成香「はい?」
誓子「だから『なるかの可愛いポイント全部当てるまで帰れま10』」
爽「なるほど」
揺杏「なるほど~」
由暉子「……」パチパチ
成香「え!? みんな乗り気なんですか!?」
爽「そりゃあ今日はせっかく成香の誕生日会だし、こういう出し物でもいいんじゃないか」
揺杏「予想外だったけどね~」
由暉子「ですね」
成香「ユキちゃんも!?」
由暉子「いいと思います。それに私一人が嫌だと言っても空気が冷めるだけです」
爽「さすがはスーパーエース。わかってるね!」
由暉子「今は麻雀の実力は関係ないと思います」
揺杏「鼻メガネかけさせてから一言もしゃべらないから、ブチ切れてんのかと思ったよ~」
由暉子「これ外していいですか?」
揺杏「その前に写メ取らせて」ハイピース
誓子「それでは司会進行役は私、桧森が務めさせていただきます」
爽「パーフェクト賞とかあるの? てか何も食わないなら延々と続けられるぞ」
誓子「外したらこれ食べてもらおうかな。飲み物無しで」
揺杏「クッキー?」
誓子「昨日私が焼いてきました」
爽「あの典型的料理下手と言われる誓子特製のクッキー……」
由暉子「粉っぽくて砂糖の分量間違えてて、リアクションの取りにくい中途半端な不味さの桧森先輩のクッキーですか」
爽「おいばかやめろ!」
誓子「ふ、ふふ、いいよ。私もう慣れた。だからこうして自虐ネタにすることにしたんだよ……」
成香「ちかちゃん……。でもあれはほんとに厳しいです(小声)」
揺杏「あれ飲み物ないときついんですよね~」
爽「みんな容赦無いな」
爽「で、パーフェクト賞は」
誓子「なるかのキス」
爽・揺杏「ええ~」
成香「キス!? てっ、な、なんですかその反応! 私も嫌ですよ!」
誓子「え、嫌なの……? ここですごい盛り上がると思ったのに……」ドンヨリ
成香「あ、いや、違っ、──私はキスいいと思います!」
由暉子「それでは本内先輩から、この企画者の桧森先輩へのキスというのはどうでしょうか」
揺杏「あ、いいねそれ名案だぞ~」
誓子「それでいいの?」
爽「私達はみなのハッピーエンドが見たいんだよ」
成香「なにやら腑に落ちない所が多々ありますが、私もちかちゃんだったら……」
誓子「なるか……」
由暉子「早く進めてください」
誓子「ランキングは私の独断と偏見でも良かったのですが、ここは公平性を考えて私の友人らからアンケートを取りました」
成香「そんなことしてたのちかちゃん……」
誓子「+道行く人になるかの写真を見せて、どこが可愛いとか聞いたりね」
成香「すごく恥ずかしいです」
誓子「インハイで私達も有名になったから、学校外の方にも知名度高かったよ。『弱くて可愛い』などなど」
成香「ひどい」
爽「今のうちに飲み物飲んでおこう」
揺杏「私もお茶頂戴。大量に」
由暉子「私もお願いします」
誓子「はいそこ飲み物ストップ! 今から終わるまで何も飲んじゃいけません」
爽「……」ススッ
誓子「それでは始めましょう。時計周りでいいよね。ユキちゃん揺杏ちゃん爽なるかの順で」
成香「私も参加するんですか!? 自分で自分の可愛いポイントを言い当てるんですか!?」
誓子「それが醍醐味的な?」
揺杏「なるほどなるほど~」
誓子「はいではスタート。ユキちゃん」
由暉子「『雑魚可愛い』」
爽・揺杏「「!?」」
爽「くっそぉ、それ言おうと思ってたのにー」
揺杏「同じく~」
成香「……」
誓子「デデデンデンデデン デデデンデンデデン 『雑魚可愛い』はぁ~ 8位でしたー」ペロン
揺杏「おお~、無駄に手の込んだボード」
爽「まんま『雑魚可愛い』って言葉がランクインしてるんだね。みんな厳しいな、成香」
成香「私への罰ゲームですかこれー……」
由暉子「……ふぅ」
揺杏「お、いま安心したな~」チョイチョイ
爽(『雑魚可愛い』という言葉がランクインしてるこのランキング、もしかしたら似たニュアンスでもトップ10内にいくつか散在するのではないだろうか)
爽(さきほど誓子の発言から『弱くて可愛い』という単語がアンケから拾えたみたいだし……。それを誓子がわざわざ『雑魚可愛い』と言い直すかな。違うよなたぶん)
爽(つまりこのランキングには『弱い』+『可愛い』を持つ言葉がいくつか在り、それをどうにかやりくりして答えていけば誓子クッキーを食わずに済む)
爽(考えろ私、『弱い』の類義語だ。もろい、やわい、か細い、……華奢? いや、身体的特徴は奥の手だ。しかし、それを他の三人に答えられては……)
揺杏「手が小さくて可愛いー、かな?」
爽「!」
誓子「『手が小さくて可愛い』でいい?」
揺杏「え、え~じゃあ、『手が綺麗で可愛い』で」
誓子「ファイナルアンサー?」
爽(誓子楽しそうだなー)
揺杏「ファイナルーアンサー」
(例のBGMとドラムロール)~♪
揺杏「うわあ懐かしい~」
誓子「デデン 10位でしたー」パチパチ
由暉子「あれ? 『手が小さくて綺麗で可愛い』なんですね」
誓子「うん、あれはBGM用意したから使ってみたくって。どっちも正解だよ」
爽「!?」
そのとき爽に電流走る
もしかして、誓子は適当にランキングを作っていたのではないかという疑惑……!
爽は誓子のマメな性格から、一つのルールを作りそれに則ってランキングを制作しているものだと思っていたのだ。
──『手が小さい』と『手が綺麗』は意味が異なる。おそらく別々の回答を混合しランキング入りさせたのだろう。
つまりそれは、先ほどのニュアンス別で似た答えがランキングに散在するという爽の予想を裏切る結果となった。
回答に安牌はない。
爽がここまで必死になるには理由がある。爽は誓子のクッキーが死ぬほど嫌いだった。
誓子「どうしたの? 爽震えてるよ大丈夫?」
爽「ばっちぐー」カタカタ
誓子「それでは爽さんどうぞ」
爽「……よ、『弱くて可愛い』……」
成香「うう~、みんなひどいです……」
誓子「はい11位」ペロン
爽「雑だなおい! てか11位!」
誓子「惜しくも外した爽には私特製クッキー一年分が贈呈されます」パチパチ
爽「そんなにいらないから……、これ何個食えばいいの?」
誓子「そういえば決めてなかった。お腹いっぱいまでかな?」
揺杏「さすがに~?」
爽「三個で」
誓子「五個」
揺杏「きち~」
誓子「そんなに美味しくないかなぁ」
爽(そんな顔するなら持ってくるなよ)
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