もういろんなとこでやられてるクリスマスの話
ベルトルト「ライナー、クリスマスだね」
ライナー「そうだな、もうクリスマスの夜だ」
ベルトルト「何か、こう、訓練兵になっても何があるわけでも無かったね」
ライナー「恋人同士で過ごすクリスマスなんて幻想だ…。女子は皆でクリスマスパーティーらしい」
ベルトルト「いいな…ケーキはおいしいけど流石に男二人は華がない」
ライナー「男子は騒ぐ前に皆沈んでたからなぁ…まあ二人きりのクリスマスもいいじゃねえか、苺やる」
ベルトルト「いいの?苺一つしか無いのに…。今日の状況、ジャンは少し喜んでたみたいだ」
ライナー「いいんだ食え食え。ジャンのやつはあれだろ、ミカサがエレンと過ごさないのが嬉しいとかそんな。…自分もミカサと過ごせないことについてはどう思ってるんだ」
ベルトルト「ありがとう、美味しい。…そのことについては何も思わないようにしてるみたいだよ。朝からマルコと出掛けて今日は遊びまわるんだっていってまだ帰ってこない」
ライナー「あいつ、人のことベタベタ気持ち悪いとか言う割りにマルコにベタベタしてるよな。同族嫌悪か」
ベルトルト「僕らはジャンと同族なのか……まあ否定はできない。結局二人きりで過ごしてるんだし…」
ライナー「ま、今年も二人きりの熱い夜を楽しもうぜ」
ベルトルト「嫌だよ。その言い回しが嫌だよ。ごちそうさまでした」
ライナー「冗談なんだから笑ってくれよ…皿片付けてくる」
ベルトルト「最近笑えない見た目になってきたからちょっと……葡萄のジュース貰ったから注ぐね、コップ貸して」
ライナー「人を見た目で判断するのか、俺はそんな子にお前を育てた覚えは無い」
ベルトルト「安心してライナー、覚えがなくてもちゃんと君の背中を見て育ってきた結果がこれだから」
ライナー「ああそのままの意味で背中を見られ続けてはきたな…背中ばかり見て育つのも問題だ。たまには隣か前に出てきてくれ」
ベルトルト「後ろに居るほうが安心するんだ」
ライナー「そんなに俺の背中は頼りになるか」
ベルトルト「そこまでは言ってない」
ライナー「なんだよ言ってくれよ」
ベルトルト「あ…このジュース、少しお酒混ざってるかもしれない」
ライナー「そうなのか?普通に美味いが」
ベルトルト「すこし変な味がする…今日は寒いから丁度いいかもしれない。でも飲み過ぎないようにしないと」
ライナー「あー……もし今日という日をクリスタと過ごせたら」
ベルトルト「もう酔ったの?はやいね。女子は皆居ないんだよ。現実見よう」
ライナー「今日は厳しいなお前」
ベルトルト「たまには言いたいことを言う日があってもいいじゃないか。壁内の人に想いを寄せるなんて……後で辛いよ」
ライナー「大丈夫だ、そこまでマジにはならねえよ。ただ俺も男だからな…クリスマス位、こう、な?」
ベルトルト「な?って……」
ライナー「壁内の奴ら以外だとアニしか居ないがそれでもお前はいいのか?」
ベルトルト「え?」
ライナー「クリスマスの夜に俺とアニが結婚してもいいのか?」
ベルトルト「結婚っていきなりすぎる……えぇ…いや、でも…。ううん………………」
ライナー(なんてわかりやすい嫌な顔)
ベルトルト「…………」
ライナー「ほら、どうなんだよ」
ベルトルト「……二人が本当に好き合ってそうなるなら、いいけど」
ライナー「お?」
ベルトルト「それで、仲間はずれになるのは、少し嫌だ」
ライナー「もっと反対してくると思ったらなんだよその答え。可愛い奴め、撫でてやる!」ワシャワシャ
ベルトルト「ちょ、ライナー、髪抜ける、やめ、やめてくれ!」
ライナー「何があっても仲間はずれなんかにするはず無いだろう。もう三人で結婚するか、よしそうしよう、三人で結婚する」ワシャワシャワシャ
ベルトルト「何勝手に…!本当にこんな量で酔っ払ってるんじゃ、というよりライナー本当に髪が、やめ、痛い痛い痛い!」
ライナー「おっと悪い。なぁ、今日はもう無理だが次の休みにでもアニと一緒に菓子でも食べに行くか」
ベルトルト「悪いと思うならもう少し優しく……。何も無いのにアニと集まって大丈夫?もし誰かに見られたら」
ライナー「たまには何も無く集まったっていいじゃねえか」
ベルトルト「でも、」
ライナー「普段意思が無いとか言ってるんだから今回も流されろ」
ベルトルト「意思が無い原因の一部は確実にライナーだ…。……アニに怒られるのも嫌だし、皆に見つからないような計画を立てよう」
ライナー「良しきた任せろ。そうだ、計画を立てる前に済ましときたいんだが、昨日の夜はサンタが来る夜だったろ」
ベルトルト「うん。今年は来てくれ無かったな…そんなにいい子にしてなかったから……」
ライナー「今月に入ってから寝起きにシーツを整えたりいい子なことをしようとしてたのを俺はちゃんと知ってる」
ベルトルト「え、あ、それは…何で知ってるんだよ恥ずかしい……!」
ライナー「寝床が隣で気づくなって方が難しいだろう」
ベルトルト「蒸気でる…蒸発する……」
ライナー「これくらいで蒸発するな。…でな、聞いた話だと大変なことに訓練所にはサンタが入って来れないらしい」
ベルトルト「えっ」
ライナー「昔訓練兵に贈り物を届けようとしたサンタが捉えられる事故が有ったらしくてな…それから訓練所は配達範囲外になったらしい」
ベルトルト「そんな……それじゃあこれからは………」
ライナー「そこでサンタは考えた。自ら入るのが危険なら訓練兵に預け訓練所の中へ贈り物を届けて貰えばいいと」
ベルトルト「…!まさかライナー、サンタさんに会って…!!」
ライナー「というわけでメリークリスマス」
ベルトルト「プレゼントだ!」
ライナー「本当は昨日のうちにどうにかするべきだったんだが…これでベルトルトの分は届いてサンタも一安心だ」
ベルトルト「ライナーも貰ったの?」
ライナー「ん?あぁ。お前は何貰ったんだ?」
ベルトルト「えっと…栞だ。硝子を埋め込んである……綺麗だな。あれ、この花の模様」
ライナー「それ、故郷でも咲いてた花だな」
ベルトルト「懐かしい……うれしいなぁ」
ライナー「それは良かった」
ベルトルト「…アニにもちゃんと届くだろうか」
ライナー「ちゃんとアニの分もサンタが訓練兵に託してる筈だ。俺は後エレンとアルミンに渡さなきゃならん」
ベルトルト「……どうしてライナーはその贈り物を預ける人に選ばれたんだろう」
ライナー「そりゃ、特別良い子にしてるから選ばれたんじゃねえか?」
ベルトルト「自分で特別良い子って……」
ライナー「なんだよその目」
ベルトルト「何でもない。届けてくれてありがとう」
ライナー「どういたしまして」
ベルトルト「アルミンとエレンにはいつ届けるんだ?」
ライナー「あいつらのは部屋を離れてるうちに置いてこようかと思う」
ベルトルト「直接渡さないの?」
ライナー「さっきの説明が地味に面倒だ」
ベルトルト「あの位面倒がらなくていいだろうに…」
ライナー「あいつらには自分で贈り物を見つけるまでコレがあることは秘密だからな」
ベルトルト「うん。二人とも今朝贈り物がなくて凹んでたから、きっと喜ぶだろうね」
そして其の後
皆が寝静まった頃に兵舎の外では二人のサンタが集まっていました
実は二人は24日の夜にプレゼントを届けに行くつもりだったのですが
性別の壁によって届け先の宿舎にどうしても入れなくてそれは叶いませんでした
困った二人は
25日の朝に同じように困っているサンタを見つけて
お互いのプレゼントを託して相手に届けてもらうことにしたのです
*
そうして贈り物を届けることは大成功
それぞれちゃんとプレゼントを渡せたことを確認して
二人のサンタも眠りにつきましたとさ
ライナー「あいつら喜んでたぞ。お礼の手紙まで書いてたから渡しておく。見つからないようにな」
ミカサ「エレンとアルミンは良い子に育った……とても嬉しい。届けてくれてありがとう。これは宝物にする」
ライナー「しかし、サンタも大変だな」
ミカサ「サンタじゃない、私はミカサンタクロース」
ライナー「ミカ…?」
ミカサ「ミカサンタクロース」
ライナー「それ、気に入ってるのか」
ミカサ「ふんす」
ミカサ「ライナー、もし良ければ、来年も頼んで良いだろうか…」
ライナー「勿論だ。ただ、代わりに俺の分もまた届けてくれないか」
ミカサ「…ライナーは何故アニに贈り物を?普段、関わりは無いようだけど」
ライナー「あー……それはだな、前にここに来る前の話を聞いたことがあって…あいつは俺達と同じような暮らしをしてたらしい」
ライナー(本当のことを言うと同じ暮らしをしてたが流石に言えない)
ミカサ「アニも開拓地に?」
ライナー「あぁ。開拓地にいた奴なんて他にも居るんだろうが…どうしても気になって」
ミカサ「気持ちは分かる。アニはしっかりしているようで、少し構いたくなる人」
ライナー「…まぁ、それだけで贈り物をするっていうのも気持ち悪いだろうが……誰にも言わず付き合ってくれたら助かる」
ミカサ「サンタの秘密はここだけの秘密。誰にも言わない、ので、そこは安心して欲しい」
ライナー「すまん。…そろそろ俺達も寝るか、早く寝ないと明日の訓練に響く」
ミカサ「ええ。ではまた、サンタとして来年に」
ライナー「また来年。もう暗いから気をつけろよ、いい夢を」
終わる。こんな文だし転載禁止って言っておく
見てる人がいたらありがとう、居なかったらそれはそれで吐き出せてスッキリした
蛇足
ベルトルト(今日、アニは新しい髪飾りをつけていた)
ベルトルト(僕の栞に描かれてた花と同じ花のモチーフの髪飾り。多分サンタさんに貰ったんだ)
ベルトルト(そしてライナーも小さくだけど同じ花が描かれたペンを持ってた)
ベルトルト(三人でおそろい)ほくほく
ベルトルト(…そういえば、エレンとアルミンがサンタさん宛に書いた手紙を枕元に置いておいたら今朝には無くなってたって言ってたな)
ベルトルト(訓練所は配達の範囲外でも、回収範囲には入ってるんだろうか……謎だ)
ベルトルト(手紙はちゃんと届いたのか。もし届くなら、僕も何かお礼がしたい)
ベルトルト(ので、クリスマスのお菓子作りで少し余っていた砂糖や小麦粉なんかを持ってクッキーを作るために調理場を借りた)
ベルトルト(作り方は実家で作ったことがあるというコニーに教えてもらった)
ベルトルト(エプロンよし、三角巾よし、材料よし、調理器具よし、…作るぞ!)
………………
…………
……
…
ライナー「ベルトルト、何処に居るのかと思ったらこんなところに居たのか」
ベルトルト「あ、ライナー。何かようかい?」
ライナー「いや特には。長いこと居ねえからどうしたのかと思っただけだ」
ベルトルト「ああ、結構時間経ってたんだ…。そんなに心配しなくてもいいのに」
ライナー「何してるんだ」
ベルトルト「クッキーを作ろうかと思ったんだけど……」
ライナー「ほう」
ベルトルト「鍋が燃えたんだ」
ライナー「何故そうなった」
ベルトルト「それで、次使う時に困るから鍋の焦げを落としてた」
ライナー「クッキー作るのに鍋なんて使わないだろ…」
ベルトルト「バターを湯煎して柔らかくするためのお湯がいるらしくて、そのお湯を作るのに使うよ」
ライナー「そのために使うにはその鍋はデカすぎるな…?というよりまて、その時点で失敗したのか」
ベルトルト「………やっぱりこれ失敗だったのか……そうだよね、鍋燃やしてる人なんて他に見たことないし、手順にも鍋が燃やすなんて書いてないし……前に料理番で鍋を使ったときも普通に火が上がったから普通の事なんじゃないかと少し思ってたんだけど……そうか……………」ショボン
ライナー「お前前科持ち……いや、いや失敗は言い過ぎた、鍋が燃えることなんて稀に良くあることだ、あまり気にするな!」
ベルトルト「…うん」
ライナー(こいつはそこまで料理が下手だったのか…?訓練所に来る前はずっと一緒だったってのになんで俺は知らな……)
ライナー(…ん?あれ、まずここに来るまでにこいつが料理を作ったことって………まずい、作らせたことねえよ、全部俺がやってた、火が危ないとか言ってやらせてなかった)
ライナー(これ何もさせてこなかった俺のせいかちくしょう!)
ライナー「湯煎の時点で止まってるなら、まだ材料は無事なのか」
ベルトルト「材料ならそこにあるよ。まだ量ってもいないんだ…鍋の焦げを落とすのに時間がかかって」
ライナー「でかした」
ベルトルト「え?」
ライナー「あ、いや、気にするな。今から作ってもまだ時間はあるな…俺も手伝う」
ベルトルト「いいの?」
ライナー(これはほっといたら大変なことになる)
ライナー「一緒にやった方が早いだろ。味見役はさせろよ」
ベルトルト「あぁ、ありがとう。包む分以外は食べてもらって構わないよ」
ライナー「作り方とか、そんなのは無いのか?」
ベルトルト「あ、ここにコニーが書いてくれてるのが」
ライナー「おお、結構しっかり書いてあるな。わかりやすい」
ベルトルト「昔、妹さん達の為に必死に覚えて作ってたんだって。…そうだ、聞いてよ。コニーの前にマルコにも聞いたんだけど、知ってる風なのに教えてくれなかったんだ」
ライナー(あぁ……確かマルコはベルトルトと料理番で一緒だったような……作らせたら危ないってわかってたんだな…)
ベルトルト「少し意地悪だ」
ライナー「…何か事情があったんだろ。あのマルコがただの意地悪でそんなことすると思うか?」
ベルトルト「…それもそうか。しつこく聞いて悪いことしたな……よし、鍋はぴかぴかになった」
ライナー「もうその鍋は片しとけ。こっちは全部量り終わった」
ベルトルト「ありがとう。えっと、それじゃあ先ずは…」
ライナー「先ずはこのボールとヘラを持つ」
ベルトルト「わかった」
ライナー「そしてこの少し柔らかくしたバターを練る」
ベルトルト「湯煎は?」
ライナー「大丈夫だ、完全に溶かすわけじゃないからなんとかなるだろ。今は湯煎の事は忘れてとにかく練ってくれ。後から色々そこに入れてくがお前はとにかく練ってろ」
ベルトルト「わかった。頑張る」
……………
…………
……
…
ベルトルト「できた!」
ライナー(気がついたらこねるのと型抜き以外は何もさせてなかった。今度はちゃんと火の使い方も教えよ)
ベルトルト「ライナー!美味しそうな色に焼きあがってる!ほら!」
ライナー「おお、いい匂いだn………なんだこれ」
ベルトルト「鎧のクッキー」
ライナー「こっちは」
ベルトルト「女型のクッキー」
ライナー「…こっちは」
ベルトルト「超大型クッキー。他の奴と同じ大きさで別に大きくは無いけど…」
ライナー(なんでも器用にこなすくせにどうしてこうも手先は器用じゃ無いんだ……!)
ベルトルト「なんだか作ってたら楽しくなっちゃって……生地も余り気味だったから三つだけなら遊んでもいいかなと…」
ライナー「…味があるな。これは包むのか?」
ベルトルト「…巨人のクッキーは流石に渡せないかな?」
ライナー「なら今食うか」
ベルトルト「美味しくできてたらいいけど…」
ライナー「ん、これはなかなか」
ベルトルト「……美味しい。ライナーが一緒に作ってくれたおかげだ、ありがとう」
ライナー「そういえば包むって言ってたよな。誰にやるんだ?」
ベルトルト「………えっと」
ライナー「もしかしてお前にも遂に春が」ニヤニヤ
ベルトルト「違っ…もらってくれる女子なんて、居ないよ……」
ライナー「アニに渡してきたらい
ベルトルト「僕には無理だ…!」
ライナー「即答するな…。それじゃあ誰に渡すんだよ、それ」
ベルトルト「サンタさんに……今朝、エレンとアルミンが書いたサンタさんへの手紙が無くなってただろ?それで」
ライナー「サンタへクッキーを作ろうと」
ベルトルト「もし届くんなら、いつも贈り物を貰ってばかりだから何かお返ししたくてさ」
ライナー「…………」
ベルトルト「ライナー?どうしたの、いきなりそっぽ向いて」
ライナー「……いや、何でもない」
ライナー(来年も頑張ろ)
ベルトルト「もうクリスマスから一日経ってるから届くかわからないけど…」
ライナー「届くといいな」
ベルトルト「うん。あ、作り方を教えてくれたコニーと迷惑かけたマルコの分も包まないと」
ライナー「アニの分も包んどいたらどうだ」
ベルトルト「…………三人で食べれるように包んどくよ」
それからクッキーを配ったり
アニも含めて三人でこっそりと食べたりした次の日の朝のこと
ベルトルトが目を覚ました後、クッキーを置いてある枕元を見てみると
そこにはもうクッキーは無く、小さなメッセージカードが置いてありました
どこか少し慣れ親しんだような文字で、
ありがとうとだけ書かれたぶっきらぼうなカードは
サンタがクッキーを受け取った証拠としてベルトルトの宝物になったのでした
蛇足おわる
見てくれた人が居たようで嬉しい
また見てくれた人が居たらありがとう
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