね……限度ってものがあるんだよ!」

上条(ついにインデックスまで……俺、死ぬかも……)

五和「あの……すいません、私だけ状況が理解できてないのでこういうのもアレなんですけど、
    上条さんが脅えてますし、もう少し優しくしてあげてはいかがでしょうか……?」

美琴「……そうね、確かにコイツが可哀想かもね。でも、全てを聞いてもそう思えるかしら?」

姫神「あなたもきっと。上条君の所業を知れば。怒りを抑えられないと思う」

五和「……大丈夫です。私は上条さんの事なら、どんな事でも受け止めて見せますから」

上条(五和……お前だけが救いだよ……)

イン「じゃあ、教えてあげるね、いつわ」

姫神「ちょっと。耳を貸して」

五和「は、はい……」

姫神「――君が。――の――――で。―――――だったり」

五和「え、ええっ!?」

姫神「さらに。――――――。とか――――――」

五和「そ、そんな……」

上条(……頼む、五和。俺は信じてるぞ……)

姫神「説明完了」

上条「い、五和……?」

五和「……上条さん?」

上条(おぉ、穏やかな顔……それはまさに聖母の様な 五和「…………」ガンッ

上条「ひいっ!? い、五和さん……?」

五和「上条さん! どういう事ですか!? 私を、私だけを愛してくれるって言ったじゃないですか!?」

上条「そ、そこまでは言ってないような……」

五和「言い訳しても駄目です! 上条さん……私、信じてたのに……」

上条「五和……」

姫神「私も。信じていた。でも。……裏切られた」

美琴「……アンタがそんなヤツだとは思わなかった、正直幻滅したわよ」

上条「……何も、言う事はありません」

イン「とうま、後悔してる?」

上条「……あぁ、俺が間違ってた」

上条(エイプリルフールって、難しいものだったんだな……俺なんかがやるんじゃなかった……)

姫神「……でもね。上条君」

上条「……姫神?」

姫神「私達は。上条当麻という人に。本当に感謝している」

上条「感謝……?」

美琴「そうよ、アンタのおかげで今、私はこうやって毎日を楽しむ事ができる」

イン「……とうまが居なかったら、今の私は無かったと思う」

五和「私は……上条さんに何度も助けられました。だから、あなたと一緒に居る事ができた」

上条「でも、俺は……酷い事を……」

姫神「もういいよ。私達は。上条君が」

美琴「……アンタが」

イン「とうまの事が」

五和「上条さんの事が……」

   「大好きだから」

上条(……みんな、そこまで……俺は、……俺は)

美琴「……だから、アンタにちゃんと選んで欲しいの」

イン「とうまの選んだ人は……誰?」

姫神「誰に。本当の想いを伝えたかったの?」

五和「上条さん、自分の気持ちに素直になってください。……誰が選ばれても、大丈夫ですから」

上条「ち、違うんだ! ごめん……俺、実は……」

イン「……とうま?」

上条「俺、昨日の事は……本当は、全部……エイプ――」

ガラッ

「し、失礼します、上条当麻!」

上条「リルフー……ってまたか!? 誰だよ!?」



神裂「あ、あなたの堕天使エロメイド……神裂火織じゅうはっさいです! 愛をとど……えっ?」


上条「…………」

姫神「…………」

美琴「…………」

イン「…………」

五和「…………」

神裂「……あの、上条当麻。これは、その……」


姫神「…………」

美琴「…………」

イン「…………」

五和「…………」


神裂「い、五和までなぜここに……それにこの状況は、いったい……」

イン「……とうま、出番なんだよ」

上条「……ごめん、アレ見ると俺の心の古傷が痛みだすから目を合わせたくない……」

神裂「なっ……! 私はあなたのために……!」

五和「……女教皇様、とりあえず座ってください」

神裂「はい……?」

美琴「……もう大体予想はつくけど、先に進まないから座って」

神裂「わ、分かりました……失礼します……」

上条の部屋には略。上家に神裂が座りました。現在左手には神裂(堕天使エロメイド)、
正面に左から姫神、インデックス、美琴、右手には五和(大精霊チラメイド)、上条は正座。


神裂「……あの」

美琴「ねぇ、堕天使エロメイドさん?」

神裂「そ、その名で呼ばないでください……」

姫神「もうだいたい分かるけど。あなたはどうしてここに来たの?」

神裂「それは……その……」

イン「そのトンデモな格好、何か関係あるの?」

神裂「これはですね……ええと……」

神裂(……土御門があの様な事を言うから着て来たというのに……)

五和「……上条さんに、見せたかったんですよね?」

神裂「な、なぜそれを!? ……ハッ、五和、まさかあなたも……」

五和「……はい」

姫神(私も。巫女さんの格好にすれば良かったかも)

上条(クソッ! エイプ、まで言ったのに! 言ったのに!)

美琴「来たばかりで悪いけど、何も用が無かったら帰ってくれる? まぁどんな用かは想像がつくけど」

姫神「私たちは今。大事な話をしてるから。手短にお願い」

神裂「大事な話……とはいったい何でしょうか?」

イン「それはね、誰がとうまの恋人なのかって話なんだよ」

神裂「なるほど……申し訳ありません、邪魔をしてしまいましたね……」

五和「女教皇様……多分、女教皇様も同じ理由だと思うんですけど……」

神裂「同じ理由……? こ、恋人!? 上条当麻の恋人の話をしているのですか!?」

美琴「そうよ……で、今度はどういう感じで来るのかしらね……」

神裂「上条当麻の恋人が誰か、という話をしてるんですよね……?」

イン「そうなんだよ、もう一人増えたからちょっと困るけど」

神裂「恋人の話でしたら、私は関係ありませんね……その話も気になりますが」

美琴「そうよね、やっぱり関係ない……って、ええっ!?」

姫神「……これは。予想外」

イン「ほ、本当に恋人の話では無いの!?」

上条(あれ? ……あっ、俺……確か神裂には……や、ヤバい! 多分、きっと物凄くヤバい!)

神裂「ええ、違います。私がここに来たのは――」

神裂「上条当麻との祝言を、いつにするか決めるために来ました」

美琴「……はぁああ!?」

五和「しゅ、祝言!?」

イン「祝言……?」

姫神「……つまり。結婚式の事」

イン「なっ!? と、とうまぁ!?」

上条「……あ、あの……これは」

美琴「ど、どういう事なのか説明しなさいよゴルァ!!」

姫神「さすがの秋沙ちゃんも。これには大激怒」

イン「とうま! とうま! とーうまー!!」

上条「ち、違うんだ! ……って、あの……い、五和さーん?」

五和「ふふふ……何もかも……ズッタズタに……」ジャキ ジャキ

神裂「い、五和! なぜ槍を研いでいるのですか!?」

五和「さぁ、何故でしょうね……ふふ、ふふふふ……」

上条(……一つ嬉しい事があった。神裂がベランダから来たおかげで、スフィンクスは逃げられた)

上条(スフィンクス、俺の分も……強く生きてくれ)

上条「俺は…生きる!生きてスフィンクスと添い遂げるっ!」

イン「何!?スフィンクス様の想い人とこんなところで会うとは」

美琴「……一度、落ち着いた方がいいわね」

姫神「同感。詳しく聞かせてもらえる?」

神裂「……私ですか? 何を話せば良いのでしょうか?」

イン「昨日、とうまに言われた事をそのまま話して」

五和「……そうすれば、どうして祝言なんて言葉が出たのか理由が分かりますから」

上条(五和の雰囲気が怖い……)

神裂「分かりました。昨日、上条当麻から電話がかかってきたのです」

美琴「その時に言われた訳ね」

神裂「ええ、上条当麻に……その……はい」

姫神「……顔を赤らめる程の事だったみたい」

イン「……そうみたいだね。早く話して欲しいんだよ」

神裂「あれは、私がお昼を食べ終わった後でした――」

神裂(……久しぶりに鯛茶漬けを食べる事ができるなんて、今日はいい日ですね)プルル

神裂「電話……? 誰からでしょうか……」

上条『よう、神裂。久しぶりだな』

神裂「その声は……上条当麻? 電話とは珍しいですね」

上条『ああ。土御門に教えてもらったんだけど、嘘じゃなかったみてーだな』

神裂「それで、私に何か用ですか? まさか……あの子に何か!?」

上条『いやいや、そんなんじゃねーよ。その……話が、あるんだ』

神裂「話、ですか? 構いませんが……」

神裂(わざわざ電話をしてまでする話……魔術師? いえ、その様な報告は無かったはず)

上条『あー……神裂? 今から言う事は、俺も言い慣れてなくておかしいかもしんねーんだけど……』

神裂「はあ……」

上条『俺なりに考えた言葉だ、最後まで聞いて欲しい』

神裂「分かりました、どうぞ話してください」

上条『俺、実は――』



上条『神裂の事が、その……好きになっちまったみたいなんだ』

神裂「は、はい!?」

上条『……正直、神裂の事を考えない日は無いくらいだ。一日中、考えてる事もある』

神裂「私の事を、一日中……?」

上条『……ああ、気持ち悪いって思うかもしれねーけど。それだけ、お前が魅力的って事なんだ』

神裂「か、上条当麻!? 今日はどうしたのですか!?」

上条『……悪いか? 今日、俺がこんな事を言ったら駄目なのか?』

神裂「駄目、ではありませんが……その、突然でしたので……」

上条『そうだよな……悪い、やっぱり俺、こういうのは苦手みてーだ……』

神裂「あっ……違います、迷惑という訳では無いのですが……」

神裂(な、何故急にこんな……でも、不思議と……悪い気はしませんね)

神裂「確認なのですが、あなたは、私の事を……その、」

上条『……ああ、好きだ。神裂と一緒に居たい、そう思ってる』

神裂「ほ、本当に私なのですか? あなたの周りには私よりも素敵な女性が……」

上条『優しい人、綺麗な人、確かにたくさん居る。……でも、俺はこの言葉(嘘)を神裂に伝えたいんだ!』

神裂「……私を、選んでくれたというのですか? こんな、私をですか……?」

上条『ああ、神裂火織を俺は選んだ。……恥ずかしいけど、俺が(嘘をつく相手として)最初に選んだ人だ』

神裂「その……あなた気持ちは、……嬉しいです。……ですが、それを受け止める訳にはいきません」

上条『えっ……? 神裂、どういう事だよ!?』

神裂「……怖いんですよ」

上条『……怖い? 何が怖いんだ、話してくれるか?』

神裂「ええ、分かりました……。怖いもの、それは……失う事です」

上条『失う事……』

神裂「私は、『幸運』であると自分でも思っています。……それは、
    例えば周りの者だけが傷つき、自分だけが助かるという形としても表れます」

上条(……あれ? 何か話が読めねーぞ……神裂なりに俺の嘘に合わせてくれてんのか……?)

神裂「……私の『幸運』のせいで周りの者が傷つく、それが嫌で仲間を遠ざけた事もありました。
    今ではそれは間違いだったと言えますが、それを怖がっていたのは事実です……」

上条『……それが、俺と何が関係あるんだ?』

神裂「あなたの『不幸』、そして私の『幸運』、それが合わさった時……もしかしたら……」

上条『神裂……?』

神裂「……私の代わりに、あなたが命を落とす事になるかもしれません。
    くだらない、と思うかもしれませんが、そう考えてしまうのです……」

上条『……失うのが怖いってのは、そういう事か』

神裂「はい……ですから、あなたはもっと素敵な、私ではない誰かを選んでください……」

上条『……いや、それはやめとくよ』

神裂「えっ……?」

上条『そこまで真剣に考えてねーけどさ、俺は(嘘をつく相手に)神裂を選んだ。それを変えるつもりは無い』

神裂「で、ですが……」

上条『俺が死ぬかもしれない、なんて心配を今頃されてもな……実際、何度も死にかけてる』

神裂「それはそうかもしれませんが……」

上条『でも、俺はこうして生きてる。そのいくつかは……神裂、お前のおかげだ。
    お前が戦ってくれたから、俺はこうして今生きていられるんだ』

神裂「それでも……それでもいつかは! ……あなたが死んでいく様を見るかもしれない!」

上条『だったら、守ってくれよ、俺のそばでさ。「不幸」な俺を、その「幸運」で助けてくれ』

神裂「私の、『幸運』で……」

上条『ああ、そうしたらいつか、俺の「不幸」が移ってお前は幸せになるかもしんねーだろ?』

神裂「……本気で、そう思っているのですか」

上条『俺は本気だよ、本気でお前に(嘘の)言葉を届けてるつもりだ』

神裂「……上条、当麻」

上条(……俺も神裂に何とか合わせてるけど、大丈夫かな)

神裂「……分かりました。そこまで言われてしまったら、考えを改めなければいけませんね」

上条『改める?』

神裂「ええ、あなたの言葉を受け止めます。……そばに、居させてください。これから先も、ずっと」

上条『神裂……』

神裂「……こういう事には、慣れていないので……色々とご迷惑をお掛けするかもしれませんが」

上条『ああ、そんなの気にしなくて良いって。俺も(エイプリルフールは)初めてだったからさ』

神裂「そうなのですか? ……何故かはわかりませんが、少し嬉しいですね」

上条(嬉しい? 神裂も真面目だし、嘘をついたりつかれたりするのが嬉しいって事か……?)

上条『……じゃあ、用件も済んだし。そろそろ切るよ、時間とって悪かったな』

神裂「えっ……切ってしまうのですか? もう少し話を……いえ、拘束する訳にはいきませんね」

上条『悪いな、今度ゆっくり話す時間があればいいいんだけどさ』

神裂「それでしたら、その……今すぐに会いに行ってもよろしいでしょうか?」

上条『今すぐ? いや、それは流石に無理なんじゃねーか?』

神裂「……いえ、決めました。やはり直接会いに行きます」

上条(あっ、そういう事か。会いに行くってのは嘘なんだな……また騙されるとこだった)

神裂「迷惑でしょうか……?」

上条『いやいや、神裂が来てくれたら俺も嬉しいよ! じゃあ、待ってるぞ!』

神裂「はい、今すぐ準備しますから待っていてくださいね」

上条『おっと、そうだ神裂。一つ頼みたい事があるんだけど』

神裂「頼みですか? ええ、あなたの頼みなら何でも応えましょう」

上条『じゃあ、五和の連絡先を教えてくんねーか?』

神裂「……五和の、ですか?」

上条『ああ、神裂なら知ってんだろ?』

神裂「ええ、知ってはいますが……」

神裂(何故、五和に連絡を取る必要が……建宮やステイルならともかく、五和……)

神裂(……いけませんね、何を疑っているのでしょうか。不安など、感じる必要はありません。……多分)

上条『神裂? おーい、聞こえてるかー?』

神裂「……五和の連絡先ですね。では、今から言います」

上条『ああ、頼む』

神裂(……私も、未熟ですね。今日の事なのにすぐ嫉妬するなんて……)

上条『神裂? また黙っちまったけどどうしたんだ?』

神裂「な、何でもありません」

神裂「――その後、五和の連絡先を伝えて通話は終了しました」

姫神「…………」バゴンッ 美琴「…………」ドガンッ イン「…………」ズガンッ 五和「…………」ズドンッ

上条「ひいいっ!? つ、机が壊れる……」

美琴「あ、アンタ本当にどういうつもりなのよ!?」

イン「とうま! もう何も聞かないから! とうまをイギリス式の拷問で徹底的に悔い改めさせるんだよ!」

姫神「今だけ。幻想殺し殺しになりたい」

上条「だ、だから、その……」

五和「……私の時よりも情熱的な告白なんて。上条さん! 私より女教皇様の方が良いんですか!?」

神裂「私の時……? 五和、どういう事ですか?」

五和「文字通りの意味です……私も上条さんに告白されたんですよ! ……女教皇様の後に」

神裂「……上条当麻、詳しく聞かせて頂けますか?」

美琴「私が説明してあげるわ、コイツの悪行を全部残さずにね!」

上条(……俺、死んだかも)

美琴「説明、終わったわよ」

神裂「……そうですか、そういう事ですか」

上条「か、神裂さーん……? ほら、あの……俺は救われぬ者だから……」

神裂「…………」

上条「救って欲しいなー、なんておも 神裂「……ふんっ!」 轟!

上条「……っ!? つ、机が跡形もなく……」

神裂「上条、当麻?」

上条「ち、違うんだ! これはだな、つまり……」

神裂「――言い訳してんじゃねえよ、このスケコマシ野郎が!!」

上条「ひいいいっ!?」

上条「お、怒ってらっしゃる!?」

神裂「怒るに決まってんだろうが! テメェが言ったのは何だったんだ、あぁ!?」

上条「すいません! ごめんなさい! だから命だけは、命だけは!」


美琴「……アレよね、ほら。他の人が怒ってるのを見ると」

姫神「妙に。冷静になったりする」

イン「そうだね。私達もあんな感じだったのかも」

五和「えっと……止めないと多分、上条さんが死んじゃいますけど……」

姫神「あなたは。止める気がある?」

五和「……ごめんなさい、上条さん。正直、もっとやれって思ってしまいました……」

美琴「同感ね」

五和「でも、一つ気になる事があるんですよ」

美琴「気になる事?」

五和「はい、一度冷静になって考えると、やっぱり変だなって思う事が」

イン「いつわ、教えてくれる?」

五和「その……上条さんがこんな事をするでしょうか?」

姫神「それは。私も思っていた」

美琴「……私もよ。おかしいわよね、急に何人にも好きだって言うなんて」

イン「今までとうまと一緒に住んできけど、鈍感なとうまが好きだ、なんて絶対言わないと思うんだよ」

五和「皆さんもそう思いますか?」

姫神「きっと。何かあるに違いない」

美琴「……もう一度、聞いてみる?」

イン「そうした方がいいかも。あれが終わってからね」


神裂「大人しくしろっつってんだろうが、このド素人が!!」

上条「し、死ぬ! 本当に死ぬから助けて!」

数分後

美琴「そろそろ止めた方が良いわね」

姫神「うん。上条君に死なれたら困る」

五和「女教皇様、一度落ち着いてください!」

神裂「……五和、あなたも邪魔をしようというのですか?」

イン「ちょっと待って、冷静になって考えて欲しいんだよ」

神裂「何を考えると言うのですか!? 私は、覚悟を決めたというのに……!」

美琴「それよ、それ。良く考えてみて、コイツが歯の浮くような台詞をポンポン言うと思う?」

神裂「……それは」

『テメェらずっと待ってたんだろ!?インデックスの記憶を消さなくてもすむ、
 インデックスの敵にまわらなくてもすむ……そんな誰もが笑って、誰もが望む最高な(略)』

神裂「戦闘中の言葉を考えれば、言いそうな気もしますが」

姫神「そういうのではなくて。恋愛に関する事に限定すれば」

神裂「……確かに、言われてみればそうですね」

上条(はぁ……はぁ……俺、生きてるよな……?)

美琴「……告白されてOKした後に他の人とも、ってのはどう考えてもおかしいわよね」

姫神「理由があるとしたら。何があると思う?」

五和「うーん……例えば、好きだって言わなければならかったとか」

イン「そんな状況になる事は無いと思うんだよ」

五和「誰かに脅されて……ってそんな訳がありませんよね」

神裂「……精神を操られている、という可能性もありますね」

イン「でも、さっきからとうまは何度も頭を抱えてるから、もしそうだとしてもとっくに解除されてるんだよ」

美琴「んー……じゃあ、いったい何なのかしら」

上条(い、言える! この雰囲気なら言えるぞ! 今だ、今しか無い!)

上条「じ、実はエイプリ 姫神「……! もしかして……いや。そんな訳が無い……」

イン「ど、どうしたのあいさ?」

姫神「……もしかしたら。上条君は。死ぬのかもしれない」

美イ五神「はあ!?」

上条(……えっ? 何それ? つーかまたタイミングを逃した……)

五和「上条さんが死ぬなんて……いったいどういう事ですか!?」

姫神「……確証は無いけど。思い当たる事はある」

美琴「嘘でしょ……せ、説明しなさいよ!」

姫神「死期を悟った人間が。死ぬ前に取る行動があるって聞いた事がある。……それを考えると」

神裂「……どの様な行動を取ると言うのですか」

姫神「……今までお世話になった人にお礼を言ったり。好きと言えなかった人に。愛を伝えたりする」

イン「それ、とうまの取った行動に似てる気がするかも……」

美琴「……まるで、その二つが合わさったみたいよね」

五和「では、上条さんは……本当に……」

神裂「死んでしまう、と言うのですか!? う、嘘です……あの時、一緒に生きると言ってくれたのに……」

姫神「……上条君。お願い。真実を伝えて」

上条「い、いや……そんな真面目な雰囲気出されても……」

上条(死ぬ訳がねえだろうが……つーか、余計に言いにくい感じに……)

イン「とうま、ごまかさないで真剣に答えて!」

美琴「アンタ……本当に、死んじゃうの……? 嫌よ! お願い、嘘って言って!」

上条「えっと……はい、それは勘違いだと思うのでございますが……」

姫神「……本当に? 居なくならない?」

上条「死なないから……考え過ぎだっつーの」

神裂「……あなたは優しいから、私達に嘘を言っているのでは」

上条「嘘? そ、そう! その通りだ、嘘なんだよ!」

五和「……! やっぱり……嘘なんですね」

上条「いやー、やっと言えた……いつ打ち明けようか悩んでたんだけど、やっと言う事ができた……」

イン「うっ……ううっ……とうまぁ、嫌だよ……死なないで……」

上条「えっ? なんで泣いてんだよインデックス? ってお前達、全員泣いてんのか!?」

美琴「ぐすっ……当たり前でしょ!? アンタが死ぬなんて聞いたら……泣くに決まってるじゃない……」

上条「いや、だから死なないって言ってるじゃねーか……」

五和「……もういいんです。上条さん、……っ……もう、無理して嘘を言わなくてもいいんですよ……」

上条「う、嘘?」

神裂「……あなたが今、打ち明けてくれたではないですか。死なない、というのは……っ……嘘、だと」

上条「あれ? ……もしかして、死なないって言ったのが嘘だって事になってんのか?」

姫神「……上条君。どうして? どうして。私の前から去って行くの?。……また。私は戻らなければいけないの?」

上条「だ、だから違うって言ってんだろうが! 俺は死なない、勘違いだ!」

イン「とうまぁ……嫌だ、死なないで……とうま、とうまぁ!」

上条「だあああ! 人の話を聞けっつーの!」

数分後

冥土帰し『彼が死ぬ? 医者の立場から言わせてもらえば、そんな事は無いと僕は断言できるね?』

上条「聞こえたか? 医者がこう言ってんだから信じてくれるよな?」

美琴「……何よ、心配して損したじゃない」

イン「……もっと早く言って欲しかったかも」

上条「言っただろうが……助かりました、どうも」

冥土帰し『役に立てたのなら何よりだね? いきなり電話をかけて来るものだから、
       また何かあったのかと心配したよ? まあいい、では、また会おうね?』プツッ

上条「……また会おう、って言う医者はどうなんだろうな」

姫神「そうやって。何度もお世話になる君が悪い」

五和「でも、安心しました……良かった」

神裂「ええ、また悲しむのは……嫌ですから」

イン「……とうまのばか」

上条「わ、悪かったって……」

美琴「……まっ、いいわよ。アンタが無事ならそれでね」

上条(……ここだ、もう間違わないぞ! 今度こそ伝える、何があっても伝えるんだ!)

上条(きっと殴られる、噛みつかれる、痺れる、斬られる……それでも言うんだ!)

上条「じ、実は、今回の事はエイ 神裂「あっ……そういえば」

五和「どうしました女教皇様、何か思い当たる事でも?」

神裂「いえ、土御門に言われた事をふと思い出しまして……」

上条(また、邪魔が……いや、怯まず言うんだ!)

上条「実は今回の事はエ 神裂「エイプリルフール、でしたか」

上条(……えっ?)

美琴「エイプリルフール? そういえば、昨日は四月一日だったわね」

五和「それが土御門さんに何か関係が?」

神裂「土御門と先程会話したのです。そこで上条当麻の事を伝えてみたところ」

土御門『カミやんが告白? ありえないにゃー、きっとエイプリルフールの嘘ですたい』

神裂「と言っていたのですが……まさか」

上条(チャンス! 最高のタイミングだ!)

上条「そ、そうなん 美琴「いや、さすがにそれは無いわよ」

上条「……っ!?」

イン「うん、それはちょっと理由としては考えられないかも」

姫神「ありえない。考えるまでも無いと思う」

五和「そうですよね、いくら何でもそれは無いと思います」

上条(……あれー?)

上条「ち、ちなみにでございますが……何ゆえ、ありえないとおっしゃるのでしょうか……」

美琴「だって……ねえ? 告白よ、告白。そんなの嘘で言うなんて人としてどうかと思うわよ」

上条「うっ……」

姫神「悪ふざけとしては。度が過ぎている。幼稚」

上条「ぐっ……」

神裂「その様な事をする人は、人としての常識が無いのでしょう」

上条「うう……」

五和「誰かに告白される、そんな素敵な事を悪戯に使ってしまうのは……悲しいですね」

上条「ううう……」

イン「とうま、とうまはそんな事をしないよね? まあ、とうまはそんな人じゃないから関係ないかも」

上条「うう……ううう……」

美琴「ん? どうしたのよ、お腹でも痛いの?」

上条「…………」

五和「だ、大丈夫ですか? 薬か何か用意しましょうか?」

上条「…………」

姫神「上条君。まさか」

上条「……っ!」

神裂「まさか……昨日、あなたが言った事は全て」

イン「……エイプリルフールの嘘、なんて言わないよね?」

上条「…………」

美琴「アンタ……その様子だと……まさか、」

イン「とうま! 黙ってないで何か言って欲しいんだよ!」

上条「……あ」

姫神「あ?」

上条「あ、あ……」

五和「……上条さん?」



上条「ああっ! あそこで吹寄と建宮とゲコ太がイノケンティウスで焼き芋焼いてる!」


姫神「吹寄さん?」

五和「建宮さんが!?」

美琴「えっ! ゲコ太!? どこどこー!」

神裂「ステイル!? あなたは魔術を何に使っているのですか!」

イン「焼き芋! 私も食べたいんだよ!」


上条(……今だ!)ダッ

姫神「上条君。吹寄さんなんて。どこにも……あれ?」

五和「よく考えたら、建宮さんが居るはずが……えっ? 上条さん?」

美琴「何よ、ゲコ太なんて居ないじゃない! ……って、アイツは?」

神裂「魔術は使用されていないようですが……上条当麻?」

イン「焼き芋なんてどこにも見当たらないんだよ、とうま! あれ?」

姫神「……消えた」

美琴「まさか……あ、アイツ……!」

イン「に、逃げられたんだよ!」

五和「上条さん……まさか、本当にエイプリルフールの嘘で……」

神裂「……追いますよ、逃がしてはなりません!」

上条「はぁ……はぁ……逃げろ、逃げねえと、死ぬ……!」

上条(クソッ、どうしてこうなったんだ!? 俺はただ嘘をついただけで……)

上条(……って、それが悪かったんだよな。確かに、冗談では済まねえか)

上条(……やめよう、今から戻って素直に誤るしか バチッ、ビリッ!

上条「なっ!? で、電撃!? まさか……」

美琴「見つけた! 逃がさないわよ!」

上条(み、御坂!? アイツ、本気じゃねえか! 今は駄目だ、逃げるしかねえ!)

美琴「アンタを追いかけんのは慣れてんのよ、逃げられると思うな!」

上条「こっちだって、捕まったらどうなるかは分かってんだよ! 逃げろおおお!!」

路地裏

上条「はぁ……ひぃ……御坂は、居ないな」

上条(と、とりあえず逃げられた……しばらくはここで……)

「準備はできました」 「……行きますよ」 

上条「えっ? こ、この声は……」

五和「――七教七刃!」 神裂「――七閃!」

上条「はあ!? お、お前達……それは駄目なヤツ……っ!? 鋼糸が蜘蛛の巣みてーに張り巡らされてる!?」

神裂「安心してください。本気ではありません、あなたを捕えるために手加減しています」

五和「触れれば絡みついて身動きを封じるだけです、大人しく捕まってください!」

上条「だ、だからって当たったら無事で済む訳ねえだろうが!? お、おおおおおお!!」

五和「なっ……この鋼糸の中を避けながら進むなんて」

神裂「……やりますね、伊達に何度も死線をくぐってはいないという事ですか」

上条「褒められても嬉しくねえよ! クソッ、逃げろおおお!!」

上条「は、はあー! 生きてる、俺、生きてるよな!?」

上条(駄目だ……このままではエスカレートする一方、もう諦めて投降するしか……)

イン「あっ、見つけた。とうまー」

上条「い、インデックス!? それに、姫神……」

姫神「上条君。もう。逃げるのはやめない?」

イン「そうなんだよ。私達はとうまを許してあげるから、怖がらないでね」

上条「お前達……本当に、許してくれるのか?」

姫神「うん。だから。こっちに来てくれる?」

上条「……分かった、今行くよ」

上条(あの二人だったら、きっと許してくれる……良かった、助かったんだ)

イン「とうま、大丈夫?」

上条「ああ、俺はもう大丈夫だ。ありがとな、インデックス」

イン「ううん、気にしないで。……ねえ、とうま」

上条「ん? どうした?」

イン「あーむっ!!」ガブッ

上条「いっ……いってえええええええええ!?」

上条「痛い! 痛い! 何すんだよインデックス!」

イン「そう簡単に許すと思ったの? 甘いんだよ、とうま! あむっ!」ガブッ

上条「い、いってええええええ!! う、嘘つき!」

姫神「許す。許すとは言ったけど。それが今とは言っていない」

上条「なっ……何だよそれ!?」

姫神「つまり。私達の気が済んでから。という事」

上条「ひ、酷い……クソッ、逃げてやる! とことん逃げてやる!」

イン「ああっ! あいさ、とうまが逃げちゃうよ!」

姫神「任せて。これで足を狙って止めるから」

イン「ボール? ってとうまが離れちゃう! どうするの!?」

姫神「見てて。吹寄さん直伝の……フォークボール!」ビュン

上条「ごがっ!? い、いってえ……それでも逃げろおおお!」


イン「……足じゃなくて、頭に当たったね」

姫神「……おかしい。全然。落ちなかった」

上条「いってえ……はぁ、はぁ……」

上条(このままじゃ駄目だよな……謝るしかねえのは分かってんだけど……)

土御門「カミやん、ずいぶん派手にやってるにゃー」

上条「土御門? ……何だよ、こっちは取り込んでて相手できねえからな」

土御門「そんな邪険にするなよ、土御門さんが助けてやろうと思って来たんだぜい?」

上条「助けるって……この状況を何とかしてくれるのか?」

土御門「ああ、これ以上ねーちんや五和に暴れられると困るってのが本音だけどにゃー」

上条「……頼む、助けてくれ! 土御門!」

土御門「そのためには、まずは自分がやったコトを知っておく必要があるぜよ」

上条「俺がやった事? ……嘘の告白を、神裂と五和にしちまった事か?」

土御門「それに合わせて、姫神達の告白を嘘だと思っちまったコトもだ」

上条「……それは、確かに悪かったと思ってる」

土御門「いーや、カミやんは大事なポイントが分かってねえんだ。それを理解しないと、謝っても無駄ですたい」

上条「大事なポイント……」

土御門「いいか、好きな相手に告白するってのは相当な覚悟がいるんだ」

上条「……姫神達も、そうなのか」

土御門「ああ、だからみんな怒ってんだよ。嘘なんかで自分の覚悟が無駄になっちまったんだからな」

上条「……じゃあ、神裂と五和はどうなんだよ? 俺から言ったから、覚悟なんてしてねえだろ?」

土御門「五和とねーちんじゃ事情がずいぶん違うな。五和はカミやんが好きだった、
      好きな相手から告白されるなんてこれ以上ない幸せだ。だが、それは嘘だったって訳だろ?」

上条「……そう、なるな」

土御門「一方、ねーちんの方だがこっちはさらに悪質だな」

上条「悪質って……何だよその言い方」

土御門「いいか、ねーちんはカミやんを好き、とまではいってなかったんだ。他の子とは違ってな」

上条「でも、神裂は」

土御門「カミやんの思いを受け止めた。つまり、ねーちんはカミやんに惚れちまったんだよ。
      恋愛対象とまではいかなかった男が、自分の中で特別な存在になっちまった。それが嘘だって分かったら?」

上条「……最悪だな、最低だ。何やってんだろうな、俺は……クソッ……」

土御門「そう思えるなら、もう自分のやるコトは分かっただろ?」

上条「……ああ、やっと分かった。土御門、お前のおかげだよ」

土御門「気にすんなよ。オレはただ、ねーちんが心配なだけだからにゃー」

上条「心配?」

土御門「いや、さっきオレに会いに来た時のねーちんの表情、カミやんに見せたかったぜい。
      あの聖人の神裂火織が、浮かれた顔してカミやんに会うのを楽しみにしてたんだからな」

上条「神裂……それなのに俺は」

土御門「いいか、ねーちんを『不幸』にするなら、やり方を間違うなよ? オレの望みはそれだけだ」

上条「……正直、自信ねえよ」

土御門「沈むなって、たかがエイプリルフールだ、最後にはきっと分かってくれるぜよ」

上条「だと良いんだけどな……」

土御門「しっかし、姫神の告白をエイプリルフールの嘘だと思うなんてにゃー」

上条「……その前に、嘘の告白をされたから…………ん?」

土御門「どうした?」

上条「いや、もしお前達の嘘告白が無ければ……姫神の告白も嘘だと思わなかったんじゃねえかな」

土御門「あっ」

上条「なぁ、土御門。お前も責任が全く無い訳じゃねえよな?」

土御門「ま、待てって、本気か嘘かを見抜けなかったカミやんに非がある訳で」

上条「確かにそうかもしんねーな。……けど、テメェのやった事も原因の一つだよな?」

土御門「……怒ってる?」

上条「ちょっと、な。一発殴るくらいの怒りだ、ちょっとこっち来い!」

土御門「おっと、オレは忙しいから帰るぜよ。健闘を祈ってるぜーい」ダッ

上条「なっ、待ちやがれ! ……ったく、行っちまったか」

上条(……まぁ、土御門は関係ねえよな。……よし、行くか)

美琴「ったく、アイツはどこに逃げたのかしら……」

イン「私達の前から消えてから、さっぱり見つからないね……」

姫神「もし。上条君を見つけたら。どうする?」

五和「……私は、もう、十分だと思います」

神裂「私も、五和と同意見です。……これ以上は、無意味でしょうから」

姫神「じゃあ。全員一致で。いいよね?」

イン「うん。そうだよね、短髪?」

美琴「私には御坂美琴って名前があるって言ってんでしょうが! ……まぁ、反対はしないけど」

神裂「しかし、いったいどこへ逃げたのでしょうか……」

イン「あれ? 電話だ……とうまからなんだよ!」

美琴「本当に? ちょっと、早く出なさいよ」

イン「もしもし、とうま? えっ? う、うん。分かった、みんなに伝えるね」プツッ

イン「えっと、とうまが話があるからお家に戻って欲しいって」

五和「……上条さん、話って」

美琴「まぁ、予想は付くわね。……問題は、本当に分かってるかどうかだけど」

上条の部屋

上条「悪い、逃げたり呼び出したり、ずいぶん振り回せちまったな」

美琴「そうね、今日だけでかなり疲れたわよ」

五和「上条さん、お話っていったい何ですか?」

上条「……あぁ、さっき土御門に会ってさ。情けねーんだけど、アイツに教えてもらってやっと分かったんだよ」

イン「何が分かったの、とうま? 私達全員に向けて、ちゃんと話して欲しいんだよ」

上条「……謝らせてくれ、俺が悪かった」

姫神「何が。悪いと思ったの?」

上条「最初は、ただ嘘をついた事を怒ってるだけだと思ってたんだ。……でも、そんな単純な事じゃねえんだよな

神裂「……続けてください」

上条「お前達は、俺の事を真剣に考えてくれてた。それに俺は……全然気づかなかった」

イン「それを、謝りたいって事?」

上条「あぁ、もっとお前達の事を考えていたら、きっと嘘かどうかなんてすぐに分かったんだ。
    ……エイプリルフールなんか関係ない、俺が周りに居る人の事を大切にしてなかっただけだ」

上条「だから……ごめん、俺が悪かった」


美琴「……だって、どうする?」

姫神「及第点。かな?」

神裂「……私には、伝わりました」

五和「私もです、インデックスさんは?」

イン「みんなと同じなんだよ。とうま、顔をあげてくれる?」

上条「……あ、あぁ。これでいいか?」

イン「とうま、みんなの顔を見てどう思う? 怒ってるように見える?」

上条「いや……見えねえな」

姫神「今の上条君がそう思うなら。それは間違ってないよ」

美琴「はぁ……どうして、アンタなんか好きになっちゃったのかしら……」

イン「だったら諦めてもいいんだよ、短髪」

姫神「それは嬉しい。一人でも減れば。かなり違ってくるから」

美琴「なっ……べ、別にそうは言ってないでしょう!?」

五和「上条さん、もう、大丈夫ですよ」

神裂「力を抜いてください、上条当麻」

上条「……本当か? 真っ二つにならないよな……?」

神裂「そ、そんな事はしません! それ位分かってください!」

上条「……そっか、は、はぁー……駄目だ、しばらく動けねー……」

五和「上条さん。おしぼりです、どうぞ」

上条「サンキュー、五和……はぁ、良かったぁ……」

美琴(さりげなく、おしぼりで好感度アップしてる……油断できないわね)

姫神「でも。上条君。安心するのはまだ早いよ」

上条「……へっ? どういう事だよ? まだ俺、謝って無い事あったっけ……」

美琴「違うわよ。考えてみなさい、今がどういう状況かを」

上条「今って言われても……いや、ここで気付かないとまた同じ失敗を繰り返しちまうんだ」

イン「あの鈍感なとうまが、必死に考えてる……信じられないんだよ」

上条「今……俺の周りには五人の女の子、それ以外は……」

五和「ええっと……そこなんですよ、上条さん」

上条「えっ? 五人の女の子……お前達の事がどうかしたのか?」

神裂「その、私達とあなたの問題なのですが」

美琴「……アンタ、結局のところ、今彼女はいるの?」

上条「いねえって! それが何か関係あるのか? あるんだろうな……考えろ、考えろ……」

姫神「考えてくれるのは嬉しい。でも。今は時間が無いから。教えてもいい?」

上条「あ、あぁ、頼むよ」

五和「私達が上条さんをどう思っているかは……分かって頂けていますよね?」

上条「自分で言うのもアレだけど……みんな、俺の事を」

姫神「そう。みんな上条君が大好き。爆発すればいいと思う」

上条(……言い方に棘を感じるのは、気のせいじゃないんだろうなぁ)

美琴「で、アンタは私達の気持ちを知っている。……さらに確認だけど、アンタ恋人が欲しいって思ってる?」

上条「まぁ、人並みには……彼女が欲しくない男なんて、まず居ないと思うぞ」

神裂「……では、仕方ありませんね」

イン「うん、大事な話はここからなんだよ」

上条「……大事な、話」

姫神「そう。上条君。君は」

   「誰を恋人にするの?」

上条「誰を、恋人にするか……」

美琴「アンタにはまず、二つの選択肢がある。一つはこの中の誰かと付き合うのかどうか」

姫神「その先に。五つの選択肢がある。私達の中の誰と付き合うか」

神裂「私達はその答えが欲しいのです。上条当麻、それを決めるのはあなたです」

イン「とうま、とうまは私達の気持ちを知った上でその答えを出さなければいけないんだよ」

五和「つまり、この中の四人、もしくは五人は……辛い思いをしなければなりません」

上条「……俺の選択で、そうなっちまうのか」

美琴「そこで落ち込んじゃ駄目よ、仕方ない事なんだから。アンタはただ素直になれば良いの」

上条「素直にっつってもなあ……いきなり五人から選べなんて言われても」

イン「と、とうま? 今、五人からって言ったよね……?」

上条「言ったけど、それがどうかしたのかよ?」

五和「かなり重要なんですけど……気づきませんか?」

上条「……?」

美琴「……一応聞くけど、その五人って誰?」

上条「そんなの決まってんだろ? お前達だって」

神裂「では、あなたはこの中から一人選んでいただける……と考えて良いのですね?」

上条「あ、あぁ……今更何言ってんだ?」

五和「……はぁ、良かった。私達、現時点ではフラれた訳じゃないんですね」

イン「そうだね……これで断られてたら、かなりショックだったかも」

上条「俺一人だけ状況が理解できてねーんだけど……」

姫神「実は。私達は全員不安だったから」

上条「不安……?」

美琴「……ここで別の誰かって言われたら、私達全員、振られたって事になるじゃない」

上条「そういう事か……そんな心配しなくても良いのに、ここに居ない他の誰かなんて言う訳ねーだろ?」

イン「……だって、とうまは女の子にモテるから」

上条「俺、モテてたのか……イマイチ信じられねーけど」

神裂「この状況でも、そう言えますか?」

上条「……確かに。意外と不幸でも無かったんだな」

姫神「鈍感なのは。罪。今回の事で分かってくれた?」

上条「……肝に銘じておきます、痛い目は見たくないので」

美琴「で、私達はアンタに選ばれた。……ここからは、アンタに真剣に考えて欲しい」

上条「誰を選ぶか、か……」

姫神「今の段階で。誰にしようって。決まっている?」

上条「……いや、まだ何にも考えられてねーよ。突然すぎて、少し混乱してんだ」

神裂「全て嘘だと思っていたのですから、それも仕方ないでしょう」

五和「そうですよね……時間を取って、上条さんに考えて頂いた方が」

上条「そうしてくれるとこっちも助かるな……かなり情けねー話だけど」

イン「……それは困るかも。この場で決めて欲しいんだよ」

五和「い、インデックスさん?」

美琴「……私もそこのシスターに同感よ、間が空くのは避けたいわね」

姫神「なぜ? 上条君には。ちゃんと考えて。決めてもらいたい」

美琴「説明する必要があるわね、どうする?」

イン「うん、そうした方が良いかも」

イン「みんな、ちょっとこっちに来て欲しいんだよ。話したい事があるから」

神裂「話、ですか? 分かりました」

五和「どうしたんですか、インデックスさん?」

イン「えっと、つまり」

姫神「つまり?」

イン「とうまには、他に」

上条「他に?」

イン「とうまの事を……って、とうま! とうまは聞いちゃダメなんだよ!」

美琴「こっちに集めた意味ないでしょうが! アンタはあっち行ってなさい!」

上条「は、はい! すいませんでしたー!」

五和「ええと……インデックスさん、続きをお願いできますか?」

イン「うん。だから、とうまには――」

イン「とうまにはきっと、他にも想われている女の子が居ると思うんだよ」

姫神「……確かに。その可能性は高いと思う」

五和「上条さんなら……ありえるかもしれませんね」

神裂「ですが、それではその方々に悪い気が……」

イン「うん……だから、こうやってみんなと決めようと思ったんだよ」

美琴「……そうよね、他の人にも確かに悪いか。でもね、そうも言ってられないと思うのよ」

イン「短髪? どういう事?」

美琴「……もし、アイツがかなりの数の女の子に好意を持たれているとしたら、どうする?」

神裂「かなり、というのがどれ位かにもよりますが……」

五和「どれ程の方が、というのは分かりますか?」

美琴「その子達もアイツの事が好きって確証は無いんだけど、多分……」

姫神「十人? それとも。……百とか」

美琴「……約、一万」

五和「い、一万!?」

姫神「……唖然」

イン「た、短髪、それは本当なの!?」

美琴「その子達は、アイツに命を救われたから……もしかしたら……」

神裂「まさか、そこまでとは……」

五和「二百人相手にも臆さず立ち向かったり、一万人も救ったり……」

姫神「……上条君は。どこへ行こうとしているのかな」

美琴「ま、まぁ、救ったって言っても色々あったからで……
    私としてはその二百人に立ち向かったって話も気になるけど」


上条(……一万とか、二百とか、数字が聞こえるけど何の話だ?)

美琴「……言いたい事は分かってくれたわよね?」

神裂「ええ……その方々には悪いですが」

五和「……私達の中から、選んで頂きましょうか」

美琴「あの子達には悪いんだけど……うーん、やっぱり悪いかな……」

姫神「そう思うなら。あなたは諦めれば良い」

美琴「なっ……そうは言ってないでしょ!? でも……」

イン「短髪、それはとうまと一緒に居られる事より大事な事なの?」

美琴「それは……そうやってどっちかって選ぶ事じゃないと思う」

五和「私は事情を良く知りませんが……あなたは上条さんに告白したんですよね?」

美琴「ええ、その通りよ。……まぁ、伝わってはいなかったけどね」

神裂「では、それがあなたの素直な思いなのではないですか?」

美琴「えっ……?」

姫神「告白したという事は。上条君を自分のものにしたかった。という思いがあったはず」

イン「今の短髪は、それに嘘をついてるように見えるんだよ」

美琴「嘘なんて別に……私はただ、あの子達の事を」

五和「では、他の方に上条さんを取られても良いんですか?」

美琴「それは絶対に嫌! 他の女の子になんて――あっ」

神裂「ええ、それがあなたの素直な思いです」

姫神「だったら。何も気にしなくても良い。あの人のそばに居たい。って思うだけで良い」

美琴「……はぁ、アイツを好きになると思考までアイツみたいになんのかしら」

五和「上条さんみたいに……ですか?」

美琴「そうよ、今はアイツを取り合ってるんだから私なんて放っておけば良いのに。
    それどころか遠慮するな、なんて……お人よしにも程があるっつーの」

イン「でも、もし私の立場だったら、短髪でも同じ事を言ってたでしょ?」

美琴「……かもね。さーて、そろそろアイツに決めてもらいましょうか」

五和「そうですね……上条さん、今行きま……あれ? 上条さんは?」

イン「あれ? とうまが居ない……。とうまー、どこに居るのー?」

上条「……ここにいるぞ」

五和「か、上条さん? どうしてお風呂場に……」

上条「この狭い部屋の中であっち行けって言われたから……」

神裂「それは、悪い事をしてしまいましたね……」

上条「別に気にすんなって、風呂場に居るのは慣れてるからさ。それより、話は終わったのか?」

美琴「ええ、待たせたわね。まぁ、今度は私達が待つ番になると思うけど」

イン「とうま、誰を選ぶのか決めた?」

上条「あぁ、それなんだけど……実は」

五和「えっ……? ま、まさか……もう答えが出たんですか?」

美琴「ちょ、ちょっと待ちなさい……まだ、心の準備が……」

イン「とうま……もう一度聞くけど、決まったの?」

上条「……いや、全然。正直、頭の中が混乱してきた……」

姫神「予想通りだったけど。……ちょっと緊張しちゃった」

神裂「私もです……」

美琴「その……誰と誰、とか絞ってたりしてるの?」

上条「いや、まだ五人で迷ってる……無理だろこんなの」

姫神「でも。上条君に決めてもらわないと意味が無いよ」

五和「そうですね……こればかりはどうしようも無いですから」

上条「……そう言われてもなぁ、どうすれば良いのかさっぱり思いつかねーし」

姫神「それなら。こう考えてみるのはどう?」

上条「どう考えるんだ?」

姫神「無理矢理でも良いから。順位を付けてみるとか」

上条「順位って……そんなの付けられる訳が無いだろ?」

姫神「そんなに難しい事じゃないよ。要は。客観視すれば良い」

神裂「客観視、ですか」

姫神「まず。第一に考えるのは。告白した人とされた人はどちらが好かれていると思う?」

五和「告白された人、でしょうか? 好きだから告白すると考えればそう考えるのが普通ですね」

姫神「その通り。つまり現時点で。上条君の中では」

神裂 五和(告白されたグループ)>姫神 美琴 インデックス(告白したグループ)

姫神「って考えられる」

美琴「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! それだと私達が下みたいじゃない!」

姫神「まだ。話は終わっていない。次に考えるのは。順番」

上条「順番?」

姫神「告白された順番を見て。先に告白された方が。若干上と考えるね」

五和「それだと、私は女教皇様より下という事になるんですか……?」

姫神「あくまでも客観視。一つの意見だから」

神裂(これだと私が現時点では……一番という事に!?)

姫神「さらに順番を考えると。今回。あなた達は私の告白したのを知ってから。告白したよね?」

美琴「そう、なるわね……でも、それはあなたがフラれたって思ったからで」

イン「そ、そうだよ! 私だってとうまを想う気持ちは……」

姫神「でも。その時まで何も行動に移さなかった。それは事実でしょう?」

美琴「それは……」

姫神「という訳で。こうなる」

神裂>五和>姫神>美琴>インデックス

イン「そんなぁ……私が一番とうまの近くに居たのに……」

上条「なぁ、姫神……俺が言うのはものすごーく変なんだけど、ちょっと強引じゃねーか?」

姫神「これは一つの考え方。それに。まだ話は終わっていない」

神裂「私が一番では無いのですか……?」

姫神「忘れてはいけない要素がある。今回のは全て。エイプリルフールに起きた事」

五和「そうですね……そのせいでこんな事になってしまいましたから」

姫神「そして。上条君の嘘の告白。つまり――こうなる」



姫神>美琴>インデックス>神裂>五和


姫神「告白したサイドは本気。一方。されたサイドは嘘。故に逆転する」

神裂「そ、そんな……」

五和「うそっ……私の位置、低すぎ……?」

美琴「……あれ? ちょっと待って、これだと……」

姫神「そう。上条君が一番好きなのは。私という事になる」

上条「なんと……」

姫神「秋沙ちゃん大逆転。ぶいっ」

イン「あ、あいさ!? これはおかしいと思うんだよ!」

姫神「おかしくても。これが真実だよ。上条君。もう答えは出たよね?」

上条「……いや、流石に無理があると思うぞ」

神裂「その通りです! 考え直してください!」

姫神「いけると思ったのに。残念……」

美琴「……えっと、今は全員が同じくらいって考えて良いのよね?」

上条「そういう事になるな……情けねーけど」

美琴「それなら、アンタが少しでも気に入った人を選べば良いんじゃないの?」

上条「その少しでも、ってのがなかなか難しくてですね……」

五和「うーん……特徴とか、そういうので決めるというのはどうですか?」

上条「特徴?」

五和「例えば、女教皇様でしたら年上、スタイルが良いとか」

神裂「い、五和!?」

上条「確かに、そう言われると……神裂ってスタイル良いよな……」

神裂「ううっ……その様な目で見ないでください!」

美琴「ま、待ちなさいよ! 私だって、その……いつかはママみたいに……」

上条(御坂の親……なるほど、娘もあんな風になるのか?)

イン「……とうま? いやらしい事、考えてたりしないよね?」

上条「そ、そんな事は無いぞ。……インデックスは、うーん……」

イン「とーうーまー? なんで私の胸を見てるのか説明してほしいんだよ!」

上条「落ち着けって! 気のせい、気のせいだから!」

五和「か、上条さん! あまり見た感じでは分かりませんが、私も……」

上条(五和は……フランスで透けて……って考えたら意識しちまうだろうが!?)

イン「……私だって、その内」

姫神(……胸にも個性が必要だとは思わなかった)

上条「……とりあえず、見た目の話は置いておいて他の特徴を考えようか」

美琴「そ、そうね。後は……料理が上手いとか?」

上条「料理だったら……やっぱり五和になるかな」

姫神「むっ」

五和「上条さん……私、上条さんのためなら何でも作りますよ!」

美琴「わ、私だって料理くらいなら!」

姫神「私も。お弁当を作っているのは。知っているはず」

神裂「下手では無いと自分では思いますが……あっ、梅干しはお好きですか?」

上条「梅干し? 嫌いじゃねーけど。もしかして、自分で作ったりするのか?」

神裂「はい、今度よかった――」

上条「ん? どうした神裂……えっ? インデックス……?」

イン「……とうま、ごめんね」

美琴「急に落ち込んじゃって……どうしたのよ?」

イン「……私は料理ができないから、とうまにいつも作ってもらってた」

姫神「でも。他の人は料理ができる。だから落ち込んでいるの?」

イン「うん……私は、とうまにお世話になってばっかりだったんだ、って思って……」

上条「インデックス……」

イン「とうま、ごめんね……私は迷惑をかけるから、とうまの恋人にはなれないかも……」

五和「そこまで思う事では……」

上条「そ、そうだぞインデックス。俺だって別に迷惑って訳じゃ……」

イン「……だけど、他の人ならとうまに美味しいごはん作ってあげられるもん」

美琴「だからって、そんなに思い詰めなくても……」

イン「……でも」

神裂「私が……私がこの子に、料理を教えます」

イン「えっ……?」

神裂「最初から料理が上手く作れる者など存在しません、この子もきっとできるはずです」

上条「神裂……」

神裂「あなたはきっと、すぐに覚えられます。……私と一緒に頑張ってみませんか?」

イン「……いいの? 私、たくさん失敗しちゃうかもしれないんだよ……」

神裂「何も気にしないで良いのです。だから……どうか、私を頼ってください」

美琴(な、なんで料理を教えるだけでこんな雰囲気に……)

イン「とうま、私……頑張るから、いつか食べて欲しいんだよ」

上条「あぁ、インデックスならきっとできるさ。だから、神裂と一緒にやってみな」

イン「うん!」

神裂「さあ、まずは包丁の使い方からですね」

イン「包丁……どうやって持てばいいの?」

神裂「利き手で持った後に、反対の手で食材を 姫神「ストップ」

神裂「何ですか? 今、私はこの子と……」

姫神「料理教室を始めるのは勝手だけど。今はもっと。大事な話をしている途中」

イン「あっ……すっかり忘れていたんだよ」

美琴「止めるに止められないから困ったわよ……」

美琴「話を戻すけど……今、アンタの中ではどう考えてるの?」

上条「どうって言われても、さっきからほとんど話が進んでないからな……」

五和「……上条さんに決めて頂くしかありませんから、私達にはどうしようもないかもしれませんね」

姫神「それなら。こう考えてみるのはどう?」

イン「あいさ……また結局あいさが一番、とかにならないよね?」

姫神「今度は大丈夫。要は。想像してみれば良い」

神裂「想像……何を想像すると言うのですか?」

姫神「二人で過ごす将来。それを考えてみれば。きっと答えは出るはず」

美琴「その中で一番自分の中で良いって思った人が、相手には相応しいって事か……」

五和「なるほど……上条さん、試してみてはどうですか?」

上条「……でもそれ、要は妄想だよな。まぁ、考えてみるのも悪くないか」

上条「本人の前で妄想、ってのも恥ずかしいな……」

姫神「恥は捨てるためにある。まずは。私から」

上条「姫神か……何を考えれば良いんだろう」

姫神「例えば。こういうのはどう? 私と上条君は。恋人同士」

上条「俺と姫神が恋人同士、なるほど」

姫神「二人はまだ高校生。明日から夏休み」

上条「やけに具体的だな」

姫神「明日の予定を話し合って。二人は出かける事になった」

上条「デートって訳か……」

姫神「それから。二人は――」

上条「…………」

姫神「…………」


美琴「……急に黙っちゃったけど、どうしたのかしら」

五和「二人とも妄想の世界に入って行ったとか……」

神裂「こんな事をして何か意味があるのでしょうか……」

イン「とりあえず、様子を見た方が良いかも」

小萌「それでは、また二学期に会いましょう! 怪我には気を付けるのですよー」


上条「んー……! あー、やっと夏休みかー」

姫神「ずいぶん。嬉しそう」

上条「当たり前だろ? こうして補習も無く、無事に夏休みを迎えられたんだからさ」

姫神「それが誰のおかげかは。分かってる?」

上条「分かってるって、全部お前のおかげだよ。秋沙」

姫神「分かってるなら。良いけど。当麻君。明日から何をする?」

上条「そうだなー……とりあえず、決まってる事が一つだけあるな」

姫神「決まってる事?」

上条「ああ、秋沙と一緒に過ごすって事だよ」

姫神「……馬鹿」

翌日


上条(あっちーなー……夏に自転車はキツい。……秋沙は、居た居た)

姫神「あっ。やっと来た」

上条「悪い悪い、待たせちまったか?」

姫神「大丈夫。今来たところだから」

上条「よし、後ろ乗ってくれ。暑さにやられちまう前にさっさと行こうぜ」

姫神「その前に。何か言う事は無い?」

上条「言う事? ……俺、なんか気に障る事でもしたか?」

姫神「何も気付かなかったら。少し怒るかも」

上条「気付くって言われてもな……あっ、分かったかもしれない」

姫神「言ってみて」

上条「……そのワンピース、似合ってるぞ」

姫神「ありがとう。白のワンピースと麦わら帽子で。魅力アップ」

上条「自分で言わねえ方が良いと思うけどな……ほら、乗れよ」

姫神「うん。えいっ……転ばないでね」

上条「転びたくなったらちゃんと捕まってろよ? ……よし、出発!」

上条「はぁ……はぁ……二人乗りで坂はキツい……」

姫神「大丈夫? 降りた方が良い?」

上条「いーや、ここで降ろしたら……負けな気がする……はぁ、はぁ……」

姫神「プールに着いたら。良いものが見れるかもしれない」

上条「良いもの? 何だそれ?」

姫神「昨日。新しい水着を買ってみた」

上条「……っ!」

姫神「やる気。出た?」

上条「……飛ばすぞ、振り落とされねえように気を付けろよ!」

姫神「頑張って。……絶対離れないから」

そう言うと姫神は、上条の体に回した腕にぎゅっと力を入れた。
少し苦しいが、不思議と心地よいその感覚を上条は愛おしく感じていた。

二人を乗せた自転車は坂を上りきり、下りになると漕がずとも進んでいく。
スピードは速くなり、上条は転ばないようにブレーキをしっかりと踏みしめた。

「そんなにくっついて熱くねーのか?」

「大丈夫。当麻君の背中。居心地いいから」

風になびく黒髪は、ワンピースとともに青空の下で鮮やかに映えている。

――夏はまだ、始まったばかりだ。

姫神「――というのは。どう?」

上条「不幸な俺でもこんな青春が味わえるなんて……」

姫神「私と一緒になれば。現実になる」

上条「……姫神と一緒か、きっとそれなら」

美琴「ちょ、ちょっと待ちなさい! 何二人で決めようとしてんのよ!」

姫神「上条君は。私を選ぼうとしている。それを邪魔するのはどうかと思う」

イン「あいさ、みんなそれぞれ考えるって話だったよね」

五和「そうですよ! 上条さん、まだ決めないでくださいね」

上条「あ、あぁ……じゃあ、次は誰を考えれば良いんだ?」

美琴「えっと……私、とか」

つ「幻想殺し」
つ「ギャグ補正」

禁書には上の二つがある
そして何故か下の存在を忘れる輩は多い

上条「御坂か。中学生とだったら……」

美琴「それなんだけど、どうせ妄想の世界なんだから……少し変えない?」

上条「変えるって、何を変えるんだよ」

美琴「えっと……二人は大学生で」

上条「大学生?」

美琴「そう。それで、私はアンタの家に泊まって朝になった」

上条「……なんか、よく分かんねえ状況だな」

美琴「別に良いじゃない! それと、一つだけ言っとくけど……そういうのは無しだから」

上条「そういうの、と言われましても」

美琴「だ、だから……その……オトナな事って言うか……」

上条「……御坂さんも思春期なんですね」

美琴「なっ……! 違うわよ! 男の人って、そんな事ばかり考えてるって聞いたから……」

上条「そう言われると、かえって意識しちまうだろうが……」

美琴「ほ、ほら、さっさと始めなさい!」

上条「はいはい……朝になって」

美琴「それで、二人は起きるんだけど――」


イン「二人とも、急に黙っちゃったんだよ……」

神裂「たまにボソッと声がするかと思えば、また静かになる……」

五和「妄想してる間って、どんな感じなのでしょうか……」

姫神「やってみれば分かる。楽しいから」

上条「んん……朝か。おい、起きろよ」

美琴「んにゃ……何よ、人が気持ちよく寝てたのに……」

上条「朝だっつーの、早く起きねえと講義に遅刻するぞ」

美琴「私、今日は休講で一日フリーだから」

上条「じゃあ、起こさなくても良かったのかよ……自分の準備するか」

美琴「えー……アンタは講義あるの?」

上条「残念だけどな。ゆっくりしてろよ、また帰ったら連絡するからさ」

美琴「……えいっ!」

上条「お、おい! 急に抱き着くなって」

美琴「……行っちゃダメ」

上条「……はぁ?」

美琴「一人じゃ寂しいじゃない……だから、一緒に居てよ」

上条「んな事言われてもな……わがまま言うなって」

美琴「……ケチ」

上条「ケチでも何でも良いけど、行くからな」

美琴「何よ……少しくらい構ってくれても良いじゃない」

上条「だから、俺は休みじゃないんだって……お前も分かってて言ってんだろ?」

美琴「むー……じゃあ、五分だけ。五分だけで良いから……」

上条「仕方ねーな……五分で何すればいいんだ?」

美琴「えっと……ぎゅって、して?」

上条「……ほら、こっちこい」

美琴「うん……えいっ」

上条「抱きしめれば良いんだろ……んっ、こうか?」

美琴「……ありがと、こうされると落ち着くのよ。アンタは……嫌?」

上条「嫌な訳ねーだろ……何年一緒に居ると思ってんだよ」

美琴「……飽きたりしない?」

上条「今のところは、美琴が可愛すぎてそんな余裕は無いな」

美琴「クサい事言ってると逆に怪しく見える……」

上条「じゃあ、どうしろっつーんだよ……」

美琴「今日は一緒に 上条「ダメ」

美琴「……むう」

上条「さてと、そろそろ行くからな」

美琴「分かったわよ……」

上条「……背中に回った腕の力が一層強くなった気がするけど」

美琴「だって……寂しいんだもん」

上条「分かったよ、出来る限り早く帰ってくるからさ」

美琴「……うん、絶対早く帰ってきてね」

上条「あぁ、その代わりお前――ん? 電話だ……もしもし」

青ピ『カミやん、朗報や! 今日の二限と三限、休講みたいやでー』

上条「本当か? じゃあ、俺は今日休みかー」

青ピ『ボクもなんよ。カミやん、ボクと一緒にどっか』プツッ

上条「なっ……お、おい、美琴。何勝手に切ってんだよ」

美琴「聞こえたわよ、今日は休みなんだって?」

上条「……それが、何か?」

美琴「ふっふっふー……えいっ!」

上条「だから急に抱き着くなって! ……はぁ、仕方ねえな」

美琴「ねえねえ、頭」

上条「……はいはい、撫でれば良いんだろ。ほら」

美琴「ん……今日は一日一緒かー、何しよっか」

上条「せっかくだし、どこか行くか。行きたい場所あるか?」

美琴「ゲコ太ーランドがいい!」

上条「またGGL(学園都市ゲコ太ーランド)かよ……本当に好きだな」

美琴「……悪い?」

上条「別に悪いとか言ってねーよ。よし、さっさと準備しようぜ」

美琴「ねえ、当麻」

上条「ん? 何だよみこ――んんっ……」

美琴「んんっ……はぁっ……えへへ」

上条「お前なぁ……まっ、いっか」

美琴「――ってのは、どう?」

上条「……これは照れくさすぎて、もう何と言うか」

美琴「なっ、何よ……駄目だった?」

上条「いや、悪くは……ねえけどさ。甘える方が良いのか?」

美琴「……うん」

上条「可愛ければ何でも許されるってヤツか……確かに許すだろうけど」

美琴「それって、私が可愛いって事……?」

上条「……まぁ、そうだな」

美琴「……ありがと」

姫神「そこまで。あなたの番は終わり」

美琴「えー……もうちょっとだけ」

姫神「楽しい時間に終わりはつきもの」

イン「そうだよ短髪! というか色々聞きたい事があるんだけど……何で途中で唇を前に出したの?」

美琴「そ、それは……そんな事言えないわよ!」

上条「あのさ……これ、まだやんねーと駄目なのか?」

五和「当然です! ……上条さん、次は私とお願いします!」

上条「五和か。五和と……どんな感じになるんだろうか」

五和「あの……私と上条さんは結婚していて」

上条「結婚……五和が奥さんか」

五和「は、はい……それで上条さんが、お仕事から帰って来まして――」

上条「…………」

五和「…………」



イン「短髪、妄想ってどんな感じだったの?」

美琴「やってみれば分かるわよ」

神裂「しかし、妄想と言われましても……どうすれば良いのでしょうか」

イン「私もどうしたら良いのかさっぱりなんだよ……あいさと短髪はすぐ思いついて羨ましい」

美琴「……それだけ、業が深いって事かもしれないけどね」

姫神「確かに。でも。大学生というのはリアル過ぎる気が」

美琴「い、良いじゃない別に!」

上条「ただいま、あー……今日も疲れた」

五和「あっ、お帰りなさい、当麻さん。今日もお勤めご苦労さまでした」

上条「んっ……良い匂いがする」

五和「ふふっ、今日は鯛の煮つけですよー」

上条「鯛か……腹が減って、疲れもどうでも良くなってきた」

五和「当麻さん、先にお風呂にしますか? それともご飯にしますか?」

上条「そうだな……五和、もう一つ選択肢は無いのか?」

五和「えっ……? あ、あの……それは……」

上条「そっか……無いんだな、残念だよ」

五和「ううっ……当麻さん! あまり意地悪しないでください……」

上条「悪かったって。とりあえず、飯から先に済ませるかな」

五和「もう……分かりました、今用意しますので着替えて待っていてくださいね」

上条「おおっ! 美味そうだ……もう食べても良いか?」

五和「その前に……はい、どうぞ」

上条「ああ、ありがとう。このおしぼりが無いとな……では」

上条五和「いただきます」

上条「あむ……うん! 美味い!」

五和「良かった……気に入って頂けたようで何よりです」

上条「五和の料理を気に入らない訳ないだろ? 幸せってこういう事なんだろうな……」

五和「大げさですよ、ふふっ。当麻さん、はい、あーん」

上条「あーん……いや、五和と結婚して良かったよ」

五和「そ、そんな事言っても何も出ませんよ」

上条「いいよ、五和が居るなら他には何も要らないからさ」

五和「当麻さん……ほ、ほら、ご飯が冷めちゃいますよ」

上条「あー、美味しかった……ごちそうさま」

五和「当麻さん、お風呂も沸かしてありますけどどうしますか?」

上条「よし……入ろうかな、五和も一緒に入るか?」

五和「えっ!? そ、その……私は洗い物を」

上条「それなら俺がやるからさ、良いだろ?」

五和「当麻さん……もう。……分かりました、先に入っていてください」

上条「……それで来ないってのは無しだぞ」

五和「だ、大丈夫ですよ。……恥ずかしい、というのが本音ですけど」

上条「もう夫婦なんだからそんなに恥ずかしがんなくてもな……」

五和「それでも恥ずかしいものは恥ずかしいんです……ほら、待っててくださいってば」

上条「あぁ、待ってるからな?」

風呂

五和「し、失礼します……」

上条「ずいぶん遅かったな、何かあったのか?」

五和「その、……恥ずかしくて」

上条「もう夫婦なんだ、そんな事気にする間柄でも無いだろ?」

五和「それはそうですけど……」

上条「とりあえず、体洗ってさっさと入ろうぜ。このままだと風邪ひいちまうからさ」

五和「……分かりました。当麻さん、お背中流しますよ」

上条「本当か? じゃあ、頼むよ。そのまま前も……」

五和「し、しません! もう……失礼します。よっ……んっ、力加減、どうですか?」

上条「丁度いい……あー、気持ちいい……」

五和「ふふ……はい、終わりましたよ」

上条「よっと……二人で入るには少し狭いんだよな」

五和「いつかは二人で広いお風呂のあるお家住みたいですね……」

上条「……頑張らないと」

五和「期待してますよ、当麻さん」

上条「でも、個人的には……これ位狭い方が密着してて」

五和「ちょ、ちょっと……どこ触ってるんですか……もう」

上条「……五和」

五和「と、当麻さん……! だから、――んっ」

五和「……わ、私ったら何を」

上条「わ、悪い……でも、仕方ないというか」

美琴「……何考えてたのか分かんないけど、鼻の下伸びてるわよ」

上条「なっ……」

姫神「大丈夫。下心も心だから」

上条「と、とりあえず五和とはこんな感じで……」

五和(……もう少し時間があれば上条さんと、って違う違う……)

姫神「次はあなた達のどちらかだけど。どうする?」

イン「うーん……とうまとしたい事……」

神裂「なかなか思いつかないものですね……どうしたら良いでしょうか」

上条「まぁ、無理して考える事でもねーからな」

姫神「では。その代わりに私がもう一度」

美琴「それは駄目よ。本当に無いの? コイツとしたい事」

イン「……私は、とうまと一緒に居られれば良いから」

上条「インデックス……?」

イン「とうまと一緒に居られれば私は幸せだもん。一緒にご飯食べて、
    どこかに出かけて……それで一日が過ぎれば幸せかも」

上条「そんな普通な事で満足なのか?」

神裂「何事も無いのが一番ですから。……特にあなたの様な人ならば、尚更」

イン「うん、とうまが怪我しなければ私も嬉しいから、それが私の願いかも」

五和「インデックスさん……」

美琴「……本当ね、どっかの誰かがボロボロになってもすぐに立ち上がるから、
    こうやって心配しなきゃいけなくなるのよ」

上条「……すいません」

姫神「大丈夫。それに関しては。半ば諦めてるから」

イン「どうせまた、誰かが困ってたら助けに行くんでしょ?」

上条「まぁ……見過ごす事はしないと思う」

美琴「アンタは絶対行くわよ、誰が止めてもね」

五和「そんな上条さんだから、そばに居たいと思うんですよ」

神裂「ええ、だから何も気にせずそのままでいてください。分かりましたか?」

上条「……あぁ、遠慮なくそうさせてもらうよ」

姫神「上条君。そろそろ決められそう?」

上条「……誰を選ぶか、か。この五人の中で、俺の恋人を……」

美琴「……やっぱり、時間は必要よね。少し焦り過ぎたかな……」

五和「そうですね……上条さん、少しお一人で考える時間を」

神裂「ですが、私達はそろそろ学園都市から去らなければいけませんから……」

姫神「それだと。不公平になる可能性が高い」

イン「不公平?」

姫神「そう。会えない時間。別の人が上条君にアプローチしたら。差が出来てしまう」

上条「で、でも、そのアプローチとやらをしなければ……」

姫神「私。すると思う」

美琴「……私も、アンタに会わないでいるのは多分無理だから」

イン「そこはとうまのためにも我慢してあげた方が良いと思うんだよ」

美琴「アンタは一緒に住んでるから、絶対的有利になっちゃうでしょうが!」

イン「あっ……それもそうだね」

五和「そうしますと、やはり……」

イン「とうまに決めてもらうしか……」

神裂「ありませんね……」

美琴「どうなの? 今、答えを出せる?」

上条「……誰かを選ぶんだよな」

姫神「今こそ。男を見せる時」

上条「……分かった、選ぶよ」

上条「俺が……俺が選ぶのは――」

上条「俺が選ぶのは、い」

姫神「……っ!」

五和(い……? って事は……いつわの「い」!? 上条さん……)

イン(い、だから……インデックスの「い」だ! とうま……私)

上条「い、い……」

五和・イン(…………っ!)

上条「――いや、ちょっと待ってくれ」

五和「うっ……」 イン「えー……」

美琴(……ほっ、良かった)

上条「俺が選ぶのは、か」

五和(か!? 「か」って事は……)

神裂(「か」で始まるのは私だけ……つまり、これは……!)

上条「か、か……」

美琴(嫌、お願い……!)

上条「――考えてるんだけど、なかなか言いづらいな」

神裂「なっ……」

姫神(……危ないところだった)

上条「俺が選ぶのは、ひ」

美琴(ひ? ……あっ、あの人は)

姫神(姫神の「ひ」……嬉しい。上条君。私の事を)

上条「ひ、ひ……」

イン(ううっ……あいさが選ばれるなんて……)

上条「――ひえっくしゅん! うー……少し寒いな」

姫神(…………)

上条「俺が選ぶのは――み」

神裂(「み」……! これは、まさか……)

美琴(キタキタキター! 御坂の「み」! 美琴の「み」!)

上条「み、み」

五和(……この流れだと多分違いますよね)

上条「――御坂」

神裂「……っ!?」 イン「ええっ!?」 姫神「そ。そんな……」

美琴「や、やった……私がえら 上条「御坂、電撃出てるから少し落ち着いてくれねーか?」

美琴「……へっ?」

上条「電化製品が壊れるかもって気になって、落ち着いて考えられなくて……」

美琴「……ふ、ふふ……ふふふふふ」

上条「み、御坂?」

美琴「ふっざけんじゃないわよおお!!」

上条「ひいっ!?」

美琴「さっきから何度フェイントかけたら気が済むのよアンタは!」

上条「フェイント……?」

姫神「上条君。わざとだったら悪質。無意識でもやめて欲しい」

イン「とうま……私達はみんな緊張してるんだよ、だから決めるなら早く決めて!」

上条「そう言われましてもですね……その……」

神裂「……あなたが決められない場合、どうなるか分かりますか?」

上条「ええと、どうなるのでございましょうか……」

姫神「私達が。寝られない日々が続く」

上条「そ、そうなのか……」

美琴「……気になって寝られる訳無いじゃない」

五和「上条さん、私達は誰も恨みません……だから、決めてくれませんか?」

上条「……分かった。でも、あと一分だけ待ってくれ」

イン「……とうま、私の事は気にしないでね。私は一人でも……大丈夫だから」

上条「あぁ、ありがとうインデックス……」

この五人の中から決める。四人には悪いが、それでも良いと言ってくれた。
だったら、一番だと思った人を選べば良い。……それが誰なのか。


五和――俺の事を守るために『神の右席』に立ち向かってくれた。
優しくて、強い、きっと俺の事を支えてくれる……俺も五和も力になれたら嬉しい。


姫神――記憶の中では俺が最初に助けたのは姫神だった。……でも、逆に俺は姫神に守られた。
アイツは俺のために命を捨てようとしてくれた……二人なら何があっても乗り越えられるだろう。


神裂――強さの中に様々な悩みを隠して生きてきた、そう土御門は言っていた。
今はインデックスや天草式とも一緒に居られる事もできる。神裂はもう悩む必要は無いかもしれない。
でも、俺は神裂に何度も助けられた……恩を返すのは俺の方だ。神裂の「幸福」、それを俺も一緒に……。


御坂――死ぬ決意を一度はしたがそれを助ける事ができた。俺もアイツには何度も世話になってる。
きっと、御坂は俺のために笑ってくれるし涙も流してくれる。一緒に居られれば、最高だろうな。


インデックス――俺と「上条当麻」を繋ぐ女の子。でも、今はそれ以上に大切な存在だ。
記憶がどうとかじゃない、今インデックスと一緒に居る時間は守りたい……失いたくない。
インデックスの居ない生活なんて……今は考えたくない、考えられない。それなら――。

上条「……決めた、俺なりの答えを出すよ」

美琴「……そう、アンタが決められるとは思ってなかったけど」

五和「上条さんの選んだ答えなら、きっと間違いありません」

姫神「私は。どんな答えでも大丈夫」

神裂「遠慮なく、言ってください」

イン「とうま、とうまの選んだ人は……誰?」

上条「……あぁ、俺が選んだのは――」

四ヶ月後

刀夜「母さん、そろそろ時間だろうか」

詩菜「ええ、当麻さんはもう少しで来るはずですよ」

刀夜「しかし、当麻が帰ってくる前に新しい家が出来て良かった……」

詩菜「本当ですね。これなら、当麻さんの連れてくる女の子も迎える事ができますから」

刀夜「あぁ、当麻が誰かを連れてくるとは思わなかったけどな」

詩菜「刀夜さんと違って、決断がすぐにできて私も嬉しいです」

刀夜「か、母さん……だけど、本当に驚いたな。当麻が電話で――」

上条『父さん、今年の夏も帰ろうと思うんだ』

刀夜『そうか、私も母さんも嬉しいよ。いつ頃帰ってくるんだ?』

上条『八月の頭とかに。それと……他の人を連れってても良いかな?』

刀夜『他の人……なるほど。当麻、女の子を連れてくるつもりだな』

上条『ま、まぁ……そんな感じで……』

刀夜『良いだろう。当麻の恋人なら、私達も歓迎するぞ』

上条『ありがとう、じゃあまた連絡するから』

刀夜「これは案外、孫の顔を見るのも早いんじゃないか?」

詩菜「あらあら、刀夜さんはもうおじいちゃんになったつもりなのかしら」

刀夜「で、母さん。当麻が連れてくる女の子は誰だと思う?」

詩菜「そうですね……私は、御坂さんの娘さんだと思います」

刀夜「御坂さん……あぁ、大覇星祭の時の女の子か。なるほど……」

詩菜「刀夜さんは、あの外国の女の子だと思うんですか?」

刀夜「あぁ、あの子と当麻の間には特別な何かがある気がする。きっと、あの子を選ぶだろう」

詩菜「あらあら、男の人でないと分からない何かがあるのかしら」

刀夜「そうかもしれないな。……おっ、噂をすれば」

詩菜「タクシーが来ましたね。きっと、当麻さんと恋人さんはあの中に……」

上条「おーい、父さーん、母さーん」


刀夜「当麻が来たぞ。……母さん、予想はどうやら」

詩菜「ええ、私の勝ちですね」

刀夜「うん? 何を言っているんだ母さん、当麻の横を見てみなさい」

詩菜「ええ、見ていますよ」

刀夜「何だ、見えているのか。当麻の横に居るのはどう見ても」

詩菜「はい、御坂さんの娘さんですね」

刀夜「……母さん? 私には、外国の女の子が横に居るように見えるんだが……」

詩菜「……あらあら、本当ですね」

刀夜「……どういう事なのだろうか」

上条「父さん母さん、久しぶり」

刀夜「あ、あぁ……久しぶりだな当麻。それに」

美琴「お、お久しぶりです……」

イン「ええっと、とうやにしいなだよね。元気そうで私も嬉しいんだよ」

詩菜「え、ええ……あなたもお元気そうで」

刀夜「当麻、お客さんはこの二人なのか? 私はてっきり……」

上条「あー……実は、あっちのタクシーにも」

刀夜「……うん?」


神裂「海ですか……潮風が心地よいですね」

五和「楽しみだったんですよ、日本の海というのも久しぶりですから」

姫神「あそこに居る二人が。当麻君のご両親みたい」


刀夜「……当麻、まさかとは思うが」

上条「えっと……あの三人も俺が連れてきた。……マズかった?」

詩菜「五人ですか……頑張れば何とかなるとは思いますが」

上条「ごめん……お願いします」

刀夜「当麻、一つ聞かせてくれないか。お前が連れてくるはずだった彼女というのは……」

上条「……実は」


上条「――この五人とも、俺の恋人だ」


刀夜「……な、何!?」

詩菜「あらあら……」

新・上条宅

神裂「神裂火織と申します……不束者ですが、よろしくお願いいたします」

五和「は、はじめまして。いつも当麻さんにはお世話になっています……」

姫神「姫神秋沙です。お義父さん。お義母さん。どうかよろしくお願いします」

美琴「何よそれ……えっと、私もよろしくお願いします」

イン「とうや、しいな、これお土産なんだよ」

刀夜「あ、あぁ……ありがとう」

詩菜「あらあら……当麻さん、これはどういう事なのかしら」

上条「それは……そのですね」

姫神「当麻君が決められなかったから。こうなってしまいました」

刀夜「決められなかった?」

五和「はい、当麻さんにこの五人の中から選んで頂くようお願いしまして」

詩菜「その結果が、こうなったという事ですか?」

神裂「ええ、その通りです」

回想

上条「――駄目だ、やっぱり俺には選べない……ごめん!」

美琴「え、選べないって……」

上条「仕方ねえだろ……お前達全員可愛いし優しいし、選びようがねえんだよ!」

姫神「開き直った。でも。それだと」

五和「時間を取らなければ、って事になりますよね」

上条「そうして頂けたらありがたいのでございますが……」

神裂「それでは先ほど話したように、不公平という事になってしまいますね」

イン「そうだね、……とうま、時間があったら本当に決められる?」

上条「あぁ……絶対とは言い切れないけど」

姫神「……やっぱり。最終的にはこうするしか」

美琴「そうね……まぁ、なんとなく分かってはいたけど」

五和「ええ……今までの事を考えると、やはり」

神裂「……他の女性が増えるよりは」

イン「うん、それは困るからね。じゃあ……」

上条「あの、何の話をしているのかさっぱり分かんねーんだけど……」

姫神「上条君。『選べない』ではなくて。『選ばない』という選択肢はどう?」

上条「選ばない……誰とも付き合わないって事か?」

五和「その逆です。この五人全員……上条さんの恋人に、という事です」

上条「……はい?」

美琴「アンタが決められないなら、決めなくても良いようにする。そういう事よ」

上条「いや、ちょっと待てって……それはいくら何でも」

姫神「他の女の子まで来られたら困るから。こうするしか無いと思う」

上条「お、おい……さすがにそれは無しだろ? 俺が言うのも変だけどさ……」

五和「もちろん、いつまでも全員とお付き合いする、という訳ではありません」

神裂「あなたが一人に決める事ができれば、その時に言ってください」

美琴「それまでは私達全員、アンタの彼女。良いわね?」

上条「良いわねって……駄目だと思うのが普通だろ、他の方法を」

姫神「もう一度確認する。他の女の子には邪魔されたくない」

美琴「さらに、全員公平にする。そのためにはこれが最良だと思うわけ」

上条「いや、男としては最悪だと思うんだけど……」

神裂「確かにそうかもしれませんが……私達はそれで構わない、というのは理解してください」

上条「……お前達は本当にそれで良いのか? 俺は……駄目だと思う」

イン「とうま、良く考えてみて。誰かを選ぶって事はどういう事か」

上条「一人選ぶから……四人には申し訳ない事になるか」

五和「では上条さん。……今、インデックスさん以外を選ぶ事はできますか」

上条「何でインデックスだけ……全員から考えてるつもりなんだけど」

神裂「今、あなたが他の女性を選んだとき、この子はあなたと一緒に過ごす生活を続けると思いますか?」

上条「……無いだろうな」

美琴「で、アンタはそのシスターと離れる事はできるの? 今じゃなくても、いつかはそうなる事になる」

上条(インデックスと離れる……そんな事、考えてみなかったな。……あぁ、そうか。インデックスと離れるなんて――)

上条「……今は、無理だ」

姫神「うん。そう言うと思った」

イン「とうま、私はね、とうまの邪魔になりたくない。だから好きな人を選んで欲しい。……でも」

イン「……とうまと一緒に居たいっていうワガママの方が今は強いんだよ」

上条「インデックス……」

イン「だから、私は誰かと一緒でもとうまのそばに居られればそれで良い」

神裂「……この子が悲しまない選択、あなたにはそれを選んで頂きたいのです」

上条「それは……インデックスを選べって事か?」

神裂「……はい、と言う事ができないのが正直な気持ちです。私を選んで頂きたい、という思いもあります」

姫神「それなら。その二人とも一緒に幸せにしてあげれば良い。そうは思わない?」

上条「……いや、それでも」

美琴「難しく考えちゃダメ、今まで不幸だった分ちょっと幸せになってみても良いじゃない」

五和「……もちろん、恋人になった後でも、それぞれ違った方法で上条さんにアプローチします」

姫神「だから。誰かを選ぶ事ができるまで。どう?」

美琴「選ぶのはアンタよ、……どうする?」

上条「俺は――」

刀夜「――それで、全員が当麻の恋人と」

上条「……そういう事になりまして」

詩菜「あらあら……皆さんはそれで良いのかしら?」

イン「うん、私達で決めた事だからね」

姫神「一番にはなりたいけど。失うよりかは幾分か良いと思うので」

詩菜「でも、本当にそれで良いのでしょうか……」

神裂「私達はそれでも良いのですが……やはり、普通に考えればあるまじき事ですから」

五和「迷いが無い、という訳ではありませんね……」

詩菜「そうですか……刀夜さん。刀夜さんはどう思いますか?」

刀夜「……当麻」

上条「……あぁ」

刀夜「――その手があったのか」

全員「えっ?」

刀夜「いや、なるほど、その発想は――っ!?」

詩菜「刀夜、さん?」

刀夜「か、母さん……?」

詩菜「あらあら、あらあら……刀夜さん、ちょっとこちらに来ていただけますか?」ゴゴゴ

刀夜「いや、これは冗談で、決して本当にそんな事を思ってる訳では」

詩菜「ええ、とりあえずこちらに……皆さん、少々お待ちくださいね?」

刀夜「か、母さん、落ち着い 詩菜「はーい、刀夜さん。こっちですよ」 

刀夜「と、当麻! 助けてくれ!」

上条「父さん、俺が言うのもなんだけど自業自得だ」

刀夜「ひ、ひいっ――」


神裂「……あの父親あって、この子あり、という事でしょうか」

美琴「……そうみたいね」

詩菜「みなさん、お待たせいたしました」

五和「い、いえ……大丈夫ですか?」

刀夜「えぇ、先程は失礼な事を言って申し訳ない……さて、当麻」

上条「……今度は変な事言わないでくれよ」

刀夜「安心しなさい。……とりあえず、現状では当麻の恋人が皆さん全員だという事は分かりました」

詩菜「常識的に考えて、おかしいというのは皆さんも分かっていらっしゃるんですよね?」

神裂「……それは、承知の上です」

刀夜「当麻、責任はお前にある。それも分かっているな?」

上条「……自分でも、情けねー事をしてんのは分かってる」

イン「……とうま」

詩菜「……ただ、今こうしてそれについて議論をしても意味がありませんから」

刀夜「あぁ、全ては当麻達が決める事だ。私達が口を出すような事では無いからな」

上条「父さん……」

詩菜「私達には、皆さんをおもてなしする事くらししかできません。
   ですから皆さん、どうぞゆっくりしていってください」

刀夜「不出来な息子ですが、どうかよろしくお願いします」

五和「そ、そんな……こちらこそよろしくお願いいたします」

姫神「どうか。末永くよろしくお願いいたします」

イン「あいさはまたそうやって……」


詩菜「さて、皆さんお昼ご飯はまだですよね? 今から準備しますから待っていてくださいね」

神裂「それでしたら、私も手伝います。お一人ではこの人数分は大変でしょうから」

姫神「……家事ができる女アピール。なかなかの高等戦略」

五和「なるほど……わ、私もお手伝いします! お味噌汁には自信があるので……」

美琴「そ、それなら私も手伝います!」

イン「私も最近覚えてきたから手伝うんだよ!」

姫神「では。全員手伝うという事で」

詩菜「あらあら、若い女の子と料理できるなんて嬉しいですね」

イン「……しいなも十分若いと思うんだよ」

五和「どう見ても女教皇様と同じくらいですからね……」

神裂「……五和、それはどういう意味ですか?」

五和「い、いえ……深い意味はありません」

詩菜「では、お二人とも楽しみにしていてくださいね」

美琴「……アンタ、料理できなかったんじゃないの?」

神裂「二人で頑張りましたからね」

イン「私が本気を出せばこれ位はできるんだよ、短髪」

美琴「だから短髪言うなっつーの!」

姫神「お義母さん。下ごしらえは終わりました」

詩菜「あらあら、お母さんなんて。娘が居ればこんな感じになるのかしら」

五和「お味噌汁もできました。……一応、味を見て頂けますか?」

詩菜「では一口頂きますね。……あら、これは美味しいですね」

五和「ほっ……良かった」


刀夜「……なるほど、あの子達を選べないと言った理由も分かる気がするな」

上条「いつかは選ばなきゃいけねーんだけど……本当に選べんのかな」

刀夜「こら当麻。誰かに不幸な思いをさせるんじゃないぞ」

上条「……あぁ、分かってるよ」

詩菜「刀夜さん、当麻さん、お待たせしました」

刀夜「これはこれは……より取り見取りと言ったところだな」

詩菜「えぇ、皆さんに手伝って頂いたので少し張り切ってしまいました」

イン「とうま、冷めちゃうから早く食べよう?」

上条「あぁ、では早速」

「いただきます」

イン「とうま、とうま、これ食べてみて? しいなに教えてもらったんだよ」

上条「この煮物か? どれどれ……おぉ! 美味い、美味いよインデックス!」

詩菜「美味しいって言ってもらえて、良かったですね」

イン「うん、しいなのおかげだね。ありがとう、しいな」

五和「と、当麻さん。私もお味噌汁を……」

姫神「こっちの天ぷらも。食べて欲しい。あーん」

上条「ま、待ってくれって……一つずつ味わって食べるからさ」

刀夜「いや、可愛い女の子に囲まれて当麻が羨ま 詩菜「あらあら、刀夜さん?」

刀夜「い、いや! 賑やかなのは良い事だな、母さん!」

詩菜「えぇ。……当麻さんもこれなら不幸だなんて、言わないでしょう」

刀夜「……あぁ、このままで居てくれれば。……それは無理か」

詩菜「あの子達の中から一人、いつかは選ばなければいけないですからね」

刀夜「……だが、母さん。私はこのままな気もするんだが、どうだろう」

詩菜「それでしたら、刀夜さんの方がお分かりになるんじゃないですか?」

刀夜「それはどうかな? ……さて、私達も食べようじゃないか」

詩菜「そういえば、姑として厳しく判定した方が良いのかしら」

刀夜「気が早いぞ、母さん」

上条「あー……食い過ぎた……」

刀夜「こら当麻。食べてすぐ寝るなんてだらしが無いぞ」

詩菜「せっかく帰ってきたのですからゆっくりさせてあげましょうよ、刀夜さん」

美琴「でも、こうやって外に居るんだから何かしないともったいないわよね……」

姫神「確かに。当麻君。一緒に海まで行かない?」

五和「ここから歩いていけるなんて、良い場所にご実家がありますね」

刀夜「いや、一度新築の家が吹き飛んでしまって……」

詩菜「風水的にもあの場所は良くない、という事なのでここに家を建てたんですよ」

上条(……風水的、まぁ、確かに)

美琴「吹き飛んだって……大丈夫だったんですか?」

詩菜「えぇ、家族全員旅館に泊まっていましたから」

神裂「(……当麻、これ以上この話を続けるのは)」

上条「(そうだな……適当に話を変えないと)」

イン「あれ? この袋は何が入ってるの?」

五和「大量の……花火、でしょうか」

刀夜「あぁ、それは母さんが福引で当てたんですよ。花火一か月分、だったか」

詩菜「えぇ、たまたま福引をやっていたので参加してみたら当たってしまって……」

神裂「……親譲り、という訳ではなさそうですね」

美琴「そうみたいね……」

刀夜「せっかくだ、皆さんでこれを使い切って頂けませんか」

詩菜「それは良い考えですね。私達は二人で花火をやるなんて歳ではありませんから」

姫神「十分。若いと思います」

詩菜「あらあら、そんなお世辞なんて良いんですよ」

五和「……お世辞では無いと思います」

海岸

上条「花火一か月分って聞いた事ねーけど、結構あるな……」

五和「八人居ますから、明日もやれば使い切れると思いますよ」

イン「花火か……やった事ないから楽しみなんだよ!」

美琴「やった事ないの? じゃあ、思いっきり遊んじゃいなさい。これだけあるんだからね」

姫神「魔法のステッキ。ファイアカスタム」

上条「ただのチャッカマンだろうが……」

刀夜「当麻。バケツ、ここに置いておくぞ」

上条「あぁ、ありがとう。……よし、やるか!」

上条「五和は花火とかやったりするのか? 天草式でやってたりとか」

五和「そういうのは無いですね……でも、建宮さんなら喜んでやりそうな気もしますね」

上条「想像できるな……アイツはロケット花火とか好きそうだ」

イン「ねぇ、これはどうすればいいの?」

神裂「これは、ねずみ花火ですね。火を点ければ……」

イン「わっ!? ま、回りだしたんだよ……」

姫神「両手いっぱいの花火。これを点ければ……目立てるかもしれない」

美琴「あ、危ないからやめなさい!」


刀夜「いや、母さん。若さと言うのは羨ましいものだ」

詩菜「本当ですね……皆さん楽しそうで何よりです」

上条「……よし、逃げろ!」

美琴「打ち上げか……小さいけど、十分綺麗ね」

五和「えぇ、当麻さん……私、当麻さんの隣に居る事ができて幸せです」

上条「あ、あぁ……そう言われると照れるな」

姫神「当麻君。私も隣に居るから」

美琴「ちょ、ちょっと、私も……その、居るから」

上条「あぁ分かってるって。……ん? インデックス、何やってんだ?」

イン「ねぇとうま、この細いのはどうやって遊ぶの?」

上条「線香花火か。ここに火を点ければ……ほら、綺麗だろ?」

イン「……うん、パチパチって光って綺麗だね。これって最後まで燃え続けるの?」

神裂「上手くいけば、長い間楽しめますよ。やってみますか?」

イン「うん、えっと……あ、あれ? すぐに落ちちゃった」

上条「残念だったな、そうやって動いてたら落ちちゃうんだよ」

イン「むう……じゃあ、とうまは上手くできるのかどうか、見せて欲しいんだよ」

上条「よし、一緒に持ってみるか。線香花火のコツを教えてやるよ」

イン「えっ? い、一緒にってどうするの?」

上条「ほら、持ってろよ。火を点けて……こうすれば」

イン「と、とうま! 急に手を握って……その、」

上条「これなら動かさずに持てるだろ?」

イン「……うん、ありがと」

姫美神五「…………」ジーッ

上条「ん? お前達、何でそんなに見てんだよ」

姫神「当麻君。私も線香花火のやり方。教えて欲しい」

五和「わ、私もお願いします……インデックスさんと同じように」

神裂「あなたまでその様な事を……では、私も」

美琴「……私も、お願い」

上条「別に良いけど……そんなに必死になる様な事か?」


詩菜「あらあら……当麻さんったら」

刀夜「母さん、私達もやってみようか」

詩菜「ええ、少し貰ってきますね」

イン「とうま、私も長い間落ちないようになったよ」

上条「本当か? よし……それなら勝負するしかねーよな」

五和「勝負、ですか?」

上条「あぁ、誰が最後まで落ちずに点いているかで勝負するんだ」

美琴「面白いわね。久しぶりの勝負……受けて立つわ!」

上条「そのテンション、久しぶりだな。……罰ゲームとかは勘弁してくれよ」

美琴「あっ、それ良いわね。最後まで残っていたらアンタに好きな事させるとか」

神裂「……それは聞き捨てなりませんね。私も参加します」

上条「お、おい……そんなつもりじゃ」

刀夜「当麻。面白い事をやってるじゃないか、私達も混ぜてくれるかな?」

上条「父さん達まで……」

姫神「当麻君が勝てば。問題ない」

上条「いや、そういう事じゃ」

詩菜「あらあら、当麻さんは負けるのが怖いのかしら」

上条「……母さんまで。分かったよ、俺が勝てば良いんだ……全員持ったら始めるぞ!」

全員、線香花火を手に持ち上条の合図と共に、八本の花火が円の中心のろうそくに集まった。
風は無く、ただ波の音だけが辺りに響いている。誰も言葉を発せず、静かに各々の光を見つめていた。

その静寂の中、姫神が一言。

「もし。最後まで残っていた人が。当麻君を独占できるとしたら」

姫神は最後まで言わなかったが、先の言葉をその場にいた全員が理解していた。

「……そうだったとしたら、意地でも残し続けるわよ」

そう言いながら、美琴は少し震えていた。

「短髪、そのままだと落ちちゃうよ。……それでも良いの?」

インデックスの声は、少し弱々しかった。

「……誰か残れば、それで良いのでは無いでしょうか」

神裂は優しい表情をしながら、小さく呟いた。

「……でも、この線香花火に託すとしたら……祈ってしまう自分が居ます」

五和は言葉の通り、そのまま祈るように目を瞑った。

「お、おい……それは別に――っ!?」

その時、今まで静かだったのにもかかわらず、上条の言葉を遮るように風が吹いた。

「……あっ」

誰かの吐息の漏れは、戦いの終決を表していた。
上条も含めた六人、それぞれの線香花火の光は消えてしまっていた。

「……全員、負けか。残念なような、ホッとしたような……変な感じ」

「そうだね……もう、あいさが変な事を言うか……あれ?」

美琴の言葉に誰もが共感していたが、すぐに異変に気付く。
光が二つだけ残っていたのだ。その持ち主は。

「あらあら、これは私達の勝ちという事でしょうか」

「当麻。どうなんだ? 判断はお前がするんだろ?」

「あ、あぁ……二人の勝ちって事で」

「……残念。勝ちたかったのに」

「しかしこれだと、当麻は私達のもの、という事になるのか?」

「それは……いえ、先程のは別に」

神裂は訂正するが、詩菜は微笑みながら話し始める。

「ですが、私達がいつまでも持っている訳にはいきませんから……そうですよね、刀夜さん」

「その通りだな。……皆さん、これはお渡しします」

そう言いながら、刀夜と詩菜はまだ燃え続けている線香花火を前に差し出した。
その表情はとても優しく、それが何を意味するかを五人はすぐに理解した。

「はい、どうぞ」

「……ありがとう、しいな。これは、みんなでもらうね」

詩菜「さぁ、お家に戻りましょうか」

イン「うん! あっ、とうまはバケツを片付けてね」

上条「分かってるっつーの。ほら、先行ってろって」


刀夜「……ところで当麻、一つ聞きたい事がある」

上条「ん? 何だよ急に」

刀夜「五人に告白されるなんて、いったい何があったらそうなるんだ?」

上条「あぁ、それは……」

上条「エイプリルフールのせい――いや、おかげかな」

刀夜「……エイプリルフール? 当麻、どういう事だ?」

上条「気にすんなって。ほら、さっさと行こうぜ」

刀夜「……ところで当麻、もう一つ聞きたい事がある」

上条「何だよ……」

刀夜「……誰かと、したのか?」

上条「……はぁ?」

刀夜「とぼけなくても良いだろう、当麻。若い時は……仕方ない事もある」

上条「何勝手に決めつけてんだよ! つーか酒くせえ! 飲んでやがるな!?」

刀夜「こら当麻。父親の私に隠し事など無用だ、……どうなんだ?」

上条「そ、それは……いや、その……」

刀夜「……あの、長髪で長身のスタイルのいい子か」

上条「…………」

刀夜「なるほど、あの黒髪のショートカットの子か? それとも黒髪の長い女の子か……」

上条「だから、それは……」

刀夜「ま、まさか……御坂さんの娘さんや外国の女の子か!?」

上条「……あの、実は」

刀夜「何だ当麻。男だったらはっきり言いなさい」

上条「……つまり、えっと」

刀夜「……ぜ、全員!? 当麻、お前……」

上条「そ、そんな目で見るなって!」

刀夜「……当麻、私は悲しいぞ! だが男としては羨ましい気持ちもある!」

上条「酔った勢いで何言ってんだ!? つーか大声で言うな!」

刀夜「当麻、今日は男同士語り明かそうじゃないか……詳しく、な」

上条「……もう嫌だ」

書きたい事は大体書いたのでここで一区切りです。あとちょっとだけ書きたい事があるのでもうちょい続きます
書く暇なくて一週間とか経ったら依頼します。ここまで俺の妄想、どうもあざっした

まぁ、実際にこうなったら、
姫神と御坂あたりは降りる気もするがな、
御坂とか一番大好きだし。
神崎も微妙。


姫神「上条君。。 最低・・。」

御坂「私は当麻といつまでも二人でいたかった、当麻の一番になりたかったの・・。」


とか言って去りそう。




神裂「結婚とは、一人とするものではないのですか!!」(怒)


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