モバP「代打の神様」 (42)
P「ええ……。すいません。せっかくお声をかけて下さったのに申し訳ないんですが、生憎余所の局での撮影が入ってまして……。いえ! 決して御社を軽んじてる訳ではなくてですね! うちとしても是非アイドルを起用して頂きたい思いなのですが――」
友紀「今日もキャッツのお陰でお酒が美味い!(挨拶)」バンッ
P「しーっ! あ、すいませんこちらの話でして……」
友紀(ありゃ? お電話中かー)
P「……申し訳ありません。どうしても〇日だけは都合が悪くて……」
友紀(〇日ねぇ……)パラパラ
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P「はい。今後とも御贔屓にして頂けたらと。次回は必ず御社に合わせて頂きますので――うわ!?」
友紀「もしもーし」スッ
P「あ、こら友紀! 大事な話の途中なんだから返しなさい!」
友紀「ちょっとプロデューサー黙っててね。あ、はいはい。キャッツ専属応援団長こと姫川友紀ですよー。〇日の件なんですけど、今偶然耳にしちゃって。……ああー、あの子に出演依頼でしたかー。グラビア? あはは、社長さんお目が高いですねー」
P「やめて! せめて敬語でお願い!」
友紀「こっちの方があたしらしいじゃん? ですよねー、あはは」
友紀「で、ですね。もし社長さんさえよかったらあたしを代わりにしちゃいませんかーと思いまして。え? ディレクター? あはははは、またまた。次期社長ってことですよ、にゃはは!」
P(ん?)
友紀「あ、おっけー? あはは、さっすが社長! 器が大きい! こりゃ今から媚び売ってるほうが正解みたいですね。またまたー、そんな謙遜しなくても。うんうん、了解ですよー。それじゃっ、当日は姫川友紀をよろしくお願いしまーす! はい、プロデューサー」
P「え? あ、はい。とんだ御無礼を。本当に友紀で? いえ、こちらこそ有り難い話です。えーと、時間は――」
P「はい、こちらこそよろしくお願いします。では失礼致します」ガチャ
友紀「さすがあたし。自分で仕事を得るとはエースらしあにゃっ!?」スパコーン
P「正座」
友紀「なんでさっ!」
P「いいから正座」
友紀「……せめて体育座りにしない?」
P「正座」
友紀「むー……よいしょ。あたしのお陰で先方との不和も解消されたじゃーん。むしろ誉めるべきじゃない?」ブー
P「口膨らませてもダメなもんはダメ。あの人普段こそ温厚だけどキレたら凄いんだからな!? 頭何回下げたか分かってんの!?」
友紀「電話越しに下げても相手には見えないよ?」
P「自然とやっちゃうの! これサラリーマンのあるある!」
P「まったく……、先方が許してくれたからいいものを」
友紀「なら万事おーけーだね!」
P「な訳あるか! 大体〇日に仕事入ってたらどうする気だったんだよ!」
友紀「ちゃんとスケジュール帳見て確認しましたよーだ。〇日はね……、ほら見て真っ白」
P「威張るな! 仕事取って来れなくてごめんなさい! でも威張るな!」
友紀「にゃはは、謝るか怒るかどっちかにしなよ」
P「ああもう! もう今後は独断でこういうことするの禁止! 分かったな!?」
友紀「はーい。じゃ、正座やめていい?」
P「もう少し反省しとけ!」
友紀「なんでよー」ブー
べつのひ!
友紀「キャッツが勝ったら祝杯挙げなきゃ!(挨拶)」バンッ
P「はいはいおはよう」
友紀「ということでプロデューサー。今晩呑もう」
P「どういう訳だよ」
友紀「キャッツが負けるはずないから。地面に埋もれた星相手に」
P「お前うちのスポンサーに喧嘩売ってんの? あ、ちょい待て。電話だ。はいもしもしCGプロのPです。ああー、いつもお世話になってます!」
友紀(たまには居酒屋で呑みたいなー。プロデューサーとだと宅飲みばっかだし、何人か着いてくるし)
P「……え? 今夜、ですか……?」
友紀「へ?」
P「ああ、あの事務所の……。風邪なら仕方ないですね。え? えーと……クイズ番組でしたか? それに合いそうな子でしたら……」
友紀「……」チョンチョン
P「ん?」
友紀「っ! っ!」ハイハイ
P「……姫川友紀とかどうですか? 今晩は空いてますし。ええ、たぶん珍解答とかも素でやってくれますよ」
友紀「失礼だっ!?」
P「はい、横で聞いてます。あはは、では御迷惑をおかけするかもしれませんがよろしくお願いします。では失礼致します」ガチャ
友紀「迷惑ってなにさ!?」
P「そういうところがだ」
P「でもよかったのか?」
友紀「なにが?」
P「ほら、今日呑むつもりだったんだろ? 最近夜も忙しいからあんまり呑めてないんじゃないか?」
友紀「ふっふーん。あたしの心配してくれてるんだ?」
P「そりゃお前たちの心配をするのが俺の仕事だからな」
友紀「……あたしが、アイドルだから?」
P「ん?」
友紀「なんでもないよーだ。プロデューサーに心配されなくても寝酒に2本と目覚めの1本の日課はちゃんとこなしてうにゃっ!?」スパコーン
P「仕事前に呑むな!」
友紀「そんな! 寝起きに呑まなきゃやる気出ない!」
P「アル中も大概にしろ!」
P「まったく。心配したらこれなんだから……」
友紀「あたしの心配もいいけど、プロデューサーこそ無理しちゃダメだよ?」
P「無理なんかしてないよ」
友紀「……嘘ばっか」ボソッ
P「え?」
友紀「なんでもないーっ! プロデューサー、代役が必要な時はいつでも声かけてよね」
P「いつでもって。友紀だってメイン番組とかあるだろ」
友紀「ダブルヘッダーくらい余裕余裕! なんならトリプルヘッダーだってこなしちゃうよ?」
P「やる気があるのはいいが、無理しない程度にな」
友紀「ユッキの体力はビールで回復できるからだいじょぶだいじょぶ」
P「それはだいじょばない」
……………
…
P「スポーツ選手の体育祭的な番組の司会捜してるってさ」
友紀「キャッツの選手は?」
P「何人かいるらしいぞ」
友紀「おっけおっけ。ユッキに任せなさい!」
P「はいよ」
………
…
P「音楽番組は……興味ないわな」
友紀「これでも年頃の女の子なんだけど!? 音楽くらい問題ないしっ!」
P「……なんでもいいから曲名を挙げよ」
友紀「……闘魂こ〇て」
P「おい」
友紀「大丈夫だって! ユッキにお任せ!」
………
…
P「……料理番組」ボソ
友紀「!?」
P「愛エプみたいな感じだからむしろ適任だと思うけど」
友紀「ヒドいっ!?」
……………
………
…
P「友紀、本番始まるぞ」
友紀「……ふぇ?」
P「大丈夫か? もう少し休憩延ばしてもらうか?」
友紀「んーん……。だいじょぶだいじょぶ……。ちょびーと眠かったからね」
P「ならもう少し寝とけ。30分くらいなら遅らせてもらえるだろうから」
友紀「だめだめー。迷惑かけらんないし、キャッツの試合に間に合わないじゃん」
P「お前は結局それか」
友紀「うへへ。キャッツとお酒のためならどんとこい! だよ。それじゃ行ってくるね」
P「しっかりな」
友紀「もちもちー」
友紀(やばっ。目蓋重い……。こんな時は足を小刻みに動かしてっと……)カタカタ
司会「じゃあ次は姫川さんの故郷自慢を聞かせてもらいましょー!」
友紀「へ? あ、ああそうだなー。やっぱりキャッツの本拠地なのが自慢かなー」
司会「ブレないね!」
アハハハー
友紀「あはは、当然じゃ……ん?」
P「友紀!?」
友紀(ありゃ? なんでスタジオが逆になってんの? ていうかプロデューサーダメだよ。今本番中なんだからこっちに来ちゃ――)
バタッ
友紀「……ここ、どこ?」
ちひろ「病院ですよ」
友紀「うひゃ!? ちひろさん!?」ガバッ
ちひろ「ああもう。まだ横になってなきゃダメですよ。ほら、点滴も抜けちゃうし」
友紀「あ……ごめん。じゃなくて。あたしなんでここいるの?」
ちひろ「そりゃあんな大勢の場所で倒れちゃったらね。生放送じゃなかったのが不幸中の幸いですけど」
友紀「嘘!? そんなドラマみたいなことしちゃったのあたし!?」
ちひろ「過労で倒れるのは現実でもよくありますよ。プロデューサーさんでもあるまいし、あんな激務じゃ倒れても不思議じゃありません」
友紀「あ……プロデューサーは?」
ちひろ「他のアイドルの送迎がありますからね。終わったらすぐに飛んでくるらしいですよ」
友紀「じゃなくてぇ……。あの、ね? あたし……」
ちひろ「……友紀ちゃん」
友紀「な、なに?」
ちひろ「友紀ちゃんはアイドルとして頑張るのがお仕事なの。分かるよね?」
友紀「うん……」
ちひろ「で、私やプロデューサーさんの仕事は、そんなアイドルたちを支える仕事をしているの」
友紀「うん……」
ちひろ「……ちょっと頑張らせすぎたアイドルのために謝るのは、私たちからすれば勲章なの。迷惑かけたなんて思っちゃダメ」
友紀「はい……」ポロポロ
ちひろ「元はと言えば代役をほいほいこなしてくれるからって、友紀ちゃんに頼りすぎたプロデューサーさんが悪いんだから。来たら怒っていいわよ」
友紀「ぐしゅ……。んーん……、あたしが調子に乗ったから……」
ちひろ「調子に乗った、ねえ」
友紀「な、なにさ……」
ちひろ「んー? なんで調子に乗った、じゃないか。調子に乗らざるをえなかったか。ちゃんとプロデューサーさんに言わなきゃ伝わらないよ?」
友紀「へ……? ちょ、ちょっち待った。ちひろさんどこまで――」
ちひろ「はいはいそれじゃあ後はプロデューサーさんが来るまでのんびりしててねー。私も書類の続きしなきゃだし。あー忙しい忙しい」トコトコ
友紀「……」ポツン
友紀(……点滴なんて何年振りだろ。暇なんだよねー、動けないし。テレビでも観よっかな)ピッ
『6回の裏ワンアウト――』
友紀(負けてるし……。おのれ猛虎め。いや、サヨナラのお膳立てかな? さすが宿敵、分かってるね)
『三振! 今日のキャッツのバットは湿ったままか!?』
友紀(うるさい。これからだよこれから。これから挽回して――)
P『……いいんだ。これから挽回すれば』
友紀「!」
P『そのために俺がいるんだもんな。そうだよ、うしっ。誰が負けるかこんちきしょー』
友紀(……プロデューサー。ごめんね。ごめんね……)
……………
…
P「友紀!」ガラッ
友紀「……」
P「な、なんだ……寝てたか……」
友紀「……」
P「なんて言うと思ったか馬鹿たれ。お前が俯せで寝れないのは知ってんだよ」
友紀「……セクハラー」
P「なにがだ。ほら、しんどいだろうけどちょっと起きろ。点滴は終わったのか?」
友紀「随分前に終わったよー」
P「ならいい。ほら、起きろってば。とりあえず栄養食買ってきたから、少しでいいから食べとけ」
友紀「……やー」
P「やー、じゃねえよ。動くの辛いなら食わせてやるから」
友紀「やーだよ」
P「友紀……」
友紀「今は寝たい気分なのー。置いといてくれたら適当に食べるから。ほら、帰った帰った」
P「……ごめんな」
友紀「え?」
P「友紀に甘えてたと思う。お前がどれだけ疲れてるかも把握しないで仕事させてた俺が悪い。本当にごめん」
友紀「ち、ちがっ」
P「これからは負担を軽減するようにするから。もちろん代役でも構わないから仕事したいっていいならちゃんと友紀にも回す。だけど今回みたいなハードスケジュールにはしないから安心してくれ」
友紀「ちがうの、ちがうの!」
P「……すまん。疲れてるのにこんな話題するべきじゃないよな。明日には退院出来るらしいから、また迎えに来るよ。じゃあ、今日はゆっくり休め。おやすみ」トコトコ
友紀「……っ!」
P「……」トコトコ
友紀「こっの! ばかプロデューサー!」
P「へ? のわっ!?」ドスン
友紀「ばかじゃない!? ばかでしょ! わかったばかだ!」
P「人に体当たりして乗り掛かってる奴のセリフかそれ……」ゴフッ…
友紀「間違いなくばかだね。うんばかだ。女心もユッキの心もわからないおおばかだ!」
P「……友紀?」
友紀「ぷろでゅーざーはわるくないのぉ……。わるいのはあだしなんだがら……」ポロポロ
P「……すっげえ目の周り真っ赤だぞ」
友紀「ほらばかだぁ……」グスッ
友紀「もっとあまえてよ……。プロデューサーだけ怒られるなんておかしいんだから……。あたしがんばるからもっと頼ってよぉ……」
P「待て。状況が把握出来ん」
友紀「見ちゃったのー……。プロデューサーが電話で怒られてるとこ……。ひっしに頭さげてさー……。別の日なら、別の日ならってなんかいも言っちゃって……。でもダメだったっぽくて……」
P「あー……。覚えがありすぎて」
友紀「挽回できるって。そのために自分はいるんだって……」
P「……ああ。あったな」
友紀「なんでプロデューサーばっかりならなきゃダメなの!? おかしいじゃん!」
P「分かった、分かったから落ち着け。日本語おかしいしここ病院」
友紀「だからあたしきめたの。プロデューサーができるだけ怒られないようにがんばろーって。自分の仕事はもちろんだし、代役必要なら率先してひきうけよーって」
P「ああ無視ですか。まあ最近頑張ってるなとは思ってたが」
友紀「うん……」
P「ありがと、な」ナデナデ
友紀「……えへへ。ユッキのありがたみに気づいたかー」
P「ああ。まさしくサンキューユッキだ」
友紀「だからこそ、今日はごめんね。結局迷惑かけちゃった……」
P「俺はお前たちのためなら怒られるのだって苦じゃないさ。ましてや俺のために頑張ってくれてたんなら余計にな」
友紀「ヤダ!」
友紀「好きな人がヒドいこと言われてるとこなんか見たくないのっ!」
P「……ワッツ?」
友紀「プロデューサーイジメる人なんかきらい! 迷惑かけるあたしもきらい!」ギュッ
P「ままままま待とうかユッキ。なに言ってんのか分かってんのかお前」キョロキョロ
友紀「好きなの! わるい!?」
P「場所が悪い。文屋はいねえよな!? 金曜日はいないよな!?」
友紀「しるかそんなもん!」
P「やだ男気溢れて素敵。でもマズい。出るぞ、早々に帰るぞ!」
友紀「だれがはなすかあ!」
P「俺も堪能したいけど今は勘弁。ほら、行くぞ」
友紀「やー!」
P「ああもう好きにしろ!」オヒメサマダッコ
……………
…
ちひろ「なんというか、うん。お疲れ様でした」
P「いやもう本当に。途中でこいつ寝るし、そのくせ離さないし」
友紀「すきー……」スピー
ちひろ「まああの病院はうちの掛かり付けですから情報規制は頼んでおきますよ。どうせ何人かには見られてるでしょうけど」
P「本当に申し訳ない……」
ちひろ「謝る相手が違うのは分かってますよね?」
P「えーと……、はい」
ちひろ「よろしい。じゃあ早く家まで送ってあげなさい」
P「え? 俺んちで」
ちひろ「ふざけたこと言ったらエナンザム化させますよ」
P「……すいませんでした」
ちひろ「よろしい」
P「たく……。いくら軽いっつったってこの体勢で運ぶの大変なんだからな?」
友紀「うーん……」
P「そんな苦労知りませんよね。はいはい、頑張ってくれたお礼に俺も頑張りますよ」
友紀「ぷろでゅーさー……」
P「あーもう。このまま連れ込みたいよこんちくしょう」
友紀「えへへー……」
P「ん? 待て。近い顔が近い避けれないんだぞこの体せ――」
チュッ
P「…………」
友紀「らいすきー……えへへ」
P「たくもう……。このおてんば娘め」
いつかドラ1に指名してやるから、それまで待ってろ。
うん!
おわりん
ごじつだん!
司会「友紀ちゃんはポジションどこがいいの?」
友紀「やっぱりピッチャーかなー。これでもリトルリーグで活躍してたんだから!」
司会「格好いいねー。女性ピッチャーって華もあるし」
友紀「でしょでしょ!」
P(あれから特にそんな関係にもならず、今までどおりの関係を保ってる。仕事に関しては、前よりも控えめに。でも代役もこなしてる。この番組みたいに友紀に合うのだけにしているけど)
友紀「でも今は代打かな」
司会「代打!? 渋いね。またなんで?」
友紀「ふっふーん」
P(――ん? なんでこっち見てんの?)
友紀「ここぞという場面できっちり決めたいからね!」パチッ
ほんとのおわりん
ひゃっはー終わったー。
夜中に涙目ユッキ様が光臨して勢いで書いた。後悔はしてない。する気もない。
取り敢えず今年の抱負はユッキ主役SSを10本以上書く事。
予定は未定。でも頑張る。
お付き合い感謝ですよー。
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