男騎士「くっ、殺せ!」オーク「……」 (50)
オーク「勝負はついた、命まで取ることは無い」
男騎士「……」
オーク「安心しろ、殺しはしないと言っている」
男騎士「そうやって生かした私を慰み物にするつもりか!」
オーク「……はあ?」
男騎士「獣に汚されるくらいなら、この命自ら断って……」
オーク「まて、ちょっとまて!!」
オーク「俺にはそういう趣味はないぞ!」
男騎士「嘘を吐け!!」
男騎士「オークと言えば性欲の塊のような種族」
男騎士「その欲望の矛先は異種族の女どころか男にすら及ぶと言うではないか!!」
オーク「人間界じゃそんな扱いなの俺ら!?」
男騎士「そもそもオークに雌は存在せず、異種族の雌を孕まし繁殖すると……」
オーク「無理だよ、俺らどんな精子してんだよ!!」
オーク「っていうか普通に雌のオークもいるよ!!」
男騎士「嘘だ……現に確認されているオークは全て雄だと」
オーク「それって戦場での統計だろ」
オーク「戦場に女を連れてくるやつがいるか?」
男騎士「……なんと、オークには女戦士はいないのか!!」
オーク「人間は普通に女に戦わせてんのか!!?」
男騎士「無論、その能力に長けた者だけだが……」
男騎士「お前たち、そんなことも知らなかったのか?」
オーク「俺たちにお前らの顔で性別見分けろとか無理だよ……」
オーク「例えばさ、お前は顔見ただけでイノシシの雌雄を判別できるか?」
男騎士「……無理だな」
オーク「だろ?」
男騎士「いや、しかし胸の膨らみとかで分からんか普通?」
オーク「あー、アレは心臓とか胸周辺を重点的に守る鎧の構造かと」
男騎士「そうだ!その鼻ならば臭いには敏感だろう!!」
オーク「やたらと雌臭いやつはいたけど、戦前の景気づけに抱いてきた残り香かと」
男騎士「……」
オーク「ま、まあ文化の違いってやつだよ!」
オーク「女が戦場にいるとか俺らはまず考えないし」
男騎士「そうか……」
オーク「まず女かどうかすら判別できてないのに、強姦すると思うか?」
男騎士「……どうやら我々の認識が偏見に満ちていたようだ」
女オーク「辱めを受けるくらいなら死んだ方がマシだ!」
俺「死ねよ」ドシュッ
オーク「一体誰がそんな酷い噂を……まあ敵同士ではあるんだけどさ」
オーク「でも戦意高揚っていっても越えちゃいけないラインってあるだろ?」
男騎士「そう私に言われても……」
男騎士「市井にもそういった本は溢れ返っているし」
オーク「ちょいまて」
オーク「なんだよ『そういった本』って!?」
男騎士「……一部の酔狂な輩が好む書き物や絵草子のことだ」
オーク「へえ……」
オーク「で、なんで男騎士さんはそんなもの知ってんの?」
男騎士「や、やめろ……!」
オーク「ぐ、ぐうぅ……ぐおぉぉぉ!」
男騎士「がはッッ!!は、腹が、裂ける……尻が熱い、焼けるように……っ」
オーク「オオォォォォ!!」
男騎士「や、やめ……て、もう出さないで……こ、殺せ……!!」
男騎士「わ、私ではない!!」
男騎士「同僚の男がそういったものを蒐集しては私に語ってくるものだからつい……」
オーク「そんな奴の話を真に受けなさんなよ」
男騎士「……最初からオークらへの偏見があったことは認めよう」
オーク「俺ら、そんなに好色そうな見た目?」
男騎士「豚といえば貪欲と不潔だからな」
オーク「本当にイメージだけでしか語られてないのね俺ら……」
オーク「だから問答無用で人間が襲いかかってきたりすんのか」
男騎士「はっきり言って、言葉が通じることすら不思議だ」
オーク「俺らにもちゃんと文化とかあるからね?」
男騎士「人間からすれば獣同然なのだから仕方あるまい」
オーク「仕方ないの一言で済まされちゃたまったもんじゃないよ……」
オーク「長老たちが和平の交渉の場すら設けられないと嘆いていた理由がこれか」
男騎士「そちらから攻撃しておいて和平とは何をいうか」
オーク「人間が俺たちの縄張りを荒らしたのが先だろ?」
男騎士「……そ、そうだったのか?」
オーク「少なくともこっちの言い分はそうだけど?」
オーク「男騎士はどういうつもりで戦争してたワケよ」
男騎士「わ、私は人間を襲うケダモノを倒して市民の安全を守ろうと……」
オーク「そういう建前を真に受けちゃったってことか」
オーク「男騎士は堅物そうだもんな」
オーク「上司とか国とか疑ったことないんでしょ?」
男騎士「的確過ぎて返す言葉も無い」
オーク「まあ、俺も人間の文化を良く知らない部分もあったしさ」
男騎士「こうやって話し合いができるのだ」
オーク「少しずつお互いの偏見が解けていけばいいな」
男騎士「そうだな、私たちがこうして分かりあえたんだ」
男騎士「他の者たちもきっと……」
オカマ騎士「あーら男騎士ちゃん、そんなところで何やってんの?」
男騎士「……オカマ騎士、なぜ貴様がここに!?」
バイオーク「オーク、そいつから離れろ!!」
オーク「その声はバイオークさん!?」
オカマ騎士「くっ、あの距離からの槍の投擲で胸を狙うなんて」
オカマ騎士「鎧に仕込んだ胸パッドが無ければ貫通して即死だったわね……」
オーク「え?」
バイオーク「雌臭えな、人間!!」
オカマ騎士「残念だけど下は工事前よ~」
オカマ騎士「だから景気づけに抱いてきちゃった(はぁと)」
バイオーク「ぐへへへ、野郎だろうと俺には関係ねえ!」
バイオーク「ケツマ○コ犯して孕ましてやるぜえ!!」
男騎士「は?」
オーク「……」
男騎士「……」
オーク「なんか」
男騎士「ごめんなさい」
オーク「いや……こっちこそ」
オーク「バイオークさんストップストップ!!」
バイオーク「なんだオーク、てめえの尻貸してくれるのか?」
オーク「それは絶対いやです!!」
男騎士「オカマ騎士も剣を納めろ!!」
オカマ騎士「あ~ら、こんないいオーク見ちゃったら下の剣は収まらないわよ?」
男騎士「少し黙れ!!」
男騎士「お前が人間に対する誤解の元になってるんだ!!」
オーク「バイオークさんも、戦場ではそんなこと言ってたんですか!!?」
オーク「っていうかそっちの気のヒトだったんですね……」
バイオーク「あれ、お前知らなかったっけ?」
オーク「有名な話だったんですか!?」
~1週間後~
オーク「バイオークさんは戦場での姦淫罪ということで投獄されました」
男騎士「私も上司に戦場での綱紀粛正について申し立てをしておいた」
オーク「……なんというか」
男騎士「お互い、根も葉もない偏見というワケでもなかったんだな」
オーク「多少はオーバーに伝わってた気もするけど」
男騎士「ちなみに、ちゃんとした女騎士も存在するからな?」
男騎士「男勝りの技量や腕力を持った女性の絶対数は少ないが……」
オーク「でもオカマ騎士さんの方がどう見てもレアケースだよね?」
男騎士「そういったものの方が印象に残りやすいというか……」
男騎士「そうだ、為政者の伝手を辿ってオーク一族との和平を受け入れるよう伝えておいた」
オーク「本当か男騎士!」
男騎士「ああ、こうやって巡り会えたのも何かの縁だ」
男騎士「私にも何かできるとこはないかと考えてな」
オーク「いやあ、お前結構偉いやつだったんだな」
男騎士「それでだなオーク」
オーク「なんだ?」
男騎士「いつか、人間とオークが手を取り合って暮らせる世の中になればな……」
オーク「ああ」
男騎士「私と付き合ってはくれないか?」
オーク「……は?」
男騎士「最初こそ、愛も無くケダモノに犯されるなど耐え難いと思ったが」
男騎士「こうやって深く知り合ったお前となら……」
オーク「いや、ちょっと、だから俺にそっちの気は!」
男騎士「種族の壁さえ超えたのだ、性別の差など微々たるもの!!」
オーク「ぜんぜん微々たるものじゃねえよ!!」
男騎士「なんなら和平の先駆けとして今すぐにでも!!」
オーク「う、うわああああああああ!!!」
オーク「くっ、殺せ!!」
おわり
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