ほむら「早く、私を殺して」 (73)

ガヤガヤ

「まどかおばあちゃんが亡くなってしまうなんてね…」

「本当に悲しい…」

「でも、90歳以上生きて、みんなに見守られて逝けたんだから幸せな人生だったんじゃないかしら…」

タツヤ(姉さんのお葬式にこんなにも人が集まってくれたよ…)

タツヤ(本当に姉さんはたくさんの人に慕われていたんだね…)

タツヤ「うん?」

タツヤ「あの髪の長い女の子、誰だったかな?」

タツヤ「どこかで見た事あるような…」

ほむら(まどかが死んだ…)

ほむら(一人の男性と普通の出会いをし、結婚)

ほむら(子供にも、恵まれ、家族を作った)

ほむら(年月が経つと子供達も結婚し、孫ができた)

ほむら(家族に慕われ、たくさんの友人と出会い、彼女は幸せな人生を終えた…)

ほむら(魔法少女になる事もなく…普通の人間として…)

QB「どうして悲しい顔をしてるんだい?」

ほむら「…」

QB「君の目的は鹿目まどかを一人の人間として幸せな人生をおくらせる事」

QB「それを完遂する事ができたんだから、喜んでもいいぐらいじゃないか?」

ほむら「本当にあなたは人の感情がわからないのね…」

ほむら「いつもだったら、怒って、あなたをいつものようにボロ雑巾にしてしまうんでしょうけど」

ほむら「今日はそんな気さえ起きないわ…」

ほむら「私は、まどかが一人の人間として幸せな人生を生きれるように円環の理から彼女の人格を切り離した」

ほむら「…その彼女が、現世で死んだのだから、円環の理はどうなったのかしら?」

ほむら「円環の理に、その魂が戻るの?」

ほむら「…まあ、どうでもいい話だわ。今の私にとっては…」

ほむら「たとえ、どうであろうと、私の魂とまどかの魂が一緒に交わる事はない」

ほむら「私は悪魔なのだから…」

ほむら「虚しいわ…」

ほむら「キュゥべえの言うとおり、私は目的を達成する事ができたんだから、喜んでもいいはずなのに…」

ほむら「ただ、虚しさが残るだけ…」

ほむら「そして、まどかがこの世から去った悲しみで心が押し潰されそう…」

ほむら「…」

ほむら「…これから、私は何のために生きればいいんだろう?」

魔獣「ガアアアアアア!!!」

ほむら「ふん!」

魔獣「ギャアアアアアア!!!」

QB「君が魔獣退治に精を出すなんて珍しいね」

ほむら「…ただの気まぐれよ」

ほむら(まどかが円環の理となった時、私は世界を守る事が彼女の意思を継ぐ事だと信じ、魔獣と戦っていた)

ほむら(…でも、まどかの純粋な想いを踏みにじり、悪魔となった今では…)

ほむら(そういった気持ちで戦う事なんてできるはずがない)

ほむら(まどかが生きていた頃は、まどかに危害が加えられないようにという理由で魔獣で戦う事ができた…)

ほむら(でも、今は何もない…)

ほむら「今の私には、本当に何もない…」

QB「ほむら!!いったい君は何をしてるんだい!?」

ほむら「ダークオーブを破壊しようとしているのよ」

QB「そんな事をしてしまったら、君は死んでしまうよ!」

ほむら「そうよ、死ぬためにやってるんだから」

QB「何故、そんな事を!?」

ほむら「まどかがこの世から去った世界で生きている意味なんてないもの」

ほむらはダークオーブを砕こうと、魔力を注入した。

ほむら「…」

QB「何て途方もない魔力だ!」

ほむら「…え!?どうして破壊できないの?」

QB「大量の魔力を注入しても、破壊できないとは…ダークオーブは凄いね」

ほむら「ちっ!それなら物理的に破壊するまでだわ!」

ほむらはダークオーブを放り投げ、ダークオーブ目がけて銃弾を何発も撃った。

ほむら「…はぁ…はぁ…どうして?どうして破壊できないの?」

QB「ダークオーブに宿る君が円環の理から奪った力は強大すぎて、たとえ君の意思でも破壊する事はできないみたいだね」

ほむら「何て事…」

ほむら「なら、私の肉体が滅べばいい!」

ほむらは自身の体に火を点けた。

炎がほむらの身体を包んでいく。

男友「…それでね、男のやつ大声で怒鳴っちゃってさ」

女「それは友君が悪いよ。男はずっと勉強ばっかで良くも悪くも純粋だから」

男友「僕はその石頭を少しでもほぐしてあげようと思ってだね…」

女「手強いぞー?」

男友「違いない」

二人「「ハハハハ…」」

ほむら「はぁ…はぁ…」

QB「凄い、あっという間に身体が再生していく!」

ほむら「こんな程度じゃ死ねないのね…」

ほむら「なら、飛び降りのはどうかしら?」

ごめんなさい

ほむら「焼死、飛び降り自殺、溺死、首吊り、服毒自殺、頸動脈切断、銃殺…」

ほむら「ありとあらゆる自殺できる手段を試したのに死ねないなんて…」

QB「ここまでやって死なないとは…こんな生物は見た事無いよ」

ほむら「悪魔になるっていうのはこういう事なのね…」

ほむら「自分で死ねないなら、殺してもらうしかない」

魔獣「ガアアアアアア!!」

ほむら「…弱すぎるわ」

ほむら「世界中を周って、魔獣を見てきたのに、私を殺せる魔獣がいないなんて…」

QB「魔獣の攻撃のほとんどはほむらの身体を傷つける事は出来ない…」

QB「ごく稀に君に傷を負わせる魔獣がいるけど、自動的に君の身体は再生してしまう」

QB「本当に君はとてつもない存在になったね、暁美ほむら。おめでとう、君はあらゆる生物の中でもっとも強い生物になる事できた」

ほむら「…そんな事少しも嬉しくないわ」

ほむら「どうして?どうしてなの?」

ほむら「何度やっても、何をやっても死ぬ事ができない!」

ほむら「まどかのいない世界で生きている意味なんてないのに…」

ほむら「…そうか」

ほむら「これが私に課された罰なのね」

ほむら「まどかの純粋な想いを踏みにじり、まどかという存在を汚したんだもの、当然の報いよね」

ほむら「ハハ…」

ほむら「アハハハハハハハハ!!!」

「キャー!!!」

「助けてー!!」

「お母あさん!!」

QB「ほむら!一体、君は何をしてるんだい?」

ほむら「何って?」

ほむら「虐殺よ」

QB「何の理由があってこんな事をするんだい?」

ほむら「ただの気まぐれよ」

QB「わけがわからないよ」

QB「君はまがりなりにも、鹿目まどかを守るという目的のためとはいえ魔獣と戦い人類を守ってきたじゃないか?」

QB「なのに、何故?」

ほむら「まどかがいなくなってしまったのだから、守る必要なんてないでしょ?」

QB「でも、進んで虐殺する必要はないだろ?」

ほむら「だから、言ってるでしょ。ただの気晴らし」

ほむら「それに、この方が悪魔らしいでしょ」

QB「たった、それだけの理由で元とはいえ同種の生物を大量に殺害するなんて、僕にはわからないなあ」

ほむら「人類の歴史を見てきたあなたなら、数多くの虐殺者を見てきたはずよ」

QB「確かに、そうだけれど。暁美ほむらという人間をこれまで観察してきて、このような行動を突然する理由が見当たらないんだ」

ほむら「…」

数週間後

ほむら「さて、この町の人間はほとんど殺してしまったかしら」

魔法少女「待て!」

ほむら「?」

魔法少女「罪も無い人々をよくも!私があなたを倒す!」

ほむら「魔法少女なんて久々ね」

ほむら「いいわ、相手してあげる」

ほむら「口ほどにも無いわね」

魔法少女「あ…う…」

ほむら「正義感を振りかざして、自分と相手の実力も図る事なく突っ込んでいく馬鹿なんて、誰かさんを思い出して仕方が無いわ…」

ほむら「それじゃあ、さようなら」

ほむらは魔法少女のソウルジェムを砕いた。

魔法少女「あああ!!!」

ほむら「…」

ほむら(そういえば美樹さやかは、私が悪魔である事を覚えているって言ってた癖に、思い出す事はなかった…)

ほむら(そして魔法少女として魔獣と戦い死んでしまった…)

ほむら(あの子が今の私を見たら、何て言うかしらね…)

数か月後

QB「その魂を対価にして君は何を願う?」

「はぁ…ふぅ…」

「私は…」

「悪魔を倒したい!悪魔を倒す力が欲しい!」

QB「君のその祈りはエントロピーを凌駕した!」

数日後

「キャー!」

「助けてー!」

「悪魔だー!」

ほむら「そうよ!私は悪魔よ!恐れなさい!この力とこの姿に!」

?「待ちなさい!悪魔!私があなたを倒す!」

ほむら「また、挑戦者ね。あなたはどのぐらい耐えてくれるかしら…」

ほむら「…え!?」

ほむら「まどか!?」

数日前

QB「本当にそっくりだ。名前だけじゃなく、姿まで鹿目まどかと瓜二つだなんて…」

まどか「私のひいひいおばあちゃんの事知ってるの、キュゥべえ?」

QB「うん。君ぐらいの年齢の時とそっくりだよ」

まどか「本当にキュゥべえは何年も生きている不思議な生き物なんだね」

まどか「私のこの名前はひいひいおばあちゃんから貰ったの」

まどか「ひいひいおばあちゃんが死んだ直後に生まれたから、この名前になったんだって」

まどか「あなたに殺された人々の無念を私が絶対にはらしてみせる!」

まどかの魔力によって形成された矢がまどかの手から放たれた。

ほむら「うっ!!」

まどかの放った矢はほむらの身体を貫いた。

ほむら(強い…まるで、ワルプルギスの夜を倒した時のまどかのようだわ…)

まどか「これでとどめだよ!!」

まどかは上空に矢を放った。

空に魔法陣が形成され、その魔法陣からたくさんの矢がほむらに降り注いだ。

ほむら「ふふっ。ようやく、私を殺せる者が現れたのね…」

パリーン!!

まどかの放った矢はほむらの身体を貫き、ダークオーブを粉々に打ち砕いた。

まどか「勝った…勝ったんだ!」

QB「おめでとうまどか。悪魔は滅び、これで人類は救われた」

まどか「…」

QB「どうしたんだい、まどか?」

まどか「…悪魔とはいえ私と同じぐらいの年で背格好の女の子だったんだもん。やっぱり殺してしまうのは可哀そうに思えて…」

QB「彼女はその力により、少女の頃から年齢も姿も変わっていないというだけだよ。君が気にする必要はない」

まどか「…そうなんだ。…あれ?」

まどか「どうして、この悪魔は笑っているの?」

QB「…彼女は死にたがっていた。ようやく死ねた事に喜んでいるのかもしれない」

まどか「…ねえ、キュゥべえ?」

まどか「…この悪魔を見ていると涙が出てくるの…。…どうしてなの?」

QB「…何でだろうね。本当に人間は不思議な生き物だ…」

終わり

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