真琴「ガンプラバトル?」 (92)
四葉邸 執務室
ニルス「この度はスポンサーになっていただきありがとうございます。よもやご協力いただけるとは。やはり持つべきものは人脈だ」
ありす「ニルスさんのお話を聞いて、私もPPSEの技術に興味を持ちましたので」
ニルス「しかし油断はできません。フィンランドのネメシスも何か企んでいるらしいので」
ありす「メタンハイドレートの採掘王……大きな障害になることは間違いなさそうですわね」
セバス「お嬢様」
ありす「あら、どうしました?」
セバス「マナ様たちがお見えになりました」
ニルス「お客さんですか。それでは失礼した方がよさそうですね」
ありす「構いませんわ。いい話のタネになると思います」
ニルス「はぁ」
マナ「ありす、来たよ! ってあれ、お客さん? しかも外人さん」
ニルス「どうも」
真琴「そういうことなら後にしてくれてもよかったのに」
ありす「たまにはこういうのもいいと思いまして」
マナ「こういうの?」
六花「あ、もしかしてあなた、ニルス・ニールセン……?」
ニルス「おや、ご存じとは」
真琴「知ってる人?」
六花「13歳で3つの博士号を取得して世界を震撼させた若き天才、アーリー・ジーニアスの異名で知られる、まさに神童よ」
マナ「六花よりすごいの?」
六花「比べるのもおこがましいわ。レベルが違いすぎる」
ニルス「恐縮です」
ありす「ニルスさん、紹介いたします。私の友達の相田マナちゃん、菱川六花ちゃん、剣崎真琴さんです」
ニルス「改めまして、ニルス・ニールセンです」
真琴「で、そんなすごい人がどうしてありすのところへ?」
ありす「ニルスさんはアメリカ代表としてガンプラバトル選手権の世界大会に出場することになりましたの。今日はその後援契約のため、こちらにいらしたのです」
ニルス「ありす嬢とは幼い頃、共に空手の稽古をしたことがありましてね。古いツテです」
六花「人の趣味にどうこう言うのもなんだけど、あなたのような人がなんでガンプラなんて?」
ニルス「僕の場合は研究の一環です。詳しい内容は言えませんが」
マナ「ガンプラバトルかぁ、そういえば二階堂くんが「予選敗退したー!」って騒いでたなぁ」
真琴「ねぇ」
マナ「なぁにまこぴー」
真琴「ガンプラバトルってなんなの?」
ニルス「ガンプラバトルを知らない?」
六花「まぁ、無理もないか……この子、興味ないものにはとことん疎くて」
ニルス「そうですか」
マナ「あのねぇ、ガンプラバトルっていうのは……」
セバス「ここは私からご説明いたしましょう」ヌッ
マナ「うわっ、びっくりした!」
セバス「まずはこちらをご覧ください」スッ
真琴「ロボットのおもちゃ?」
セバス「これがガンプラ。すなわちガンダムのプラモデルです」
セバス「ガンダムとは、アニメ「機動戦士ガンダム」を原点とする多数の作品群のことであり、このRX-78-2に連なる系統の機体名でもあります」
真琴「つまりはアニメの商品ってことよね」
セバス「左様でございます」
真琴「でもこれ、よく見るとすごい。ところどころ汚れてて、傷も入ってて、本当に使い込まれた機械のよう」
セバス「ガンダムは戦争を題材とした作品であり、ロボット――モビルスーツは兵器なのです。それをいかにリアルに表現するのかも、ガンプラの楽しみ方のひとつ」
マナ「セバスチャンさんずいぶん詳しいね」
ありす「ああ見えてファンなんです、ガンダムの」
真琴「で、これをどうやって戦わせるの?」
セバス「専用のバトルシステムを使用いたします」ピッ
六花「うわ、モニターが下りてきた」
マナ「やけに力の入った説明だなぁ」
セバス「システムにガンプラをセットすると、フィールド内に充填されたプラフスキー粒子の力により、意のままに操縦することが可能になります」
真琴「これがガンプラバトル……」
セバス「魅力あるアニメの世界観やガンプラ自体の拡張性もあって、今やガンダムの市場は世界規模です」
真琴「そんなにも多くの人を魅了しているのね、ガンダムって……」
セバス「伊達ではありません」
ニルス「もしよければ、実際に見てはいかがです?」
真琴「え?」
セバス「それは私と対戦する、という解釈でよろしいのですかな?」
ニルス「ええ。そのガンダムから判断するに、セバスチャン殿はなかなかの手練れと見える。ぜひ手合せ願いたい」
六花「なんという急展開」
マナ「でも面白そうじゃない?」
ありす「どうします? セバスチャン」
セバス「いいでしょう。かのグレコ・ローガンを破ったその実力、見極めさせていただきます」
ありす「それでは、バトルルームに行きましょうか」
四葉邸 バトルルーム
『Please set your GP-BASE』
ニルス「公式大会と同じ7ブロックタイプか。流石は四葉だ」
セバス「これなら場外負けなどというつまらぬ決着はありますまい」
『Beginning Plavsky-Particle dispersal』
六花「ありす、さっき言った「こういうの」ってこういうことね」
ありす「はい。真琴さんなら食いつくと思いまして」
真琴「私は魚か何かか」
マナ「実はあたし、マトモに見るの初めてなんだよね、ガンプラバトルって」
六花「私も」
真琴「すごい、粒子からステージが出来上がっていく」
『Field one “space”』
ニルス「それでは」
セバス「うむ」
『Please set your GUNPLA』
ニルス「百式、参ります!」
セバス「Gバウンサー、スクランブル!」
『Battle start』
セバス「ほう、準決勝まで使っていた機体」
ニルス「アレは余興で使うには過ぎた代物です。そちらこそ、モスグリーンのGバウンサーとは意外なチョイスを」
セバス「優れた機動力と確かな打撃力こそがMS戦の要です」
互いを視認した両機は牽制にライフルを数発撃ち込む。
交錯したビームはどれも命中はせず、目標の脇を抜けて消え去った。
ニルス「なるほど、マズル内に螺旋状のモールドを掘ってDODSの回転数を上げているのか」
セバス「流石の観察眼ですな。しかし、それだけではありませんぞ!」
バインダーのスラスターを展開し、Gバウンサーは一気に距離を詰める。
百式は頭部バルカンで迎撃するが、掲げられたシールドにことごとくが防がれる。
クロスレンジ。
振り下ろされる鉤爪状のシグルブレイドを、百式は左手にサーベルを抜いて受け止めた。
ニルス「左腕関節の負荷増大? この重さは……金属パーツか!」
セバス「御名答!」
押し込まれるシグルブレイドにサーベルが弾かれ、退く百式の胸に浅く傷が刻まれる。
ニルス「これしき!」
即座にライフルで追撃防止。
しかしGバウンサーは左腕を大きく振り、それに機体を追従させる形でビームを回避した。
セバス「質量の増大はAMBACにも一役買っているのです」
ニルス「変則機動も視野に入れての改造とは……お見事!
更に撃ち込まれるビーム。しかしGバウンサーの爆発的推進力は偏差射撃すらも容易に振り切る。
痺れを切らしたニルスはライフルを捨てて右手にもサーベルを抜き、前に出る。
ニルス「しかし、バルカンの迎撃が無ければ!」
セバス「やはり付け込みますか!」
機動力の高い機体に対し、単発威力を強化したドッズライフルでは対応しきれない。
接近を許したGバウンサーは、突き出されたサーベルをシールドではねのけた。
しかしすぐに2本目が来る。
それが振り下ろされる前にスラスターを全開。体当たりを喰らわせ、弾き飛ばす。
ニルス「なんの!」
百式の左手からビームサーベルが投擲された。
回転しつつ迫ったそれはGバウンサーの左腕とバインダーを付け根から切り離す。
ニルス「貰った!」
好機とばかりに百式は吶喊する。
セバス「ぬう!」
ビームサーベルの一閃がドッズライフルを切り捨てた。
爆炎が両者の視界を遮る。
セバス「ハアッ!」
そこからGバウンサーは炎を突き抜けて百式の顔面に右ストレートを叩き込み、頭部を撥ね飛ばした。
ニルス「くっ! だが!」
セバス「決めさせていただく!」
体勢を立て直し、再度迫る百式。
Gバウンサーもサーベルを抜き、突っ込む。
――激突。
打ち付けられた剣と剣は何度も刃をぶつけ合い、薙ぎ、いなし、受け止める。
そして大きく弾かれ合った後、互いに繰り出すは刺突。
その切先は胴体を確かに貫き、2機のモビルスーツは同時に沈黙した。
『Battle ended』
セバス「予備機の百式で私の最強機体であるGバウンサーと相討ちとは、いやはや、流石はアーリー・ジーニアス。お見事でした」
ニルス「あなたも素晴らしい腕をお持ちだ。選手権に出場なさったらよかったのに」
セバス「いえ、私には仕事がございますので」
パチパチパチ……
ありす「お2人とも、ありがとうございました。とてもいいバトルでしたわ」
マナ「うんうん、なんていうか、圧倒されちゃったね。まさかこんなに迫力のあるものだったなんて」
六花「いままで所詮おもちゃの戦いだと思ってたのが全否定された気分ね」
真琴「世界を魅了するだけのことはあるわ。戦っている最中の2人の顔は、まさに戦士のそれだったもの」
ニルス「興味を持ったのなら、あなたたちもガンプラを作ってみてはどうです? この世界は来る者を拒みません」
マナ「いや、そこまでは、ねぇ……」
六花「うん……」
真琴「……私、やってみたい」
六花「え?」
マナ「マジなのまこぴー?」
真琴「たしかにこれはおもちゃかもしれないけど、2人と彼らのガンプラからは「本気」が感じられた。そこまでのことができるのなら、私もそれを体感してみたい」
マナ「マジだ」
六花「マジね」
ありす「そういうことなら、私も協力させていただきますわ」
ありす「セバスチャン」
セバス「は。では皆様、どうぞこちらへ」
ニルス「あ、僕はここで失礼させていただきます。まだ契約先を回らなくてはいけないので」
四葉邸 倉庫
ズラーッ
マナ「うわっすごい」
六花「これ全部ガンプラ?」
セバス「一応、今まで発売された物はほとんど揃っております」
真琴「こんなにたくさん……」
セバス「真琴様は初心者故、私が入門に最適なキットを選んで差し上げましょう」
真琴「悪いわね」
セバス「……ふむ、やはりこれが手頃でしょうか」
真琴「これは……」
セバス「1/144HGガンダムAGE-1でございます」
セバス「スタンダードな構成、適度な要処理箇所、良好な可動域とプロポーション、以上の点を鑑みて選定いたしました」
マナ「どう? できそう?」
真琴「なんとかやってみる」
六花「前例から見てなんか不安なんだけど……」
ありす「そこはセバスチャンがフォローしますので、大丈夫かと」
セバス「それではさっそく取り掛かりましょう」
製作室
セバス「まずはパーツの切り出しです。解説書に従い、指定されたパーツをニッパーで切り取るのです」
セバス「ここで注意すべきは、ニッパーの刃をパーツに密着させないこと。下手をすればパーツを傷付けたりえぐったり、後の作業がやりにくくなったりしてしまうからです」
セバス「これは基本中の基本。初歩の初歩です。必ずゲートを数ミリ残すよう、お願いします」
真琴「ゲートを残して……切る」パチン
セバス「次はゲートの処理。飛び出したゲートを除去して面を均一にする作業です」
セバス「これには方法が複数あります」
セバス「ひとつは、ニッパーの刃を密着させて切る方法。ランナーに付いた状態よりもスペースが取れるので、気を付ければきちんと切り取ることができます」
セバス「ふたつ目は、デザインナイフで削り取る方法。切れ味がたいへん良いので扱いには注意が必要ですが、比較的きれいに仕上がります」
セバス「みっつ目は、ヤスリで削る方法。これが一番きれいに処理できますが、ゲート周辺も削られてしまうので、ゲートが取れた後も目の細かいヤスリで面を均す必要があります」
セバス「基本はこの3種の方法を複合的・段階的に行い、ゲートを処理します」
マナ「プラモデルってこんなに手間のかかるものだったんだ」
六花「こんなのちまちまやってたら集中力いるわよね」
セバス「手間をかければかけるほど、それに見合ったものが出来上がる。ものづくりとはそういうものです」
ありす「どうですか? 真琴さんの様子は」
セバス「やはり飲み込みは良好です。手先も器用でらっしゃる。聞けばトランプ王国でも造形や工作の経験があるそうで」
六花「それも王女様の趣味ってヤツ、なのかな?」
マナ「さもありなん」
3時間後
真琴「できたわ」
マナ「すごいまこぴー!」
真琴「まだまだよ」
セバス「今回は初めてということもあり、スミ入れ、部分塗装、ツヤ消しだけの簡単仕上げとさせていただいました」
六花「と言われてもよく分からない」
マナ「できたってことは?」
真琴「もちろんバトルもするわ」
セバス「それではチュートリアルを始めましょう」
バトルルーム
セバス「ガンプラバトルを行うには、このGPベースに機体情報を登録する必要があります」
セバス「……これでよし」
OPERATOR
BUILDER:MAKOTO KENZAKI
FIGHTER:MAKOTO KENZAKI
GUNPLA
SCALE:1/144
CLASS:HG
MODEL №:AGE-1
NAME:GUNDAM AGE-1 NORMAL
『Please set your GP-BASE』
真琴「ここに置けばいいの?」
セバス「はい」
『Beginning Plavsky-Particle dispersal』
セバス「準備が完了したらプラフスキー粒子の散布が開始され、立体映像でバトルフィールドを形成します」
『Field two “desert”』
真琴「砂漠……」
セバス「今回は地上での戦闘となります」
真琴「ステージってどのくらいあるの?」
セバス「ご覧になった宇宙と砂漠の他に、月面、森林、海上、岩山、雪原、市街地などから選択可能でございます」
セバス「ステージによっては性能が低下したり使用不可能になったりする機体もありますので、その点は機体設定を確認しておくと良いでしょう」
真琴「このAGE-1は大丈夫なの?」
セバス「汎用機故、問題なく使用可能です」
『Please set your GUNPLA』
セバス「それでは台座に機体をセットし、開始しましょう」
真琴「わかったわ」
『Practice battle start』
…………
『Trial battle ended』
セバス「ふむ、初回でCPレベル4までを撃破とは。やはり素質がありますな」
六花「なんか才能あるみたいね」
マナ「鍛えたらすごいことになりそう」
ありす「ならばこれを目指してみるのはどうでしょう」
マナ「何のサイト?」
六花「世界大会開催記念、女子限定ガンプラバトル大会?」
ありす「出場者を募集しているようです」
マナ「まこぴー、どうする?」
真琴「そうね、やるからには何か目標があった方がいいかもしれない」
六花「決まりみたいね」
セバス「そういうことでしたら、機体の更なる強化、操縦技術の向上は急務ですな」
ありす「指導の方はお任せしてよろしいですか?」
セバス「むろんです」
真琴「よろしく頼むわ」
真琴「でも機体の強化って、改造なんてまだできないわよ」
セバス「そこはご安心下さい。AGE-1は四肢換装システム、ウェアライズ機能が搭載されており、容易にカスタムが可能なのです」
真琴「手足が変えられるのね」
セバス「規格が合えばどの機体でも基本的に組み替え自由なのがガンプラの良いところです」
ありす「どのような強化プランをお考えで?」
セバス「そうですな、先のチュートリアルを見る限り、やはり真琴様は近接戦闘と小回りの利く機動が得意のようです」
マナ「そりゃキュアソードなんだからそうだよねぇ」
セバス「なので腕部はレイザー、脚部をスパローにしたテクニカルタイプにしようかと」
六花「だからそう言われてもわかんないって……」
セバス「レイザーは両腕に大型の実体剣を持った装備、スパローは斥力推進システムを搭載した高機動・高運動性を誇る装備です」
マナ「つまりすばやく動いて切る、って考えかな?」
真琴「理想的ね」
セバス「しかしどちらもピーキーな装備です。早急に機体を完成させて操作に慣れましょう」
製作室
セバス「こちらがレイザーウェアとスパローウェアです」
真琴「なんと剣が真っ白」
セバス「レイザーウェアは雑誌付録の限定品なのです。可能な限りの色分けはされてはいますが、コスト面で妥協せざるを得ない部分が多くあります」
真琴「これは塗装をする必要があるわね」
セバス「この際ですから、オリジナルカラーにされてみてはいかがでしょう」
真琴「色を変えちゃうの?」
セバス「ガンプラでは一般的なことです」
マナ「だったらここは紫でしょ!」
六花「やっぱり?」
真琴「もちろんそのつもりよ」
ありす「しかし、いきなり塗るというわけにもいかないでしょう。まずはシミュレーションをしてみませんと」
マナ「シミュレーション? そのタブレットで?」
ありす「セバスチャン」
セバス「は」
…………
セバス「完成予想図の線画です。ペイントツールでカラーリングをお試し下さい」
六花「作るの早すぎでしょ……」
セバス「設定画をコラージュしただけですので」
真琴「とりあえず私は製作に入るから、色はそっちに任せていい?」
マナ「うん、任せて!」
数日後
真琴「よし、これで完成……!」
ありす「壮観ですわ」
マナ「時間かけた甲斐があったよー!」
六花「やればできるものね」
セバス「それでは機体情報を更新しましょう。機体名はいかがなさいますか?」
真琴「考えてた名前があるわ」
マナ「なになに?」
真琴「テンペスト」
六花「嵐?」
真琴「ソードハリケーンから取ってみたの」
ありす「なるほど」
AGE-1S/R ガンダムAGE-1テンペスト
武装
・レイザーブレイド×2
・ビームショットキャノン×2
肩部と脚部をスパロー、腕部と腰部をレイザーに換装。
フェイス部はへの字スリットを埋め、胸部のAマークはスペードに変えてある。。
サイドアーマーはGエグゼスのグレネードランチャーを改装したビーム散弾砲に変更。
膝部ニードルガンはオミット。
カラーリングはキュアソード準拠の紫系統。センサー類は青紫。
真琴「あとはこの機体に慣れなきゃ」
ありす「大会まであまり日がありませんが」
マナ「大丈夫だよ、なんとかなるなる!」
六花「そんな無責任な」
真琴「けど、できるだけのことをやるしかないわ。さっそくテストマニューバを」
セバス「バトルシステムはプラクティスモードで起動してあります」
『Practice battle start』
真琴「これは……重心が崩れてる?」
セバス「レイザーブレイドは重金属を積層させた実体剣です。腕に負担のかかるこの装備をいかに操れるかが重要となります」
真琴「肩のスラスターで負担を軽減して……!」
マナ「正面に遺跡の残骸が!」
六花「このままじゃぶつかる!」
真琴「このじゃじゃ馬っ!」
両脚を前方に突き出し、逆噴射と斥力フィールドで急制動。激突寸前で停止し、バックジャンプ。
マナ「ふう、危なかった……」
六花「慣性が腕にかかるのなら、それを利用するのも手よ」
真琴「そうだ、セバスチャンがあれで回避機動を取っていたみたいに!」
ありす「大事なのは力に飲みこまれないことです。大きな力であればあるほど、御することで得られる利は大きいですわ」
真琴「腕に機体が振り回されるんじゃなくて、腕で機体を振り回す!」
砂上に着地したAGE-1テンペストは再度、遺跡へと急加速する。
最高速までスピードを上げてもなお、止まらぬ気配は見せない。
六花「そんないきなりは無茶よ!」
真琴「百も承知!」
数十メートル手前でダイブし、ハンドスプリングで跳ね上がるAGE-1。
そのまま細かな噴射で姿勢制御し、遺跡の岩壁に沿って急上昇。
真琴「敵機を投入して!」
セバス「了解しました。レベル7を投入いたします」
砂山が弾け、そこから飛び立つは黒き翼を広げし怪鳥。
『Trial battle start』
マナ「なにアレ!? 変なガンダム!」
セバス「GAT-X370レイダーガンダム。人面鳥型モビルアーマーへの可変機構を備えた強襲用モビルスーツです」
レイダーはAGE-1を察知すると機首と肩部の機関砲から牽制射をしつつ接近する。
AGE-1は素早く射線上から離脱し、降下しつつ追ってくるレイダーにビームショットキャノンを撃ち込む。
瞬時に変形し、シールドで散弾を防ぐレイダー。そしてまたMAに戻り追撃を再開する。
真琴「後方迎撃にも対応してくるか……!」
マナ「レベル7ってどのくらい強いの?」
セバス「地区予選ベスト4程度です」
六花「それってけっこう強いんじゃ……」
AGE-1は遺跡地帯の入り組んだ場所に進入した。柱が乱立しており高速で飛び抜けるには非常に危ない。
ありす「まさか、あそこを突破するつもりですの?」
真琴「ここで振り切る!」
AGE-1は眼前に現れる柱を斥力推進とAMBACの併用で次々と回避し、避けきれぬものはレイザーブレイドで切り倒しつつ、スピードを保ったまま駆け抜けた。
マナ「すごい!」
しかし追いすがるレイダーは、口部のビーム砲で柱を一掃し、悠々と追ってくる。
六花「そんなのアリ!?」
セバス「高火力がモノを言いますな」
真琴「だとしても!」
砂漠に出たAGE-1は大きく跳び、遅れて出てきたレイダーを眼下に捉えた。
真琴「てああああああっ!」
急降下しつつ振り下ろされるレイザーブレイド。
レイダーも振り向きながら変形し、破砕球を射出する。
一閃、両断される破砕球。
その直後に高出力のビームが来るが、AGE-1はフォロースルーを利用したAMBACでやり過ごす。
着地し、一気に飛び込むAGE-1。
ブレイドを振りながら脇を抜ければ、背後のレイダーは真っ二つになっていた。
爆発。
『Trial battle ended』
セバス「よもや初陣でここまで使いこなすとは。驚きでございます」
マナ「ホントすごいよまこぴー!」
六花「これなら大会も安心していいんじゃない?」
真琴「いや、まだ思い通りにいかないところもある。違和感が消えるまでは安心できない」
ありす「すごい気合の入り様ですわ」
真琴「よし、もう1戦行くわよ!」
大会当日
けやきが丘商店街 会場
マナ「いよいよだね、まこぴー!」
六花「あれだけ特訓したんだから優勝しなさいよ」
ありす「がんばって下さいね」
真琴「あんまりプレッシャーかけないでよ」
六花「……にしても、良かったの?」
真琴「何が?」
六花「だって、剣崎真琴の名前でエントリーしちゃったんでしょ? 絶対騒ぎになるでしょ」
ありす「御心配なく、物陰にガードマンが控えておりますので」
マナ「うわぁ、用意周到」
ありす「……あら?」
マナ「どうかした?」
ありす「ニルスさんがいらっしゃいます」
六花「あ、ホントだ」
真琴「なんでこんなところに」
ありす「ニルスさん」
ニルス「おや、ありす嬢、なぜこんなところに」
六花「それはこっちのセリフ」
ありす「真琴さんが出場しますの。それで応援に。そちらは?」
ニルス「ああ、もう1軒のスポンサー、ヤジマ商事の令嬢に捕まりまして」
ありす「まぁ、キャロラインさんが」
ニルス「やはりご存じで」
ありす「ええ、パーティーで何度かお会いしました」
ニルス「どういうわけかガンプラ製作と操縦指導をさせられて、もう散々ですよ」
ありす「スポンサー相手に断ることはできませんものね」
キャロ「あら、ありすさんではありませんか」
ありす「お久しぶりです」
キャロ「聞きましてよ。四葉財閥もニルスさんのスポンサーになられたと」
ありす「はい、昔からのよしみで頼まれまして」
キャロ「ところで今日はなぜこちらに?」
ありす「こちらの剣崎真琴さんの応援です」
キャロ「けっ! 剣ざ――」
ジロッ ジロッ
キャロ「け、剣崎真琴って、なんでアイドルがガンプラバトルを?」ヒソヒソ
ありす「うちのセバスチャンとニルスさんとのバトルを見て興味を持ちまして」
真琴「あんまり騒がないでね。面倒事にはしたくないから」
キャロ「かえって自分から面倒事に突っ込んでいってる気がしますが……」
『それでは、第1試合の出場選手をご紹介します』
『聖鳳学園中等部1年、コウサカ・チナさん。使用するガンプラは、ベアッガイⅢ』
『桜坂高校2年、イマイ・アリスさん。使用するガンプラは、ノーベルガンダム・デコです』
マナ「わ、何あのガンプラ、クマだよ、クマ!」
六花「もう片方はセーラー服よ」
真琴「ガンダムって何でもアリなの?」
ありす「30年以上の歴史があるものですから、それだけやっていればああいうものもあるんじゃないでしょうか」
真琴「でもガンダムって戦争のアニメでしょ? あんな兵器があるとは思えないけど……」
『Battle ended』
マナ「あのクマ見た目以上に強い!」
真琴「外見はかわいいけど、動きはかなりいいわね。確実な回避と正確な狙い。意外と手強い」
六花「あ、次のバトルにまたクマが出る」
マナ「なんだって!?」
ありす「でもさっきのクマよりかわいくありませんね……」
六花「妙な不気味さがあるわね……」
『第6試合を開始します。選手はバトルシステムへ』
真琴「出番だわ」
マナ「よっしゃ、がんばってこいまこぴー!」
『第6試合の出場選手は、七色ヶ丘中学2年、黄瀬やよいさん』
『そして大貝第一中学2年、剣崎真琴さん』
真琴「あ、なんでこんなところに!」
やよい「そりゃガンダムが好きだからに決まってるでしょ! むしろそっちの方が疑問だよ」
真琴「説明が面倒だから省かせてもらうわ」
やよい「ってか、本名で出ちゃっていいの? ギャラリーがすごいよ」
キャーマコピー! マコピー! ゲゲゲー!
ガードマン「押さないでください! 押さないで!」
真琴「うわぁ」
マナ「ねぇ、あの子キュアピースのやよいちゃんだよねぇ」
六花「ホントだ。来てたんだ」
ありす「しかも真琴さんの対戦相手とは」
マナ「確かやよいちゃんってアニメとか特撮とか大好きなんだよね」
六花「じゃあここにいるのも納得ね」
『Please set your GP-BASE』
真琴「悪いけど、倒させてもらうわ」
やよい「こっちだって、負ける気で来たんじゃないから!」
『Beginning Plavsky-Particle dispersal』
『Field five “city”』
『Please set your GUNPLA』
真琴「じゃあ、お互いやり合うしかないわね」
やよい「こればっかりは譲れないもん!」
『Battle start』
真琴「AGE-1テンペスト、剣崎真琴、出撃する!」
やよい「ライトニングハルート、黄瀬やよい、行きます!」
GN-011P ライトニングハルート
黄瀬やよいがキュアピースをイメージして製作したガンプラ。
GNソードライフルのシザーモードをチョキに見立てており、ビームシールド発生スリットは電撃波発生装置に改造されている。
バイザーを外してカラーリングをイエロー系にした以外はほぼキットのままなのでシザービットは装備していない。
先制したのはハルート。飛行形態で接近しつつ、GNキャノンの砲撃で短期殲滅を狙う。
真琴「そのくらいで!」
腕の重さを利用した錐揉みでビームを避けるAGE-1。
やよい「だったらこれで!」
テールコンテナから大量のミサイルを吐き出すハルート。その群れは空を覆い尽くす雨となってAGE-1の周囲一帯に降り注ぐ。
しかしAGE-1は着弾より早く、後方のスラスターを最大出力で点火し、爆発的推進力でミサイルの制圧圏から脱した。
そして両者の距離はクロスレンジへ。
MS形態に変形してGNソードを抜くハルート。
AGE-1もレイザーブレイドを握り、構える。
両者一閃。ぶつかり合う刃と刃。
その軍配はレイザーブレイドに上がる。
駆動出力の差があったとしても、質量の高いレイザーブレイドの勢いに、質量軽減効果が適応されているGNソードが競り負けるのは当然の結果であった。
やよい「一撃が重い!」
真琴「知識はそっちのがあるはずでしょ!」
押し弾かれ、ビル群の一部をえぐりながら着地するハルート。
即座に体勢を立て直し、GNライフルに持ち替えて反撃する。
AGE-1は高度を上げ、ビーム散弾砲で対地攻撃を行う。
やよい「近接が不利なら!」
ハルートが回避しつつ離陸し、GNキャノンとGNライフルで弾幕を張る。
AGE-1はその空に向け放たれるビームの雨を紙一重で躱しつつ、迫る。
やよい「なんて運動性!」
真琴「距離は取らせない!」
詰め寄ったAGE-1のレイザーブレイドが右手のGNソードライフルを斬り捨てる。
真琴「ここが私の距離よ!」
やよい「まだまだ!」
左手のGNソードライフルが展開する。そこから放たれるは強烈な電撃。
AGE-1が稲妻に包まれる。
真琴「これは……!」
やよい「そう、ピースサンダーよ!」
真琴「各部出力低下……これじゃあ……!」
やよい「勝たせてもらうよ!」
サイドコンテナの先端に顎を開くGNキャノンがAGE-1に向けられる。
真琴「させない!」
AGE-1は電撃を喰らいつつも、両腰のビームショットキャノンを斉射した。
至近距離でブチ撒けられた散弾の粒子はハルートの全身を強く叩く。
やよい「うわああっ!」
弾き飛ばされたハル-トにAGE-1が追撃を仕掛ける。
よろけながら撃たれたGNキャノンに左腕が持って行かれる。
それでも突っ込む。
真琴「これでっ!」
渾身の力を込めて振り下ろされるレイザーブレイド。
しかし、ハルートはサイドコンテナのGNバーニアで機体を無理矢理反らして、刃から逃れた。
真琴「なっ!?」
やよい「勝った!」
そして持ち替えたGNソードを、目の前に捉えたAGE-1に振り下ろす。
上半身と下半身に分断されたAGE-1はそれぞれ墜落し、数棟のビルを吹き飛ばした。
『Battle ended』
やよい「やったー!」
真琴「流石ね、完敗だわ」
やよい「伊達に長くやってないからね。けどこっちもヒヤヒヤしたよ」
真琴「この私を倒したんだから、必ず優勝しなさいよ」
やよい「うへぇ、責任重大だぁ」
マナ「残念だったねまこぴー」
やよい「あ、ドキプリのみんな」
マナ「やあ、やよいちゃん」
六花「スマイルチームは来てないの?」
やよい「応援に来るはずなんだけどね」
みゆき「やよいちゃーん!」
ありす「あら、噂をすれば」
みゆき「遅れてごめんねー、って、なんでドキドキのみんながいるの!?」
真琴「私が参加したのよ」
れいか「真琴さんが?」
真琴「たった今やよいに負けたけどね」
あかね「なんややよい、やったやないか!」
なお「ハッピーロボの後、さんざん練習したもんね」
やよい「それでみんな、なんで遅れたの?」
あかね「ああ、コイツのせいや」
みゆき「……」
あかね「このハッピーちゃんが寝坊せんかったら、ええ試合が見れたかもしれへんのになぁ」
みゆき「わーん、ごめんなさーい!」
なお「まあまああかね、そのへんにしてやりなよ」
れいか「みゆきさんも反省しているようですし」
あかね「冗談やて、冗談」
みゆき「んもう、あかねちゃんてばー!」
ニルス「いいバトルでしたよ。たったこれだけの期間であれほど動かせるとは」
真琴「ありがとう」
れいか「あ、あなたは……アーリー・ジーニアス!」
ニルス「おや、ご存じでらっしゃる」
なお「誰? 有名人?」
ニルス「はじめまして、ニルス・ニールセンといいます」
れいか「この若さで博士号を3つも取得した天才。よもやこんなところでお会いできようとは」
あかね「なんや、ウチらとは無縁の世界の人やん」
みゆき「うらやましいなー、頭良くて」
ニルス「皆さん、これからどうします? 僕はミス・キャロラインの付き添いがあるのでこのまま残りますが」
マナ「せっかくだから、最後まで見てこうか」
六花「やよいがどこまで行くか見ものだしね」
……準決勝
マナ「やよいちゃんも勝ち残ったけど、あのクマとヤジマさんがここで当たるとは」
真琴「なんか因縁がありそうな感じね」
ニルス「どうやら彼女との勝負が目的だったようですね」
六花「ところで、ヤジマさんが使ってるあのガンプラは何?」
ニルス「あれはSDガンダムです。2頭身にデフォルメしたガンプラで、こちらもリアルタイプと並ぶ人気を誇るシリーズです」
真琴「そんなのもあるのね、ガンダムって……」
セイ「――委員長、勝ち残ってる!」
レイジ「ほら、言った通りだろ」
真琴「ん? あ、あの男は!」
マナ「どしたのまこぴー」
真琴「異世界の住人がいる」
六花「え? 誰がそう?」
真琴「あれ、今来た赤毛の」
ありす「確かに日本人の顔立ちじゃありませんわね」
真琴「なんであの男が地球に……!」
マナ「知り合いなの? トランプ王国の人?」
真琴「いいえ、あいつはアリアンっていう国の王子よ」
六花「王子ぃ!?」
ありす「とてもそういう風には見えませんが」
真琴「そういう男よ。王子のくせして喧嘩っ早くて自由奔放で」
マナ「昔何かあったの?」
真琴「一度トランプ王国に来たことがあってね。王宮を抜け出して街のチンピラと喧嘩して、もうてんやわんやだったわ」
六花「うわぁ、そりゃまた……」
真琴「だからもうあまり関わりたくない。見なかったことにする」
キャロ「認めない、認めませんわ! こんなガンプラバトルなんてぇぇぇぇっ!」
『Battle ended』
ニルス「まさかこんなガンプラがあるなんて……」
マナ「あらら、ヤジマさん負けちゃった」
六花「すさまじいトンデモ展開だったけど」
ありす「でも見応えはありましたわ」
真琴「思わぬものが武器になるものね」
みゆき「次はやよいちゃんの準決勝だよ」
そして準決勝も勝利したやよいちゃん。
決勝でいいんちょのベアッガイⅢとぶつかるのでした。
やよい「破損した左側を狙えば! ピースサンダー!」
チナ「ああっ、ベアッガイⅢ!」ドガーン
『Battle ended』
みゆき「おめでとやよいちゃん!」
あかね「やったなやよい!」
やよい「やったー、やったよみんなー! 私優勝しちゃったよー!」
なお「けど手負いの相手にアレは直球勝負じゃないなぁ」
やよい「何言ってんの、戦場で手加減なんてしたら兵士の名折れだよ」
れいか「確かに、勝負の世界とは時に厳しいものです」
真琴「まさか本当に優勝するとはね」
やよい「えへへ、言われた通りにしたよ」
後日 四葉邸
真琴「大会で自分の未熟さがわかったわ。もっと精進しなきゃ」
六花「正直、あのやよいがあそこまでやるとは予想外だったけど」
マナ「でもやよいちゃんにダメージ与えたのってまこぴーだけだったよね」
ありす「そう考えれば一般レベルは既に超えていると見ていいですね」
真琴「けど上には上がいる。この程度じゃまだまだよ」
セバス「大会でのバトルを拝見させていただきました。やはりまだ機体との相性が完璧とは言えぬようですな」
真琴「つまり、もっと強くなるなら新しいガンプラにした方がいいってこと?」
セバス「はい。やはりレイザーブレイドの重量はレスポンスの遅れに繋がり、高速戦闘では足を引っ張る形になってしまいます」
セバス「となると、破壊力と機動力を両立できるエクシア系統の機体こそが相応しいかと」
六花「GN-001ガンダムエクシア……別名セブンソード? 7本も剣を持ってるの?」
セバス「しかしHGエクシアは新規格への過渡期に発売されたキット故、可動域と保持力に少々難があります」
セバス「ここはダブルオーかクアンタをベースに新たな道を模索すべきでしょうな」
真琴「そういえば、やよいはキュアピースをイメージして電撃装備を実装してた。もしかしたら、それがカギなのかもしれない」
マナ「自分と同じ武器かぁ」
六花「キュアソードの技は、ホーリーソード、スパークルソード、アルティマソード、ソードハリケーン……」
ありす「ほとんどが剣を飛ばす攻撃ですわね」
セバス「剣を飛ばす……ならばソードビット持ちのクアンタが理想的ですな。操縦難度は上がりますが」
真琴「そんなに厳しい装備なの?」
セバス「遠隔操作兵装ですので、機体制御とビット制御を同時に行わねばならないのです」
真琴「複数の操作を同時に……」
六花「なら、いい方法があるわ」
マナ「何か思いついたの?」
六花「セバスチャンさん、ガンプラバトルはセコンドが2人まで随伴できましたよね?」
夜 剣崎のマンション
DB「ええっ、私もバトルに参加するの!?」
真琴「オペレーターとしてビット制御を担当してほしいのよ」
DB「2人がかりなんてアリなの?」
真琴「一応、サポートは2人まで付けられるルールになってるから」
DB「で、それは?」
真琴「新しいガンプラと改造用パーツ。今度は私の分身として作り上げる」
DB「まったく、すっかりビルダーね」
真琴「で、引き受けてくれるの?」
DB「そこまで頑張ってるなら、その熱意には応えてあげるのが私の役目ってモンでしょ」
翌日 ヨツバミュージック事務所
真琴、DB「おはようございます」
P「おう剣崎、仕事のオファーが来てるぞ」
真琴「どんな内容ですか?」
P「ガンプラバトルだ」
真琴「ええっ!?」
P「お前、この前けやきが丘でやった大会に出たんだってな。それを嗅ぎ付けての出演依頼らしい。ほれ、企画書」
DB「ガンプラバトル選手権世界大会、イメージキャラクター選抜戦?」
P「主催のPPSE社が大会を盛り上げてくれって話でな。その一環としてソレの座をかけていっちょバトルしよう、ってことだ」
真琴「対戦内容は5人のバトルロワイヤル……」
P「ガンプラビルダーのアイドルを集めるらしい。勝てば晴れて世界大会のイメージガールに大抜擢。悪い話じゃあない」
DB「真琴、これって……」
真琴「ええ、絶好の機会だわ」
P「お、やってくれるか」
真琴「喜んで!」
四葉邸
真琴「と、いうわけ」
マナ「すごい、勝ったらまこぴー世界デビューだよ!」
六花「てかガンプラやってるアイドルって5人もいたのね」
ありす「私も聞き及んでいましたので、他の出場者の情報を集めておきました」
真琴「流石、頼りになる」
六花「で、面子の実力はどんなもんなのよ」
真琴「……1人だけ公式大会経験者がいるわね」
マナ「ほほう」
真琴「日本第3ブロック予選3回戦敗退。使用機体はガーベラ・テトラ」
六花「ガンプラアイドル、キララ。最初っからそういう路線か」
マナ「やっぱりアングラでは人気あるみたい。ピンポイント爆撃だもんね」
真琴「予選の対戦動画が上がってる」
六花「あれ、何これ、相手の手足勝手に外れちゃってんじゃん」
マナ「あ、背中のが飛行機になった」
真琴「これは予想外」
ありす「どうですか? お役に立てましたか?」
真琴「ありがとう、参考としては十分よ」
選抜戦当日
六花「まさか大会会場でやるなんて……」
マナ「すっごい会場だよねぇ、こんなでっかい専用施設まで作っちゃうんだから」
六花「ところでなんで静岡なの?」
ありす「静岡にはバンダイのガンプラ製造工場がありますので」
真琴「へぇ」
マナ「それで、ガンプラはできたの?」
真琴「万全の状態に仕上がったわ」
マナ「わぁ、早く見せてよ」
真琴「お披露目はステージでね」
バトルアリーナ 来賓客席
マナ「うわぁ、一般席はすごい人だよ」
六花「大半がガノタとドルヲタって考えると気が滅入るわね。ありすのおかげでVIP待遇だからよかったけど」
ありす「ふふ、せっかくの真琴さんの晴れ舞台ですもの。いいところで見たいじゃないですか」
マナ「あ、そろそろはじまりそうな雰囲気」
『紳士淑女の諸君、ごきげんよう!』
『さぁ、今宵集まってもらったのはほかでもない。しかし敢えて訊こう! 諸君らが見に来たのは何だッ!?』
\マコピー!/ \ガンプラバトルー!/ \キララー!/
『どういうことだ! バラバラではないかッ!』
『いいか、今日、ここで行われるのはガンプラバトルだ! きちんと答えてくれたオーディエンスは偉いぞ』
『そう、ガンプラバトル! 来週から開催される世界大会のイメージガールの座をかけた壮絶なバトルロワイヤルだ!』
『これに勝てば知名度急上昇は間違いなし! 今宵戦場に現れるファイターたちは必死と見た!』
『それでは早速、選手入場といこう!』
六花「私ああいうテンション苦手だわ」
ありす「私もあまり……」
マナ「ああ、妙な寒さあるよね……あ、まこぴー出てきた!」
六花「あれは軍人風の衣装?」
ありす「ダビィちゃんもかっこいいですわ」
真琴「行くわよダビィ」
DB「任せといて」
真琴「やれる、私の分身であるこの、デイブレイクガンダムなら!」
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません