代行
代行サンクス
季節は夏真っ盛り。気温はゆうに三十度を超える猛暑だ。
そんな暑さの中でわざわざ熱々のものを食べたいと言うつもりはない。
暑い夏の昼に冷たいそうめん。実に理に適っている。
しかし、だ。
奉太郎「これでもう三日連続じゃないか。他に食材がないわけじゃないだろう」
える「だめですよ折木さん。できるだけそうめんを消費するように、と供恵さんから言われたじゃないですか」
奉太郎「でもなあ、さすがにこの三日の昼飯と晩飯が全部そうめんってのはいくらなんでも……」
える「世の中には食べたくても食べられないで苦しんでいる方がたくさんいるんですよ。
私たちは恵まれていることに感謝しないといけません」
ちょっとメモに使わせてくれ
じゃがいも にんじん 牛肉
千反田が説教モードに入ってしまった。これはまずい。
農家の娘である千反田は料理のこと、食のことに関しては非常に厳しい。
いつものごとく少し近すぎるのではないかという距離まで顔を寄せてきて食の大切さを説いてくださる。
ここで口答えなどしようものなら昼飯は抜き、下手をしたら晩飯も作ってくれなくなるかもしれん。
それは省エネとは呼べない。ここはおとなしく引き下がるとしよう。
奉太郎「わ、わかったわかった。悪かったよ。文句を言わずに食わせてもらうよ」
える「はい」
と千反田は満足げにうなずく。助かった。
える「今日は油淋鶏風に仕上げてみました」
奉太郎「おお……うん……うまそうだな……」
実際、千反田の料理はうまいのだ。
今日は油淋鶏が茹でられたそうめんの上に置かれ、その上からたっぷりと中華風のタレをかけた一品となっている。
昨日の夜はそうめんを揚げて、熱いあんかけをかけた一品に下鼓を打った。
なるべく飽きがこないよう、さまざまな工夫が凝らされたそうめん料理の数々。
正直なところ、そうめんにはこんなにもたくさんの調理法があるのかと毎日千反田の料理を見て驚いていた。
しかし、しかし、どんなに工夫を凝らしてみたところでそうめんはそうめんなのだ。
あのつるんと落ちていくような上品なのど越しも、今はただただ恨めしい。
奉太郎「ああ、米が食いたい」
いそいそと食卓に料理を並べる千反田を手伝いながら、俺は誰にも聞こえないように呟いた。
ことの発端は一週間ほど前にさかのぼる。
商店街で買い物をした帰り道、福引きの引換券をもらったのでやってみたら、当たってしまった。
三等のそうめん一カ月分が。
それだけならまだよかった。どうせそうめんは毎年夏に大量に食べるものだ。
もしもこれが例年なら、今年の夏のそうめん代が浮いたと姉貴からたいそうほめられたことだろう。
ただ、その日だけは別だった。この幸運は、今年の夏食べる分のそうめんをちょうど買い込んだ帰り道での出来事だったのだ。
姉貴はこの幸運をおおいに笑ってくれたが同情はしてくれなかった。
このそうめんを全部自分の責任でもって片付ける。この夏もっとも過酷な義務が俺に課せられた瞬間だった。
夏休みが始まる三日前のことである。
>>1(最初は荒れるけど黙って投下してけばそのうち評価されるから落ち着け俺)
奉太郎「というわけなんだ。だからもしよかったら少しそうめんをもらってくれないか」
里志「ははは。まったくついてないねホータローは。
残念だけど我が家もそうめんは十分確保してるんだ。悪いね」
摩耶花「ウチもそうね。悪いけど」
える「わたしの家も毎年お中元などでたくさん頂いて余るくらいなので、これ以上はちょっと……」
奉太郎「だよな。これで俺の夏休みはそうめん地獄決定か。
帰りにめんつゆでも買って帰るかな」
里志「でもホータロー、そうめんって言ってもただ茹でて食べるだけがそうめんじゃないだろ?
いろいろ料理法をアレンジしてみればそれほど飽きずに食べられるんじゃないかな」
>>1 オラなんとか言ってみろコミュ障
える「そうですね。いろいろおいしい方法がありますよ。
あ、もしよろしければいくつかレシピを教えましょうか」
奉太郎「いや、遠慮しておく。今年の夏休みは家に俺しかいないんだ。
だからレシピを聞いたところでどうせ面倒くさがって作らん。
むしろ茹でるだけで済むそうめんがたくさんあって助かったかもしれん」
里志「ホータローしかいないってどういうことだい?」
奉太郎「親は仕事。姉貴は旅行だ。どっちも帰ってくるのは俺の夏休みが終わる頃だそうだ。
まあ一ヶ月くらいそうめんだけでも死ぬことはないだろう」
える「だめですよ折木さん!そんな食生活だと栄養が偏って体を壊してしまいます!」
奉太郎「おいおいそんな大げさな……」
>>1 このスレ潰していい?今のうちに謝ったら許してやるぞ
摩耶花「そーよちーちゃん。どーせこいつはたいしたエネルギー消費もないんだから、そうめんがあれば十分よ」
える「だめです!折木さんは今年も『氷菓』で書く担当がたくさんあるんですから、そうめんだけではエネルギーが保ちません!」
奉太郎「じゃあどうしろって言うんだ。野菜ジュースでも買って飲んでればいいってのか?」
える「~~~~~!わたしが!折木さんの家にご飯を作りに行きます!!」
奉太郎「」
摩耶花「」
里志「」
奉太郎「い、いや、さすがにそれは……」
摩耶花「そうよちーちゃん!こんな奴なんかのためにそこまでしてあげる義理はないわ!」
>>1 褒められたいのか?
える「いえ!もう決めました!『氷菓』の編集作業は午後からですよね?
でしたら昼前に折木さんの家に行ってお昼を作って、作業が終わったらまた折木さんの家に行って晩御飯を作ります!
これなら問題ないですよね?」
摩耶花「それを、毎日……?」
える「もちろんです!安心してください、折木さんの夏休み中の食生活はわたしが責任を持って管理させて頂きます!」
奉太郎「おい、勝手に話を進めるんじゃない。誰が、いつ、お前に飯を作ってくれと頼んだ?」
える「わたしが!今!決めました!」
奉太郎「いや、だからな……」
里志「いいじゃないかホータロー。千反田さんがやるって言ってくれているんだ。
千反田さんの料理の腕は知っているだろう?自分で味気ないそうめんを毎日すするよりはずっといいと思うけど。
それとも何だい?ホータローの家には千反田さんに見られると困るようなものでもあるのかい?」
奉太郎「なっ……!」
える「困るもの?わたしに見られると困るものが折木さんの家にあるんですか?わたし、気になります!」
奉太郎「…………はあ」
かくして気になりますモードに入ってしまった千反田を俺に止めることができるはずもなく、
してやったり顔の里志と蔑むような顔の伊原の立会いの下、折木家における夏休み中の食事係に千反田えるが就任する運びとなってしまった。
>>1 ここで止めとけばまとめサイトにまで醜態晒されることもないよ
える「どうですか、折木さん?実は今回のは初めて作ってみたものなんです。
味見はしましたので変な味ではないと思いますが」
奉太郎「うん、今日のもうまいぞ。香ばしい鶏肉にタレがよく合っていると思う」
これをおかずにして米が食えたら、という本音は黙っておく。
える「そうですか。お口に合ってよかったです」
奉太郎「ん。毎日悪いな」
える「わたしのわがままでやっていることですから」
さすがお嬢様といったところか、千反田は食事中あまり喋らない。
ときおり二言、三言他愛のない会話が挟まる以外は実に静かに食事が進む。
>>1 頑張って書いたssを叩かれながら投下する気分はどうだ?
姉貴と一緒に食うよりは気が楽だ、と思った。なにしろあのお方は話題が豊富で尽きることがない。
食いながら話すなど俺の主義にまったく反している。
口は一つしかないのだ。一度に二つのことをするには向いていない。
姉貴や里志にもこの俺たちの姿勢を見習ってほしいものだ。
奉太郎「ふう、食った食った。ごちそうさん」
える「はい。お粗末さまでした」
食べ終えた食器を下げ、俺が入れたまずいお茶で一服し終える頃にはちょうど出発する時間になる。
奉太郎「さて、そろそろ行くか」
える「はい」
今日も昨日と同じように仕事をして、同じように家に帰って、同じように千反田の飯を食い、
そして同じように寝ることになるのだろうと思っていた。
里志の奴が部室でまたおかしなことを言い出すまでは。
>>1 (笑)
里志「そういえば千反田さん」
える「はい、何でしょう福部さん」
里志「明日から週末で『氷菓』の編集もお休みになるわけだけどさ、週末もホータローの家までご飯を作りに行くのかい?」
奉太郎「そういえばそうだな。学校に来ないのにわざわざ来てもらうのも悪いな」
摩耶花「ほんとよ。週末くらいは自分でなんとかしなさい」
える「いえ、自分でやると決めたことですので、明日も変わらずお邪魔しようかと思っているのですが」
摩耶花「こんな奴のためにそこまですることないってちーちゃん!
週末くらいゆっくりしなきゃ!」
伊原の言うことは少々癪に障るが、その通りだ。飯を作るためだけに家まで来させるなどさすがの俺も良心が痛む。
それにそろそろレトルトでもいいから牛丼なりカレーなりご飯ものを食いたい。
>>1 ここまで内容褒めたやつゼロ
える「折木さんの食生活はわたしが責任を持って管理しますと言ったからには、週末だろうと休めません!
それに、『氷菓』の編集以外に特にしなければいけないこともなくてずっと暇ですし」
奉太郎「いや、そこまではさせられん。週末は自分の家でゆっくり過ごしてくれ」
える「いえ、行きます!」
奉太郎「いらん!」
里志「押し問答をしたって何にもならないよ。つまりこういうことだろ?
ホータローはわざわざご飯を作らせるためだけに千反田さんを家まで呼びつけるのは悪いと思ってる。
千反田さんは言いだしたからには責任を持って続けたい。
ならいい方法があるよ」
>>1 自分がダメだから叩かれてるって気づこうな
える「どういう方法ですか福部さん!?」
里志「つまりさ、ご飯の度にわざわざ家に呼びつけるのがダメだっていうんなら、ずっと家にいればいいのさ。
そうすればわざわざ通うようなこともしなくて済む」
摩耶花「ちょ……ふくちゃんそれってつまり」
奉太郎「千反田を週末俺の家に泊めろってことか?」
里志「その通りさ!いい案だと思わないかい?お互いの主張の妥協点ってことでさ」
える「それはいい案ですね!」
奉太郎「冗談じゃない。今俺の家には俺しかいないんだぞ。そんな状況で千反田を泊めるなんて……
それは、よくないだろ。よくない」
>>1 今からでも謝罪したら今後一切このスレにレスしないと約束する
>>54 お前言葉のキャッチボールできないだろ
里志「よくないって、何がどうよくないんだい?ちょっと僕に教えてくれないかな?」
奉太郎「ぐっ……」
摩耶花「折木、サイテー」
里志よ、俺が何かお前の気に障るようなことをしたのか?
もしそうだとしたら言ってくれ。今すぐ謝るから。
える「ではそういうことで!」
ああ、もう千反田の中では決定事項となってしまっている。これではもうどうしようもできない。
諦めて千反田から目をそらすと、そこにはしてやったり顔の里志と蔑むような顔の伊原。
強烈な既視感。デジャビュは脳が引き起こす錯覚というが、俺は間違いなくこの風景を前にも見たことがある、
と断言できるほど二人はこの前と同じ顔をしていた。
もしもしがでしゃばりすぎ
黙ってろ
>>1 焦んなよコピペ慎重にな震えてるぞ
える「一回家に帰って着替えを取ってきますので折木さんはそれまでゆっくりしていてください。
あ、ご飯が入らなくなるので間食はしないでくださいね」
奉太郎「ああ。じゃあまた夜にな」
える「はい、またです」
たちの悪い冗談であってくれ、という俺の願いもむなしく、千反田は本気だった。
ここ数日毎日家に来て料理を作ってもらってはいたが、泊めるとなると話は別だ。
これまでキッチンと居間だけは掃除して何とか体面を保っていたが、今日からはそうもいかない。
念入りに風呂を磨き、部屋にちょっとだけあるいかがわしい本を厳重に隠し終える
うちに時間は経ち、結局ゆっくりしている暇はなかった。
>>61 きもい
>>1 どうすんだこのスレ お前がクズだからだぞ
える「こんばんわ折木さん。それではまたお台所を貸して頂きますね」
奉太郎「ああ。頼む」
える「今日はですね、カレーうどん風に作ってみようと思います」
奉太郎「ほう。悪くないな」
惜しい。本当に食べたいのはカレーライスなんだ。とももちろん言えない。
ほどなくして出てきたカレーうどん風そうめんはやはり、たまに自分で作る残り物のカレーをただうどんの上に
かけるおよそ料理とは呼べない代物とは一線を画すしっかりした一品の料理であった。
奉太郎「ごちそうさん。今日もうまかったよ」
える「はい。お粗末さまでした」
>>1 これやってて恥ずかしくないの?(笑)
奉太郎「ちょっと待っててくれ。今茶をいれてくる」
える「いつもありがとうございます」
奉太郎「こっちの台詞だよ。ほら」
千反田の前に湯呑を置き、俺は自分の分のお茶をすすった。いつも通りの味だ。
このままいつも通りに今日はこれにて解散、となってくれればいいのだが、そういうわけにもいかない。
える「折木さんは普段夜は何をなさっているんですか?」
奉太郎「まあ、宿題をしたり本を読んだりくらいだな。テレビはあまり見ない。
お前はどうなんだ?千反田。なんとなく飯を食って風呂に入ってすぐ寝る、というイメージだが」
える「そうですね。私もだいたいそんな感じです。
宿題も部室で済ませることが多いので夜は早めに寝てしまいます。
宵っ張りは体によくありませんので」
>>1 手震えてるぞ
奉太郎「そうか。俺は割と夜更かしする方なんだがお前がいる間はそれに合わせることにするか」
える「はい。ありがとうございます、折木さん」
奉太郎「じゃあさっさと風呂も済ませてしまうか。俺が洗い物をするからその間に入っててくれ。
それとも自分が入ったあとの湯に俺が入るのは嫌か?嫌なら俺が先に入るが」
える「いえ、折木さんでしたらわたしは気になりません。
お言葉に甘えてお先に入らせてもらうことにします」
奉太郎「ああ。まあ狭い風呂だがゆっくり入ってくれ。
あと洗濯物だがお前が気にならないようなら後でまとめて洗濯しておくがどうする?」
える「ではそれもお言葉に甘えさせて頂きます」
奉太郎「分かった。脱衣所に洗濯かごがあるから適当に放り込んでおいてくれ」
える「はい。それでは行ってきます」
>>1(変なのに構わず投下する俺かっこいい)
勘違いするな VIPにSS投下してる時点でさみーんだよゴミ
しかし千反田が風呂に入っている時間は存外に長く、
早々に洗い物を終えた俺は一人手持無沙汰で千反田を待つこととなった。
普段ならばのんびりと本でも読むのだが、
かすかに聞こえてくる水音のせいでまったく集中できない。
自分の家の風呂に千反田が入っている、というのはやはりよくない。
俺が先に入るべきだったと今更ながら後悔する。
耐えきれなくなってテレビをつけてニュース番組を見ていると、風呂場の扉が開く音がした。
える「お先に頂きました、折木さん」
奉太郎「お、おう。じゃあ俺も入るかな」
千反田の乾ききっていない髪と上気した顔を見るのはよくないと判断して、俺はテレビを見たまま答えた。
そのままなるべく千反田の方を見ないように風呂場へと向かい、
千反田の服が入っているであろう洗濯かごからも目をそらし、なんとか風呂場に入りやっと一息ついた。
あーつまんね
奉太郎「ここにさっきまで千反田が入っていたのか……」
よくない。やはりこれはよくない。
なるべく考えないようにしていたが、口に出すことで明確に意識してしまった。
奉太郎「…………今日はシャワーだけで済ますか」
せっかくの風呂なのに気疲れしてしまう。
まったく大変なことになったものだ。
さっさと出てさっさと寝よう。
奉太郎「ふう、疲れた。自分の家の風呂で疲れるとは……
上がったぞー、千反田。……千反田?」
>>88 下品なんだよ猿が
ついにもしもしとPCを使い分け始めたか
見ると、千反田はソファに座りながら舟を漕いでいた。
泊まりに来ると決まった時からなんだかはしゃいでいたからこいつも疲れたのだろう。
このまま放っておいても風邪は引かないだろうが、さすがにそういうわけにもいかない。
奉太郎「おい、千反田。起きろ」
える「ん……」
奉太郎「今日は疲れただろう。もう寝ろ。歯は磨いたか?」
える「うん……」
なんだかしまりのない顔で千反田が頷く。
やや寝ぼけているようでいつもの敬語もどこかへ行ってしまったようだ。
ぼんやりして動こうとしない千反田の手を取り自分の部屋まで引っ張っていく。
>>92
何と戦ってるんですか^ ^?
奉太郎「あいにく折木家には客を泊められるような部屋はなくてな。
勝手に姉貴の部屋を使うわけにもいかんからここで寝てくれ。
今お前の布団を持ってくるからちょっと待ってろ」
える「ん……」
また半分意識を失いかけている千反田を残し、客用の布団を引っ張り出しに部屋を出る。
早く戻らないと立ったまま寝てしまいかねない。
くそ。こんなことなら前もって布団を準備しておけばよかった。
奉太郎「ほら千反田、布団持ってきた、ぞ……」
立ったまま寝ていてくれたほうがずっとよかった。
部屋に戻ってきた俺が見たものは俺のベッドで眠っている千反田の気持ちのよさそうな寝顔だった。
>>97 お前ビビりだろ クソポークピッツが
奉太郎「これは……起こせないな。まあ、仕方ない、か……」
諦めて自分のために客用の布団を敷く。
まあ、千反田が嫌じゃないならどこで寝ようが構わない。
俺の寝床がなくなるわけでもないからな。
髪を乾かし、歯を磨き終えてもまだ時刻は十時を回ったところだったが、千反田も寝てしまったので、今日は早く寝ることに決めた。
まあたまにはいいだろう。
千反田がたまに何事かむにゃむにゃと言う寝言を子守唄に、いつしか俺も眠りに落ちて行った。
ペースはえーぞ小心者
>>101 なにこれ小学生の作文?
える「折木さん、折木さん。朝ご飯ができましたよ。起きてください」
奉太郎「ん?ああ……。まだ七時過ぎじゃないか……」
翌朝、いつもの如く惰眠をむさぼろうという俺の計画は千反田によって早くも瓦壊させられた。
しかも外を見るとしとしと雨も降っている。
こんな日は一日寝て過ごすに限る。
奉太郎「今日は雨だから、寝ててもいい日だ」
える「だめです折木さん!ご飯が冷めてしまいます!」
布団をかぶって二度寝としゃれ込みたいところだったが、千反田に布団をはぎとられた。
俺は昨夜お前を起こさないよう気を遣ったというのに。
奉太郎「分かったよ。今起きる」
える「おはようございます、折木さん」
奉太郎「へいへい」
える「では準備しておきますので早く下りてきてくださいね」
そう言って千反田は階段を下りて行った。
しょうがない。起きたからには飯でも食うか。
そういえばこれが夏休みに入って初めての朝食になる。なんとまあ自堕落な生活を送ってきたことだ。
いつも以上にのろい動作で居間にたどり着くと、そこには卵焼きにウインナー、納豆のパック、みそ汁、
そして夢にまで見た白いご飯が並べてあった。
>>106 意味不明
>>108 お前才能ないのか
奉太郎「おお。理想の朝食だ……」
える「さすがに朝ご飯くらいはお米にしようと思いまして。
折木さんもそうめん続きで辛そうでしたので」
奉太郎「なんだ、ばれていたのか」
える「顔を見ればすぐに分かりますよ」
奉太郎「いや、お前の料理に不満があるわけじゃないんだ。
ただ、な……」
える「いいんですよ。わたしも毎日そうめんを食べるのはちょっと大変だと思います」
奉太郎「そう言ってもらえると助かるよ」
自分が正しいことやってるみたいな顔して投下するな負け組
そうかお前自己投影して書いてたのか、辛い人生を送ってきたんだろうな…
える「はい。ふふふ。
あ、それと、わたし折木さんに謝らないといけないことが……」
奉太郎「ん?昨日の夜のことか?」
える「はい……。すみません折木さん、昨日はなんだかとても眠くて、
それで朝気づいたら折木さんのベッドで……
なにか面倒をおかけしましたよね」
奉太郎「別にいいさそれくらい。ぐっすり眠ってたようだし、無理に起こすのも悪いと思ってな」
える「はい。折木さんの香りに包まれているようでとてもよく眠れました」
奉太郎「そ、そうか。ならよかったよ」
まったくこいつは何を言い出すんだ。
急に照れ臭くなった俺は、精一杯無愛想を装ってその場を逃げ出そうとした。
>>122 俺() 妄想垂れ流すの止めてくれ
奉太郎「ん、ごちそうさん。さて、飯も食ったしもうひと眠りしてくるよ」
える「だめです折木さん。午前中は宿題の時間ですよ。さあ、一緒にやりましょう」
が、それを許してくれないのが千反田だ。
どうやらこいつは俺の家でも自分の生活を崩すつもりはないようだ。
奉太郎「まだ休みは始まったばかりなんだしいいじゃないか」
える「折木さんは『氷菓』のことでいっぱいやることがあるんですから今からこつこつやっておかないと後で大変ですよ。
さあ、やりましょうやりましょう」
奉太郎「はいはい」
午前中に宿題をするなどいつ以来のことなのかもはや記憶にない。
朝から勉強など気が進まないが、これもやるべきことかと思い直し、
千反田に倣い宿題の準備をする。
しかし昨日の晩早く寝たことと教え上手な千反田がいたことで宿題は思いのほか捗り、
ふと時計を見るともう昼近くになっていた。
謝罪しておけば読む人は不快にならずにすんだのにな、お前の独りよがりの結果だぞ
意外と頑張った自分を心の中で褒めつつ、いつも通り千反田が作ったそうめん料理を食べる。
今日もうまい。一食ご飯をはさんだおかげか、割と新鮮な気持ちで食べ終えることができた。
える「折木さん、午後は何か予定はありますか?」
奉太郎「午前中にエネルギーを消費してしまったからな。俺は昼寝をしなければいけない」
える「お昼寝、ですか」
奉太郎「ああ、昼寝だ。今日は雨も降っているしな」
える「ふふ。いいですね、お昼寝。わたしもご一緒させてください」
奉太郎「ご一緒というほどのものでもないが……。まあ勝手にしろ」
える「はい。ありがとうございます」
奉太郎「じゃ、寝るか」
える「はい!」
そんなに張り切って昼寝をしようという奴は初めて見る。
>>134 お前のどうでもいいプライドのせいでこのスレ開いた人みんな不快になってるよ、まあもう今さら謝罪なんかできないだろうが
もうこいつはそっとしといてやれ妄想の世界に逃げるしかないみたいだ
える「折木さんはいつもどこでお昼寝をしているんですか?」
奉太郎「仏間だ。涼しいからな」
妙にはしゃぐ千反田をかわしつつ、枕代わりの座布団二枚とタオルケットを持って仏間へ向かう。
千反田が俺の後ろについてきながら「わたし、お友達とお昼寝するのは初めてです」と
嬉しそうに言っていた。
千反田と並んで寝転び、タオルケットを腹に掛ける。
二枚も持ってくるのが面倒だったので、二人で一枚だ。
やけににこにこしている千反田が少し気になったが、
心地よい畳の香りと適度な満腹感からくる眠気で、徐々にそれも気にならなくなっていった。
>>137 お前は間違ってる お前は悪だ
投下するペースおかしいよ
激しい雨音で目を覚ますと、午後三時を回ったところだった。
随分と寝てしまった。まあ早起きしたからしょうがないか。
千反田はまだ眠っている。あまり寝すぎると夜眠れなくなるかもしれないと思ったが、
気持ちよさそうな千反田の顔を見ているとなんだか起こすのは憚られた。
奉太郎「コーヒーでも飲むか」
一服しながら読書でもしようとお湯を沸かしていると、千反田も居間へ入ってきた。
まだ眠そうな目をしている。
奉太郎「よお。起こしてしまったか?」
える「いえ、ちょうどいい時間でしたので」
奉太郎「まだ眠そうだな。コーヒー飲むか?」
える「あ、いただきます」
>>141
誰からも感想を書いてもらえないなぁ
お前は何が目的なの?
それから二人でコーヒーを飲みながら夕方までだらだらと過ごした。
千反田がつまらない思いをしていないか少し心配だったが、
どうやら俺のマンガにえらく興味を持ったようで熱心に読み進めていた。
俺の予想通り「続きが気になります、折木さん!」が始まったので、
続きを買ったらまた貸してやる約束をしてその場を収めた。
さすがにマンガの先の展開までは読めない。
その後はまた昨日と同じように千反田の晩飯を食い、
風呂を済ませ、今日も寝る時間がやってきた。
奉太郎「できれば今日はそっちの客用の布団で寝てほしいんだが……」
える「そうですね。昨晩はすみません」
奉太郎「まあいいさ。じゃあ電気消すぞ」
える「はい。おやすみなさい」
>>146
もれてめぇの理想垂れ流しじゃねえか、あれもしかしてこいつ悲しい奴なのか・・・?
そう言って電気を消し、また一日が過ぎた。
しかし次の瞬間、窓の外が白く光った。遅れて聞こえる激しい音。
雷だ。そんなに遠くないようだ。
奉太郎「けっこう近そうだな」
だが千反田から返事はなかった。もう寝てしまったのだろうかと思った時、何かに手をつかまれた。
千反田の手だった。
奉太郎「ん?どうした千反田」
千反田は俺の問いかけには答えなかった。
しかしその手の震えが何よりも雄弁に俺の疑問に答えていた。
このスレ開いた人がどう思うかわかって書いてる?
誰も読みたくないよこんなんじゃ
奉太郎「お前、まさか雷が怖いのか」
何も言わずに千反田は頷く。と、そのときまた雷が鳴った。
今度はさっきよりも近い。千反田はびくっと震え、さらに強く俺の手を握った。
奉太郎「おい、大丈夫か?」
この問いに千反田は首を横に振った。そして泣きそうな声でこう言った。
える「小さいころから雷が苦手で……
どうか雷がやむまで一緒に寝てくれないでしょうか……?」
奉太郎「いや、でもそれはさすがにまずいんじゃないか?」
さすがに同じベッドで一緒に寝るのはいろいろとよくない。
>>153
お前清楚黒髪に幻想抱いてるだろ豚
悪いが我慢してもらおうと思った時、また雷が落ちた。
ひっ、と千反田が小さく声を漏らした。
いつの間にか俺の腕にしがみついていやいやをするように首を横に振っている。
さすがにここまでおびえている奴を放って一人で寝るほど俺は鬼じゃない。
奉太郎「わかった。こっちに来い」
える「ごめんなさい。ありがとうございます……」
蚊の泣くような声でそういうと、千反田は俺のベッドに入ってきた。
せめてもの抵抗で千反田に背中を向けて寝ようとしたのだが、
千反田が腕を放してくれないのでそれも失敗に終わった。
雷が鳴るたび体を強張らせていた千反田だったが、
しがみつく相手が出来たことで落ち着いたのか、しばらくすると静かな寝息が聞こえてきた。
まったく世話のかかるお嬢様だ。まあ今回は俺もこいつのことは言えんが。
昼寝をしすぎたせいだろう、俺は安らかに眠る千反田の隣でしばらく寝付くことができなかった。
千反田のおかげで比較的楽にそうめんを消費出来てはいるが、
まだまだ俺のノルマは達成されていない。
先は長そうだと思っていた矢先、しかし俺と千反田のそうめん生活は唐突に終わりを迎えることとなる。
いつものごとく昼飯に千反田のそうめん料理を食っていたとき、家の電話が鳴り出した。
旅行に行っているはずの姉貴からだった。
供恵「ねえねえ、まだあんたのそうめん残ってる?」
奉太郎「まあ、けっこう残ってる」
供恵「よかったー!あのね、友達でそうめん買ってないって子がいてね、その子にあげる約束しちゃったのよ。
いいでしょ?だからもうそうめん食べなくてもいいから!
あとさ、ちょっと事情があって旅行も途中でやめなきゃいけなくなっちゃったの。
だから明日そっちに帰るわ。だからよろしくね」
奉太郎「え?お、おい!」
あわてて聞き返そうとしたが時すでに遅し。
そんな暇を与えてくれずに電話は切れていた。
奉太郎「はあ、まったく」
える「あの、どうかなさいましたか?」
奉太郎「ああ。実はな、もうお前にそうめん料理を作ってもらう必要がなくなってしまった」
える「はあ……」
なんだかよく飲み込めないといった顔で千反田が首をかしげる。
いけない。説明を省きすぎる千反田の悪い癖が移ってしまったか。
改めてちゃんと順を追って説明する。
奉太郎「とまあそんなわけだ。
すぐに電話を切られたから詳しいことはよくわからんが」
える「そうですか」
奉太郎「だからこれが最後のそうめんだな。
お前のおかげで人間らしい食生活をすることができた。助かったよ」
える「わたしが言いだしたことですから」
あれだけうんざりしていたそうめん料理も、これで最後かと思うとなんだか名残惜しい気がしてくるから不思議なものだ。
千反田の作る最後の料理を完食して食器を片づける。
える「それでは、わたしはそろそろおいとまさせていただこうと思います」
奉太郎「もうか?姉貴が来るのは明日だからもう少しゆっくりしていってもいいが」
える「また雨が降るかもしれないので、今のうちにと思って。
それに、あんまり長居するともう一晩泊まりたくなってしまいそうですので」
奉太郎「そうか」
える「はい。あ、お布団はどうしましょう」
奉太郎「いいよ。俺が片付けておく」
える「何から何までありがとうございます」
奉太郎「こっちこそ、助かった。礼を言う」
える「では、おあいこですね。じゃあ、また部活で会いましょう」
奉太郎「ああ、またな」
える「はい、またです」
玄関先で千反田を見送り、さっそく自分の部屋を片付ける。
姉貴に千反田の痕跡を見つかるわけにはいかん。
別にやましいことなど何もないが、まあ積極的に言いふらすようなことでもないだろう。
客用の布団もしまい、千反田の忘れ物も確認した。これで大丈夫なはずだ。
そして翌朝、俺はやましいことなど何もありませんでしたよ、
といった顔でいつも通り姉貴の帰りを歓迎した。
供恵「あー疲れた。一人で寂しくなかった?」
奉太郎「別に」
供恵「まあもう子供じゃないもんね。ああお腹減った。
そうめんでいいわよね?」
奉太郎「もうそうめんは食わなくてもいいんじゃなかったのか?」
供恵「何言ってんの。あんたが今まで食べてたのはあんた一人のノルマであって、
折木家用のそうめんは別にちゃーんとあるんだから」
いろいろなことがありすぎて忘れていた。
そういえばことの発端はそうであった。
これからは何の工夫もないただのそうめんを食わねばならんのか。
奉太郎「もう千反田のそうめんが懐かしいな」
供恵「えー?なんか言った?」
台所から姉貴が声をかけてきた。
危ない危ない。これを聞かれてしまってはなんにもならない。
奉太郎「何も」
供恵「そう。と、こ、ろ、でー」
姉貴の口調が突然おかしくなった。
まさか千反田のことがばれたのか?いや痕跡は完全に消したはず!
奉太郎「なんだよ急に気持ち悪い」
供恵「あんたは私がいない間、一体誰にご飯を作ってもらっていたのかなー?」
奉太郎「だから一人で……」
しらを切ろうと振り向くと、そこには家族の誰のものでもない黒く長い髪の毛をつまみ、
にんまりと笑った姉貴がいた。
供恵「この髪、私のよりもずっと長いのよね。一体誰の髪の毛なのかしら。
さ、白状するまでご飯はなしよ!」
やはり俺は、この人には敵いそうもない。
俺は観念して、なるべくなんでもないように千反田のことを話し始めるのだった。
END
以上です
駄文に付き合ってくれた方々に敬礼
このSSまとめへのコメント
良かった
ありがとう
一人キモいアンチいてわろた
面白かった
アンチが幼稚すぎて草生えた
よくアンチに負けず描き切った
面白かった
面白かったです。1人とてもうるさい人がいましたけど
頭のおかしい人の合いの手が楽しかった