店員「温めますか?」(129)
男「あっ、はい。お願いします」
店員「分かりましたぁ」ギュー
男「……」
店員「どうですか?温まりましたか?」
男「はい。いつもありがとうございます」
店員「これも仕事ですから♪」
男「じゃあ今日はこれで…」スッ
店員「はぁい♪またのご利用お待ちしておりまぁス♪」
店員2「行ったすか?」
店員「あーうん、行った行った」
店員2「おつかれさまでぇす」
店員「ういーす」
店員2「それにしても今日も来るとか……まじでどんだけなんすか、あの男」
店員「確かにwww来すぎwww」
店員2「もしかして先輩に気があるのかもwww」
店員「ちょwwwやめてよwwwきもいwww」
店員2「でも今日で連続一週間でしょwww?間違いないッスよwww」
店員「うっそwwwやめてよwwwあたしタイプじゃないんですけどwww」
店員2「そうなんすか?ならなんであの男のときいつも自分から行くんスかwww」
店員「だってあの人無茶苦茶お金くれるんだもんwww」
店員2「えーwwwいくらすか?マジ気になるんですけどwww」
店員「10万円wwwwwwww」
店員2「ぶほっ!?」
店員「ちょ、きたないwwwww」
店員2「す、すんませんwwwwむせたwwwwwwww」
店員2「えーwwwつかマジッすか?ここって一回温めるの1000円ですよ!?
なんで10万も落としてくんスか!?」
店員「やっぱりあたしが可愛いからっしょwww」
店員2「ないわぁwwwwそれはないわぁwwwww」
店員「おい、笑うなwwwwww」
店員2「したら次あの人来たら、あたし行ってみてもいいっすかねwwwww」
店員「ダメよ、ダメダメwwwあのカモは渡さないわwwww」
店員2「うっわぁーwwwケッチーwww」
店員「ふふん、初めに温めたもん勝ちなのよwwwwww」
店員2「くっそwwwwwあーあ、羽振りのよさそうな男どっかにいないかなー」
店員「いてもキモメンよ、きっとwww」
店員2「ちょwwwやめてくださいよwwwwフツメンに抱きつくならまだしも
キモメンは勘弁wwww」
店員「だよねーwww」
店員2「昔この店来たキモメンいたじゃ無いすか?あの人マジ臭くて
アレ以来トラウマなんすよねぇ」
店員「分かる分かるwwwキモイ男ってなんであんなに臭いんだろうねwww」
店員2「その点、さっきの人は良いっすよね。イケメンじゃないけどキモメン
でもないしwwww」
店員「なにより臭くないしねwwwww」
店員2「wwwwwwwwwww」
店員「……っと、そろそろあたし上がりの時間だからぁ」
店員2「ういーっす、おつかれーっす」
店員「じゃ、後よろしくねぇwwwちゃんと仕事しなさいよwww」
店員2「キモメン以外ならwwwww」
店員「wwwwwwwwwww」
店員「じゃ」
店員2「ういーっす」
そして。
店員「……ふう」パタン
店員「あー、今日もよく働いたわねぇッと」ノビー
店員「あれ?」
男「…」キョロキョロ
店員「あの人、いつもの……何してるんだろ?」
店員(そういえば、あの人っていつもお昼時に店に来るけど、
仕事はなにしてる人なんだろ?お金持ってるからには
働いてるのよね?)
男「…」キョロキョロ
店員「うーん、気になる……」
店員「ちょっとつけてみよっかなー♪」
店員「上手くいけばお金持ちをたくさん呼び込めるかも!?よーし…」
で。
男「…」ザッザッザッ
店員「……って、ここ老人ホームじゃない」
店員「こんなとこで何して……まさか介護師?介護師ってそんなに儲かる
仕事だったけ?」
男「……」ザッザッザッ
店員「躊躇なく入って行っちゃうし…」
店員「知り合い……もしかして親戚か誰か入ってるとか?」
店員「うーん…」
店員「けど、いくらなんでも入るワケにはいかないわよね…」
店員「うちに介護が必要な人なんていないし……ん?」
男「……」カラカラカラ
店員(出てきた!車イス押してる!……家族かな?)
男「ほら、良い天気だよ。母さん」
店員(母さん……。あの人のお母さんかな?ちょっと老け過ぎて……って
老人ホームにいるんだから、年は取っててもおかしくないのか)
店員(それにしても、まだ見た目20代……もし童顔で年とってても30前半
っぽそうなのに、随分年の離れた親子なのね)
男「ごめんね、母さん。今日も彼女紹介できなくて…」
母?「…」
男「彼女、恥ずかしがりやでさ。まだ心の準備が出来てないみたいなんだ」
店員(彼女?彼女いるのにあいつ、うちの店来てんの?ありえねー)
男「でも、母さんもきっと気に入ると思うよ。とってもかわいい子なんだ」
母?「…」
男「髪は少し茶色が混じった黒で、ボブカットって言うのかな?短めで
ボーイッシュな感じなんだ。それで笑顔がとってもかわいくて……
笑うとえくぼが出来るんだけど、それがたまらなく好きなんだ…」
店員(ふーん。あの人の彼女ってボブカットでえくぼが出来て…)
店員(…………え?)
店員(いやいやいや…まさか、そんな…)
男「今日も彼女と抱き合ってさ。ほら、少し香水が臭うだろ?」
店員(…………あ、あたし……なの?)
店員(ありえない……ありえないって!!!付き合ってなんかないわよ、
あたしは!)
男「けど、まだやっぱり恥ずかしいらしくてさ。その、分かるだろ?
照れ屋なんだよ、彼女」
店員(照れてねーよ!!!というより、付き合ってねーよ!!!)
男「でも、もうすぐ。もうすぐ会えるから…」
店員(え?)
男「今度、プロポーズしようと思うんだ。そしたら彼女もきっと心を
決めて母さんに会ってくれると思う」
店員(えええええええええええ!?)
店員(ない!ないないない!ないって!)
男「だから楽しみにしててね、母さん」
母?「…」
男「それじゃ、風も出てきたし部屋にに戻ろうか」カラカラカラ
店員「……うわぁ」
店員「ど、どーしよう…凄い現場を目撃してしまった」
店員「……あたしなのよね、きっと…」
店員「あの人の言ってる彼女が、あたしじゃなかったら別に
どうでも良いけど……もし本当に彼女がいるんだったら……」
店員「でも、もしあたしだったら……?」
店員「あの人、明日も来るのかな…」
店員「プロポーズされたら……」
店員「憂鬱すぎる…」
翌日。
店員「そーゆーワケだからあの人来たらよろしくー」
店員2「おっもwwwまじで重いwwwww」
店員「テンション高すぎ…」
店員2「だってプロポーズでっしょwwwテンション上がりますよぅwww」
店員「あんただけね…」
店員2「えー、でもあの人お金持ってるし、キープ君としてキープしとけば
いいじゃないですかぁwww」
店員2「お母さんに一回会ってあげるだけで、これからもお金
入って来るんですよ?ボロイ商売じゃないッスかぁwwww」
店員「あんたねぇ…」
店員2「でも、そんなに憂鬱なら休んじゃえばよかったのにー」
店員「店長にどーしてもって頼まれたから仕方ないでしょ……」
店員2「まあ、そーゆーことにしといてあげますっ♪」
店員「……」
店員「今日はあたし裏方の方から出ないから、接客は全部任すからね?」
店員2「はいはーい♪」
店員「大丈夫かしら…」
それからそれから。
店員2「あのー、せんぱぁい」タタタッ
店員「どうしたのよ、あんた。コッチ来て。フロントは?」
店員2「それが……例の、あの人が来ちゃいまして…」
店員「そう…」
店員2「それで先輩を出せって…」
店員「いないって言わなかったの!?」
店員2「言いましたよぅ!でも……絶対にこの店にいる筈だから出せって…」
店員「はあ?」
店員2「今、部屋にも大学にも、友達の家にもいない。いるのはココだ。
だから出せって…」
店員「!?」
店員「だ、大学!?なんであいつ、あたしが大学行ってること…」
店員2「先輩……盗撮されてます」
店員「………え?」
店員2「さっき、あの人のケータイ見せられました。そしたら…」
店員「………うそ、でしょ?」
店員2「先輩の部屋、大学……あたしの部屋まで、全部映ってました」
店員「そんなの…」
店員2「この店で騒ぎは起こしたくない。だから出せって…」
店員「いやあああああああああ!!!!」
店員2「せ、先輩!?」
店員「いやっ!?いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!???」
店員2「お、落ち着いて下さい!」
店員「これが落ち着いていられるワケないでしょ!?あんただって
震えてんじゃない!!!」
店員2「だだだだだだって!!!だって……」ガタガタガタ
店員「……ケーサツ」ハッ
店員「ケーサツに連絡しなくちゃ!」バッ
店員2「ダメです!!!」ガシッ
店員「なにするのよ!?」
店員2「やめて下さい!ケーサツは不味いんです!!!」
店員「だからなんで!?」
店員2「盗撮されてるの忘れたんですか!?」
店員「!!!」
店員2「あの人盗撮してるんですよ?ここにもカメラがあって、今もリアルタイムで
あたし達見張ってるかもしれないんですよ!?」
店員2「それなのにケーサツに通報しちゃったりしたら、それこそあの人
何するか分かんないですよぅ!」
店員「……っ」
店員2「だから、ケーサツに連絡するなんて馬鹿なマネやめて下さい!」
店員「じゃあ、じゃあどうすりゃいいのよ!!!」
店員「どうすればいいの!?」
店員2「そんなの……決まってるじゃないですか」
店員「……え?」
店員2「先輩があの男のトコ行って、お母さんに会ってあげればそれで
解決するじゃないですか!!!」
店員「あんた、自分が何言ってるか分かってんの!?」
店員「何するか分からないような男のトコに、あたしに行けって言うの!?」
店員2「そうですよ!!!」
店員「なっ…!?」
店員2「良いですか?あたし怒ってるんですよ」
店員「どうしてっ!?」
店員2「どうして?何言ってるんですか!当たり前じゃないですか!
あの男は先輩に惚れてるんですよ?あたしは関係ないんです!!!」
店員2「それなのに先輩の知り合いだからって、部屋盗撮までされてるんですよ!
とばっちりも良いとこじゃないですか!」
店員「それはあたしじゃなくてあの男の所為で…」
店員2「おんなじですっ!」
店員「うぅぅ…」
店員2「泣いたって何も変わりませんよ。いいから早くあの男の所へ
行ってください!」
店員「いやあああああ!!!」
店員2「行けよ!早くっ!!!」
店員「うあああああああああああああ!!!」
ピシュ
店員2「え?」
ブシャァァァァァァァァァ!!!!
店員「あぁぁぁ………あっ、あ!?」
店員2「あががあがああ佐bてbbがあばだjbdjあ!?」
店員「きゃ、きゃあああああああああああああああ!!??」
男「僕の彼女を泣かすな…」
店員「きゃあああああああああああああ!?」
店員「いやああああああああああああああああああ!!!!?あああああ!!!?」
男「やあ、ごめんね。この女にキミを連れて来るよう頼んだんだけど、
怖がらせちゃったみたいで…」
店員「いやあああああああああああああああ!!!!ああああああ!!!」
男「でも大丈夫。ちゃんと殺しといたから」
男「だから、もう怖くないよ?悪者は僕がやっつけたから」
店員「あああああああああああああああああ…!!!」バッ ガタガタガタガタ
男「あはは、そんなに怖がらないで。僕はキミを迎えにきたんだ」
店員「うぅぅぅぅぅ!!!」ブンブンブン
男「おいおい、そんなに首を横に振らないでくれ。君の気持ちは分かってる
けど、そんな態度をとられたら傷つくじゃないか」
店員「ああああああああっ!!!」ダッ!
男「おっと、ドコに行くんだ?」
店員「うわあああああああああああ!!!」ダダダダダ
男「ドコに逃げても無駄なの……分かってないのかなぁ?」ピッ
そして、3時間後……。
店員「はぁっ…はぁっ…はぁっ…」タタタタ ピタッ
店員「はあっ、はあぁっ、はぁっ……ふぅ」
店員「……」チラッ
店員「追って、来てないよね?」
店員「……」
店員「……は、ははっ」
店員「あははははははははははは!!!」
店員「っ!?」ガタガタガタガタガタ
店員「お、落ち着いて!落ち着くのよ!?」ガタガタガタガタ
店員「こんな状態じゃ、近くまでこられたら逃げ切れないんだからっ!」ガタガタガタ
店員「まずは深呼吸して…」ガタガタ
店員「すーーーーはーーーーー」
店員「すーーーーーはーーーーーーー」
店員「…………よ、よし」
店員「…………それにしても、疲れた」
店員「これ、夢だったらいいのにな……」
店員「……夢だったら、良いのに…」ジワッ
店員「………」ギュウウウ
店員「夢じゃないよね、やっぱり…」
ベタァァァ
店員「この血も……臭いも……全部…」
店員「全部全部全部全部っ!!!」
店員「全部……本物なんだ…」
店員「……どうして」
店員「どうしてあたしがこんな目に遭わなくちゃならないのよっ!?」
店員「どうしてっ!?なんで!?」
店員「誰か……」
店員「誰か教えて……!お願い……だから…」
店員「…………」グゥゥゥゥゥ
店員「……おなか、すいた」
店員(そう言えば昨日のお昼から気が重くて何も食べてなかったっけ…)
店員(追いかけてこられたら体力が続かないかもしれないし何か食べた方が
いいよね?)
店員「そういえばココ……どこだろ…夢中で走って覚えてないや」キョロキョロ
店員「田んぼばっかり……コンビニとか近くにないのかな?」ピッ
店員「ん?」
ピッピッ!
店員「……うそ、ケータイの充電切れてる」
店員「……これ、やばくない?」
店員「……」
店員「とにかく……コンビニでも見つけて充電とご飯かな」
それから。
店員「……あ、歩けど歩けどコンビニがない」
店員「コンビニどころか、民家すらない」
店員「こんなに田んぼが広がってるのに誰が管理してんのよ?」
店員「あぁ、もう!」バタン!
店員「あたしドコにいんのよ、一体!」
店員「…………先輩の知り合いだからって、部屋盗撮までされてるんですよ!
とばっちりも良いとこじゃないですか!か」
店員「……その通りだよね」
店員「ちょっと元気過ぎてうざかったけど……明るくて良い子だったのに」
店員「……ごめん。あたしの所為だ」
店員「あたしの…」
店員「もしあたしと同じバイトしてなかったら。ううん、もしあたしと
同じシフトじゃなかったら……いや、そうじゃない」
店員「もし、あたしと同じ大学じゃなかったら、あたしと出会ってさえ
いなければ……死なずにすんだ」
店員「死なずにすんだんだ…」
店員「………ごめん」
店員「……本当に、ごめん」
店員「……」ツツー
店員「ダメだ、思い出したらまた涙が…」
店員「そうだよね。昨日まで一緒にバイトしてたのに。昨日まで一緒に
笑いあってたのに。それなのに!」
店員「それなのに、あたしがあの男の後なんか付けたりしたから!」
店員「!?」
店員「え……?」
店員「あたし、今なんて言った?」
店員「あの男の後を付けたりなんかしたから?」
店員「!!!」
店員「え……?ちょっと待って……え?あれ?」
店員「あの男、あたしをずっと盗撮してたんだよね?」
店員「あたしの行動は全部筒抜けだったんだよね?」
店員「だったら……」
店員「だったら、あたしが昨日あの男を付けて老人ホームに行ったことも
知ってる!?」
店員「あの台詞はあたしがアソコにいたから言ったの?」
店員「あたしに聞こえるようにわざと……?」
男「そうだよ」ジャリ
店員「!?」
男「君のことは全部知ってる。住所も実家の電話番号も交友関係も
それから今ドコにいるのかも」
店員「なんでココが…」
男「さっき自分で言っただろ?君の行動は全部筒抜けなんだよ」
店員(……服にも盗聴器か発信器でも仕込まれてる!?)
男「さあ、そろそろ日も落ちてきたし鬼ごっこはやめにしない?」
店員「……あいにく、あなたなんかに捕まらないわ。この人殺し!」
男「人殺し……ねえ。本当に僕は人殺しなんだろうか?」
店員「はあ?」
男「人殺しというのは人を殺した奴のことだろ?僕は人を殺しただなんて
思ってないけど」
店員「……何言ってんのよ。何言ってんのよ!!!」
店員「何が人を殺したと思ってないよ!あんたはあたしの友達殺したじゃない!!!」
男「友達?……ああ、あの店の女のことか。だったら心配しなくていい」
店員「え?」
男「あんな金さえ払えば誰とでも寝るような女、人じゃない」
男「人としての価値すらない」
店員「あんたって人はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
男「怒らないでくれ。あれは君のためにやったんだ」
店員「なんでソコであたしの名前が出るのよっ!?」
男「あんな奴、死んだ方が良いからさ、自分が助かるために友達を売るような奴だよ?」
男「君の周りにいるべき存在じゃない」
店員「だからって……なにも殺さなくてもっ!」
男「ああいう奴は遅かれ早かれ死ぬさ、僕が殺さなくても……まあ、あんな
奴の話なんてどうでもいいんだ」
男「それより、僕といっしょに来てくれないか?会って欲しい人がいるんだ」
店員「いやよ!誰があんたなんかと…」
男「手荒いマネは好きじゃないんだけど…いいの?」
店員「……っ!」ガタガタガタ
男「あはは、身体は正直だねぇ!」
男「どんなに強がったところで、さっきの光景が頭から離れないんだ?」
彼女もまんざら役に立たなかった訳じゃ無かったんだねぇ」
男「ほらっ、来いよ」ズムッ
店員「い、いやっ!離して!離してぇぇぇぇ!!!」ブンブン
男「残念だよ……本当に」
店員「いやあああああああああっ!!!」ブンブンブン
男「はあっ!」ドカッ
店員「ぐ……う?」
男「おやすみ。……目が覚めたら、母さんに会わせてあげるからね」
そして。
店員「う…ぅ…」パチッ
男「やあ、気分はどう?」
店員「んううううっ!?」ガバッ
店員「ん…んんんぬ!?」
店員(さ、猿ぐつわ!?)
男「ああ、それ。舌を噛むといけないからね」
店員「んむうううううう!!!」
男「あはは、無駄だよ。取れっこないさ」
男「それより君に会わせたい人がいるんだ。今、連れて来るね」
店員「んんんんんんっ!」ジタバタ
男「あはははははははは」
店員(な……まさか気絶させられて連れてこられるなんて…)
店員(足は……椅子に固定されてる)
店員(手も縛られて動かせない)
店員(おまけに口には猿ぐつわで叫ぶ事も出来ない…!)
店員(どうすればいい?どうすれば……)
カラカラカラ
店員「!?」
男「お待たせ、母さんだよ」
母?「…」
店員「!!!???」ジタバタジタバタッ
男「あははは、やっと会えて嬉しいんだね?」
店員(なっ……なに!?なんなの、これ?………死んで、る?)
店員(白骨、死体……?)
男「あははははははははははははっ!!!」
男「どうだい、母さん?ボクの彼女……綺麗だろう?」
男「え?なに?もっと近くで見たい?」
男「そうだね、そうだよね」
店員(し、死体と会話してるっ…?狂ってる!?)
男「ほうらっ…」スッ
店員(いやあああああああああああっ!?)
店員(なんで?昨日見た時は生きてたのにっ!)
店員(!!!)
店員(いや、あれは全然別の人だったんだ!別人を車イスの乗せて
を散歩させてただけなんだ!そううじゃなきゃ…)
店員(そうじゃなきゃ一日でこんなに腐敗したりしない!)
店員(いったい何年経てばこんな死体に……)
男「さてと……感動の御対面も済んだ事だし、そろそろメインデッシュと
いこうか」
店員(……え?)
男「さあ母さん、長年の望みだった彼女の身体がやっと手に入ったけど、
どうだい?感想は」
男「うん、うん……そう」
店員(な、なに言ってる…の?死体はしゃべれないのに……本当に頭やばい)
男「大丈夫、任せといて。ちゃんと出来るよ。そのために何人も殺して
練習したんだから」
店員「!?」
男「ああ、心配しなくてもいいから……うん。うん」
店員「……」じぃっ
男「ん?なに、その目は?」
店員「……」
男「ああ、なるほど。これから僕がなにをするのか知りたいんだね?」
店員「……」コクン
男「あははははははは!なあに、今から君の皮を剥いで、内臓と筋肉…
まあ、なんだ。解剖して母さんに移植するのさ」
店員「!?」
店員「んんんんんんんんんっ!」ブンブンブン
男「あはははははははははははははははっ!!!そんなに首を振っても
ダメだよwwwwこれは何年も前から計画してたんだ」
店員「んんんんんんん!!!」
男「…………どうやら、まだ何で自分がこんな事されるか分からないって
顔してるな」
店員「んむんううううううう!!!」ブンブンブン
男「そうだな。君にとってはタダの小遣い稼ぎだったもんなぁ。覚えてなくて
当然だろうね」
店員「んんんんんっ!!!」ジタバタ
男「黙って聞けよっ!!!」バンッ
店員「んっ!?」ビクッ
男「ふん……父さんもこんな女のいったい何処が良かったんだか」
店員「!?」
男「思い出したかい?僕の父さんは君のエンコー相手だったんだよ。
ホテルでキミにカード盗まれて多額の借金背負わされたバカなね」
男「それにしても君は凄いよ。まだ中○生だったくせに、まさかあんなに
金を使っちまうんだから」
男「いや……子供だったから金の価値が分からなかっただけかな?」
男「今となっちゃあボロイアパートで服やらバッグやら宝石やら
やりくり大変だもんなぁぁぁぁぁ!!!」
店員「んんんんんんんんっ」
男「さて、ここまで話したら、もう話は飲み込めたかな?」
男「君のおかげで悲惨な運命背負わされた少年と、その家族の
ささやかな復讐劇だよ、これは」
店員「んううううううっ!」
男「……ま、元はと言えば君なんかに惚れちまった僕の父さんの所為
なんだろうけど…」
男「今となっちゃあ、それもどうでも良いさ」
男「僕は母さんが満足してくれたらそれでいい」
男「母さんは毎日言ってたよ。私から旦那を奪った女が憎い…若い女が憎い、
あの女さえいなければって」
男「それはもう、毎日呪いのように、呪詛のように……」
男「そして、精神を病んで狂って自殺…」
男「あはははははははははは!」
男「それなのに……耳元から離れないんだよ」
男「毎晩夢に出て来るんだよ…」
男「僕の首を締めながらさあ!!!」
男「だから!!!」
男「だから……言ってやったんだ」
男「母さんの恨み、僕が晴らしてやるよって」
男「そしたら、止んだよ。声が…」
男「僕はもうあの悪夢に襲われるのはこりごりだ……」
男「だから、君のことなんざ、どうでもいいけど……僕のために
死んでくれ」
男はそう言うと、手に持っていたナイフを彼女の喉元に突き立てた。
激しい血しぶきと共に彼女の身体が跳ねる。
彼は笑っているのか泣いているのか、それとも怯えているのか
相変わらず分からないような表情で、そんな燦々たる光景を眺めている。
じいっと。微動だにせず。
再び彼が活動を再開したのは、彼女から体温というモノがおよそ
感じられなくなってからのことだった。
……もう、彼女に温めてもらえる事は二度とないのだと、
分かってからだった。
おわる
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