美希「ミキのロス:タイム:ライフ」(77)




夢ばかり見て後で現実に打ちのめされるより、
現実を見据え、現実を良くしていくことを考えるべきだろう?



― 元旧ユーゴスラビア代表監督 イビチャ・オシム



美希「ねぇー、ハニー、今日はミキと一緒にお仕事行ってくれないのー?」

P「ああ、今日は雪歩の舞台主演のオーディションがあるって、自信が無いらしいから俺も一緒に行ってやらないと」

美希「それならミキだって自信ないのー、ハニーが居なきゃお仕事できないのー」

P「はいはい、バラエティのロケのクセに何言ってんだか……まあでも明日のドラマには俺もついてってやるから、今日は我慢してくれ」

美希「むー…分かったの…ちゃんと約束は守ってね、ハニー」

P「分かってるよ、じゃあ行って来る、美希」

美希「うん、行ってらっしゃいなの」


今日もハニーはミキのことをほったらかしにして行っちゃったの
ミキだって本当はハニーにミキが頑張ってる所を見て欲しかったのに

美希「ここから一番近くの動物園までよろしくお願いしますなのー」

タクシー運転手「はい……ってあれ?まさかアイドルの星井美希ちゃん?」

美希「そうだよ~、あ、じゃあミキに免じてタダにしてほしいな~」

タクシー運転手「おいおい参ったなあ、オジサンそういうの弱いんだよ」

美希「ふふ、冗談なの、後、オジサン早く発進してくれないと撮影に間に合わないの」

タクシー運転手「オッケー、分かった、それじゃあオジサンの運転に飛ばされないようにね」

美希「ゴーゴーなのー!」


別にハニーが居なくてもミキは一人でお仕事にだって行けるしお仕事だってちゃんと出来るの
でもやっぱり寂しいな
前まではハニーと一緒に色んなところに走って行ったのに

美希「………」

タクシー運転手「すごいねぇ、たった数百メートル走るだけで765プロのアイドル達の看板があるんだから」

美希「うん、ミキ達とっても頑張ってきたから」

タクシー運転「いいねえオジサンも踊ったり歌ったりしたいもんだよ」

美希「………」

タクシー運転「オジサンもいけそうかな?」

美希「うーん、オジサンはおもしろいからお笑い芸人さんのほうが向いてると思うな、ミキは」


なんとなく外を見ても、やっぱりハニーは居なかったの
歩いてたら多分見かけたはずだけどタクシーに乗ったのかな
前まではお金使っちゃダメって言ってタクシー使わなかったのに

色んなことが変わったんだね、ハニーも、周りも

タクシー運転「あー、ごめんよ、信号に捕まっちゃった」

美希「ううん、安全運転でいいの」

タクシー運転「それを聞いて安心したよ、アイドルを乗せて事故を起こしたりでもしたらオジサンの人生終わったようなもんだからね」

美希「もしかしてミキってすごいプレッシャーになってるの?」

タクシー運転「ううん、そんなことはないよ、逆に自慢してやりたいぐらい光栄だ」

美希「……そっか」


今じゃ皆ミキのこと褒めたりしてくれるの
確かに嬉しいけどやっぱりミキはハニーに褒められたりするのが一番かな

………あれ?信号は赤なのに後ろのトラックはどうしてスピードを緩めないで走ってるの?

どうして―――

美希「……あれ?う、運転手さん、もう信号青なの…」

美希「………一体どうして…後ろの車も止まって…」

ピィーッ!

美希「え!?な、何…?」

実況「さぁ、試合開始のホイッスルが鳴り響きました、今回のロスタイムに挑む選手は765プロアイドル、星井美希だぁ!」

解説「今大人気のアイドルですね、そんな彼女が人生最後のロスタイムに突入するのは私としては悲しいものですが頑張ってもらいたいですよ」

美希「だ、誰なの…一体何が起こってるの…?」ガチャ…

実況「おっと痺れを切らした審判団が星井選手を外に出すように促しましたね」

実況「そして、星井選手が外に出た瞬間に電光掲示板に星井選手のロスタイムが表示されました」

[07:24]

実況「星井選手のロスタイムは7時間24分、彼女はこの残り時間で一体人生の何を清算するのでしょうか!」

解説「アイドルの人生最後の時間、一体どうなるのか期待できますね」

美希「……分かんないの…ねぇ…もしかしてミキ…死んじゃったの?」

主審「………」コク…

美希「っ…そうなんだ…ミキ…死んじゃったんだ」

実況「どうやら星井選手、今の状況をうまく飲み込めずにいるようですね」

解説「自らの死を受けいれられないのでしょう、当然の事だと思いますね」

美希「……お仕事行かなきゃ」タッ

実況「おぉ、星井選手走り出しました!流石アイドルだけあって走る姿はとても絵になりますね」

解説「それに人生最後だというのに、仕事を放り出さない姿勢はアイドルの鏡ですね」

美希「………」タッタッタ…

実況「星井選手中々の体力とスピードですね、審判団がついていけていませんよ」

[07:21]

美希「っ…」

もうミキにはこれだけしか時間が無いんだ
なのにお仕事行ってもいいのかな

ハニーだったらこういう時、ミキになんて言ってくれるんだろう

美希「ご、ごめんなさいなの!遅れちゃったの!」

スタッフ「うーん、まあ支障はないからいいんだけどアイドルならそういうのはしっかりしないと」

美希「はい…」

スタッフ「次こういうことが起きたら事務所のほうにも連絡いれるかもだから」

美希「……分かりました…次からはちゃんと気をつけますなの」


ミキ、せっかく最後の時間を使ってまで来たのに怒られちゃったの
何だかイヤだなあ、死んじゃう前にあんな顔されて

[07:11]

美希「………お仕事…頑張らなきゃなの」

スタッフ「お疲れ様でしたー」

実況「どうやらロケの仕事は終わったようですね」

解説「番組ではミニコーナーのロケですから比較的収録時間は短かったんですね、星井選手的には助かりましたか」

美希「……お疲れ様でしたなの…」チラ…

[05:43]

美希「……っ!」タッ

実況「おっと星井選手走り出しました!周りのスタッフの視線を物ともせず走り出しました!」

解説「流石アイドルですね、あの美脚であの走りとは」

実況「あの…見る所が違うのでは…?」

美希「はっ…はっ…」タッタッタッタ…


ミキ、これからどうすればいいんだろう
残された時間に何が出来るんだろう
死んじゃう前にちゃんとキラキラ出来るのかな

実況「おっと、行き先は765プロ事務所か、だが未だに星井選手のスピードは落ちない!」

解説「もう数百メートルも差をつけられている審判団にはガッカリですね」

実況「そして星井選手、とうとう事務所に辿り着いたぁ!だがまだまだそのスピードは衰えない!ものすごいスピードで階段を駆け上がっていく!」

美希「はぁ…はぁ……今戻ったの!」ガチャッ!

小鳥「あら?どうしたの美希ちゃん?ロケが終わったらお昼も食べてくるんじゃ…」

美希「ねぇねぇ!小鳥!今日ライブの予定とか入ってないの!ねぇ!」

小鳥「えぇ!?え、えっと特には…」

美希「!じゃ、じゃあ今からライブをしてほしいの!今すぐなの!」

小鳥「そ、それは流石に無理よ!美希ちゃんだってそれぐらいは分かってるでしょ!」

美希「でも…でも美希には時間がないの!最後にキラキラしなきゃ…ミキ…ミキ…」

小鳥「……少し落ち着いて美希ちゃん、何かあったのなら私が聞くから」

美希「………もういいの…ごめんね小鳥…迷惑掛けちゃったの…」

小鳥「っ!そ、そんなことないわよ!謝らないで!……でも私も美希ちゃんの頼みを聞けなくて……!」

小鳥「……美希ちゃん…あったわ、今日、一つだけ」

小鳥「一つだけライブがあったわ!」

[05:07]


美希「ねぇ、審判さん」

美希「ミキ、どうすればいいのかな?」

主審「………」

小鳥『今貴音ちゃんと亜美ちゃんと真美ちゃんで地方でライブをしてるのよ!』

小鳥『間に合えばサプライズゲストとしてライブに出られるかもしれないわ!』

小鳥『えーっと行き先は…大阪ね…今からだと飛行機や新幹線でも結構時間掛かるかしら』

小鳥『あー…でもやっぱり無理かもしれないわね……あれ?美希ちゃん?ちょっと何処行くの!?』

美希「ミキ行くべきなのかな…?でもライブに行ってからまたここに帰ってきた時には…」

主審「………」

副審「………」バッ

美希「何その旗…行けってことなのかな…?」

主審「………」ピッ

美希「……うん…ミキ、最後にキラキラしたいから…行ってみるの」

けど、本当はやっぱり最後にはハニーにも会いたいな

うーん、これって欲張りなお願いなのかな

ミキ、もうよく分かんないの

美希「タク……っ」タッ

実況「おっと、星井選手一度上げた手を下ろしたぞ?」

解説「多分タクシーに乗ることに恐怖心があるのでしょう、仕方が無いことですが時間の方はいいんでしょうかね」

美希「はぁっ…はぁっ…」タッタッタ

実況「今日もう一体何キロ星井選手は走ったのでしょうか」

解説「ものすごい距離だというのは分かりますね、審判団を見れば」

美希「はぁ…はぁ……っ!」

実況「おぉ!星井選手突然止まってしまった!?」

ファン「あ、あの星井美希さんですよね!」

美希「うん…そうだよ…」

ファン「っ!私大ファンなんです!サインお願いできますか!?」

実況「何とここで星井選手、ディフェンダーにガッチリ止められてしまったぁ!」

解説「彼女がどう対応するかが必見ですね」

美希「ご、ごめんなさいなの…ミキね、今とっても時間が無くて…」

ファン「簡単でいいんです!パッて書いてくれればそれだけで!お願いします!」

美希「………」

実況「相手も中々いいプレイをしますね、粘着といいますか」

解説「まあこれは星井選手のミスでしょう、少しぐらい変装をすれば逃げ切れたかもしれませんが…」

[04:36]

美希「っ…分かったの…でもミキも急いでるから早く書くものと書いてほしいものを用意して!」

ファン「は、はい!ありがとうございます!ちょっと待っててください……あれ…」ゴソゴソ…

美希「………」

審判団「………」ソワソワ…

実況「星井選手には主導権を渡さないつもりなんですね、中々の好プレイヤーですよファンの彼女」

解説「あの態度には思わず審判団もイライラを隠しきれていませんね」

ファン「すいませんお待たせしてしまって、これにお願いします…」

美希「はいっ!それじゃあミキもう行くから…」パッ…

ファン「あ、あの最後に握手もしてくれたら…」

実況「どうしても星井選手は突破させない所存なんでしょうか、ものすごいマーク力ですよ」

解説「今からなでしこに行けるのでは?彼女?」

美希「はいっ!握手したの!もうこれ以上はミキ無理だからね!」ギュッ

ファン「ありがとうございます!お忙しい中本当に…」

美希「それじゃあね!」タッタッタ…

実況「この1対1で2分のロスですね、先行き不安です」

解説「駅につくまで何も無ければいいんですが」

美希「はぁ…はぁ……もうっ!」タッタッタ

美希「………」

主審「………」

美希「ミキ…最後に全然キラキラ出来なかったの」

美希『大阪までの時間はどれくらい掛かるんですか!?』

美希「もう死んじゃうのに…これじゃあ悔いが残って成仏出来ないの…」

駅員『そうですね、移動での主要時間は約三時間程ですかね』

美希「………」

美希『さ、三時間!三時間じゃ間に合わないの!』

美希『他にもっと早く行ける方法……っ…ごめんなさい…ありがとうございました…』

美希「……もうイヤ…どうしてミキが…どうしてなの…」ストン…

主審「………」ピッ!

美希「もういいの…もう何もしたくないよ…審判さん…笛吹かないでほしいの…」

主審「………」ピッ!

美希「……もういいって言ってるのに!どうして最後の時間くらいミキの好きなようにさせてくれないの!いらないお世話なの!」

主審「………」……ピィ…

[03:55]

実況「とうとう星井選手、公園のベンチに座り込んでしまった!」

解説「現実に潰されてしまいましたね…」

美希「………」

審判団「………」

実況「審判団もこの状況には手も足も出ないようです」

解説「以前にもこういう状況には陥ったことがあるのでしょうが……主審は最後の一言がきてしまったようですね」

主審「………」ズーン…ピィヒョロォ…

副審「………」ナデナデ

美希「……ねぇ…審判さん…ミキってこれからどうすればいいのかな…?」

副審「………」…バッ

美希「えへへ…旗を振ってもミキもうこれから行く所なんてないよ…」

副審「………」

美希「けどね…本当は会いたい人はいっぱい居るの…家族にも会いたいし、765プロのみんなにも……でも…」

美希「今会っちゃったら…ミキ…キレイに死んじゃえないと思うの…」

美希「だって…多分ミキ…みんなと会ったら絶対に叶わない事を望んじゃうの…」

美希「みんなとずっと一緒に居たいって……みんなともっとキラキラしたステージで一緒に踊って、歌って……最後にみんなでいいライブだったねって言って…」

美希「それでハニーにいっぱい褒められて…とっても嬉しくなって……もっと…もっと…生きていたいって…」

美希「……でもそんなの今のミキにとっては夢…ただの夢なの…」

美希「だってミキ死んじゃうんだもんね…それなのに夢なんて叶えられないよね…」

審判団「………」

美希「……ねぇ…どうしてこんな時間をミキにくれたの…これじゃあ余計苦しくなっちゃうのに…」

審判団「………」

[03:53]

美希「こんな思いするならミキ…早く眠りたかったの…もう頑張りたくないの…」ポロポロ…

主審「………」ス…

美希「……何?審判さ…」

パシンっ…

主審「………」

美希「っ…もう何なの!ミキの態度が嫌なの!?だったらそう言って…」

主審「………」ス…

美希「………」

[03:52]

主審「………」ピッ

美希「……時間あんまりないね…でもミキ、何もしたくないの…放っててほしいの」

主審「………」ガシッ

美希「………」

主審「………」フルフル…ピッ

美希「…これ以上何をすればいいの…?だってミキ…最後にキラキラするチャンスも無いのに…」

主審「………」フルフル…

美希「分かんないの…審判さんはミキに何をいいたいの…」

主審「………」スゥ…


― チャンスは、自分で作るものですよ ―

美希「……え?」

美希「チャンスは…自分で作る…」

主審「………」ピッ

美希「……うん…分かったの…最後だもんね…ミキ、審判さん達を信じてみるの」

主審「………」パァ…!

副審「………」ポワポワ…

実況「どこからか謎の声が聞こえたような気がしましたが…聞こえました?」

解説「さぁ、私にはさっぱり聞こえませんでしたね、選手に助言する審判の声なんて」

美希「よし!じゃあ頑張るの!審判さん、ちゃんとミキについてきてね!」

審判団「………」ピッ!

美希「うん!じゃあ事務所まで皆で競争なのー!」


みんな、ミキね、やっぱり完全に死んじゃう前にこんな所で腐ってられないの
最後くらい今のミキの全力でキラキラしなきゃ気がすまないの

じゃないとみんなだってミキのこと怒るよね

だってそれが、ミキの大好きな、765プロのみんなだもん

美希「小鳥ー!」バタンッ!

小鳥「きゃっ!み、美希ちゃん!?私てっきり大阪に行っちゃったのかと…」

美希「どこでもいいの!今からミキ、ソロライブをしたいの!出来るかな!」

小鳥「えっ!?ちょ、ちょっと待って!いきなりそんなこと言われても…」

美希「ねぇ!お願い!町の中でもビルの屋上でもどこでもいいから!ミキ、ライブがしたいの!」

小鳥「美希ちゃん……ふっ、分かったわ、場所は私がなんとかするわ、後ファンの皆の誘導も」

美希「!ありがとうなの小鳥!それじゃあミキ、準備してくるね!」

小鳥「ええ…よぉーっし、何だかよく分からないけど美希ちゃんのために頑張ろうかしら」

小鳥「今ラジオ収録してる真ちゃんと伊織ちゃん辺りに言って…あ!今生放送のニュースに春香ちゃんたちが出てたわね…よし、後はネットにも拡散して…」

小鳥「忙しくなってきたわねーっ!」


社長「一体何がだね?小鳥君?」

真「今入った情報なんだけど、美希がソロライブを急遽することになったらしいよ!」

伊織「近くにいるファンは行ってあげなさいよ、絶対だからね!」


春香「えぇ!?美希がソロライブ!?えっと…何だか私もよく分からないけど、皆さん行ってあげてください!」


亜美「今、ミキミキがソロライブやってるらしいよ→!」

真美「だから真美達も負けないように盛り上がっていこうね→!」

貴音「……美希…そちらも良きライブになることを望んでいますよ」


[02:21]

ワァァァァァァァァ…

小鳥「ごめんね美希ちゃん…場所はここの公園のステージしか取れなくて…」

美希「十分なの…それにすごいの…こんなに一杯来てくれたて…ありがとうなの小鳥!」

小鳥「ええ…でも社長も頑張ってくれたのよ、春香ちゃんのレギュラーの番組を急遽無理やり、美希ちゃんのライブ中継に切り替えてくれたんだから」

美希「っ…ホ、ホントなの…?ミキのために…?」

社長「ああ、美希君がすごく必死になってるって聞いてね、局に行って監督にねじ込んできたよ……力になれるならと思って…」

美希「っ…ありがとうなの!社長!」ダキッ

社長「はっはっは、今ぐらいは彼の気分を味わっても良さそうだね」

美希「……本当に嬉しいの…でもミキ…こんなによくされてるのに何も返せてないの…」

社長「何を言っているんだ美希君、君は僕が受け取れ切れない程の物をくれたよ……だから十分なんだよ」

美希「……社長…でも…」

社長「それじゃあ今回は、私が色んな人に怒られる分、いまからのライブで私を酔わせてくれないか?……素面じゃあやっていられないからね」

美希「うんっ…ミキ、頑張って来るね!小鳥!社長!」タッタッタ…

小鳥「……よかったんでしょうかね、これで」

社長「………」

美希「あ!言い忘れてたの!」


美希「ミキ、765プロに入って、765プロのアイドルになれて……本当に良かったの!」ニコッ


社長「……何を言っているんだね小鳥君、これでよかったんだよ、私達は何も間違っていなかったんだ」

小鳥「そうですね…ええ、絶対そうですよね」

美希「お待たせしたのー!」

美希ィィィィィィィィ!

美希「みんなぁーっ!こんな突然なソロライブに来てくれてミキ、本当に嬉しいのー!」

オォォォォォォォォォォ!

美希「……本当は大阪にいる三人の所に飛び入りしたかったんだけど…時間が無かったの」

美希「でもね…行かなくて今はよかったと思うの…だってみんな、ミキのことを信じて来てくれたから!だからミキは今ここでライブが出来て幸せなのーっ!」

ウォォォォォォォォォォォォォォ!!!

美希「……みんな…本当にありがとうなの…」

オォォォォォォォォォォ!!!美希ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!

美希「うんっ!みんな!ずっと!ずーっと!美希のファンで居てね!」

オォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!

美希「っ…それじゃあ最初の曲は『ふるふるフューチャー☆』!みんな一緒に盛り上がってほしいのー!」


叶わない夢を願ってもいいんだよね

だって、今のミキはまだ生きてるんだから

消えちゃうまで、みんなと一緒に最後までキラキラしても、いいんだよね

[00:39]


美希「もう…審判さん達まで盛り上がりすぎなの…みんなと一緒に飛んでたでしょ?」

審判団「………」ポリポリ…

美希「……でももう…時間ないね」

審判団「………」

美希「あっ!言い忘れてたの…審判さんたち…今日はありがとうございましたなの」ペコッ

審判団「!」ブンブン

美希「遠慮しないでいいの…ミキ、審判さんたちが居なかったら、最後にこんなに幸せな気持ちになることできなかったんだもん」

審判団「………」

美希「あと主審さん…だよね?最初は酷いこと言ったり、怒鳴ったりしちゃったけど……励ましてくれた時…すごく嬉しかったの!」

主審「っ……っ…っ…」ジーン…

副審「………」ナデナデ…

美希「じゃあ早くあそこに戻らないと…みんな、急ぐのー!」

審判団「………」

美希「……もう…みんな早く…」


P「どこ行くんだよ、美希」

美希「……ハニー?」

P「聞いたぞ、ソロライブしたらしいな」

美希「う、うん…」

P「何でそんな勝手なことしたんだよ、テレビ番組までムチャクチャして……まあそれは社長の独断だろうけど」

美希「だ、だって!……ミキには時間がなかったから…」

P「……どういう意味だよ、それ」

美希「っ…これ以上は言えないの…でも!ミキは後悔してないの!みんなも満足してくれたし、ミキだって…!」

P「美希っ!」

美希「っ…」ビクッ

P「やるなら事前に俺にも言ってくれよ…飛んできたのにさ」ポンッ

美希「っ……むぅ…でも雪歩の…」

P「ああ、だからそっちもどうにかして、お前のところに飛んで来るんだよ、そしたら問題ないだろ」

美希「ムチャクチャなの…ハニー…」ギュッ…

P「それぐらい俺もお前のソロライブは見たかったってことだよ…はぁ…後で小鳥さんに頼んでた録画で我慢するか」

美希「………ふふ」

P「ん?どうしたんだよ突然…」

美希「んー、やっぱりハニーの相手はミキじゃないとダメだねーって思っただけなの」

P「どういうことだよ…それ」

美希「だから……ハニーはミキのことが好きで仕方ないってことなの!」

P「ははは、何言ってんだか、ライブの熱が抜けてないんじゃないのか?」

美希「………」ギュッ

P「でもまあ、美希のことは好きだよ、俺も」

美希「っ……じゃあハニーはずっとミキのハニーなんだからね…浮気は許さないの」

P「いやいや、話が飛躍しすぎだって」

美希「そんなことないの…もう約束だからね…」

P「……そうだな、約束だ…まあ俺よりもいい男が見つかるまでのな」

美希「ハニーの代わりなんて居ないの!ミキには…ハニーだけなの……だからっ!」


チュッ…

美希「だから…こんなことしてもいいの…」

P「……え、えっと…美希…?いやちょっとこれは…」

美希「……覚えててねハニー、ちゃんと…ミキがハニーのこと大好きだったってこと…」

P「……美希?」

美希「それじゃあミキ行かなきゃいけないところがあるからもう行くの!じゃあね、ハニー!」タッ…

P「お、おいちょっと待て美希!お前…っ!」

美希「じゃあねハニー!明日、一緒にお仕事行くの期待してるのー!」

P「!…ああ!今日は早く寝るんだぞー!」

美希「うん…!また明日ね、ハニー!」

明日
ハニーに会えるかな

美希「……きっとまた会えるよね…みんな…ハニー…」ニコッ

うん、絶対会えるよ

だって、生きていれば、願いはきっと叶うんだから

ピィーッ…

[00:00]

―――
――


小鳥「美希ちゃんが亡くなってから5年ですか…」

P「………」

小鳥「今思えばあの時の美希ちゃんは自分が死んじゃうことを分かっていたんですかね…」

P「……そうなんじゃないですかね…」

小鳥「………」

P「………」

小鳥「でもこの公園に来るのも久しぶりですね…みんなが追悼ライブをして以来ですか」

P「ええ…そして今じゃあ世の中のほとんどは美希のことを忘れて…」

小鳥「……私達が覚えています…それでいいじゃないですか……ね?」

P「……そうですね…俺達が覚えていればそれだけで十分で…」

ドカッ

P「いてっ……子供?」

小鳥「あちゃ~…大丈夫?鬼ごっこでもしてたのかしら…」

「うん……いたくないからがまんできるの…」

小鳥「そう、強いのね」

「……おねえさんたちはここでなにしてるの?」

小鳥「……ちょっと昔のことを思い出しに来てるのよ」

「むかしのこと?」

小鳥「うん、昔ね、とってもキレイでとっても元気でとってもみんなが大好きなでみんなも大好きなアイドルの娘がいたのよ」

「へー…」

小鳥「その娘がここでライブをしたから…私達はここに来てその娘のことを思い出してるの」

「……そのひとはもういなくなっちゃったの?」

小鳥「………遠くに行っちゃったからね、もう会えないの」

「ふーん…じゃあわたしもそのひとみたいにここでらいぶしたい!」

小鳥「あら?アイドルに興味があるのかしら?」
「うん!」

小鳥「それじゃあ将来はこのお兄さんに手伝ってもらいなさい、きっと大人気のアイドルになれるわ」

「……ほんとにー?」

小鳥「ええ、だから今からよろしくお願いしますって言っておかなきゃね」

「うん!……おにいさん!」

P「………」

「わたし、しょうらいあいどるになるから!わたしのことぷろでゅーすしてね!」

P「っ…!」

小鳥「あら?プロデュースって言葉よく知ってるわね、どこで知ったの?」

「うーん…わかんない……けどくちからでちゃったの!…ねぇ、おにいさん!」

「わたし、とっぷあいどるになるからぷろでゅーすしてね!ぜったいなの!」

P「………ああ、お安い御用だ」ニコッ

絶対、また会えるよね

だって生きていれば、願いは叶うんだから

end

久々に本編見て書きたくなったから書きました
ロスタイムライフおもしろいから未視聴の人は見てほしいです

支援ありがとうございました

それじゃあおやすみなさい

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