―月曜日 放課後 部室―
キョン「長門、チャペッペッルリョクンピョって知ってるか?」
長門「知らない」
キョン「そうだよな」
キョン(今、適当に作った単語だしな)
長門「……」
ハルヒ「はーい!お待たせー!!会議を始めるわよー!!」
―火曜日 放課後 部室―
朝比奈「キョンくん、お茶です」
キョン「どうもすいません」
朝比奈「新しいお茶の葉なんです」
キョン「それは楽しみですね」
長門「……」
ハルヒ「ひまねぇ……」
―水曜日 放課後 部室―
古泉「おや、負けてしまいましたか」
キョン「何も賭けてない時だけ勝つんだよなぁ」
古泉「賭け事とはそういうものですよ」
朝比奈「すぅ……すぅ……」
長門「……」
ハルヒ「キョーン!!マインスイーパーで新記録更新したわよ!!」
―木曜日 放課後 部室―
朝比奈「キョンくぅん、この飛車さんはどこまでいけるんですかぁ?」
キョン「これは障害物がない限り、どこまでもいけるんですよ」
朝比奈「えー?盤からでちゃってもいいんですかぁ?」
キョン「それはちょっと……」
古泉「んふ」
長門「……」
ハルヒ「キョーン!!ひまー!!あそんでー!!」
地味なストレスがバグ引き起こすぞ
―金曜日 放課後 部室―
ハルヒ「今日は終わり!!みんな!!車に気をつけるのよ!!」
キョン「小学校かここは」
朝比奈「さようなら」
古泉「それでは」
キョン「さてと、明日も不思議探索かぁ」
長門「待って」
キョン「どうした?」
長門「わからない」
キョン「え?」
長門「チャペッペッルリョクンピョについて教えてほしい」
キョン「は?」
長門「いくら探しても該当する情報が存在しない」
キョン「……」
長門「情報統合思念体にアクセスしても、該当するものはなかった」
キョン「ボスにまで聞いたのか……」
長門「チャペッペッルリョクンピョってなに?」
キョン「あーそれは……」
キョン(まて。ここで嘘って言っちまうのは簡単だが、その場合、長門はどう思うんだ?)
キョン(ガッカリするのか。それともそれは嘘だと流してくれるのか……)
長門「……」
キョン(いやいや。長門を困らせるわけにはいかないぜ。ここは正直に言うんだ)
キョン「長門、実はそんなもの存在しないんだ」
長門「……」
キョン「悪かったな」
長門「……」
キョン「それじゃ、また明日な」
長門「待って」グイッ
キョン「な、なんだ?」
長門「存在しない情報を貴方が保持している時点で、そのものは存在していなければおかしい」
キョン「そうきたか」
長門「存在しないものをどのようにして貴方は知りえたのか教えて欲しい」
キョン「あー、えーと……だな……」
長門「……」
キョン「口からでまかせなんだよ。その場で作った単語だ」
長門「その場で作った」
キョン「そうそう。からかうつもりはなかったんだ。ただの冗談としてだな」
長門「呼称だけが存在している概念ということでいい?」
キョン「あ、ああ。そんな感じだ」
長門「わかった」
キョン「分かってくれたか。よかったぜ。なら、明日な」
長門「……」コクッ
キョン(まさか真に受けるなんてな。長門にはあまり変なこと言わないほうがいいか)
キョン「オレのチャペッペッルをリョクンピョしてくれ」ボロンッ
―土曜日 正午 喫茶店―
ハルヒ「はーい!!班分けをしまーす!!!みんなー、籤ひいてー」
キョン(今日は誰とだろうね)スッ
長門「……」
キョン(長門とか……。図書館で安定だな)
ハルヒ「……まぁ、いいわ。キョン、有希。さぼっちゃだめよ?いいわね?」
キョン「毎回、同じ台詞だな」
ハルヒ「よっし。みくるちゃん、古泉くん。いくわよ!!」
古泉「分かりました。―――あ、これどうぞ」
キョン「おう」
朝比奈「代金、置いておきますね」
キョン「いつもすいません」
長門「……」
キョン「よし、長門。図書館に行くか」
長門「……」コクッ
キョン「そういえば、先々週ぐらいに借りた本は面白かったのか?」
長門「割と」
キョン「そりゃよかったな」
長門「待って」グイッ
キョン「どうした?」
長門「こっち」
キョン「こっちって……どこに行くんだ?」
長門「ここ」
キョン「ベンチか。なんだ、今日はベンチに座って日向ぼっこか?まぁ、それでもいいけどな」
長門「……」
キョン「んじゃ、座って時間潰すか」
長門「チャペッペッルリョクンピョのこと」
キョン「え?」
長門「チャペッペッルリョクンピョのことどうする?」
キョン「どうするって、なにがだ?」
長門「呼称だけの情報体は余りにも簡素すぎる。生まれた意義がない」
キョン「え?」
長門「きちんとした情報を持たせるべき」
キョン「長門さん?」
長門「チャペッペッルリョクンピョは生命体か否か」
キョン「ま、まて、何が始まったんだ?!」
長門「貴方が生んだもの。大切にしたほうが良い」
キョン「た、大切にって……」
長門「チャペッペッルリョクンピョは生命体か否か」
キョン「長門、つまりあれか。俺の作ったチャペッペッルリョクンピョに存在価値を付加させようっていうのか?」
長門「そう」
キョン「……」
長門「生命体か否か」
キョン(これはあれか。長門なりの遊びか……。こんな長門稀少だしな。付き合ってやるか)
キョン「そうだな。やっぱり生命体だな」
長門「生命体……」
キョン「おう」
長門「哺乳類?両生類?バクテリア?」
キョン「難しいな……。でも、名前の響きからしてバクテリアっぽくはあるよな」
長門「哺乳類じゃなくていい?」
キョン「哺乳類の名前にしてはかなりファンキーだろ、チャペッペッルリョクンピョなんて」
長門「チャペッペッルリョクンピョは学名にしたらいい」
キョン「俗名はどうするっていうんだ?」
長門「仮に太郎」
キョン「一気に進化したな。進化論どうなったんだ」
長門「太郎は哺乳類でいい?」
キョン「そんな名前つけちまったからには哺乳類だな。むしろ人類でもいいぐらいだ」
長門「分かった」
キョン「次は外見的特長か」
長門「……」コクッ
キョン「でも、まあ、人類に定義するなら俺らに似てないとダメだな」
長門「そう。性別は女のほうがいい」
キョン「太郎なのにか?まぁ、いいけど」
長門「目は貴方似」
キョン「俺に似てるのか?女の子なら長門に似てるほうがいいだろ」
長門「どの程度?」
キョン「そうだな……。全く一緒はあれだから……。7割は長門でいいんじゃないか」
長門「3割は貴方の特徴を含むことにする」
キョン「それなら、いいんじゃないか」
長門「寿命は?」
キョン「人間だからな。80歳前後じゃないか」
長門「分かった」
キョン「ほかに決めることあるか?」
長門「どのような性格か」
キョン「性格って周囲の環境によって変化するからな。一概には決められないぜ」
長門「そう。仮に貴方と私で育てた場合にする」
キョン「俺と長門でか。そうなるってくると、イメージしやすいな」
長門「どうなる?」
キョン「うーん。そうだな、俺は長門に殆ど任せちまうかもな」
長門「……」
キョン「そうすると、長門はマニュアル通りに子育てもこなすだろうから、平凡な性格になりそうだな」
長門「平凡な性格?」
キョン「可もなく不可もなく。どびきりお人好しでもなく、我侭でもない。そんな感じだ」
長門「そう」
キョン「まぁ、俺の勝手な妄想だけどな」
長門「太郎が夜泣きした場合はどうする?」
キョン「そうだな。そのときは俺も一緒にあやす。寝かせないと寝れないからな」
長門「そう」
キョン「ん?何の話だっけ、これ?」
長門「チャペッペッルリョクンピョ」
キョン「あー、そうだったな。子育ての話にシフトしたから変だと思った」
長門「初めから議題はブレていない」
キョン「おう、そうか」
長門「チャペッペッルリョクンピョ、俗名、太郎改め花子は、私が基本的に育てる。基盤となる性格構築は私の責任」
キョン「そこまで気負うことはないだろ。共同作業みたいなもんだ」
長門「子育てはマニュアル化されている?」
キョン「書籍はいっぱいあると思うが」
長門「……」スクッ
キョン「どうした?」
長門「こっち」
キョン「どこ行くんだよ」
長門「……」テテテッ
キョン(今日の長門、なんとなく楽しいそうだな)
キョン「天気、いいもんな……」
―図書館―
長門「……」キョロキョロ
キョン「俺はいつも通り、適当なラノベでも読んで……」
長門「……こっち」グイッ
キョン「え?な、なんだ?」
長門「……」
キョン「長門?オススメの本でもあるのか?」
長門「これ」
キョン「子育て本……。これがどうした?」
長門「……」ペラッ
キョン(ああ。あの遊び、まだ続いてるのか)
長門「……」ペラッ
キョン「(長門、どうだ。やれそうか?)」
長門「(原理は簡単。しかし、全てを完璧に実行するのは用意ではない)」
キョン「(だろうなぁ……。子育ては難しいからなぁ)」
長門「(一歩間違えば朝倉涼子を生産することになる)」
キョン「(それはまずい。それだけは避けようぜ)」
長門「(分かった)」
キョン「(と言っても、これに書いてある事をそのまま実行したからって狙った通りの性格になるとは限らないんだよな)」
長門「(そう)」
キョン「(俺は人並みに優しい性格になってくれたら、それでいいんだけど)」
長門「(同意する)」
キョン「(お、そうか)」
長門「……」ペラッ
キョン(って、こんなところ誰かに見られたら、変な誤解を生みそうだな……)
長門「……」
キョン(ま、土曜日の図書館で誰かに会うわけでもないし、いいか)
長門「……借りる」
キョン「そうか。言って来い」
―午後 ファーストフード店―
ハルヒ「で、どうだったわけ?」
キョン「何も収穫はない」
ハルヒ「真面目に探したんでしょうね?!」
キョン「そういうお前はどうなんだ?」
ハルヒ「不思議発見ノルマ未達成で、ここはキョンの奢りだから」
キョン「てめ……!!」
長門「……」ペラッ
朝比奈「長門さん、何を読んでいるんですかぁ?」
長門「子育て」
朝比奈「へぇ~」
古泉「それでは注文をとって来ましょう。みなさん何がいいですか?」
ハルヒ「いつものやつ!!」
朝比奈「私もいつもので」
長門「バリューセット」
キョン「んじゃ、行こうぜ」
古泉「はい」
長門「……」ペラッ
ハルヒ「有希、何読んでるのよ?朝、そんなの持ってなかったわよね?」
長門「子育て」
ハルヒ「何よ、有希。高校生でもうそんなこと気にしてるわけ?気が早いんじゃないの?」
長門「……」
ハルヒ「そもそも恋愛とか結婚とか、バカのすることよ。一時の気の迷い。その果てに待っているのは他人との共同生活っていう地獄だけなんだから」
朝比奈「でも、好きな人と一緒にいるって素敵じゃないですか?」
ハルヒ「甘いわよ、みくるちゃん!!そんなものは幻想なの!!最初は良いかもしれないわよ?でもね、少しずついやーな部分が見えてきて、破局するんだから」
朝比奈「は、はぁ……そうですかぁ?」
ハルヒ「そうなの!!わかった、有希?」
長門「……」ペラッ
ハルヒ「ちょっと、有希。あたしの話きいてた?そんなの考えるだけ時間の無駄なのよ?」
長門「でも、大事なこと。新たな生命体を迎えるための準備は必要不可欠。当事者になったとき、無知であれば狼狽する可能性が高い」
ハルヒ「有希はそれぐらいの知識あるでしょ?」
長門「子育ての基本方針までは知らない。だから、今、読んでる」
ハルヒ「ふーん」
朝比奈「長門さん、子育てに興味があるんですか?」
長門「別に。これは用意」
朝比奈「用意……?」
ハルヒ「有希、どういうこと?」
長門「新たな生命体を迎え入れる用意」
ハルヒ「は……?」
朝比奈「へ……?」
長門「……」ペラッ
ハルヒ「有希……?あたしの思い違いならいいんだけど……。まるで新しい命が生まれるみたいな言い方してない?」
長門「……」ペラッ
ハルヒ「有希。こっちを見なさい」
長門「……」
ハルヒ「有希、どういうこと?」
長門「……」
ハルヒ「沈黙は許さないわよ!!これは団長命令なんだから!!!」
長門「……」
ハルヒ「有希!!いい加減にしなさい!!」
朝比奈「涼宮さん、おちついてぇ」オロオロ
ハルヒ「どうやったら落ち着けるのよ!?」
長門「花子が誕生した」
ハルヒ「?!」
朝比奈「はなこ?」
長門「そう」
ハルヒ「なによそれ?」
長門「チャペッペッルリョクンピョ」
ハルヒ「え?なんですって?」
長門「呼びにくいから花子でいい」
ハルヒ「誕生って生まれたってことでいいのね?」
長門「そう」
朝比奈「それ、どんな人ですか?」
長門「哺乳類で人類。性別は女。寿命は80歳前後。容姿は私に7割似ている」
ハルヒ「それ有希の子どもってこと!?」
長門「……」
ハルヒ「……ちょっと……ほんとに……?」
朝比奈「ひぇ~……長門さん、いつの間にぃ?」
長門「今週の月曜日に誕生した」
ハルヒ「最近じゃない!?自宅で産んだの?!」
長門「部室」
ハルヒ「部室ぅ?!」
朝比奈「えぇ~?!そんなでも、火曜日は特に汚れてませんでしたけど……」
ハルヒ「あの長机を分娩台のしたの?!有希?!」
長門「……」
ハルヒ「というか、そもそもどうやって産まれたのよ?!」
朝比奈「パパさんは誰なんですか?」
長門「……」チラッ
キョン「ほら、ハルヒ。まずはお前のだ」
ハルヒ「……え?」
長門「子育て」
ハルヒ「……!!!!」
古泉「すいません!!急用ができました!!!」
キョン「どうした、古泉?」
古泉「観測史上最大級のものです。世界の破滅もありえるレベルですので」
キョン「ハルヒ……どうかしたのか?」
ハルヒ「……」
キョン「おい、ハルヒ」
古泉「とにかく現場に急行しますので、あとのことはお任せします」
キョン「あ、ああ……」
朝比奈「あの~?涼宮さぁん?大丈夫ですかぁ?」
ハルヒ「……」
朝比奈「ダメです……放心してます……」
キョン「おい、長門。俺と古泉がレジ並んでいるときに何があった?」
長門「子育ての話をしていた」
キョン「子育てだと?」
朝比奈「は、はい。で、長門さんが今週の月曜日に出産したという話になってぇ……」
キョン「出産?!長門、お前何か産んだのか!?」
長門「……」
キョン「朝倉2号じゃないだろうな?」
長門「違う。もっと無害」
朝比奈「花子さんって言うらしいんですけど、キョンくん知ってますか?」
キョン「花子って、俺と長門で作ったやつか」
長門「そう」
朝比奈「ひぇぇぇ?!キョンくん、なにしてるんですかぁぁ!!!」
みくる「チャパベッリュリョクンニョ!」
長門「チャペッペッルリョクンピョ」
みくる「チンポボリュンラクンニ!」
長門「チャペッペッルリョクンピョ」
みくる「チョッパリカムサハムニダ?」
長門「…?」
みくる「韓○語って難しいですね」
キョン「あ、ち、違います!!朝比奈さん!!これは遊びで……!!」
朝比奈「あ、あああ、遊びでつくっちゃんですかぁ?!キョンくんのオオカミ!!オニ!!あくま!!す、すけこまし!!」
キョン「朝比奈さん、落ち着いてください!!そういう比喩じゃないんです。文字通りの意味なんですよ!!」
朝比奈「キョンくんはそんなことしないと思ってたのにぃ……!!長門さん、可愛いから仕方ないですけどぉ!!」
キョン「朝比奈さん。ほら、ポテトでも食べてください。あーん」
朝比奈「あーん……はむ……」
キョン「美味しいですか?」
朝比奈「……ふぁい」モグモグ
キョン「いいですか、朝比奈さん。月曜日に俺が長門にチャペッペッルリョクンピョって知っているかと訊ねたんですよ」
朝比奈「ちゃぺっぺっるひょひょんひょ?」
キョン「言い難いですから、仮に花子としましょう。長門は何でも知っているから、知らない単語を聞いたときどんな反応をするか見たくなったんです。俺が全面的に悪いんです」
朝比奈「はい……」
キョン「それから長門はその花子って単語に意味を持たせようっていう遊びをしようと俺を誘ってきたんです。単語の生みの親ですからね」
朝比奈「それで?」
キョン「それから色々な設定を付け足していって、花子っていう架空の存在が生まれた。ただ、それだけなんですよ」
朝比奈「では、キョンくんと長門さんの間に子どもが産まれたわけじゃないんですね?」
キョン「はい。そうです。酷い勘違いですよ」
朝比奈「はぁ……びっくりしたぁ……」
キョン「長門も遊びだってことをきちんと説明してくれよ」
長門「生命体の誕生はそのような遊戯として扱ってはならない」
朝比奈「……」
キョン「長門!!」
長門「……」ペラッ
朝比奈「あの、キョンくんを信じていいんですよね?」
キョン「は、はい、それは勿論です」
朝比奈「なら、信じます」
キョン「さてと、ハルヒ。今の話、聞いてたな?」
ハルヒ「……」
朝比奈「涼宮さぁ~ん。口、開いてますよぉ~」
ハルヒ「……」
キョン「ハルヒ。おい。ハルヒ」
ハルヒ「……」
朝比奈「ダメですね……」
キョン「仕方ない。コーラを飲ませるか」
朝比奈「いいんですか?」
キョン「とにかく話が出来る状態にしてやらないといけませんからね」
朝比奈「はぁ……」
キョン「ほら、ダイエットコーラだぞ、ハルヒ。飲め飲め」ググッ
ハルヒ「んぐっ……んぐっ……ごふっ……」
キョン「ほーら、どんどん入るぞー?」
ハルヒ「んごっ……ごぷっ……ごっほ?!―――ぶぅぅぅぅ!!!!」
キョン「うわ……きたね」
ハルヒ「ごほっ!!えほっ……!!なにするのよ?!アホキョン!!」
キョン「お前がいつまでも呆けてるからだろ?」
ハルヒ「呆けてるって……。あー!!!思い出した!!!あんたぁ!!!有希を孕ませてどういうつもりよぉぉ!!!」
ハルヒ「―――遊び?」
キョン「そうだ。長門が考案した架空の生命体を作ろうっていう遊びだ」
ハルヒ「そのためにわざわざ子作りの本まで図書館から借りてきたわけ?」
キョン「子育てだ。子作りってなんだよ」
ハルヒ「一緒でしょ?!」
キョン「全然違うだろ?!」
朝比奈「や、やめてくださぁい……」オロオロ
長門「……」ペラッ
キョン「ま、そう言うわけだ。おまえが思っているようなことは何もないんだよ」
ハルヒ「怪しいわね。バレそうになったから、そういう遊びをでっち上げただけじゃないの?」
キョン「んなつまらんことするか」
ハルヒ「現につまんない遊びをしてるじゃないの。不思議探索そっちのけで!!」
キョン「それを言われるとな……」
長門「謝罪」
ハルヒ「もういいわ。有希が出産したのが間違いだっただけで、今回は許してあげる」
キョン「そいつはありがたいね」
ハルヒ「その代わり、オレンジジュース買って来い!!」
キョン「へいへい。それで済むなら安いもんだ」
ハルヒ「スリーエルサイズでっ!!!」
キョン「そんなアメリカンなサイズあったか……」
ハルヒ「まったく……。テーブルがベトベトじゃないの!!もう!!」フキフキ
朝比奈「……」
長門「……」ペラッ
ハルヒ「有希!!どうして初めにあんな誤解しか生まないようなことをいうわけ?!」フキフキ
長門「うまく言語化できなかった」
ハルヒ「あっそ!!なら、仕方ないわね!!」フキフキ
朝比奈「でも、遊びとしては面白いですよね。お話を考えるみたいで」
ハルヒ「そう?架空の生命体なんて妄想しても面白くないじゃない。UMAを考察するほうが何倍も楽しいわ」
朝比奈「いえ、そっちじゃなくて、自分の子どもをどう育てるかってなんだか考えるだけで楽しくなりませんか?」
長門「……」ペラッ
いまさらだけど
>朝比奈「キョンくぅん、この飛車さんはどこまでイケるんですかぁ?」
>キョン「これは障害物がない限り、どこまでもイケるんですよ」
>朝比奈「えー?盤から射精ってもいいんですかぁ?」
エロすぎ
長門「子育てマイエンジェル…」
登場人物が全員全裸だと思って読むとエロくて辛抱たまらんな
ハルヒ「そうかしら?それならチャペッペッルリョクンピョの設定をどんどん追加するほうが楽しいわよ」
朝比奈「えぇ~?」
ハルヒ「有希。チャペッペッルリョクンピョはどこまで出来上がってるわけ?」
長門「まだ全体の1割もできていない」
ハルヒ「あら、どうして?」
長門「大部分は育て方に左右されるから」
ハルヒ「ははーん。つまり、生まれたての赤ん坊っていいたいわけね?」
長門「そう」
ハルヒ「なら、とっとと成人させて嫁入りさせましょうよ」
朝比奈「どうやってですかぁ?」
ハルヒ「チャペッペッルリョクンピョは父親が弁護士と母親が医者の家庭で生まれるの」
朝比奈「なんだか、エリートですね」
ハルヒ「そうよ。生まれた瞬間から英才教育が始まるの。で、有名私立幼稚園に入園して、習い事は4つ掛け持ち。ピアノ、バレエ、習字、フィギュアスケート。これでいいわ」
朝比奈「や、やりすぎじゃないですかぁ……?」
ハルヒ「これでいいの!!このご時勢、これぐらい最低でもやっておかないとダメよ!!特にチャペッペッルリョクンピョは名前だけ周囲から変な目で見られるでしょうし!!」
朝比奈「はぁ……」
ハルヒ「で、順調にお受験も受けて、有名私立小学校に入学するわけよ」
長門「……」
ハルヒ「習い事は継続ね。2つぐらい増やしてもいいけど」
朝比奈「かわいそうですよ」
長門「無理な教育は後の性格形成に不備が発生する」
ハルヒ「大丈夫よ。芸は身を助けるっていうでしょ?」
朝比奈「はぁ……それから、どうなるんですか?」
ハルヒ「そうね。まぁ、そのまますくすくと成長して、小学校4年生か5年生辺りで中学受験の勉強を開始するのよ」
朝比奈「ひぇぇ……」
ハルヒ「そこから―――」
長門「長年抑圧されていた感情がキャパシティの限界を超え、放出。親に対して反抗的になる」
ハルヒ「……え?」
長門「12歳にして朝帰りが多くなり始める」
ハルヒ「……」
長門「チャペッペッルリョクンピョは15歳で妊娠と中絶を繰り返し―――」
ハルヒ「有希!!どうしてそうなるのよ?!おかしいでしょ?!」
長門「この本にそう書いてある」
ハルヒ「その本が間違ってるのよ!?」
キョン「はい、ハルヒ。スリーエルサイズはなかった」
ハルヒ「ちょっと、キョン!!私の教育方針、間違ってるって思う?!」
キョン「……は?」
ハルヒ「どうなの?!」
キョン「何の話だ?」
朝比奈「ちゃぺっぺっるんぴょんひょちゃんのことですぅ」
キョン「誰ですか、それ?」
長門「私と貴方が作った生命体」
キョン「ああ。花子な」
ハルヒ「勝手に名前きめんなぁ!!!」
キョン「とりあえず落ち着けよ」
キョン「―――そういう話になってたのか」
ハルヒ「で、キョンはどう思う?」
キョン「長門の言うとおりじゃねえか?ハルヒの育て方が悪いってわけじゃないが」
ハルヒ「そ、そうなの?」
キョン「好きにさせるのも親の愛だと思うぜ」
ハルヒ「ふぅん」
朝比奈「女の子だから過保護になるのは仕方ないですけど」
キョン「朝比奈さんはどうやって育てますか?」
朝比奈「そうですね。寝るときはいつも枕元で絵本を読んであげたいですね」
キョン「いいですねぇ。朝比奈さんがお母さんなんて、羨ましいですよ」
朝比奈「ひぇ!?そ、そうですか?」
ハルヒ「みくるちゃんのおっぱい目当てでしょ?」
朝比奈「ひっ……」
キョン「おい!!ハルヒ!!!」
長門「……」ペラッ
ハルヒ「って、別に子作り談義したいわけじゃないの。こっちは不思議を見つけたいんだから」
キョン「子育てだ」
ハルヒ「どっちも同じ。つまんない遊びしないでよね!!」
キョン「悪かった」
長門「謝罪」
ハルヒ「はぁ……。古泉くんは帰っちゃうし、午後はどうする?」
キョン「なんだよ。しないのか?」
ハルヒ「んー……。四人で探しましょうか」
キョン「グループ分けはなしでいいのか」
ハルヒ「人数を増やして一点集中すれば、見逃していた不思議にも気がつくかもしれないでしょ?」
キョン「そんなもんかね」
朝比奈「なら、そろそろいきましょうか」
ハルヒ「ええ」
キョン「長門、いくぞ」
長門「わかった」
―並木道―
長門「……」
朝比奈「不思議、ありませんねー?」
キョン「ふわぁぁ……」
ハルヒ「ねえ、キョン」
キョン「ん?」
ハルヒ「有希に変な単語を教えてから発展した遊びなのよね?」
キョン「ああ、そうだけど?」
ハルヒ「ふーん……」
キョン「……?」
ハルヒ「ゆきー?」
長門「……?」
ハルヒ「キョキョンハッヒッルって知ってる?」
長門「……知らない」
ハルヒ「えー?知らないの?意外ね、有希なら絶対に知ってると思ったけど」
長門「……」
ハルヒ「何でも知ってるわけじゃないのね」
長門「そう」
ハルヒ「なら、いいわ」
長門「……」
キョン「なんのつもりだよ……。あいつ」
朝比奈「キョンくん、キョンくん」
キョン「どうしましたか?」
朝比奈「向こうに猫がいます」
キョン「あー、本当ですね」
長門「……」
ハルヒ「みんな!!きちっと探す!!猫なんてどうでもいいの!!」
キョン「はいはい」
長門「……」
―日曜日 喫茶店―
古泉「昨日は本当に大変でした。途中で一気に収束へ向かったので助かりましたが。本当に世界が書き換えられる直前でした」
キョン「悪かったな。10割俺のせいだ」
古泉「もうこういうことはないようにお願いします」
キョン「ああ」
ハルヒ「それじゃあ、グループ分けをするわよ!!」
朝比奈「はぁーい」
長門「……」
キョン「今日は誰かな」
古泉「んふ。僕とですね」
キョン「なんで……」
ハルヒ「それじゃあ、しゅっぱーつ!!」
―月曜日 部室―
キョン「んー……」
朝比奈「どうぞ、お茶です」
キョン「どうもすいません」
古泉「どうですか、一勝負」
キョン「やらん」
古泉「これは残念」
ハルヒ「キョーン!!ひまー!!」
キョン「椅子でくるくる回ってろ」
ハルヒ「んー」クルクルクル
長門「……」
―火曜日 部室―
ハルヒ「あー、空から隕石でも降ってこないかしら」
キョン「振ってきたらどうすんだ!!」
ハルヒ「キョンが受け止めて、メシアになるのよ」
キョン「やめろ。マジで」
ハルヒ「そろそろ、帰りましょうか」
古泉「ええ」
朝比奈「はぁい」
長門「……分かった」
ハルヒ「え?」
キョン「長門?」
長門「分かった」
ハルヒ「なにがよ?」
長門「キョキョンハッヒッルのこと」
ハルヒ「え?」
キョン「長門、分かったのか?」
長門「……」コクッ
ハルヒ「何言ってるのよ?そんなもの存在してるわけ―――」
長門「キョキョンハッヒッルは実在する。正確には実在することになる」
古泉「実在することになるというのは、未来の話ですか?」
長門「そう」
ハルヒ「未来ってどういうことよ?」
キョン「(古泉、なんかやばいんじゃないか?!)」
古泉「(長門さんがそのような軽率なことはしないと思いますが)」
朝比奈「ひぇぇ……」
長門「キョキョンハッヒッル。それは……」チラッ
キョン「え?俺?」
長門「貴方と涼宮ハルヒの間に生まれる子どもが持つ、特殊遺伝子の名称」
ハルヒ「ぶふっ!?」
キョン「……マジか?」
長門「マジ」
ハルヒ「もう!!何言ってるのよ!!有希ったら!!あはははははは!!!いいセンスね!!!」
長門「……」
ハルヒ「ほら、みんなも笑ってあげなさいよ!!有希渾身のギャグなんだから!!あはははは!!!」
古泉「そうなのですか。一体、どのような遺伝子なのですか?」
長門「どのような病原体も寄せ付けない、高抗体遺伝子」
朝比奈「風邪とかひかないってことですか?」
長門「そう」
ハルヒ「ちょっと、もう!みんなしてなに本気にしてるのよぉ!そんなわけないでしょ?!」
キョン「良いことのようにも聞こえるけど……」
古泉「その高抗体遺伝子を生物兵器に利用されると恐ろしいですね」
キョン「どうしてだ?」
古泉「どんな方法を持ってしても死滅させることのできないウイルスも作れてしまうからです」
キョン「なんだって?」
ハルヒ「あの、もしもし?」
朝比奈「それって、大変じゃないですかぁ」
キョン「今から、手を打っていた方がいいな」
長門「いい」
古泉「最善の策としては、貴方と涼宮さんが子作りをしないことになりますね」
ハルヒ「ねえ?なんでマジになってはなしてるわけ?ねえ?ちょっと」
キョン「それなら簡単だが……できるもんか?」
古泉「このままいけば、ほぼ確実に涼宮さんと貴方は結ばれるわけですからね」
ハルヒ「なに勝手なこといってるのよ!!そんなわけないでしょ?!」
朝比奈「あ、他の人と先に結ばれるのってどうですか?」
ハルヒ「?!」
キョン「ああ、いいアイディアですよ」
古泉「涼宮さんの対抗できるだけの人物となると……。長門さんしかいませんね」
長門「分かった」
キョン「そうなっちまうか……」
ハルヒ「なんでよ?!なんで有希なの?!」
キョン「長門は何でも知ってるし、まあ、不満はないな」
長門「善処する」
ハルヒ「ちょっと!!なに?!これどういうことなの?!」
古泉「涼宮さん。これは仕方のないことなのです。人類を守るためですから」
ハルヒ「え……」
キョン「悪いな、ハルヒ」
ハルヒ「……」
朝比奈「えっと……えっと……。涼宮さん、元気だしてください」
ハルヒ「……なんでよ」
長門「……」
ハルヒ「そんなの嘘でしょ?!あるわけないじゃい!!!キョキョンハッヒッルはあたしが考えた嘘単語なんだからね!!!」
長門「でも、ある」
ハルヒ「……」
キョン「ハルヒ……分かってくれ……」
ハルヒ「いや……なんで……」
古泉「まぁ、という設て―――。すいません、急用ができました」
キョン「なんだと?!」
古泉「どうやら、少し懲りすぎたみたいですね」
キョン「お、おい!!ハルヒ!!」
ハルヒ「わ、分かったわ。なら、習い事、1つ減らす。それでいい?」
キョン「何の話だ!?」
古泉「どんどん拡大していってますね……」
朝比奈「だ、だから、こんなことやめましょーって……」
長門「生まれた情報体を無碍にはできない」
古泉「やはり、流行のファッションあたりで手を打っておくべきでしたね」
ハルヒ「自由に育ててもいいわ。抑圧はしない」
キョン「ハルヒ、しっかりしろ!!おい!!」
ハルヒ「教育方針はあんたにまかせてもいいから」
キョン「ハルヒ!!何いってんだ!?」
古泉「まずいですね……。このままでは機関に怒られてしまいます」
キョン「なんとかしろ古泉!!」
古泉「そういわれましても」
キョン「てめえが考えた設定だろうが!!」
ハルヒ「キョン、弁護士になれとか言わないから……」
長門「涼宮ハルヒにフォローを入れるべき」
朝比奈「キョンくん、早くっ」
キョン「しかし……」
古泉「好きですって言ってみてはどうですか?」
キョン「できるか!!」
古泉「そうですか。それが最も確実なのですが」
ハルヒ「年収200万でいいし……」
キョン「ハルヒ!!いい加減、正気に戻れって!!」
長門「……」
古泉「普段から暇そうにしていたのでちょっとした風を起こすつもりだったのですが、裏目に出てしまいましたね」
朝比奈「あぁぁ……このままじゃあ……このままじゃあ……」オロオロ
ハルヒ「……」
長門「……これ」
キョン「え?長門、これは……?」
長門「強制的に涼宮ハルヒの意識を再起動させる」
古泉「しかし、150円でどうにかなるものですか?」
長門「言葉による説得は現時点では困難」
朝比奈「そのお金で、どうするんですか?お鼻につめるんですか?」
長門「違う」
朝比奈「あぅ……」
古泉「さっぱりわかりませんね。心当たりはありますか?」
キョン「もしかして……、あれか」
長門「そう、あれ」
キョン「分かったぜ。長門」ダダダッ
古泉「一体なんですか?」
長門「すぐにわかる」
キョン「―――よし、買ってきた」
ハルヒ「むしろ、私が養うし……」
キョン「飲め、ハルヒ。ほら。飲めよ」ググッ
ハルヒ「んぐっ……ごぷっ……んぐっ……」
古泉「あれはコーラですか」
長門「あれが最も有効」
朝比奈「でも、あれはぁ、汚れますよ?」
長門「小さな犠牲」
古泉「とにかく、涼宮さんの後ろに移動しておきましょう」
キョン「もっと飲め」
ハルヒ「ごふっ……んぐっ……ごっほ……!?―――ぶぅぅぅぅ!!!!!」
キョン「うわ、きたね」
ハルヒ「ごっほ……!!げほっ……!!な、なにするのよ!!アホキョン!!!」
キョン「正気に戻ったか?」
ハルヒ「はぁ……げっほ……え?あれ?なにしてたっけ?なんか有希がキョンと結婚とか……そーよ!!キョン!!どういうことなわけ?!」
ハルヒ「―――そういう設定?」
キョン「ああ。長門に聞いただろ?キョキョンハッヒッルのこと。そのあと、長門はやはり設定を考え始めた」
長門「該当する情報がなかったため、チャペッペッルリョクンピョと同様に呼称だけが存在する概念と認定」
ハルヒ「それでなんとか遺伝子ってことにしたのね?」
キョン「そうだ」
ハルヒ「で、どうしてそれが有希と結婚するとかしないとかになるわけ?」
古泉「すいません。そうすることでSFっぽくなるかと思いまして」
ハルヒ「ぜんっぜんならないけど」
古泉「当初の想像としましては、あそこで涼宮さんがそのウイルスに対抗できる新しい何かを作ってくれると思ったのです」
ハルヒ「……え?」
キョン「フェバジュパッヴァとかなんでもいい。適当な新語を作ってそこから話が盛り上がればと思ったんだが」
朝比奈「涼宮さんが真に受けちゃって……それでぇ……」
長門「コーラを注いだ」
ハルヒ「……」
キョン「悪かったな。いつも部室では暇そうにしてるから少しでも楽しませようと思ったんだが……」
ハルヒ「そ、そんな小学生みたいな遊びであたしが満足するわけないでしょ?!少し考えたらわかりそうなもんよ!!!」
キョン「そうだな。だけど、土曜日に結構真剣に考えてたから、こういう洒落が好きなのかって思ってよ」
ハルヒ「……っ」
古泉「さてと、そろそろアルバイトに行ってきます。なんとかなりそうですし、あとのことはお願いしますね」
キョン「ああ」
ハルヒ「……」
長門「貴女のことをもっと考慮すべきだった。猛省」
ハルヒ「あ、うん」
朝比奈「涼宮さん、ごめんなさい。私、最初は止めたんですけど……だんだん、おもしろくなっちゃってぇ……」
ハルヒ「べ、べつにいいんだけど」
キョン「悪かったな。機嫌直してくれ」
ハルヒ「いや、そんなに怒ってないから。そんな、どうして有希とあんたが結婚するだけであたしが怒らなきゃならないわけ?」
キョン「それもそうだな」
ハルヒ「暇つぶしなんてねえ!!椅子でまわってればできるんだから!!余計な気遣いはいらないのっ!!!」クルクルクルクル
キョン「そうだな。確かにハルヒの言う通りだ」
長門「解決」
キョン「はぁ……。今回も助けられちまったな、長門」
長門「元々、私が考案したこと。責任はこちらにある」
キョン「悪ノリしちまった俺たちにも責任があるって。長門だけの所為じゃない」
長門「そう」
朝比奈「はぁ……よかったですね、キョンくん」
キョン「ええ。朝比奈さん、ご迷惑をおかけしました」
朝比奈「いえ、私は何もお役に立てませんでしたからぁ」
ハルヒ「別に私はキョンのことなんてどーでもいいの!!勘違いしないでよね!!!」クルクルクル
キョン「目、回すぞ?」
長門「……」
キョン「呼称だけのものに色んな設定つけるのはやめるか」
長門「……」
キョン「あ、いや。俺と長門だけで遊ぶなら問題ないか」
長門「ない」
―通学路―
ハルヒ「まったくぅ!!キョンは魂からアホなんだからぁ!!」
朝比奈「あははは……」
キョン「明日まで引き摺りそうだな、あれは」
長門「……」ペラッ
キョン「長門、まだそれ読んでるのか?」
長門「……」コクッ
キョン「子育てなんてしないだろうに」
長門「子どもは産める」
キョン「え?」
長門「有機生命体との接触にあたり、一通りの機能は備えている。繁殖も可能」
キョン「……おう、そうか」
長門「……」ジーッ
キョン「あまり、こっちを見つめないでくれ……」
長門「分かった」
―水曜日 部室―
キョン「おす。―――長門、だけか」
長門「……」コクッ
キョン「そうかい。なら、お茶は自分でいれるか。長門もいるか?」
長門「……」
キョン「―――ほら」
長門「……」ペラッ
キョン「……なぁ、長門?」
長門「なに?」
キョン「ごほうしするにゃん、って知ってるか?」
長門「奉仕?」
キョン「奉仕じゃないんだ。『ごほうしするにゃん』で一つの単語な」
長門「ごほうしするにゃん」
キョン「そうそう」
長門「その単語なら知っている。古代エジプトで―――」
朝比奈「こんにちは」ガチャ
長門「ごほうしするにゃん」
朝比奈「ひえ!?」
キョン「長門、それは挨拶じゃねーだろ」
朝比奈「えっと、なんですか?」
キョン「古代エジプトで流行った言葉らしいです」
朝比奈「えっと、意味は?」
長門「愛している」
朝比奈「はぁ……そうなんですかぁ」
鶴屋「おーっす!!元気にしてっるかい!!」
キョン「鶴屋さん、どうかしたんですか?」
鶴屋「たまには顔出しとこうかなって、おもってさぁ。ほら、名誉顧問だしねー」
長門「ごほうしするにゃん」
鶴屋「お?変わった挨拶だねぇ。ごほうしするにょろ!」
キョン(長門のやつ、ノリが良くなってきたな。喜ぶべきなんだろうが……)
鶴屋「いやー、キョンくん。みくるからきいたよー。良く分からない言葉で遊んでるって」
キョン「ええ、まぁ」
鶴屋「ならさ、鶴の恩返しってしってるかい?」
キョン「それは、勿論ですよ。童話のやつでしょ。長門も知ってるよな」
長門「鶴の恩返し。日本に伝わる童話の一つ。罠にかかった鶴を男性が助け、その恩を返すために鶴が人間に化けて男性の家へとやってくる」
鶴屋「違う違う。そっちじゃないっさ」
キョン「え?」
鶴屋「やっぱ、しらないかー。みくるは知ってる?」
朝比奈「私も童話しか……」
鶴屋「あっはっはっはっは。そーだよねぇー。ま、いいっさ。お?そろそろ時間だねぇ。またくるにょろ!!」ダダダッ
キョン「相変わらずだなぁ……」
朝比奈「そうですね。あ、キョンくん、お茶入れますね」
キョン「お願いします」
長門「……」
ハルヒ「おまたせー!!会議をはじめるわよー!!!」
ハルヒ「はぁ……暇ねぇ」クルクルクル
古泉「(いいんですか?新語披露はしなくても)」
キョン「(もうハルヒにはやらねえよ。後が怖い)」
古泉「(それもそうですね)」
キョン「これで、俺の勝ちだな」
古泉「あー、やられてしまいました」
朝比奈「すぅ……すぅ……」
長門「……分かった」
ハルヒ「え?」
キョン「長門、何が分かったんだ?」
長門「鶴の恩返し」
古泉「鶴の恩返し、ですか?」
ハルヒ「童話のやつ?なに、有希ったら、日本昔話にはまったの?」
長門「鶴の恩返し。男女が股間と股間をすりあわせるプ―――」
キョン「もういい!!やめろ!!!」
ハルヒ「キョン……」
キョン「違う、俺じゃ―――」
ハルヒ「有希に変なこと教えるんじゃないわよぉぉぉ!!!さては今までのも有希にセクハラするための布石だったのね?!キョン!?」
キョン「違う!!違うんだ!!!」
長門「……」
朝比奈「へ?な、なんですかぁ?」オロオロ
古泉「なるほど。存在する言葉を長門さんに訊ねると危険ということですね」
ハルヒ「死ね!!このエロキョンめ!!!」
キョン「く、くるしぃ……!!」
長門「……」
キョン「ホント、長門って……なんでも知ってるよな……」
長門「そうでもない」
ハルヒ「反省しなさい!!このこのっ!!!」
―――この日以来、新語作り遊びは団長命令によって禁止されることになった。
END
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