某月某日 桂木弥子魔界探偵事務所
弥子「……よし、これでドライヤーかけて終わりっと。終わったよーあかねちゃん」
あかね「」ピョコピョコ
弥子「それにしても、最近依頼減ったなあ。ここ二週間くらいネウロが断食状態になってるし」
弥子「どうせ暇なら、またゆっくり旅行でも行きたいんだけど……」
ネウロ「ほう。旅行か」
弥子「……ほら、絶対コイツが嫌がらせについてくるんだよ」
ネウロ「何を言う。旅を楽しめた上に『謎』まで食えた良質な旅だったではないか」
弥子「それはアンタだけでしょーが! こっちは寝る前に肘鉄食らうわ露天風呂入れないわ電車代抜かれるわで嫌な思い出しかないっての!」
ネウロ「ふむ。それもそうか」
ネウロ「では、ここは一つ奴隷の貴様に我が輩から旅行をプレゼントしてやろう」
弥子「……嫌な予感しかしないんですけど……」
ネウロ「……『魔界777ツ能力・普遍の亜空(イビルディメンジョン)』……!」
弥子「え? ちょ、これって確か単行本巻末おま」
ネウロ「黙れクソムシ」ドゴッ
弥子「ぎゃふっ」
ネウロ「今回は『時を超える』装置ではない。『世界を跨ぐ』装置だ」
弥子「いたた……何それ、世界を跨ぐ……?」
ネウロ「簡単に言えば、ここではない別の次元にワープできる装置とでも言おうか」
ネウロ「少なくとも人間の貴様に有害な場所は避けておいてやる、安心しろ」
ネウロ「という訳だ。さっさと乗れ」ドサッ
弥子「ちょ、痛いってばもう!」
弥子「……ってか何、アンタも結局来るの!?」
ネウロ「当たり前だろう。奴隷の分際で一人だけ旅行を楽しめるとでも思ったか」
あかね「」びっちんびっちん!
弥子「あ、ちょっとあかねちゃんも連れてきちゃうから待って」
弥子「よいしょ………と」
あかね「」ストラップ化完了
ネウロ「よし、では行くとしようか」
弥子「うう……不安しかないよ……」
ププビレッジ デデデ城玉座
デデデ「やいカスタマー、この前発注した魔獣はまだかゾイ!?」
カスタマー『ですから陛下。溜まりに溜まったツケをお支払い頂くまで、魔獣をお送りすることはできかねます』
エスカルゴン「毎回毎回ザコ魔獣ばっかり売りつけておいて、お客様をないがしろにする気でゲスか! このインチキ! 守銭奴!」
カスタマー『いえいえ、お送りした魔獣はどれもこれも当社の精鋭ばかりでございます。お言葉ですが陛下の運用がよろしくないのでは?』
エスカルゴン「何を言う! 陛下の頭脳は1+1を3時間で解けるほどの天才的頭脳でゲスぞ!」
カスタマー『……仕方ありません、今回だけですよ。魔獣を一体だけお送りさせて頂きましょう』
デデデ「どぅわははははははは! 最初から素直に言う事を聞いていればよいゾイ!」
カスタマー『今回の魔獣は、ただ単に暴力的なものではありません。普段はとても良心的な生き物なのですが…』
カスタマー『自分のイタズラを誰かのせいにできる状況を作ると、たちまちイタズラを繰り返すのです』
エスカルゴン「それは……いわゆる、ミステリー小説なんかでよく見かけるような感じでゲスか?」
カスタマー『ええ、まさにエスカルゴン閣下の仰った通り』
カスタマー『この魔獣を使い、カービィにイタズラの容疑をかけるのです』
デデデ「しかし、カービィに濡れ衣を着せる計画は何度となくフームに阻止されておるゾイ。今さらそんな……」
カスタマー『侮ってもらっては困ります。この魔獣の知能指数は9000。フームごときが太刀打ちできるもものではありませんよ』
カスタマー『さらには戦闘能力もケタ外れでございます。カービィを戦えば、必ずやカービィを苦しめられることでしょう』
カスタマー『……バケモノのような頭脳・そしてバケモノのような肉体を持つものでなければ、この魔獣を倒すことは不可能でございます』
デデデ「グフフ……その悪意に満ちた魔獣、気に入ったゾイ!」
カスタマー『では、さっそくこちらの魔獣を送信させていただきましょう』
デデデ「よし! ではさっそくデリバリーサービス・ONゾイ!」
ウィーン ジジジジジジジジジジジ…
プシューッ
カスタマーサービス『……こちらが、魔獣“ナゾン”でございます』
ナゾン「………」
エスカルゴン「うーむ……なんかコイツ、また弱っちい感じの見た目でゲスなー」
カスタマーサービス『そんなことはございません。さあナゾン、さっそくププビレッジに溶け込んで作戦の準備をするのです』
ナゾン「………」スタッ
ププビレッジ 町外れ
ブン「みんなー、ボール持ってきたからサッカーやろうぜー!」
ハニー「よーし! 負けないわよー!」
ホッヘ「まずは俺から蹴るよー! それっ!」
イロー「ナイスパース! 次は僕が蹴るよ!」
フーム「お日様の下で今日も読書……平和ね、カービィ」
カービィ「ぽよ~」
??「すみません、そこのお嬢さん」
フーム「え? はい、私ですか?」
ナゾン「私は放浪の旅をしているナゾンという者です。この村に数日泊めていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
フーム「あら、旅の方ね。どうぞどうぞ、それじゃ今から村に案内してあげるわ」
ナゾン「それはありがたい。では、お願いするよ」
デデデ城 玉座
デデデ「よし、ナゾンはププビレッジに向かったゾイ」
カスタマー『では陛下、あとは数日お待ちください。ナゾンがカービィに濡れ衣を着せる算段を整えるでしょう』
エスカルゴン「フームさえ押さえることができれば、もうこっちの勝ちでゲスな。こりゃ今度こそいけるでゲス!」
デデデ「今度こそカービィを村から追放してやるゾイ……どぅわははははははははは!!」
デデデ「……あー、そろそろ腹が減ってきたゾイ。昼飯にするか。支度をせいエスカルゴン!」
エスカルゴン「はい、ただいま! やいワドルディ兵士、急いで陛下の昼食を用意するでゲス!」
ワドルディ達「」ピクッ スタタタタタタタタ
デデデ「さて、それでは食堂に向かうゾイ」
ウィーン ジジジジジジジジジジ…
プシュー
弥子「あいたたたたた……あれ、着いたの?」
ネウロ「そのようだな」
弥子「何ここ……王様の部屋、みたいな……」
ネウロ「…………」
ネウロ「……む……これは……」
ネウロ「喜べヤコ。どうやらこの近辺で……『謎』の生まれる気配がするぞ」
弥子「はあ……やっぱりか」
弥子「とりあえず、どんな場所か分からないし……どうしよ」
弥子「その辺りを見て回ろっかな。誰かいるかもしれないし」
同時刻 桂木弥子魔界探偵事務所
ガチャ
吾代「おーうテメーら、言われた資料持ってき………あれ?」
吾代「なんでいねぇんだよ、俺だって忙しい合間縫って来てやったってのに」
ガチャ
笹塚「弥子ちゃんいるかい? ちょっと前の事件の案件で……」
吾代「あん?」
笹塚「……ありゃ、アンタかい。これはどうも」
吾代「ケッ、おまわりか。何しに来た」
笹塚「何しにって……事件の用だけど。アンタは?」
吾代「俺だって事件の用だよ。けど、今アイツらは留守らしいな」
笹塚「……ふーん……」
笹塚「………………」
吾代「……何だよ、黙りやがって」
笹塚「いや……分かるでしょ大体は」
吾代「……ま、まあ……俺も突っ込まないでおいたんだが……」
笹塚「……そこの、SFに出てくるような形の扉なんだけどさ」
吾代「こういう意味不明なモンが出てきた場合、持ち主は大概あのバケモノの方だな」
笹塚「……まあ、あの二人に関してはツッコミ所多すぎるから極力触れないようにしてるんだけど」
吾代「さすがに、間近で見ると……」
吾代「……ヘッ、これはこれで面白そーじゃねーか。入ってみるか」
笹塚「おいおい、こんな得体の知れないもんに入ったら命の保証が無いんじゃないか」
吾代「これがここに置いてあって、探偵とバケモノはいない。なら、ここに入ってったと考えるのが妥当じゃねーのか」
笹塚「いや、そうかもしれないけどさ……」
吾代「どーせ会社戻ってもオッサンの世話と雑務しかねーんだ。暇潰しに入ってみるぜ、俺は」
笹塚「まぁ……俺も今日は早あがりだったんだけどね」
吾代「俺はとりあえず入ってみる。テメーは好きにすればいい」
笹塚「……これで、のちのちアンタが死体で見つかったとかになったら寝ざめ悪いからな。俺も行くよ」
吾代「ハァ!? テメー俺がそんな簡単に死ぬと思ってんのか!」
笹塚「別にヤクザだって死ぬときは死ぬでしょ」
吾代「ケッ……好きにしやがれ」
笹塚「じゃ、さっそく入ってみるとしますかね」
吾代「おい、テメーが先陣きるんじゃねーよ!」
デデデ城 渡り廊下
弥子「あっ、すいませーん! そこの方ー!」
パーム「はい? 私ですかな?」
弥子「あぁ良かった、やっと人……っていうか会話できる生物がいたよー」
弥子「すみません、私達ちょっと旅行……みたいな感じでここに来たんですけど、勝手が分からなくて」
パーム「おや、旅行ですか。この星に旅行客とは珍しい」
パーム「旅行なら案内が必要ですな。私が城下町を案内しましょう」
パーム「しかし、あのデデデ陛下が旅行客を城に招くとは」
弥子「え? いやその、私達は気付いたらこの辺にいたもので……」
パーム「おや、それは……恐らくデリバリーシステムでも使われたのでしょうかな」
パーム「まあよいでしょう。私も暇していたところですから」
ネウロ「それはそうと……伺いますが、この町に宿はありますか?」
パーム「宿? いやぁ、確か宿は無かったような」
ネウロ(……ふむ……)
ネウロ「ではもしこの町に外からの客が来た場合、どこに泊まればいいのでしょう?」
パーム「それは、そのお……」
パーム「観光客自体がそんなに来る土地ではないので、そういうことを考えて作られていないといいますか……
パーム「……まぁ、宿は私達の住んでいる場所をお貸ししますから心配しないで頂きたい」
パーム「さて、そうこう言っているうちに村へ着きましたな」
弥子「ここかー。こざっぱりしてるし、空気も澄んでていい場所ですね」
パーム「まずは食事でもいかがですかな。こちら、この村唯一の食事処で『レストランカワサキ』……」
カービィ「ぽよー!」
フーム「あら、パパじゃない。どうしたのこんな所で」
パーム「おや、フーム。お前こそどうしたんだい、ブン達は一緒じゃないのかい?」
フーム「ブン達はまだ町外れで遊んでるわ。私はちょっと、旅の人にご飯食べさせてあげようと思って」
パーム「旅の人?」
ナゾン「初めまして、私は放浪の旅人ナゾンと申します」
フーム「ナゾンさんは旅の途中でこの村に見つけて、宿を借りたくて寄ったらしいの」
パーム「おやおや。まさか一日にこうも村を訪れる他所の方がいるとは」
パーム「実は私も観光客の案内をしていたんだよ。こちら……ええっと、お二方のお名前を伺っておりませんでしたな」
弥子「あ、私ですか? 私は桂木弥子です」
ネウロ「私は、こちらの探偵・桂木弥子先生の助手で脳噛ネウロといいますー」
凛ぽよの人?
パーム「では、みんな揃ってカワサキの店で昼食にしようか」
フーム「そうね、食事はみんなで食べた方がおいしいもの。ねえカービィ」
カービィ「ぽよっぽよ!」
弥子「やったー! ちょうどお腹すいてたんだよねー、ワクワクしてきた…!」
ナゾン「………」チラッ
ネウロ「………」チラッ
カービィ「……ぽよ?」
>>知らない
>>41
知らない
レストランカワサキ 店内
カワサキ「嬉しいねー、大臣が観光客のお客さんを連れてきてくれたよー!」
フーム「ナゾンさん、ヤコさん、ネウロさん、お腹いっぱい食べてね。ここは量が自慢のお店だから」
パーム「……味が、ちょっと問題アリなんだがね……」
カワサキ「はーい、じゃんじゃん作るからじゃんじゃん食べてねー!」
弥子「すご、こんなにいっぱい……! いっただっきまーす!」
カービィ「ぽよよぽよ~!」
弥子(なんか隣の丸っこい子がものすごい食べてる……負けられない……!)
弥子「カワサキさん、もっとおかわり持ってきて~!」
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