れんげ「駄菓子屋ー!」
楓「おう、今日こそは買いに来たのか?」
れんげ「そうなん! 今日こそ駄菓子屋を買うん!」
楓「ほーう、いくら持ってきたんだ?」
れんげ「これを見て腰抜かすといいんよ駄菓子屋!」
楓「こ、これは……!」
れんげ「五百円玉なのん!」
楓「まさかれんげが五百円なんて持ってくるなんてな……」
れんげ「さあ! これで駄菓子屋買うん!」
楓「……ククッ」
れんげ「な、何がおかしいん!?」
楓「残念だったなぁ! 駄菓子屋さんはな……七百円に値上がりしたんだよ!」
れんげ「な、なんと!」
れんげ「駄菓子屋の嘘つき! 昨日は五百円って言ってたのん!」
楓「昨日は昨日だよ、今日からは七百円なんだ。それで、買うのか?」
れんげ「……今は550円しか持ってないん、これじゃあ駄菓子屋買えません」
楓「そうか、そいつは残念だ。ほれ、何も買わないなら帰った帰った」
れんげ「仕方ないんな……またねーねーのお手伝いするん」
楓「へぇ、先輩の手伝いしてお駄賃貰ってんのか」
れんげ「そうなん、晩御飯作ったら10円、お風呂洗ったら10円、それから肩たたきしたら10円に、あとな、あとな」
楓「なんだその10円均一、まあれんげにはそのくらいが良いか」
れんげ「そういえば昨日は昔の写真が一枚100円で売れたん!」
楓「写真? 誰に」
れんげ「ほたるんに、なっつんとこまちゃんと撮ったのが売れたん!」
楓「へぇ、まあ最近越して来たから昔も知りたいんだな」
楓「はぁー、れんげも帰ったし、テレビでも見てるか……」
楓「肩たたきか、そういや最近動いてないしちょっと凝ってきたな」
楓「あれ、肩叩くのどこやったっけ」
れんげ「駄菓子屋、肩凝ってるのん?」
楓「うわ、まだいたのかよ」
れんげ「肩たたき、10円なん」
楓「10円ねぇ……ほれ」
れんげ「毎度ありなのん! さあ駄菓子屋座るんな!」
楓「引っ張るなっての……よっこらしょ」
れんげ「……駄菓子屋、年寄り臭いん」
楓「う、うるさいな」
れんげ「ねーねーみたいなんなー」
楓「先輩はまだまだ若いだろ、年寄り言ってやるなよ……」
れんげ「よーし、それじゃあやるのん」
れんげ「……のんっ!」
れんげ「のんっ! のんっ! のんっ!」
楓「いてぇって! そんなフルスイングな肩たたきは要らん!」
れんげ「ねーねーはこれで喜ぶのに、駄菓子屋はわがままなんな」
楓(先輩はこれで良いのか? それとも我慢か?)
楓「……まあ良いか、もう少しだけ優しくしてくれ」
れんげ「わかったん、のん、のん、のん」
楓「お、そうそう、そのくらいだ」
れんげ「のん、のん、のん」
楓「丁度良いぞれんげ、その調子だ」
れんげ「……」
楓「ん?」
ぎゅっ
楓「おい」
れんげ「……」
楓「おいこら、肩たたきはどうした」
れんげ「やっぱり駄菓子屋欲しいん」
楓「昨日からなんだよ? 私なんか欲しがってどうすんだ」
れんげ「……ちょっと昔を恋しく感じるお年頃なん」
楓「昔って少し前だろ」
れんげ「ねーねーがいるのも嬉しいけど、やっぱり駄菓子屋もいて欲しいん」
楓「わがままな奴だなぁ」
れんげ「うち、うち……」
れんげ「うち、駄菓子屋と暮らしたいん!」
楓「」
蛍「れんげちゃん、先輩とお、お、お風呂入ってる時の写真とかないかな?」
れんげ「なんでそんなのほしいのん?まだ小さい時のならあった気がするのん」
蛍「一万円で買います」ピッ
れんげ「毎度ありなのん!!」
楓「……」
れんげ「駄菓子屋と暮らしたいのん」
楓「私は店があるからな、一緒には無理だろ」
れんげ「じゃあうちが駄菓子屋の子になります!」
楓「先輩はどうするんだ?」
れんげ「ねーねーも駄菓子屋の子になります!」
楓「いや私の子にされても困るわ」
れんげ「ねーねーもきっと喜ぶんな、だから、だから……」
楓「れんげ……」
楓「ダメだ」
れんげ「なんで、どうしてそんなこと言うん? 駄菓子屋はうちが嫌いなのん?」
楓「そうじゃない」
れんげ「じゃあ……」
楓「甘えてばっかじゃダメなんだよ、れんげ」
楓「お前ももう小学生だ、すぐに中学生になって、高校生、大学生になって大人になる」
楓「今はまだ甘えてるだけだからダメだ」
れんげ「駄菓子屋……」
楓「まあもしも大人になって、まだ私と暮らしたいって思ってたら介護でもしてもらおうか」
楓「少なくともお前が二十歳になるまでは、我慢しろ」
れんげ「……二十歳になったら一緒に暮らせるのん?」
楓「ああ、そうだな」
れんげ「うん……わかったのん!」
れんげ「ばいばい駄菓子屋! 今日は帰って寝るん! 早く大人になるん!」
楓「おう、ちゃんと飯食って風呂入って歯磨けよ」
れんげ「わかったーん!」
楓「まさかれんげがあんなこと……まだまだガキだな」
楓「あ、そういやまだ全然肩叩いて貰ってねぇ、本当に10円分くらいじゃねーか」
楓「ふっ、本当にあいつは……」
楓「後で昔の写真でも見るか」
楓「それと久々にれんぐるみでも作るか」
楓「親離れさせる側も子離れしなきゃいけないんだから大変だな」
楓「子離れ、しないとな」
今日はここまで
おまけ
れんげ「ってことで早く寝るん! お休みねーねー!」
一穂「おー、お休みれんちょん」
一穂「楓の家の子かー……」
一穂「掃除に洗濯に、家事全般任せられるよなー」
一穂「ん?」
一穂「おや?」
一穂「良いんじゃないかね、楓ん家」
一穂「よし、明日うちからも頼むか」
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