海未「キミのくせに!」 (74)
「おはよう!海未ちゃん!」
いつもながらの明るい声で挨拶をしてくる穂乃果。
私もそれに応えます。
「おはようございます……」
「あれ、なんだか元気ないね?もしかして新曲の?」
心配そうな表情で私を見つめてきます。
「そうなんです……。なかなかイメージが掴めなくて……」
ユニット用の新曲を作ろうと部活で話がまとまって、その作詞に取り掛かっているのですが、いつも以上に悪戦苦闘――。
毎晩机に向かって、詞を書こうとはするのですが、書きたいことがあまりに漠然としていて、筆が進まず……もう何日経ったでしょうか。
早く詞を書かないと、真姫を待たせてしまいますし。何より真姫は曲を作らないといけないので、私なんかより遥かに重労働です。
何となく胸の内に取っ掛かりがあるような気はするのですが……。
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穂乃果が突然スクールアイドルをやると言いはじめて、最初のライブなんて観客なんてほとんどいなかったのに。
気がつけばメンバーも9人揃って、応援してくださる人もかなり増えたと思います。
アイドルとはまさに正反対で無縁だった私が、いまやスクールアイドルで、さらにその作詞を受け持っているなんて、つくづく不思議な巡り合わせです。
「作詞かぁ……。私にはできそうにもないなぁ」
「そんなことはありませんよ。意外とやってみればできるものです」
「いやいや、海未ちゃんの詞って結構人気あるんだよー?私も聴いててきゅんってなっちゃうような!」
そんな調子で言われるとなんとなく恥ずかしくなってきます。
普段作詞をしている間は気分が乗っているのであまり気にしませんが、後々聴いてみると確かに、『こんな言葉が私から出てくるとは……』と我ながらに思うことはあります。
「二人ともー!遅れてごめんねぇぇぇ!」
角から小走りでことりがやってきました。
ことりが待ち合わせで遅れるなんて、珍しいこともありますね。いつもは穂乃果なのですが。
「おはようございます、ことり」
「おはよう!ことりちゃん!」
「はぁっ……はぁっ、ちょっといろいろと準備することがあって遅れちゃったぁ……」
「大丈夫ですか?」
膝に手をついて、肩で息をしていることりをさすります。
「な、なんとか……」
―――――――――――――――
他愛ない会話をしながら学校に着き、授業も終えて今は部活中です。
「1!2!3!4!決め!」
私のカウントと音楽に合わせて、息の合ったダンスを見せるメンバー達。
かなりハードな振り付けなのにちゃんと付いてこれて、さらに笑顔も崩さないレベルにまでなっているので、相当な上達っぷりです。
ダンスならやはり経験者の絵里が身のこなしが上手で、その絵里がアドバイスを出してくれるお陰かもしれません。
「じゃあこのあたりで一旦休憩にしましょうか」
全員肩の力がふっと抜けたように、どよめき返ります。
「はぁー! 疲れたにゃー……。かよちんのダンスうまくなってたにゃあ」
「そ、そうかな?あんまり実感ないや……」
「うちもそう思ったで?」
おのおの座ってタオルで汗を拭いたり、誰かとお喋りしています。
私も鞄の中からスポーツドリンクを取り出します。
「ねぇ海未。新曲の歌詞の調子はどう?」
覗き込むように真姫が話しかけてきました。
「それが……」
「海未が手間取ってるなんて珍しいわね」
「すみません……」
「えっ、あっ、全然怒ったりだとか、催促しようとか思ってないから。ただ、何か相談に乗れることもあるかもしれないから、その時は相談に乗るわ」
ありがとうございます。真姫。
「なんというか……何を書いていいのやらわからないのです。ぼんやりとしたことはあるのですが、それが何なのかわからなくて」
「ふーん……」
腕を組んで、うなっている真姫。
流石に質問があまりにも抽象的すぎたでしょうか。
しばらくの後。
「そうね。なら、いっそのこと作詞することを忘れてみたら?」
「え?」
「なんっていうか、あんまり作詞するってことに意識しない方がいいと思うのよ。もし、作詞しなきゃって強迫観念になってるなら、一回忘れてみるのもいいと思うの。そしたらその書きたいことを発見できるかもしれないし。それに、別に私はいつでもいいから」
「なるほど……。そうですね。真姫には助けてもらってばっかりですね」
「そ、そんなことないわよ」
目を逸らして顔をほのかに赤らめます。照れ隠しなのか、きびすを返して戻っていってしまいました。
水分を補給し終えて、ふと見ると、ことりが練習着姿から制服へと着替えていました。
「ことり、もう今日は帰ってしまうのですか?」
「え!?あ、えっと~……ごめんね?私、次の衣装のデザインが固まったから早いうちに原型をつくっておきたくて」
ことりも、穂乃果と少し似ていて、やりたいことができるとそっちの方にとにかく気が向いてしまうタイプのように思います。
今は喫緊にライブがあるわけではありませんし、無理に引き止める理由もないです。
「大変ですね。ことりも。じゃあ、頑張ってくださいね」
「う、うん!」
着替え終わると、鞄を提げてみんなに挨拶してからことりは帰っていきました。
晩秋のこの季節、大分太陽も傾いてきて、日が暮れるのが早くなったのを感じます。
夏はうだるほど暑かったのに、今では少し肌寒いと思うような風が汗をかいた後の身にしみます。
「あ!!」
目をまんまるくさせて、大切なことを思い出したと表情で言わんばかりに穂乃果が声をあげました。
「そういえば私もおつかい頼まれてたんだったぁー!」
とのことで、練習を今日は早めに切り上げることにし、最後に通し練習をして今日は解散となりました。
早く終わってしまった、とはいってもせいぜい20分程度なのですが、家に帰っても稽古があるだけですし、今日は穂乃果の買い物について行こうと思います。
当然、日々鍛錬を重ねなければならないのは分かっているのですが……。まあたまにはこんな日があっても悪くないでしょう。
そんなことを考えながら自分の下足のロッカーを開けてみると、なにやら可愛いらしいデザインの便箋が。
これはもしや……ラブレター?いやいや、ここは女子高。ラブレターなはずありません。
便箋を手にとってみると、その装飾が手描きだと分かりました。さらに、ほのかに甘い香りがつけてあるようで、私の鼻腔をくすぐります。
『アルパカ小屋のところで、待ってます。もし忙しくなかったら、きてください。」
丁寧な、でも硬すぎず、やわらかな印象を受ける文字です。
嫌な予感がします。これはやはりラブレターではないか、そんな気がしてなりません。
少女漫画で見るような、学校の中の人気のない場所で待ち合わせて告白――そんなシチュエーション。
ましてや下駄箱になんて、ちょっとベタすぎる気もしなくもないですが。
ここまで手の込んだことをしてもらって、無碍にするわけには行きません。
当然、告白ではなく個人的に伝えたいことがある、という可能性もあるわけですから。
「ごめんなさい穂乃果、私用事思い出しました。ちょっと学校に残りますね」
「えー!海未ちゃんついに居残り授業!?」
「はぁ?穂乃果じゃないんですから」
「何気に酷いよね!?」
穂乃果と別れたあと、校門とは違う方向に歩き、アルパカ小屋を目指します。
「……を見……可愛……自…想…える」
小屋に着くと、ささやくような、しかし念仏のように繰り返す声が聞こえてきました。
「相手の目を見て、可愛く、可愛く……!やぁぁぁ、緊張するよぉ」
小屋の裏の陰に腰を下ろして、何やら本の内容を繰り返しているのは……ことり。
告白だなんて心配は杞憂に終わりそうです。もしくは。
「なんて言えばいいかな……?やっぱりここは――」
「ことり?」
「ひゃぁぁぁっ!?」
体をびくっとさせて飛び上がります。
すかさず手に持っていた本のようなものを背に隠して、驚きの抜けない表情で口をぱくぱくさせています。
「えっ!?え、海未ちゃんなんでこんなに早いの!?まだ練習終わってないよね?」
「やっぱりあの便箋はことりでしたか。字で分かりましたよ。今日は早く終わったんです」
「そ、そうなんだ。あは、あはははは……」
「それで、わざわざどうしたのですか?」
今日はここまでで。
超遅筆なのでいつ終わるか予想もつきませんが……。
「あのね……海未ちゃん」
「はい」
「ことりね?海未ちゃんのことが好きなの。友情とか、そういうのじゃなくて、恋愛の対象として、好きです」
つまらない、ほんの些細な予想が現実になってしまいました。
実際に言われてみると、かなりインパクトがあるもので、うまく思考がまとまりません。
正直、恋愛なんてあまり意識したことはありませんでした。ましてや同性愛なんて。
そんな私が、今ここで生半可な返事を出せば、きっとお互いに良くないはずです。
だから――。
「ことり。よく聴いてください。私は、ことりの気持ちは心から嬉しく思います……。でも、私はことりの気持ちに応えられません。ごめんなさい……」
心臓が大きく鼓動して、頭がほとんど真っ白な中で、言葉を組み立てて、返事をしました。
紅葉した落ち葉の絨毯に、カサッと乾いた音を立ててことりの手から本が落ちました。
……『必勝告白テクニック』。
全く、こんなものを真に受けてしまって。でも、それだけに、私に対することりの想いが余計に伝わってくるようで。
しばらくの静寂が私達の間に流れます。
「分かってた!いいの!私が一方的に言いたかっただけなの」
顔をあげて、いつもの笑顔を私に向けます。
ことりの気遣いが痛々しくて、さらにその原因が私にあるだけに、なんだかいたたまれなくなって。
笑顔を保ち続けていることりでしたが、やがてその目から涙がこぼれて。
「あ、あれ?ぐすっ……いや、これは違うの!」
必死に涙を制服の袖でぬぐう姿が、とても健気に思えて。
思わず体が勝手に動いてことりを抱きしめていました。
「ことり……本当にごめんなさい。でも、聴いてください。私は、ことりが嫌いなわけじゃないんです。お恥ずかしい話ですが、私は今まで恋愛なんてほとんど意識したことがありませんでした」
「うん……」
「それなのに、私がここで中途半端な答えを返しては、ことりに申し訳ないと思うんです。……今は、ことりの気持ちに対してこういう形をとらせてください」
「……それって、もしかしたらこれから好きになるかもしれないってこと?」
顔をうつむかせたままことりが呟きます。
「それは……そういうこともあるかもしれません」
実際に、ことりは私なんかよりとても可愛くて、女の子らしいです。
見た目自体もそうですが、仕草や正確も誰にも負けないくらい乙女だと思います。
でも、それはあくまで幼馴染の友人としての視点。
あんな言い方はしたものの、実を言うとことりを恋愛対称として見る、というのはあまりにも飛躍しすぎていて……できる気がしません。
こんな下手な同情は、むしろことりの想いを蔑ろにしているのかも知れません。
「……ありがとう。もういいよ」
そういって私の腕から離れていくことり。
「帰ろ?」
落ちた本を拾って、鞄を再び肩に提げて、まるで何事もなかったかのように気丈に接してきます。
その一方で私は、もうどんな顔で接していいのやらわからなくて。
―――――――――――――――
太陽が山の端にかかって、すでに夜の面影を見せています。
そんな町を眺めつつ、私とことりは帰路についていました。
耳に入るのは風や自動車の音と、私達の靴が地面を鳴らす音。
「……海未ちゃん」
沈黙を切り裂いたのはことりの方でした。
「なんでしょう?」
「海未ちゃん、穂乃果ちゃんのこと、どう思ってる?」
「いきなりですね……。それはもちろん大切な親友ですけど」
「あ、いや、そうじゃなくってね。その……さっきの私みたいな方の意味で」
意表をつく質問でした。
穂乃果に対して、私が好意を抱く……。
「……それは考えたことがないです。さっきも言ったように、あんまり恋愛だとか、そういうことに疎いので」
「そ、そうだよね!ごめんね!……か……ゃ…な」
「何か言いましたか?」
「えっ!?ううん、大したことじゃないよ」
―――――――――――――――
結局、昨日はあまり眠れませんでした。
真姫のアドバイス通り、詞をつくろうとしなかったせいか、幾分体は楽なような気はします。
眠気や気だるさに邪魔されて、やたらと授業に集中できません。
まあ、この単元はさほど難しいものではないので、家で復習したらなんとかなるでしょう。
穂乃果は……今にも寝そうに首をこくこくさせています。
そういえば、昨日ことりが私に穂乃果についてどう思うか、なんて質問してきたことを思い出します。
穂乃果がもし私と恋仲だったら、どんな関係になるんでしょうか。
少しだけ、想像してみましたが、正直今とあまり変わらない気が――。
それほど仲が良い、ということでしょうか。
ことりはというと、先生の話に時折あいづちを打ちながら熱心にノートを取っています。
と、思いきやことりの手が妙な曲線を描いたり、ぐるぐると回ったり……。
落書きでしょうか?それでもテストの点数が悪い、ということはないのでいいかな、とは思いますが。
ふと、昨日の告白の情景が脳裏に浮かび、少し体が熱くなってしまいます。
朝に出会ったときはなんとなくぎこちなかった私とことりでしたが、穂乃果がうまく話題を出してくれるお陰で、学校に着く頃には普段の調子に戻った……と思いたいところです。
そもそも、ことりはいつから私のことを恋っていたのでしょうか。あと、そのきっかけも。
昨日の帰り道は、時折どちらからともなく会話が始まり、またどちらからともなく会話が途切れ――。
結局、そのことについて聞けずじまいになってしまいました。
どうしたものかと思案に耽っていると授業の終了を告げるチャイムが鳴ってしまったので、席を立ちました。
休憩時間になり、中庭に出た私達は、いつもの場所で食事を始めました。
「はぁーっ!やっとお昼ごはんだよー!」
「穂乃果ちゃんったら、授業中ずっと首こくこくさせてるから、気になって集中できなかったよ~」
「ですがことりも、ノートに落書きしてませんでしたか?」
「ええっ!?見られてたの?」
「……実を言うと私もあまり先ほどの授業は集中できなかったので」
昼間の暖かい風に乗って穂乃果のパンの香りが漂ってきます。
私も自分のお弁当を食べ始めました。
「海未ちゃんのお弁当いっつも美味しそうだよね!」
穂乃果が今にもよだれを垂らしそうな顔で私のお弁当を覗き込んできます。
「そうですか?」
「うん!もう海未ちゃん私のお嫁さんになってご飯つくってくれない?」
「ええっ!?すっ、すみません私そういうのはまだ……」
「んふふ、冗談じゃん!海未ちゃんったらウブなんだから」
「もう……」
昨日の一件のせいで、ついそういう方向に考えてしまいました。
ちらっとことりの方を見ると、目が合ってしまいましたし――。
いや、目が合うなんてのはいつものことなのですが……。
その後は箸を進めつつ談笑し、午後の授業の開始時間が近くなったので教室に戻りました。
明けましておめでとうございます。
遅筆な上に年末年始のせいかペースが遅くて本当にすみません!
また夜か、そうでなければ明日以降にまた再開します。
午後の授業を済ませ、部室に向かいます。
部室のドアが見えると、一足先に駆け出して穂乃果が勢いよく戸を開けます。
「みんなー!」
「穂乃果ちゃん、おはようにゃ!」
「えっ、凛ちゃん……今もう朝じゃないよ?」
鞄を置いてパイプ椅子へとつく穂乃果の後を追って、私達も部室へ。
軽く挨拶を交わした後、長机の向かい側にいる、テーブルに肘をついて顔の前で指を組ませているにこが口を開きます。
「甘いわね、穂乃果。ガムシロップ直飲み並みに甘いわ!私達、アイドル業界じゃ、いつだろうと挨拶は『おはようございます』なのよ?」
「あぁ!なるほど……流石にこちゃん」
「でも明日になったら絶対忘れてると思うわ貴方達」
背もたれに深めに腰をかけて脚を組んでいる呆れ顔の真姫。
「なっ、私達がバカとでも言いたいわけ?」
「……バカじゃない。実際」
「その『達』ってもしかして凛も含まれてるのかにゃー……?教えてかよちん!」
「ええっ!?わ、花陽に振らないでよぉ」
思わぬパスを受けた花陽がたじろぎました。
相変わらず賑やかな部室です。
やっぱりここにいると自然と笑顔になって、それでいて落ち着きます。
私がそんなセンチメンタルな感情に浸っていると、それを塗りつぶすように穂乃果が声を上げます。
「あっ!そういえばね、今練習してる曲のね、振り付け思いついたんだ!」
「ですが穂乃果、振り付けはもう完成していますよ?」
「まあ、見て見て!あんまりうまくは踊れないけど……」
椅子とラックの狭い間に立ち、穂乃果がその部分を歌いながら踊ります。
確かに、歌詞に合っていてそれでいて元気で穂乃果らしく、可愛さを引き立てる振り付けだと思いました。
「どうかな?」
少し息を切らせながら、私達に聞きます。
「わぁ~っ!すごいよ穂乃果ちゃん!ことりはいいと思うなっ」
「へぇ~……結構いいじゃない。でもそれだと前のフレーズの部分の振り付けと合わなくなるんじゃない?」
「あっ、確かに……」
にこからの指摘を受けて、穂乃果は自分の振り付けとその前の部分の振り付けを軽くしてみて、足がもつれてしまいました。
間一髪で転ばずには済みましたが。
「なら、私が絵里と相談してみましょうか。絵里なら何かいい案を出せるしれませんし」
「そうだね!そういえば今日は絵里ちゃんと希ちゃんいないけど、生徒会かな?」
「そうみたいね。仕事を早く片付けることができたら来るって言ってたけど、もう時間もないわね」
「なら、私が後で行ってみます」
「穂乃果も行くよー」
ということで、部活の終了時間も差し迫ってきたので、今日の活動はここまでにして、解散となりました。
生徒会室へは、私と穂乃果とことりで行くことになりました。
「あの振り付けほんとに可愛いよ~」
「えへへ、ありがとね~」
私の数歩分ほど後ろで会話することりと穂乃果。
夕日の射す廊下を渡り、生徒会室の扉を開くと――。
「えりち……んっ」
「ぷはぁっ、ちょっ、海未!?」
「ええっ、海未ちゃん!?」
二人を除いて誰もいない生徒会室で、夕日の逆光が、高く詰まれた書類の陰を克明に削り出し、その間でキスをする絵里と希。
私に気付くと、二人ともすぐさま顔を離し、目を見開いてこちらを見てきました。
突然のことに頭が追いつかず、咄嗟にドアを閉じます。
「ほっ、穂乃果!ことり!今日はもう帰りましょう!!」
思わず声が裏返ってしまいます。
二人より少し先に歩いていて本当に良かった……。
「ええっ、どうしたの海未ちゃん」
「えっでも今絵里ちゃんと希ちゃんの声が」
「そんなことなかったですよ!?ほら、早く!」
ことりと穂乃果を両腕で通せんぼする形で二人を来た道へと押しやります。
「えっ、えっ、海未ちゃぁん!」
すると私の後方からドアが開く音がしました。
「待って海未!」
絵里と希が出てきました。なんて間の悪い――。
二人の冷や汗が少し遠めにいるのにありありと想像できます。
「二人ともいるじゃん!私、振り付けを考えてみたんだけど、それだと合わないところが出てきて、その相談に来たんだー!」
私の腕を上へ持ち上げ、するりと二人の方へ走っていく穂乃果。
「あっ、ちょっと!」
「どうしたの?海未ちゃん」
「い、いえ……」
怪訝そうに『むーっ』とうなることりを傍に、私はただはぐらかすことしか出来ません。
今日はここまでにします。
初夢のリベンジをしてきます。
―――――――――――――――
穂乃果が提案した振り付けは絵里達にも好評で、返答はまた夜ゆっくりつなぎ合わせの振り付けを考えてみるとのこと。
その後、なんとか穂乃果とことりには先に帰ってもらいました。
ことりはまだ怪しんでいたようですが。
ということで、現在生徒会室には私と絵里と希しかいません。
「う、海未……?あの……できれば、さっきのは内密に」
絵里はらしくない、ばつの悪い顔を浮かべています。
「それはもちろんです。でも、あんまり学校でそういうことは控えてくださいね?見つかったら大変ですよ」
「そうよね……。海未は、私達のこと幻滅した?」
「い、いえ!そんなことはありませんが」
「まあなあ……海未ちゃんも人のこと言えんもんなあ?」
「は、はあ?」
「うち見てもうたんよ。昨日海未ちゃんがことりちゃんに告白されてるとこ」
「はぁっ!?」
思わず素っ頓狂な声をあげてしまいました。
「いやなぁ?うちも流石に覗き見なんて趣味が悪いなぁと思ったんやけど……ついね」
「な、ななな……。ぜ、絶対に秘密にしておいてくださいよ!?」
いくら希とはいえ、自分が告白されているところを見られていたなんて……。
「そうなの……。それで、海未はどうしたの?」
「え、えーと……お断りさせていただきました」
「あら、そう。どうして?」
二人を注意するつもりだったのに、いつの間にか話がすりかわっています。
いろいろと質問攻めされ、恋愛相談みたいになっている気が……。
しかし、これは私とことりの問題であって……。
とは思いつつも、相談できる相手が欲しかったせいか、このまま打ち明けることで、いい答えをもらえるかもしれないと思ったり。
きっと、絵里と希が頼れる人達だからでしょう。
結局、私の頭の中のことりを大事に考える気持ちと、相談して楽になりたい気持ちは、後者が勝ってしまって――。
「なるほどね。まあ、しょうがないと思うわ。恋愛対称として見れないならいきなりそれは無理よね」
「それに、うち達は世間的に見たら、普通と違うわけやしね」
「で、結局海未はどうしたいの?」
「どっちつかずな答えをしてしまったんでしょう?」
その質問は、私をとても困らせました。
あんな曖昧な答え方をしておいて、ことりに期待を持たせてしまった。
私は、ことりと恋仲になる考えがなかったのにも関わらず。
しかし、私が今ことりの想いを受け入れたら、それはそれでことりの想いを踏みにじることになると思います。
でも、ことりには、笑顔でいてもらいたい。ことりが悲しむ姿は見たくない。そう思いました。
「海未ちゃん?」
「えっ?あ、すみません」
思わず長考してしまって、無言になっていたようです。
「まあ、あんな質問いきなりされても困るわよね。ごめんなさい海未」
「い、いえ。……私は、ことりに笑顔でいてもらいたいです」
「それでまだ付き合うのが早いと思うなら、ことりちゃんを好きになるしかないやん?」
希の言葉は、私をはっとさせました。
好きになる?
「告白から始まる恋もあってええやん。告白していきなりお互いが好きだなんてなかなか無いことやと思うよ?」
「そうね。私達ももともとはそうだったから」
「そ、そうなんですか?」
「もとは、うちがえりちに告白したんよ。そのときも、丁度今の海未ちゃんと同じような返答をされたんや」
「だから、聞いててなんとなくわかるのよね。海未の気持ちが」
「そう……なのですか」
「今度、一緒に遊びに誘ったりしてみたらええやん?そうしてもっと仲よくなって、それでも友達以上には見れなかったら、それでおしまい。そんな感じでええと思うよ?まあ、うちはことりちゃん側だったから、二人が恋人同士になることを応援するかな?」
「あ、話はまた帰り道でしましょう。そろそろ生徒は学校から出ないと」
絵里と希が職員室へ寄って戻ってくるのを校門のそばで待ち、絵里と希と帰りました。
珍しい組み合わせですが、こういうのも悪くないものです。
普通の部活とは違って、私達はあまり上下関係も強くないですし。
途中でコンビニへ寄り、そこで買った掌大のシュークリームを三人で頬張りつつ、いろいろな話を聞きました。
例えば、絵里と希が付き合うに至った話だとか。
終始照れくさそうな顔をしていたので、なかなか見れない顔を拝めた気がします。
―――――――――――――――
それから数日が経ち、私はことりを次の休みの日にどこかでかけないかと誘ってみました。
ことりは二つ返事で受け入れてくれました。
「おはよう!海未ちゃん」
「おはようございます、ことり。早かったですね。まだ時間まで15分ほどあったのに」
「海未ちゃんこそ、早めに出たことりより先にいるなんてびっくりだよ~」
「なんだか家にいるのも心もとなくて」
「えへへ、ことりも」
やはり衣装をつくっているだけあってか、ことりのファッションというのは、とても可愛らしいです。
もうすっかり街も天候も冬の様相で、今日は少し厚めのコートを羽織ってきました。
外に出かけるときは、最大限服には気を遣っているつもりですが、ことりと比較すると、なんだか自分の服がとてもみすぼらしく見えてしまいます。
「今日は何しよっか?」
「それが実は、特に考えていなくて……。無計画ですみません」
「いいよ~。あ、じゃあ適当にお店屋さんでも見にいこっか!」
「そうですね!」
電車に揺られ、いつもより少しだけ、行動範囲を広げています。
ショッピングモールのアパレルショップが立ち並ぶ通りを歩きます。
「わっ、このお洋服可愛い~!」
「ことりに似合うと思いますよ」
「えへへ、そうかな?海未ちゃんでも似合いそうだよ」
「い、いえ!私はこういうのは似合いませんよ」
「え~!このさり気ないフリルなんかが可愛くて、なんとなく、海未ちゃんっぽいと思うな!」
「私っぽくないです!第一、私が着てもらしくないでしょう?」
「でもライブの衣装なんてすごくふりっふりにつくってあるよ?特に海未ちゃんのは、もこもことか、ちょっと増量しちゃってるよ?」
「そうだったんですか!?全く……。気付きませんでした」
「後はね~、スカートの丈をちょ~っと短くしてたり……」
「……ことり」
戒めを込めてことりの肩をがしっと掴みます。
「ひゃっ、ひゃい!」
「それはいけませんよ……ねえ?」
「わ、私は海未ちゃんに似合うかなぁ~って思って……ね?」
「みっ、見えてたらどうするんですか!」
「アンダースコートはいてるから大丈夫だよ?」
「あっ、あんなのほとんど中身と同じじゃないですか!」
「そうかなあ?」
他のお店へ寄るたびに、私のところへこれでもかというほどの可愛い服を持ってきて、試着を強要されるものですからもうたまったものじゃありませんでした……。
放っておいたらずっとやらされそうな予感がしたので、お昼を回ったことを口実に、なんとか喫茶店へ誘導できました。
「はあ……なんだかもうとても疲れた気分です」
「うふふ、とっても可愛かったよ!海未ちゃん!あ、写真に撮っておけばよかった……」
「最後の方の服なんてもう知り合いに見られたらと思うとぞっとします……」
「お姫様みたいで可愛かったよ?」
「はっ、恥ずかしいから本当にもうやめてください……」
「ちょ、ちょっとやり過ぎちゃったかな?ま、まあ、ここで甘いもの食べてお昼からの元気だそ?ね?」
「はい……」
「あはは……」
ことりはレアチーズケーキ、私はチョコレートケーキを。飲み物はアールグレイを注文しました。
これだけで腹を満たせるのか多少心配でしたが、運ばれてきたものは想像していたよりも少し大きかったので、ひとまず安心です。
「わぁっ、美味しい~!」
「紅茶もいい香りです。初めて来たお店でしたが、ここを選んで正解でしたね」
チョコレートケーキの先端をフォークで切っていただきます。
「海未ちゃん!あ~ん!」
ことりがフォークにのったレアチーズケーキを私に向けました。
「ほ、他のお客さんもいるのですよ?」
「大丈夫だよ。ほら、あ~ん」
ことりの屈託のない笑顔を向けられては、意固地になるのはあまりにも無粋で、もはや不可抗力でした。
「あ、あーん……」
口の中に甘い味が広がります。私のは少しビターな味もあったせいか、よりことりのケーキの甘さが引き立ちます。
「どう?美味しい?」
「はい。とても美味しいです!せっかくなので私のも……」
「海未ちゃんからあ~んしてくれるの?嬉しい!」
「では、ことり。あーん」
「はい!あ~ん!」
私のフォークに乗ったチョコレートケーキがことりの口に収まり、再び自分のケーキに目を向けます。
「うん!美味しいよ~!」
ケーキと紅茶を頂きながらいろいろな話をしました。
話に花が咲き、随分と長い間お店に居座ってしまったような気がします。
それから、私達は雑貨店などを巡り歩き、私はアクセサリーとシャーペンを購入しました。
アクセサリーの方は半ばことりから押し売りされたようなものですが……。
『これ海未ちゃんに似合うと思うな~』と言って差し出してきた髪飾りを、促されるままに着けてみたら、ことりがやたらと可愛い可愛いだなんて言ってくるものですから、つい浮かれて……。
―――――――――――――――
部屋着に着替えた私は、ベッドへ倒れこみ、天井を仰ぎます。
今日は楽しかったですね……。
ほどよい疲労感を感じています。
なんとなく手持ち無沙汰だったので、机の上に置いたままの袋から髪飾りを取り出し、手で触って感触を確かめます。
ことり……。
私はことりに惹かれているのでしょうか?
いえ、そこまでではまだない……はず。
いつもは穂乃果、ことり、そして私の三人でいることがほとんどで、それが普通でした。
そんないつもと違う日を、ことりと一緒に過ごして、私はどう変わったのでしょう?
……わからない。
穂乃果なら、こういうとき、どうするのでしょうか。
携帯へ伸びつつあった右手を引っ込めます。
何を私は考えているのでしょうか。
もし、ことりと私が恋仲になったら、穂乃果はなんと思うのでしょう。
――きっと、祝ってくれるには違いありませんが、必然的に私達三人でいる、という機会は少なくなるはずです。
それが何故か怖いことに思えて。
私は、この曖昧な状態を維持し続けられるでしょうか?
それが無理な話だと、わかっているのに、そう自身に問いかけました。
相談したい……。
絵里や希ではなく、穂乃果の意見が聞きたい。
私のか弱い自制心が、安楽への欲望に侵され、手が、携帯へ伸びる。
メールか、電話か。
連絡先から「高坂穂乃果」を選択し、また手が止まる。
ここを一度触れば、穂乃果に繋がる。
結局、メールを選んだ私は、文面を考えるのにかなりの時間を費やしました。
できるだけ簡潔にしたつもりでしたが、少し長めになってしまったのは否めません。
送信する前に、もう一度読み返し、推敲します。
普段のメールのやり取りならば、推敲などということはしないのですが、いきなり相談を持ちかけてしまうので、せめて文章だけでも分かりやすくしたかったと、自分の行動を自分で意味づけしたりして。
無機質に響く時計の音と、自分の心臓の音がやけに大きく聞こえます。
そして、一思いにと、送信の文字を触りました。
返信を待つ間にと、私はお風呂を済ませました。
いつもより少し長めにお風呂に浸かり、眠気に意識を奪われそうになるのを抑えて、部屋に戻ります。
ドライヤーに手を伸ばしつつ、携帯を確認してみました。
『着信:高坂穂乃果 2件』。
穂乃果から電話が来ていたようで、驚きと焦りと少しの安堵が心からにじみ出るのを感じました。
私は、ドライヤーにかけていた手を離し、携帯の発信ボタンを押します。
最初の呼び出し音が鳴り終わる前に、間髪を容れずとでも形容できるくらい速く、穂乃果が電話に出ました。
『海未ちゃん?メール読んだよ』
「すみません。お風呂に入っていたもので……」
『うん。大丈夫』
やけに落ち着き払った声の穂乃果。
「すみません、突然こんな……」
『いやいや、いいって!困ったときは力になりたいから』
事の経緯を改めて話しました。
メールより少し詳細に。
ことりに告白されたこと、でもどうしていいのかわからなかったこと、ことりと遊んでみたこと、それでもよくわからないこと。
回想していくように話しました。
途中、自分でも何故かわからないのですが、目が熱くなって。
咽びそうになるのを飲み込んでこらえました。
『そんなこと、そんなに早く決めなくていいんじゃないかな。きっと海未ちゃんの思ってることはことりちゃんにも伝わってると思う』
「そう……でしょうか」
『なんなら、私がことりちゃんに言って確かめてあげようか?』
「い、いえ!それは結構です……」
『だ、だよね。冗談冗談……って、冗談でもなかったけど、ごめん』
「別に謝る必要はありませんよ。むしろこっちが謝りたいくらいで」
『っ……うん』
「夜遅くにすみませんでした。穂乃果。大分気持ちが楽になりました」
『そう?』
「じゃあもう切ります」
『うん。おやすみ、海未ちゃん』
「はい、おやすみなさい。穂乃果」
ピッと、通信が途絶えるのを確認し、少し間をあけてから携帯を再び机に置きました。
半分くらい乾いてしまった髪を、手櫛で整えつつドライヤーで軽く乾かしました。
髪を乾かし、床に就こうと椅子を立つと、ドアがノックされました。
私が『どうぞ』と促すと、母が入ってきて、私の部屋のテーブルの前に正座します。
次いで私も反対側に正座しました。
「海未さん、最近弓道やスクールアイドルの方はどうですか?」
「ええ、楽しいですよ」
「そうですか。なら良かったわ。なんだか最近元気がないように感じられたので」
「大丈夫ですよ。もう」
『ふふ』と柔和に微笑み、部屋から出る母を見送り、改めてベッドの中へ。
こういうのって、やはり雰囲気やオーラから悟られてしまうものなのでしょうか。
そんなことを考えていると、だんだんと意識が遠のき――。
―――――――――――――――
吐く息が白くなり、誰かの庭に植えられた木はもう葉を冠しておらず、つかの間の儚さに身を染めていました。
「おはよ~、海未ちゃん」
「あ、おはようございます。ことり」
「あれ、穂乃果ちゃんは?」
「まだ来てないみたいです」
それから、待てども待てども穂乃果は来ませんでした。
「何かあったのでしょうか?」
「風邪とかかなぁ……心配だね」
時刻を確認すると、そろそろ学校へ向かわなくては遅刻しそうな時間になってしまっていました。
「……今日はもう行きましょうか」
「うん……そうだね」
「あら、穂乃果は?」
ことりと私が屋上のドアを開くと、暖かそうなスポーツ用の防寒着に身を包んだ絵里がそう聞いてきました。
「分かりません……。先生は欠席だと仰っていましたが」
「メールしても反応がないの」
「心配ね」
「ええ……」
「穂乃果のことだから、どうせ布団をきちんとかけないで寝て、風邪でも引いたんでしょ」
「とかって真姫ちゃん、実はすっごい心配してるもんね?」
「な、何いってるのよにこちゃん」
「きっと穂乃果も真姫が心配していると聞けばすぐよくなりますよ」
「海未まで何言ってるのよ!」
今日はここまでとします。
長い間放置してしまい申し訳ないです。
2月になるとますます多忙になる予感なので、急ピッチで作っています。
もしよろしければこれからも長い目でお付き合い下さい。
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翌日朝、いつもの待ち合わせ場所に一番に着きました。
昨夜メールを穂乃果に送ると、少し体調を崩していたと返信がきました。
今日は学校に行けると言っていたので、今は二人を待っている状態です。
少し早く来すぎてしまいましたね……。
特にすることはなく、かつ何かを考えるという気分でもなかったので、首をわずかに上げて、灰色の空を眺めていました。
空を低く飛ぶ鳥が視界を横切りました。
天気予報で午後から天気が荒れるとのことだったので、今日は傘も万全です。
「…み…ちゃ…」
今度は鳥のつがいが飛んでいます。
するといきなり視界が黒いものに遮られ――。
「もう!だーれだ!」
顔に毛糸の感触。
少し怒気を孕んでいますが、聞き慣れた声。
「ことり?」
「正解!……もう、さっきから呼んでたのに」
「ごっ、ごめんなさい!ぼーっとしてました」
どこまでも灰色で、のっぺりとしていて、何となく吸い込まれてしまいそうだと思っていたら、どうやら本当に意識を吸い込まれつつあったようでした。
「海未ちゃーん!ことりちゃーん!」
振り向くと、小走りの穂乃果がいました。
穂乃果の靴の音と、振り回されている鞄の中身がぶつかっている音がします。
「おはよう~」
「おはようございます、穂乃果」
「体調はどう?穂乃果ちゃん」
「もう大丈夫!心配かけさせちゃってごめんね……」
見た限りでは元気そうな様子で何より。
「あ、昨日の部活はどんな事してたの?」
「いつも通りでしたよ。あ、真姫が心配していました」
「えっ、嘘っ!これがにこちゃんの言ってたツンデレってやつなのかな?」
昨日は幾分良い天気でしたが、ここ最近を振り返れば、空はずっと雲に覆われていて、少し気が滅入ってしまいそうです。
それとも、そんな風に感じてしまうのは、すでに私の気が滅入っているからなのでしょうか?
あれこれと考えすぎて暗い気持ちになっては、何かに助けられたり、気を紛らさせてもらえたり、そしてまた考えての繰り返し。
私の反対側を歩くことりにちらと目を向けると、にこやかに見つめ返されました。
ことりは何を思っているのでしょうか。
最近の私は、ことりのことばかり考えているような……。
―――――――――――――――
「じゃあ今日はこれで解散ね」
「かーよちん!帰るにゃ~!」
「真姫ちゃんも帰ろ?」
「それじゃあみんな、また明日にこ!」
「あ、海未」
絵里に話しかけられ、帰り支度をしていた手を止めます。
「ちょっとこの後いいかしら?」
「ええ。大丈夫ですが」
「海未ちゃん、校門かどこかで待ってよっか?」
「いえ、平気です。追いつけそうなら追いつきますから」
何があるのかは大体想像がつきました。
「ごめんね海未」
「もしかして、あの話ですか」
「そや、あの話。いやしいんやけど、どうしても気になって……。聞くにもなかなかタイミングもなかったし」
あの話、とはことりと私の話です。
しかし、私達のことが当事者のことりと私を含めても、μ'sの半数以上に知れ渡っているのですよね……。
まあ、私から喋ってしまっているのですが……。
「それで、確か一緒に遊びに行ったのよね?」
「ええ。ですが……おそらくお二人が望んでいるようなことにはなっていませんよ」
「ま、そうよね」
三人でことりと私の話以外にも、いくつか別の話でもしばらく喋っています。
すると、ぶーっと、けたたましい音が部室に響きました。
音の方へ目を向けると、穂乃果の携帯がありました。
メールか電話かわかりませんが、テーブルに置いてあるので、携帯がテーブルと一緒に振動しています。
「あら、これ穂乃果の?」
「ですね。帰りしなに届けに行きます」
振動しながら位置を変えている携帯を覗くと、『お母さん』からのメールでした。
「じゃあもう今日は帰ろか」
「そうね」
私を含め三人とも、すでに鞄の用意は済んでいたので、すぐに部室から出ました。
一旦ここまでで。
どなたか雪穂が海未とことりをどう呼んでいるかわかりませんか?
ストーリーが完全に破綻してしまって先が思いつかない状況が続いてます……。
一度最初から練り直して改めて再開します。本当すみません。
このSSまとめへのコメント
続きたのしみにしてます
ことうみかよ…もういいや
ここまできたなら最後まで読みたい!
期待してます!