男「……眠ってたのか、俺」
「……」
男「……誰ですか」
「お腹が空いたわ」
「さっさと何か出しなさい」
男 (可愛くねぇ)
男 (……性格が)
男「……食べたいなら働けよ」
「いやよめんどくさい」
男「…………」 イライラ
「だいたい、貴方こそ働いているの?」
男「」ビクッ
男「お、俺はいいんだよ」
「何故?」
男「……てか、誰だよあんた」
「居候」
男「……は?」
母「男、ご飯ここに置いておくわよ……」
男「……」
居候「……引きこもり?」
男「」グサッ
居候「……いい世の中ね」
男「……あんた、どこから来たんだ」
居候「貴方が呼んだのでしょう」
男「……俺が?」
居候「……変わりたいのでしょう?」
男「……こんなはずじゃ、なかったんだ」
居候「引きこもりになるはずじゃなかった?」
男「……悪いのは、彼奴らだ」
居候「学生?」
男「……」コクン
居候「そう」ジィー
居候「右手が疼いたりしないの?」
男「バカにするな、そんなに子供じゃない」
居候「それぐらいの年格好だけれど」
男「……間違ってはいない」
居候「難しい年頃なのね」
男「なんだよその言い方は」
居候「多感な年頃、と言い換えてもいいわ」
男「……俺が神経質みたいな言い方だな」
居候「なら、どう言い換えれば満足なのかしら」
男「放っておいてくれ」
居候「……」モグモグ
男「……空腹だからって人の食い物を勝手に食べていいはずが」
居候「呼んだ以上は大目に見なさい」
男「……可愛くない人だ」
居候「そう」
男「……苛立たないのか?」
居候「別に、貴方からどう見られようと構わないわ」
居候「……ああ、でも」
居候「私が自分で思考し、感情を自覚できる生物であること」
居候「それを、忘れないで欲しいわ」
男「どんな目だよ」
居候「性的な対象として私を見るのは勝手だけど」
居候「それを表に出すのはやめてといいたいの」
男「……」
居候「……さっきから気になっていたのだけれど」
男「……?」
居候「なぜ、貴方は目上に対して敬語を使わないのかしら」
男「……あんたを呼び出したのは俺なんだろ?」
居候「……別に、私は立ち去っても構わないわ」
男「どうして」
居候「代わりならいくらでもいるわ」
男「……あんたは、それでいいのかよ」
居候「何が?」
男「代わりがいて!」
居候「……哀れむのなら」
居候「私を追い出さないでくれるかしら」
男「……それは」
居候「口だけなのね」
男「……ああもう!」
居候「……ねえ」
男「……んだよ」
居候「貴方は、自分のすることに代わりが利くことが」
居候「そんなに嫌なのかしら?」
男「……俺でなくてもできるなら、別に俺がする必要がないだろ」
居候「……貴方は、必要とされたくないの?」
男「……替えの利かないなにかで必要とされればいい」
居候「例えば?」
男「 ……」
居候 「……起きなさい」
男 「……まだいたのか、あんた」
居候 「あなたが変わりたいと願い私を呼んだからには」
居候 「私も、それに答える義務があるのよ」
男 「……迷惑だ」
居候 「そう」
男 「……」
居候 「今日も、行くつもりはないのね」
男 「……彼奴らも、教師も、俺を好いていない」
男 「……にも関わらず、どうして好き好んでそんな場所へ行かなければならない?」
男 「居場所がないのがわかっているのに」
男 「見世物にされるだけなのに、迷惑を掛けるだけなのに、どうして……」
居候 「義務教育だから」
男 「はっ、対人関係に悩むのも勉強ってか?」
男 「見世物にされるのも、罵倒を浴びせられるのも」
男 「心を踏みにじられるのも、なにもかも勉強ってか?」
居候 「そう思いたければ、そう思えばいいわ」
男 「……違うってのか?」
居候 「学校が貴方にそんなことを教える義務はないわ」
男 「……なら、なんなんだよ」
男 「あれは、なんなんだよ!」
居候 「今までの会話から察するに、罵声は苛めと言わざる得ないわ」
男 「……ッ」
居候 「……大人しいから苛めを受けた、というわけではなさそうだけれど」
男 「……根拠でもあるのか?」
居候 「貴方は私によく物を言うわ、それもなんの遠慮もなしに」
男 「……大人しいよ、俺は」
居候 「猫でも被るのかしら?」
男 「……そうなるのかもな」
居候 「どうして、猫を被るの?」
男 「……本音で誰かと接してしまえば、相手を傷つけるかもしれない」
男 「誰かの負担になってしまうかもしれない」
居候 「だから貴方は自分を殺して犠牲になるの?」
男 「……」 コクン
居候 「その結果破綻したのに?」
男 「……」
男 「……反論したこともあったさ」
居候 「意外ね」
男 「けどよ、教師はあいつらの言動をなんでもないことだと俺に諭し」
男 「そしてあいつらはそれをこぞって騒ぎ立てた!」
男 「暴れようとなにをしようと、あいつらも、教師もッ!」
居候 「……だから諦めたの?」
男 「…………」
居候 「……同じ人間だと思われていないのかもしれないわね」
男 「!?」
男 「お、俺は人間の形をしている!」
居候 「貴方は、奴隷がどう扱われていたか知っているかしら?」
男 「……」
居候 「叩けば必ずリアクションする面白い人形、人間味のない不気味なバケモノ……」
居候 「人から見た貴方というのは、どのようなものかしらね」
男 「……この世の中は、人権を認めてるはずだ」
居候 「人を人として認めるのは条約ではなく、人の心よ」
寝る
好き勝手に書いてただけだから、まさかレスがつくとは思いもよらず
読んでいただきありがとうございます
居候「……今、貴方はここにいる」
男「……それがなんだよ」
居候「でも、いつまでもこんな生活は続けられない」
居候「それについては、理解しているのかしら」
男「なにが言いたい」
居候「昨日と今日は違うわ」
居候「……引きこもりには、理解できないかもしれないけれど」
男「ば、馬鹿にするな」
居候「貴方が私と出会ってから何日経過したか」
居候「貴方は、覚えているかしら?」
男「……」
居候「……そういえば、貴方のご両親、遠出したそうよ」
男「!?」
居候「……少し前に、扉越しに伝えられたでしょう」
居候「テレビ、つけてみなさい」
男「……?」
ピッ
『ーー』
『本日正午、××便が墜落し、多数の犠牲者が……』
男「とりとめのない報道だ」
居候「その便には、貴方のご両親も乗っていたはずよ」
男「!!!」
それからは、早いものだった
俺は、あのあと色々あって、父の両親に引き取られることになった
学校も転校することになった
別に誰も悲しんではいなかったけど
居候の姿も見なくなった
全て一段落してから、しばらくしたころ
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