和「ーーー理想を抱いて溺死しろ?」(176)

立たないはず。

立ったからコレ↓の続き。

咲「えっ、聖牌戦争…?」

――――― ???


『久、ウチを連れて逃げてぇな!! もうウチにはアンタしかおらんのや!!』

『…無茶を言わないで洋榎。私だって貴女を愛しているわ。でも…』

『…ええわ。久に捨てられたら生きてる意味なんてあらへん、いっそ道頓堀にでも飛び込んで…』

『待って洋榎! わかった、わかったから落ち着いて!! 大丈夫、私が貴女を置いて行く訳ないでしょ』

『ホンマか!? やっぱ腹割って話せば人間分かり合えるもんや… 久……?』

『………えっ?』ザクッ

『ざ、ざまあ見さらせや、おねーちゃんを惑わすこの泥棒猫がァッ!!』

『絹ッ、アンタ何してんねん!? 久、しっかりせぇや!!救急車、救急車や!!!』

『…これで、これで終いや!ウチとおねーちゃんを邪魔する奴はみぃんな消したったで!! あはははははは』

『久、しっかりせぇや!! なぁ、目開けてぇな!!』

『痛い…、寒い…… 何よ、何なのよコレ? 嘘でしょ、こんなの嘘でしょ? こん…なのって……』

―――――


ランサー(…何故今頃になってこんな記憶が)

福路「・・・ねえうえのさん、きいていますか?」

ランサー「…失礼しました美穂子様。このランサー、必ずやセイバーの首級を捧げましょう」

池田「そんなの今更誓うことじゃないし! ったく、こんな時に集中を欠かすなんて大丈夫なのかよ?」

ランサー「申し訳ございません… 時に主よ、戦いに臨む前に一つだけこのランサーからご忠告が」

池田「なんだよ …まさか臆病風に吹かれて戦いが怖くなったとでも?」

ランサー「いえ、セイバーとの闘いが始まりましたら御身を御護りすることが叶いません」

福路「ええ、それはしようちしています。うえのさんはたたかいにしゆうちゆうしてください」

ランサー「…ハッ、セイバーのマスターが策を弄してくるとは思えませんが、その間はくれぐれも御用心を」

池田「そんなこと、お前に言われなくてもわかってるし! …でも確かに危ないですから、キャプテンは離れていてくださいね」

福路「そうね、上埜さんの足手纏いにはなりたくないからそうするわ。 …あら、相手の人たちが来たみたいね」

和「…どうやらランサーたちは既に到着していたようですね」

セイバー「うん。和はここで待っていて。 …待たせたな、ランサー」

ランサー「気にしないで。待たすことはあったけど、逆はなかったからおかげで貴重な経験ができたわ」

セイバー「そう…、でも礼には及ばない」

ランサー「…いいえ、貴女にはちゃんと御礼を言っておきたいわ。勝負を受けたくれた礼を」

セイバー「…そんな必要はない。こちらも正々堂々とした闘いに臨めて嬉しい」

和(あのランサーのサーヴァント、昼間とは雰囲気がだいぶ違う… セイバーさんは大丈夫でしょうか…)

ランサー「それは良かったわ。 …それじゃあ邪魔が入らない内に始めましょうか、チャンピオン?」

セイバー「ああ、いつでも構わな… ……ん? こんな時にアイツ、一体何をしに?」

ライダー「待て待て待て~ まさかお前たち、ここで本当に闘うつもりか~?」

ランサー「…ライダー、貴女も雀霊の端くれならば勝負に水を差す無粋な真似は止めてくれない?」

セイバー「ああ、これは私とランサーの勝負。邪魔立てするのなら容赦はしない…」

まこ「そうじゃそうじゃ! コイツらが潰しあった所をワシらが叩くんじゃなかったんかい!?」

ライダー「最初はそれでもいいかなぁ~、って思ってたけどコイツら本気で決着つけるみたいだからなぁ ワハハ」

まこ「それのどこがイカんのじゃ? 勝手に潰しあってくれてワシらは万々歳じゃ… ぷげっ?!」ベチン

ライダー「全くこのワカメは… いいか、お前も麻雀部の部長なら有能な雀士はもっと大事にしろ~」

ライダー「…っていかんいかん、また話がそれちゃったぞ。 でな、セイバーとランサー。ちょっと私の話を聞かないか~?」

ランサー「 何よぉ? そこの子が言ったみたいに漁夫の利を掠め取ろうってなら本気で怒るわよ」

ライダー「あ~、そんなことする訳ないだろ~ そんなことより二人とも、私の軍門に下る気はないか~? ワハハ」

セイバー「は…!?」

ライダー「そしたら私はお前たちを友として遇し、雀士として世界を征する快悦を共に分ちあうぞ~」

ランサー「…貴女、それ本気で言ってる?」

ライダー「本気に決まってるだろ~ ワハハ」

セイバー「…そんなふざけたことのために私とランサーの勝負を邪魔したとは、度が過ぎるぞライダー」

まこ「おい、何が『私に任せろ~』だ!! お前、あいつらを手下にできるって言ったのは何だったんじゃ!?」

ライダー「…あ~、ほら何でもやってみないとなぁ~」

まこ「こんのどアホぉがあぁッ!!」

ライダー「ワハハ~、済まん済まん。 …じゃあ、もったいないけど諦めるとするか。邪魔して悪かったな二人とも~」ドサッ

ランサー「…ねぇ貴女、そんなとこに座って何しようしてるの?」

ライダー「…ん? お前ら、これから闘うんだろ? こんな面白い勝負、見逃す訳にはいかんだろ~」

セイバー「…ねぇランサー、貴女との勝負の前にアイツを始末していい?」ギュルルルル

ランサー「…ほっておきましょ。これ以上、アレにつきあっていたら時間が勿体ないわ」

セイバー「…それもそう。じゃあ気勢が削がれたけど」

ランサー「…ええ、始めましょうセイバー」ダッ

まこ「なっ、なんちゅう速さじゃアイツら…」

ライダー「…ああ、嬢ちゃんはサーヴァント同士が本気で戦うのを見るのは初めてか~」


ランサー(…クッ、まさか一合ごとに威力が増すってどういうことよ? 全く、とんでもない相手ね)カキン

セイバー(…初撃から必殺の手を出したつもりだったのに、こうも捷いと…)キィーン


和(す、凄い… セイバーさん、初めて会った学校の時よりも数段に動きが良い…)

池田(おいおい、ランサーの奴は大丈夫かよぉ~? なんか押されてる気がするしぃ!!)


ランサー(…この圧力にどこまで凌げる?耐えれるッ?? いや、躱せる… 合わせられるッ!)キン

セイバー(…照魔鏡でも映りきらなかった能力がランサーに有る? まさかここまでの打ち手だったとは…)カキン


まこ「今のとこ互角、っちゅうとこかいのぉ…」

ライダー「……いやぁ、どうだろうなぁ~」

ランサー(…想像よりも通用する。なら、あからさまに力を溜めてる右手がこない内に)

セイバー(読み難い… 定石通りの打ち合いに応じたと思ったら、いきなり訳の分からない手を繰り出す…)


ライダー「…火力なら間違いなくセイバーだろうけど、アイツの能力は全体系だからな~」

まこ「…それがどうしたっちゅうんじゃ?」

ライダー「対するランサーの能力は火力は劣る。けど、より対個向けの能力。純然な一対一ならこの差は大きいぞ~」


セイバー(当たりさえすれば今の右腕でも一発で… けど今の私や和の体が… いや、そもそもあの速度に当てれる?)

ランサー(…頃合いかしらね。 奥の手隠して勝てる相手じゃないでしょうし、先手を取って仕掛けられる内に)クッ

ランサー「…いくわよセイバー。その首、貰い受けるッ!!」


――――――――― ココイチバンデノ・ワルイマチ
              鼎刻に悪待ちの横槍 ―――――――――



セイバー「……ッッ!?」パリィィン

ランサー「……外した?」

和「セイバーさんッ!?」

池田「…な、何だ今のは? 正面から突いたはずなのに真横から穂先が出てきたし!?」

まこ「物理法則もへったくれもないのぅ… それに今の何か割れる様な音はなんじゃ?」

ライダー「う~ん、私たちには見えない宝具でもセイバーが発動させてて、それが破壊されたんじゃないか~?」

セイバー「照魔鏡が…」

ランサー「ふぅん、命拾いしたわね… どうやら私の槍は見えない宝具の雀力に反応して外しちゃったってことかしら?」

池田「……や、やるじゃないかランサー! 勝てる、これなら勝てるし!!  …ん、何だこのメモは?」ピラッ


          『福路美穂子を殺したくなければ、声を立てずに後ろを見るっす』

池田(……ッッ!? キ、キャプテン!?)

福路「ン~!!ンンッん~!!」

アサシン「……」ピラッ

池田(あいつはアサシンのサーヴァント! これは…、に、二枚目のメモ? 読めってことか??)


       『ランサーのマスター、池田華菜に告ぐ。人質を解放したければ速やかに以下の行動を取れ』

                『残り令呪全てを費やして己のサーヴァントを…』


池田(…実行すればキャプテンを解放するだけでなく、私にも一切手を出さないってある…)

池田(こんな絶好の機会を捨てるのは正直惜しい… けど、キャプテンや自分の命には代えられないし!)

池田「ランサーよ、令呪をもって命ず……」


池田「 自 決 す る し !! 」

ランサー「………ッ??」グボッ

ライダー「…これは?」

セイバー「なっ…!?」

和「ど、どういうこと…、ですか…?」

まこ「なんでじゃ? なんで押していたランサーが…?」

ランサー「……な、なんで? どういうことよ、マスター…?」ギロッ

池田「あ、あ… だ、だってキャプテンが人質になって… 仕方ないし…」ガタガタ

セイバー(…そこから動かないで、和。私たちの闘いを見物してたのはライダーだけじゃなかった)

和(えっ? は、はい…)

ライダー「ふむ、そういうことかぁ~ …ん、ワカメの嬢ちゃん悪いなぁ~」

まこ「…あん?なんじゃ急n ほげっ!?」ベチン

アサシン「…しくった?」スカッ

ライダー「ワハハ~ 幾ら姿を消しても、風上から仕掛けたら臭いでわかるぞ~」

和(アサシンのサーヴァント!? あの人は夜の学校でセイバーさんが確か…?)

セイバー(…ステルス能力で消えただけで倒された訳じゃなかった、ってことみたい)

ライダー「やっぱりモモだったかぁ~ …ってことは、いるんだろユミちん?出て来いよ~」

ゆみ「……やれやれ、まさかあの蒲原に見透かされるとはな」スッ

池田「お、お前は去年の鶴賀にいた加治木ゆみ?」

ゆみ「フン… 口のきき方に気をつけろよ、貴様。サーヴァントを失ったお前はもはや無力であることを忘れるなよ」

ランサー「おのれぇぇッ、貴様が人質を取るような姦計を謀った …カハッ?」グサッ

アサシン「……死にかけのサーヴァントはとっとと消え失せるっすよ」ニィ

ランサー「許さない… 雀士として正々堂々と闘う。私のたった一つの願いすら踏み躙った貴女達を…」シュウウゥ

ランサー「絶対に……、許さ…ない……」シュン

セイバー「ランサー…」ギリッ

福路「うわああああああああああ!?!?!?うえのさんうえのさんうえのさんうえのさん!!!!!!」

ゆみ「フッ、雀霊ともあろう者がみっともない恨み言を。…何か言いたそうだな、お前たち?」

セイバー「この外道共… 雀士の誇りある闘いを汚すとは最早許せん。叩き斬ってやる!!」

アサシン「おっとセイバーさん、下手な真似はしない方がいいっすよ。アンタたちの本拠地はもう把握してるっすからね~」

和「…!?」

ゆみ「出て来い原村和…、お前がセイバーのマスターであることも先刻承知している」

和「……卑怯ですよ、加治木さん」スタスタ

ゆみ「これは戦争だ、卑怯もへったくれもなかろう? 家族と自分の命が惜しければお前もセイバーを自害させろ」

セイバー「……ッ!?」

アサシン「ライダー陣営さんたちは文句はないっすよね? 勝手に競争相手が脱落するんっすから」ニヤニヤ

まこ「…おい、ライダー」

ライダー「…うん。 ああ、ユミちんの言う通りこれは戦争だからな。別にお前たちを卑怯とは思わないぞ~」

ゆみ「ほぅ、蒲原のわりには物分りがいいじゃないか。あのお荷物も違う世界では少しは使えるのだな」フッ

アサシン「この世界の元部長さんもダメダメなんっすか? 全く、あの人が雀霊になれるってどんな世界なんっすかねぇ」ククッ

ライダー「……そっかぁ。お前たちの世界じゃ私たちは仲良しじゃなかったのか~」

ゆみ「ふん、私があの蒲原と友誼を結ぶなど冗談にも程がある。どんな世界であろうと有り得る訳なかろうが!」ククク

まこ「…あんガキやぁ、調子こきおって」

ライダー「嬢ちゃん、部長たる者この程度で自分を見失うな~ ……うん、決めたぞ~」

――――――――――


まこ「……な、なんじゃこれはッ!?」

和「こ、ここはインターハイの会場!? 観客までいますし、一体何が…」

セイバー「これは固有結界…!? 心象風景の具現化なんて大魔術をどうしてライダーのクラスが?」

ライダー「…ここは我が鶴賀がIH初出場・初優勝を遂げた会場」

ライダー「私と共に奇跡を成し遂げた友が等しく心に焼き付けた心象だぞ~!!」

ゆみ「なっ…!?」

間違えた。>>24の前にここだった



アサシン「…決めたって何をっすか?w」

ライダー「違う世界とはいえ見知った顔だし、我慢ならない策でもないから手出しする気なかったんだけどな~」

ライダー「…でも、お前たちのその下卑た笑い見てたら私の大事な仲間まで汚されてる気がしてきたんだ~」

アサシン「はぁ?」

ライダー「だからもうお前たちの顔は見たくないから……」


ライダー「こ こ で 消 え 失 せ ろ ~!」



ゆみ「…今回召喚された雀霊の中で最弱のサーヴァント風情がずいぶん大きな口を叩くものだな」

ライダー「ああ、私自身には大した能力はないからな~ でも、この唯一誇れる私たちの絆は絶対無敵だぞ~!!」

ドンンッ

『お聞きください、この大歓声!! 最後に入場するのは今大会、台風の目となっている鶴賀女子だ~!!』

『準決勝で優勝候補の千里山と臨海を退けたあの見事な勝負をこの決勝でも是非見せてもらいたいですね』


\ ワーワー / \ ヤッパリツルガガナンバーワン! ヤッパリツルガガナンバーワン!! / \ ワーワー /


ライダー「見よ、私たち無双の鶴賀学園を!! 身も魂も喪っても、消える事のない絆で結ばれた伝説の面子を!!」

津山「……」 妹尾「……」 東横「……」 加治木「……」

まこ「…こ、こいつら、一人一人がサーヴァントかい!?」

ライダー「――――――――これこそが私の至宝。蒲原智美が誇る最強宝具」



―――――――――― ウチオトセバイイノダロ・アイツラヲ
                  頂きに立つ永久の絆 ――――――――――

ライダー「…部長とはッ ――― 誰よりも鮮烈に生き、諸人を魅せる姿を指す言葉だぞ~!」


津山・妹尾・東横・加治木「「「然り!然り!然りッ!!」」」


ライダー「すべての部員の羨望を束ね、その道標として立つ者こそが、部長。故に~~!」

ライダー「部長は孤高にあらずッ! その意思は全ての部員の志の総算たるが故に!!」


津山・妹尾・東横・加治木「「「然り!然り!然りッ!!」」」


まこ「こ、これが本物の部長たる者の姿…」

ライダー「…さて、そこのユミちんとモモ、覚悟はできているかぁ? ……蹂躙しろッッ~~!!」

ライダー・津山・妹尾・東横・加治木「「「「ワ~ハハハハハハハハハ~!!」」」」

アサシン「ヒッ!?」

ゆみ「……フッ、まさか蒲原に足を掬われるとはな」


―――――――
――――――――――――――
――――――――――――――――――――

和「IHの風景とアサシンたちが、消えた…」

ライダー「…やれやれ、セイバーよ折角の一騎打ちも邪魔が入って興醒めしちゃったなぁ~」

まこ「…そこにおる風越のお二人、どうするかいのぅ?」

セイバー「令呪全てにサーヴァントも失ったマスターなど、もはや何の脅威にもならない。ほっておけ」

ライダー「うん、では今宵はここまでしておくか。行くぞ~、ワカメの嬢ちゃん」

まこ「…お、おう」

ライダー「セイバー、今度会う時はその右腕の力をとくと見せてもらうぞ~ ワハハ」

セイバー「…ああ。 …最後に一つ聞いておきたい。 ライダーよ、お前は一体どんな祈りを聖牌に託す?」

ライダー「…ん? ああ、私は生前果たせなかった約束があるからなぁ。今度こそ皆で行きたいんだぞ~」

セイバー「聖牌に託すほどの約束…だと?」

まこ(…約束? 全国制覇まで成し遂げたコイツが果たせん約束って一体何じゃ?)

ライダー「ああ、私の生涯でたった一つの心残り。この千載一遇の機会、是非とも生かしたいなぁ~ ワハハ」

セイバー「…残念だが貴様のその祈り、叶うことはない」

ライダー「そうかもなぁ~ ま、でも何事もやってみなきゃ分からんぞ。 …それでセイバー、お前は?」

セイバー「…えっ?」

ライダー「鈍いヤツだなぁ~ 祈りだ、祈り。お前はこの戦いの暁に何を望むんだ~?」

セイバー「……私は」

ライダー「…お前も訳有りみたいだなぁ~ まぁいいさ、次に会う時を楽しみにしてるぞセイバー」ブロロロロ

まこ「おい、ちゃんと前見て運転せんかい、このどアホが!!」

和「次に会う時…」

セイバー「…ああ、それは奴と決着をつける時になると思う」

和「染谷先輩と決着、ですか…」

―――――


『姫様と霞さんは本当にいつまでもお綺麗ですね。羨ましいです』

『本家の人たちはずるいですよー 私たちにもその秘術の力が欲しいですー』

(時間とは人間にとって等しく過ぎる物である)

『…初美ちゃんもある意味、いつまでも変わらない』ポリポリ

『ムッ、どういう意味ですかー? そう言う春ちゃんは黒糖の食べ過ぎで近頃はだいぶ体型が崩れきたんじゃないですかー?』

(…だが、生まれつき超常の血が流れる私達にとってそれは当てはまらなかった)

『はいはい、みんな子供じゃないのですから喧嘩はしないの。ねぇ霞ちゃん?』

『…ええ、みんな久しぶりの姫様の御前だからってはしゃいではいけませんよ』

(しかし、その血の濃さから生じる違いは歳を追う毎に、明確で残酷な事実を突きつけてきた)

(募る理不尽な嫉み。受け入れ難い現実)

(……そして、私は)

―――――

はやり「…キャスター、どうしたのぉ? 奴等、もう工房に侵入してきてるのに~★」

キャスター「…失礼しました、我がマスター。術の展開に集中していて散漫になっていました」

(この永久の若さと美貌を求めるマスターに召喚されたのも皮肉にも必然だった、ということでしょうか…)

キャスター「ですがご安心ください、美しきマスター。これも全て予定通りですから」ニコッ

はやり「ええ、そうなのぉ? でも相性的にキャスターと三騎士じゃ、直接ぶつかるのってマズくなぃ~★」

キャスター「ええ、通常でしたら。 …ですが奴等は警戒すべきセイバーとは別行動の様子」

はやり「どうやらセイバー組はランサーたちとの闘いに臨んだみたいだねぇ★彡」

キャスター「…ええ。 そして、あのアーチャーはクラスには見合わぬ雀力しか持ち合わせておりません」

はやり「…じゃあ、これはむしろチャンスってことぉ~?★彡」

キャスター「…はい、正しく絶好の好機。 奴等をここまで引き寄せ、確実に仕留めてご覧にいれます」

―――――

アーチャー「……出来過ぎているな」

咲「どうしたんですか、アーチャーさん?」

アーチャー「キャスターの工房に乗り込んだというのに、ここまで一切の罠がない…」

咲「…罠?」

アーチャー「ああ、あのような大規模な雀力蒐集を行える者が自分の工房に何の備えを施さないとは思えん…」

アーチャー「僅かながらあった、あからさまな罠を回避してここまで侵入してきたがこれも奴が意図した事なのか?」


キャスター「…へぇ、弱小サーヴァントでもアーチャークラスだと危機回避スキルを有しているのかしら?」

はやり「ま、貴女たちが使い魔で追跡させていた時点からキャスターの意図通りだったんだけどねぇ~★」

アーチャー「キャスタアアァァァッ!!」ビシュツ

キャスター「 」スカッ

はやり「はっずれぇ~♪ こんな場所でわざわざ実体を晒す訳ないのにぃ~★ ホント、駄目な弓兵さんだねぇ★彡」

キャスター「もう貴女達に引き下がる道も迂回する場所もありません。観念してこちらまで来てもらいます」ニコッ

咲「アーチャーさん…」

アーチャー「……」

キャスター(……うん、この人まさか?)

咲(…凄い、ここまでアーチャーさんの読み通り展開している)

―――――

アーチャー「…咲、恐らく工房では我等を阻む障害はないだろう」

咲「え、なんでそんなことが分かるんですか?」

アーチャー「奴等が最も警戒している筈のセイバーがいない今、私を葬る絶好の機会と考えてるだろう」

咲「でも、アーチャーさんも三騎士なんだから確か相性的には…」

アーチャー「ああ、相性では私が有利だ… しかし、残念ながら私の雀力はキャスターのそれよりも大きく劣る」

咲「え、そうなんですか?」

アーチャー「そうだ。私の雀力はライダーやアサシンと比較すれば確かに優れてはいるだろう」

アーチャー「…だが、アーチャークラスとして召喚される程の雀格とは言えないのが実情だ」

咲「…それは私がマスターとして至らないからですか?」

アーチャー「いや、咲に咎など全くない。 まぁ、奴等も力量差については十二分に理解しているだろう」

アーチャー「…だからこそ、あえて奴等の思惑に乗ったふりを装いその隙を突く。これが現状、最も効率のいい策だ」

咲「じゃあ、さっき言った私が同道するのも…」

アーチャー「…ああ、奴等の真なる目的が予想通りなら君が存在が勝利を確実にしてくれる」ニィ

―――――

アーチャー「…姑息な策を得手とするキャスター如きが自ら姿を晒すとはどういう風の吹き回しだ?」

キャスター「貴女程度の弓兵を畏れる必要がどこにあります? 汚れ仕事の掃除屋さん♪」ニコニコ

はやり「掃除屋?」

キャスター「はい。そこの弓兵、雀霊の座に招かれる程の力を持ち合わせておらぬ元は卑しき者として名を耳にしたことが」

咲「えっ、アーチャーさんが?」

アーチャー「……」

キャスター「…そう、世界と契約し“守護者”としてその手を汚した代償として雀霊に成り上がったとか」

はやり「へ~★ じゃあ、そこの弓兵さんは出来そこないの雀霊さんなんだぁ★彡」

咲「アーチャーさん、あの人達が言ってることは本当なんですか…?」

アーチャー「……ああ、確かに私は世界に招かれた奴等と違う」

アーチャー「数多の世界で雀士の守護者として命を救い、そしてそれ以上の命を奪ってきた…」

咲(…アーチャーさんがそんなことをしていた人だなんて)

キャスター「ええ、本来万能の願望器たる聖牌に近づくことすら許されぬ祈りを持たざる者。違いますか、アーチャー?」

アーチャー「そうだな、抱いた祈りなどとうに忘れた。もはやこの胸中にあるのは呪いなのかもしれんな」

アーチャー「――― だからこそ、やっと巡ってきたこの忌まわしい輪廻から解放されるのなら、私は手段を選ぶ気はない」

咲「アーチャー…さん…?」ゾクッ

キャスター「うふふ、やっと真情を吐露しましたね。貴女のような下賤の者が騎士気取りなんておかしいと思いました」ニヤリ

はやり「…ふぅん、じゃあ弓兵さんがわざわざここまでマスターを連れてきたのも看破した上でなんだぁ★彡」

アーチャー「…貴様等が雀力だけではなく生命力も蒐集し、そして失敗した時から大体の見当はついていた」

キャスター「そう、我がマスターの望みは永遠の若さとその美貌を保つこと」

はやり「聖牌に託さずとも叶える手段がある。でも、その為には大量の雀力と生命力が必要…」

アーチャー「…そして、企てに失敗した貴様等が憑代として最も雀力に優れた咲に目をつけるのは必然だろう?」

キャスター「あらあら、そこまで見通していたのに貴女たちだけで乗り込んでくるなんて自信過剰が過ぎるんじゃ?」クスクス

はやり「もしかしたら、あの学校での力を本気だと勘違いしちゃったのかなぁ? 弓兵さんはそそっかしなぁ~★彡」

キャスター「いいでしょう。ここで貴女を打ち倒すの容易いですけど、猟犬としてはまだ利用価値があります」

キャスター「…そのマスターをこちらに差し出すのならアーチャー、貴女を最後の相手になるまで見逃してもいいですよ」ニコッ

はやり「単独行動スキルってのがあるんでしょ? なら弓兵さんにはまだチャンスは残されてるんじゃないのぉ~★」

アーチャー「私は脱落したマスターと再契約すればいいだけだからな。 …ふむ、そう悪くない話だな」ギロッ

咲「えっ… 嘘でしょ、アーチャーさん…?」

アーチャー「…さて、魅力的な誘いだがどうしたものかな。裏切るのは君ほど長けていないのでなかなか悩む所だ」ニヤリ

キャスター「……ッ!?」

はやり「…裏切り? どうしたのキャスター?★彡」

アーチャー「…ん? どうやらマスターに素性を教えていなかったのは私だけではなかったようだな。主殺しのキャスターよ」

咲「…主殺し!?」

キャスター「あ…、貴女どうしてそれをッ…?!」ワナワナ

アーチャー「伊達に幾多の世界を巡ってきた訳ではない。これだけの大魔術を使える者など限られているからな、裏切りの巫女…」

はやり「…ねぇキャスター、どういう事ぉ? あの弓兵さんの言ってることは本当なのぉ~★」

キャスター「マ、マスター、あれには訳が!! い、いえ、これは出鱈目で戯言に耳を傾けては… ッ!?」ガバッ

はやり「キャスター!?」

咲「アーチャーさん、何を!?」

アーチャー「チィッ、魔術展開が間に合わぬ間隙を体を呈して防ぐかッ?!」

咲(アーチャーさん、いま躊躇せずキャスターのマスターを狙った…)

キャスター「貴女という人はどこまでも卑怯な手をッ!! もはや生きては返れぬと知れェッッ!!」グワッ

アーチャー「クゥゥッ!!」ビシュッッ

咲(出来る限り人を傷つけない。そう約束したのに… 私はあの人を信じていいのかな…)

―――――――
――――――――――――――


キャスター「もはや雀霊として最低限の誇りすら失った、いや元々持ち合わせていないのでしょうね、この鼠賊は…」ハァハァ

アーチャー「……ァ、…くハッ」ゼェゼェ

キャスター「…貴女はじっくりと嬲り殺したい所ですが、もはや一刻もその汚らわしい貌を見たくはありません」

アーチャー(くそッ… まさかここまで圧倒的な力量差があるとは誤算だった… かくなる上は……)

はやり「キャスター…」

キャスター「申し訳ございませんマスター。折角手中にした雀力源ですが、これは諦めて頂きます…」

アーチャー「…キャスター、貴様何を…?」

キャスター「…貴女のような汚らわしき者の痕跡は地上から一掃します。まずは貴女のマスターから…」

咲「…えっ!?」ガクブル

キャスター「そこで己がマスターの末路を眺めてることしかできぬ自分の非力さを嘆き、絶望だけ抱いて消えなさい」

アーチャー「…や、止めろ。咲には手を出す…… ッッ…!?」

「…戯け。身の程を違えたな雑種」


ドンドンドン


キャスター「なっ…!? マスターッッ!!」ザシュ

はやり「え?えッ?? キャスタぁ……?」

衣「道化共の足掻きを最後まで見届けるのも一興であったが… 己が分別を弁えぬか、魔術師風情がッッ!!」

咲「衣…ちゃん……?」

衣「…咲は衣の物である。これに手を出す輩にはそれ相当の罰を与えばな…」

衣「やっちゃえ、バーサーカー!!」

バーサーカー「■■■■■■■■■■■―――!!」ビシュッ

キャスター「………ァ …ッッ」ザクザクッ

はやり「キャスタアァァァツッッ?!」

キャスター「……ご、ご無事ですか…、マスター…?」ハァハァ

はやり「キャスター……!? うん、うん、私は大丈夫だからッ!!もう喋らないでッ!?」

キャスター「……良かった。…やっと、やっと望みが叶ったのですね……」スッ

はやり「…望み? キャスター貴女の望みって、祈りって何だったのッ!?」

キャスター「姫様を…、手にかけた罰を…… そして…、今度こそ主に…最期の瞬間まで御傍に……」スウッ

はやり「キャスター…、貴女はッ……!?」

キャスター「私ばかり叶ってしまって… ごめんなさいマスター…  姫様……」スウウウッ

はやり「キャスタぁぁっ~~!!!」ウワァァァン

衣「さて、これで衣の物に手を出す不届き者は失せたが…」

アーチャー「……ャ…め、さ…きは」

衣「死にぞこないの雑種が二匹か… 哀れを乞えばせめてもの慈悲で楽にしてやっても構わぬぞ?」

バーサーカー「―――□□□□□□□□」

はやり「…あ、あわわ」ガクブル

咲「止めて、衣ちゃん!」

衣「……ん、どういう料簡だ咲? いかに咲と言えど衣に指図するとは厚顔無恥にも程があるぞ」

咲「指図とか、そんなんじゃないよ… 衣ちゃんは私が目的なんでしょ? いいよ、どこにでも連れて行っても…」

咲「…でも、その代わり瑞原プロとアーチャーさんには手を出さないで!!」

アーチャー「…さ、咲、止めろ」

衣「ほぅ、この衣に取引を突きつけるとは… 増長もここまで過ぎると快いな、咲よ」

咲「ううん、違うよ… これはお願い。 ここにいる誰も、衣ちゃんたちには敵わない」

衣「…当然だな」

咲「…聖牌も諦めてる。あんなもの、衣ちゃんたちが好きにすればいい… だからせめて二人の命だけはッ!!」

衣「…ふむ、もはや興も醒めた。その嘆願聞き遂げてやろう。 だが、そこの狗は慈悲をかけた方が幾分か良かっただろうに」

咲「…えっ?」

衣「その紛い物は最早助からぬ。そこで地を這いながら息絶えるのが終尾であろう」

アーチャー「……」ゼェゼェ

咲「じ、じゃあ治療だけで…」

衣「成らぬ! 衣の寛容を安く見るなよ、咲ッ!! 生殺与奪は全て衣の股掌の上である旨、努々忘れるな…」ギロッ

咲「……(これ以上、衣ちゃんの機嫌を損ねたら瑞原プロも…)」コクッ

咲「ごめんなさい、アーチャーさん… 私は…」ポロッ

アーチャー「…止めろ、咲 龍門渕には…行っては……」ハァハァ

咲(酷い出血… このままじゃ本当にアーチャーさんが……)ベトッ

衣「ふん、幾何も無く地上から消え失せる狗に憐憫をかけるとはお前らしい。別れが済んだのなら行くぞ、咲!」

バーサーカー「□□□□□□□□―――…」

咲(もう私の力じゃ何も… お願い、どうか運がアーチャーさんの味方をしてくれますように…)スッ

アーチャー「……さ、さ…きぃ」ガクッ

―――――


『菫ちゃんはどんな大人になりたいの?』

『わたしはね、おおきくなったらまほーしょうじょになるんだよ!!』

『…魔法少女?』

『うん! あいとゆうきのまほーしょうじょになって、こまってるひとをたすけたりするの!!』

『そう、素敵な夢だね。うん、信じていればきっと叶うから頑張るんだよ』

『うん、すみれがんばる!!』

―――――――――


『…だから言いたくなかったんだ。でも、あんな笑うこともないだろうに』

『仕方ない。私だって弘世さんがあんな可愛い夢を持ってるなんて意外だった』

『自分だって高校生にもなって魔法少女なんておかしいのはわかってるさ…』

『そう?素敵な夢だと私は思うけどな』

『…宮永?』

『う~ん、つまり魔法少女って要は正義の味方でしょ?人の為に生きるって立派だと思う』

『……人の為に生きる、か。 そうか、私は正義の味方になりたかったのか…』

『頑張って弘世さん。いつか素敵な正義の味方になるの、私楽しみにしてるから』

―――――――――――――――


『…でも、もう決めたから。私達だけじゃない、沢山の人達がこのiPS技術の完成を待ってるの』

『だからと言ってよりにもよって照が… まだ臨床実験の段階なんだろう?危険すぎる!!』

『…ありがとう。けど、急がないと可能性すらなくなっちゃうって原村先生も言ってたし』

『…安静にしていたらまだ十分に保つさ。その間にもっといい治療方法を…』

『ううん。わかるの、自分の体だもん。 …私も菫とずっといっしょに生きていたかった』

『…気弱なこと言うのはよせ! そんな気持ちじゃ治る物も治らなくなる』

『ごめんね。 …でも、これが成功したら、私と菫の血をひく子だって夢じゃないんだよ?凄く素敵じゃない』

『……』

『…泣き虫だもんね、菫は。 …でも私達の子がいたら、…私がいなくなっても寂しくないでしょ?』


『……だから、もう泣かないで』

―――――――――――――――――――――


『…済まない。咲が帰ってくるまでは、と約束したのに果たせなかった』

『…ううん、菫さんが謝ることじゃないですから』

『皮肉な物だな。原村が作り上げた人々の希望が、私達から希望を奪うのだからな』

『…誰も何も悪くなんてないです。ただ…、ただ、お姉ちゃんはこういう運命だったと思うしか…』

『……こんな結末が運命だと言うなら私は認めたくない。 あの時にもっと反対しておけば、照は…』

『…菫さん、もう自分を責めないでください。きっとお姉ちゃんだって同じことを言うと思います』

『…照が?』

『はい。お姉ちゃんと約束したんですよね?自分がいなくなっても後悔なんてしないって… だから…』

『照… 照との…約束……』

―――――――――


咲(知らない私、知らないお姉ちゃん… これは…、夢なのかな…?)

咲(ううん、この前見たアーチャーさんが荒野に一人立ち尽くしてたのと同じ感覚だ)

咲(誰かの過去、未来… この風景はここではない世界の出来事…?)

咲(じゃあ今のは誰が見た風景…? アーチャーさん…、いや別の世界で生きた彼女の記憶……?)

咲(そっか、あの時にアーチャーさんの傷口を触ったから雀力といっしょに記憶の一部が…)

咲(今のが本当にアーチャーさんの物だったら、やっぱりあの人は…)

咲「……アーチャー…さん…?」

衣「お、やっと目を覚ましたか咲。体の調子はどうだ?」ニコッ

咲「衣ちゃん… 体は大丈夫。頭の方も私が捕まってることぐらい理解してるよ。ここは一体どこなの!?」ムッ

衣「…咲は不満のようだな。本当なら人質は地下牢に入れるのだが、咲は特別に衣の離れに入れてやったのだぞ」

咲「…ねぇ衣ちゃん、私をあんな事までしてここに連れてきたのは何故?」

衣「咲は衣の物だからな、お前を護ってやるために連れてきた」

咲「…護る?」

衣「ああ、衣とバーサーカーさえいれば誰にも手出しはできぬ。あの婿養子共がどのような籌略を謀ろうともな…」

―――――――


セイバー「…おい、いいかげん目を覚ませアーチャー」ペシッ

アーチャー「……こ、ここは?」

和「セイバーさん、こんな重症を負った人に乱暴は止めてください!意識を取り戻したのもオカルトの領域なんですから!」

セイバー「大丈夫。この程度でくたばるほどコイツの生存スキルは低くはない」

アーチャー「さ…き…、咲は…どこに…?」

セイバー「寝ぼけたことを言うな、アーチャー… 貴様のマスターがどうなったか覚えていないのか?」

和「…何となく虫の予感のような物が働いてランサーさんたちとの決闘後、ここに来たのですが咲さんの姿は…」

アーチャー「ッッ!! そうだ天江衣とバーサーカーに咲が!! おのれッ…  ……グッ」

和「やっぱり、天江さんが咲さんを…!?」

セイバー「勇ましいのは構わんが、現状の状態を把握してから喚くのだな、アーチャー」

和「雀霊だろうと今の貴女では戦いなんて出来る訳ありません!傷が開きますからおとなしくしてください!!」

セイバー「我がマスターに感謝するのだな、アーチャーよ。 和の応急処置がなければ貴様はとっくに死んでいた」

アーチャー「原村和が私の治療を…?」

セイバー「まぁ、私も正直意外だった。和に医術の心得があるなど知る由もなかった」

和「…ええ、まぁ私の知識なんて座学でしかありませんが最近医術に興味を持ち始めたのが幸いしました」

アーチャー「……フッ、よりにもよって貴様に命を拾われるとは皮肉な物だ」

セイバー「…コイツが素直に礼など口するなど微塵も期待していなかったが。全く…」

アーチャー「…一つ聞きたい、何故貴様たちがキャスターの工房に? 先ほど、虫の予感がなど言ってたが」

和「正確な場所はまだ聞いてませんでしたが、私達もキャスターの工房所在地は数か所に絞っていました…」

セイバー「ああ、そしてオカルト嫌いの和がどういう訳だが胸騒ぎがすると言い出し、帰路に一か所だけ寄ってみた」

和「そこには雀力の展開反応がありまして、奥では瑞原プロが必死に出血が止まらない貴女の傷口を抑えていました」

アーチャー「…そうか、私はあのキャスターのマスターにも助けられていたのか」

セイバー「キャスター、…いや岩戸霞を失い何か期する物があったのだろう。事の顛末も彼女から聞いた」

和「…アーチャーさん、私も一つ貴女に聞きたいことが」

アーチャー「…ん?」

和「ずっと気になっていたのですが、貴女が倒れた時からずっと握りしめているそれは一体何ですか?」

アーチャー「握りしめている物…?」

セイバー「恐らく筋肉が硬直して握っている意識がなかったのだろう。その血塗れの物は何だと和は聞いている」

アーチャー「……これは?」

和「…ッッ!?」

セイバー「…和?」

和「……それは、去年のIH前の合宿で私と交換して咲さんが持っていた御守です」

アーチャー「…咲の御守だと?」

和「はい。天江さんたちに連れ去られ、貴女を放置せざるを得なかった咲さんがきっと一縷の望みを託して…」

アーチャー「……」

アーチャー「…原村和にセイバー、一つ頼みがある。 …咲を助けたい。虫のいい話なのは重々承知だが力を…」

和「アーチャーさん、お気持ちはよくわかりますが今の貴女ではとても… 咲さんは私たちで救出します」

セイバー「……和、その判断には承服できない。私は反対」

和「何を言っているんですか! 攫われた咲さんが心配じゃないのですか!?」

セイバー「アーチャーたちから聞いた限り、宮永咲に危害を加えられる可能性は低い。殺すつもりならあの場で始末している」

セイバー「…恐らく、生かしておいたのも何かしら意図がある行動な筈… それがわからない今、乗り込むのは危険」

和「ですけど、早く取り戻さないと手遅れになる可能性だって…!!」

セイバー「…それに和は勘違いをしている。そもそも宮永咲やアーチャーは私達と敵対している存在」

和「……!?」

セイバー「聖牌とは無関係の者が巻き込まれる非常事態だから一時的に休戦しただけで、奴等の脱落はむしろ喜ばしい事態…」

和「セイバーさん、貴女はその言葉を本気で口にしているのですか…?」キッ

セイバー「……」ギロッ

アーチャー「セイバー、貴様の判断は正しい。…だが、今回は原村和の直感を信じた方がいい」

セイバー「…どういうこと、アーチャー?」

アーチャー「まず、咲を生きたまま連れ去ったのは天江衣の気紛れなどではない。セイバーの予想通り、あれは意図した行動だ」

和「どうしてそう言い切れるのですか?」

アーチャー「…聖牌だ」

セイバー「……!?」

和「…どういうことですか? わかるように説明してください!」

セイバー「まだランサー・キャスター・アサシンが脱落しただけなのに聖牌は既に顕現の反応を示している…」

アーチャー「本来、聖牌が顕現するのはサーヴァントの数が絞られた時点の筈だ」

和「どうして脱落者が増えると聖牌が活動を? その関連が私には理解できません」

セイバー「聖牌が起こす奇跡とは大量の雀力によってもたされる…」

アーチャー「我々サーヴァントが脱落して座に戻る前、その雀力と魂を聖牌へ贄に捧げ万能の願望器は機能する」

和「…そんな!?」

セイバー「そして、その大量の力を受け入れる器が必要。顕現し始めたのはその器の候補を見つけたからだろう」

アーチャー「…恐らく、今回の聖牌の器に宮永咲を選んだ。聖牌は力さえ留められれば形の是非は問わないからな」

和「…じゃあ、咲さんは既に聖牌に?」

アーチャー「いや、微弱だがまだヒトとして生存している反応はある。だが、手を拱いている余裕はないだろうな…」

前回は2.3回さる引っかかったから遅くしてるよ。




和「…わかりました。そんなこと、させる訳にはいきません! 咲さんを一刻も早く助けましょう」

セイバー「……ああ」

アーチャー「どうした、セイバー。我がマスターの救出がまだ気にくわんのか?」

セイバー「お前のマスターの安否は構わないが、聖牌や天江たちから良からぬ物は感じる。助力は吝かではない…」

和「全くセイバーさんは… では、何でそんな浮かない顔を?」

セイバー「天江達の行動も、聖牌の顕現も合点はいく。…だが、何かひっかかる」

和「どういうことですか?」

セイバー「聖牌を単純な願望器として機能させるだけなら、そこまでの器は必要ないはず…」

アーチャー「ああ、咲と聖牌の繋がりに天江たちの目的。確かにまだ読めぬことは多いな」

セイバー「……」コクッ

和「…ですが後手に回ってこれ以上不利になる訳にもいきません。行きましょう、龍門渕に!」

ちょっと休憩

――――――― 龍門渕・門前


アーチャー「…気に食わんな。外敵の襲来に微塵も警戒していないとは」

セイバー「踏み込んだ者を生かして返す気など毛頭ないのだろう。大した自信…」

和「…見え透いた誘いですが、今はその慢心につけ込むしかありません」

セイバー「…ん? 誰か出てくる。和は隠れて」

和「は、はい!」

衣「……む? 雑種共の気配を感じたが衣の迷いであったか?」トテトテ

和「天江さん…」

アーチャー「…ここまできて驕りか誘いか、迷うことではないな。この機に乗じるしかあるまい?」

セイバー「…ああ、天江がいない今の内に入り込む」

―――――――

ギィィイイ

咲「……和ちゃん?」

和「咲さん、ご無事ですか!?」

セイバー「…和、早く縄をほどいて。天江たちがいつ戻ってくるかわからない」

咲「和ちゃん!それに…、セイバーさん!? なんでここに?!」パアァッ

アーチャー「…遅くなったな、咲。 私一人では少々手間だったのでな、この二人に手を貸してもらった」

咲「アーチャーさん!! 良かった、ご無事だったんですね! 私…、私……」ダキッ

アーチャー「咲…、ありがとう。君の御守が私を助けて…    …ん?」

和「……」ジロッ

セイバー「……」ギ゙ロッ

アーチャー「……あ~、そのなんだ。君を救出できたのは喜ばしいことだが、今は脱出を最優先すべきでな…」

和「ええ、麗しい主従愛の確認はそれで十分なはずです。ここが敵の本拠地だということを忘れないでください」ジトッ

アーチャー「…ああ、守備に関しては私たちを凌駕していたキャスターを一蹴した怪物もいることだしな」

セイバー「バーサーカー… そんな敵と和たちを庇いながら戦うのは賢明とは言えない」

アーチャー「…そう言うことだ。咲、再会を祝うのはまだ早い。行けるな?」

咲「はい! 皆には帰ったらちゃんと御礼させてもらうから、…だから全員無事に戻ろうね」

―――――――


和「…あとはこの正面玄関さえ抜ければ」

セイバー「ここまで全く障害はなし。むしろここに来る様に誘導されている、と思うべき」

アーチャー「天江の場の支配は盤外でも有効、ということか。しかし、現状では他の選択肢もない…」

咲「今は衣ちゃんが本当に外に行ったままだと信じるしか…        …ッッ!?」


衣「……なぁんだ、もう帰っちゃうのか? せっかくノノカも連れて来てくれたのに」トテトテ

アーチャー「天江衣…、お前が戻ってきた気配はなかったが、最初からこの中に?」

衣「ああ、貴様等の道化ぶりをここで眺めていただけだ。この館の主としてもてなしの準備があったのでな」スッ


ズズン

バーサーカー「■■■■■■■■■■■―――!!」

セイバー「……ここは私が防ぐ。その隙に和たちは逃げて」

和「セイバーさん…」

アーチャー「…いや、奴は私が当たろう。マスターと離れてしまってはお前のクラスでは力が発揮できぬだろ、セイバー」

咲「…アーチャーさん、無理ですよそんな状態じゃ!?」

セイバー「お前のマスターの言う通りだ。アレは手負ったままの体で何とかなる相手ではない」

アーチャー「お前たちは咲の救出に手を貸しただけであろう? 要らぬ気遣いは無用だ」

アーチャー「…幸い私は単独行動スキルがある。アレは適当にいなして途中で抜け出すさ」

セイバー「自殺行為だな。アレの力量が分からぬ程には愚かではあるまい?」

アーチャー「…やり直したい。そう期する物があるのだろ、お前にも」

セイバー「……」

アーチャー「私の祈りはもう叶った。…この日、この時に間に合う事。今度こそ守ってみせる」

アーチャー「……信用しろ。いつだって後ろで支えていただろ?」

セイバー「!? ……すみr」

アーチャー「……咲を、頼む」クルッ

セイバー「……行くぞ、お前たち。ここはアーチャーに任す」

和「えっ!? でも、アーチャーさんは…」

咲「何を言ってるんですか!? セイバーさん、アーチャーさんを見殺しにするつもr

セイバー「咲ッ、いいかげんにしろ!!」

咲「!?」ビクゥ

セイバー「……アーチャーは覚悟の上で踏み止まる。 なのに、マスターのお前が何でアイツの気持ちをわかってやれない!?」

咲「…でも、でもアーチャーさんは……」

アーチャー「…ところで咲、一つ確認していいかな?時間を稼ぐのはいいが」

咲「…えっ?」

アーチャー「――――――― 別にアレを倒してしまっても構わないのだろう?」ニヤッ

咲「…え? あ…、は、はい! アーチャーさん、約束だけは忘れないでくださいね…」

衣「ふん、どこぞの雀霊ともわからぬ者が大言を吐いて。そんな生意気な奴はバラバラにしちゃえ、バーサーカー!!」

バーサーカー「■■■■■■■■■■■―――!!」

セイバー「…よし、行くぞ和、咲!!」ダッ

和「……はい。行きましょう、咲さん」ダダッ

咲「……う、うん」クルッ

アーチャー「やっと行ったか。 …さて、私たちも始めようか背向の英雄よッ!!」

衣「…こいつ、なんでトヨネのことを?」

アーチャー「シャープシューートォッ!!」

ビシュゥッ

バーサーカー「■■□■■□■■□―――!?」ドオォン

アーチャー「……ふん、噂に違わぬと言ったところだな。やはりこの程度の火力では通らないか」

衣「…そこの弓兵、どこでトヨネのことを見聞きしたか知らぬが良いことを教えてやろう」

アーチャー「…ん?」

衣「トヨネはバーサーカーのクラスで召喚された事により、―――宝具・六曜の試練もまた強化されている」

バーサーカー「―――□□■□□■□■■」

衣「つまり貴様のような雑種とは格の違う、一流の雀霊であるトヨネを六度も屠らねば勝利は得れぬぞ…」ニヤリ

アーチャー「…ちっ、相変わらず可愛げのない事をしてくれるな、天江は」

衣「さっきから知ったような口を…… バーサーカー、こんなのは早く片付けて咲達を追うぞ!!」

バーサーカー「■□■□■■□■■!!」

アーチャー「…そう急かすな。まだ戦いは始まったばかりだ、もう暫く付き合ってもらおうかッ!!」


―――――――
――――――――――――――

―――――――――


『これは…?』

『照が入院する直前に、長野に二人行ったことがあったんだ…』

『そして帰り、アイツが柄にもなく次に会う時こそ君と仲直りできるように、と神社にお参りに行きたいって』

『お姉ちゃん、そんなことを…』

『…ああ、そしてコレはその時に君が喜びそうだと照が選んだ御守りだ』

『渡しそびれ終いのままではあんまりだからな。 …貰ってやってくれるかい?』


―――――――――


『ねぇ覚えてる? 長野に行った時に見た、森林限界を超えた峰々に咲いていたあの花たちのこと』

『ああ、覚えてるさ。 力強く、そして可憐な花だったな』

『うん。私、あの花たちが好きだから… ねぇ、また春になったらさ…』

『ああ、また行こう。約束だ…』

―――――――――


アーチャー「フッ… 振り払ったつもりだったのだがな……」

衣「…こいつ、あれだけトヨネの攻撃を受けてまだ息があるのか?!」

アーチャー「…なに、こちらの敗北は動かんが、まだ行かす訳にはいかんからな」ニヤリ

衣「コイツ…… 遊びは終わりだ、バーサーカー! 油断なく躊躇いなく速やかにこいつを仕留めろッ!!」

バーサーカー「■■■■■■■■■■■―――!!」

アーチャー「…相変わらず容赦がないな、天江は。 ―――― 精々手を抜け、バーサーカー。後二つは貰っていく!」ビシュ


カキン


バーサーカー「―――■■■■■■■■■■■!!」

衣「苦し紛れに衣を狙ってくるのも先刻承知。残念だったな、弓兵ッ!!」

アーチャー「……」ニィ


パリーン


衣「…照明ッ!? チッ、闇に紛れて逃走するつもりか!?」

バーサーカー「■■■■■■■■■―――!?」

衣「…あいつ、どこに?」

アーチャー「……」

衣「ほぅ、そんなとこに潜んでいたとは… だが、月は常に衣の味方よ!加護にはありつけなかったな!!」

       I am the bone of my bow and arrow
―――――――― 体は弓で出来ている。


     Steel is my body,and fire is my blood.
血潮は鉄で 心は硝子


I have created over a thousand blades.
幾たびの戦場を越えて不敗

Unknown to Death.
ただの一度も敗走はなく

Nor known to Life.
ただの一度も理解されない

Have withstood pain to create many weapons.
彼の者は常に独り弓の丘で勝利に酔う

Yet, those hands will never hold anything.
故に、その生涯に意味はなく


So as I pray, UNLIMITED BOW WORKS.
その体は、きっと弓で出来ていた

0時リセットって本当だったのかw

0時リセットを信じればよかった…



―――――――
――――――――――――――
――――――――――――――――――――


衣「……固有…結界?」

バーサーカー「―――□□■□□■」

アーチャー「……ご覧の通り貴様が挑むのは無限の弓、射術の極致」

アーチャー「恐れずしてかかって来い!!」

バーサーカー「―――■■■□□□■■■□□□■■■□□□■■■!!」

―――――――― 龍門渕・森林


咲「……!?」ハッ

セイバー「……ッ?!」ピタッ

和「…どうしたのですか、二人とも? …屋敷の方からの音が!?」

咲「アーチャー…さん……」


――――――――龍門渕・邸内


衣「手を抜いた訳ではないだろうな、バーサーカー!!」

バーサーカー「 ―――――――――――― 」

衣「……名も知れぬ、塵芥の雀霊とばかり思っていたが4つも持っていかれるとは。 …ん?」ヒョイッ

衣「これはどこかで…、咲の持っていた御守? …にしては随分古ぼけているが、あの弓兵の物か?」

衣「……どうしてこんな物をアイツが?」 

―――――――
――――――――――――――


(…ここは、どこじゃ?)

(これは潮騒かのぅ? そしてこの潮の香り…、えらく靄がかかっとるが海岸かのぅ、ここは)

(…ずいぶん静かな海じゃのぅ。足跡一つない砂浜… 誰もおらんのか、この海には?)

(…ん、やっぱ先客がおったか。 あれは…、どっかで見た覚えあるが誰じゃったかのぅ)

(靄がえらく濃くてよう見えんのぅ… ん…、あれは確かライダーのサーヴァントの…?)

(いや、あれは鶴賀の制服… ああ、鶴賀の去年のIHメンバーじゃったか)

(ひぃ、ふぅ、み… 4人しかおらん… あそこにいるのが加治木で…、一人だけいないのは誰じゃ?)


――――――――――――――
―――――――

まこ「……ん、何じゃ夢じゃったか。やけに現実感があったが、あれは何だったんじゃろうかのぅ…」

まこ「おいライダー? …ライダー、おらんのか? アイツ、また勝手にどこうろつきまわっとるんじゃ!」

\ ジャラジャラ / \ ワハハ~ それロンだぞ~ / \ ジャラジャラ /

まこ「はいいいぃっ?!」

男A「いやぁ~、お嬢ちゃんなかなか気持ちいい打ち方するねぇ」

ライダー「ワハハ~ やっぱり麻雀は牌効率なんかよりもロマン優先!それが楽しむ秘訣だぞ~」

男B「君もまこちゃんのお友達かい? そういやぁ去年来てたあの子たちも強くていい子だったね~」

ライダー「ええ、まこもいい友人に恵まれてるのに自分ではそれが全く気付いていない。勿体ない奴だぞ~」

男C「最近まこちゃん元気なかったから心配してたけど、君みたいな子がお友達ならいらない心配だったかな」

ライダー「ワハハ、あいつのことは任せてくれ~ 今はちょっと部長のプレッシャーで戸惑ってるだけなんだぞ」


まこ「……あの馬鹿、普通におっさん達と馴染んどる」

―――――――


まこ「だから勝手に実体化するな言うとるじゃろうがッ!!」

ライダー「ワハハ~、まぁそう堅いことを言うな。 折角現世に召喚されたんだから楽しまないとなぁ~」

まこ「…ったく、聖牌戦争の真っ最中だっ言うのに緊張感が無さすぎじゃお前は!」

ライダー「ワハハ 戦いがない間に英気を養うのも大事な仕事なんだぞ~」

まこ「お前は英気を養いすぎじゃろ…」

ライダー「…あ~、それより嬢ちゃんに報告しておかないとなぁ。アーチャーのマスターがバーサーカー陣営に攫われたぞ」

まこ「…咲がかッ?!」

ライダー「…ん、嬢ちゃんはあいつらが嫌いじゃなかったのか? それとも、いざとなったら仲間のことは心配か~」

まこ「……」

ライダー「ワハハ~、安心しろ~ 嬢ちゃんの友達は昨晩、セイバーたちが助けたようだぞ」

まこ「そ、そうかい。まぁアイツらはワシが叩きのめしちゃる予定だから、どの道助からんからがな!」ホッ

ライダー「…ふん、嬢ちゃんは普段からそう素直だったらもっといい部長になってただろうに。ワハハ」

まこ「…何がええ部長じゃ。後輩よりも弱い、前任には遠く及ばん人望のワシが部長なんて最初から無理じゃったんじゃ」

ライダー「自分の弱さをわかってるのは、それだけ見えているってことだろ~ 立派な部長の資質じゃないか」

まこ「な、何を知ったような口を叩くんじゃ、このアホがッ!! お前は全国制覇を成し遂げて、雀霊にもなったんじゃろ?」 

まこ「そんな強くて頼れる部長だったお前なんかに、弱くて見下されてとるワシの気持ちがわかってたまるかッ!!」

ライダー「ん…? 別に私は強くなんかなかったぞ~」

まこ「はぁ?」

ライダー「そうだなぁ~ もしかしたら私はあの面子だと一番弱かったかもしれないぞ~」

まこ「…何を言うとるんじゃお前は? ワシへの同情のつもりか」

ライダー「ワハハ、その僻み根性は何とかしないとなぁ~ 同情でも謙遜でもない。私が大したことなかったのは本当だぞ~」

まこ「…じゃあ、どうやって全国制覇なんてできたんじゃ?」

ライダー「そりゃあ皆の力があったからに決まってるだろ~ ワハハ」

まこ「んじゃ何か? お前は仲間がむっちゃ強ぅかったから勝てた、ただツイてただけの部長じゃったんかぁ?」

ライダー「まぁ確かに運もあっただろうけど、それだけじゃ勝ち続けるのは無理だなぁ~ ワハハ」

まこ「訳がわからん! 強ぅないお前が雀霊にまでなれた理由なんて全然わからんぞ!?」

ライダー「ワハハー 今の嬢ちゃんじゃ仕方ないなぁ。まぁ、そう遅くならない内に答えを教えてやれるかもなぁ~」

―――――――和・自宅


和「…咲さんの様子はどうですか?」

セイバー「客間に閉じこもったまま。覗き見するのは趣味ではないが命令なら…」

和「…いいえ、そんなことはしなくて結構です。昨晩は色々ありましたから、咲さんも貴女も…」

セイバー「……」

和「泣きじゃくる咲さんを叱咤激励してここまで連れてきた昨晩のセイバーさん、あの姿を見て確信しました」

和「…セイバーさん、やっぱり貴女は心当たりがあるあの人なんですね?」

セイバー「…けどそれは以前に説明した通り、別人であると説明したはず」

和「ええ、別の存在であることは理解しました。 …ですが、何もかも全く異なる訳でもないこともわかりました」

セイバー「…和、貴女は私に何が言いたいの?」

和「…ええ。以前の貴女は咲さんに対して敵のマスター以上の含む物がありませんでしたか?」

セイバー「…別に。 倒すべき相手の中の一人」

セイバー「…今はアーチャーに庇護を託された者。彼女はそれ以上でもそれ以下でもない」

和「そうですか… 私はその心当たりある人と咲さんの間で色々とあったと聞いていました」

セイバー「……!?」ピクッ

和「…ですので、もしかしたらセイバーさんにも、と思ったのですが勘違いだったみたいですね」

セイバー「…和、貴女はその二人の詳細について知っているの?」

和「いいえ。 …ですが、顛末とその後に咲さんがどんな思いで今日まで過ごしてきたか、なら多少は…」

セイバー「この世界の咲、…宮永咲に何があった?」

和「…咲さんは麻雀を通じてならその人と話せる。そう信じて勇気を奮い起こし再び牌を握りました」

和「そしてその結果、拒絶されました… そう、今の咲さんはあの日から絶望の中で時間を過ごしています…」

セイバー「……」

和「…咲さんはまだ過去の呪縛に囚われています」

和「そして、その因果から本当に解き放てるのは残念ですけど私じゃありません…」

セイバー「…そうだったんだ」

和「…そしてまた、咲さんは身近にいた、大事な人を失ってしまった」

セイバー「心配、だね……」ボソッ

―――――――和宅・客間


咲「……アーチャーさん」グスッ

咲「……ごめんなさい、泣いてなんていられないのに駄目な子で」

咲「………」

咲「…でも、もう大丈夫だから。今度こそ強くなりますから」

咲「必ずアーチャーさんの仇は取るよ。幾ら衣ちゃんでも絶対に許さない…」


咲「そして、アーチャーさんをあんなにした世界にも、全部… 私が復讐するから……」ゴッ





中盤おしまい。次で完結

さるさん伝えてくれたりありがとー

たぶん次は年明け、冬休み中

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom