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穏乃「何で憧がそんな事を?」
宥「穏乃ちゃんが全国大会の優勝を決定付けて、穏乃ちゃんが学校中の人気者になったからだと思う」
穏乃「・・・・・・?」
玄「独占欲だよ。穏乃ちゃんが他の子に取られちゃうんじゃないかって思って、他の子に牽制かけてるんだよ」
穏乃「取られるも何も・・・。えっと、意味がよくわからないというか・・・」
灼「憧は穏乃が他の子と仲良くなったりするのが嫌なんだと思・・・。そういうことだよ」
穏乃「そうだったのかー・・・。でも、女同士で付き合うも何もないから、憧にしては間の抜けた作戦だよね」
灼・宥・玄「えっ?」
灼「穏乃・・・何言ってるの・・・?」
穏乃「えっ・・・?何かおかしい事言ったかな・・・?」
玄「だって、まるで女の子同士が付き合うのがおかしいみたいな言い方だったよ・・・?」
穏乃「いや、おかしいでしょ」
宥「ぁっ・・・」クラッ
玄「お姉ちゃん!?」
宥「だ、大丈夫・・・。ちょっとあまりの衝撃で眩暈が・・・」
穏乃「あれ・・・?も、もしかして私がおかしいのかな・・・?」
穏乃「いや、だっておかしいでしょ?お父さんとお母さんが結婚して子供を産んで・・・」
灼「お父さん・・・?穏乃、お父さんって何・・・?」
穏乃「あれ・・・?思い出せない・・・。顔も・・・名前も・・・」
玄「ねえ、穏乃ちゃん。お父さんなんて、誰一人この世界に存在しないんだよ・・・?私のお父さんも、穏乃ちゃんのお父さんも、本当はいない・・・」
穏乃「えっ・・・?で、でも・・・。おかしいな・・・どうして思い出せないんだ・・・!?」
宥「穏乃ちゃんは騙されていたのよ。この世界に・・・」
穏乃「ど、どういう事なんですか・・・?」
灼「穏乃は聞いた事ないかな。麻雀の全国大会が終わって、帰郷する時に事故にあって誰一人助からなかったって話」
穏乃「確か長野のフォルクスワーゲン・タイプ2・・・」
灼「実はそれ、嘘なんだ・・・」
穏乃「えっ!?」
宥「実際に事故を起こしたのは赤土先生のキューブ・・・。事故に遭ったのは私達なんだよ・・・」
穏乃「嘘でしょ・・・?だって、私達はこうして・・・」
玄「この世界は憧ちゃんが中心になって作り出した仮初めの世界なんだよ・・・」
穏乃「いやいや、そんな作り話めいた話があるわけが・・・」
灼「そう、今までの話は嘘。ここからが本題なんだけど、穏乃は男の人って見た事ある?」
穏乃「そりゃ・・・あれ・・・?田んぼや畑なんかで見たはずなのに、記憶から抜け落ちてる・・・。それだけじゃない!テレビで見たはずの男の人の記憶も・・・ない!」
玄「穏乃ちゃんだけじゃない。これは世界全域にいえることなんだけど、強力な暗示をかけられてたんだよ」
穏乃「暗示・・・?」
宥「男の人がいるのが当たり前っていう暗示を・・・」
穏乃「どうしてそんな暗示を・・・」
灼「かつて世界には実際に男と女、同じ人間でありながら二つの性別の人間がそれぞれ住んでいた。それは穏乃が今まで認識してた世界だと思う」
穏乃「うん」
宥「でも、それは昔の話。人類の歴史のターニングポイント・・・。そう、新型万能細胞の発見よ」
穏乃「うぅっ、頭が痛い・・・」
玄「それは穏乃ちゃんの覚醒が近いってことだよ」
穏乃「そうなの・・・。よくわからない・・・」
宥「新型万能細胞の発見により人類は飛躍的に発展を遂げたの。様々な病魔から解放され、人々の時代は新たなステージへと立った」
灼「その結果辿り着いたのが女性だけで子供を産む技術・・・」
穏乃「まさか・・・!」
玄「そう。新型万能細胞のおかげで、女性は男性無しに子供を産めるようになった・・・」
灼「そしてその結果、この世界から徐々に男性は消えてゆき、女性だけの世界となった」
穏乃「だったら暗示をかける必要なんて・・・」
玄「その世界を受け入れられない人々もいるんだよ、穏乃ちゃん。だから、偉い人たちは男性も存在するという幻想を見せてるんだよ」
穏乃「・・・じゃ、じゃあ、隣のクラスの子が他の高校の男子と付き合ってるっていうのは」
灼「それも幻想に過ぎないよ。男性という種は滅びたんだ・・・。そういう女性は世界のバランスを取る為に一定数が催眠がかけられて、男性と付き合ってるって錯覚を植えつけられてるんだよ・・・」
穏乃「・・・何故みんなはその事を知ってるの?」
灼「世界の真理を知るただ一つの手段・・・」
宥「それは麻雀・・・」
穏乃「麻雀?」
玄「麻雀をする少女はあらゆる確率を無視した超常的なツモや手牌を自らに呼び込む事ができる。そんな能力に目覚める事があるの・・・」
穏乃「私も経験ある・・・。それに、玄さんのドラも・・・!」
灼「それがクレイジーサイコレズの目覚めなんだ・・・」
穏乃「クレイジーサイコレズ・・・?」
宥「この世界の見せる幻想から脱却し、自ら女の子を愛せるようになる資格のようなもの・・・。だから穏乃ちゃんもこの世界の異常に気付けた・・・。いいえ、正しく認識できるようになった・・・」
穏乃「男性と女性が付き合う世界が異常で、女の子同士が付き合う世界が通常だっていうんですね・・・」
玄「そうだよ。他の子は何も知らないまま、相手が男の人だと錯覚して結婚して生を終えていく・・・。実際は相手が女性だとも知らずにね・・・」
穏乃「憧もクレイジーサイコレズなの?」
玄「・・・うん。憧ちゃんは穏乃ちゃんが世界に騙されたまま、他の子とくっつくのが許せなくてあんな噂を」
穏乃「待って、それはおかしいですよ!それなら、世界に騙されたままのみんなは女の子に興味を示さないはず!私に言い寄る女の子なんて出るわけがないんだ!」
灼「・・・極めて強力なクレイジーサイコレズは伝播する」
穏乃「えっ?」
宥「さっき説明受けたよね。麻雀がこの世界の真理に辿り着く唯一の手段だって」
穏乃「はい」
宥「全国大会で優勝を決定付けた穏乃ちゃんは当然クレイジーサイコレズに目覚めてるものと憧ちゃんは思い込んでいた」
穏乃「なるほど」
玄「強力なクレイジーサイコレズは他の女性に対して強力な誘因性を持つのです。それは強い子孫をたくさん残そうという本能からきているのかもしれません」
穏乃「それで私が学校中の人気者に・・・」
玄「おそらく・・・。憧ちゃんはそれが穏乃ちゃんの無意識のクレイジーサイコレズの能力の発露だと考えて・・・」
穏乃「憧が流した噂、学校のみんなは信じるの?」
灼「学校のみんなが穏乃に魅力を感じているのはクレイジーサイコレズの影響下にあるから・・・。誰もおかしいと思うものはいない・・・」
穏乃「そっか・・・。そうだったのか・・・」
玄「穏乃ちゃん、これからどうするの?」
穏乃「憧と話をしてみるよ。まだ考えはまとまらないけど」
宥「そう・・・」
穏乃「憧・・・」
灼「憧は今屋上にいると思・・・。シュウマイ弁当持ってたから・・・」
穏乃「あはは、あれ、教室で食べると臭いもんね」
穏乃「・・・よし、行ってくるよ」
灼「うん」
玄「行ってらっしゃい、穏乃ちゃん」
宥「憧ちゃんとちゃんと向き合ってあげて・・・」
穏乃「・・・わかってる」
穏乃「憧!」
憧「し、しず・・・。何か用・・・?」
穏乃「憧は知ってたの?クレイジーサイコレズって奴について!」
憧「・・・まぁね」
穏乃「そう・・・。それであんな噂を?」
憧「しずがクレイジーサイコレズの力で学校中をハーレムにする勢いだったから・・・。一応私もクレイジーサイコレズだし、ある程度はしずの影響を抑えられると思ったから・・・」
穏乃「・・・・・・・・・」
憧「な、何?」
穏乃「憧は私の事が好きなの?」
憧「は、はぁ~っ!?な、何をいきなり・・・///」
穏乃「私は憧以外の誰とも付き合う気はないよ」
憧「えっ・・・」
穏乃「憧がこの学校に来てくれて、一緒に麻雀をしてくれるって言ってくれたとき、すっごく嬉しかった」
憧「しず・・・」
穏乃「きっと、無意識にその時に覚醒してたんだと思う・・・。クレイジーサイコレズって奴に」
憧「・・・あの、私」
穏乃「好きだよ、憧。私と付き合おう」
憧「・・・うん♪」
赤土「おい、いい加減起きろ」
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穏乃「次は決勝なんだから寝ぼけてんなよなー」
憧(まさかあれが夢だったなんて・・・。いや・・・でも・・・)
穏乃「憧、まだぼんやりしてんの?ほら、目を覚ませー」チュッ
憧「なっ・・・えっ・・・キス!?えぇぇぇぇっ///」
穏乃「何かおかしい?」
憧「えぇぇぇぇ!?」
玄「そういえば憧ちゃんはまだクレイジーサイコレズに目覚めてなかったんじゃ?」
灼「なるほど」
宥「穏乃ちゃん、でも今ので覚醒したと思う」
穏乃「ならもう優勝は決まりだね」
その日、奈良県は全国麻雀大会を制覇した
全メンバーがクレイジーサイコレズに目覚めた状態だったという
完
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