勇者「私は神々の啓示により選ばれた勇者だ!」
戦士「俺は戦士だ。剣なら自身があるぜ!」
僧侶「わ、私は僧侶と申します。回復魔法はちょっと苦手で……ですが守護魔法と結界魔法ならお任せ下さい!」
剣士「あたしは剣士だ。一応剣に自信はあるし、回復魔法も攻撃魔法も使える」
盗賊「あたしは盗賊よ……特技は盗むことよ」
戦僧剣「えっ」
戦士「って、お前か!」
勇者「知り合いなのかい?」
戦士「いや俺は兵士をやっていて……こいつ義賊の盗賊でよ。この間とっ捕まったんだ」
盗賊「うっせぇ」
僧侶「何故、このような人が魔王討伐に……?」
大臣「確かに人間社会においては倫理に引っかかる存在でしょう」
大臣「ですが相手は魔物。更には彼らの拠点も点在すると言う……何れ力になるときが来るでしょう」
剣士「な、なるほど……」
盗賊「っけ、こんな事に付き合ってられないわよぉ」
僧侶「ま、まさか国外に出た途端……」
戦士「そりゃねーよ。こいつは正義感だけは強いからな」
戦士「悪の根源の魔王討伐に加わる、てなって逃げ出すなんて真似すっかよ。なあ?」
盗賊「うっせぇな! 知ったように言うんじゃねーよ!」
戦士「いや、お前の逸話は兵士間じゃ有名だからよぉ」
剣士「悪い人ではないみたいだね」
僧侶「だといいのですが……」
戦士「これからどうするんだ?」
勇者「魔王は南西に拠点を築いていると言うからね……向かいつつ魔物に苦しむ町を救っていこうと思う」
僧侶「……凄い勇者らしい方ですね」
勇者「気持ちだけだよ。私は剣も魔法もまともに扱えない民間人なんだ」
剣士「……それでしたら、我々が尽力すればいいさ」
剣士「神に選ばれし勇者の力無くして魔王は倒せないと言う」
剣士「我々は勇者様の支援の為にいるのだ。この微力、仰せのままに」
勇者「そ、そこまで畏まられると困るよ」
戦士「お……魔物だな」
盗賊「犬型の魔物ね」
戦士「どれ、勇者様のお強さ見せてもらおうか」
勇者「いや、だから私は……」
剣士「ですがどれほどの実力があるのか知っておかなくては、いざという時にサポートが遅れては問題です」
勇者「だから民間人だって」
盗賊「とにかく戦ってみたらどーなのよ」
戦士「ま、そうだよな」
勇者「たあっ!」スカ
魔物A「がう! がう!」
勇者「くっ!」ガッガッ
勇者「っは!」フォン
魔物B「グルル……がぁう!」
勇者「ちっ!」ガッ
僧侶「全部、当たらないですね……」
戦士「よ、予想以上だな」
盗賊「動きだけは早いわね」
剣士「反射神経だけで戦っている感じだね……当たりこそしないが、攻撃も全て盾で受け止めている」
戦士「おらあぁ!」ズバァン
剣士「はっ!」スバ
勇者「ふう……ふう……助かるよ」
盗賊「いくらなんでも駄目駄目すぎじゃない? あたしだって殺せるわ」
勇者「だから……民間人だと……」ハァ
僧侶「あ、あの……私が勇者様をお守りしますからっ!」
勇者「すまない、頼んだよ」
……
僧侶「ここの町は平和そうですね」
盗賊「王都の周辺の町が侵略されているようならあたしら終わったようなもんね」
剣士「まあ……普通はそうだよね」
戦士「一先ず宿を取ろうぜ。男と女で一部屋ずつでいいだろ?」
盗賊「あたしゃあちゃんとした所で寝れればあんたら二人と相部屋だって構わねーよ」
戦士「……おい、勇者。俺ら誘われてるぞ」
勇者「仮にも盗賊だ、殺されるぞ。牢屋のベッドはそんなに固かったのかい?」
盗賊「ありゃあ雑魚寝と変わらないわね」
剣士「貴重だけど有り難味の無い話だ……」
僧侶「で、ですね……」
夕食
戦士「おら、お前ら。グラスを持て!」
盗賊「は? 何でよ」
剣士「こ、こうでいいのかい?」
戦士「そらそら勇者は立て」
勇者「へ? ええとこうか?」
僧侶「何をなさるのですか?」
戦士「さ、勇者。あいさつを」
勇者「は?」
戦士「旅立ち初日だぜ。魔王討伐の旅路を祝って景気良く乾杯しようや」
勇者「ああ、なるほど……」
勇者「あーゴホン」
勇者「正直私は力不足だ……ここにいる誰よりも弱く無能である」
勇者「これから先、足手まといになるであろう……だが勇者として使命を授かった以上、せめてそれだけは全うしよう」
勇者「皆には申し訳ないがよろしく頼む」
僧侶「勇者様……」
盗賊「青くっせぇ」
剣士「いや、だからこそ勇者の器なのやもしれないな」
戦士「つーか乾杯の音頭なのになんでそんな重たい話をしているんだ」
剣士「あ、これ美味しい」
盗賊「へーあたしにもくれ」
戦士「こっちもいけるぜぇ」
勇者「なるほど……ちょっとした交流会みたいなものか」
戦士「やっぱりよ、これが一番打ち解けやすいと俺は思うんだ」
僧侶「何だかこの部屋暑くないでしょうか……」パタパタ
剣士「僧侶さん……顔真っ赤だけど大丈夫?」
戦士「おい……あ、これ酒だ?!」
盗賊「どうもあたしのが来ないと思ったわ」
僧侶「あー……もう服脱いじゃいましょうか」
剣士「そ、僧侶さんストップ!」
戦士「えらい事になったぜ」
勇者「はは……まあ、これも仲間との旅の醍醐味なんだろうね」
戦士「そうなんだけどもよ……ああ、てかそれよりも勇者だ」
勇者「うん?」
戦士「これから稽古すんぞ。お前がそんなままじゃ色々と示しがつかないだろ」
勇者「わ、私がか?」
戦士「おら行くぞ」ズルズル
……数日後
僧侶「守備魔法!」パァァ
勇者「く、くそ」ガガガ
戦士「ホントいい加減頼むぜ?」ザシュ
盗賊「全く、あたしまで援護に入るたーねー」シュババ
剣士「火炎魔法・中!」ゴォ
盗賊「これで敵も全滅したかねぇ」
戦士「なあ……勇者、そろそろ敵の一体くらい倒せよ」
勇者「すまないなぁ……」
戦士「それと比べて俺の格好良さときたら」
盗賊「ま、まあ……確かに強いし認めておいてやるわ」
剣士「というかあたしはあまり剣では役立てそうにないな……魔法も習っておいてよかったよ」
僧侶「私はあまり回復をする事がなくってほっとしています……」
盗賊「ホント活躍の場が無いわねぇ」ジッ
勇者「はは、ごめんよ」
……村
僧侶「何故でしょうか……ここの人々は覇気が無いと言いますか」
剣士「何かあったのかもしれないね……」
勇者「あの……我々は旅の者なのですが一体何が?」
「ああ……旅人さんか……早くお逃げなされ」
盗賊「逃げるぅ? 何からよ」
「明朝……ここに多くの魔物が雪崩込んできます」
僧侶「い、一体何があったのですか?」
戦士「魔物の砦か……随分と近いところに拠点があるんだな」
勇者「もう時間がない……今から乗り込みもう」
盗賊「戦うのはあたしらなんだけどねぇ……」
戦士「全くだな……」
剣士「だが守ると言ったからにはね。勇者様は残るおつもりはないのだろう?」
勇者「迷惑をかけるとは思うが……そのつもりだ」
戦士「ほんとしょーのない奴だぜ」
戦士「おらあ!」ズバ
勇者「ぐあ!」ブシャァ
盗賊「あーもー勇者ばっか狙いやがって面倒ったらありゃしないよ!」シュババ
僧侶「か、回復魔法・小!」パァ
剣士「よし、氷結魔法・中!」カッ
戦士「砦か……敵が多いな」
盗賊「流石にきついわねぇ」
剣士「猛攻が止んだ……?」
僧侶「もう敵はいないのでしょうか?」
戦士「恐らくだが精鋭とここのボスがいるんだろうな」
盗賊「最上階に? 全く馬鹿はなんで高いところが好きなんだろうね」
勇者「それにしても長い階段だな……」
剣士「体力を削るのも目的なのかもしれないね」
僧侶「扉……」
戦士「一気に開けるぞ……俺と盗賊で切り込む。剣士は攻撃魔法、僧侶は守護魔法を頼む」
盗賊「分かったわ」
剣士「了解した」
勇者「私は?」
戦士「下がってろ、邪魔だ」
戦士「行くぞ!」バァン
盗賊「……」バッ
剣士「火炎……あれ?」
僧侶「誰もいませんね……」
盗賊「がらんどう? ああ、まだ奥に階段があるのね」
勇者「……待ってくれ」
戦士「どうかしたか?」
勇者「よっと……」
剣士「備え付けられている壷なんかどうす……」
勇者「そらっ」ポイ
戦士「お、おい!」
ガッシャーン バタン ガラガララ
僧侶「ゆ、床が……」
盗賊「罠……」ゴクリ
剣士「下は……随分と物々しい剣山だな」
戦士「お前……」
勇者「下からここへのルートは一本……そして異常に高い事を考えれば不自然だな」
盗賊「……ちっ、あんたがいなけりゃあたしら三人はお陀仏だったわけか」
剣士「……慎重に進もう。恐らく、敵はすぐそこなのだろう」
僧侶「……」ゴクリ
勇者「……」
砦ボス「ここまでよくぞ来た……と言いたいが哀れよ」
砦ボス「貴様らの墓場はここになるのだからな!」
戦士「いくぞ!」シャキン
盗賊「……」バッ
砦ボス「ガハハハハ! だから人間は愚かよ!」
勇者「剣士、右を頼む!」
剣士「え?」
魔物ABCD「グガアアァァ!」バッ
僧侶「……分断、された!」
戦士「こいつを倒して援護に入るぞ」
盗賊「はっ当然」
砦ボス「無駄な事よぉ!」
剣士「これなら」ギィンキィン
剣士「あたしでもいけるな!」ズバァン
勇者「うぐぐぐぐ」ガガガガガ
僧侶「回復魔法・小! 守護魔法! 回復魔法・小!」パァァァァ
戦士「くそ、手こずった!」
盗賊「剣士、勇者!」
剣士「電撃魔法・弱」バリィ
勇者「ぐぐ!」ガッガッドド
魔物D「ギギギギ!」ガガガ
盗賊「伏せろおおぉぉぉ!」ヒュン
戦士「おらあああ!」ズバン
剣士「はあっ!」スバ
魔物D「」
勇者「ぜえはあぜえはあ」
戦士「おう、お疲れさん」
盗賊「少し焦ったけど……なんだかんだ生き残れたわねぇ」
勇者「げほっごほっ……はー……はー」
剣士「だ、大丈夫でしょうか?」サスサス
勇者「ふー……死ぬかと思った。それも伏せていなかったら」ブルブル
僧侶「あ、あれは……何とも」
「た、旅人さん達……何故戻ってきてしまったのだ」
戦士「あー……もういいや俺、疲れた」
勇者「とりあえず魔物の侵攻は無いと思います」
「ど、どういう……まさか?!」
剣士「申し訳ありません……明日、ご説明致しますので失礼致します」ペコ
僧侶「……この対応はありなのでしょうか?」
勇者「流石に疲れたしね……」
戦士「……」グテー
勇者「……」グター
勇者「稽古……する?」
戦士「殺す気か……?」
勇者「だよな……おやすみ」
戦士「おう……」
……早朝
勇者「……」ザッザッ
戦士「おいおい……いいのかよ」
剣士「流石に書置きだけというのも……」
勇者「小さな村だ……私達が砦の魔物を倒したと分かれば」
勇者「無理をしてでも礼がしたいと言ってくるだろう」
僧侶「まさかそれで人目を偲んで出発を?」
盗賊「全く眠いったらありゃしないよ。ま、あんたのそういうところ、嫌いじゃないけどね」
魔物AB「ギャアア! ギャアアアア!」
僧侶「きゃああ!」
戦士「ちっ!」ザシュブシ
剣士「戦士! 火炎魔法・中!」ゴァァ
勇者「ぐおおおお!」ガガガガガガ
盗賊「はいはい、今倒すからね」シュバシュバ
僧侶「回復魔法・中!」パアア
僧侶「すみません……もっと周囲を警戒していれば」
戦士「体を張るのが俺の仕事だ、気にすんな」ポム
僧侶「戦士、さん……」
剣士「どうやらそちらも終わったようだね」
勇者「ふう……何とか」
盗賊「っはーーー……もう勇者が足止め役にしかなってないとはねぇ」
勇者「すまないな」
戦士「全くだな」
僧侶「お、お二人とも……」
戦士「この町は何ともなさそうだな」
盗賊「今日はのんびりしますかねぇ」ノビー
剣士「私は宿屋に行っているとするか……」
勇者「ああ、それなら私も行こう」
僧侶「あ、では私は買出しに行ってまいりますね」
戦士「おっと、じゃあ俺は荷物持ちするわ」
盗賊「あー……あたしもう装備がボロボロだから買出しに付き合うわ」
剣士「勇者様。先ほどの事はあまりお気になさらずに」
勇者「うん?」
勇者「ああ、気遣ってくれているのかありがとう」
勇者「だが事実だし、私が悪いのだから仕方が無い」
剣士「そ、そんな事はない! 事実、勇者様がいらっしゃらなければ、あの砦で無抵抗のまま死んでいた」
勇者「いや、それはまあそうだが……私が言いたいのは大した力も無く」
勇者「啓示と言うだけでこのような立場にいる事だ」
勇者「そうだな……この中であれば、君のほうが勇者らしいのではないだろうか?」
剣士「……」ビク
剣士「あたしなど……剣も魔法もどっちつかずの未熟者だ」
勇者「だが君無しでは超えられない戦いもあった」
剣士「……」
勇者「……」
剣士「ふ、ふふ」
勇者「ははは」
剣士「まさかお互いで慰め合うとは」
勇者「なんでこうなったのだろうね?」
……
勇者「全く戦士は……」
「勇者様、いらっしゃいますか?」コンコン
勇者「ああ、どうぞ」
剣士「失礼します」
勇者「どうしたんだい?」
剣士「それが僧侶と盗賊がまだ……」
勇者「戦士もまだだ。だがまあ、あの二人がいるのならそうは問題ないだろう」
剣士「しかし……」
勇者「……まあ、先ほど外で三人が武器屋に入っていくのが見えたんだ」
勇者「大方、盗賊と戦士が熱中してしまっているのだろう」
剣士「ああ……そういう」
剣士「あたし達だけで食事と言うのも」
勇者「流石に腹ペコでは?」20:00
剣士「……」グゥ
剣士「コホン、そうですね……暖かいうちに食べますか」
勇者「まあ、また剣士の魔法で温め直して貰えればいいといえばいいけど、そろそろね」
剣士「それにしても三人とも遅いな……」
剣士「……」
剣士「あの、もしやこれは……」
勇者「気づくの遅すぎだと思うよ」
剣士「えぇ?! し、しかし、私達はまだ出会って一月足らずなのに」カァ
勇者「その一月、常に行動を共にしていたんだ。不思議な事もないだろうに」
剣士「ええー……あたしがおかしいのだろうか」ブツブツ
勇者「……」ペラ
勇者(何故宿に備えられた本がホラーなのか……嫌がらせだろうか?)
勇者「……戦士達、結局そうなるのか」パタン
勇者「ふあぁ……もういいや、寝よう」コンコン
勇者「どうぞー」
剣士「……」
勇者「どうかしたかい?」
剣士「……その、なんと言うか」
剣士「盗賊さんと僧侶さんが帰ってこない」
勇者「戦士も相変わらずだよ……全く」
剣士「いや一度は帰ってきたんだ」
勇者「また出て行ったのか?」
剣士「私達の事は気にしないでとの事を言ってすぐに……」
勇者「そうか……え、わざわざそれを伝えにきてくれたのか?」
剣士「三人部屋で一人と言うのも……その、なんだ」
剣士「まあちょっと淋しいし荷物の心配もあるからね。どうせなら固まっていた方が安全だろう」
剣士「そんな訳で勇者様が許可していただけるならこちらで眠らせて貰いたい」
勇者「私は構わないが……もう少し女の子としての自覚を持つべきだよ」
剣士「勇者様はそのような事をしないと信じているので」
勇者「……」
剣士「……」
勇者「本、読んだね」
剣士「……っ」ビク
剣士「興味本位だった……何で、あんな本格的な……」ブルブル
勇者「まあ……結構怖い話だとは思うよ」ペラ
剣士「く、そんな何ともなさそうに呼んでいる勇者様ではフォローになっていない」
勇者「……分かった分かった、こっちの部屋で寝ていいから」
剣士「くうう、かたじけない」
勇者「剣士の意外な一面だな」
剣士「……そう言わないで下さい。それと三人にはご内密に」カァ
……
勇者「ふあああ……お早う」
剣士「ふあ……お早うございます」
勇者「結局、三人とも来なかったな」カチャカチャ
剣士「ああ、9時に町の出入り口でと書置きに」パクパク
勇者「あ、そこまで決まっていたのか」
勇者(うーん、一晩男と一緒の部屋にいたのに……強い子なのか異性に見られていないのか)
剣士(う、ごく普通だ……あたしは異性としてそんなに魅力が無いのだろうか)ズーン
戦士「おーおせーぞ」
盗賊「あたしらが早いんだってば」
勇者「よく言うよ戦士」
僧侶「お、おはようございます」モジモジ
剣士「お、おはよう僧侶さん……」
剣士「……その、まさか僧侶さんまで」ヒソ
僧侶「……」カァァ
剣士「うわぁそうなのか」カァ
戦士「話だとこの先にも魔物達の砦があるらしいな」
剣士「気を引き締めていかないとだな」
盗賊「まーなんだかんだで安定している面子だからいいけどもよー」チラ
勇者「すまないね、役立たずで」
僧侶「そ、そんな事はありませんよ」
戦士「まー何とかなるだろう。苦労するのは俺らだけどもよ」
戦士「おらあ!」ズバン
盗賊「はんっ、弱い連中ねぇ」スババ
剣士「狭い通路だな……嫌な感じだ」
僧侶「今のところ、挟撃はされていませんが気が気でないです」
勇者「よっとと」ガッガッガッ
戦士「おっしゃ、こっち終わったぞ」
盗賊「そこの盾、とっととこっち来なけりゃ助けないわよ」
戦士「そろそろボスか……?」
剣士「猛攻も止んだし罠にも警戒しないとだね」
盗賊「相変わらず狭い通路ね……罠は挟撃だったりしてねぇ」
勇者「……あ、ちょっと待ってくれ」ズルズル
僧侶「どうかさr……ってなんで魔物を死体を引きずってきているんですか?!」
剣士「勇者様……」
戦士「お前さー……あんま役に立っていないんだからよぉ」
勇者「戦士もそれ以上進まないでくれ」ズリズリ
盗賊「今度は何? 罠でもありそう?」
剣士「……あ、気づかなかった」
僧侶「何がですか?」
剣士「壁に無数の穴がある。なるほど……ここまで至るルートの内装を同じにしたのは」
勇者「そういう事だろうね」ポイ
魔物「」ズガガガガガガ
僧侶「壁から……矢が」
勇者「剣士の魔法で破壊できそう?」
剣士「うーん、やってみない事には分からないですね」
剣士「火炎魔法・中! 雷撃魔法・小!」カッ
戦士「……お前、何で罠があるって分かったんだ?」
勇者「分かってはいなかったさ。敵の攻撃が止んだから念の為に投げられる物を確保して、警戒していただけさ」
盗賊「……はー、そんだけ有能なら戦闘でも役に立てって話よねぇ」
勇者「はは、すまないな」
ボス「ほう……すでに一つの砦を制圧しているだけはあるな」
戦士「おい、俺らの情報駄々漏れじゃねーか」
盗賊「そりゃあ砦の周りにいるのは魔物ばかりだからねぇ」
ボス「だがそれもここまでよぉ……」
勇者「盗賊もう少し後ろに。剣士は右に。僧侶、全員に守護魔法を」
戦士「あ、おいこら、僧侶の後ろに隠れんな!」
ボス「……なるほど、非力だとは聞いていたが中々恐ろしい頭をしているようだなぁ」スッ
魔物「」ザザザ
剣士「か、囲まれた!」
盗賊「全くなんだかねぇ……」
戦士「くそ……おい勇者、しっかり敵を食い止めていろよ!」
勇者「っぐふ、ごふ」ガッガッガッガッガッ
剣士「勇者様、もう少しだけ耐えて下さい!」ギィンギン
僧侶「回復魔法・中! 回復魔法・中!」
勇者「……」ボロボロ
戦士「なんであんだけ動けてこんだけ攻撃できねーのかね」
僧侶「回復魔法・中!」パアア
勇者「ふう……何とか凌げたようだな」ムク
剣士「しかし……まだ二箇所目にしてこうも戦われるとは」
盗賊「こっからは苦戦させられそうねぇ」
勇者「なんだ? まだ奥に部屋があるようだな」
戦士「おいおい、壁ばかりじゃねーか。何処に扉があるって?」
勇者「正面……鍵穴らしきものがある」
僧侶「これ本当に扉ですか?」
盗賊「ふーん。ま、あたしに任せてみぃ」スチャ カチャカチャ
剣士「凄い手捌きだな」
戦士「そりゃあ本職だもんな」
盗賊「よし」カチャリ
僧侶「壁にしか見えませんが、どうやって開けるんですか?」
勇者「ほら、下の所に窪みがある」
剣士「上にスライドさせるタイプか」
戦士「よっと、ふんっ!」ズゴゴゴゴ
剣士「お、宝箱が置いてあるよ」
盗賊「……」カチャチャ カチャリ
戦士「脊髄反射かっ」
盗賊「宝石かしら……?」
剣士「いや……なんだ? この巨大な魔力は」
戦士「まさか魔石って奴か?」
勇者「下の階の罠、特別紐が張られていたりスイッチがあるように見えなかったな」
僧侶「まさかあの矢は、魔力によって制御されているものだったのでしょうか?」
戦士「こいつがその原動力って事か?」
勇者「そこまでは分からないが……だがこちらにとっても有力な道具になる事だろう」
勇者「剣士が預かっていてくれ。恐らくだが、所持者の魔力回復に大きな効果が期待できるだろう」
剣士「それどころか魔法の威力まで上がりそうだよ。いざとなったら僧侶さんと使いまわそうか」
戦士「さあて町に来たわけだが」
盗賊「宿はどうすんのさ」
僧侶「……」ソワソワ
勇者「んー……剣士、私と一緒の部屋でも構わないかい?」
剣士「え? ああ。構わないよ」
勇者「じゃあ戦士達は三人部屋で」
戦士「わりぃな」
アンッアンッソコッイイッ!
アッセンシサンッアァンッ!
勇者「うーん壁が薄い宿だ」モッギュモッギュ
剣士「……」カアァァ
勇者「このグラタンいけるなぁ」モッグモッグ
剣士「あ、あの……なんで普通に食事ができるのですか?」
勇者「腹が空いているから?」
剣士「勇者様に聞いたあたしが馬鹿でした……」
剣士「ご、ご馳走様でした」アンッアン
勇者(今3ラウンドくらいか?)イッイクゥゥ!
剣士「……」カァァ
勇者「そういえば前から聞きたかったのだけどもさ」ジャーツギハ
剣士「な、なんでしょうか?」ンッアッモーサカリッスギィッ
勇者「剣士はこの招集がある前は何をしていたのだい?」アッアッンンッスゴォイッ
剣士「あああの、外を散歩しながら話すとかどうでしょうかっ!」ヒィンアヒンッ
剣士「ふー……あの三人は」カアァァ
勇者「はは、いいじゃないか。いつ死ぬとも分からない旅だ」
勇者「後悔だけはしたくないだろう」
剣士「……」
勇者「ああ、そうだそうだ。それで剣士はどうだったのだろうかと思ったのだが」
剣士「……勇者様は自身が勇者である事を以前からお知りで?」
勇者「まさか。急にお前が勇者だと言われて困ったよ。私はただの町人Aなんだぞ」
剣士「あたしは……あたしは幼少の頃より勇者である啓示を受けて」
剣士「日々剣と魔法の鍛錬を積んできた」
剣士「自分が勇者だ。自分が人々を守るのだ、と」
剣士「そして遂に招集がかかり王都についたらどうだろうか……」
剣士「啓示が変わり、お前は勇者ではないと言われ……」
剣士「はは……あたしは何の為に生きてきたのだろうか」
勇者「すまない……何も苦労をしていない私がこのような甘い汁をすする形になってしまって」
剣士「これも神々のご意思……勇者様が謝る必要はないよ」
剣士「それに勇者様は勇者様で今、苦労をしているじゃないか」
剣士「あれだけ二人にいいように蔑まれても尚、魔王討伐を見据えて……」
勇者「それが私の責務だ。でなくては君に合わせる顔も無い」
剣士「……あたしの事を知っていた上でこの話を。勇者様は意地悪だな」
勇者「正直怖くて真正面から聞けなかったのだよ。君が私を恨んでいるのではないかと思ってね」
剣士「そんな恨むだなんてっ」
勇者「ありがとう剣士……胸の支えが取れたよ」
剣士「勇者様……」
勇者「それじゃあおやすみ」アフッスゴイッアァンッ
剣士「おおおやすみなさいっ」モウッダメックダケリュゥゥッ
剣士(ささ三人ともまだ続いているだなんて)センシサン オウマダマダイケルゼェ
剣士(うわーうわー! なんだって破廉恥な人達だ! それも僧侶さんまで!)アッスゴイッマダッオッキィッ
剣士(ゆ、勇者様はこれを聞いて何とも思わないのだろうか? ああ、もう意識してしまうっ)ァンッヤアッ
剣士(……。……んふ、ん……ぁ……)モゾモゾ
戦士「おーし、とっとと行こうぜ」
勇者「この距離だと次の町は三日くらいかな?」
僧侶「あ、少し私の国の領土に入りますねー」
盗賊「へー……僧侶の住んでる所かぁ。ちょっと見てみたいわねぇ」
勇者「王都がルートから離れているからなぁ……平和になってから、だな」
剣士「……」
戦士「……なあ、お前昨晩何かをしたのか?」ヒソ
勇者「軽く話はしたがこのような事になるような事態はなかったのだがなぁ」ヒソヒソ
剣士(あああたしは何て事を……ゆ、勇者様と同じ部屋で……悶々としたとは言え粗相を……)カァァァァ
……
戦士「随分進んだな」
盗賊「話だとこの次の町の先に大きな砦があるって話よねぇ」
剣士「恐らく今までのどんな敵よりも強いのだろうな」
僧侶「……」ゴクリ
勇者「装備と物資は念入りにして行こうか」
剣士「しかし戦闘が楽になったものだ。あの魔石のお陰で魔力温存を気にする事はないし」
盗賊「魔王との戦いを考えて魔石の温存はすべきじゃない?」
僧侶「だいぶ魔力の回復に使ってと思うのですが、未だに魔石から感じる魔力に変化がないのですよね……」
戦士「ぐっ! 強い!」ギィン
盗賊「こりゃあまずいねぇ」キィィンキィン
剣士「火炎魔法・強!」ゴァァ
勇者「ぐくっ」ガッガッドガガガ
僧侶「守護魔法! 回復魔法・中!」パアア
戦士「ふーっふーっ」
剣士「流石に砦の敵は強いな……」
勇者「回復薬はあと少しだ……」
戦士「どうするんだ?」
勇者「進もう……ここで後退した場合背後から食い破られる」
剣士「魔力は心配要らないからね」
盗賊「それでも少し休まない? 流石に疲れたわよぉ」
僧侶「そうですね……これほどの猛攻になると、ダメージどころかスタミナも気をつけないと……」
戦士「なんだ……この通路?」
盗賊「明かりがないわね……」
剣士「飛び道具でも構えているのだろうか?」
勇者「この臭いは……? とにかく用心するに越した事……」
僧侶「松明に火をつけますね」ゴソゴソ
剣士「ああ、火はあたしが出そう。火炎魔法・」
勇者「……はっ! 駄目だ! 止せっ!」
剣士「最弱」カッ
ドゴオオォォォォォン
ォォォォ
戦士「ぐ……なん、生きて」ガラガラガラ
戦士「おい、皆……盗賊?」
盗賊「」
戦士「……な、おい……誰か」
大きい炭A「」
大きい炭B「」
勇者「……ぐ」ガラガラ
戦士「ゆ、勇者……なあ、こんな、こんな事って」
勇者「……くっ」コォォ
戦士「ふーっふーっ」
剣士「流石に砦の敵は強いな……」
勇者「回復薬はあと少しだ……」
戦士「どうするんだ?」
勇者「進もう……ここで後退した場合背後から食い破られる」
剣士「魔力は心配要らないからね」
盗賊「それでも少し休まない? 流石に疲れたわよぉ」
僧侶「そうですね……これほどの猛攻になると、ダメージどころかスタミナも気をつけないと……」
戦士「なんだ……この通路?」
盗賊「明かりがないわね……」
剣士「飛び道具でも構えているのだろうか?」
僧侶「松明に火をつけますね」ゴソゴソ
勇者「皆、一旦退くぞ」
戦士「は? おいおい、お前は自分が言った事を……」
勇者「この臭いは恐らく可燃性のガスが充満しているのだろう」
剣士「……まさか、もし火を点けたら」
勇者「全滅だろうね」
勇者「これだけ離れていればいいだろう……剣士、火炎魔法を最弱でいいから飛ばしてくれ」
僧侶「ね、念のために……守護魔法」パァ
剣士「よし、皆伏せていてくれ。火炎魔法・最弱」ボゥゥゥ
ドゴオオォォォォォン ガランガラガラ
剣士「これほどの……」ブルル
戦士「……おいおいマジかよ」ゴクリ
盗賊「あれを食らっていたらと思うとぞっとしない話ねぇ」
僧侶「うわ……ああ……」ガクガクブルブル
勇者「ここが最上階のようだね」
剣士「行こう」ゴクリ
戦士「気合入れてくぞ」ガチャ
ボス「ほう……あのトラップに気づいたのか? それともよほど夜目の利く者か?」
戦士「けっ、そんな事より自分の心配でもしたらどうだ?」
ボス「心配? 冗談を」
ボス「お前達人間如き、赤子の手をひねるようなものだ」
盗賊「言ってくれるじゃない」チャキ
剣士「そうだね……流石にここまで甘く見られてはね」シャキン
僧侶「守護魔法!」パァ
勇者「……」スゥ
ボス「ふはははは!」
ボス「お前達、頭は大丈夫なのか? 私に刃を向けるという事がいかに愚考であるか?」
戦士「……」ジリ
盗賊「……」スス
ボス「……ふう」
ボス「もうよい、ならば死ね。即死魔法・強」ゴァァァ
戦士「ぐあ……があああ!」ガシャン
盗賊「ひぐ! ぅぅぅ……」バタ
僧侶「あひ? いぎぃぃぃ」ド
剣士「あ、がっ! うぐぐぁぁぁ」ガシャ
勇者「……」
ボス「ほう……一人生き残ったか。だが何ができる?」
勇者「おま……お前ぇ……」コォォ
ボス「な……これは精神破壊魔」
ボス「あぎぎ、ぐが! ががぁ、あひいいぃぃぃ!」
勇者「ここが最上階のようだね」
剣士「行こう」ゴクリ
戦士「気合入れてくぞ」ガチャ
ボス「ほう……あのトラップに気づいたのか? それともよほど夜目の利く者か?」
戦士「けっ、そんな事より自分の心配でもしたらどうだ?」
ボス「心配? 冗談を」
ボス「お前達人間如き、赤子の手をひねるようなものだ」
盗賊「言ってくれるじゃない」チャキ
剣士「そうだね……流石にここまで甘く見られてはね」シャキン
僧侶「守護魔法!」パァ
勇者「……」スゥ
ボス「ふはははは!」
ボス「お前達、頭は大丈夫なのか? 私に刃を向けるという事がいかに愚考であるか?」
戦士「……」ジリ
盗賊「……」スス
ボス「……ふう」
ボス「もうよい、ならば死ね。即死魔法・強」ゴァァァ
戦士「ぐあ……があああ!」ガシャン
盗賊「ひぐ! ぅぅぅ……」バタ
僧侶「あひ? いぎぃぃぃ」ド
剣士「あ、がっ! うぐぐぁぁぁ」ガシャ
勇者「……」コォォ
ボス「ほう……一人生き残った……な、これは精神破」
ボス「あぎぎ、ぐが! ががぁ、あひいいぃぃぃ!」
ボス「ふはははは!」
ボス「お前達、頭は大丈夫なのか? 私に刃を向けるという事がいかに愚考であるか?」
戦士「……」ジリ
盗賊「……」スス
ボス「……ふう」
ボス「もうよい、ならば死ね。即死魔法・強」ゴァァァ
戦士「ぐあ……があああ!」ガシャン
盗賊「ひぐ! ぅぅぅ……」バタ
僧侶「あひ? いぎぃぃぃ」ド
剣士「あ、がっ! うぐぐぁぁぁ」ガシャ
勇者「……」コォォ
ボス「こ、これは精神破壊魔法! 馬鹿なこれ」
ボス「あぎぎ、ぐが! ががぁ、あひいいぃぃぃ!」
ボス「ふはははは!」
ボス「私の頭は大丈夫なのか? 貴方様に刃を向けるという事が……」ガタガタ
ボス「……っ!」キョロキョロ
戦士「……な、なんだこいつ」
盗賊「チャンスじゃないっ」バッ
ボス「っ! そ、即死魔法・強!」ゴァァァ
戦士「ぐあ……があああ!」ガシャン
盗賊「ひぐ! ぅぅぅ……」バタ
僧侶「あひ? いぎぃぃぃ」ド
剣士「あ、がっ! うぐぐぁぁぁ」ガシャ
勇者「……」コォォ
ボス「精神破壊魔法……何故だ、人間如きに魔」ガタガタ
ボス「あぎぎ、ぐが! ががぁ、あひいいぃぃぃ!」
ボス「っ!」ガタガタ
ボス「はぁー……はぁー……はぁー」ゴクリ
ボス(なんだ……これは。この威圧感は……私はこの者達と戦う事を恐れている?)
ボス(馬鹿な! 矮小な人間如きに!)
戦士「……なんだ?」
盗賊「……様子がおかしいわね」
ボス(容易い事のはず……即死魔法を唱えるだけで終わる……だが)ガタガタ
勇者「……」ォォォ
ボス(戦ってはならぬと……そんな気ばかり起こる……)
ボス(しかしこの状況において戦う以外の選択肢が……そもそもこやつらとて納得するはずもない)
戦士「……はっ!」シャァン
ボス「ぐぬっ」ガキィン
ボス「散れ! 虫けらがぁぁぁ!」ゴァァァ
戦士「ぐお!」ドッ
盗賊「その隙頂くわぁ」シャ
ボス「ぐうぅ爆破魔法・中!」ドッ
盗賊「がっ!」ゴォォン
僧侶「回復魔法・中!」パアアア
ボス(なんだ……何も問題ない? な、ならば)
ボス「即死魔法・きょ」
勇者「……」コォォォ
ボス「……」ガタガタガタ
ボス(間違いない……あの男が何かを……即死魔法を禁じる何かを?!)ガタガタ
ボス(馬鹿な! 人間如きが周囲に特定の魔法を封じる事など)
剣士「火炎魔法・強!」ゴアアアア
ボス「ぬぐううう!」
ボス「これでは拉致があかんわああぁぁぁ!」
ボス「ええい! その術を超えてやろう! 即死魔法・強!」ゴァァ
戦士「ぐあ……があああ!」ガシャン
盗賊「ひぐ! ぅぅぅ……」バタ
僧侶「あひ? いぎぃぃぃ」ド
剣士「あ、がっ! うぐぐぁぁぁ」ガシャ
勇者「……お前は、戦いを避け、逃げ出す」コォォォ
ボス「は、はは……何を言い出すかと思えば……」
ボス「ふははは! 超えてやったぞ! どうだぁ! そんなこけおどし最早」
勇者「……お前は、逃げ出す」コォォ
ボス「効かあぎぎ、ぐが! ががぁ、あひいいぃぃぃ!」
ボス「っ!」ガタガタ
ボス「はぁー……はぁー……はぁー」ゴクリ
ボス(なんだ……この悪寒は。私は何と対峙している?)
ボス(矮小な人間……? 本当か?)
戦士「……なんだ?」
盗賊「……様子がおかしいわね」
ボス(容易い事のはず……即死魔法を唱えるだけで終わる……だが)ガタガタ
勇者「……」ォォォ
ボス(それでは終わらぬ。それをしては済まされぬ……私は人間如きに恐怖を植えつけられているのか?)
戦士「なんだぁ……来ないのならこちらから行くぞ」
ボス「ま、待て……」ガチガチ
ボス(これが幻であろうとなかろうとこのような力……恐らく、この者達と戦っては)ブルブル
盗賊「……なんなんだこいつ?」
剣士「だが何かを企んでいる様子ではなさそうだね」
勇者「……」ォォォ
僧侶「あの……もしも戦う意思が無いようでしたら……その」
ボス「!」
戦士「おいおい、僧侶。何を言っているんだよ」
ボス「い、いやその通りだ!」
盗賊「はあああ?! あんなデストラップし掛けておいてぇ?」
ボス「わ、私自身に人間と争う意思は無い!」
ボス「確かに、我々魔族や魔物は人間を見下している! 私もそうだ!」
ボス「だが、魔王様が人間側を侵略するという方針を取られなければ」
ボス「自分から攻撃する事もなかっただろう!」
剣士「どういう事だ?」
ボス「元々魔王様は人間との共存を掲げておいでだった」
ボス「が、この二十年ほど前に人間に対し攻撃が始まり、今がその渦中にあるのだ」
戦士「……そういや、もっと前から魔王自体は存在していたって話だっけか」
盗賊「あん? そーなのかい?」
勇者「その当時は特に争いもなかったが……急に侵略が始まり交戦ムードが高まっていった」
勇者「確かそんな話だったね」
ボス「私はもう人間と戦わん……それもお前達のような底知れない化け物などと」ブル
戦士「おいおい……なんなんだこいつは?」
剣士「だが戦わずして済むならそれでいいじゃないか」
ボス「……言っておくが私が退いたからと言って、お前達が絶望的な状況である事に変わりは無いぞ」
盗賊「絶望的ねぇ……例えばどんなよぉ?」
ボス「魔王様だ……」
ボス「俺も詳しくは知らないが、あの人は時空を司りあらゆる事象を思いのままに操作するという」
勇者「……嘘だろ?」
ボス「俺も知らん! だがそれだけ恐ろしい力を持っているのは確かだ!」
戦士「突拍子も無くて正直なあ……」
剣士「あらゆる事象ね……だとしたらそもそも進軍を行う必要が無い」
剣士「人間は魔物に屈服したという事象を操作して作り出せばそれで終わる」
ボス「……だから魔王様が人間に対し侵略を行う事にした時は驚いたさ」
ボス「俺はもう雲隠れする……人間には攻撃されるだろうし、仲間には敵前逃亡で殺されるだろう」
ボス「行け……お前達など顔を見たくない……」
戦士「どう思う? 俺達が去ってから町を攻撃とか」
盗賊「つってももう砦内の魔物はこいつだけだしねぇ」
ドゴォォォォン
戦士「あいつ……本当に砦を破壊していきやがった……」
剣士「それにしても急な魔王の方針変更か……」
盗賊「そんな情報あったってどうしようもないじゃないのさぁ」
勇者「付け入る隙になってくれればいいが……」
戦士「どーだかな」
剣士「だがもし本当であれば魔物達を味方につける事も……?」
盗賊「相手はこっちを見下しているんでしょ。そんな相手に仲間になってくれって言われて納得するわけぇ?」
勇者「……うーむ」
勇者「ご馳走様でした」ァンッアッスゴィィッ
剣士「ご、ご馳走様でした」ソウリョノクセニホントインランダナ
勇者「あ~今日は疲れたなぁ……」アァンッイワナァンックダサヒァァッ
剣士「そ、そうですね……」アッアッモゥダメッイクゥゥッ
勇者「……」ジー
剣士「……ど、どうかしましたか?」ドキドキ
勇者「剣士はこういうのは不慣れなのかね?」アヒィィッイッテッズットイッテリュノォォッ
剣士「な、なんの事でしょうかねぇ……」カァァァ
勇者「可愛いなぁ剣士は……顔を真っ赤にしてこういう時だけ目を合わそうとしない」ギュ
剣士「ゆ、勇者様! おおお戯れは止して下さい!」ドキドキ
勇者「剣士は故郷に想い人とかいないのか?」ナデナデ
剣士「あ、撫で……。はい、そういった方には恵まれず……」カァァァ
勇者「そうか……それを聞いて少し安心だ」ァァッセンシィッモットォッ
剣士「勇者様……?」ドキドキ
勇者「君は戯れだと言ったが私は本気であるからな」アアァァイックゥゥゥン
剣士「ゆ、勇者様……!」カァァァァ
剣士(ここここ告白? 告白なのかこれは?! こ、こんな事初めて言われた……けど)ドッキドッキ
剣士(む、ムードも何もあったもんじゃ……!)センシサァンッアッモットォッ
勇者「お早う、剣士」ギュ
剣士「お、お早う……勇者様、その、そういう事は控えて頂ければ」
勇者「そうか……私は君の好みではないか」
剣士「ち、違います! あ、いえ確かに守られたいと思いはしま……そうでなくて!」
剣士「あたし達は今、重大な任務の只中にいます! ですから……そのそういう事は全てが終わった後に」
勇者「これでも我慢しているのだが、君はそれ以上を求めるのか?」ナデナデ
剣士「ぁ……わ、分かりました、その……二人の時だけ、でしたら」カァァ
勇者「ありがとう、剣士」ギュウ
剣士「ぁぅ……」
……
戦士「意外と距離があるな……」
僧侶「あ、あれ……町でしょうか?」
盗賊「まーそうだけど」カーカー
勇者「ここから目指すとなると夜中になるな」
剣士「流石に無理がありますね」
勇者「今日はここで野営。明日、半日ほどであの町に着くだろう。そこでゆっくり休む、でいいかな」
戦士「ま、それが妥当だよな」
剣士「異議無し」
勇者「すぅ……んん」パチ
勇者「ふぁ……何時だ?」
勇者(月の方角から……日付が変わったぐらい……うん?)
勇者「町の方角が明るい……み、皆起きろ!」
戦士「んだよぉ……」
盗賊「どうしたって……ちょ、何よあれ」
僧侶「……一体何が?」
剣士「まさか……魔物の襲撃を受けているのか? どうする?」
勇者「無視して寝れるのか?」
戦士「ま、そうだろうな」
……
勇者「く……これでは」ゴオォォ
戦士「とても生存者がいる状態じゃないな」ゴオオォォ
盗賊「火を消さない限り町に入り込むことも出来ないわよ!」
剣士「凍結魔法・強! 凍結魔法・強!」ビュアアァァ
僧侶「火の勢い……衰えませんね」
戦士「くそ……どうする?」
勇者「これではどうにも……ならないな」ォォォ
戦士「意外と距離があるな……」
僧侶「あ、あれ……町でしょうか?」
盗賊「まーそうだけど」カーカー
勇者「ここから目指すとなると夜になるな。どうする? 今日、無理をすれば明日一日休めるのだが」
剣士「それ……どうなんでしょうか」
僧侶「まだ体力的には余裕がありますが……」
剣士「あたしも行けるよ」
盗賊「まー明日も休みってんなら行ってもいいわよぉ」
勇者「決まりだね」
勇者「結構、距離があるな……」フゥ
戦士「あと少しだが……すっかり暗くなってしまったな」
剣士「まだ木々も多いし、魔物の襲撃だけには気をつけていかないとだね」
盗賊「……ん? 僧侶?」
僧侶「す、すみません……荷物が茂みに引っかかって」
魔物「ガアアァァ!!」
僧侶「え、あ、きゃああああ!」
剣士「僧侶さん! くそ! 魔法じゃ巻き込んで……」
戦士「くそっ!」バッ
戦士「はぁ……はぁ……」
魔物「」
盗賊「戦士……僧侶は……?」
僧侶「」
戦士「くそ……ちくしょぉぉ」ガッ
勇者「ぐ……」ォォォ
勇者「結構、距離があるな……」フゥ
戦士「あと少しだが……すっかり暗くなってしまったな」
勇者「僧侶が遅れているな……剣士、用心も兼ねて」
剣士「分かった。魔物の奇襲だけは避けたいしね」
僧侶「す、すみません……荷物が茂みに引っかかって」
剣士「大丈夫だから落ち着い」
魔物「ガアアァァァ!」
盗賊「なっ!」
剣士「っと」ガッ
剣士「雷撃魔法・中!」バリバリィ
戦士「大丈夫か?!」
剣士「ああ……と言っても、勇者様が機転を利かしていなければ危なかっただろうけどもね」
僧侶「も、申し訳ありません」
盗賊「……早く先に進むわよ。ここさえ抜けちゃえば後は見晴らしがいいわけだしねぇ」
勇者「そうだな……早くゆっくりしたいし行こうか」
戦士「さあて町に着いたか」
盗賊「結構かかったわねぇ」
僧侶「もうすぐ日付が変わる頃ですね」
勇者(……)
剣士「何処か食事が出来そうなところはあるだろうか?」
戦士「宿屋で食うしかねーかもな」
「うわああああ!」
「て、敵襲! 敵襲ーーー!」
戦士「もぐ、もごごごおごー」
勇者「皆、行くぞ!」
剣士「まさか町に襲撃だなんて……」
ゴォォォォ
僧侶「そんな……町が燃えて」
勇者「消火はこの町の人達に任せよう」
戦士「おう、俺達は魔物だな」
「西だ! 西から魔物が!」
勇者「よし……西か」
戦士「おらああ!」ズバン
盗賊「なんて数の多い……」シュババ
剣士「凍結魔法・強!」ビュオオオオ
勇者「ぐぐ」ガガガガ
僧侶「回復魔法・中!」パアア
戦士「皆、耐えろ! 何としてでもやり過ごせ!」
僧侶「きゃああああ!」
剣士「僧侶さ……?!」
魔物達「グルルルル」
勇者「囲まれた……? 何故?」
盗賊「な、こいつ、うわああああああ!」
戦士「駄目だ! こっちはぐああああああああ!」
勇者(なんだ、何が起こっている?!)ォォォ
戦士「さあて町に着いたか」
盗賊「結構かかったわねぇ」
僧侶「もうすぐ日付が変わる頃ですね」
勇者(……)
剣士「何処か食事が出来そうなところはあるだろうか?」
戦士「宿屋で食うしかねーかもな」
勇者「皆は先に行っていてくれ……ちょっと気になる事があるんだ」
戦士「おう、お前も疲れているんだ。無理するなよ」
勇者(止むを得まい……一度見捨てよう)
勇者(この時計台から何が起こっているかを確認し、その上で対策を取らなければ何時まで経っても)
勇者(この町を救うことなどできやしまい)
勇者(……)
勇者(始まったか)ドォォォン
勇者(確かに西から攻め込まれているな……それと同時に火炎魔法で町に火か)シュウゲキダー
勇者(おいおい、北と東の兵士までそっちに行っては駄目だろ!)
勇者(戦士達が出てきて……まあ西に向かうよな)
勇者(ここで北が破られ敵が侵入)
勇者(あ、僧侶死んだ……で、一瞬で戦士達も崩れて、と)
勇者(難しいな……町についてから動ける時間も短い)
勇者(これなら西は兵士の物量に任せた方がいいか?)
勇者(あ、東決壊した……どうするんだこれ……とりあえず北を防衛してみるか?)ォォォ
「うわああああ!」
「て、敵襲! 敵襲ーーー!」
戦士「もぐ、もごごごおごー」
勇者「皆、行くぞ!」
剣士「まさか町に襲撃だなんて……」
ゴォォォォ
僧侶「そんな……町が燃えて」
勇者「消火はこの町の人達に任せよう」
戦士「おう、俺達は魔物だな」
「西だ! 西から魔物が!」
戦士「よっしゃ、西に行こうぜ!」
勇者「待て、どんどん西に兵士が流れていく」
勇者「他の方角から攻められて囲まれるのは避けたい……北に向かおう」
剣士「確かに……一点集中でなかった場合、挟撃だけは避けないといけないね」
僧侶「門の前に大量の魔物が!」
戦士「押し返すぞ!」ズバン
盗賊「ま、大した強さじゃないし何ともなるわね」シュバババ
剣士「凍結魔法・強!」ビュオオオオ
勇者(ここまではいいが……そろそろ後方注意だろうか?)
魔物「ギャオオオン!」
魔物「ウルル」
魔族「火炎魔法・強! 火炎魔法・強!」ゴアアアアアア
盗賊「周囲をがんがん燃やしやがって」ヒュン
魔族「火炎がっ」ドシュ
勇者「……まずい! 周囲が!」ゴオオオオオ
僧侶「きゃああああ!」ガラガラガラ
戦士「僧侶!」バコ
戦士「えっ?」ズォォ
盗賊「外壁が崩、うああっ」ゴッシャアァ
勇者「……ぐぐ」ォォォ
僧侶「門の前に大量の魔物が!」
戦士「押し返すぞ!」ズバン
盗賊「ま、大した強さじゃないし何ともなるわね」シュバババ
剣士「凍結魔法・強!」ビュオオオオ
勇者「盗賊、そこにいる魔族を! 奴等は魔法で町に火をつけている!」
盗賊「あいよ!」ヒュン
魔族「ひぃっがっ」ドシュ
勇者(よし、次は東の……)
魔物「オオォォォォオン」
戦士「なんだこいつっ!」
剣士「不味い! その魔物は自爆魔」カッ
戦士「」
盗賊「」
剣士「」
僧侶「う、げほごほ……み、皆さん」
勇者「ぐぐぐぐ」ォォォ
僧侶「門の前に大量の魔物が!」
戦士「押し返すぞ!」ズバン
盗賊「ま、大した強さじゃないし何ともなるわね」シュバババ
剣士「凍結魔法・強!」ビュオオオオ
勇者「盗賊、そこにいる魔族を! 奴等は魔法で町に火をつけている!」
盗賊「あいよ!」ヒュン
魔族「ひぃっがっ」ドシュ
勇者「剣士! あそこに自爆魔法が使える魔物!」
剣士「! 沈黙魔法!」カッ
魔物「っ! っ!」パクパク
戦士「おらあ!」ドズン
盗賊「一気に畳み掛けるわよぉ!」
僧侶「この調子ならなんと」ドゴオオォン
勇者「な……」クル
剣士「回りこまれた?! 違う、東から流れてきているのか!」
戦士「僧……」ドズ
盗賊「戦士!」
勇者「うぐぐぐぐ!」ォォォ
勇者「剣士! あそこに自爆魔法が使える魔物!」
剣士「! 沈黙魔法!」カッ
魔物「っ! っ!」パクパク
戦士「おらあ!」ドズン
盗賊「一気に畳み掛けるわよぉ!」
僧侶「この調きゃあ!」ドン
勇者「くっ!!」ドゴオオォン
剣士「勇者様! な、まさか東から!」
僧侶「回復魔法・中!」パアア
盗賊「こっちは手が離せないわよ!」
剣士「雷撃魔法・中! 凍結魔法・強!」カッ
剣士「何とか凌いで……な」
魔物 ゾロゾロ
僧侶「ま、まさか……西の方も?」
勇者「俺が前衛を受け持つ! 剣士!」ドガガガガ
剣士「凍結魔法・強! 爆破魔法・強! 凍結」
魔物「ガアアァァ!」
僧侶「え、路地裏……きゃああああ」ザシュウ
剣士「僧侶さっ!」ザシュ
勇者「むがああああああ!!」ォォォ
戦士「意外と距離があるな……」
僧侶「あ、あれ……町でしょうか?」
盗賊「まーそうだけど」カーカー
勇者(なんだ! この詰み方は!)
勇者(いっその事町を見捨てるか……? いや駄目だ!)
勇者(あそこが落とされては背中を襲って下さいと言っている様なものだ)
勇者(何より、これ以上の魔物の侵攻を抑えたい……)
勇者(だが対策する時間が足らなさ過ぎる)
戦士「勇者の奴、どうしたんだよ」
剣士「野営するか前進するかで悩んでいるのかな?」
盗賊「そんなんどっちだっていーじゃないのさー」
勇者(くそ……説明しようにも理解などしては)
勇者(しかし誘導しなくてはあの町は落ちる)
勇者(何より現状、防衛しきる手段が……先回りしすぎて私の存在が奴にばれるのも避けねばならない)
勇者(だが今のままでは、敵が町に入り込んだ時点でもう敗北しているようなもの)
勇者(どの様に思われようと無理を通してでも……)
戦士「さあて町に着いたか」
盗賊「結構かかったわねぇ」
僧侶「もうすぐ日付が変わる頃ですね」
勇者(……)
剣士「何処か食事が出来そうなところはあるだろうか?」
戦士「宿屋で食うしかねーかもな」
勇者「すまない皆……頼み事をしてもいいだろうか?」
防壁 西
戦士「変な影に嫌な予感ねぇ……」
盗賊「ま、少しくらい付き合ってやってもいいっしょ」
戦士「そりゃああいつの予感は当たるからな」
盗賊「さって隠密しながら見回りしますかねぇ」
東
「あれ、お前らも?」
「おう何でもさっき到着した勇者様から魔物の大軍が見えたそうだ」
「本当かねぇ」
北
剣士「本当に見えたのかい?」
勇者「見間違いであってくれればいいが……本当に敵が押し寄せてきたら、ね」
勇者「もし私が魔物側なら火炎魔法で町を焼きつつ侵攻……突破次第一気に雪崩れ込む」
勇者「後は多少の物量だけで勝てる。初めは一点に集中すれば他の門は隙が生まれる」
僧侶「確かに壁に囲まれたこの町でしたら、炎の行き場も限定されて大打撃を与えられますが」
剣士「……影! まさか本当に」
勇者「町に入り込まれたらつらい戦いになる……なんとしてでも食い止めるぞ」
……
勇者「はぁ……はぁ」
剣士「何とか凌げそうだな……」
僧侶「か……回復魔法・中!」パアア
勇者「もうすぐ……夜明け」
僧侶「も、もう限界……」ドォーン
剣士「な、町に火の手が……」
勇者「……一旦引くぞ」
「うわああああ!」
「きゃああああああ!」
勇者「東も西も?」
僧侶「戦士さん? ……そんな」
剣士「こんな……どうする? いや……どうしたら」
勇者「敵を抑えきれずに撤退している可能性もある。二人を探し体勢を立て直そう」
盗賊「ゆ、勇者……」
剣士「盗賊さ……!」
僧侶「ち、血だらけじゃないですか!」
盗賊「頼む、こいつを……助けてやってくれよぉ」ドロ
焼死体「」
勇者「……魔法が使えるやつを抑えなかったのか?」
盗賊「遠方から味方をごと……なあ、頼む戦士だけでも」ドロドロ
勇者「……っ」ォォォ
戦士「さあて町に着いたか」
盗賊「結構かかったわねぇ」
僧侶「もうすぐ日付が変わる頃ですね」
勇者(頼むぞ……これ以上、襲撃への対処が長引いてしまったら)
剣士「何処か食事が出来そうなところはあるだろうか?」
戦士「宿屋で食うしかねーかもな」
勇者「すまない皆……頼み事をしてもいいだろうか?」
防壁 西
戦士「変な影に嫌な予感ねぇ……」
盗賊「ま、少しくらい付き合ってやってもいいっしょ」
戦士「そりゃああいつの予感は当たるがよ……遠距離からの魔法に気をつけろだのなんだのって……」
盗賊「もしかしたら未来が視えてたりしてねぇ……それなら今までのトラップも納得いくわぁ」
東
「あれ、お前らも?」
「おう何でもさっき到着した勇者様から魔物の大軍が見えたそうだ」
「本当かねぇ」
北
剣士「本当に見えたのかい?」
勇者「見間違いであってくれればいいが……本当に敵が押し寄せてきたら困る」
勇者「もし私が魔物側なら火炎魔法で町を焼きつつ侵攻……突破次第一気に雪崩れ込む」
勇者「後は多少の物量だけで勝てる。初めは一点に集中すれば他の門は手薄になるからね」
僧侶「確かに壁に囲まれたこの町でしたら、炎の行き場も限定されて大打撃を与えられますが」
剣士「……影! まさか本当に」
勇者「町に入り込まれたらつらい戦いになる……なんとしてでも食い止めるぞ」
……
勇者「はぁ……はぁ」
剣士「何とか凌げそうだな……」
僧侶「か……回復魔法・中!」パアア
勇者「夜明けが……」
勇者(頼む……これ以上は本当に対処できなくなる)
僧侶「も、もう限界……」ドォーン
剣士「な、町に火の手が……」
勇者「……ぐ、一旦引くぞ」
「うわああああ!」
「きゃああああああ!」
勇者「東からか!?」
僧侶「兵士の皆さん……」ゾワ
剣士「こんな……どうする? いや……どうしたら」
勇者「こっちの敵に魔法が使える敵はもういなさそうだ……僧侶と剣士は東へ」
勇者「私は西に向かい、状況次第で戦士達を連れて援護に向かう」
勇者「戦士!」
戦士「よぉ……」ゼェゼェ
盗賊「何とか片付けたわよ」
勇者「すまないが急いで東に来てくれ。兵士達の防衛線が突破されたようだ」
戦士「ちっ……人使い荒いぜ」
勇者「すまないな」
盗賊「ほら行くわよ」
……
戦士「ぜぇ……ぜぇ」
盗賊「ふう……ふう……」
僧侶「……」グッタリ
勇者「」グッタリ
剣士「ゆ、勇者様、勇者様」ユサユサ
戦士「流石に今回は勇者も頑張ったろう……寝かせてやれよ」
勇者「……」ムク
戦士「お、気づいたか」
剣士「勇者様! 良かった……まさかもう目覚めないかと思って……」
勇者「え?」
盗賊「あんた、三日三晩眠りこけていたのよぉ?」
戦士「ま、戦力になっていないが、お前の判断が無けりゃこの町も俺らも生きちゃいなかったからな」
戦士「大手柄だよ、そろそろそいつを戦闘に回しちゃくれねーか?」
勇者「無理を言わないでくれ……」
僧侶「でも……本当に良かった……町の人達を守り通せたんですよ!」
剣士「だが……多くの兵士が犠牲になってしまった」
盗賊「あれだけの大部隊、玉砕したってそうは止められないわよ。素直に喜ぶべき結果よ」
……
戦士「ふう、だいぶ進んだな」
剣士「ここから先は町も少なくなるそうだね」
盗賊「え、そうなのぉ? はぁ……これからどうやって食料を確保していくのさ」
勇者「ここを超えて……約十日ほどで完全に魔王側の領地に入る」
勇者「そしてそこから更に五日で魔王城を幾重にも囲む城壁に辿り着くとされているな」
僧侶「……凄い詳しいのですね」
盗賊「もうちょい有益な情報を持ってきなさいよねぇ」
勇者「剣士! まだ後続が来るぞ!」ガッガッ
剣士「分かった、もう少し耐えていてくれ!」シュバ
戦士「おっらぁぁぁ!」ズバン
盗賊「こっちはこれで終わりよぉ」シュバ
勇者「左右に伏兵がいる! 二人とも先にそちらを」
僧侶「回復魔法・中!」
魔物D「オオオォォォ」スォォォ
戦士「炎を吹く気か!」
僧侶「結界魔法!!」カッ
魔物D「オオォォォォォ!」ゴアアァァァ
勇者「ふう……後はこいつだけか」ァァァァァ
戦士「炎が止み次第一気に片付けてやらぁ」
盗賊「あんたらは休んでいたらー?」
僧侶「ふう……そうさせていただきます」
勇者「もうそろそろで城壁かなぁ」
戦士「お、なんか見えてきたぜ。あれか?」
盗賊「ちょちょ……何よあれ……」
剣士「凄いな……見渡す限り壁が続いているのか」
勇者「魔王城までの城壁は三つ」
勇者「一つ目の先は魔王軍本体が駐留するエリア」
勇者「二つ目、まだまだ要訓練の新兵と農民が生活するエリア」
勇者「そうして三つ目の先に魔王城があるそうだ」
剣士「く、詳しすぎないか?」
勇者「王国に斥候を依頼しておいたんだ」
勇者「流石にこればかりはどうしようもないからね」
盗賊「なるほどねぇ……」
戦士「にしても変な組み方だな。農民が魔王城より前にいるのか?」
勇者「非戦闘の魔物魔族の居住は魔王城の先だが、そこからでは食料の輸送が大変なのだろうな」
剣士「まあ、農具を振るうだけでも体は鍛えられるし、作業をしているのは兵士なんだろうね」
僧侶「あ、あの……魔王城周辺の情報は分かりましたが」
盗賊「肝心のどうやって突破するか、よ。正面から入るつもり?」
勇者「抜かりは無いさ」
勇者「正面は巨大な城門があるが……ちょっとした出入りの為にそれを利用するのはあまりにも大変」
勇者「という事で少し大きめの扉が何箇所かにあるらしい」
戦士「そこから忍び込むのか?」
勇者「一気に魔王城まで進もう。門は開けるのに三分近くかかるらしいからな」
盗賊「大軍が雪崩れ込む時間差で、って事かい」
剣士「しかし扉の位置も分からず……」
戦士「夜間に潜入して壁伝いに探すか?」
勇者「それしかないだろうね」
勇者「お、ここだ……あ」ガチャガチャ
戦士「おいおい……どーすんだよ」
盗賊「なぁに言ってんのさ。あんたらどきな」
盗賊「はっ、あたしの前じゃあ宝箱と言い、大したレベルの鍵の構造じゃあないわねぇ」カチャカチャカチャ
剣士「生き生きとしているね」
盗賊「とーぜん。はいよ仕舞いだ」ガチャン
僧侶「す、凄いですね」
勇者「さあ、行こうか」
勇者「あー……こっち側は月明かりが陰って見づらいね」
戦士「まー見つかるよかいいだろう」
剣士「しかし、あまり巡回の兵士がいないね」
僧侶「私達が近くまで来ているぐらい知っていると思うのですが」
盗賊「罠かそれとも正門以外の侵入無いと思っているのかかしらねぇ」
勇者「正門は向こうか……逆へ進もうか」
戦士「三つ目の城壁か……」
剣士「何人かに見つかったけど何とかなるもんだね」
盗賊「あたしの投げナイフの技術に感謝しなさいよぉ?」
勇者「死体も隠しておいたしそうすぐには見つからないだろう」
僧侶「非武装の魔族もいたようですが……」
剣士「農法を指導する者かもしれないね……仕方が無いとは言え、やはり後味が悪いな」
盗賊「おー……立派な城じゃない」
剣士「流石に巡回している兵士が多いな……裏口みたいなものはあるのだろうか?」
勇者「お勝手のほうにあるらしいな」
戦士「お勝手とか言うなよ……城がしょぼく見えてくるじゃねーか」
僧侶「調理場とか厨房ですかね」
盗賊「ここかしらねぇ……」
戦士「普通の扉はいくつもあるのか?」
勇者「探せばあるんじゃないだろうか?」
僧侶「ここがその扉とも限らないわけですね……」ゴクリ
戦士「……」ギィ
盗賊「何処よここ……」
剣士「普通の通路に出た感じだね……もしかしてさっきのところは裏庭だったのかな」
勇者「……凄い、濃い魔力が漂っているな」
僧侶「向こうから……まさかこの先に魔王が?」
剣士「これほどともなるとそうなのだろうね」
勇者「……行こう」
戦士「だな」
ごめん
仕事あるしそろそろ寝る
二十時間以内くらいで再開できたらなぁ
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