男「本当に降ってくるか?隕石」
妹「わかんないよ。だけど、新聞やテレビが嘘つくかな」
男「あいつらの言うことは嘘ばっかりだぜ?」
妹「そうなんだ。だったら、今回も嘘だといいね!」
男「おう……」
男「母さんたち元気かな」
妹「どうだろう。シェルターの中見たことないし」
男「まさか、未だに俺たちを探してるわけじゃないよな?」
妹「だったら家に戻ってくるでしょ」
男「そうだなぁ」
妹「……」
男「……」
男「あぁ、そうだ!散歩でもどうだ?」
妹「えぇ……」
男「いいじゃないか!だって誰もいないんだぜ?道路で寝ても怒られないぞ?」
妹「道路で何か寝ないよ」
男「……家にいても退屈だろ?気が変になりそうだ……」
妹「そうだね。明日までの命だけどお兄ちゃんの心身の健康のためにも外へ行ってあげよう」
住宅街
男「う~ん!気持ちのいい朝だ!さて、どこいく?」
妹「てきとー」
男「とりあえず、歩くか」
妹「」コクリッ
男「」
女「」
男「春だなぁ」
女「なにが?」
男「桜だよ。地面にもちらほら落ちてるだろ?花びら。それに家の屋根までピンク色だ」
女「不思議だよね」
男「え?」
あ、妹と書き間違えてた
妹「テレビとか漫画で見る終末ってもっと暗くて怖いイメージじゃない?」
男「そりゃぁな。人類の危機だし」
妹「でも、今私達が立ってる場所って……暗くて怖い?」
男「いや、むしろ清々しいな。天気もいいし」
妹「そう、だから不思議なんだよ」クスクス
妹「明日はないのに、そんなことこの景色から想像つかないんだもん」クスクス
男「そうだなぁ」
妹「だけど、いつもの朝よりちょっと静かだよね」
男「当たり前だ。み~んなシェルターに避難してるんだから」
妹「それに、幼馴染さんもいないしね」
男「……そうだな」
妹「あ……」
男「あいつも元気にしてるといいな」
妹「うん」
男「そうだ。何か食べ物探そう」
妹「食べ物?」
男「勝手に人んちに上がりこむのさ!わくわくするだろ?」
妹「どうかなぁ。だってここ、私達の通学路だよ?何か嫌だよ」
男「え??なんで?」
妹「……最後までそのままにしておきたいなって」
男「よくわからん妹だ」
妹「……」
男「んじゃ、どうする?帰るか?」
妹「もうちょっと歩こう」
男「お、なんか乗り気になった感じ?」
妹「ま、まぁ」
男「そんじゃ影踏みでもしながら歩くか」
妹「えー」
男「小学校の頃、幼馴染と三人でやったろ?朝にやると遅刻しそうになったの」ハハハ
妹「覚えてるし!ていうか私!遅刻したし!!!」
神社
男「なんだ。ここに着たかったのか」
妹「」コクリッ
男「よく遊んだよなー!夏に水鉄砲で撃ち合いとかしてさぁ」
妹「そこの石段で並んでアイスも食べたりしたよね!」
男「そうだったなぁ。確か当たり付きのやつ!幼馴染があたってったけ」
妹「当たりをひいたのは私なんだけど」プイッ
男「あれ?そうだった?」
男「さて、腹も減ったし昼飯食いに帰るか」
妹「」グイッ
男「?」
妹「もうちょっと…あm
散歩」
男「いいけど」
河川敷
男「ずいぶんと歩いたな」
妹「ここ」
男「?」
妹「ここ覚えてる?」
男「覚えてるも何もここも通学路じゃん」
妹「うん、そうだね」
妹「ここはね~♪私の大切な場所なんだよ?」
男「いきなり、どうした?らしくない笑顔だな」
妹「……お兄ちゃんの優しさを感じることができる場所」
男「え?」
妹「小さい頃ここでよく遊んだでしょ?」
男「そうだったな。親には川までは行くなよって言われてたけど」
妹「私が足を捻って怪我した時、よくおぶって帰ってくれたね」
男「そんなこともあったな」
妹「ううん、もっといっぱいあったよ!」
妹「2人でキャッチボールした時に私が投げたボールが遠くの茂みに入って隠れちゃった時も」
妹「お兄ちゃんは一緒になって探してくれたよね」
妹「本当は一緒にじゃないね。私は虫が怖くて草むらの中でしゃがむお兄ちゃんをずっと見てたんだ」
妹「色々、まわったけど……やっぱり、ここが一番お兄ちゃんとの思い出の多い場所かな♪」
男「……お前」
妹「ごめんなさい」ウルウル
男「なっ!なんで、急に泣くんだ!!」
妹「だって……お兄ちゃんにちゃんと謝ったことなかったんだもん!私の代わりにボール探してくれた時も……」シクシク
男「おいおい」
妹「私がお母さんやお父さんとはぐれた時も!!!」
男「あれはいいんだ……みんなパニックだったし」
妹「私のせいで……お兄ちゃんもバスに乗れなくなって」シクシク
男「あぁ!泣くな泣くな!」
妹「ふぇぇ……」シクシク
男「楽しい散歩で終わろう。な?」
妹「うん……」
妹「最後に外に出てよかったよ」
妹「だって、通学路は何もかわってないんだもん。公園も神社も駄菓子屋さんも」
男「あぁ」
妹「ランドセル背負った幼なじみさんやお兄ちゃんが見えた気がしたんだ。えへへ」
男「俺も泣き虫の妹が見えたよ」ハッハハ
妹「えー!それって今のこと?」
男「そうだなー。今もそうだしさっきも、かな」
男「さて、家に帰ろう」
妹「うん!」
――
―
男「本当に誰もいないな」
妹「世界で2人だけだね」
男「そうだなぁ。世界でお前と二人だけか」
妹「ねぇ、お兄ちゃん。もし、明日が来たらどうする?」
男「とりあえず、お前の高校入学祝いだな」
妹「お兄ちゃん……」
世界はとても静かで
通学路は何も変わってなくて
桜の花が桃色に道路や家の屋根を着飾っていました。
電信柱、汚れた看板、どれを見ても思い出すのです。
お兄ちゃんと幼馴染さんとここを歩いた日のことを
失う前に初めてそのどれもが愛しく切なく感じるのでした。
もっと、お兄ちゃんとここを歩きたい。
明日はきっと来ないと思います。
それでも、明日、お兄ちゃんがしてくれるお祝いパーティーが楽しみで仕方ありませんでした。
来るはずの高校生活を思い描くのもわくわくします。
私が合格した高校へは幼馴染さんとお兄ちゃんも通っているのです。
幼馴染さんが着こなす制服にいつも憧れを抱いていました。
男「お~い、夜更かしするなぁ」
妹「勝手に部屋にはいるなぁ!」
男「ん?日記か?」
妹「日課だから」
男「そうか」
男「明日に備えてもう寝るぞ」
妹「そうだね」
男「なんてったって明日は朝から入学祝いのケーキをつくらなくちゃいけないからな!」
妹「……ねぇ、お兄ちゃん」
男「ん?」
妹「今日はお兄ちゃんの部屋で寝ていい?」
男「あぁ、いいよ」
妹「ありがとう」
――
―
妹「ねぇ」
男「ん?」
妹「ケーキつくり私も手伝っていい?」
男「もちろんだ!二人でつくろう」
妹「うん」エヘヘ
妹「明日が楽しみだね!」ニコッ
おわり
このSSまとめへのコメント
ムジュラの仮面ぽくて好き